(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240830BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20240830BHJP
F24C 15/20 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A47J37/06 366
F24C3/02 R
F24C15/20 B
(21)【出願番号】P 2021053708
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 直司
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特許第5281985(JP,B2)
【文献】特開2015-097568(JP,A)
【文献】特開2017-221541(JP,A)
【文献】特開2019-010130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 3/02
F24C 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容するグリル庫と、
前記グリル庫内に設けられ、前記食材を加熱するグリルバーナと、
前記グリル庫の後部から上方に延設され、前記グリル庫内からの燃焼排気を前記グリル庫の後部に設けられた排気用開口から上方へ導
き、上部に設けられたグリル排気口から外部へ排出する排気ダクトと、
前記排気ダクト内に設けられ、前記燃焼排気に含まれる前記食材から発生した油煙と臭気成分を加熱して減少させるアフターバーナ部と
を備えたグリルにおいて、
前記アフターバーナ部は、前記排気ダクト内の下部で且つ前記排気用開口の後方に設けられ、
前記アフターバーナ部の炎口面は、前側から後側にかけて斜め上方に傾斜して配置され、
前記炎口面の水平面に対する傾斜角度は、15°~25°であ
って、
前記排気ダクト内には、前記アフターバーナ部の前記炎口面上を通過する前記燃焼排気の流れを上方に規制する整流板が設けられ、
前記整流板は、前記水平面に対して前記炎口面よりも大きな角度で、前記炎口面の後端側から後方に対して斜め上方に傾斜して設けられ、
前記整流板を仮想的に後側に延ばした延長線は、前記グリル排気口よりも後方に位置すること
を特徴とするグリル。
【請求項2】
前記排気ダクト内に設けられ、複数の孔部を有する板状の多孔板部を、互いに隣接する多孔板部同士が互いに対向するように且つ所定間隔隔離するように配置して形成され、前記排気ダクトから外部への炎の溢れを防止するフレームトラップを備え、
前記フレームトラップは、前記排気ダクト内において前記アフターバーナ部の前記油煙と前記臭気成分が流れる方向の下流側に配置され
、
前記整流板を仮想的に後側に延ばした延長線は、前記フレームトラップの後部に向けられていること
を特徴とする請求項
1に記載のグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食材を収容するグリル庫と、グリル庫内の食材を加熱するグリルバーナと、食材から発生した油煙や臭気成分をグリル庫奥部の排気用開口からグリル本体の上方へ導く排気通路と、排気通路に配設され且つ前記油煙や臭気成分を加熱焼失するアフターバーナとを備えたグリルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のグリルにおいて、排気通路内において、燃焼排気の流れに対して、アフターバーナの炎口面が良好に接触しないと、燃焼排気中の油煙や臭気成分が十分に加熱されず、減臭減煙効果が低減してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、アフターバーナ部の減臭減煙効果を向上できるグリルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のグリルは、食材を収容するグリル庫と、前記グリル庫内に設けられ、前記食材を加熱するグリルバーナと、前記グリル庫の後部から上方に延設され、前記グリル庫内からの燃焼排気を前記グリル庫の後部に設けられた排気用開口から上方へ導き、上部に設けられたグリル排気口から外部へ排出する排気ダクトと、前記排気ダクト内に設けられ、前記燃焼排気に含まれる前記食材から発生した油煙と臭気成分を加熱して減少させるアフターバーナ部とを備えたグリルにおいて、前記アフターバーナ部は、前記排気ダクト内の下部で且つ前記排気用開口の後方に設けられ、前記アフターバーナ部の炎口面は、前側から後側にかけて斜め上方に傾斜して配置され、前記炎口面の水平面に対する傾斜角度は、15°~25°であって、前記排気ダクト内には、前記アフターバーナ部の前記炎口面上を通過する前記燃焼排気の流れを上方に規制する整流板が設けられ、前記整流板は、前記水平面に対して前記炎口面よりも大きな角度で、前記炎口面の後端側から後方に対して斜め上方に傾斜して設けられ、前記整流板を仮想的に後側に延ばした延長線は、前記グリル排気口よりも後方に位置することを特徴とする。
【0007】
【0008】
請求項2のグリルは、前記排気ダクト内に設けられ、複数の孔部を有する板状の多孔板部を、互いに隣接する多孔板部同士が互いに対向するように且つ所定間隔隔離するように配置して形成され、前記排気ダクトから外部への炎の溢れを防止するフレームトラップを備え、前記フレームトラップは、前記排気ダクト内において前記アフターバーナ部の前記油煙と前記臭気成分が流れる方向の下流側に配置され、前記整流板を仮想的に後側に延ばした延長線は、前記フレームトラップの後部に向けられてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のグリルによれば、排気用開口から排気ダクト内に流れる燃焼排気が、アフターバーナ部の炎口面に接触し易くなるので、減炎・減臭効果を高めることができる。
【0010】
さらに、アフターバーナ部の炎口面上を通過する燃焼排気の流れは、整流板によって上方に規制されるので、これが排気抵抗となって、油煙が炎口面の上空で滞留しつつ排気ダクトから外部に排出される。煙や油煙を焼き切るアフターバーナ部に対して煙や油煙が接触する時間が長くなるので、減臭減煙効果をさらに高めることができる。
【0011】
請求項2のグリルによれば、フレームトラップの排気抵抗により、油煙がアフターバーナ部の上空でさらに滞留しつつ排気ダクトから外部に排出される。煙や油煙を焼き切るアフターバーナ部に対して煙や油煙が接触する時間が長くなるので、減臭減煙効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】底部材40の上面に固定されたアフターバーナユニット5の周囲を斜め後方から見下ろした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載される装置構成などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。
【0014】
図1~
図4を参照し、グリル装置1の構成を説明する。グリル装置1は、図示しないコンロの筐体内に取り付けられる。
図1,
図2に示すように、グリル装置1は、グリル庫2、グリル扉3、排気ダクト4等を備える。
【0015】
グリル庫2は略直方体の箱状に形成され、上壁部11、右壁部12、左壁部13(
図2参照)、底壁部14を備える。グリル庫2の前側には、正面視矩形状のグリル開口部(図示略)が設けられる。上壁部11には上火バーナ21が設けられる。上火バーナ21はグリル庫2内に向けて火炎を形成する。右壁部12内面の略中段には、下火バーナ22の右炎口部(図示略)が設けられる。左壁部13内面の略中段には、下火バーナ22の左炎口部24が設けられる。右炎口部と左炎口部24は前後方向に延び、同一高さ位置で互いに対向する。右炎口部と左炎口部24は、グリル庫2内に向けて火炎を形成する。なお、上火バーナ21と下火バーナ22は本発明のグリルバーナに相当する。
【0016】
グリル扉3はグリル庫2前側に設けられ、グリル開口部を開閉する。グリル扉3の背面下部には、支持枠16(
図2参照)が固定される。支持枠16は、焼き網(図示略)と受皿17を着脱可能に支持する。支持枠16は、グリル庫2の底壁部14上面の左右両側に設けられたレール機構(図示略)により前後方向に移動可能に支持される。それ故、グリル扉3は支持枠16と一体して手前側に引き出し可能であり、焼き網と受皿17をグリル庫2外に同時に取り出せる。
【0017】
排気ダクト4はグリル庫2の後部から後側で且つ斜め上方に傾斜して延びる。排気ダクト4の内側は、排気ダクト4の前側に位置する後述の排気用開口38(
図3,
図4参照)を介してグリル庫2内と連通する。排気ダクト4の上部には、グリル排気口39が設けられる。グリル排気口39は上方に向けて開口し、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。グリル庫2内からの燃焼排気は排気ダクト4内を上方に流れ、グリル排気口39から外部へ排出される。
【0018】
排気ダクト4の構造を説明する。
図2~
図4に示すように、排気ダクト4は、ダクト本体30と底部材40を備える。ダクト本体30は、上部と底部が開口する平面視左右方向に長い箱状に形成される。底部材40は、平面視左右方向に長い略矩形状に形成され、ダクト本体30の開口する底部に下側から閉塞するように固定されることで、排気ダクト4の底部を形成する。
【0019】
ダクト本体30は、前板部31、上板部32、右板部33、左板部34、背板部35、前方突出部36、仕切壁37を備える。前板部31は、正面視略逆U字状に形成される。上板部32は、前板部31の上端部から後側で且つ斜め上方に傾斜して延び、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。
【0020】
背板部35は、下端部から上端部に向かって後側に傾斜しながら延び、背面視左右方向に長い略矩形状に形成される。背板部35の上端部は上方に屈曲される。右板部33は、前板部31、上板部32、背板部35の夫々の右端部の間を右側方から閉塞するように設けられる。右板部33は、右側面視上方に向かうに従って前後方向の幅が狭くなる先細り状に形成される。左板部34は、前板部31、上板部32、背板部35の夫々の左端部の間を左側方から閉塞するように設けられる。左板部34は、左側面視上方に向かうに従って前後方向の幅が狭くなる先細り状に形成される。
【0021】
上板部32、背板部35、右板部33、左板部34の夫々の上端部に取り囲まれる内側に、平面視略矩形状のグリル排気口39が形成される。上板部32、背板部35、右板部33、左板部34に囲まれて形成される燃焼排気の通路は、下方から上方に向かうに従って前後方向の幅が狭くなる先細り状に形成される。
【0022】
前方突出部36は、前板部31の正面視略逆U字状の下端部から前方に突出して設けられ、下半分が切断された略半角筒状に形成される。仕切壁37は、前方突出部36の前端部に沿って設けられ、正面視略逆U字状に形成される。仕切壁37は、グリル庫2内と排気ダクト4内とを仕切る壁である。仕切壁37の略逆U字状の下端部の内側には、排気用開口38(
図3~
図5参照)が形成される。排気用開口38は、正面視左右方向に長い略矩形状に形成される。
【0023】
排気ダクト4内の構造を説明する。
図3,
図4に示すように、排気ダクト4内において、燃焼排気が流れる方向の上流側の下部には、アフターバーナユニット5が設けられる。アフターバーナユニット5は、アフターバーナ50とバーナ支持部60を備える。アフターバーナ50は炎口面55を上面に備える。炎口面55は多数の炎口を備え、上方に向けて火炎を形成する。アフターバーナ50は、炎口面55に形成される多数の火炎により、燃焼排気中に含まれる食材から発生した油煙や臭気成分を焼き切ることで減少させる。
【0024】
図3~
図5に示すように、バーナ支持部60は、平面視左右両側に延びる略矩形枠状に形成され、その両端部が底部材40の上面の左右両側に固定される。バーナ支持部60は、開口部61、後側リブ62、前側リブ63を備える。開口部61はバーナ支持部60の中央に設けられ、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。後側リブ62は、開口部61の後縁部から上方に突出して設けられる。前側リブ63は、開口部61の前縁部から上方に突出して設けられる。バーナ支持部60の上面において、開口部61の右側にはイグナイタ電極27が固定され、開口部61の左側には失火センサ28が固定される。バーナ支持部60は、アフターバーナ50の上面に固定される。
【0025】
アフターバーナ50の炎口面55は、バーナ支持部60の開口部61に位置決めされ、上方に向けて露出する。炎口面55の右側直上にイグナイタ電極27が配置され、左側直上に失火センサ28が配置される(
図5参照)。
【0026】
ここで、
図4に示すように、グリル庫2内の燃焼排気は、排気用開口38から排気ダクト4内に流入すると、排気ダクト4の形状に沿いながらグリル排気口39に向けて斜め上方に流れる。排気ダクト4内の下部において、炎口面55は、前側から後側にかけて斜め上方に傾斜した状態で、燃焼排気の流れに沿うように配置される。ここで、炎口面55の水平面に対する傾斜角度αは、15°~25°であるのが好ましい。このような範囲に炎口面55の傾斜角度を調整することで、排気用開口38から排気ダクト4内に流れる燃焼排気が炎口面55に接触し易くなると共に、燃焼排気の流れに対して、炎口面55上に形成される火炎の向きPを直交させることができる。よって、燃焼排気中に含まれる油煙や臭気成分を十分に焼き切ることができるので、減炎・減臭効果をさらに高めることができる。なお、炎口面55の傾斜角度の効果の実証については後述する。
【0027】
図2~
図4に示すように、アフターバーナユニット5の下流側で、且つ排気ダクト4の高さ方向略中段には、フレームトラップ110が取り付けられる。フレームトラップ110は消炎部材であり、例えばステンレス等からなるラス網等の2枚の多孔板の両端を曲げ加工し、それを上下方向に向かい合わせて直方体の筒状に形成したものである。フレームトラップ110は、前端側より後端側が低くなるように傾斜し、燃焼排気の流れる方向に対向するように取り付けられる。燃焼排気はフレームトラップ110の網を通り抜け、グリル排気口39から外部に排出される。
【0028】
アフターバーナ50の上方には、整流部材57が設けられる。
図5に示すように、整流部材57は、整流板571、右支持部572、左支持部573、右固定部577、左固定部(図示略)を備え、背面視上方に向けて開口する略コの字状に形成される。整流部材57は、例えば一枚の金属板を屈曲して作製してもよい。
【0029】
整流板571は、整流部材57の中央に設けられ、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。整流板571の前端部には、下方に屈曲する前側リブ575が設けられる。整流板571の後端部には、斜め下方に屈曲する後側リブ576が設けられる。右支持部572は、整流板571の右端部から略垂直上方に立設され、右側面視略三角形状に形成される。左支持部573は、整流板571の左端部から略垂直上方に立設され、左側面視略三角形状に形成される。右固定部577は、右支持部572の前方に向けて対向する前端部から右側方に突出し、背面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。左固定部は、左支持部573の前方に向けて対向する前端部から左側方に突出し、背面視前後方向に延びる略矩形状に形成される。
【0030】
整流部材57の開口する内側が、排気ダクト4の仕切壁37の背面に向けられた状態で、右固定部577と左固定部がネジ98で仕切壁37の背面に固定される。これにより、整流板571は、右支持部572と左支持部によって、アフターバーナ50の炎口面55の下流側に支持される。整流板571の前側リブ575は、バーナ支持部60の後側リブ62の背面に接触して配置される。整流板571は、炎口面55の後端部付近からフレームトラップ110に向けて斜め上方に傾斜する。具体的に言うと、整流板571を仮想的に後側に延ばした延長線Eは、フレームトラップ110の下面の後側の角部に向けられている。整流板571は、アフターバーナ50の炎口面55上を通過した燃焼排気をフレームトラップ110に向けて案内する。
【0031】
排気ダクト4内において、整流板571とフレームトラップ110の間の上側には、ガイド板58が設けられる。ガイド板58は、前端側から後端側にかけて斜め上方に傾斜し、その後端部は、フレームトラップ110の前端部に配置される。ガイド板58は、グリル庫2内から排気ダクト4の上側を流れる燃焼排気をフレームトラップ110に向けて案内する。
【0032】
アフターバーナユニット5の中央部分の下側には、煮汁用通路200が設けられる。煮汁用通路200は、アフターバーナユニット5の中央部分の下側を、底部材40の上面に沿って前方に延び、グリル庫2内の背面下部に設けられた出口201と接続する。煮汁用通路200は、グリル排気口39から侵入して排気ダクト4内の背面を伝って流れ落ちる煮汁をアフターバーナユニット5の下側を通過させ、グリル庫2内に案内する。煮汁は出口201から受皿17に落下する。ユーザは、受皿17をグリル庫2外に引き出すことで、煮汁を容易に回収できる。
【0033】
図4を参照し、整流板571の機能を説明する。整流板571は、炎口面55に対して前側よりも後側が高くなるように傾斜して配置される。仮に整流板571を設けない場合、排気用開口38から排気ダクト4内に流れる燃焼排気は炎口面55に沿ってそのまま後方に流れてしまう。この場合、炎口面55に形成される多数の火炎は、燃焼排気の流れによって後方に倒れてしまい、燃焼排気に対して火炎が十分に接触できないことから、燃焼排気中の油煙と臭気成分を十分に加熱できない。本実施形態では、炎口面55の下流側に整流板571を設けたことで、炎口面55上を通過する燃焼排気の流れを斜め上方に規制する。これにより、燃焼排気は炎口面55側に押し戻されるので、炎口面55上に形成される多数の火炎は、後方に寝た状態から起き上がり、炎口面55に対して直交する方向に形成される。従って、炎口面55上を通過する燃焼排気中の油煙と臭気成分を十分に加熱できるので、減臭減煙効果を向上できる。
【0034】
また、整流板571の下流側にフレームトラップ110が設けられるので、フレームトラップ110の排気抵抗により、油煙が炎口面55上空でさらに滞留しつつ排気ダクト4内を上方に流れ、グリル排気口39から外部に排出される(
図4に示す燃焼排気の流れを参照)。油煙や臭気成分を焼き切る炎口面55に対して油煙や臭気成分が接触する時間が長くなるので、減臭減煙効果をさらに高めることができる。
【0035】
また、整流板571を仮想的に後側に延ばした延長線Eは、フレームトラップ110の下面の後側の角部に向けられているので、炎口面55上を通過した燃焼排気を拡散させることなく、フレームトラップ110に向けて効果的に流すことができる。これにより、排気ダクト4における燃焼排気の排気性能を向上できる。
【0036】
図6を参照し、炎口面55の傾斜角度αの実証実験について説明する。炎口面55の最適な傾斜角度α(
図4参照)を求める為、実証実験を行った。実験では、炎口面55の水平面に対する傾斜角度を0°~35°の範囲内で5°ずつ変えたときの(1)グリルバーナの燃焼性能と、(2)アフターバーナ50の消炎性能を夫々評価した。(1)のグリルバーナの燃焼性能については、グリルバーナの各炎口に形成される火炎の状態を観察し、〇、△、×の3段階で定性的に評価した。(2)のアフターバーナ50の消炎性能については、グリル排気口39から排出される煙と匂いの状態を観察し、◎、〇、△、×の4段階で定性的に評価した。被調理物として、食材の中で比較的、油煙や臭気が出易い魚を使用した。
【0037】
グリルバーナの燃焼性能の結果について説明する。
図6の(1)の結果に示すように、傾斜角度αが0°、5°、10°、15°、20°、25°のものについては、何れもグリルバーナの各炎口に形成される火炎に揺らぎが少なく、火炎の大きさも形状も安定していたので、〇と評価した。傾斜角度が30°のものについては、火炎が少し揺らいでいたので、△と評価した。傾斜角度が35°のものについては、上記の0°~25°に比べて火炎が小さい上に揺らぎが大きかったので、×と評価した。
【0038】
傾斜角度αを30°以上にすると、炎口面55が燃焼排気の流れの妨げとなってしまい、排気ダクト4内の燃焼排気がグリル排気口39からスムーズに排出されなかった。これにより、グリル庫2内に燃焼排気が留まり、グリル庫2内が酸素不足になってしまったことから、グリルバーナの燃焼性能が低下したものと推測される。
【0039】
アフターバーナ50の燃焼性能の結果について説明する。
図6の(2)の結果に示すように、傾斜角度αが0°のものは、燃焼排気の流れに対して炎口面55が沿っておらず、下流側になるに従って燃焼排気の流れから炎口面55が離れた状態となる。グリル排気口39からは油煙は見られなかったが、臭気が感じられたことから、△と評価した。傾斜角度αが5°、10°のものは、燃焼排気の流れに対して炎口面55が近づいて配置される。グリル排気口39から排出される臭気は、傾斜角度αが0°のものに比べて減少したため、〇と評価した。
【0040】
傾斜角度αが15°、25°のものは、燃焼排気の流れに対して炎口面55が沿うように配置される。これにより、炎口面55に形成される火炎は、燃焼排気の流れに対して直交する方向に向けられる。グリル排気口39からは油煙は排出されず、臭気も殆ど感じられなかったため、◎と評価した。傾斜角度αが30°、35°のものは、燃焼排気の流れに対して炎口面55の後端側が起き上がる。それ故、燃焼排気が炎口面55に十分に接触することから、傾斜角度αが15°、25°のものと同様に、グリル排気口39からは油煙は排出されず、臭気も殆ど感じられなかったため、◎と評価した。
【0041】
以上の(1)と(2)の結果より、傾斜角度αが15°~25°のものにおいては、グリルバーナの燃焼性能を保持しつつ、アフターバーナ50の消炎性能を向上できることが実証された。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のグリル装置1は、グリル庫2、上火バーナ21、下火バーナ22、排気ダクト4、アフターバーナユニット5を備える。グリル庫2は食材を収容する。上火バーナ21と下火バーナ22はグリルバーナであって、グリル庫2内に設けられ、食材を加熱する。排気ダクト4は、グリル庫2の後部から上方に延設され、排気用開口38から流れるグリル庫2内からの燃焼排気を上方へ導く。アフターバーナユニット5は、排気ダクト4内の下部で且つ排気用開口38の後方に設けられる。アフターバーナユニット5は、アフターバーナ50を備える。アフターバーナ50の炎口面55は、前側から後側にかけて斜め上方に傾斜して配置される。炎口面55の水平面に対する傾斜角度は、15°~25°である。これにより、排気用開口38から排気ダクト4内に流れる燃焼排気が、炎口面55に接触し易くなるので、減炎・減臭効果を高めることができる。
【0043】
上記説明において、グリル装置1は本発明の「グリル」の一例である。アフターバーナユニット5は本発明の「アフターバーナ部」の一例である。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態のグリル装置1は、コンロの筐体内に設置されるものであるが、それ単体のグリル装置であってもよい。グリル装置1は、本発明の「グリルバーナ」としての上火バーナ21と下火バーナ22を備えるが、上火バーナ21及び下火バーナ22の何れか一方のみを備えていてもよい。排気ダクト4内において、整流部材57,フレームトラップ110は省略してもよい。
【0045】
整流板571は、略コの字型の整流部材57の一部分であって、排気ダクト4の仕切壁37の背面に右固定部577と左固定部を固定することで、排気ダクト4内の炎口面55の下流側に傾斜して支持されるものであるが、これ以外の方法で整流板571を支持するようにしてもよい。
【0046】
整流板571を仮想的に後側に延ばした延長線Eは、フレームトラップ110の下面の後側の角部であるが、整流板571の傾斜角度は適宜変えてもよい。炎口面55に形成される火炎を燃焼排気に向けて立たせるには、炎口面55に対して後端側が高くなるよう傾斜するのがよい。
【0047】
アフターバーナ50は、バーナ支持部60を固定することでアフターバーナユニット5を構成し、バーナ支持部60を排気ダクト4の底部材40の底面に固定することで、アフターバーナ50を排気ダクト4内の下部に支持するが、これ以外の方法で排気ダクト4内に支持してもよく、例えば、アフターバーナ50を排気ダクト4内に直接固定してもよい。
【0048】
1 グリル装置
2 グリル庫
4 排気ダクト
5 アフターバーナユニット
21 上火バーナ
22 下火バーナ
38 排気用開口
50 アフターバーナ
55 炎口面
110 フレームトラップ
571 整流板
E 延長線