(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】被覆カバー、打設装置、掘削装置、及び、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法
(51)【国際特許分類】
E21B 1/24 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
E21B1/24
(21)【出願番号】P 2021056141
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501085234
【氏名又は名称】大智株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】古木 一功
(72)【発明者】
【氏名】古木 栄一
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-133604(JP,U)
【文献】特開2019-199776(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2214737(KR,B1)
【文献】特開2015-190124(JP,A)
【文献】実開昭52-127605(JP,U)
【文献】特開2017-024129(JP,A)
【文献】登録実用新案第3230025(JP,U)
【文献】特開昭53-100606(JP,A)
【文献】実開平03-040331(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0114514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置に
使用され、
防音材により形成され
た所定の長さ及び幅を有するシート状で、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において、少なくとも前記ハンマ部の外周側面を被覆可能な外套部と、
該外套部に重複配置された所定厚さの遮音性部材であり、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において、同外套部と前記ハンマ部の外周面の間に挟持される内套部と、
前記外套部の形状を筒状に保持可能な連結部と、
前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第1通し部が設けられると共に、該第1通し部の長手方向よりも長尺な第1絞り紐を通して成る構造の第1絞り部と、
前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第2通し部が設けられると共に、該第2通し部の長手方向よりも長尺な第2絞り紐を通して成る構造の第2絞り部と、
を有する被覆部を備える
被覆カバー。
【請求項2】
前記打設装置に使用され、前記被覆部の先部が、同打設装置の先端に設けられて打設対象物を把持可能なチャック部の側面に至る領域の外周部分を覆う態様である
請求項1に記載の被覆カバー。
【請求項3】
前記被覆部は、前記チャック部よりも先部方向となる位置に、同チャック部の挟持部分で挟持する打設対象物の外周の一部又は全部を被覆可能な延長被覆部を有し、該延長被覆部が前記被覆部の方向に引き上げ可能あるいは巻き上げ可能に設けられている
請求項2に記載の被覆カバー。
【請求項4】
前記掘削装置に使用され、前記被覆部の先部が、同掘削装置の先端に設けられたハンマビット部の側面に至る領域の外周部分を覆う態様である
請求項1に記載の被覆カバー。
【請求項5】
前記被覆部が、前記ハンマ部の基端方向に引き上げ可能あるいは巻き上げ可能に設けられた構造である
請求項
1に記載の被覆カバー。
【請求項6】
前記連結部が、前記外套部の長さ方向となる両側の側縁部分に対向して設けられた結着可能な一対の紐体を、同側縁部分に複数設けて成る態様、前記外套部の長さ方向の側縁部分の一方に紐体が配設され、且つ、他方の側縁部分にハトメが配設された態様、又は、前記外套部の長さ方向の側縁部分の一方にオス面が配設され、且つ、他方の側縁部分にメス面が配設された面ファスナー構造による態様、のいずれかにより構成されている
請求項1に記載の被覆カバー。
【請求項7】
ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の打設装置本体と、
少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部であり、防音材により形成された所定の長さ及び幅を有するシート状で、前記打設装置本体への巻着状態において、少なくとも前記ハンマ部の外周側面を被覆可能な外套部、該外套部に重複配置された所定厚さの遮音性部材であり、前記打設装置本体への巻着状態において、同外套部と前記ハンマ部の外周面の間に挟持される内套部、前記外套部の形状を筒状に保持可能な連結部、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記打設装置本体への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第1通し部が設けられると共に、該第1通し部の長手方向よりも長尺な第1絞り紐を通して成る構造の第1絞り部、及び、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記打設装置本体への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第2通し部が設けられると共に、該第2通し部の長手方向よりも長尺な第2絞り紐を通して成る構造の第2絞り部、を有する被覆カバーと、
を備える
打設装置。
【請求項8】
ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置本体と、
少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部であり、防音材により形成された所定の長さ及び幅を有するシート状で、前記掘削装置本体への巻着状態において、少なくとも前記ハンマ部の外周側面を被覆可能な外套部、該外套部に重複配置された所定厚さの遮音性部材であり、前記掘削装置本体への巻着状態において、同外套部と前記ハンマ部の外周面の間に挟持される内套部、前記外套部の形状を筒状に保持可能な連結部、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置本体への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第1通し部が設けられると共に、該第1通し部の長手方向よりも長尺な第1絞り紐を通して成る構造の第1絞り部、及び、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置本体への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第2通し部が設けられると共に、該第2通し部の長手方向よりも長尺な第2絞り紐を通して成る構造の第2絞り部、を有する被覆カバーと、
を備える
掘削装置。
【請求項9】
ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、
防音材により形成された所定の長さ及び幅を有するシート状で、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において、少なくとも前記ハンマ部の外周側面を被覆可能な外套部、該外套部に重複配置された所定厚さの遮音性部材であり、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において、同外套部と前記ハンマ部の外周面の間に挟持される内套部、前記外套部の形状を筒状に保持可能な連結部、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の一方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第1通し部が設けられると共に、該第1通し部の長手方向よりも長尺な第1絞り紐を通して成る構造の第1絞り部、及び、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に設けられ、前記掘削装置又は前記打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能であって、前記外套部の他方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第2通し部が設けられると共に、該第2通し部の長手方向よりも長尺な第2絞り紐を通して成る構造の第2絞り部、を有する被覆部を備える被覆カバーを使用して行う
ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆カバー、打設装置、掘削装置、及び、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法に関する。更に詳しくは、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、作業時に装置外へ生じる騒音を低減することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼矢板やH鋼等(以下「打設対象物」という)の打設作業に使用される装置の一つとして、バイブロハンマが挙げられる。しかしながら、バイブロハンマ及びこれを使用した打設作業においては、バイブロハンマの構造に起因する土中深くに打設対象物を打設するための打撃力不足と、バイブロハンマの稼働時の共振に起因する吊下機の破損の頻発、という課題が存在した。そこで、このようなバイブロハンマの課題を解決すべく、本発明者は特許文献1に示すような打設装置、打設機、及び、打設方法(以下「特許文献1記載の打設装置等」という)を提案した。
【0003】
特許文献1記載の打設装置等は、先端に被嵌挿部が設けられたシリンダー、および、該シリンダー内に配置され、圧縮空気によって同シリンダーの軸方向に往復動する打撃ピストンを有し、往復動状態にある同打撃ピストンのストロークが、被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定された構造のハンマ部と、被嵌挿部に嵌挿され、打撃ピストンで打撃されると共に、ハンマ部の軸方向へ所定のストロークで進退可能な可動継手部と、同可動継手部に取り付けられ、打設対象物を挟持可能で、挟持した同打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部を備える構造である。特許文献1記載の打設装置等によれば、充分な打撃力を以て打設対象物を打設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の打設装置は、チャック部で挟持した打設対象物を打撃ピストンの打撃力を以て打撃するハンマ部を有する、いわゆるダウンザホールハンマ式の装置であるが、本発明者が特許文献1記載の打設装置等を運用したところ、打設対象物の打設作業時に前述の打撃に起因する騒音が生じ、商業地や住宅地での施工において支障が生じる可能性がありうることが判明した。
【0006】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、作業時に装置外へ生じる騒音を低減することができる、被覆カバー、打設装置、掘削装置、及び、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の被覆カバーは、ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を備える。
【0008】
ここで、前述した被覆部は、主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、掘削装置又は打設装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【0009】
なお、被覆部は、例えば、メンテナンス性等を考慮して着脱可能な構造なものが挙げられるが、これに限定するものではなく、離脱しない構造のものを除外するものではない。また、被覆部は、例えば、シート状で打設装置を覆うように巻着するものが挙げられるが、これに限定するものではなく、例えば、打設装置の外径よりと略同じ内径を有する単なる筒形状のもの等であってもよい。
【0010】
また、打設装置に使用され、被覆部の先部が、同打設装置の先端に設けられて打設対象物を把持可能なチャック部の側面に至る領域の外周部分を覆う態様である場合は、主たる騒音発生源となるハンマ部及びチャック部、そして、その間の接続箇所を含む領域(例えば可動継手部)が覆われることにより、打設装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。加えて、仮に前述の接続箇所から圧縮空気(とこれに含まれる潤滑油)が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することを抑制することができる。
【0011】
なお、前述した可動継手部は、接続軸を有し、同接続軸をハンマ部先部に嵌挿することによって接続し、接続軸がシリンダーの被嵌挿部内で進退動する構造である。加えて、可動継手部は、接続軸の反対側に被接続部を有し、チャック部と接続することができる。つまり、可動継手部は、ピストンの往復動による高速かつ連続的な打撃力をチャック部に伝達するものである。
【0012】
また、被覆部は、チャック部よりも先部方向となる位置に、同チャック部の挟持部分で挟持する打設対象物の外周の一部又は全部を被覆可能な延長被覆部を有し、同延長被覆部が被覆部の方向に引き上げ可能あるいは巻き上げ可能に設けられている場合は、打設装置の稼働時に生じる騒音を更に低減することができる。
【0013】
前述の通り、ハンマ部からチャック部に至る領域の外周部分を被覆部で覆うことで、主たる騒音発生源はカバーされているが、チャック部と打設対象物の挟持部分からも騒音が漏れ、挟持した打設対象物に伝達する打撃に起因して打設対象物からも騒音が生じうる。
【0014】
しかし、この延長被覆部によれば、チャック部と打設対象物の挟持部分や、挟持した打設対象物も被覆することができるので、これらに起因する騒音が周囲に漏れないようにして低減することができる。
【0015】
更に、打設作業が進み、打設対象物が地中に埋設されて短くなった際には、延長被覆部を被覆部の方向に引き上げるか、あるいは、巻き上げることにより、延長被覆部が打設対象物と共に地中に巻き込まれて破損したり、作業の邪魔になったりしないようにすることができる。
【0016】
つまり、本発明の被覆カバーによれば、その稼働で生じる打設装置の側部方向からの騒音を被覆部で低減させ、かつ、打設装置の先部方向から漏出する騒音を延長被覆部で低減することができ、作業の安全性も確保することができる。
【0017】
なお、延長被覆部は、一例として、打設対象物等を巻くような筒状の態様が挙げられ、他の例として、長手方向の先部が自由端である複数の垂れ幕状の幕部分、及び、隣接する同幕部分の間に設けた結合具を有し、結合具によって隣接する幕部分を繋いで筒状にすることができる態様が挙げられるが、この態様に限定するものではなく、他の態様を除外するものではない。
【0018】
また、掘削装置に使用され、被覆部の先部が、同掘削装置の先端に設けられたハンマビット部の側面に至る領域の外周部分を覆う態様である場合は、主たる騒音発生源となるハンマ部及びハンマビット部、そして、その間の接続箇所を含む領域が覆われることにより、掘削装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。加えて、仮に前述の接続箇所から圧縮空気(とこれに含まれる潤滑油)が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することを抑制することができる。
【0019】
また、被覆部が、ハンマ部の基端方向に引き上げ可能あるいは巻き上げ可能に設けられた構造である場合は、掘削装置の稼働時に生じる騒音を更に低減することができる。同被覆部によれば、掘削装置による掘削作業が進んだ際には、被覆部の先部をハンマ部の基端方向に引き上げるか、あるいは、巻き上げることにより、被覆部の先部が地中に巻き込まれて破損したり、作業の邪魔になったりしないようにすることができる。つまり、本発明の被覆カバーによれば、その破損を抑制し、作業の安全性も確保することができる。
【0020】
また、被覆部が、所定の長さ及び幅を有するシート状で、掘削装置又は打設装置への巻着状態において、少なくともハンマ部の外周側面を被覆可能な外套部と、同外套部に重複配置された所定厚さの遮音性部材であり、掘削装置又は打設装置への巻着状態において、同外套部とシリンダーの外周面の間に挟持される内套部と、外套部の形状を筒状に保持可能な連結部と、外套部の一方の幅方向端縁近傍に設けられ、掘削装置又は打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能な第1絞り部と、外套部の他方の幅方向端縁近傍に設けられ、掘削装置又は打設装置への巻着状態において筒状となった外套部の当該部分を縮径可能な第2絞り部と、を有する場合は、被覆カバーの着脱容易性が向上すると共に、騒音の抑止効果が向上している。
【0021】
詳しくは、外套部が、前述した構成のシート状であることにより、筒状のものと比較して、ハンマ部に巻くようにして取り付けることができ、逆の手順で外すこともできるので、被覆カバーの着脱作業が容易なものとなっている。なお、外套部を構成する材料としては、耐候性、耐水性及び耐摩耗性を有する合成樹脂シート等が好適に使用されるが、これに限定するものではなく、例えば、ゴムシートや帆布等の公知部材であってもよい。そして、連結部は、外套部をハンマ部に巻いた際に、同外套部の形状を筒状に保持することができ、筒状の被覆カバーを以てハンマ部の側部外周を囲むことができる。
【0022】
内套部は、前述した構成であることにより、例えば、遮音性に優れるものの、耐摩耗性や耐候性等が若干劣る発泡ウレタン等の遮音性部材を採用したとしても、外套部に覆われることで内套部が外部に露出しないようにすることができる。これにより、例えば、遮音性部材のみで形成された被覆カバーと比較して、被覆カバー全体としての製品寿命を延ばすことができる。また、内套部を外套部と分けることで、内套部又は外套部のいずれかのみが劣化したときも、劣化したもののみ交換するメンテナンスを行うこともでき、分離不可で全部交換をしなければならない被覆カバーと比較して、運用コストの低減化を期待することができる。
【0023】
第1絞り部は、前述した構成であることにより、筒状となった外套部の一方の幅方向端縁近傍を縮径(「絞る」とも換言できる)することで、同部分からの音漏れを抑制することができる。第2絞り部は、前述した構成であることにより、筒状となった外套部の他方の幅方向端縁近傍を縮径(「絞る」とも換言できる)することで、同部分からの音漏れを抑制することができる。このように、第1絞り部と第2絞り部は、前述した作用が相俟って、被覆カバーの両端方向から漏れる騒音を低減することができる。
【0024】
また、第1絞り部は、外套部の一方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第1通し部が設けられると共に、同第1通し部の長手方向よりも長尺な第1絞り紐を通して成る構造であり、第2絞り部は、外套部の他方の幅方向端縁近傍に亘って形成された筒状の第2通し部が設けられると共に、同第2通し部の長手方向よりも長尺な第2絞り紐を通して成る構造である場合は、着脱容易性が更に向上すると共に、騒音の抑止効果が更に向上している。
【0025】
詳しくは、第1絞り部が前述の構成であることにより、第1絞り紐を絞る(場合によっては更に結び締める)ことで、被覆部の一端側を縮径する取り付け作業を素早く且つ容易に行うことができ、作業性が良い。加えて、掘削装置又は打設装置の外周面と、被覆部における第1絞り部との隙間がほとんど空かないようにすることができるので、第1絞り部の部分から漏れる騒音の抑止効果が更に向上している。
【0026】
そして、第2絞り部についても、前述の第1絞り紐と同様に、被覆部の他端側を縮径する取り付け作業を素早く且つ容易に行うことができて作業性が良く、被覆部における第2絞り部の部分から漏れる騒音の抑止効果が更に向上している。
【0027】
また、連結部が、外套部の長さ方向となる両側の側縁部分に対向して設けられた結着可能な一対の紐体を、同側縁部分に複数設けて成る態様、外套部の長さ方向の側縁部分の一方に紐体が配設され、且つ、他方の側縁部分にハトメが配設された態様、又は、外套部の長さ方向の側縁部分の一方にオス面が配設され、且つ、他方の側縁部分にメス面が配設された面ファスナー構造による態様、のいずれかにより構成されている場合は、掘削装置又は打設装置へ巻着する被覆カバーの着脱容易性が更に向上する。
【0028】
詳しくは、連結部が、前述した結着可能な一対の紐体を同側縁部分に複数設けて成る態様である場合は、側縁部分を挟んで対向する各紐体を結着するだけで済み、着脱容易で作業性が良く、また、構造が簡易であるため、製造コスト抑制を図ることができる。
【0029】
連結部が、紐体とハトメが配設された態様である場合は、側縁部分を挟んで対向するハトメに紐体を通して留めるだけで済み、着脱容易で作業性が良く、また、構造が簡易であるため、製造コスト抑制を図ることができる。
【0030】
連結部が、面ファスナー構造による態様である場合は、外套部の長さ方向の側縁部分の一方に設けたオス面と、他方の側縁部分に設けたメス面とを合わせるだけで済み、着脱容易で作業性が良く、また、構造が簡易であるため、製造コスト抑制を図ることができる。
【0031】
上記の目的を達成するために本発明の打設装置は、ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の打設装置本体と、防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を有する被覆カバーと、を備える。
【0032】
ここで、打設装置本体は、前述の構成であることにより、ケーシング内に供給する作動流体(例えば圧縮空気)を以て軸方向に往復動するピストンで駆動するハンマ部によって、いわゆるダウンザホールハンマ式の打設工事を行うことができる。なお、打設工事は、打設装置の先部に取り付けるチャック等で矢板等を把持し、同矢板等を地面に打設するものである。
【0033】
ところで、同工事では、駆動するピストンによって主にハンマ部から衝撃音や駆動ノイズ等が発生するが、前述した被覆カバーが主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、打設装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【0034】
上記の目的を達成するために本発明の掘削装置は、ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置本体と、防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を有する被覆カバーと、を備える。
【0035】
ここで、掘削装置本体は、前述の構成であることにより、ケーシング内に供給する作動流体(例えば圧縮空気)を以て軸方向に往復動するピストンで駆動するハンマ部によって、いわゆるダウンザホールハンマ式の掘削工事を行うことができる。なお、掘削工事は、掘削装置の先部に取り付けるハンマビット部で地面を掘削するものである。
【0036】
ところで、同工事では、駆動するピストンによって主にハンマ部から衝撃音や駆動ノイズ等が発生するが、前述した被覆カバーが主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、掘削装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【0037】
上記の目的を達成するために本発明のダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法は、ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部を有するダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を有する被覆カバーにより行うものである。
【0038】
前述の構成であるいわゆるダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置を使用した工事を行うと、駆動するピストンによって主にハンマ部から衝撃音や駆動ノイズ等が発生するが、前述した被覆カバーが主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、掘削装置又は打設装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の被覆カバー、打設装置、掘削装置、及び、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置の騒音低減化方法によれば、ダウンザホールハンマ式の掘削装置又は打設装置において、作業時に装置外へ生じる騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の打設装置であり、(a)は同打設装置に被覆カバーを適用した説明図であり、(b)は(a)に示す被覆カバーの展開状態を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す打設装置本体の構造を示す説明図である。
【
図3】本発明に係る第2実施形態の打設装置であり、(a)は同打設装置に被覆カバーを適用した説明図であり、(b)は(a)に示す被覆カバーの展開状態を示す説明図であり、(c)は延長被覆部を捲り上げた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、〔第1実施形態〕、〔第2実施形態〕、〔第3実施形態〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0042】
〔第1実施形態〕
図1(a)に示す打設装置1は、打設装置本体2と、被覆カバー3を備える。各部について、以下で詳述する。
【0043】
(打設装置本体2)
図1(a)と
図2を参照する。打設装置本体2は、ハンマ部21、ハンマ部21の基端に取り付けられたウエイト部22、ハンマ部21の先端に取り付けられた可動継手部23、可動継手部23に取り付けられたスペーサ部24、およびスペーサ部24に取り付けられたチャック部25を有する。
【0044】
ハンマ部21は、機外にあるコンプレッサー(図示省略)から供給される圧縮空気を動力として駆動する、いわゆるエアハンマであり、前述の「ケーシング及び該ケーシング内に供給する作動流体を以て軸方向に往復動可能に格納されたピストンを含む構造のハンマ部」に相当する。
【0045】
このハンマ部21は、圧縮空気の圧力を上げると打撃ピストン(図示省略、以下同じ。前述の「ピストン」に相当)の往復動の速度が速く(即ち、打撃速度が速く)なる一方、圧縮空気の圧力を下げると打撃ピストンの往復動の速度が遅く(即ち、打撃速度が遅く)なる構造であり、打撃速度を容易に調節することができる。なお、本実施形態では、打設装置の構成は前述の通りであるが、コンプレッサーがハンマ部あるいは他の構造部と一体になった打設装置を除外するものではない。
【0046】
ハンマ部21は、円筒形のケーシング210の内部に、ケーシング210内を軸方向に往復動する筒状の打撃ピストンを有し、そのほかにも、チェックバルブ、エアディストリビュータ、バルブスプリング、メイクアップリング、O-リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング等(いずれも図示省略)を有する構造であり、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば、特開昭61-92288号公報記載)とほぼ同様の構造である。
【0047】
ハンマ部21の動作を簡単に説明する。ケーシング210に流入した圧縮空気は、まず、打撃ピストン側面に形成された通気溝を通過してケーシング210の先端側(
図2の下側)に回り、これにより、打撃ピストンがケーシング210の基端側(
図2の上側)へ移動する(本実施形態においては「打撃ピストンが上昇する(または跳ね上がる)」とも換言できる)。
【0048】
次に、この打撃ピストンの移動に伴って、後述する可動継手部23の接続軸231基端(
図2における接続軸231上端)と打撃ピストン先端との間に隙間が生じ、この隙間から打撃ピストンを押し上げた圧縮空気が、打撃ピストン下端開口部から打撃ピストン内に流入する。
【0049】
そして、打撃ピストンに流入した圧縮空気は、接続軸231基端に形成された開口部から接続軸231内に流入して通過し、ハンマ部21側から可動継手部23側へ移動して、後述するスペーサ部24内に形成された空間部(図示省略)内へ排出される。その後、打撃ピストンは、ケーシング210の先端側(
図2の下側)へ移動(下降または落下)する。
【0050】
この動作の繰り返しによりケーシング210内を打撃ピストンが往復動し、打撃ピストンが先端側へ移動(落下)した際の衝撃で生じる打撃力を以て可動継手部23が稼動する。
【0051】
また、ハンマ部21は、基端側(
図2でハンマ部21の上側)に連結ジョイント212が設けられている。六角柱状に形成された連結ジョイント212は、基部がハンマ部21に固着されていると共に、先部に開口部が形成され、同開口部と連通して通気可能な通気路(図示省略)が連結ジョイントの軸方向に沿って設けられている。そして、ハンマ部21の通気路の他端は、ケーシング210内部へ開口して連結ジョイント212内と連通している。
【0052】
ウエイト部22は、ハンマ部21の基端(換言すると、ハンマ部21において可動継手部23とは反対側となる位置。
図1、
図2でハンマ部21の上段)に連設されている。ウエイト部22は、軸方向に沿って通気可能な通気路222が形成された所定長さの円柱状の金属塊であるウエイト本体221と、ウエイト本体221の先端側に前述した連結ジョイント212を嵌挿可能な受け穴223と、ウエイト本体221の基端側に設けられた六角柱状の連結ジョイント224を有する。通気路222は、連結ジョイント224の基端から受け穴223まで通気可能に設けられている。
【0053】
そして、ハンマ部21は、先端側(
図1、
図2でハンマ部21の下側)に可動継手部23が嵌装されている。可動継手部23は、ハンマ部21の先端に軸方向へ所定のストロークで進退可能に取り付けられ、打撃ピストンで打撃される構造である。より詳しくは、可動継手部23は、打撃ピストンからの打撃力を基端で受ける接続軸231と、接続軸231の先端に設けられたフランジ状の第1接続板232を有する。なお、接続軸231は、前述したハンマビットリティーナリングとOリングにより、ハンマ部21側から外れないように装着されている。
【0054】
接続軸231は、ケーシング210内に嵌挿可能な外径に形成された筒状で、基端に開口部が形成された自由端であると共に、先端が第1接続板232に連設されている。そして、接続軸231は、第1通気路及び第2通気路が設けられている(図示省略)。
【0055】
第1通気路は、接続軸231の基端から第1接続板232の裏面に至る通気可能な流路であり、ケーシング210外と連通した第1開口孔、及び、打撃ピストンの復動時にケーシング210内と連通する構造の第2開口孔が形成されている(図示省略)。なお、第1通気路内には、スペーサ部24方向に流通する圧縮空気の逆流を防止可能な逆止弁(図示省略)を設けてある。
【0056】
第2通気路は、第1通気路と連通した第3開口孔、及び、接続軸231とその被嵌挿部の間の空隙と連通する構造の第4開口孔が形成されている(図示省略)。第2通気路は、縦断面視で、接続軸231外面から第1通気路に向かって下り傾斜するように形成されており、かつ、横断面視で、接続軸231の周方向に等間隔に合計4本形成されている。
【0057】
接続軸231は、外周面の軸線方向中間から第1接続板232側の領域に、接続軸231の軸方向に沿った複数本のスプライン軸が形成されている。このスプライン軸は、ケーシング210への嵌挿時においてケーシング210内周面に形成された凹溝と嵌合して周方向への回転を防止し、進退方向への動きをガイドすることができる。第1接続板232は、角丸長方形であり、中央に設けられた接続軸231と角丸となった短辺側の外周縁との間の領域に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴(図示省略)が複数(本実施形態では3つずつ、合計6つ)形成されている。
【0058】
スペーサ部24は、可動継手部23とチャック部25の間に取り付けられ、可動継手部23とチャック部25を所定間隔で接続する構造である。より詳しくは、スペーサ部24は、筒状の胴部241と、胴部241の基端側(
図1、
図2でスペーサ部24の上側)に設けられたフランジ状の角丸長方形の板である第2接続板242と、胴部241の先端側(
図1、
図2でスペーサ部24の下側)に設けられたフランジ状の矩形板である第3接続板243と、胴部241の外周面から放射状に突出する複数の板状部材で、第2接続板242と第3接続板243の間に配設された複数の補強リブ244を有する。
【0059】
胴部241は、側壁の1箇所(
図2における左側)に通気穴(図示省略)が形成され、同通気穴には排気ホース245が接続され、通気穴と排気ホース245により、ハンマ部21から可動継手部23を介して胴部241内に流入した圧縮空気を外部に排出することができる。
【0060】
第2接続板242は、外形が可動継手部23の第1接続板232と略同じ大きさであり、略中央に胴部241内の空間に貫通(連通)する通気穴(図示省略)が形成されている。この通気穴は、可動継手部23の第1接続板232と接続した際に、第1通気路の第1開口孔と連通する。
【0061】
また、第2接続板242は、第2接続板242の通気穴から外周縁との間の領域で、かつ可動継手部23に設けられたボルト挿通穴と対応する位置に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴(図示省略)が形成されている。そして、可動継手部23とスペーサ部24は、可動継手部23のボルト挿通穴とスペーサ部24のボルト挿通穴246の位置を合わせて連通させ、各穴にボルトBを嵌挿してナットNで締着させて接続している。
【0062】
第3接続板243は、外形が後述するチャック部25の第4接続板252と略同じ大きさに形成されている。また、第3接続板243は、短辺側外周縁近傍の領域に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴(図示省略)が形成されている。なお、第3接続板243は、その外形やボルト挿通穴の配置を変更したものを使用することで、後述するチャック部25以外の異なる形状のチャック部を接続することができるようにすることもできる。
【0063】
補強リブ244は、
図2に示すように、上端が第2接続板242の下面に固着され、下端が第3接続板243の上面に固着されている。補強リブ244は、この位置に設けられていることによって、ハンマ部21からの荷重またはチャック部25からの反力で第2接続板242又は第3接続板243、胴部241が圧壊しないように補強すると共に、ハンマ部21から受けた打撃力をロス無く伝達することができる。
【0064】
チャック部25は、スペーサ部24に取り付けられ、打設対象物Aを挟持可能で、挟持した打設対象物Aに打撃を加える構造である。より詳しくは、チャック部25は、本体部251と、本体部251の基端側(
図1、
図2でチャック部25の上側)に設けられたフランジ状の矩形板である第4接続板252と、本体部251の先端側(
図2でチャック部25の下側)に設けられた把持爪部253を有する。
【0065】
第4接続板252は、外形が可動継手部23の第3接続板243と略同じ大きさに形成されている。また、第4接続板252は、短辺側外周縁近傍の領域で、かつ、可動継手部23に設けられたボルト挿通穴と対応する位置に、表面から裏面に貫通したボルト挿通穴(図示省略)が形成されている。そして、スペーサ部24とチャック部25は、スペーサ部24のボルト挿通穴とチャック部25のボルト挿通穴の位置を合わせて連通させ、各穴にボルトBを嵌挿してナットNで締着させて接続している。
【0066】
把持爪部253は、油圧式であり、対抗する爪を有し、一方の爪(不動)に対して他方の爪(可動)が進退する構造(挟持部分が1つ)である。しかしながら、当該態様に限定するものではなく、例えば、機械式または空気式のもの等であってもよいし、鋼管の端面を、直径方向で対向する厚み部分を挟んで掴めるように、挟持部分が2つあるもの等であってもよい。また、チャック部25は、把持爪部253の作動方向(挟持方向)と、可動継手部23の第1接続板232の長手方向が一致するように取り付けられている。
【0067】
(被覆カバー3)
被覆カバー3は、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆う部材で、防音材を有するものである(
図1参照)。つまり、被覆カバー3は、前述した「防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を有する」と共に、「被覆部の先部がチャック部の側面に至る領域の外周部分を覆う」構造である。
【0068】
被覆カバー3は、使用状態で高さ方向となる方向に長尺な外套部31と、外套部31に重複して貼設された内套部32と、外套部31の長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材33と、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部34と、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部35と、を有する。
【0069】
外套部31は、耐候性、耐摩耗性、耐水性及び遮音性を有する合成樹脂製シートにより形成されている。外套部31は、その幅方向(本実施形態においては短尺方向)の長さが、ハンマ部21等への巻着状態において、高さ方向となる側縁部分が相互に僅かに重なる長さに形成されている。
【0070】
内套部32は、遮音性を有する所定の厚さの連続発泡構造の合成樹脂材であり、ハンマ部21等への巻着状態において、内側となる面(換言すると、外套部31のハンマ部21等に向く面)に貼設され、外套部31よりもやや小さい大きさである。
【0071】
連結部材33は、ハンマ部21等への巻着状態において、外套部31の高さ方向となる各側縁部分を結着可能な長さの紐体により構成されている。つまり、連結部材33は、前述した「外套部の形状を筒状に保持可能な連結部」に相当し、かつ、「連結部が、外套部の長さ方向となる両側の側縁部分に対向して設けられた結着可能な一対の紐体を、同側縁部分に複数設けて成る態様により構成されている」構造である。
【0072】
上部絞り部34は、外套部31上縁部分に亘って形成された筒状部分に、同筒状部分の長手方向よりも長い絞り紐を通して成る構造である。下部絞り部35は、外套部31下縁部分に亘って形成された筒状部分に、同筒状部分の長手方向よりも長い絞り紐を通して成る構造である。つまり、上部絞り部34は、前述した「第1絞り部」に相当し、下部絞り部35は、前述した「第2絞り部」に相当する構造である。
【0073】
本実施形態において、連結ジョイント212は、ウエイト部22に接続されているが、これに限定するものではなく、例えば、ウエイト部22を外して、吊下軸体26に直接接続することもできる。
【0074】
本実施形態において、ウエイト部22は前述の構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、筒状のウエイト本体に、ウエイト本体の内径よりも小さな外径を有する通気管を通し、ウエイト本体の内壁と通気管の外壁の間に砂や液体等を適宜充填して重量を調節可能な構造にしたものであってもよい。また、本実施形態において、ウエイト部22は1つであるが、これに限定するものではなく、例えば、同じ構造のウエイト部を複数接いだ態様であってもよいし、短尺に設けたウエイト部を複数接いで、所望の重量に調節できるようにした態様であってもよい。
【0075】
本実施形態では、可動継手部23の第2通気路は合計4本が等間隔で形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、2本乃至3本であってもよいし、5本以上であってもよく、また、等間隔でない態様を除外するものではない。また、本実施形態では、第2通気路は、接続軸231外面から第1通気路に向かって下り傾斜するように形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、接続軸231外面から第1通気路に向かって水平な態様、あるいは、上り傾斜な態様を除外するものではない。
【0076】
本実施形態では、可動継手部23とスペーサ部24を別部材としているが、これらは一体に設けた態様であってもよい。しかしながら、接続軸は摩損するために交換頻度が比較的高いのに対し、その他の部分はこれよりも交換頻度が低く、接続軸の交換タイミングで全ての部分を含む全体を交換することは合理的ではないため、可動継手部23とスペーサ部24とが分割可能な構造にすることが好ましい。
【0077】
本実施形態では、打設対象物AがH型鋼であるが、これに限定するものではなく、例えば、鋼板や矢板、杭等が挙げられ、チャック部25で直接又は(アタッチメント等を介して)間接的に挟持可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0078】
本実施形態において、連結部材263は、外套部31の長手方向となる両側の側縁部分にそれぞれ設けた紐体により構成されるが、これに限定するものではなく、例えば、一方の側縁部分に紐体を配設し、他方の側縁部分にハトメを配設した態様であってもよい。更に、連結部材は、ハンマ部21等に巻着した外套部31が容易に展開しない(外れない)構造であればよく、例えば、一方の側縁部分にオス面を配設すると共に、他方の側縁部分にメス面を配設した面ファスナー構造等の態様であってもよい。
【0079】
(打設装置1の作用、及び、打設装置1を使用した打設方法)
打設装置1の作用、及び、打設装置1を使用した打設方法について説明する。なお、打設装置1は、クレーン車(図示省略)で吊下して使用する。クレーン車は、ブームと、ブームの先部に取り付けた吊下軸体26と、自走可能な車体を有する、クレーン車は、打設装置1を、チャック部25を下向き(即ち、地面に向き)に、かつ、ハンマ部21の軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げ可能なものである。なお、クレーンは、移動式のクレーン車のみならず、固定式のクレーンであってもよい。
【0080】
吊下軸体26は、ブームから繰り出されるワイヤ(符号省略)によって吊り下げる高さが調節される。また、吊下軸体26には供給管261が接続されており、この供給管261を介して外部のコンプレッサー(圧縮空気の供給源)からハンマ部21へ圧縮空気が供給される。
【0081】
更に、打設装置1は、打設装置1及びクレーン車3の近傍に配置されたタンク(図示省略)に接続して使用する。タンクは、排気ホース245を介して、打設装置1の胴部241に接続されている。タンクは、打設装置1において打撃ピストンを駆動し、ハンマ部21側から胴部241に流入した圧縮空気と潤滑油が、排気ホース245を介して流入し、これらを受ける構造となっている。
【0082】
(1)打設装置1を作業場所に移動する。吊下軸体26を介して、クレーン車と打設装置本体2を接続する(
図1参照)。そして、供給管261を介して、打設装置本体2とコンプレッサー(機外。図示省略)を接続する。加えて、打設装置本体2とコンプレッサーとの間の経路に、又は、別経路であって打設装置本体2に接続された経路に、潤滑油を供給するためのラインオイラーを接続する。
【0083】
このとき、被覆部26は、
図1(b)に示す展開状態から、内套部32を内側にして、ハンマ部21、ウエイト部22、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材33を相互に結着して取り付ける(
図1(a)(b)参照)。そして、上部絞り部34と下部絞り部35の絞り紐を絞って結ぶ。
【0084】
(2)チャック部25により打設対象物Aを挟持する(
図1、
図2参照)。次いで、クレーン車で打設装置1を吊り上げ、打設対象物A及びチャック部25を打設予定箇所である地面Gに向け、かつ、地面Gに対してケーシング210と打設対象物Aの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、ケーシング210と打設対象物Aの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットする(
図1参照)。
【0085】
(3)コンプレッサー及びラインオイラーから圧縮空気及び潤滑油を供給する。これにより、打撃ピストンがケーシング210の軸方向に往復動(上下動)し、挟持した打設対象物Aに対して上方向からの打撃力が伝達される。このとき、打設装置本体2の重量による地面方向への押圧力も付加される。つまり、打設対象物Aは、自身の重量に打設装置1の重量が加わり、更に打設装置本体2による打撃力が加わることで、地面Gに対し、より安定的に打設される。
【0086】
(4)ハンマ部21は、そのケーシング210によって、内部に打撃ピストンを格納すると共に、導入直後の圧縮空気がケーシング210外に漏出しない。更に、ハンマ部21は、ケーシング210内に供給される圧縮空気を動力源として、打撃ピストンがケーシング210内を軸方向に往復動する。
【0087】
(5)可動継手部23は、接続軸231がケーシング210の被嵌挿部内で進退動する。そして、接続軸231は、その基端部分に対して、往動した打撃ピストンの先端部分が衝突することで打撃力が生じ、接続軸231(を含む可動継手部23の全体)がケーシング210と反対方向に進出し、その後、接続軸231はケーシング210内に後退する。この接続軸231の往復動は、前述した打撃ピストンの往復動に伴って、高速かつ連続的に行われる。
【0088】
そして、可動継手部23は、その第1接続板232を介してスペーサ部24(の第2接続板242)と接続している。この結果、可動継手部23は、その往復動による打撃力がスペーサ部24に伝達される。
【0089】
可動継手部23は、打撃ピストンを往動させた後にケーシング210内に滞留する圧縮空気を、打撃ピストンが復動時する際にケーシング210内と連通する第2開口孔から第1開口孔へ通過させ、ケーシング210外に排気することができる。この排気によってケーシング210内の気圧が低下し、次回の打撃ピストンの往動に繋がると共に、新たな圧縮空気が流入可能となる。
【0090】
更に、ケーシング210内の被嵌挿部(換言すると、ケーシングの先部)と第1通気路は、可動継手部23の第2通気路を介し、常時連通している。この第2通気路と第1通気路との連通状態において、ケーシング210内における被嵌挿部と接続軸231の隙間に向かう圧縮空気が、第4開口孔を通じて第2通気路に流入し、第2通気路を通過して第3開口孔に至って第1通気路に通過する。
【0091】
つまり、被嵌挿部と接続軸231の隙間に至った圧縮空気は、第2通気路を経て第1通気路に抜けることで同隙間内における過剰な気圧上昇が抑止され、ハンマ部21と可動継手部23の接続箇所(すなわち、ケーシング210の先端箇所)で生じうる圧縮空気の漏出可能性が低減する。そして、この圧縮空気の漏出可能性の低減に伴い、ケーシング210内に供給された潤滑油が圧縮空気と共にケーシング210の先端から漏出し、周囲を汚染する可能性も低減する。
【0092】
第1通気路は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが円滑な構造となっている。第2通気路は、前述の構成であることにより、比較的加工が容易であり、圧縮空気の通りが常時(すなわち、打撃ピストンの往復時かつ接続軸231の進退時のいずれの間でも)円滑な構造となっている。
【0093】
なお、この第2通気路は、その形成に高度な加工精度が不要である(換言すると、高度な部品精度が要求されない)ため、製造効率の向上、あるいは、製造コストの低減化を図ることができる。ところで、高度な部品精度による流路開閉機構の場合、摩耗劣化により稼働不能になるおそれがあるが、前述の第4開口孔の構成によれば、製品が摩耗により多少劣化した場合でも稼働可能であることから、分解整備や頻繁な部品交換といったメンテナンスの頻度を減らすこともでき、作業負担の軽減化を図ることができる。
【0094】
(6)スペーサ部24は、可動継手部23とチャック部25を所定間隔で接続する。詳しくは、スペーサ部24は、第2接続板242を以て可動継手部23に接続し、第3接続板243を以てチャック部に接続する。そして、スペーサ部24は、可動継手部23から伝達される衝撃力でチャック部25が傷まないように衝撃を緩和しつつも、可動継手部23からの衝撃力をチャック部25に伝達する。
【0095】
また、胴部241は、気密である周壁によって、第1開口孔から流入した排気(圧縮空気)が通気穴以外の箇所から漏出しないので、圧縮空気と共に流入する潤滑油も周囲に拡散しないようになっている。更に、スペーサ部24は、通気穴に接続された排気ホース245を介して、排気ホース245に接続されたタンクで、排出された圧縮空気(排気)及び潤滑油を回収することができる。これにより、打設装置1は、その周囲の汚染可能性を更に低減している。
【0096】
(7)チャック部25は、第4接続板252を以てスペーサ部24と接続し、スペーサ部24を介してハンマ部21からの打撃力が伝達される。また、チャック部25は、把持爪部253によって打設対象物Aを挟持し、伝達された打撃力を以て、打設対象物Aを地面Gへ打設する(
図1(a)、
図2参照)。
【0097】
(8)ウエイト部22は、ハンマ部21の全体重量を増加させることができ、これにより、荷重も加わって打設装置の打撃力を向上させ、打設対象物Aを地中深くまで打設することができる(
図1(a)、
図2参照)。なお、ウエイト部22をハンマ部21から外すことで、打設装置1の全体重量の軽量化及び短尺化を図ることができ、運搬や保管の際の利便性が向上する。
【0098】
(9)被覆カバー3は、打設装置1の稼働時において、ハンマ部21と可動継手部23の接続箇所を含む領域が覆っていることから、仮に同接続箇所から圧縮空気及びこれに含まれる潤滑油が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することがない。なお、被覆カバー3は、これを取り付ける際に、上部絞り部34と下部絞り部35を絞っていることで、打設装置1の稼働時に、被覆カバー3が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出や潤滑油漏出も抑制する。
【0099】
そして、被覆カバー3は、主たる騒音発生源となるハンマ部21からチャック部25に至る領域を覆っていることにより、打設装置1の稼働時に生じる騒音を低減する。また、被覆カバー3は、着脱可能な構造であるため、メンテナンス時には容易に取り外すことができてメンテナンス性が良く、また、打設装置1の運搬時や保管時には、取り外すことで、引っ掛ける等して被覆カバー3が破れることを防止することができる。
【0100】
なお、被覆カバー3は、下部絞り部35の紐を解くと共に、下方に位置する連結部材33の一部の紐を解くことで、被覆カバー3の下端をハンマ部21の基端方向に引き上げるか又は巻き上げることができる構造であるため、被覆カバー3の下部が作業の邪魔になるようであれば適宜調整することができる。これにより、被覆カバー3全体を外す必要はなく、打設装置1稼働時の騒音を低減すると共に、作業性を向上させている。
【0101】
(10)このように、打設装置1及びこれを使用した打設方法は、前述した構成の各部が協働することにより、ケーシング210内を往復動する打撃ピストンの打撃力を以て、チャック部25で挟持した打設対象物Aを打設することができ、加えて、作業時における打設装置1の周囲の汚染可能性を低減することができる。また、この打設装置1および打設方法によれば、ディーゼルハンマ式や油圧ハンマ式の打設装置と比較しても、作業時における振動および騒音の発生を低減することができる。
【0102】
そして、打設装置1およびこれを使用した打設方法によれば、従前の振動方式のバイブロハンマよりも強い打撃力による打設が可能で、かつ、稼働時の共振に起因する吊下機の破損を招くことがない。更に、打設装置1は、ハンマ部21の動力が圧縮空気である(いわゆるエアハンマ式である)ため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができ、また、作動流体の生成及び排出の際における環境負荷が抑制されたものとなっている。
【0103】
更に、打設装置1およびこれを使用した打設方法によれば、前述した構造のいわゆるダウンザホールハンマ式である掘削装置1において、ハンマ部21を含む打設装置本体2の外周部分を覆う被覆カバー3を取り付けたことで、掘削装置1の騒音低減化方法を実現することができる。
【0104】
〔第2実施形態〕
(打設装置1a)
図3(a)、(c)に示す打設装置1aは、本発明の実施の一形態(第2実施形態)である。打設装置1aは、打設装置本体2と、被覆カバー4を備える。
図3を参照して、打設装置1aについて以下詳述する。なお、前述した第1実施形態と同様の構造及びその作用効果については説明を省略する。打設装置本体2は、前述した第1実施形態と同一構造であるため、その構造及び作用効果については説明を省略する。
【0105】
(被覆カバー4)
被覆カバー4は、チャック部25よりも先部方向となる位置に、チャック部25の挟持部分で挟持する打設対象物Aの外周の一部又は全部を被覆可能な延長被覆部43を有し、延長被覆部43が上方向に引き上げ可能あるいは巻き上げ可能に設けられている態様である。
【0106】
被覆カバー4について詳述する。被覆カバー4は、第1被覆部分41と、第2被覆部分42と、延長被覆部43を有し、各々が分割された構造である。より詳しくは、第1被覆部分41はハンマ部21及びウエイト部22の外周を、第2被覆部分42は可動継手部23、スペーサ部24及びチャック部25上半分の外周を、延長被覆部43はチャック部25下半分及び打設対象物Aの上端近傍領域の外周を、それぞれ被覆する構造である。
【0107】
第1被覆部分41は、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、ハンマ部21及びウエイト部を含んだ長さと略同じ長さの外套部41aと、外套部41aに重複して貼設された内套部41bと、外套部41aの長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材41cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部41dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部41eと、を有する構造である。なお、第1被覆部分41の各部の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
【0108】
第2被覆部分42は、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、可動継手部23、スペーサ部24及びチャック部25上半分を含んだ長さと略同じ長さの外套部42aと、外套部42aに重複して貼設された内套部42bと、外套部42aの長手方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材42cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部42dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部42eと、を有する構造である。なお、第2被覆部分42の各部の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
【0109】
延長被覆部43は、幅方向に4分割された袋仕立て暖簾形状であり、巻着状態において、チャック部25よりも先部方向(
図12で下方向。把持爪部253と、把持爪部253で挟持する打設対象物A)の外周を被覆可能な構造である。
【0110】
延長被覆部43は、4分割された各部が、使用状態で高さ方向となる方向の長さが、チャック部25下半分(把持爪部253)及び打設対象物Aの上部の一部領域を含んだ長さと略同じ長さの外套部43aと、外套部43aに重複して貼設された内套部43bと、外套部43aの高さ方向となる両側の側部方向に亘って設けられた連結部材43cと、使用状態で高さ方向上縁近傍に設けられた上部絞り部43dと、使用状態で高さ方向下縁近傍に設けられた下部絞り部43eと、を有する構造である。
【0111】
そして、延長被覆部43は、4分割された各部が、上部絞り部42dにより幅方向に連結されている。なお、延長被覆部43は、上部絞り部43dを除く各部(外套部、内套部、連結部材、下部絞り部)の構造は、被覆部26において対応する各部と同じであるため、説明を省略する。
【0112】
(打設装置1aの作用、及び、打設装置1aを使用した打設方法)
打設装置1aの作用効果について説明する。打設装置本体2には、被覆部4(第1被覆部分41、第2被覆部分42、延長被覆部43)が各々取り付けられる。
【0113】
より詳しくは、第1被覆部分41は、
図3(b)に示す展開状態から、内套部41bを内側にして、ハンマ部21及びウエイト部22の高さ方向側面の全域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材41cを相互に結着して取り付ける(
図3(a)(b)参照)。そして、上部絞り部41dと下部絞り部41eの絞り紐を絞って結ぶ。これにより、打設装置1a稼働時に、第1被覆部分41が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出も抑制できる。
【0114】
被覆部27を備える打設装置1aは、その稼働時において、第1被覆部分41がハンマ部21と可動継手部23の接続箇所を含む領域を覆っているので、仮に同接続箇所から圧縮空気及びこれに含まれる潤滑油が漏出したとしても、周囲に飛散して汚染することがない。
【0115】
第2被覆部分42は、
図3(b)に示す展開状態から、内套部42b内側にして、可動継手部23及びスペーサ部24の高さ方向側面の全域と、チャック部25の高さ方向側面の上半分の領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材42cを相互に結着して取り付ける(
図3(a)、(b)参照)。そして、上部絞り部42dと下部絞り部42eの絞り紐を絞って結ぶ。これにより、打設装置1a稼働時に、第2被覆部分42が上下方向にズレにくく、隙間からの騒音漏出も抑制できる。
【0116】
延長被覆部43は、
図3(b)に示す展開状態から、各内套部43bを内側にして、チャック部25下半分(把持爪部253)及び打設対象物Aの上部の一部を含んだ領域となる外周部分を覆うように巻き付け、連結部材43cを相互に結着して取り付ける(
図3(a)、(b)参照)。そして、上部絞り部43dの絞り紐を絞って結ぶ。
【0117】
これにより、打設装置1aの稼働時に、延長被覆部43が上下方向にズレにくく、チャック部25と打設対象物Aの挟持部分や、挟持した打設対象物Aも一部被覆することができる。つまり、延長被覆部43は、打設装置1aの稼働で生じる打設装置の側部方向からの騒音を低減させ、かつ、打設装置1aの先部方向から漏出する騒音をも低減することができる。
【0118】
また、打設作業が進み、打設対象物Aが地中に埋設されて短くなった際には、延長被覆部43全体を第2被覆部分42と重なるように捲り上げ、隣接する下部絞り部43eを相互に結着することで、被覆部43が巻き込まれて破損したり、作業の邪魔になったりしないようにすることができる。(
図3(c)参照)。
【0119】
つまり、被覆カバー4は、その各構成部分(第1被覆部分41、第2被覆部分42、延長被覆部43)が、主たる騒音発生源となるハンマ部21からチャック部25先部に至る領域を覆っていることにより、打設装置1aの稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【0120】
加えて、被覆カバー4の各構成部分は、着脱可能な構造であるため、メンテナンス時には容易に取り外すことができてメンテナンス性が良く、また、打設装置1aの運搬時や保管時には、取り外すことで、引っ掛ける等して被覆カバー4が破れることを防止することができる。
【0121】
更に、被覆カバー4は、その各構成部分が分割構造であるので、傷んだ部分のみを交換することができる。これにより、被覆カバー4の中の傷んでいない部分が無駄にならず、製造コスト或いは調達コストの低減化も図ることができる。
【0122】
なお、下部絞り部43eについては、隣接する絞り紐を結んで一体化して絞った状態(一体化状態)にしてもよいし、隣接する絞り紐を結ばずに延長被覆部43の先部(
図3(a)において下方)を自由端にした状態(自由端状態)にしておいてもよい。
【0123】
一体化状態にした場合は、
図3(a)のような作業状態における遮音性がより高まり、打設作業が進んで延長被覆部43先部が接地しそうになれば、絞り紐を外し、
図3(c)に示すように捲り上げてもよい。
【0124】
一方、自由端状態にした場合は、一体化状態のように隣接する絞り紐を結ぶ手間が省け、一体化状態程ではないにせよ、チャック部25と打設対象物Aの挟持部分が被覆されているため、ある程度の遮音性を発揮する。打設作業が進んで延長被覆部43先部が接地しそうになれば、
図3(c)に示すように捲り上げてもよいし、多少巻き込みを起こす危険性はあるが、自然に捲れるよう任せてもよい。
【0125】
〔第3実施形態〕
(掘削装置)
掘削装置は、本発明の実施の一形態(第3実施形態)である。掘削装置は、掘削装置本体と、被覆カバーを備える。掘削装置本体及び被覆カバーにおける第1実施形態と同一構造部分については、その構造及び作用効果については説明を省略する。また、掘削装置に係る図示は省略する。
【0126】
(掘削装置本体)
掘削装置本体は、ハンマ部、ハンマ部の基端に取り付けられたウエイト部、及び、ハンマ部の先端に取り付けられたハンマビット部を有する。なお、掘削装置本体のハンマ部及びウエイト部は、第1実施形態と同一構造であるため、その構造及び作用効果については説明を省略する。
【0127】
ハンマビット部は、ハンマ部の先端側に嵌装されている。ハンマビット部は、ハンマ部の先端に軸方向へ所定のストロークで進退可能に取り付けられ、打撃ピストンで打撃される構造である。より詳しくは、ハンマビット部は、打撃ピストンからの打撃力を基端で受ける接続軸と、接続軸の先端に設けられた打撃部を有する。使用時において打撃部の下面となる箇所(底面)には、多数の突起状の超硬質チップが設けられている。なお、接続軸は、ハンマビットリティーナリングとOリングにより、ハンマ部側から外れないように装着されている。
【0128】
接続軸は、ケーシング内に嵌挿可能な外径に形成された筒状で、基端に開口部が形成された自由端であると共に、先端が打撃部上部に接続されている。接続軸は、その内部に、軸線方向に沿って第1通気路が設けられている。第1通気路は、接続軸の基端から打撃部の底面に至る通気可能な流路であり、第1通気路内には、打撃部の底面方向に流通する圧縮空気の逆流を防止可能な逆止弁を設けてある。
【0129】
また、接続軸は、外周面の軸線方向中間から打撃部上部との接続境界の間の領域に、接続軸の軸方向に沿った複数本のスプライン軸が形成されている。このスプライン軸は、ケーシングへの嵌挿時において、周方向への回転を防止し、進退方向への動きをガイドすることができる。
【0130】
(被覆カバー)
被覆カバーは、ハンマ部及びウエイト部の高さ方向側面の略全域となる外周部分を覆う部材で、防音材を有するものである(
図1参照)。つまり、被覆カバーは、前述した「防音材により形成され、少なくとも前記ハンマ部の外周部分を覆う被覆部を有する」構造である。なお、掘削装置用の被覆カバーは、被覆領域(長手方向の長さ)を除き、第1実施形態と同一構造であるため、説明を省略する。
【0131】
本実施形態において、第1実施形態と同様、ハンマ部の連結ジョイントは、吊下軸体に直接接続することもできる。また、本実施形態において、ウエイト部の構造及び数は前述の通りであるが、第1実施形態と同様、各種変形が可能である。
【0132】
(掘削装置の作用、及び、掘削装置を使用した掘削方法)
掘削装置の作用、及び、掘削装置を使用した掘削方法について説明する。掘削装置は、前述した打設装置と同様、クレーン車(図示省略)で吊下して使用する。
【0133】
掘削装置本体は、前述の構成であることにより、ケーシング内に供給する圧縮空気を以て軸方向に往復動するピストンで駆動するハンマ部によって、いわゆるダウンザホールハンマ式の掘削工事を行うことができる。なお、掘削工事は、掘削装置の先部に取り付けるハンマビット部で地面を掘削するものである。なお、同工事では、駆動するピストンによって主にハンマ部から衝撃音や駆動ノイズ等が発生するが、前述した被覆カバーが主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、掘削装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる。
【0134】
前述の構成であるいわゆるダウンザホールハンマ式の掘削装置を使用した工事を行うと、駆動するピストンによって主にハンマ部から衝撃音や駆動ノイズ等が発生するが、前述した被覆カバーが主たる騒音発生源となるハンマ部を覆っていることにより、掘削装置の稼働時に生じる騒音を低減することができる(すなわち、掘削装置の騒音低減化方法である)。
【0135】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0136】
1、1a 打設装置
2 打設装置本体
21 ハンマ部
210 ケーシング
212 連結ジョイント
22 ウエイト部
221 ウエイト本体
222 通気路
223 受け穴
224 連結ジョイント
23 可動継手部
231 接続軸
232 第1接続板
24 スペーサ部
241 胴部
242 第2接続板
243 第3接続板
244 補強リブ
245 排気ホース
25 チャック部
251 本体部
252 第4接続板
253 把持爪部
26 吊下軸体
261 供給管
3 被覆カバー
31 外套部
32 内套部
33 連結部材
34 上部絞り部
35 下部絞り部
4 被覆カバー
41 第1被覆部分
41a 外套部
41b 内套部
41c 連結部材
41d 上部絞り部
41e 下部絞り部
42 第2被覆部分
42a 外套部
42b 内套部
42c 連結部材
42d 上部絞り部
42e 下部絞り部
43 延長被覆部
43a 外套部
43b 内套部
43c 連結部材
43d 上部絞り部
43e 下部絞り部
A 打設対象物
N ナット
B ボルト
G 地面