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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】静電噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20240830BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20240830BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B05B5/08 B
B05B5/025 A
A01M7/00 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021151238
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043546
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2024-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】亀井 紀幸
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174035(JP,A)
【文献】特開2010-148441(JP,A)
【文献】特開2010-64006(JP,A)
【文献】特開2008-12459(JP,A)
【文献】特開2010-279855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/08
B05B 5/025
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧する噴霧ノズルと、
該噴霧ノズルから噴霧される液体を帯電させるための帯電部と
を備える静電噴霧装置において、
前記噴霧ノズルは、基端部を中心に先端部が移動可能に設けられており、
前記帯電部は、前記先端部の移動経路に沿う形状を有することを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
前記噴霧ノズルは、基端部を中心に先端部が揺動可能に設けられており、
前記帯電部は弧状に延びる帯板であり、
2つの前記帯電部が厚さ方向に適長離隔して互いに対向配置されており、
2つの前記帯電部の間に前記噴霧ノズルからの噴霧領域が配されることを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
杆体と、
該杆体に取り付けられ、前記帯電部に給電するための給電線を支持する第1支持部材と、
該第1支持部材に取り付けられ、前記帯電部を支持する第2支持部材と
を更に備え、
該第2支持部材は、前記給電線から前記帯電部への給電経路の一部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電噴霧装置。
【請求項4】
前記帯電部は導電性樹脂製であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の静電噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に薬液(液体)を散布するために、薬液を噴霧する噴霧ノズルと、噴霧ノズルから噴霧される薬液を帯電させるための帯電部とを備える静電噴霧装置が用いられる。
噴霧ノズルから噴霧される薬液は、電極に印加された電圧の極性とは逆の極性に帯電する。帯電した薬液は圃場に向けて拡散し、静電効果により、圃場に植えられた作物にムラなく付着する。
【0003】
特許文献1に記載の静電噴霧装置はブームスプレーヤであり、複数の噴霧ノズルが支持杆(ブーム)の長さ方向に並設されている。支持杆の長さ方向には複数の被装架部が並設されている。帯電部はケーブルであり、複数の被装架部間に架け渡されている。2本の帯電部、又は1本の帯電部の往路及び復路が、噴霧ノズルからの噴霧領域を介在して離隔配置されている。帯電部は電極として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-174035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液噴霧の作業性を向上させるために、噴霧ノズルの基端部を中心に先端部を移動させることによって、噴霧ノズルの向きを変更したい、という要望がある。
しかしながら、特許文献1に記載の静電噴霧装置の場合、噴霧ノズルの向きが変わると噴霧領域と帯電部との離隔距離が変わるので、薬液を十分に帯電させることができない。
【0006】
本開示の目的は、噴霧された液体を十分に帯電させることができる静電噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る静電噴霧装置は、液体を噴霧する噴霧ノズルと、該噴霧ノズルから噴霧される液体を帯電させるための帯電部とを備える静電噴霧装置において、前記噴霧ノズルは、基端部を中心に先端部が移動可能に設けられており、前記帯電部は、前記先端部の移動経路に沿う形状を有することを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、噴霧ノズルの基端部を中心に先端部を移動させることによって、噴霧ノズルの向きを変更することができる。
帯電部は、噴霧ノズルの先端部の移動経路に沿う形状を有するので、噴霧ノズルの先端部が移動して噴霧ノズルの向きが変わっても、噴霧ノズルからの噴霧領域と帯電部との離隔距離を一定に保つことができる。故に、噴霧された液体を十分に帯電させることができる。
【0009】
本開示に係る静電噴霧装置は、前記噴霧ノズルは、基端部を中心に先端部が揺動可能に設けられており、前記帯電部は弧状に延びる帯板であり、2つの前記帯電部が厚さ方向に適長離隔して互いに対向配置されており、2つの前記帯電部の間に前記噴霧ノズルからの噴霧領域が配されることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、噴霧ノズルの先端部が基端部を中心に揺動するので、噴霧ノズルの先端部の移動経路は弧状である。帯電部は弧状に延びる帯板なので、帯電部の先端部の移動経路に沿う形状を有する。
2つの帯電部が厚さ方向に適長離隔して互いに対向配置され、2つの帯電部の間に噴霧ノズルからの噴霧領域が配されるので、噴霧された液体を満遍なく帯電させることができる。
【0011】
本開示に係る静電噴霧装置は、杆体と、該杆体に取り付けられ、前記帯電部に給電するための給電線を支持する第1支持部材と、該第1支持部材に取り付けられ、前記帯電部を支持する第2支持部材とを更に備え、該第2支持部材は、前記給電線から前記帯電部への給電経路の一部を構成することを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、杆状の支持体に第1支持部材が取り付けられ、第1支持部材に第2支持部材が取り付けられ、第2支持部材が帯電部を支持する。第2支持部材は給電経路の一部を構成するので、給電線から第2支持部材を通って帯電部に給電される。
第1支持部材は給電線を支持する部材と第2支持部材を支持体に連結する部材とを兼ね、第2支持部材は帯電部を支持する部材と帯電部に給電するための部材とを兼ねる。故に、部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
本開示に係る静電噴霧装置は、前記帯電部は導電性樹脂製であることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、帯電部が導電性樹脂製なので、例えば金属製の帯電部よりも軽量である。また、導電性樹脂製の帯電部は例えば金属製の帯電部よりも電気抵抗が大きいので、帯電部に流れる電流が弱まる。故に、人間が帯電部に触れることによる感電時の衝撃が抑制される。
導電性樹脂は複雑な形状の部材の形成に適しているので、噴霧ノズルの先端部の移動経路に沿う形状の帯電部を得やすい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の静電噴霧装置によれば、噴霧された液体を十分に帯電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る静電噴霧装置の斜視図である。
図2】静電噴霧装置の模式図である。
図3】噴霧ノズルの近傍の斜視図である。
図4】噴霧ノズルの近傍の正面図である。
図5】噴霧ノズルの近傍の平面図である。
図6】噴霧ノズルの揺動と帯電部の形状との関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る静電噴霧装置の斜視図である。
図中1は静電噴霧装置であり、静電噴霧装置1は、支持杆11、及び複数の噴霧ノズル12を備える。
図2は、静電噴霧装置1の模式図である。
支持杆11は、例えば手押し式又は自走式の台車10に支持されており、台車10と共に移動する。
【0019】
図1に示すように、支持杆11はノズル支持体111及び杆体112を備える。ノズル支持体111は円環状の断面を有する杆体である。杆体112はL字状の断面を有する(後述する図5参照)。ノズル支持体111及び杆体112は、互いに平行になるようにして、適宜の固定金具113により互いに固定されている。
【0020】
噴霧ノズル12は支持杆11のノズル支持体111に設けられている。複数の噴霧ノズル12は支持杆11の長さ方向に互いに適長離隔して並んでいる。噴霧ノズル12には、ノズル支持体111の内部に設けられた給液路を通して薬液(除草剤又は植物生長調整剤等)が供給される。噴霧ノズル12は供給された薬液を噴霧する。
噴霧ノズル12は、基端部を中心に先端部が揺動可能に設けられている(後述する図6参照)。
【0021】
静電噴霧装置1の使用中、支持杆11は例えば鉛直に延びるようにして保持される。台車10は、支持杆11が作物の側方を通過するようにして圃場を移動する。噴霧ノズル12のは作物の方に向けられる。
【0022】
図3は、噴霧ノズル12の近傍の斜視図である。
図4は、噴霧ノズル12の近傍の正面図である。
図5は、噴霧ノズル12の近傍の平面図である。
図3図5に示すように、静電噴霧装置1は各複数の支持金具13及びハウジング14(第1支持部材)を備える。
【0023】
支持金具13は、噴霧ノズル12から適長離隔して支持杆11の杆体112に設けられている。複数の支持金具13は支持杆11の長さ方向に互いに適長離隔して並んでいる。支持金具13の構成は限定されないが、支持金具13は少なくとも支持杆11に取り付けられる第1部分131とハウジング14に取り付けられる第2部分132とを一体的に有する。
【0024】
ハウジング14は絶縁性を有し、例えば合成樹脂製である。ハウジング14は支持金具13を介して支持杆11の杆体112に取り付けられている。図1及び図2に示すように、複数のハウジング14が支持杆11の長さ方向に並んでいる。
【0025】
図2に示すように、静電噴霧装置1は高圧電源21及び給電線22を備える。
高圧電源21は、例えば直流電圧を出力するバッテリ、及び、バッテリの出力を昇圧する昇圧回路等を備え、台車10に搭載されている。高圧電源21の負側の出力端子は、図示しないアース線を介して接地される。高圧電源21の正側の出力端子は、給電線22に接続されている。
【0026】
図2図5に示すように、静電噴霧装置1はハウジング14の個数と同数の支持部材23(第2支持部材)を備える。
支持部材23は導電性を有し、例えば金属製である。支持部材23はハウジング14に取り付けられている。支持部材23の構成は限定されないが、本実施の形態の支持部材23は各板状の第1部分231、第2部分232、及び第3部分233を一体に有する。第1部分231はハウジング14に取り付けられている。第2部分232は後述する帯電部24を支持している。第3部分233は第1部分231と第2部分232とを連結している。
【0027】
給電線22は複数のハウジング14に架け渡されている。給電線22は各ハウジング14に引き込まれており、ハウジング14に収容されている図示しない給電経路を介して支持部材23に電気的に接続されている。
支持金具13、ハウジング14、及び支持部材23は、噴霧ノズル12から十分に離隔している。故に、これらが噴霧ノズル12からの薬液の噴霧を阻害する虞も、これらに付着した薬液が噴霧ノズル12へ流入する虞もない。
【0028】
図6は、噴霧ノズル12の揺動と帯電部24の形状との関係を説明するための模式図である。図6図5におけるVI-VI線による断面図に相当する。
図4図6に示すように、噴霧ノズル12は支持管121に支持されている。
支持管121は支持杆11の長さ方向に直交する方向に延び、ノズル支持体111に固定されている。支持杆11の長さ方向が鉛直ならば、支持管121の長さ方向も鉛直である。支持管121の長さ方向の一端部は支持杆11の給液路に接続されている。
【0029】
支持管121の長さ方向の他端部には噴霧ノズル12の基端部が接続されている。噴霧ノズル12は、支持管121を中心に噴霧ノズル12が支持管121に垂直な仮想面内で揺動可能に、支持管121に支持されている。
作業者が手作業で噴霧ノズル12に外力を加えることにより、噴霧ノズル12は揺動する。作業者は、例えば噴霧ノズル12と圃場に植えられた作物との位置関係に応じて、噴霧ノズル12の向きを所定の範囲内(例えば噴霧ノズル12が水平に向いている状態を基準に±60°の範囲内)で変更する。図6には水平に向いている噴霧ノズル12が実線で表わされており、水平に向いている状態から約60°揺動した噴霧ノズル12が二点鎖線で表わされている。
【0030】
図1図3、及び図5に示すように、静電噴霧装置1は噴霧ノズル12毎に2つの帯電部24を備える。
帯電部24は弧状に延びる帯板である(図4及び図6参照)。帯電部24は導電性樹脂製であり、絶縁体によって被覆されていない。
【0031】
2つの帯電部24は、厚さ方向に適長離隔して互いに対向配置されている。2つの帯電部24は、複数の連結棒材241を介して連結されることにより、一体化されている。連結棒材241は2つの帯電部24の対向方向に延びる。連結棒材241は、例えば円環状の断面を有する直棒であり、複数の連結棒材241は帯電部24の長さ方向に互いに適長離隔している(図6参照)。連結棒材241は導電性を有し、例えば金属製である。
【0032】
2つの帯電部24の一方は、2つの帯電部24の間に噴霧ノズル12からの噴霧領域(不図示)が配されるようにして、支持部材23の第2部分232に取り付けられている。噴霧領域は、例えば噴霧ノズル12の噴霧口を頂点とする円錐状又は扇状である。
【0033】
給電線22から帯電部24に給電され、帯電部24は薬液を帯電させるための正電極として機能する。給電線22から帯電部24へはハウジング14に収容されている給電経路及び支持部材23を介して給電される。この結果、帯電部24の表面に電流が流れる。
帯電部24は、噴霧ノズル12からの薬液の噴霧を阻害したり帯電部24に付着した薬液が噴霧ノズル12へ流入したりすることがない距離だけ、噴霧ノズル12から離されている。また、帯電部24は、噴霧ノズル12から噴霧される薬液を十分に誘導帯電させることが可能であるように、噴霧ノズル12の噴射領域の近傍に配されている。
【0034】
以上のような静電噴霧装置1によれば、作業者が噴霧ノズル12の向きを変更することができるので、薬液噴霧の作業性を向上させることができる。
帯電部24は、噴霧ノズル12の先端部の移動経路に沿って延びる、噴霧ノズル12の先端部が移動して噴霧ノズル12の向きが変わっても、噴霧ノズル12からの噴霧領域と帯電部24との離隔距離を一定に保つことができる。故に、噴霧された薬液を十分に帯電させることができる。しかも、2つの帯電部24の間に噴霧ノズル12からの噴霧領域が配されるので、噴霧された薬液を満遍なく帯電させることができる。
【0035】
更に好ましくは、噴霧領域において液膜が形成される部分が2つの帯電部24の間に配される。帯板である帯電部24の幅を帯板の幅を適宜に設定することにより、液膜の位置が噴霧方向に多少ずれても噴霧された薬液を十分に帯電させることができる。
【0036】
噴霧ノズル12から噴霧された薬液は作物に向けて拡散する。帯電部24は正電極なので、噴霧ノズル12から噴霧される薬液には負の電荷が与えられる。作物の近傍に負電荷が存在すると、作物は、例えば葉の表面及び裏面夫々が正に、葉の内部が負になるように分極する。このため、負に帯電している薬液が作物にひきつけられて、葉の表面にも裏面にも満遍なく付着する。
【0037】
ハウジング14は給電線を支持する部材と支持部材23を支持杆11に連結する部材とを兼ね、支持部材23は帯電部24を支持する部材と帯電部24に給電するための部材とを兼ねる。故に、部品点数の削減を図ることができる。
帯電部24は導電性樹脂製に限定されず、例えば金属製でもよい。しかしながら、導電性樹脂製の帯電部24は金属製の帯電部24よりも軽量である。また、導電性樹脂製の帯電部24は金属製の帯電部24よりも電気抵抗が大きいので、帯電部24に流れる電流が弱まる。故に、人間が帯電部24に触れることによる感電時の衝撃が抑制される。
導電性樹脂は複雑な形状の部材の形成に適しているので、噴霧ノズル12の先端部の移動経路に沿う形状の帯電部24を得やすい。
【0038】
なお、複数の噴霧ノズル12の間で、大きさ又は形状等が互いに異なっていても、先端部の移動経路が互いに同じであれば、帯電部24の共通化を図ることが可能である。
帯電部24は弧状に延びる帯板に限定されず、例えば弧状に延びる棒体でもよい。帯電部24は、噴霧ノズル12の先端部の移動経路に沿う形状を有していればよい。例えば噴霧ノズル12の先端部が円環状に移動するのであれば、帯電部24は噴霧ノズル12の先端部の移動経路と同軸の円環状でもよい。
噴霧ノズル12は、例えばモータに駆動されて自動的に揺動する構成でもよい。
支持杆11は杆体112を備えていなくてもよい。この場合、ハウジング14はノズル支持体111に取り付けられる。
【0039】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1 静電噴霧装置
112 杆体
12 噴霧ノズル
14 ハウジング(第1支持部材)
22 給電線
23 支持部材(第2支持部材)
24 帯電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6