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  • 特許-フライヤー 図1
  • 特許-フライヤー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A47J37/12 351
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022021025
(22)【出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2023118205
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2024-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593083745
【氏名又は名称】有限会社宏和機械工業
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】八陳 久夫
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-061675(JP,A)
【文献】特開2005-027869(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201394(JP,U)
【文献】特開2004-278808(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111050610(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を揚げ対象物の投入部、他端側を揚げた食品の取出し部とし、油槽内を走行して揚げ工程部となる下段側と、油面の上方を走行してリターン部となる上段側とした、無端状に循環する搬送コンベアを備え、
リターン部の上段側と油面と間に油面から放出される熱を遮蔽する状態で油面が露出しないように被覆する覆いを設け、
油槽の加熱源が電気ヒーターであることを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
覆いの下面側に断熱板を設けたことを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
覆いの表面に遮熱セラミックス層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフライヤー。
【請求項4】
覆いが、搬送コンベアの走行方向に沿った中央に頂部を有する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフライヤー。
【請求項5】
覆いの傾斜面の端部が、排油溝に連通していることを特徴とする請求項4に記載のフライヤー。
【請求項6】
リターン部の上段側において、洗浄用のスチームが設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用油で揚げた食品を製造するためのフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
調理用油で自動的かつ多量に揚げた食品を製造する装置にフライヤーがある。このような揚げた食品には、例えば、薄揚げ、厚揚げ、コロッケ、とんかつ、から揚げ等がある。
【0003】
このようなフライヤーの一例として、油槽内に無端状の搬送コンベアを装置し、搬送コンベアの一端部から揚げ対象物を載せ、油槽内を搬送して揚げた食品を多端部から取り出す形態のフライヤーがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-91857号公報
【文献】実開昭64-4354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来のフライヤーは、油槽内に無端状の搬送コンベアを装置し、搬送コンベアの一端部から揚げ対象物を載せ、油槽内を搬送して揚げた食品を多端部から取り出す形態が多く、搬送コンベアは油槽と関連付けて無端状に装置されている。
【0006】
フライヤーは、油槽内の油を所定の温度までに素早く上昇させること、そして、その所定の温度を維持すること、フライヤーの装置全体のエネルギー消費を抑制しながら実現することを求められているという課題がある。
【0007】
さらに、フライヤーが設置された空間において、フライヤーからの放熱によって気温が上昇する。これにより、フライヤーが設置された空間で働く従業員の職場環境を改善するために、結果的に換気装置や冷却装置を稼働させる。結果として、フライヤーを設置した製造空間全体でエネルギー消費が増大してしまうという課題がある。
【0008】
本発明はこれらの問題点に鑑みて、フライヤーが設置された空間において、油槽内で高温になった油やガスバーナー等の燃焼よって、気温が上昇することを抑制することで、省エネルギー化を図ると共に、職場環境も改善されて良好なフライヤーを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフライヤーは、一端側を揚げ対象物の投入部、他端側を揚げた食品の取出し部とし、油槽内を走行して揚げ工程部となる下段側と、油面の上方を走行してリターン部となる上段側とした、無端状に循環する搬送コンベアを備え、リターン部の上段側と油面と間に油面から放出される熱を遮蔽する状態で油面が露出しないように被覆する覆いを設け、油槽の加熱源が電気ヒーターであることを特徴とするものである。
【0010】
ガスバーナー等の燃焼によって油槽の油の温度を上昇させる場合、燃焼で発生するガスが覆い内に溜まると、揚げた食品の品質や、フライヤーの稼働の安全性に悪影響を及ぼす。
【0011】
本発明のように、油面を被覆する覆いがあることと、かつ、油槽の加熱源が電気ヒーターであることによって、揚げた食品の品質や、フライヤーの稼働の安全性を向上させることができる。
【0012】
さらに、油槽内で高温になった油やガスバーナー等の燃焼によって、フライヤーが設置された空間でのガスの強制的な換気や、気温を下げるための空調を行う必要があり、フライヤーを設置した製造空間全体でエネルギー消費が増大する。
【0013】
油面を被覆する覆いがあることで、油槽から放される熱を遮蔽する作用も奏し、放出された熱は油面と覆い間に滞留して油槽を保温するため、調理用油の保温を図り燃費の削減に寄与する効果を発揮する。
【0014】
さらに、放出された熱は油面と覆いの間に滞留して、フライヤーを設置した製造空間への放熱を抑制し工場内の空調の負担を軽減される効果も有する。
【0015】
油槽の加熱源が電気ヒーターであることによって、燃焼による加熱源に比べて、油槽の油を高効率で熱しながらも、フライヤーを設置した製造空間への放熱も抑制することができる。
【0016】
加えて、上段側のコンベアやネット或いは籠等の付設物から、油槽内へ落下した異物が製品へ混入すること、油滴が落下して油が汚濁することも防ぐことができる。
【0017】
本発明のフライヤーは、覆いの下面側に遮熱・断熱作用が増す断熱板を設けてあり、さらに、覆いの表面に遮熱セラミックス層が形成されていてもよく、覆いが、搬送コンベアの走行方向に沿った中央に頂部を有する傾斜面に形成され、傾斜面の端部が排油溝に連通しているものとしてもよく、リターン部の上段側において、洗浄用のスチームが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
したがって、安全性が高く品質の良好な製品を提供できると共に、省エネルギー化を図ると共に、職場環境も改善する効果をも発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のフライヤーの概略側面図である。
図2図1中に一点鎖線で表示したA―A断面線での断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態のフライヤーは、油槽1と、循環駆動機構2と、油面の覆い3と、電気ヒーター4とから構成される。
【0022】
油槽1は、平面視が長方形で有底の箱状の形態であり、内部に調理用油10を適宜量注投入して所定の温度にまで熱し、油槽1内を搬送する揚げ対象物を揚げることができるようになっている。
【0023】
油槽1は、油槽1中の調理用油10を所定の温度を維持するための加熱手段として電気ヒーター4が付設されている。
【0024】
電気ヒーター4は、従来のガスバーナーのように強制換気が不要で、周囲への放熱も抑制され空調負担を低減できる。
【0025】
また、油槽1中の調理用油10の温度を測定する温度センサと、温度センサによって測定した温度データをフィードバックして電気ヒーターを制御する制御手段を備えている。
【0026】
循環駆動機構2は、無端状に循環する搬送コンベアを油槽1に関係して備えられる。図1の破線が循環駆動機構2の軌道を示す。
【0027】
図1の右側の一端側を揚げ対象物投入部、図1の左側の他端側を製品取出し部とする。油槽1の調理用油10内を走行して揚げ工程部となる下段側と、上段側は油面の上方を走行してリターン部となる無端状に循環する搬送コンベアを備え、リターン部の上段側と油面間に、油槽1の油面を被覆する覆い3を備える。
【0028】
循環駆動機構2は、図示を省略しているが、揚げ対象物投入部側の第1スプロケットと、製品取出し部側の第2スプロケットの間に張架される無端状のチェーン、搬送コンベアと、一端側の揚げ対象物投入部、他端側の製品取出し部を形成するため上下に搬送方向を変える複数のガイドスプロケット、第1スプロケット又は第2スプロケットを回転駆動させるモーター等で構成されている。
【0029】
搬送コンベアは、一端側の揚げ対象物投入部から他端側の製品取出し部へ、油槽1内を走行して揚げ工程部となる下段側と、油面の上方を走行してリターン部となる上段側と成って、図1中の矢印αの方向に循環する。
【0030】
一対の各スプロケットは、油槽1の幅より稍短尺の間隔で、同一軸に設けられ、張架した無端状のチェーンが並行する。並行する無端状のチェーンに、籠が走行方向に連続的に跨設されて取り付けられ図1中では、走行方向に連続的に跨設されて取り付けられている籠を省略して、揚げ工程部の一つの籠21と、リターン部の一つの籠22のみを表示している。
【0031】
揚げ対象物投入部及び製品取り出し部には、籠21,22の蓋を開閉するための必要な手段が設けられている。
【0032】
搬送コンベアを形成するのは籠21,22に限られず、可撓性の網状ベルトや透孔板、或いは、間隔を空けて折曲可能に並設した短冊状の網板体や透孔板等を、無端状のチェーンに吊設して搬送コンベアを形成しても良い。
【0033】
また、上記油槽1と循環駆動機構2は既にフライヤーとして実用化されている公知の構成及び機構を利用できるものである。
【0034】
覆い3は、図2に示すように搬送コンベアの上段側と油槽1の油面との間に設けられる。
【0035】
図2では、板状体の覆い3が、搬送コンベアの上段側と下段側の間であって、かつ油槽1の油面の上方位置で被覆するように設けられ、油槽1或いは機枠に延設した支柱に支持されればよい。
【0036】
この覆い3の存在により、上段側のコンベアやネット或いは籠等付設物から油槽1内への異物の落下を受け止め、製品へ混入すること防ぐため製品の安全性及び品質を保持できる作用を奏する。
【0037】
そして、覆い3の存在は油槽1から放される熱を遮蔽する作用も奏し、放出された熱は油面と覆い3の間に滞留して油槽1を保温するため、調理用油10の保温を図り燃費の削減に寄与し、放出された熱の装置周囲外への放熱を抑制するため工場内の空調経費を軽減する作用も有する。
【0038】
図2に示すように、覆い3を、搬送コンベアの走行方向に沿った中央に頂部を有する傾斜面31に形成すれば、放出された熱の滞留作用が促進される。
【0039】
また、図2に示すように、覆い3の傾斜面31とした端部に排油溝32が施設してあり、傾斜面31と排油溝32とを連通させることで、上段側のコンベアから落下した異物や油滴を排油溝32へ流下させて排出できるものである。
【0040】
また、覆い3の表面に遮熱セラミックス層が形成されていれば、遮熱・断熱作用が増す。さらに、覆い3の下面に、隙間を空けて断熱板33を設置した構成とすれば、さらなる遮熱・断熱作用が実現できる。
【0041】
覆い3の下面に、隙間を空けて断熱板33を設置した場合、断熱板33を設置しない場合に比べて、調理用油10を所定の温度を維持するために必要な電気ヒーターの消費電力を10%以上減らすことができる。
【0042】
さらに、この覆い3の存在により、リターン部の上段側において、搬送コンベア及び籠22に付着した固体や油等をスチームで除去洗浄したとしても、その除去された固体や洗浄液体を油槽1に落下させることなく、排出することができる。
【0043】
以上説明した本発明の技術的範囲は、上記の実施の形態例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【符号の説明】
【0044】
1 油槽
2 循環駆動機構
3 覆い
4 電気ヒーター
10 調理用油
21、22 籠
31 傾斜面
32 排油溝
33 断熱板
図1
図2