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特許7546302水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20240830BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240830BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240830BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240830BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240830BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20240830BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20240830BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20240830BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/22
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/20
A61K9/48
A61P3/02 101
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/67
A61Q19/00
A23L33/10
A23L33/175
A23L33/125
A23L33/15
A23L2/00 F
A23L2/52
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022521674
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028322
(87)【国際公開番号】W WO2021079579
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】16/660,111
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】393031450
【氏名又は名称】アルプス薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】山口 直人
(72)【発明者】
【氏名】巣鷹 佑衣
(72)【発明者】
【氏名】小野 光則
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/029913(WO,A1)
【文献】ロシア国特許出願公開第02545905(RU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
O-グリコシルフラボノイド化合物、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはそのアルカリ塩を含む水溶性組成物であって、前記O-グリコシルフラボノイド化合物が、ルチン、イソクエルシトリン、およびヘスペリジンからなる群から選択され、前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記糖アルコールとの間のモル比が、1:4.0~12.0である、水溶性組成物。
【請求項2】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記糖アルコールとの間のモル比が、1:4.0~8.0である、請求項に記載の水溶性組成物。
【請求項3】
前記糖アルコールが、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項1に記載の水溶性組成物。
【請求項4】
前記糖アルコールが、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項2に記載の水溶性組成物。
【請求項5】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記L-アルギニンとの間のモル比が、1:0.5~2.0である、請求項3に記載の水溶性組成物。
【請求項6】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記L-アルギニンとの間のモル比が、1:0.7~1.5である、請求項5に記載の水溶性組成物。
【請求項7】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記L-アルギニンとの間のモル比が、1:0.5~2.0である、請求項4に記載の水溶性組成物。
【請求項8】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記L-アルギニンとの間のモル比が、1:0.7~1.5である、請求項7に記載の水溶性組成物。
【請求項9】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記アスコルビン酸またはそのアルカリ塩との間のモル比が、1:0.02~0.5である、請求項3に記載の水溶性組成物。
【請求項10】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記アスコルビン酸またはそのアルカリ塩との間のモル比が、1:0.1~0.5である、請求項9に記載の水溶性組成物。
【請求項11】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記アスコルビン酸またはそのアルカリ塩との間のモル比が、1:0.02~0.5である、請求項4に記載の水溶性組成物。
【請求項12】
前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記アスコルビン酸またはそのアルカリ塩との間のモル比が、1:0.1~0.5である、請求項11に記載の水溶性組成物。
【請求項13】
ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB9、またはビタミンB12をさらに含む、請求項3に記載の水溶性組成物。
【請求項14】
ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB9、またはビタミンB12をさらに含む、請求項4に記載の水溶性組成物。
【請求項15】
医薬品、栄養補助食品、自然健康製品、化粧品、食品、または飲料である、請求項3に記載の水溶性組成物。
【請求項16】
液剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、およびゲルからなる群から選択される経口製剤である、請求項15に記載の水溶性組成物。
【請求項17】
腸溶コーティングで各々形成されたカプセル剤または錠剤である、請求項16に記載の水溶性組成物。
【請求項18】
溶液、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、およびエマルゲルからなる群から選択される局所適用製剤である、請求項15に記載の水溶性組成物。
【請求項19】
化粧品、スキンケア製品、または医薬品である、請求項18に記載の水溶性組成物。
【請求項20】
水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物を製造するための方法であって、前記方法が、O-グリコシルフラボノイド化合物、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはそのアルカリ塩を組み合わせて混合物を形成することと、前記混合物を110℃~140℃で、前記混合物を溶融させるのに十分な時間加熱することとを含み、前記O-グリコシルフラボノイド化合物、前記L-アルギニン、前記糖アルコール、および前記アスコルビン酸またはそのアルカリ塩が、各々固体形態であり、前記O-グリコシルフラボノイド化合物が、ルチン、イソクエルシトリン、およびヘスペリジンからなる群から選択され、前記O-グリコシルフラボノイド化合物と前記糖アルコールとの間のモル比が、1:4.0~12.0である、方法。
【請求項21】
前記糖アルコールが、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
天然フラボノイド、例えばO-グリコシルフラボノイドの水溶性を改善するために、いくつかの方法が用いられている。1つの手法は、塩基性アミノ酸を含むフラボノイドの溶液を作製することである。しかし、フラボノイドの高い水溶性を維持するために必要な塩基性アミノ酸の量は、フラボノイドが不安定になり、時間とともに分解する点まで溶液のpHを上昇させる。
【背景技術】
【0002】
既存の組成物と比べて、フラボノイドの改善された安定性、増加した溶解性、および高い経口吸収を有する水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物を開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
概要
上記の必要性を満たす水溶性組成物が、提供される。組成物は、O-グリコシルフラボノイド化合物、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはアスコルビン酸のアルカリ塩を含む。O-グリコシルフラボノイド化合物は、ルチン、イソクエルシトリン、またはヘスペリジンであり、O-グリコシルフラボノイド化合物と糖アルコールとの間のモル比は、1:4.0~12.0である。
【0004】
上記水溶性組成物を作製するための方法も開示される。方法は、O-グリコシルフラボノイド化合物、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはそのアルカリ塩を組み合わせて混合物を形成することと、混合物を110℃~140℃で、混合物を溶融させるのに十分な時間加熱することとによって実行される。
【0005】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、図面および以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。本明細書で引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
上に要約されているように、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはアスコルビン酸アルカリ塩を含有する水溶性組成物が、本明細書で開示される。
【0007】
O-グリコシルフラボノイドは、ルチン、ヘスペリジン、またはイソクエルシトリンであり得、糖アルコールは、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールであり得るが、これらに限定されない。O-グリコシルフラボノイドと糖アルコールとの間のモル比は、1:4.0~12.0である。特定の組成物では、O-グリコシルフラボノイド対糖アルコールのモル比は、1:4.0~8.0である。
【0008】
水溶性組成物において、O-グリコシルフラボノイド化合物とL-アルギニンとの間のモル比は、1:0.5~2.0である。例示的組成物では、この比は、1:0.7~1.5である。
【0009】
上述のように、水溶性組成物は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸のアルカリ塩も含む。アルカリ塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩であり得る。特定の組成物では、アルカリ塩はナトリウム塩である。O-グリコシルフラボノイド化合物とアスコルビン酸またはアルカリ塩との間のモル比は、1:0.02~0.5である、一組成物では、比は、1:0.1~0.5である。
【0010】
上記組成物の特定の構成成分、例えば、ルチン、イソクエルシトリン、ヘスペリジン、およびL-アルギニンは、無水物形態または水和物形態(例えば、一水和物、二水和物、もしくは三水和物形態)のいずれかで存在し得る。構成成分が水和物形態で使用される場合、水和物形態中の水は、モル比の計算のためにその分子量に含まれる。
【0011】
上記の水溶性組成物において、O-グリコシルフラボノイドは、典型的には、10重量%以上(例えば、20重量%以上、30重量%以上、および50重量%以上)の含有量で存在する。
【0012】
水溶性組成物は、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸/アスコルビン酸のアルカリ塩に加えて、水溶性ビタミン、例えば、ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB9、またはビタミンB12も含み得る。組成物中のO-グリコシルフラボノイド対各水溶性ビタミンのモル比は、1:0.01~0.1であり得る。
【0013】
固体形態または水性形態のいずれかの水溶性組成物は、薬学、医学、または美容の用途のための様々な製剤に存在し得る。
【0014】
一実施形態では、組成物は、経口製剤、例えば、液剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、およびゲルである。例示的組成物は、腸溶コーティングで各々形成されたカプセル剤または錠剤である。組成物は、薬学的活性剤、薬学的に許容される賦形剤、またはそれらの組み合わせをさらに含有し得る。この実施形態は、医薬品、栄養補助食品、自然健康製品、化粧品、食品、または飲料である組成物を含む。
【0015】
別の実施形態では、組成物は、局所適用製剤、例えば、溶液、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、およびエマルゲルの1つに存在する。局所製剤は、薬学的活性剤、局所適用可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせをさらに含有し得る。この実施形態は、化粧品、スキンケア製品、または医薬品である組成物を含む。
【0016】
本発明により包含される例示的組成物は、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはアスコルビン酸アルカリ塩だけを活性成分として含む。別の例では、組成物は、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、アスコルビン酸またはアスコルビン酸アルカリ塩、および水溶性ビタミンだけを活性成分として含む。別の組成物は、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、およびアスコルビン酸またはアスコルビン酸アルカリ塩から本質的になるか、またはそれからなる。さらなる組成物は、O-グリコシルフラボノイド、L-アルギニン、糖アルコール、アスコルビン酸またはアスコルビン酸アルカリ塩、および水溶性ビタミンから本質的になるか、またはそれからなる。本発明の組成物は、溶解性向上剤、例えばシクロデキストリンを含まない。
【0017】
水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物を製造するための方法も、上に要約されている。方法は、O-グリコシルフラボノイド化合物(例えば、ルチン、イソクエルシトリン、およびヘスペリジン)、L-アルギニン、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトール)、ならびにアスコルビン酸またはそのアルカリ塩の固体形態を組み合わせて混合物を形成することと、混合物を110℃~140℃で、混合物を溶融させるのに十分な時間加熱することとによって実行される。加熱時間は、10分~60分(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60分)であり得る。
【0018】
上記方法では、O-グリコシルフラボノイド化合物とL-アルギニンと糖アルコールとアスコルビン酸またはそのアルカリ塩との間のモル比は、1:0.5~2.0:4.0~12.0:0.02~0.5である。特定の方法では、モル比は、1:0.7~1.5:4.0~8.0:0.1~0.5である。
【0019】
特定のO-グリコシルフラボノイドの融点とそれらの溶解性との間の相関関係が、本明細書で開示される。融点が低くなるほど、溶解性は高くなる。
【0020】
製造方法の間、水溶性O-グリコシルフラボノイド組成物は、製造中に褐変プロセスを受け得る。理論に縛られるものではないが、褐変は、糖アルコールのカラメル化、メイラード反応、または他の酸化反応によって引き起こされると考えられる。驚くべきことに、O-グリコシルフラボノイドを溶融させるのに用いられる温度でのO-グリコシルフラボノイド組成物の褐変を、アスコルビン酸またはアスコルビン酸のアルカリ塩を加えることによって、遅らせるかまたは防止することができることが発見された。
【0021】
水溶性の顕著な向上の結果として、本発明により包含されるO-グリコシルフラボノイド組成物は、優れた薬物動態プロファイル、例えば、経口および経皮吸収を有し、それにより、それらは薬学、医学、または美容の用途に適したものとなる。
【0022】
さらに詳述しないが、上の説明に基づき、当業者はその最大限の範囲まで本発明を利用することができると考えられる。以下の具体例は、単なる例示として解釈されるものであり、何であれ、本開示の残りの部分を制限するものではない。
【0023】
実施例
実施例1:ルチン/マルチトール/L-アルギニン組成物の調製
L-アルギニン(786mg)およびマルチトール(3.0g)の水溶液17mlを調製し、3gのルチンを含有する99.5%エタノール50mlに加えた。混合物を10分間撹拌し、留去し、60℃で24時間乾燥して粉末を得た。乾燥粉末の量(100mgのルチンを含有する226mg)を10mlの蒸留HOに加え、30秒間ボルテックスミキサーで攪拌することによって混合し、その時点で混合物は完全に溶解した。試料を0.45μmフィルターに通し、濾液中のルチン濃度をHPLCにより測定した。測定されたルチン濃度は、9.6mg/mlであった。
【0024】
実施例2:イソクエルシトリン/マルチトール/L-アルギニン組成物の調製
L-アルギニン(1.08g)およびマルチトール(3.0g)の水溶液17mlを調製し、3gのイソクエルシトリンを含有する99.5%エタノール50mlに加えた。混合物を10分間撹拌し、留去し、60℃で24時間乾燥して粉末を得た。乾燥粉末(100mgのイソクエルシトリンを含有する236mg)を10mlの蒸留HOに加え、混合物が完全に溶解するまで30秒間ボルテックスミキサーで攪拌することによって混合した。試料を0.45μmフィルターに通し、濾液中のイソクエルシトリン濃度をHPLCにより測定した。測定されたイソクエルシトリン濃度は、9.7mg/mlであった。
【0025】
実施例3:溶融によるルチン/エリスリトール/アスコルビン酸塩/L-アルギニン組成物の調製
ルチン(1.0g)を、エリスリトール(1.0g)およびアスコルビン酸ナトリウム(60mg)と混合し、乳鉢ですりつぶした。次いで、L-アルギニン(52mg~520mg)を加え、混合物を再び乳鉢ですりつぶした。各混合物のモル比を、以下の表1に示す。
【表1】
【0026】
各混合物を、アルミニウムヒーターブロックで、125℃で30分間加熱し、その時点で各混合物中の固体は完全に溶融した。
【0027】
実施例4;溶融によるイソクエルシトリン/エリスリトール/アスコルビン酸塩/L-アルギニン組成物の調製
イソクエルシトリン(1.0g)を、エリスリトール(1.5g)およびアスコルビン酸ナトリウム(82mg)と混合し、乳鉢ですりつぶした。次いで、L-アルギニン(72mg~720mg)を加え、混合物を再び乳鉢ですりつぶした。各混合物のモル比を、以下の表2に示す。
【表2】
【0028】
上の実施例3に記載したように、各混合物を、アルミニウムヒーターブロックで、125℃で30分間加熱し、その時点で各混合物中の固体は完全に溶融した。
【0029】
実施例5;溶融によるヘスペリジン/エリスリトール/アスコルビン酸塩/L-アルギニン組成物の調製
ヘスペリジン(1.0g)を、エリスリトール(1.0g)およびアスコルビン酸ナトリウム(160mg)と混合し、乳鉢ですりつぶした。次いで、L-アルギニン(55mg~550mg)を加え、混合物を再び乳鉢ですりつぶした。各混合物のモル比を、以下の表3に示す。
【表3】
【0030】
再び、各混合物を、アルミニウムヒーターブロックで、125℃で30分間加熱した。上の表3に示すように、固体の完全な溶融は、L-アルギニンが、ヘスペリジンに対して少なくとも等モル比で存在した場合に達成された。混合物3-05、3-06、および3-07を参照。
【0031】
実施例6:ルチン組成物の溶解性
上の実施例3に記載したように調製した7つのルチン組成物(41.2mg~51.6mg、各々20mgのルチンを含有)を、蒸留HOの2mlのアリコートに各々加え、ボルテックスミキサーにより30秒間混合し、室温で24時間インキュベートした。対照試料を、20mgのルチン単独を2mlの蒸留HOと混合することによって調製した(対照1)。第2の対照試料を、2mlの蒸留HO中で、ルチン、エリスリトール、およびアスコルビン酸Naを、上の表1の混合物1-01で示した量で混合することによって調製した。各試料を0.45μmフィルターに通し、濾液中のルチン濃度をHPLCにより測定した。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0032】
意外にも、エリスリトールは、L-アルギニンに対するルチンのモル比が低下した場合でも、ルチンの高い溶解性を顕著に維持した。また、驚くべきことに、混合物1-01は、同じ組成を有する対照2と比べて、ルチンの溶解性の4倍の増加を示した。混合物1-01は、上の実施例1に記載したように、構成成分を熱でともに溶融することによって形成されたが、対照2の構成成分は、加熱せずに蒸留HOと混合した。明らかに、溶融は、混合物中のルチンの溶解性の増加に重要である。
【0033】
実施例7:イソクエルシトリン組成物の溶解性
実施例4に記載したように調製した7つのイソクエルシトリン組成物(51.6mg~66.0mg、各々2mgのイソクエルシトリンを含有)を、蒸留HOの2mlのアリコートに各々加え、ボルテックスミキサーにより30秒間混合し、室温で24時間インキュベートした。対照1および2を、上の実施例6と同じ方法で調製した。各試料を0.45μmフィルターに通し、濾液中のイソクエルシトリン濃度をHPLCにより測定した。結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0034】
驚くべきことに、エリスリトールの添加は、L-アルギニンに対するイソクエルシトリンのモル比が減少した時でも、L-アルギニンの存在下でのイソクエルシトリンの増加した溶解性を維持した。
【0035】
実施例8:ヘスペリジン組成物の溶解性
実施例5に記載したように調製した7つのヘスペリジン組成物(43.2mg~54.2mg、各々2mgのヘスペリジンを含有)を、蒸留HOの2mlのアリコートに各々加え、ボルテックスミキサーにより30秒間混合し、室温で24時間インキュベートした。対照1および2を、上の実施例6および7と同じ方法で調製した。各試料を0.45μmフィルターに通し、濾液中のヘスペリジン濃度をHPLCにより測定した。結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0036】
意外にも、組成物中のL-アルギニンに起因するヘスペリジンの増加した溶解性は、エリスリトールを加えることによって、L-アルギニンの量が減少した時でも維持される。
【0037】
実施例9:エリスリトールおよびL-アルギニンによるO-グリコシルフラボノイド化合物の融点降下
エリスリトールを含むルチン、イソクエルシトリン、およびヘスペリジンの試料を、以下に記載したように調製して、L-アルギニンの存在下または非存在下での溶融温度を決定した。
【0038】
ルチン(各1g)の2つの試料を、エリスリトール0.7gと混合し、乳鉢ですりつぶした。L-アルギニン(0.26g)を2つの試料の一方に加えた。
【0039】
イソクエルシトリンについて、2つの1gの試料をエリスリトール1gとともに乳鉢ですりつぶし、L-アルギニン(0.36g)を試料の一方に加えた。
【0040】
ヘスペリジン試料を、2つの1gの試料をエリスリトール1gとともに乳鉢ですりつぶし、L-アルギニン0.52gを一方の試料に加えることによって調製した。
【0041】
上記のように調製された試料を全て、アルミニウム加熱ブロック中に置き、アルミニウム加熱ブロックを170℃まで加熱した。各試料の融点を記録した。結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0042】
注目すべきは、エリスリトールの添加が、ルチン(190℃)およびイソクエルシトリン(230℃)の報告された融点を、それぞれ50℃および60℃も降下させることである。エリスリトールによるヘスペリジンの融点(260℃)の降下は、使用した実験条件下では測定することができなかった。
【0043】
エリスリトールおよびL-アルギニンの両方の添加は、融点降下にさらに効果的であった。結果は、ルチン、イソクエルシトリン、およびヘスペリジンの融点が、エリスリトールおよびL-アルギニンの両方の存在下で、少なくとも70℃降下したことを示した。
【0044】
実施例10:糖アルコールによるルチンの融点降下
ルチン(1.0g)、L-アルギニン(0.39g)、およびアスコルビン酸Na(60mg)の試料を組み合わせ、1.5gのエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、またはパラチニットと別々に混合した。混合物を乳鉢ですりつぶし、アルミニウム加熱ブロックで加熱した。溶融温度を記録し、以下の表8に示す。
【表8】
【0045】
実施例9に記載したエリスリトールのように、キシリトール、マルチトール、およびソルビトールも、ルチンの融点(190℃)を約60度降下させたことが認められる。この融点降下は、類似の糖アルコール、すなわちマンニトールおよびパラチニットと比べて顕著であった。
【0046】
実施例11:アスコルビン酸はルチンの褐変を防止する
様々な量のアスコルビン酸Naを、ルチン(1.0g)、L-アルギニン(1.0g)、およびエリスリトール(1.0g)と混合した。各混合物を乳鉢ですりつぶし、アルミニウム加熱ブロックで、122℃で15分間加熱した。加熱した混合物を、蒸留HOのアリコートに各々加えて1%(w/v)のルチン濃度を得た。試料を、0.45μmメンブレンフィルターに通して濾過した。各濾液(300μL)を蒸留水(2.7mL)でさらに希釈し、次いで、550nmの吸光度を直ちにおよび24時間後に測定して、ルチン溶液の褐変を検出した。時間0と24時間との間の各試料の吸光度の差(ΔA550nm)を、以下の表9に示す。
【表9】
【0047】
結果は、アスコルビン酸ナトリウムが、ルチン組成物の褐変反応を8.5倍も顕著に減少させることを示した。
【0048】
実施例12:アスコルビン酸はイソクエルシトリンの褐変を防止する
様々な量のアスコルビン酸Naを、イソクエルシトリン(1.0g)、L-アルギニン(1.0g)、およびエリスリトール(1.5g)と混合した。各混合物を乳鉢ですりつぶし、アルミニウム加熱ブロックで、126℃で15分間加熱した。加熱した混合物を、蒸留HOのアリコートに各々加えて1%(w/v)のイソクエルシトリン濃度を得た。試料を、0.45μmメンブレンフィルターに通して濾過した。各濾液(300μL)を蒸留水(2.7mL)でさらに希釈し、次いで、550nmの吸光度を直ちにおよび24時間後に測定して、ルチン溶液の褐変を検出した。時間0と24時間との間の各試料の吸光度の差(ΔA550nm)を、以下の表10に示す。
【表10】
【0049】
アスコルビン酸ナトリウムは、イソクエルシトリン組成物の褐変反応を9.5倍も減少させた。
【0050】
他の実施形態
本明細書で開示される特徴は全て、あらゆる組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書で開示される各特徴は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられてもよい。したがって、明確な別段の定めがない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の単なる例である。
【0051】
上記から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件にそれを適合させるために、本発明の様々な変更および修正を行うことができる。したがって、他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内である。