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特許7546304二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計
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  • 特許-二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計 図1
  • 特許-二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20240830BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
G01N21/39
G01N21/3504
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022540341
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2021093487
(87)【国際公開番号】W WO2022188260
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】202110268351.0
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】501403265
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー オブ チャイナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー、シュイミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、クンフェン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ヤンドン
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142944(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0156718(US,A1)
【文献】米国特許第05783445(US,A)
【文献】KARHU, J et al.,Step-modulated decay cavity ring-down detection for double resonance spectroscopy,Optics Express,2018年10月29日,Vol. 26, No. 22,pp.29086-29098,https://doi.org/10.1364/OE.26.029086
【文献】CHEDIN, A,The Carbon Dioxide Molecule: A New Derivation of the Potential, Spectroscopic, and Molecular Constants,JOURNAL OF MOLECULAR SPECTROSCOPY,1984年,Vol.107,pp.333-342
【文献】AMIOT, C et al.,The Vibration-Rotation Spectrum of 14C0 in the Spectral Range 2.40-3 μm,JOURNAL OF MOLECULAR SPECTROSCOPY,1984年,Vol.107,pp.364-378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01N 33/00 - G01N 33/46
A61B 5/06 - A61B 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザー光源と、第2のレーザー光源と、第1のレーザーロッキングモジュールと、第2のレーザーロッキングモジュールと、試料室と、信号探査モジュールとを備える二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置であって、
前記第1のレーザー光源は、連続的な第1の中赤外レーザーを送出するために使用され、前記第2のレーザー光源は連続的な第2の中赤外レーザーを送出するために使用され、前記第1の中赤外レーザーと第2の中赤外レーザーの波長は異なり、
前記第1のレーザーロッキングモジュールは前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために用いられ、前記第2のレーザーロッキングモジュールは前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用され、
前記試料室はキャビティ長調整ユニットを少なくとも備え、
前記キャビティ長調整ユニットは、前記第1の中赤外レーザーの周波数が、目的同位体分子の基底状態(E1)と中間状態(E2)の間のエネルギー差に一致し、同時に、前記第2の中赤外レーザーの周波数が、前記目的同位体分子の前記中間状態(E2)と励起状態(E3)の間のエネルギー差に一致するように、前記光キャビティのキャビティ長を調整して、前記光キャビティのモード周波数を同調し、さらに前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーの周波数を同調するために使用され、
前記信号探査モジュールは、レーザー周波数と目的同位体分子のエネルギー準位とが同時に一致した後、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するために使用され
前記第1の中赤外レーザーは、1MHz超の同調帯域幅を有するポンプ光であり、前記第2の中赤外レーザーは、1MHz超の同調帯域幅を有する探査光であり、前記目的同位体分子は、炭素14同位体を含むCO である、ことを特徴とする二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置。
【請求項2】
前記第1のレーザーロッキングモジュールが前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第1のレーザーロッキングモジュールが、前記第1の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、かつエラー信号を生成するために使用されること、および
前記第1のレーザーロッキングモジュールが、さらに、前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成して前記第1の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されることを含み、
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、前記第2の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、エラー信号を生成するために使用されること、および
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、さらに、前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成して前記第2の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーは前記試料室に同一直線上である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記光キャビティは、高フィネスの光キャビティであり、フィネスが10000を超えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記キャビティ長調整ユニットは、圧電セラミックユニットである、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記試料室は、前記光キャビティの温度を調整するための温度制御ユニットをさらに備え、
調整後、前記光キャビティの温度変動幅は100mK未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記信号探査モジュールは、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するための探査ユニットを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記信号探査モジュールは、前記キャビティ長調整ユニット及び前記探査ユニットの動作状態を制御するためのタイミング制御ユニットをさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の装置を備える、ことを特徴とする分光計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、発明の名称が「二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計」である、2021年3月12日に中国特許庁へ提出された中国特許出願202110268351.0に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、分光検出技術分野に関し、より具体的には、二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素14同位体は、自然界で唯一の放射性炭素同位体として、半減期が約5730年であり、主に宇宙線と地球の大気中の窒素との相互作用によって生成され、地球の大気中の同位体の存在量が僅か10-12である。
【0004】
地球の大気中の炭素14は、主に14COガスの形で存在し、地球規模の生物炭素循環を介して拡散し、その含有量が基本的に安定しており、年代測定や追跡、法医学的同定、環境モニタリング、薬物代謝などの領域に広く利用されている。
【0005】
現在、レーザー分光法は、炭素14同位体を検出するための重要な方法の1つであり、炭素14同位体の定量的検出において潜在的に応用される可能性が大きい。その主な測定原理は、試料を220Kの低温下で制御し、キャビティーリングダウン分光法方法によって炭素14同位体のスペクトル信号を測定することである。
【0006】
しかしながら、このレーザー分光法は、スペクトル自体のドップラー線幅によって制限され、炭素14同位体と他の炭素同位体のスペクトル、炭素14同位体と他の分子同位体のスペクトルを効果的に区別することができなく、つまり、正確な定量を達成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、上記の課題を解決するために、二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計を提供するものである。技術案が以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1のレーザー光源と、第2のレーザー光源と、第1のレーザーロッキングモジュールと、第2のレーザーロッキングモジュールと、試料室と、信号探査モジュールとを備える二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置であって、
前記第1のレーザー光源は、連続的な第1の中赤外レーザーを送出するために使用され、前記第2のレーザー光源は連続的な第2の中赤外レーザーを送出するために使用され、前記第1の中赤外レーザーと第2の中赤外レーザーの波長が異なり、
前記第1のレーザーロッキングモジュールは前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために用いられ、前記第2のレーザーロッキングモジュールは前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用され、
前記試料室はキャビティ長調整ユニットを少なくとも備え、
前記キャビティ長調整ユニットは、前記第1の中赤外レーザーの周波数及び前記第2の中赤外レーザーの周波数が目的同位体分子の異なるエネルギー準位と同時に一致するように、前記光キャビティのキャビティ長を調整して、前記光キャビティのモード周波数を同調し、さらに、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーの周波数を同調するために使用され、
前記信号探査モジュールは、レーザー周波数と目的同位体分子のエネルギー準位とが同時に一致した後、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するために使用される、ことを特徴とする二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置。
【0009】
好ましくは、上記の装置においては、前記第1の中赤外レーザーの同調帯域幅が1MHzを超え、
前記第2の中赤外レーザーの同調帯域幅が1MHzを超える。
【0010】
好ましくは、上記の装置においては、前記第1のレーザーロッキングモジュールが前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第1のレーザーロッキングモジュールが、前記第1の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、かつエラー信号を生成するために使用されること、および
前記第1のレーザーロッキングモジュールが、さらに、前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成して前記第1の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第1の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されることを含み、
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、前記第2の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、エラー信号を生成するために使用されること、および
前記第2のレーザーロッキングモジュールが、さらに、前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成して前記第2の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室の光キャビティにロックするために使用される。
【0011】
好ましくは、上記の装置においては、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーとが前記試料室に同一直線上である。
【0012】
好ましくは、上記の装置においては、前記光キャビティが、高フィネスの光キャビティであり、フィネスが10000を超える。
【0013】
好ましくは、上記の装置においては、前記キャビティ長調整ユニットが圧電セラミックユニットである。
【0014】
好ましくは、上記の装置においては、前記光キャビティの温度を調整するための温度制御ユニットをさらに備え、
調整後、前記光キャビティの温度変動幅が100mKより小さくなる。
【0015】
好ましくは、上記の装置においては、前記信号探査モジュールは光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するための探査ユニットを備える。
【0016】
好ましくは、上記の装置においては、前記信号探査モジュールが前記キャビティ長調整ユニット及び前記探査ユニットの動作状態を制御するためのタイミング制御ユニットをさらに備える。
【0017】
上記のいずれか一項に記載の装置を備える分光計。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べると、本発明によって実現される有益な効果は次のとおりである。
本発明で提供される二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置においては、異なる波長の2つの中赤外レーザーを1つの試料室の光キャビティにロックすることで、2つの中赤外レーザーが同一直線上にあり、キャビティ長調整ユニットにより光キャビティのキャビティ長を調整して、光キャビティのモード周波数を同調し、さらに2つの中赤外レーザーの周波数を同調することで、2つの中赤外レーザーの周波数と目的同位体分子の異なるエネルギー準位とを同時に一致させる。中赤外レーザー周波数と目的同位体分子エネルギー準位とが同時に一致した後、目的同位体分子が2つの中赤外レーザーにより同時に励起され、前記光キャビティを通過した第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号が探査される。つまり、目的同位体分子の励起及びスペクトルの探査に2つのレーザーと目的同位体分子の異なるエネルギー準位とを同時に一致させることが必要であるので、スペクトル検出の選択性を大幅に向上させ、スペクトル分解能を向上させ、即ち、目的同位体分子の選択と識別を実現する。
【0019】
以下、本発明の実施例や従来技術における技術案をより明らかにするために、実施例や従来技術の説明のために必要な図面を簡単に紹介する。以下に説明される図面が本発明の実施例に過ぎなく、当業者にとって、創造的な努力なしに、提供された図面に従って他の図面を得ることも可能であることは、自明である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施例により提供された二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
図2図2は、本発明の実施例により提供された別の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
図3図3は、本発明の実施例により提供された二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置のエネルギー準位の整合図である。
図4図4は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
図5図5は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
図6図6は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例における図面を合わせて、本発明の実施例における技術案について明確的かつ全面的に説明するが、述べる実施形態は、本発明の実施形態の一部だげであり、すべての実施形態ではないことが明らかである。当業者が本発明における実施形態に基づいて創造的な労働なしに得た他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0022】
以下、本発明の上記の目的、特徴および利点をより明らかにするためには、図面および具体的な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
図1を参照する。ここで、図1は、本発明の実施例により提供された二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
【0024】
前記装置は、第1のレーザー光源11、第2のレーザー光源12、第1のレーザーロッキングモジュール13、第2のレーザーロッキングモジュール14、試料室15、及び信号探査モジュール16を備える。
【0025】
前記第1のレーザー光源11は、連続的な第1の中赤外レーザーを送出するために使用される。前記第2のレーザー光源12は、連続的な第2の中赤外レーザーを送出するために使用される。前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーの波長は異なる。
【0026】
前記第1のレーザーロッキングモジュール13は、前記第1の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用される。前記第2のレーザーロッキングモジュール14は、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用される。なお、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーとが前記試料室15の光キャビティにロックした後、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーとが前記試料室に同一直線上である。
【0027】
図2を参照する。ここで、図2は、本発明の実施例により提供された別の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
【0028】
前記試料室15は、少なくともキャビティ長調整ユニット17を備える。
【0029】
前記キャビティ長調整ユニット17は、前記第1の中赤外レーザーの周波数及び前記第2の中赤外レーザーの周波数が目的同位体分子の異なるエネルギー準位と同時に一致するために、前記光キャビティのキャビティ長を調整して、前記光キャビティのモード周波数を同調し、さらに、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーの周波数を同調するために使用される。
【0030】
前記信号探査モジュール16は、レーザー周波数と目的同位体分子エネルギー準位とが同時に一致した後、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するために使用される。
【0031】
この実施例においては、図3を参考する。ここで、図3は、本発明の実施例により提供された二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置のエネルギー準位の整合図である。
【0032】
前記第1のレーザー光源11は、主に、図3に示すように、目的同位体分子エネルギー準位E1及びE2に一致するポンプ光、即ち、本発明で定義される第1の中赤外レーザーを供給するために使用される。
【0033】
前記第1のレーザー光源11が連続的な第1の中赤外レーザーを送出した後、前記第1のレーザーロッキングモジュール13と組み合わせて前記第1の中赤外レーザーを調整して、前記第1の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックし、前記第1の中赤外レーザーの周波数を前記光キャビティのうちの一つのモード周波数と一致させることが保証される。
【0034】
前記第2のレーザー光源12は、主に、図3に示すように、目的同位体分子エネルギー準位E2及びE3に一致する探査光、即ち、本発明で定義される第2の中赤外レーザーを供給するために使用される。
【0035】
前記第2のレーザー光源12が連続的な第2の中赤外レーザーを送出した後、前記第2のレーザーロッキングモジュール14と組み合わせて前記第2の中赤外レーザーを調整して、前記第2の中赤外レーザーも前記試料室15の光キャビティにロックし、前記第2の中赤外レーザーの周波数を前記光キャビティのうちの別の一つのモード周波数と一致させることが保証される。
【0036】
さらに、前記キャビティ長調整ユニット17と組み合わせて、試料室15の光キャビティのキャビティ長の調整を実現する。キャビティ長の調整により、前記光キャビティのモード周波数を変更し、そして前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーの周波数を同調し、前記第1の中赤外レーザーの周波数を目的同位体分子エネルギー準位E1及びE2に一致させ、かつ、前記第2の中赤外レーザーの周波数を目的同位体分子エネルギー準位E2及びE3に一致させる。つまり、前記第1の中赤外レーザーの周波数及び前記第2の中赤外レーザーの周波数が目的同位体分子の異なるエネルギー準位と同時に一致する。
【0037】
前記第1の中赤外レーザーの周波数及び前記第2の中赤外レーザーの周波数が目的同位体分子の異なるエネルギー準位と同時に一致した後、前記信号探査モジュール16と組み合わせて、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号、即ち、前記光キャビティを透過した前記第2の中赤外レーザーの透過信号を探査する。
【0038】
なお、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号の探査は、キャビティ増強吸収分光法(Cavity enhanced absorption spectroscopy)の信号、キャビティーリングダウン分光法(Cavity ring-down spectroscopy)の信号、ノイズ耐性空洞増強光学ヘテロダイン分子分光法(Noise-immune cavity enhanced optical heterodyne molecular spectroscopy)の信号のいずれかであってもよい。
【0039】
これから分かるように、本発明で提供される二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置は、目的同位体分子の励起及びスペクトルの探査に2つのレーザーと目的同位体分子の異なるエネルギー準位とを同時に一致させることが必要であるので、スペクトル検出の選択性を大幅に向上させ、スペクトル分解能を向上させ、炭素14同位体の定量的検出を実現する。
【0040】
また、従来のレーザー分光法に比べ、分解能が高く、常温下で炭素14同位体の定量的検出を実現することが可能である。
【0041】
つまり、本発明で提供される二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置は、二重波長エネルギー準位一致の思想を利用することで、目的同位体分子の選択と区別が実現され、炭素14同位体と他の炭素同位体、および炭素14同位体と他の分子同位体のスペクトルが効果的に区別される。
【0042】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、前記第1の中赤外レーザーの同調帯域幅が1MHzを超え、前記第2の中赤外レーザーの同調帯域幅が1MHzを超える。
この実施例では、前記第1の中赤外レーザーの送出波長は、早速同調可能な機能を持ち、その同調帯域幅が1MHzを超える。
また、前記第2の中赤外レーザーの送出波長も早速同調可能な機能を持ち、その同調帯域幅が1MHzを超える。
【0043】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、前記第1のレーザーロッキングモジュール13が前記第1の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第1のレーザーロッキングモジュール13が前記第1の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、かつエラー信号を生成するために使用されること、及び
前記第1のレーザーロッキングモジュール13がさらに前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成し、前記第1の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第1の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用されることを含む。
【0044】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、前記第2のレーザーロッキングモジュール14が前記第2の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用されるのは、
前記第2のレーザーロッキングモジュール14が前記第2の中赤外レーザーの周波数と位相を変調及び復調し、かつエラー信号を生成するために使用されること、及び
前記第2のレーザーロッキングモジュール14がさらに前記エラー信号に基づいて負帰還信号を生成し、前記第2の中赤外レーザーの周波数を制御し、前記第2の中赤外レーザーを前記試料室15の光キャビティにロックするために使用されることを含む。
この実施例においては、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーを同時に前記試料室15の光キャビティにロックすることが必要である。
なお、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーとが前記試料室15の光キャビティにロックされた後、前記第1の中赤外レーザーと前記第2の中赤外レーザーとが前記試料室中に同一直線上である。
【0045】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、前記光キャビティは、高フィネスの光キャビティであり、フィネスが10000を超える。
この実施例においては、前記試料室15の光キャビティは、高フィネスの光キャビティであり、そのフィネスの典型的な値が10000を超える。
【0046】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、前記キャビティ長調整ユニット17が圧電セラミックユニットである。
この実施例においては、圧電セラミックユニットを採用して前記高フィネスの光キャビティのキャビティ長を調整することで、キャビティ長調整の精度を向上させることができる。
【0047】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、図4を参照する。ここで、図4は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
前記試料室15は、温度制御ユニット18をさらに備える。
前記温度制御ユニット18は、前記光キャビティの温度を調整するために使用される。
調整後の前記光キャビティの温度変動幅が100mK未満である。
この実施例においては、前記温度制御ユニット18は、主に、高フィネスの光キャビティの温度の制御を実現するために使用され、温度制御後の光キャビティの温度変動幅が100mK未満である必要がある。
【0048】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、図5を参照する。ここで、図5は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
前記信号探査モジュール16は、探査ユニット19を備える。
前記探査ユニット19は、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号、即ち、前記光キャビティを透過した前記第2の中赤外レーザーの透過信号を探査するために使用される。
前記探査ユニット19が光キャビティ送出信号を探査するのは、キャビティ増強吸収分光法(Cavity enhanced absorption spectroscopy)の信号、キャビティーリングダウン分光法(Cavity ring-down spectroscopy)の信号、ノイズ耐性空洞増強光学ヘテロダイン分子分光法(Noise-immune cavity enhanced optical heterodyne molecular spectroscopy)の信号のいずれかであってもよい。
【0049】
さらに、本発明の上記の実施例に基づいて、図6を参照する。ここで、図6は、本発明の実施例により提供された他の二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の構造概略図である。
前記信号探査モジュール16は、タイミング制御ユニット20をさらに備える。
ここで、前記タイミング制御ユニット20は、前記キャビティ長調整ユニットと前記探査ユニット19の動作状態を制御するために使用される。
この実施例においては、前記タイミング制御ユニット20は、前記キャビティ長調整ユニット17(圧電セラミックユニット)を制御し、前記光キャビティキャビティ長を調整し、前記第1の中赤外レーザーの周波数及び前記第2の中赤外レーザーの周波数が目的同位体分子の異なるエネルギー準位と同時に一致した後、前記探査ユニット19を、光キャビティを通過した前記第2の中赤外レーザーの光キャビティ送出信号を探査するように制御する。
また、探査周期が終了した後、前記タイミング制御ユニット20は、さらに、前記キャビティ長調整ユニット17(圧電セラミックユニット)を制御し、前記光キャビティキャビティ長を続いて調整して、前記第1の中赤外レーザーおよび前記第2の中赤外レーザーと光キャビティ模式及び目的同位体分子に対応するエネルギー準位との一致を再開させるために使用される。
【0050】
さらに、本発明の全ての上記実施例に基づいて、本発明の別の実施例においては、本発明の上記実施例に記載された二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置を備える分光計が提供される。
該分光計は、該二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置の優位的な特性を持つ。
【0051】
以上、本発明で提供される二波長法による炭素14同位体の定量的検出のための装置及び分光計について詳細に説明されているが、本明細書で具体例により本発明の原理および実施形態を論述したが、以上の実施例の説明は、本発明の方法及び要旨を理解するために用いられたものでは過ぎない。また、当業者にとって、本発明の思想に基づいて具体的な実施形態および応用範囲において変更可能もある。このように、本明細書の内容は、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0052】
また、以下のことに留意する必要がある。本明細書においては、各実施例では、他の実施例と異なる点を中心に説明したような漸進の仕方で記載されており、各実施例の間に類似な部分が参照すれば分かれる。また、実施例に開示された装置に対して、他の実施例に開示された方法と対応しているため、説明が簡単にしたものであり、関連する点が方法に対する部分に参照すれば分かれる。
【0053】
なお、以下のことにも留意する必要がある。本明細書、第1および第2といった関係用語は、ある実体又は操作を別の実体又は操作を区別するために用いられるものでは過ぎなく、それらの実体又は操作の間に何かの事実的な関係又は順番を要求又は示唆するわけではない。しかも、用語「備える」、「含む」又は他のそれらのいずれかの変形用語は、非排除性の包含を意味するように意図される。それにより、一連の要素のプロセス、方法、物又は設備に固有される要素が含まれるか、又はプロセス、方法、物又は設備に固有される要素がさらに含まれる。さらなる制限がない限り、詞句「一つの...を含む」によって限定された要素は、プロセス中の他の要素、方法、物、又は要素を含む設備の存在を除外するわけではない。
【0054】
開示された実施例の上記の説明によって、当業者が本発明を実現又は実施することが可能となる。それらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって自明なものであろう。本明細書で定義される一般原理は、本発明の思想、および範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現することもできる。従って、本発明は、本明細書に示されるそれらの実施例に限られていることではなく、本明細書に開示される原理および新規の特徴に対応する最も広い範囲と一致する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6