(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
(21)【出願番号】P 2023096336
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕
(72)【発明者】
【氏名】富山 俊彦
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-128982(JP,A)
【文献】特開2012-099556(JP,A)
【文献】特開2013-179255(JP,A)
【文献】特開2014-207430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-H01L 21/449
H01L 21/60 -H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリを用いてワイヤを第1電極に接合する第1接合工程と、
前記ワイヤを繰り出し可能な状態で前記キャピラリを前記第1電極から離す動作により、前記ワイヤのうち前記第1電極に接合された先端領域、及び前記ワイヤのうち前記先端領域に対して前記第1電極とは反対側に位置する中間領域を前記キャピラリから導出させる繰出工程と、
前記ワイヤを保持した状態で前記キャピラリを前記第1電極に近づける動作と前記キャピラリを前記第1電極から離す動作とを繰り返すことにより、前記ワイヤのうち前記先端領域と前記中間領域との間に位置する第1屈曲部、及び、前記ワイヤのうち前記中間領域に対して前記先端領域とは反対側に位置する基端領域と前記中間領域との間に位置する第2屈曲部のそれぞれを繰り返して屈曲させる屈曲工程と、
前記ワイヤを保持した状態で前記キャピラリを前記第1電極から離す動作により、前記ワイヤが前記第1屈曲部で切断するように前記ワイヤを引っ張ることで、前記第1電極に接合されたピンワイヤを形成する引張工程と、
前記キャピラリを用いて前記中間領域をダミー領域に接合することで、前記中間領域及び前記第2屈曲部を前記ワイヤから除去する除去工程と、
前記キャピラリを用いて前記基端領域を第2電極に接合する第2接合工程と、を備え
、
前記第1接合工程、前記繰出工程、前記屈曲工程、前記引張工程、前記除去工程及び前記第2接合工程は、この順に繰り返して実行される、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1接合工程は、前記先端領域の先端を溶融させる工程と、前記先端領域の先端を前記第1電極に接合する工程と、を有し、
前記除去工程は、前記中間領域の先端を溶融させる工程と、前記中間領域の先端を前記ダミー領域に接合する工程と、前記ワイヤが前記第2屈曲部で切断するように前記ワイヤを引っ張る工程と、前記基端領域の先端を溶融させる工程と、を有している、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダミー領域は、前記第1電極を含む半導体チップの表面のうち前記第1電極から離れた領域である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
ワイヤを供給可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、
前記ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記キャピラリを用いて前記ワイヤを第1電極に接合する第1信号と、
前記ワイヤを繰り出し可能な状態で前記キャピラリを前記第1電極から離す動作により、前記ワイヤのうち前記第1電極に接合された先端領域、及び前記ワイヤのうち前記先端領域に対して前記第1電極とは反対側に位置する中間領域を前記キャピラリから導出させる第2信号と、
前記ワイヤを保持した状態で前記キャピラリを前記第1電極に近づける動作と前記キャピラリを前記第1電極から離す動作とを繰り返すことにより、前記ワイヤのうち前記先端領域と前記中間領域との間に位置する第1屈曲部、及び、前記ワイヤのうち前記中間領域に対して前記先端領域とは反対側に位置する基端領域と前記中間領域との間に位置する第2屈曲部のそれぞれを繰り返して屈曲させる第3信号と、
前記ワイヤを保持した状態で前記キャピラリを前記第1電極から離す動作により、前記ワイヤが前記第1屈曲部で切断するように前記ワイヤを引っ張ることで、前記第1電極に接合されたピンワイヤを形成する第4信号と、
前記キャピラリを用いて前記中間領域をダミー領域に接合することで、前記中間領域及び前記第2屈曲部を前記ワイヤから除去する第5信号と、
前記キャピラリを用いて前記基端領域の先端を第2電極に接合する第6信号と、を前記ボンディングユニットへ送信
し、
前記ボンディングユニットは、前記第1信号に応じた動作、前記第2信号に応じた動作、前記第3信号に応じた動作、前記第4信号に応じた動作、前記第5信号に応じた動作及び前記第6信号に応じた動作をこの順に繰り返して実行する、ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングに関する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような技術では、ワイヤの先端が電極に接合された後、ワイヤのうちの複数の屈曲部のそれぞれが繰り返して屈曲される。ワイヤが複数の屈曲部のうち電極に近い屈曲部で切断されると、電極に接合されたピンワイヤが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、複数の屈曲部のうち電極から離れた屈曲部が、ピンワイヤが形成された後においてもワイヤに残存している場合がある。そのため、次回のワイヤボンディングの際に、ワイヤが予定の切断位置ではなく、上記の残存の屈曲部で切断される場合があり、その場合には、ワイヤボンディングの成功率の改善が求められる。
【0005】
本発明は、ワイヤボンディングの成功率を高めることができる半導体装置の製造方法及びワイヤボディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の製造方法は、キャピラリを用いてワイヤを第1電極に接合する第1接合工程と、ワイヤを繰り出し可能な状態でキャピラリを第1電極から離す動作により、ワイヤのうち第1電極に接合された先端領域、及びワイヤのうち先端領域に対して第1電極とは反対側に位置する中間領域をキャピラリから導出させる繰出工程と、ワイヤを保持した状態でキャピラリを第1電極に近づける動作とキャピラリを第1電極から離す動作とを繰り返すことにより、ワイヤのうち先端領域と中間領域との間に位置する第1屈曲部、及び、ワイヤのうち中間領域に対して先端領域とは反対側に位置する基端領域と中間領域との間に位置する第2屈曲部のそれぞれを繰り返して屈曲させる屈曲工程と、ワイヤを保持した状態でキャピラリを第1電極から離す動作により、ワイヤが第1屈曲部で切断するようにワイヤを引っ張ることで、第1電極に接合されたピンワイヤを形成する引張工程と、キャピラリを用いて中間領域をダミー領域に接合することで、中間領域及び第2屈曲部をワイヤから除去する除去工程と、キャピラリを用いて基端領域を第2電極に接合する第2接合工程と、を備える。
【0007】
この半導体装置の製造方法では、第1電極に接合されたピンワイヤが形成された後、中間領域及び第2屈曲部がワイヤから除去される。これにより、ワイヤに残存する第2屈曲部がワイヤから除去されるため、次回の引張工程において、予定の切断位置と異なる位置でのワイヤの切断が抑制される。したがって、この半導体装置の製造方法によれば、ワイヤボンディングの成功率が高まる。
【0008】
第1接合工程は、先端領域の先端を溶融させる工程と、先端領域の先端を第1電極に接合する工程と、を有し、除去工程は、中間領域の先端を溶融させる工程と、中間領域の先端をダミー領域に接合する工程と、ワイヤが第2屈曲部で切断するようにワイヤを引っ張る工程と、基端領域の先端を溶融させる工程と、を有していてもよい。これにより、ワイヤから中間領域及び第2屈曲部を確実に除去することができるだけではなく、第1接合工程及び引張工程のそれぞれの少なくとも一部と同様に除去工程を実施することができ、工程の簡略化を実現することができる。
【0009】
ダミー領域は、第1電極を含む半導体チップの表面のうち第1電極から離れた領域であってもよい。これにより、ダミー領域を容易に確保することができる。
【0010】
本発明のワイヤボンディング装置は、ワイヤを供給可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備え、制御ユニットは、キャピラリを用いてワイヤを第1電極に接合する第1信号と、ワイヤを繰り出し可能な状態でキャピラリを第1電極から離す動作により、ワイヤのうち第1電極に接合された先端領域、及びワイヤのうち先端領域に対して第1電極とは反対側に位置する中間領域をキャピラリから導出させる第2信号と、ワイヤを保持した状態でキャピラリを第1電極に近づける動作とキャピラリを第1電極から離す動作とを繰り返すことにより、ワイヤのうち先端領域と中間領域との間に位置する第1屈曲部、及び、ワイヤのうち中間領域に対して先端領域とは反対側に位置する基端領域と中間領域との間に位置する第2屈曲部のそれぞれを繰り返して屈曲させる第3信号と、ワイヤを保持した状態でキャピラリを第1電極から離す動作により、ワイヤが第1屈曲部で切断するようにワイヤを引っ張ることで、第1電極に接合されたピンワイヤを形成する第4信号と、キャピラリを用いて中間領域をダミー領域に接合することで、中間領域及び第2屈曲部をワイヤから除去する第5信号と、キャピラリを用いて基端領域の先端を第2電極に接合する第6信号と、をボンディングユニットへ送信する。
【0011】
このワイヤボンディング装置によれば、上述した半導体装置の製造方法と同様に、ワイヤボンディングの成功率が高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤボンディングの成功率を高めることができる半導体装置の製造方法及びワイヤボディング装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るワイヤボンディング装置の構成図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿っての断面図である。
【
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【
図7】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【
図8】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置の構成図である。
図1に示されるワイヤボンディング装置10は、半導体装置1(
図2参照)を製造するための装置である。
図1に示されるように、ワイヤボンディング装置10は、搬送ユニット20と、ボンディングユニット30と、制御ユニット40と、を備えている。搬送ユニット20は、半導体チップ11をボンディングエリアに搬送する。ボンディングユニット30は、キャピラリ31と、ワイヤクランパ32と、ボンディングツール33と、移動機構34と、を有している。
【0016】
キャピラリ31は、ワイヤ50を供給可能に構成されている。キャピラリ31は、例えば筒状を呈している。キャピラリ31の先端31aの直径は、キャピラリ31の基端の直径よりも小さい。ワイヤ50は、キャピラリ31の内部空間に挿通される。ワイヤ50は、キャピラリ31の基端に対して導入されると共に、キャピラリ31の先端31aから導出される。キャピラリ31は、ワイヤ50に対して熱、超音波又は圧力を提供する。キャピラリ31は、ボンディングツール33に装着されている。キャピラリ31は、ボンディングツール33に対して着脱可能である。
【0017】
ワイヤクランパ32は、キャピラリ31に対して半導体チップ11とは反対側に配置されている。ワイヤクランパ32は、開閉機構を有している。ワイヤ50は、ワイヤクランパ32の開閉機構を通過する。ワイヤクランパ32が閉状態である場合には、ワイヤ50がワイヤクランパ32によって挟持される結果、キャピラリ31に対するワイヤ50の移動が停止される。ワイヤクランパ32が開状態である場合には、ワイヤクランパ32によるワイヤ50の挟持が開放される結果、キャピラリ31に対するワイヤ50の移動が許可される。
【0018】
ボンディングツール33は、移動機構34に固定されている。移動機構34は、ボンディングツール33を移動させることで、半導体チップ11に対してキャピラリ31を移動させる。
【0019】
制御ユニット40は、搬送ユニット20及びボンディングユニット30の動作を制御する。制御ユニット40は、搬送ユニット20及びボンディングユニット30のそれぞれに対して制御信号を送信する。制御ユニット40は、移動機構34の動作の制御によって、半導体チップ11に対するキャピラリ31の位置を制御する。制御ユニット40は、キャピラリ31による熱、超音波又は圧力の提供を制御する。制御ユニット40は、ワイヤクランパ32の開閉を制御する。
【0020】
図2及び
図3に示されるように、半導体装置1は、半導体チップ11と、複数のピンワイヤ12と、複数のダミーボンディング部(圧着ボール)13と、を有している。半導体チップ11は、例えば回路基板の主面上に設けられている。複数のピンワイヤ12は、半導体チップ11の表面11a上に設けられている。複数のピンワイヤ12は、Y軸方向に沿って並んでいる。複数のダミーボンディング部13は、半導体チップ11の表面11a上に設けられている。複数のダミーボンディング部13は、Y軸方向に沿って並んでいる。複数のピンワイヤ12と複数のダミーボンディング部13とは、X軸方向において隣り合っている。
【0021】
半導体チップ11は、複数の電極(第1電極)14を有している。複数の電極14は、Y軸方向に沿って並んでいる。各電極14は、半導体チップ11の表面11aに露出している。半導体チップ11の表面11aは、複数のダミー領域11bを含んでいる。ダミー領域11bは、半導体チップ11の表面11aのうち電極14から離れた領域である。複数のダミー領域11bは、Y軸方向に沿って並んでいる。複数の電極14と複数のダミー領域11bとは、X軸方向において隣り合っている。
【0022】
各電極14には、ピンワイヤ12が形成されている。ピンワイヤ12は、Z軸方向(半導体チップ11の表面11aに対して垂直な方向)に沿って延びている。ピンワイヤ12の先端は、その他の半導体チップの電極に接合される。半導体チップ11とその他の半導体チップとは、ピンワイヤ12によって電気的に接続される。
【0023】
ピンワイヤ12の断面は、例えば円形状を呈している。ピンワイヤ12の直径は、例えば20μm程度である。ピンワイヤ12の長さは、例えば100μm以上である。ピンワイヤ12の材料は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はこれらの合金である。
【0024】
ダミー領域11bには、ダミーボンディング部13が形成されている。ダミーボンディング部13は、その他の半導体チップの電極に接合されない。ダミーボンディング部13は、半導体装置1の部品として機能しない。
【0025】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。
図4に示されるように、半導体装置1の製造方法は、第1接合工程S1と、繰出工程S2と、屈曲工程S3と、引張工程S4と、除去工程S5と、第2接合工程S6と、を備えている。
【0026】
第1接合工程S1は、工程S11及び工程S12を含んでいる。第1接合工程S1では、キャピラリ31を用いてワイヤ50を電極14に接合する。具体的には、
図5の(a)に示されるように、工程S11では、ワイヤ50の先端(テール)50aに球状のFAB(Free Air Ball)57が形成される。工程S11では、ワイヤ50がキャピラリ31に挿通された状態で、先端50aで電気トーチによる放電等が発生する。これにより、先端50a(後述する先端領域51の先端)が溶融する。溶融した先端50aが凝固するとFAB57が形成される。なお、FABは、イニシャルボール又は初期ボールとも称される。
【0027】
図5の(b)に示されるように、工程S12では、ワイヤクランパ32の開状態が維持されつつ、キャピラリ31から超音波が放射されると共にキャピラリ31が電極14に近づけるように移動される。これにより、FAB57が電極14に対して押圧され、その結果、FAB57が変形すると共に電極14に接合される。FAB57が電極14に接合されると、ボンディング部58が形成される。第1接合工程S1では、制御ユニット40が、キャピラリ31を用いてワイヤ50を電極14に接合する第1信号をボンディングユニット30へ送信する。
【0028】
図4に示されるように、繰出工程S2は、工程S21及び工程S22を含んでいる。繰出工程S2では、ワイヤ50を繰り出し可能な状態でキャピラリ31を電極14から離す動作により、ワイヤ50の一部をキャピラリ31から導出させる。具体的には、
図5の(c)に示されるように、工程S21では、ワイヤクランパ32の開状態が維持されつつ、キャピラリ31が、Z軸方向において電極14から離れた位置であって、XY面(
図2及び
図3参照)において電極14から離れた位置に移動される。工程S21では、ワイヤ50の先端領域51がキャピラリ31から導出される。先端領域51は、ワイヤ50のうち電極14に接合された領域である。なお、工程S21では、キャピラリ31が、例えば直線的に移動されてもよく、例えばZ軸方向に沿って移動された後XY平面に沿って移動されてもよい。
【0029】
図6の(a)に示されるように、工程S22では、ワイヤクランパ32の開状態が維持されつつ、キャピラリ31が、Z軸方向において電極14からさらに離れた位置であって、XY面において電極14と重なる位置に移動される。工程S22では、ワイヤ50の中間領域52がキャピラリ31から導出される。中間領域52は、ワイヤ50のうち先端領域51に対して電極14とは反対側に位置する領域である。繰出工程S2では、制御ユニット40が、ワイヤ50を繰り出し可能な状態でキャピラリ31を電極14から離す動作により、先端領域51及び中間領域52をキャピラリ31から導出させる第2信号をボンディングユニット30へ送信する。
【0030】
屈曲工程S3では、ワイヤ50を保持した状態でキャピラリ31を電極14に近づける動作とキャピラリ31を電極14から離す動作とを繰り返す。具体的には、
図6の(b)及び(c)に示されるように、屈曲工程S3では、ワイヤクランパ32の閉状態が維持されつつ、キャピラリ31がZ軸方向に沿って往復移動される。屈曲工程S3では、第1屈曲部54、第2屈曲部55及び第3屈曲部56のそれぞれが、繰り返して屈曲される。第1屈曲部54は、ワイヤ50のうち先端領域51と中間領域52との間に位置する領域である。第2屈曲部55は、ワイヤ50のうち中間領域52と基端領域53との間に位置する領域である。第3屈曲部56は、ワイヤ50のうち電極14に接合された接合部を含む領域である。
【0031】
第1屈曲部54、第2屈曲部55及び第3屈曲部56のそれぞれは、ワイヤ50の塑性変形によって形成される。キャピラリ31がZ軸方向において往復移動すると、第1屈曲部54の疲労に起因して第1屈曲部54の機械的強度が低下する。屈曲工程S2では、制御ユニット40が、ワイヤ50を保持した状態でキャピラリ31を電極14に近づける動作とキャピラリ31を電極14から離す動作とを繰り返すことにより、第1屈曲部54、第2屈曲部55及び第3屈曲部56のそれぞれを繰り返して屈曲させる第3信号をボンディングユニット30へ送信する。
【0032】
引張工程S4では、ワイヤ50を保持した状態でキャピラリ31を電極14から離す動作により、ワイヤ50を引っ張る。具体的には、
図7の(a)に示されるように、引張工程S4では、ワイヤクランパ32の閉状態が維持されつつ、キャピラリ31がZ軸方向に沿って電極14から離れるように移動される。引張工程S4では、ワイヤ50が第1屈曲部54で切断するようにワイヤ50が引っ張られる。これにより、電極14に接合されたピンワイヤ12が形成される。引張工程S4では、制御ユニット40が、ワイヤ50を保持した状態でキャピラリ31を電極14から離す動作により、ワイヤ50が第1屈曲部54で切断するようにワイヤ50を引っ張ることで、電極14に接合されたピンワイヤ12を形成する第4信号をボンディングユニット30へ送信する。なお、第1屈曲部54の一部は、先端領域51及び中間領域52のそれぞれに残存する。
【0033】
図4に示されるように、除去工程S5は、工程S51、工程S52、工程S53及び工程S54を含んでいる。除去工程S5では、キャピラリ31を用いて中間領域52をダミー領域11bに接合することで、中間領域52及び第2屈曲部55をワイヤ50から除去する。具体的には、
図7の(b)に示されるように、工程S51では、工程S11と同様に、ワイヤ50の新たな先端50b(中間領域52の先端)が溶融される結果、新たなFAB57Aが形成される。工程S51で溶融される中間領域52の長さは、工程S11で溶融される先端領域51の長さよりも長い。本実施形態では、中間領域52のほとんどが溶融される。
【0034】
続いて、
図7の(c)に示されるように、工程S52では、工程S12と同様に、FAB57Aがダミー領域11bに対して押圧される。これにより、ワイヤ50の先端50bがダミー領域11bに接合される結果、新たなボンディング部58Aが形成される。
【0035】
続いて、
図8の(a)に示されるように、工程S53では、ワイヤクランパ32の閉状態が維持されつつ、キャピラリ31がZ軸方向に沿ってダミー領域11bから離れるように移動される。工程S53では、ワイヤ50が第2屈曲部55で切断するようにワイヤ50が引っ張られる。これにより、ダミー領域11bに接合されたダミーボンディング部13が形成されると共に、ワイヤ50から中間領域52が除去される。なお、第2屈曲部55の一部は、基端領域53に残存する。
【0036】
続いて、
図8の(b)に示されるように、工程S54では、ワイヤ50の新たな先端50c(基端領域53の先端)が溶融される結果、新たなFAB57Bが形成される。これにより、基端領域53に残存している第2屈曲部55が除去される。このように、除去工程S5では、中間領域52及び第2屈曲部55が、いわゆるボールボンディングによってワイヤ50から除去される。除去工程S5では、制御ユニット40が、キャピラリ31を用いて中間領域52をダミー領域11bに接合することで、中間領域52及び第2屈曲部55をワイヤ50から除去する第5信号をボンディングユニット30へ送信する。除去工程S5によれば、屈曲による疲労が生じたすべての領域がワイヤ50から除去される。
【0037】
続いて、
図8の(c)に示されるように、第2接合工程S6では、工程S12と同様に、FAB57Bが新たな電極(第2電極)14に対して押圧される。これにより、ワイヤ50の先端50cが新たな電極14に接合される結果、新たなボンディング部58Bが形成される。第2接合工程S6では、制御ユニット40が、ワイヤ50の先端50cを新たな電極14に接合する第6信号をボンディングユニット30へ送信する。本実施形態では、上述したような工程が繰り返されることで、複数のピンワイヤ12及び複数のダミーボンディング部13が形成される。
【0038】
以上説明したように、半導体装置1の製造方法では、電極14に接合されたピンワイヤ12が形成された後、中間領域52及び第2屈曲部55がワイヤ50から除去される。これにより、ワイヤ50に残存する第2屈曲部55がワイヤ50から除去されるため、次回の引張工程S4において、予定の切断位置と異なる位置でのワイヤ50の切断が抑制される。したがって、この半導体装置1の製造方法によれば、ワイヤボンディングの成功率が高まる。
【0039】
第1接合工程S1は、ワイヤ50の先端50a(先端領域51の先端)を溶融させる工程(工程S11)と、先端50aを電極14に接合する工程(工程S12)と、を有している。除去工程S5は、ワイヤ50の先端50b(中間領域52の先端)を溶融させる工程(工程S51)と、先端50bをダミー領域11bに接合する工程(工程S52)と、ワイヤ50が第2屈曲部55で切断するようにワイヤ50を引っ張る工程(工程S53)と、ワイヤ50の先端50c(基端領域53の先端)を溶融させる工程(工程S54)と、を有している。これにより、ワイヤ50から中間領域52及び第2屈曲部55を確実に除去することができるだけではなく、第1接合工程S1及び引張工程S4のそれぞれの少なくとも一部と同様に除去工程S5を実施することができ、工程の簡略化を実現することができる。
【0040】
ダミー領域11bは、電極14を含む半導体チップ11の表面11aのうち電極14から離れた領域である。これにより、ダミー領域11bを容易に確保することができる。
【0041】
ワイヤボンディング装置10によれば、上述した半導体装置1の製造方法と同様に、ワイヤボンディングの成功率が高まる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0043】
実施形態では、中間領域52及び第2屈曲部55が、ボールボンディングによってワイヤ50から除去される例が示されたが、中間領域52及び第2屈曲部55は、例えばウェッジボンディングによってワイヤ50から除去されてもよい。具体的には、引張工程S4の後、ワイヤクランパ32の開状態が維持されつつ、基端領域53の一部がキャピラリ31から導出される。続いて、キャピラリ31がダミー領域11bに近づけるように移動される。これにより、基端領域53のうちの所定の領域がダミー領域11bに対して押圧されることで、基端領域53がダミー領域11bに接合される。ダミー領域11bへの基端領域53の押圧の際には、キャピラリ31から熱又は超音波が提供されてもよい。続いて、ワイヤクランパ32の閉状態が維持されつつ、基端領域53が切断するようにキャピラリ31がダミー領域11bから離れるように移動される。ウェッジボンディングによっても、ボールボンディングと同様に、屈曲による疲労が生じた領域をワイヤ50から除去することができる。
【0044】
実施形態では、引張工程S4においてワイヤ50が第1屈曲部54で切断される例が示されたが、ワイヤ50は、第1屈曲部54ではなく、第3屈曲部56で切断される場合がある。その理由は下記のとおりである、工程S12でFAB57が電極14に接合される際にFAB57の金属結晶の大きさが変化するため、FAB57の金属結晶の大きさと先端領域51の金属結晶の大きさとが互いに異なる場合がある。その場合、ワイヤ50のうちFAB57と先端領域51との境界領域(金属結晶の大きさが変化する領域)の機械的強度は、FAB57又は先端領域51の機械的強度よりも小さい傾向にある。そのため、引張工程S4でワイヤ50が引っ張られると、ワイヤ50が第1屈曲部54に比べて第3屈曲部56で切断されやすい場合がある。このような場合には、第3屈曲部56で切断されたワイヤ50の新たな先端に新たなFABが形成されてもよい。これにより、ワイヤ50の先端に残存する第3屈曲部56が除去される。続いて、当該新たなFABが再び電極14に対して押圧されることで、新たなボンディング部が形成されてもよい。これにより、ワイヤ50が引っ張られると、ワイヤ50が第1屈曲部54で切断されやすくなる。なお、ワイヤ50が第3屈曲部56で切断される可能性が比較的高い場合には、工程S12では、FAB57がダミー領域に対して押圧されてもよい。第3屈曲部56がワイヤ50から除去された後に形成された新たなFABが電極14に対して押圧されてもよい。
【0045】
実施形態では、ダミー領域11bが半導体チップ11の表面11aのうち電極14から離れた領域である例が示されたが、ダミー領域11bは、次回のボンディングの対象である新たな電極(第2電極)14であってもよい。ダミー領域11bは、半導体装置1から離れた部材(例えばダミーステージ等)の所定の領域であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…半導体装置、10…ワイヤボンディング装置、11…半導体チップ、11a…表面、11b…ダミー領域、14…電極、30…ボンディングユニット、40…制御ユニット、50…ワイヤ、51…先端領域、52…中間領域、53…基端領域、54…第1屈曲部、55…第2屈曲部。
【要約】
【課題】ワイヤボンディングの成功率を高めることができる半導体装置の製造方法及びワイヤボディング装置を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、キャピラリ31を用いてワイヤ50を電極14に接合する第1接合工程と、ワイヤ50の先端領域51及びワイヤ50の中間領域52がキャピラリ31から導出されるように、キャピラリ31を移動させる繰出工程と、ワイヤ50の第1屈曲部54及びワイヤ50の第2屈曲部55のそれぞれを繰り返して屈曲させる屈曲工程と、ワイヤ50が第1屈曲部54で切断するようにワイヤ50を引っ張ることで、電極14に接合されたピンワイヤ12を形成する引張工程と、中間領域52をダミー領域11bに接合することで、中間領域52及び第2屈曲部55をワイヤ50から除去する除去工程と、基端領域53を新たな電極14に接合する第2接合工程と、を備える。
【選択図】
図8