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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 9/04 20180101AFI20240830BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240830BHJP
   F21S 8/02 20060101ALI20240830BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240830BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20240830BHJP
   F21V 9/06 20180101ALI20240830BHJP
   H01L 33/00 20100101ALN20240830BHJP
   H01L 33/48 20100101ALN20240830BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240830BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240830BHJP
【FI】
F21V9/04
F21S2/00 230
F21S8/02 410
F21V3/00 320
F21V3/02 500
F21V9/06
H01L33/00 L
H01L33/48
F21Y115:10
F21Y115:15
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018175799
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020047501
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000111166
【氏名又は名称】DNライティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】宇藤山 肇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸哉
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】高橋 学
【審判官】北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-45111(JP,A)
【文献】特開2017-27916(JP,A)
【文献】特開2005-347202(JP,A)
【文献】特開2015-32354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/04, F21V 9/06, F21S2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
該発光素子を内部に搭載し、該発光素子から発せられた光を外部に出射するための開口を備えた筐体と、
前記開口を塞ぐように設けられたUV・IRカットフィルタと、
該カットフィルタの外側に設けられた平面状の板状部材である拡散フィルタとを備えてなる照明器具。
【請求項2】
前記UV・IRカットフィルタと前記拡散フィルタが、隣接して重ねられた請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記UV・IRカットフィルタと、前記拡散フィルタが間隔をおいて設けられた請求項1記載の照明器具。
【請求項4】
前記UV・IRカットフィルタが、樹脂製である請求項1から3のいずれか一項に記載の照明器具。
【請求項5】
前記UV・IRカットフィルタが、透明のアクリル板にUV・IRカット膜を蒸着してなるものである請求項4記載の照明器具。
【請求項6】
前記UV・IRカットフィルタが、410nm以下の近紫外域および740nm以上の近赤外域の波長の光をカットするフィルタである請求項1記載の照明器具。
【請求項7】
前記照明器具が、LEDモジュールである請求項1から6のいずれか一項に記載の照明器具。
【請求項8】
前記照明器具が、LEDモジュールと電源部を備えた照明装置である請求項1から6のいずれか一項に記載の照明器具。
【請求項9】
前記照明器具が、ダウンライトである請求項1から6のいずれか一項に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明器具、特にLED等の発光素子を搭載した照明器具に関するものである。ここで照明器具とは、広く可視光を発光するあらゆる照明用器具を意味し、例えばLED照明器具の場合、商用電源からの交流をLED点灯用の直流に変換する電源部を備えたLED照明器具に限らず、電源部を備えない発光部だけのLEDモジュールを含み、また、その形態も、硬質ケースにLED発光素子を配列搭載したハードケースのものに限らず、軟質ケースあるいはチューブにLED発光素子を配列搭載したフレキシブルタイプのものを含み、LED素子の配列も、直線状に限らず、円環状のもの、あるいはランダムに配列したものも含む。さらに照明器具の形態も、天井、壁、床、樹木、建物の外壁、あるいは商品陳列棚の棚板、ショ―ケース等各種の取付け対象に合わせて種々の形態をとるものを含む。したがって、例えば天井埋込式のダウンライトの形態をとってもよく、その形状も、円形、矩形、楕円等各種の形状をとり得るものである。
また、必ずしもLED発光素子を搭載した照明器具に限定されるものでもなく、後述する発明の目的とする課題解決に寄与するものであれば、別種の発光素子を搭載した照明器具にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、LED素子を多数配列して内蔵するLEDモジュールを搭載したLED照明器具が広く普及し、例えば商品陳列棚の棚板下面やショーケースの中に取り付けられて商品を照明するために使用されている。あるいは、床に埋め込まれたLED照明器具が床面から室内を照明するインテリア用の照明器具も知られている。このような長尺LED照明器具は広く知られており、この種の装置に関する特許出願は多数見られる。例えば特許文献1。
これら各種の用途に使用されるLED照明器具のLED発光素子から発光される光は、基本的に可視光(400~800 nm)であるが、近紫外線や近赤外線を含んでいるため長時間照射すると近紫外線により被照射物が変色したり退色することがあり、また、近赤外線により熱や熱による乾燥によって被照射物が変質したりすることがある。この問題は、衣服、装飾品などの陳列棚やショーケース、あるいは美術館や博物館においては商品や展示物の価値を下げることになり看過できない。また、食品のショーケースでも同様である。
【0003】
そのような問題を解決するため、近紫外線と近赤外線をカットするフィルタを設けることが考えられるが、本発明者らの研究によれば、それらのカットフィルタを用いると照明器具から照射される光が照射角度によって緑色の色味を帯び、対象物に緑味を帯びた線状の光を照射することが判明した。特に、照明器具のケースの縁部の影となる照射部と非照射部の境界近辺にこの緑味を帯びた色が観察され、見た目に不都合があり、好ましくない。これは、偏光による色分離で緑の光の線が生じるためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-179014号公報
【文献】特開2017-27916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するため、発光素子を搭載した照明器具において、発光素子から発せられる光の近紫外線と近赤外線をカットして被照射物の退色、変質を抑制するとともに緑味の光が被照射物に照射されるのを防止することができる照明器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するための研究の過程で、UV・IRカットフィルタの外に光拡散板を配してカットフィルタを透過した光を拡散させてみたところ、前記緑味の光が拡散されて目立たくなることを発見した。すなわち、本発明による照明器具は、発光素子を内部に搭載し、この発光素子から射出された光を外部に射出するための開口を備えた筐体の開口を塞ぐようにUV・IRカットフィルタを設けるとともに、このカットフィルタの外側に拡散フィルタを設けたことを特徴とするものである。
言い換えれば、本発明による照明器具は、発光素子と、この発光素子を内部に搭載し、発光素子から出射された光を外部に出射するための開口を備えた筐体と、この開口を塞ぐように設けられたUV・IRカットフィルタと、このカットフィルタの外側に設けられた拡散フィルタとを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明による照明器具において、前記UV・IRカットフィルタと前記拡散フィルタは、隣接して重ねられてもよいし、間隔をおいて設けられてもよい。
【0008】
前記UV・IRカットフィルタは樹脂製であることが望ましい。具体的にはUV・IRカットフィルタは、例えば、透明のアクリル板にUV・IRカット膜を蒸着してなるものでよい。
このUV・IRカットフィルタは、例えば410nm以下の近紫外域と740nm以上の近赤外域の波長の光をカットするフィルタとすることができる。
【0009】
本発明における発光素子としては、LED発光素子(発光ダイオード)が現在主流であるが、本発明の目的を達成するものであればLED発光素子に限定されるものではなく、例えば有機EL(OLED)など、今後開発が進んで照明器具として広く普及する可能性のあるものも使用可能であることは言うまでもない。
【0010】
本発明における発光素子から発せられた光を外部に出射するための開口を備えた筐体としては、長尺形状のものに限らず、ダウンライトのように円筒形のものも含まれ、その他UV・IRカットフィルタと拡散フィルタを装着できるものであれば、いかなる形状のものも使用可能である。
【0011】
また本発明において、筐体の開口を塞ぐように設けられるUV・IRカットフィルタとしては、アクリルなどの樹脂製の板にUV・IRカット膜を蒸着してなるものでよいが、フィルムを貼付したものでもよいし、樹脂製の板に色素を混入させたものとしてもよい。いずれにしても、近紫外線と近赤外線をカットできる分光透過率を有するものであればよく、必ずしも410nm以下の近紫外域と740nm以上の近赤外域の波長の光をカットするものでなくてもよく、多少カットする波長がこれらの波長からずれていてもよい。
樹脂製の場合は、照明器具に組み込むときの加工が容易であり、フィルタの破損を防止することができるという利点がある。
【0012】
本発明においてUV・IRカットフィルタの外側に設けられる拡散フィルタは、カットフィルタを透過した光の進行方向を拡散させる作用を有するものであればいかなるものでもよく、透光性を有する板状部材の表面あるいは内部に光を拡散あるいは散乱させる要素を含ませたものであればよい。例えば透明樹脂あるいはガラスの内部に光を反射する微細な粒子を混入させたものでもよいし、透明な板材の表面に微細な凹凸を設けて光を多方向に反射あるいは屈折させるものでもよい。また、その透明板材と凹凸は一体でもよいし、別体でもよい。別体の場合は、表面に凹凸を有する薄いフィルムを、平滑な表面を有する厚めの支持体に貼付したものでもよい。
【0013】
また、本発明においてUV・IRカットフィルタと拡散フィルタとは密着させてもよいし離してもよい。密着させる場合は、両方とも平面状とするのが施工上容易で有利であるが、平面状に限定されるものではない。両者を間隔をおいて設ける場合はカットフィルタと拡散フィルタの形状は異なっていてもよく、例えばカットフィルタを平面状とし、拡散フィルタをドーム形としてもよい。
【0014】
なお、特許文献2の特許請求の範囲には、光源と拡散性光学部材との間に特定の波長の光を吸収する色素を含むフィルタ素子を備えた照明装置が記載されており、それは文言上本発明と共通するが、発明の目的と効果は全く異なっているため、構成も異なっている。すなわち、特許文献2で吸収しようとする「特定の波長」は、近紫外線と近赤外線を意味するものではなく、可視光域の中央付近の特定の波長(585nm~595nmの黄色)であって、それを吸収してフィルタ素子の色を見えにくくすることを目的とするものであり、そこには、本発明の近紫外線と近赤外線による被照射物の退色、変質を防止する思想も構成もまったくなく、技術思想は本発明とは全く別異のものである。したがって、特許文献2には本発明の開示も示唆も全くなく、本発明の特許性に影響するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による照明器具は、光源から発せられる光の近紫外線と近赤外線をカットして、被照射物の退色、変質を抑制するとともに緑味の光が被照射物に照射されるのを防止するとともに、偏光により観測される緑の線状の光の発生を防止することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による照明器具の一実施形態であるLEDモジュールの一例を示す断面図
図2】本発明による照明器具に使用されるLEDの分光エネルギー分布を示すグラフ
図3】本発明による照明器具に使用されるUV・IRカットフィルタの分光透過率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による照明器具の断面図を示すものである。
【0018】
図1に示すように、この実施形態は照明器具としてLEDモジュールを対象とするものであり、LED発光素子1を備えた長尺(図の紙面に垂直方向に長い)基板2が断面コ字形の長尺型LEDモジュールの筐体3(ケーシング)の底壁3cに固着されている。筐体3の側壁3a、3bの図中上方は解放され筐体3の長手方向に長い開口3dとなっており、開口3dの近傍には、長さ方向に側壁3a、3bの内側面に長い溝が形成され、その溝にUV・IRカットフィルタ4と拡散フィルタ5を重ねたフィルタアセンブリが装填されている。施工時は、筐体3の端部に解放した溝の端から、2枚のフィルタ4,5をスライドさせて挿入することにより装填する。拡散フィルタ5は、必ずUV・IRカットフィルタの外側になるように装填される。
【0019】
この実施形態によれば、偏光による色分離で生じる緑の光は観測されない。この状態から拡散フィルタ5を外すと、緑の光が生じる。一方、拡散フィルタ5を付けたままUV・IRカットフィルタ4を単なる透明な板(クリアカバー)に置き換えると、偏光による色分離で生じる緑の光は観測されないが、近紫外線と近赤外線が残る。
【0020】
これは、図2の分光エネルギー分布と図3のUV・IRカットフィルタの分光透過率のグラフから明らかなように、カットフィルタ5によりLED発光素子1から発光される光のうち410nm以下の近紫外線と740nm以上の近赤外線がカットされた上、拡散フィルタ4によってその光が拡散されて緑の線が拡散されて目立たなくなるからであると考えられる。
【0021】
本発明による照明器具は上記実施形態に限られるものではなく、そのことは前述の通りであり、その内容は従来技術や技術常識に基づいて当業者にとっては十分に実現可能なものである。
本発明はそれら多様な変形例である実施形態を含むものであり、その範囲は本明細書に記載された上記実施形態と変更例の説明から当業者には明らかなものである。
【符号の説明】
【0022】
1 LED発光素子
2 LED基板
3 筐体
3a 側壁
3b 側壁
3c 底壁
4 UV・IRカットフィルタ
5 拡散フィルタ
図1
図2
図3