(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】情報保存のための方法、組成物およびデバイス
(51)【国際特許分類】
C12P 19/34 20060101AFI20240830BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C12P19/34 A ZNA
C07H21/04 A
(21)【出願番号】P 2018546548
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(86)【国際出願番号】 US2017020044
(87)【国際公開番号】W WO2017151680
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518309127
【氏名又は名称】イリディア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Iridia, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ポール・プレドキ
(72)【発明者】
【氏名】マジャ・キャシディ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】中根 知大
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0001371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの別個のモノマーまたはオリゴマーを含む荷電ポリマーをナノチップ中で合成する方法であって、
該ナノチップは、単一のモノマーまたはオリゴマーのみが1回の反応サイクルにおいて付加され得るように、1以上のモノマーまたはオリゴマーを緩衝液中で末端が保護された形態で荷電ポリマーに付加するための試薬を含む1以上の付加チャンバー;および、緩衝液を含むが、1以上のモノマーまたはオリゴマーの付加に必要な全ての試薬を含むわけではない、1以上の保存チャンバーを含み、ここでこれらのチャンバーは1以上のナノポアを含む1以上の膜により分離されており、ナノポアは、荷電ポリマーを通過させるのに十分な大きさであるが、1以上のモノマーまたはオリゴマーの付加のための少なくとも1つの試薬を通過させるには小さすぎるため、荷電ポリマーはナノポアを通過できるが、1以上のモノマーまたはオリゴマーを付加するための試薬の少なくとも1つは通過できず、そしてナノポアの直径が
2~5nmを有し、
該方法は、
(a)第1の末端および第2の末端を有する荷電ポリマーの第1の末端を電気的引力によって付加のチャンバーに移動させ、それによってモノマーまたはオリゴマーを第1の末端にブロック化された形態で付加する工程、
(b)付加されたモノマーまたはオリゴマーをブロック化された形態で有する荷電ポリマーの第1の末端を保存チャンバーに移動させる工程、
(c)付加されたモノマーまたはオリゴマーを脱ブロック化する工程、および
(d)所望のポリマー配列が得られるまで工程a~cを反復する工程、ここで工程a)で付加されるモノマーまたはオリゴマーは同一であるか、または異なっている、
を含むものであり、
荷電ポリマーはDNAであり、モノマーはヌクレオチドであり、そしてオリゴマーはオリゴヌクレオチドである、
方法。
【請求項2】
ナノチップ中で核酸を合成する方法であって、ナノチップは、少なくとも1つのナノポアを含む膜により分離されている少なくとも
付加チャンバーおよび
保存チャンバーを含み、合成は、第1の末端および第2の末端を有する核酸の第1の末端にヌクレオチドを付加するサイクルにより緩衝液中で実行され、ここで核酸の第1の末端は1以上の付加チャンバー(ヌクレオチ
ドを付加できる試薬を含む)と1以上の保存チャンバー(ヌクレオチ
ドを付加するのに必要な試薬を含まない)との間を電気的引力によって移動し、チャンバーは1以上のナノポアをそれぞれ含む1以上の膜により分離されており、ナノポアは核酸の通過を可能とするのに十分大きいが、ヌクレオチドの付加に必須の少なくとも1つの試薬の通過を可能とするには小さいものであり
、そしてナノポアの直径が
2~5nmを有する、方法。
【請求項3】
核酸にヌクレオチドを付加する試薬がポリメラーゼを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ヌクレオチドが3’保護形態で付加され、保存チャンバーが付加されたヌクレオチドを脱保護できる試薬を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー配列が機械可読コードに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
合成完了後に荷電ポリマーまたは荷電ポリマーのコピーがナノチップから取り出される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
合成完了後に荷電ポリマーがナノチップに残る、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの別個のモノマーまたはオリゴマーを含む荷電ポリマーを合成するためのナノチップであって、1以上のナノポアを含む膜により分離されている少なくとも第1および第2の反応チャンバーを含み、各反応チャンバーは荷電ポリマーをチャンバーに引き出す1以上の電極を含み、第1の反応チャンバーは、電解質媒体、および、モノマーまたはオリゴマーをポリマーに付加するための試薬をさらに含み、該モノマーまたはオリゴマーは、1回に1つのみが付加され得るように保護されており、第2の反応チャンバーは、電解質媒体、および、かくして付加されたモノマーまたはオリゴマーを脱保護するための試薬をさらに含み、ナノポアは、ポリマーの通過を可能とするのに十分大きいが、モノマーまたはオリゴマーをポリマーに付加するための試薬、および、かくして付加されたモノマーまたはオリゴマーを脱保護するための試薬の通過を可能とするには小さいものであり、荷電ポリマーはDNAであり、モノマーはヌクレオチドであり、そしてオリゴマーはオリゴヌクレオチドであり、そしてナノポアの直径が
2~5nmを有する、ナノチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年2月29日に出願された米国仮特許出願第62/301,538号、および2016年10月31日に出願された同第62/415,430号に対する優先権を主張し、これらの各内容は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、ポリマー(例えば核酸)を合成および配列決定するナノポアデバイスを用いた、情報の保存および取り出しに有用な新規の方法、組成物およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
今まで以上に多いデータを、今まで以上に小さいが、その容量はより大きい保存デバイスを用いて、物理媒体上または物理媒体内に保存するという継続的な要望がある。保存されるデータの量は2年毎に2倍のサイズになることが報告されており、ある研究によると、2020年までに我々が作製およびコピーするデータの量は年間44ゼタバイト、即ち44兆ギガバイトに達する。さらに、既存のデータ記憶媒体(ハードドライブ、光学式メディアおよび磁気テープなど)は相対的に不安定であり、長期保存後に破損する。
【0004】
長期間(例えば数十年または数百年)大容量のデータを保存するための代替の手法が緊急に必要とされている。
【0005】
DNAを用いてデータを保存することが提案されている。DNAは極めて安定であり、理論上は膨大なデータをコードでき、非常に長期間データを保存できる。例えば、Bancroft, C., et al., Long-Term Storage of Information in DNA, Science (2001) 293: 1763-1765を参照のこと。さらに、保存媒体としてのDNAは従来のデジタル保存媒体のセキュリティリスクの影響を受けない。しかし、この着想を実行するための実用的な手法はない。
【0006】
例えば、WO2014/014991はDNAオリゴヌクレオチド上にデータを保存する方法を記述し、ここで情報は1つのヌクレオチドを1ビットとするバイナリ形式で、96ビット(96ヌクレオチド)のデータブロック、19ヌクレオチドのアドレス配列、並びに増幅および配列決定のための隣接配列を用いてコードされている。次いでコードは、配列をPCRを用いて増幅し、高速シークエンサー(Illumina HiSeq装置など)を用いて配列決定することによって読み取られる。その後、データブロック配列がアドレスタグを用いて正しい順序で配置され、アドレス配列および隣接配列が除去され、配列データがバイナリコードに翻訳される。このような手法にはかなりの制約がある。例えば、96ビットのデータブロックは(1文字毎またはスペース毎に従来の1バイトまたは8ビットを用いて)12文字しかコードできない。「ハウスキーピングな」情報に対する保存されている有用な情報の割合が低く、約40%の配列情報がアドレスおよび隣接DNAに使われる。該明細書は、54,898個のオリゴヌクレオチドを用いて一冊の本をコードすることを記述している。オリゴヌクレオチドを合成するのに使用されている、インクジェット印刷される高忠実度のDNAマイクロチップはオリゴのサイズを制限した(記述された159ヌクレオチド長が上限であった)。さらに、オリゴヌクレオチドの読み取りは増幅および単離を必要とし、これはエラーのさらなる可能性を導入する。WO2004/088585A2;WO03/025123A2;C. BANCROFT: "Long-Term Storage of Information in DNA", Science (2001) 293 (5536): 1763c-1765; COX J P L: "Long-term data storage in DNA", Trends in Biotechnology (2001)19(7): 247-250も参照のこと。
【0007】
25年間以上認識されているように、DNAの潜在的な情報密度および安定性は、DNAをデータ保存のための魅力的な媒体にしているが、大量のデータをこの形式で書き込み、読み取るための実用的な手法は未だない。
【発明の概要】
【0008】
我々は、核酸配列を合成するナノ流体システムおよび配列を読み取るナノポアリーダーを用いた、核酸保存のための新規な手法を開発した。我々の手法は、数百、数千または数数百万塩基長のDNA鎖の合成、保存および読み取りを可能にする。配列が長いため、情報密度が上述の手法よりもはるかに高くなるように、相対的に小さな割合の配列のみが同定情報に使われる。さらに、いくつかの実施態様において、合成された核酸はナノチップ上の特定の位置を有し、従って配列は同定情報なしで特定され得る。ナノチャンバーにおいて実行される配列決定は非常に迅速であり、ナノポアを介した配列の読み取りは極めて迅速であり得、最大で1秒毎に百万塩基の桁数であり得る。2種類の塩基のみを必要とするため、この配列決定は、4種類の塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)間を区別しなければならない配列決定の手段よりも迅速かつ正確であり得る。特定の実施態様において、2つの塩基は互いに対にならず、二次構造を形成せず、異なるサイズのものである。例えばこの目的のために、アデニンとシトシンは、ハイブリダイズする傾向があるアデニンとチミン、または類似のサイズであるアデニンとグアニンより良好である。
【0009】
いくつかの実施態様において、このシステムはデータをコードする長いポリマーを合成するのに使用され得、このポリマーは増幅および/または放出され得、次いで異なるシークエンサー上で配列決定され得る。他の実施態様において、該システムはカスタムDNA配列を提供するために使用され得る。さらなる他の実施態様において、該システムはDNA配列を読み取るために使用され得る。
【0010】
ある実施態様において使用されるナノチップは、少なくとも1つのナノポアによって連結されている少なくとも2つの別々の反応区画を含み、これは少なくともいくつかの成分が混合するのを妨げるが、DNAまたは他の荷電ポリマー(例えばRNAまたはペプチド核酸(PNA))の単一の分子のみを、ある反応区画から別の反応区画に制御可能な様式で通過させる。ポリマー(またはモノマーが付加されたポリマーの少なくとも末端)のある区画から別の区画への移行は、例えば大きすぎるために、または、基板または嵩高い部分に係留されているためにナノポアの通過を妨げられる酵素を使用して、ポリマーに連続的な操作/反応(塩基の付加など)を行うことを可能にする。ナノポアセンサーは、ポリマーの移動または位置およびその状態、例えばその配列や、試みた反応が成功したか否かを、折り返し報告する。これはデータを書き込み、保存し、読み取ることを可能にし、例えば、ここで、塩基配列は機械可読コード(例えば各塩基または塩基の群が1または0に対応する、バイナリコード)に対応する。
【0011】
従って、本発明は特に以下の実施態様を含む。
・少なくとも2つの異なるモノマーを含む荷電ポリマー(例えばDNA)の合成のためのナノチップ、ここで該ナノチップは1以上のナノポアによって分離されている2以上の反応チャンバーを含み、各反応チャンバーは、電解液、荷電ポリマーをチャンバー内に引き込むための1以上の電極、および、モノマーまたはオリゴマーのポリマーへの付加を促進する1以上の試薬を含む。ナノチップは、場合により、DNAをガイドし、運び、かつ/または制御する機能的要素と共に構成され得、場合によりDNAの円滑な流れを可能とするように、またはDNAに結合するように選択された物質で被覆または作成されていてもよく、ナノポアに近接した電極を提供および制御するナノ回路要素を含み得る。例えば、1以上のナノポアは、場合によりそれぞれが、ナノポアを通したポリマーの移動を制御でき、かつ/または、ナノポアとポリマーの境界面における電位、電流、抵抗または静電容量の変化を検出できる電極に結合していてもよく、それにより、ポリマーが1以上のナノポアを通過する際にその配列を検出し得る。特別な実施態様では、ポリメラーゼまたは部位特異的リコンビナーゼを用いてオリゴマーが合成される。いくつかの実施態様では、ポリマーは合成中に配列決定され、検出および場合により誤りの修正を可能にする。いくつかの実施態様では、かくして得られたポリマーはナノチップ上に保存され、ポリマーの配列中にコードされた情報にアクセスすることが望まれるときに配列決定され得る。
【0012】
・上記のナノチップを用いて、ポリマー、例えばDNAを合成する方法。
・配列が本質的にハイブリダイズしないヌクレオチド、例えばアデニンおよびシトシンヌクレオチド(AおよびC)のみからなり、例えばデータ保存の方法における使用のために、バイナリコードに対応する順番で配列されている一本鎖DNA分子。
・バイナリコードに対応する一連のヌクレオチド配列を含む二本鎖DNA、ここで、二本鎖DNAはさらに含む
・ナノポアシークエンサーを使用することを含む、DNAにコードされたバイナリコードを読み取る方法。
・上記ナノチップを用いて、少なくとも2つの異なるモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNAを作成する、データ保存の方法およびそのためのデバイス、ここで、該モノマーはバイナリコードに対応する順番で配列される。
【0013】
本発明の適用性のさらなる態様および範囲は、以下に提供される詳細な説明から明らかとなる。詳細な説明および特定の実施例は好ましい実施態様を示すが、説明のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、詳細な説明および添付の図面からより十分に理解される。
【
図1】
図1は、ナノポアによって穿孔された分離膜および膜の両側に電極を有する、単純な2つのチャンバーのナノチップの設計を示す。
【
図2】
図2は、荷電ポリマー、例えばDNAが、どのようにして陽極に引き寄せられるかを示す。
【
図3】
図3は、荷電ポリマー、例えばDNAが、どのようにして陽極に引き寄せられるかを示す。
【
図4】
図4は、電極の極性を反転させることにより、ポリマーが後退し得ることを示す。
【
図5】
図5は、電極の極性を反転させることにより、ポリマーが後退し得ることを示す。
【
図6】
図6は、DNA合成のための2つのチャンバーのナノチップの設計を示し、ポリメラーゼ酵素が一方のチャンバーに位置し、脱ブロック化酵素が他方のチャンバーに位置し、これらはいずれもナノポアを通過できない。
【
図7】
図7は、3’ブロック化dATP(A)が左のチャンバーに流入した際のアデニンヌクレオチドの付加を示し、電流はDNAを左のチャンバーに導くために「順方向」に設定されている。
【
図8】
図8は、オリゴヌクレオチドの脱保護を示し、従って、さらなるヌクレオチドが付加され得る。例えば、電流を「逆方向」に設定することによってDNAをそのチャンバーに移動させた後、脱保護が生じる。
【
図9】
図9は、3’ブロック化dCTP(C)の付加を示す。ある実施態様では、流体の流動を用いてこのチャンバーの内容物を交換する。例えば、図示されるように、以前にはこのチャンバーには「A」があった。
【
図10】
図10は、フローチャンバーが試薬を提供する単一のレーンとなる一方で、どのように複数の分離された保持チャンバーが提供され得るかを示す。
【0015】
【
図11】
図11は、DNAをチャンバーに結合することによって(図中、上のDNAフラグメント)、または、ナノポアを通過できない嵩高い基とDNAを共役することによって(図中、下のDNAフラグメント)、DNAをそのチャンバーに留まらせる手法を示す。この系において、DNAの一端は未だフローチャンバーに移動でき、さらなるヌクレオチドを受け取ることができるが、他端は保持チャンバーに留まる。
【
図12】
図12は、DNAがチャンバーの壁に結合し、複数の電極によって制御される構成を示す。
【
図13】
図13は、単純に電極の極性を制御することによって、所望の場合にどのようにDNAがチャンバー中に保持され得るかを示す。
【
図14】
図14は、DNAがチャンバーの表面に結合し、試薬が両側を自由に流動するアレイを示す。
【
図15】
図15は、分離膜に隣接する側に電極を有する代替的な設計を示し、これはより安価な製品を可能にする。
【
図16】
図16は、3つの区画の配置を示し、DNAは電極によって区画から区画へ移動され得る。この系は、合成中に試薬の有意な流動を必要としない。
【
図17】
図17は、3つの区画の配置において、試薬がどのように配置され得るかの例を示す。
【
図18】
図18は、ナノポアに隣接して係留されているオリゴヌクレオチドを示し、ナノポアは膜の両側に電極素子を有する。
【0016】
【
図19】
図19は、ナノポアを含む膜に沿って結合している一連のDNA分子を示し、それぞれはナノポアに隣接する電極の制御下にあり、膜の両側にフローレーンを伴う。例えば、図示されているように、左のフローレーンはバッファー洗浄/3’ブロック化dATP(A)/バッファー洗浄/3’ブロック化dCTP(C)/バッファー洗浄の流れを与え、ここでDNA分子は所望のヌクレオチドが存在する場合にのみフローチャンバー中に導かれる。右のレーンは脱ブロック化試薬を与え、ヌクレオチドの3’末端を脱保護し、さらなるヌクレオチドの付加を可能にする。ある実施態様では、左のレーンがバッファーで洗浄されている際に、脱ブロック化試薬が流れる。別の実施態様では、脱保護化剤は非常に嵩高く、ナノポアを通って左のレーンに渡れない。
【
図20】
図20は、概念実証実験を模式的に示し、ここでデータをコードするのに使用されるビットは、トポイソメラーゼにより結合した短いオリゴマーである。
【
図21】
図21は、概念実証実験を模式的に示し、ここでデータをコードするのに使用されるビットは、トポイソメラーゼにより結合した短いオリゴマーである。
【
図22】
図22は、概念実証実験を模式的に示し、ここでデータをコードするのに使用されるビットは、トポイソメラーゼにより結合した短いオリゴマーである。
【0017】
【
図23】
図23は、ナノポアシークエンサーのためのフォーマットを示し、ここでポリマー配列は容量変動を用いて読み取られる。この静電容量の読み出しのスキームにおいて、電極はコンデンサの上下のプレートを形成し、これはナノポアを含む膜によって分離されている。コンデンサは共振回路に埋め込まれ、ここで直流を振動させて荷電ポリマーをナノポアから引き出し得る。ポリマー、例えばDNAがナノポアを通過する際に、高周波インピーダンス分光法を用いて、静電容量の変化が測定される。特にDNAを用いるとき、この手法の大きな利点は、測定頻度が非常に高く(各サイクルに1測定が有効なので、100MHzの周波数は毎秒1億回の測定に相当する)、ナノポアを介するモノマーの移行よりもはるかに速くなり得ることである(例えば、DNAは、何らかの形で抑制されない限り、電流に応答して毎秒100万個のヌクレオチドの桁数の速度でナノポアを通過する)。
【0018】
【
図24】
図24は、例えば2ビットまたはバイナリコード化のための、2つの異なる種類のモノマーまたはオリゴマーを付加するのに適した、二重の付加チャンバーの配置を示す。図の上部は上面図を示す。下部は側面の断面図を示す。この実施態様における完全なデバイスは、最大で3つの独立して製造された層から組み立てられてウエハー接合により接合され得るか、または、単一の基板をエッチングすることによって形成され得る。チップは、電気制御層(1)、保存チャンバーの上に2つの付加チャンバーを含み、第1および第2の付加チャンバーへのナノポア導入部の間に荷電ポリマー(例えばDNA)が係留されるフルイディクス層(2)、および、電気的アース層(3)を含む。
【0019】
【
図25】
図25は、
図24の二重の付加チャンバーの配置の操作を示す。各付加チャンバーの底部にナノポアがあることが観察される(4)。ナノポアは、例えばFIB、TEM、ウェットエッチングもしくはドライエッチングを用いて、または誘電破壊により、穿孔することによって作成される。ナノポアを含む膜(5)は、例えば、1原子層から数十nmの厚さである。この膜は、例えば、SiN、BN、SiOx、グラフェン、遷移金属ジカルコゲナイド、例えばWS
2またはMoS
2から作成される。ナノポア膜(5)の下に、保存チャンバーまたは脱ブロック化チャンバー(6)があり、これは、付加チャンバーの1つにおいてモノマーまたはオリゴマーが付加された後にポリマーを脱保護するための試薬を含む(1回に1つのモノマーまたはオリゴマーのみが付加されるように、モノマーまたはオリゴマーは末端が保護された形式で付加されることが想起される)。ポリマー(7)は、電気制御層(1)において電極の極性を変化させることにより、付加チャンバーから出し入れできる。
【0020】
【
図26】
図26は、
図24および
図25と類似した配置の上面図を示すが、ここでは共通の保存チャンバーまたは脱ブロック化チャンバーを共有する4つの付加チャンバーがあり、ポリマーは4つの各チャンバーにアクセスできる位置(9)に係留される。この配置の断面図は
図24および
図25に示された通りであり、荷電ポリマーは、電気制御層(
図24における1)における電極を操作することによって、4つの各付加チャンバーに移動させ得る。
【0021】
【
図27】
図27は、複数の組の
図24および
図25に示される二重の付加チャンバーを有するナノポアチップの上面図を示し、これは複数のポリマーを並行して合成することを可能にする。モノマー(ここではAおよびGで表されるdATPおよびdGTPヌクレオチド)は、連続的な流路を通って各チャンバーにロードされる。1以上の共通の脱ブロック化剤のフローセルは、付加チャンバーの1つにおけるモノマーまたはオリゴマーの付加後に、ポリマーを脱保護することを可能にする。これはまた、ポリマーを要求に応じて分離し(例えば、DNAの場合に制限酵素を用いて、またはナノポアに隣接する表面からの化学的分離)、外部に集めることを可能にする。この特別な実施態様において、脱ブロック化剤のフローセルは、付加チャンバーを満たすために使用される流体ロードチャネルに対して垂直である。
【0022】
【
図28】
図28は、二重の付加チャンバーの配置のための配線のさらなる詳細を示す。電気制御層(1)は、金属またはポリシリコンで作られた配線を含む。配線の密度は、誘電体堆積(例えば、PECVD、スパッタリング、ALDなどによる)によって与えられる電気的隔離を伴う3次元スタッキングによって増大する。ある実施態様における付加チャンバーによる上部の電極との接触(11)は、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)(クライオ処理またはBOSCH処理)によるシリコン貫通電極(TSV)を用いてなされる。個々の電圧制御(12)は各付加チャンバーを個々に処理することを可能にし、これは複数のポリマーの配列を並列して微細制御することを可能にする。図の右側は複数の付加セルのための配線を図示する上面図を示す。電気アース層(3)は(示されるように)共通でもよく、またはセル間のクロスカップリングを減少させるために分割されていてもよい。
【0023】
【
図29】
図29は、付加チャンバーの制御電極(13)が、チャンバーの上部にある代わりにチャンバーの側面に巻き付ける形で配置されていてもよい、代替の構成を示す。
【0024】
【
図30】
図30は、実施例3に記述されるトポイソメラーゼ付加プロトコールが機能することを確認するSDS-PAGEゲルを示し、予想されるA5およびB5産物に対応するバンドが明確に視認できる。
【0025】
【
図31】
図31は、実施例5のPCR産物が正しいサイズであることを確認するアガロースゲルを示す。レーン0は25塩基対のラダーである;レーン1は実験の産物であり、線は予想される分子量に対応する;レーン2は負の対照#1である;レーン3は負の対照#2である;レーン4は負の対照#4である。
【0026】
【
図32】
図32は、実施例5に記載の制限酵素が予想される産物を生成することを確認するアガロースゲルを示す。左のラダーは100塩基対のラダーである。レーン1は切断されていないNAT1/NAT9cであり、レーン2は切断されたNAT1/NAT9cである。レーン3は切断されていないNAT1/NAT9clであり、レーン4は切断されたNAT1/NAT9clである。
【0027】
【
図33】
図33はDNAのナノポア付近への固定を示す。パネル(1)は、左のチャンバーにおいて、一端にオリガミ構造を有するDNAを示す(実際のナノチップにおいて、このような多数のオリガミ構造が左のチャンバー内に最初に存在する)。パネル(2)は右に陽極がある系を説明し、これはDNAをナノポアに導く。DNA鎖はナノポアを通過できるが、オリガミ構造は大きすぎて通過できず、従ってDNAは「はまり込む」。電流を止めるとDNAは拡散できる(パネル3)。DNA鎖の末端がナノポア付近の表面に接触すると、適切な化学により結合できる。パネル(4)では、制限酵素が添加され、これはDNAからオリガミ構造を切り取る。チャンバーを洗浄し、酵素および残留しているDNAを除去する。最終的な結果はナノポア付近に結合した単一のDNA分子であり、これはナノポアを通って行き来できる。
【0028】
【
図34】
図34は基本的な機能性のナノポアを示す。各パネルにおいて、y軸は電流(nA)であり、x軸は時間(秒)である。左のパネル「RFノイズのスクリーニング」はファラデーケージの有用性を示す。ナノポアを有さないチップをフローセル内に配置し、300mVをかける。ファラデーケージの蓋を閉じると(最初の矢印)、ノイズの減少が見られる。ラッチを閉じると(2番目の矢印)、小さなスパイクが生じる。電流は約0nAであることが分かる。ポアの作製後(中央のパネル)、300mVの適用(矢印)は約3.5nAの電流をもたらす。DNAをアースチャンバーに適用し、+300mVをかけると、DNAの移行(右のパネル)が電流の一過性の減少として観察され得る。(注釈、この場合にTSバッファーが使用されている:50mM Tris、pH8、1M NaCl。)ラムダDNAがこのDNA移行実験に使用されている。
【0029】
【
図35】
図35は、DNAオリガミ構造の主要な特徴を図示する簡略化した図を示す:大きな一本鎖領域、立方体のオリガミ構造、および、オリガミ構造付近の2つの制限部位(SwaIおよびAlwN1)の存在。
【0030】
【
図36】
図36は、作製されたDNAオリガミ構造の電子顕微鏡像を示し、予想されるトポロジーを立証する。オリガミを5mM Trisベース、1mM EDTA、5mM NaCl、5mM MgCl2中で作製した。オリガミ構造を維持するために、約5mMのMg
++濃度または約1MのNa
+/K
+濃度を有することが好ましい。オリガミ構造を500nMにて4℃で保存する。
【0031】
【
図37】
図37は、正しい組み立ておよび機能を確認するDNAオリガミの制限酵素切断を示す。左端のレーンはMWスタンダードを与える。オリガミをAlwN1およびSwa1で切断することによって、制限部位を試験する。4つの試験レーンは以下の試薬を含む(単位はマイクロリットル):
【表1】
試験レーン(1)は負の対照である;(2)はSwa1での切断である;(3)はAlwN1での切断である;(4)はSwa1/AlwN1での二重切断である。切断は室温で60分間行い、その後37℃で90分間行った。エチジウムブロマイド染色で可視化されたアガロースゲル1/2x TBE-Mg(5mM MgCl2を含む1/2x TBE)。いずれかの酵素での個々の切断はゲルにおいて移動度の効果を示さないが、両方の酵素での切断(レーン4)は、予想されるように異なる長さの2つのフラグメントをもたらす。
【0032】
【
図38】
図38は、ビオチン標識されたオリゴヌクレオチドのストレプトアビジンで被覆されたビーズへの結合を、対照のBSAで被覆されたビーズへの結合と比較して示す。y軸は蛍光の単位である。「結合前」はビーズに結合する前の試験溶液からのオリゴの蛍光である。(-)対照は、BSAを結合したビーズの2種のバッチへの結合後に見られる蛍光である。SA-1およびSA-2は、ストレプトアビジンを結合したビーズの2種のバッチへの結合後に見られる蛍光である。見かけ上の少量の結合がBSAを結合したビーズで観察されるが、はるかに大きい結合がストレプトアビジンを結合したビーズで見られる。
【0033】
【
図39】
図39は、異なるバッファー系(MPBSおよびHKバッファー)における、ビオチン標識されたオリゴヌクレオチドのストレプトアビジンで被覆されたビーズへの結合を、対照のBSAで被覆されたビーズへの結合と比較して示す。左のバー「負の対照」は、ビーズに結合する前の試験溶液からのオリゴの蛍光である。中央のカラムはBSAビーズと結合した後の「BSAビーズ」の蛍光を示し、右のカラムはストレプトアビジンビーズと結合した後の「SAビーズ」の蛍光を示す。両方のバッファー系において、対照と比較してストレプトアビジンビーズによって蛍光が減少し、これはビオチン標識されたオリゴヌクレオチドが種々のバッファー系においてストレプトアビジンで被覆されたビーズによく結合していることを示す。
【0034】
【
図40】
図40は機能性の共役したSiO
2ナノポアを示し、ここで表面は一方の側がストレプトアビジンで被覆され、他方がBSAで被覆されている。x軸は時間であり、y軸は電流である。ドットは電流を逆転させた時点を示す。電流を逆転すると短時間のオーバーシュートがあり、その後電流はおよそ同じ絶対値に落ち着く。ナノポアは200mVで約+3nAの電流を示し、-200mVで約-3nAの電流を示す。
【0035】
【
図41】
図41は、ナノポアに挿入されたオリガミDNA構造を表示する。
【
図42】
図42は、一本鎖DNAのナノポアに隣接するストレプトアビジンで被覆された表面への結合を表示する。
【0036】
【
図43】
図43は、ナノポア付近の表面に結合しているオリガミDNAの実験結果を示す。電流は双方向において+または-約2.5nAであり、これは元の+/-約3nAの電流よりも低く、オリガミ構造による部分的な閉塞を反映している。x軸は時間(秒)であり、y軸は電流(nA)であり、円は電圧を切り換えた時点を示す。
【0037】
【
図44】
図44はオリガミDNAの挿入を示し、これは電流のわずかな低下をもたらす。電流を解除すると、オリガミはナノポアから即座に抜け出る。x軸は時間(秒)であり、y軸は電流(nA)であり、円は電圧を切り換えた時点を示す。
【0038】
【
図45】
図45は、電流の適用による、ナノポアを通したDNA鎖の前後の移動の制御を表示する。左側では、DNAはポア内にあるため、観察される電流はDNAがポア内にない場合よりも低い。電流を逆転させる(右側)と、ポア内にDNAはないため、電流は変化しない。
【0039】
【
図46】
図46は、この表示を確認する実験結果である。正の電圧をかけると電流は約3nAであり、これはポアが開いている場合に通常観察される電流と同等である。電圧を逆転させると、電流は約-2.5nAである。これはポアが開いている場合に通常見られる電流よりも低く、ポアがDNA鎖によって遮断された場合に通常観察される電流に対応する。数回の連続的な電圧の切り換えは一貫性のある結果を示し、これはDNAが
図45に示される配置を交互に起こしていることを示唆する。
【
図47】
図47は、DNAをナノポアに隣接する表面に連結するための種々の共役化学を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の好ましい実施態様の説明は本来単なる例示であり、いかなる方法においても本発明、その出願または使用を限定することを意図しない。
【0041】
あらゆる箇所で使用される場合において、範囲は範囲内のあらゆる値を記載するための省略表現として使用される。範囲内のあらゆる値が範囲の終端として選択され得る。さらに、本明細書において引用される全ての参考文献は、参照されることによってその全体が本明細書に組み込まれる。本開示における定義と引用された参考文献の定義における矛盾の場合、本開示が支配する。
【0042】
他に明記されない限り、本明細書および本明細書の他の場所において表される全ての割合および量は、重量による割合を指すものとして理解されるべきである。所定の量は、物質の有効な重量に基づく。
【0043】
本明細書における「ナノチップ」はナノ流体デバイスを指し、これは流体を含む複数のチャンバーおよび場合により流体の流動を可能にするチャンネルを含み、ここでナノチップの特徴(例えばチャンバーを互いに分離する要素の幅)の限界寸法は、1原子から10ミクロンの厚さであり、例えば1ミクロン(例えば0.01~1ミクロン)よりも小さい。ナノチップにおける物質の流動は電極によって調節され得る。例えば、DNAおよびRNAは負に帯電しているため、これらは正に荷電した電極に引き寄せられる。例えば、Gershow, M, et al., Recapturing and Trapping Single Molecules with a Solid State Nanopore, Nat Nanotechnol. (2007) 2(12): 775-779を参照のこと、これは参照によって本明細書に組み込まれる。流体の流動は場合により、ゲート要素によって、そして、流体をナノチップ内部または外部へ流し、注入し、かつ/または吸引することによっても調節され得る。この系は、核酸(DNA/RNA)の正確な多重分析ができる。ある実施態様において、ナノチップはシリコン材料(例えば二酸化ケイ素または窒化ケイ素)で作製され得る。窒化ケイ素(例えばSi3N4)は化学的に相対的に不活性であり、わずか数nmの厚さの場合でさえ、水およびイオンの拡散に対して有効な障壁を与えるため、この目的のために特に望ましい。二酸化ケイ素は化学修飾するのに優れた表面であるため、(本明細書の実施例で使用されるように)二酸化ケイ素もまた有用である。あるいは、ある実施態様において、ナノチップは、単一分子と同程度の薄さのシートを形成できる材料(単層材料とも呼ばれる)で全体的または部分的に作製されてもよい(例えばグラフェン(例えばHeerema, SJ, et al, Graphene nanodevices for DNA sequencing, Nature Nanotechnology (2016) 11: 127-136; Garaj S et al., Graphene as a subnanometre trans-electrode membrane, Nature (2010) 467 (7312), 190-193に記載され、各内容は参照によって本明細書に組み込まれる)または例えば二硫化モリブデン(MoS2)(Feng, et al., Identification of single nucleotides in MoS2 Nanopores, Nat Nanotechnol. (2015) 10(12):1070-1076に記載され、この内容は参照によって本明細書に組み込まれる)もしくは窒化ホウ素(Gilbert, et al. Fabrication of Atomically Precise Nanopores in Hexagonal Boron Nitride, eprint arXiv:1702.01220 (2017)に記載されている)などの遷移金属ジカルコゲナイド)。
【0044】
いくつかの実施態様において、ナノチップは相対的に堅く、不活性であるそのような単層材料(例えばMoS2などの少なくともグラフェンと同程度に不活性で堅い単層材料)を含む。単層材料は、例えばナノポアを含む膜の全部または一部として使用され得る。ナノチップは金属と共に部分的に一列に並べられ得る(例えば、壁は層状にされ得(例えば金属-窒化ケイ素-金属)、次いで核酸が起電力によってナノポアを通って前後に移動でき、ナノポアを通過した際の電位の変化を測定することによって配列決定され得るように、金属はナノポアの付近に制御可能な電極対を与えるように配置される)。
【0045】
DNAを配列決定するナノチップナノ流体デバイスは一般的に知られており、例えば、Li, J., et al, Solid-state nanopore for detecting individual biopolymers, Methods Mol Biol. (2009)544:81-93; Smeets RM, et al. Noise in solid-state nanopores, PNAS (2008)105(2):417-21; Venta K, et al., Differentiation of short, single-stranded DNA homopolymers in solid-state nanopores, ACS Nano. (2013)7(5):4629-36; Briggs K, et al. Automated fabrication of 2-nm solid-state nanopores for nucleic acid analysis, Small (2014)10(10):2077-86;およびChen Z, DNA translocation through an array of kinked nanopores, Nat Mater. (2010)9(8):667-75に記載され、例えばナノポアを含むナノチップの設計および製造に対する教示のために、各内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書における「ナノポア」は、1ミクロン未満の直径(例えば2~20nmの直径、例えば2~5nmのオーダー)を有するポアである。一本鎖DNAは2nmのナノポアを通過できる;一本鎖または二本鎖DNAは4nmのナノポアを通過できる。非常に小さいナノポア(例えば2~5nm)を有することは、DNAは通過できるが、より大きなタンパク質酵素は通過できず、これによってDNA(または他の荷電ポリマー)の制御された合成を可能にする。より大きなナノポア(またはより小さなタンパク質酵素)を使用する場合、タンパク質酵素がナノポアを通過することを妨げる基質(例えばより大きなタンパク質などのより大きな分子、ビーズまたはチャンバー内の表面)にタンパク質酵素をコンジュゲートさせてもよい。種々のナノポアが公知である。例えば、生物学的ナノポアは膜(脂質二重膜など)中のポア形成タンパク質の会合によって形成される。例えば、α-ヘモリジンおよび類似のタンパク質ポアが細胞膜中において天然に見出されており、これらはイオンまたは分子を細胞内および細胞外に輸送するチャネルとして働き、このようなタンパク質はナノチャネルとして別の目的で使用され得る。固体のナノポアは、例えばフィードバック制御された低エネルギーイオンビームスカルプティング(IBS)または高エネルギー電子ビーム照射を用いて、例えば合成膜に穴を形成することによって、合成材料(窒化ケイ素またはグラフェンなど)において形成される。ハイブリッドのナノポアは、ポア形成タンパク質を合成材料中に埋め込むことによって作製され得る。金属表面または電極がナノポアの両末端または両側にある場合、ナノポアに沿った電流が電解質媒体を介してナノポアを通って確立され得る。電極は、あらゆる伝導性材料(例えば銀、金、白金、銅、二酸化チタン、例えば塩化銀で被覆された銀)で作製され得る。
【0047】
固体(窒化ケイ素、膜)においてナノポアを形成する方法は公知である。ある手法において、シリコン基板を膜材料(例えば窒化ケイ素)で被覆し、膜の全体の形状をフォトリソグラフィーおよびウェット化学エッチングを用いて作成し、ナノチップに組み込むのに望ましいサイズ(例えば約25x25ミクロン)の窒化ケイ素膜を与える。最初の0.1ミクロンの直径の穴または空洞を窒化ケイ素膜に集束イオンビーム(FIB)を用いて開ける。イオンビームスカルプティングは、より大きなポアを収縮させること(例えばイオンビームによって誘導される膜表面上の横方向の質量輸送によって)、または空洞が最終的につながったときに縁の鋭いナノポアとなるように、膜材料を反対側からの空洞を含む膜の平坦面からイオンビームスカルプティングによって層ごとに除去することのいずれかによってナノポアを形成し得る。イオンビームの露光が消えると、ポアを通って伝達されるイオン電流は、所望のポアのサイズに適している。例えば、Li, J., et al., Solid-state nanopore for detecting individual biopolymers, Methods Mol Biol. (2009)544:81-93参照のこと。あるいはナノポアは、TEMにおける高エネルギー(200~300keV)電子ビーム照射を用いて形成され得る。半導体加工技術、電子ビームリソグラフィー、SiO2マスク層の反応性イオンエッチングおよびSiの異方性KOHエッチングを用いて、ピラミッド形の20x20nmおよびそれよりも大きいポアを40nmの厚さの膜に作成する。TEMにおける電子ビームを用いて、より大きい20nmのポアをより小さいポアに縮小する。TEMは縮小する過程をリアルタイムで観察することを可能にする。より薄い膜(例えば<10nmの厚さ)を用いて、ナノポアはTEMにおける高エネルギー集束電子ビームで穿孔され得る。一般的に、Storm AJ, et al. Fabrication of solid-state nanopores with single-nanometre precision. Nature Materials (2003) 2:537-540; Storm AJ, et al. Translocation of double-stranded DNA through a silicon oxide nanopore. Phys. Rev. E (2005)71:051903; Heng JB, et al. Sizing DNA Using a Nanometer-Diameter Pore. Biophys. J (2004) 87(4):2905-11を参照すること、ここで各内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
他の実施態様において、Kwok, et al., "Nanopore Fabrication by Controlled Dielectric Breakdown," PLOS ONE (2014) 9(3): e92880に記載される(この内容は参照によって本明細書に組み込まれる)ように、ナノポアは、膜の比較的高い電位差を利用して、誘電破壊によって作製され、ここで電流が検出されるまで電位を上昇させる。
【0049】
これらの技術を用いて、かつ当然だが使用される実際の技術並びに膜の厚さおよび実際の組成に依存して、窒化ケイ素などの固体材料におけるナノポアの全体の形状は、最も狭い点(即ち実際のナノポア)で先端が一体となっている2つの漏斗に大まかに似ていてもよい。そのような一対の円錐の形状は伝導性であり、ナノポアを介してポリマーを出入りさせる。イメージング技術(例えば原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)、特にTEM)が、ナノ膜(nanomembrane)のサイズ、位置および形状、FIBの穴または空洞、並びに最終的なナノポアを検証および測定するのに使用され得る。
【0050】
いくつかの実施態様において、ポリマー(例えばDNA)の一端はナノポア付近またはナノポアに通じる漏斗の内壁に係留される。ポリマーの一端がナノポアの近くに係留されている場合、ポリマーは拡散によって最初にナノポアに近づき、次いで電気的勾配によって導かれるため、勾配によって導かれる運動は最大化され、拡散の運動は最小化され、これによって速度および効率が増強される。例えば、Wanunu M, Electrostatic focusing of unlabelled DNA into nanoscale pores using a salt gradient, Nat Nanotechnol. (2010) 5(2):160-5; Gershow M., Recapturing and trapping single molecules with a solid-state nanopore. Nat Nanotechnol. (2007) 2(12):775-9; Gershow, M., Recapturing and Trapping Single Molecules with a Solid State Nanopore. Nat Nanotechnol. (2007) 2(12): 775-779参照のこと。
【0051】
ある実施態様において、ポリマー(例えばDNA)の一端をビーズに結合させ、ポリマーをポアに通す。ビーズとの結合は、ポリマーが隣接するチャンバーの分離膜の反対側にあるナノポアを最後まで通って移動するのを妨げる。次に電流を止め、ポリマー(例えばDNA)を、分離膜の反対側のチャンバーにおけるナノポアに隣接する表面に結合させる。例えば、ある実施態様において、ssDNAの一端を50nmのビーズに共有結合させ、他端をビオチン化する。ストレプトアビジンを、分離膜の反対側のチャンバーの領域に所望の結合点で結合させる。DNAは電位差によってナノポアから引き出され、ビオチンはストレプトアビジンと結合する。ビーズおよび/またはナノポアに隣接する表面との結合は、共有結合または強い非共有結合(ビオチン-ストレプトアビジン結合など)のいずれかであり得る。次にビーズを酵素で切り離し、洗い流す。いくつかの実施態様において、K. Nishigaki, Type II restriction endonucleases cleave single-stranded DNAs in general. Nucleic Acids Res. (1985) 13(16): 5747-5760に記載される(これは参照によって本明細書に組み込まれる)ように、一本鎖DNAは一本鎖DNAを切断する酵素で切断される。他の実施態様において、相補的なオリゴヌクレオチドが二本鎖制限部位を作製するために与えられ、これは次に対応する制限酵素で切断され得る。
【0052】
ポリマーがナノポアを通過する際に、ポリマーが通過する際のナノポアの部分的な閉塞によって生じるナノポアにかかる電位差または電流の変化を検出でき、異なるモノマーはそれらの異なるサイズおよび静電ポテンシャルによって区別できるため、ポリマー内のモノマーの配列を同定するのに使用できる。
【0053】
本明細書に記載されるように、DNAの製造方法におけるナノポアを含むナノチップの使用は当分野で開示されていないが、そのようなチップは周知であり、DNAの迅速な配列決定のために市販されている。例えば、MinION(Oxford Nanopore Technologies, Oxford, UK)は小さく、ノートパソコンに取り付けることができる。一本鎖DNAがタンパク質ナノポアを1秒毎に30塩基通過する際、MinIONは電流を測定する。ポア内のDNA鎖はイオン流を妨害し、これは配列内のヌクレオチドに対応する電流の変化をもたらす。Mikheyev, AS, et al. A first look at the Oxford Nanopore MinION 配列r, Mol. Ecol. Resour. (2014)14, 1097-1102。MinION の精度は不十分であり、繰り返しの配列決定を必要とするが、読み取られるDNAが容易に区別できる2つの塩基(例えばAとC)のみを含む場合、本発明のナノチップを用いた配列決定の速度と精度は著しく改善され得る。
【0054】
いくつかの実施態様において、ナノポアを含む膜は、絶縁コア材料(例えば窒化ケイ素膜)の両側に金属表面を含む、3層の形態を有し得る。この実施態様において、例えばナノポアを流れる電流が電極間に電解質媒体を介してナノポアを通って確立され得、この電流がポリマーをナノポアに通らせ得、極性を反転させることによってポリマーを引き戻し得るように、金属表面は例えばリソグラフィーの手段によって形成され、各ナノポアの各末端における対の電極を含むマイクロ回路を与える。ポリマーがナノポアを通過する際、電極はナノポアにかかる電位の変化を測定し得、ポリマー内のモノマーの配列を同定する。
【0055】
いくつかの実施態様において、ポリマーの配列はデータを保存するために設計される。いくつかの実施態様において、データはバイナリコード(1と0)で保存される。いくつかの実施態様において、各塩基は1または0に対応する。他の実施態様において、2以上の塩基の容易に認識される配列が1に対応し、他の2以上の塩基の容易に認識される配列が0に対応する。他の実施態様において、データは3進コード、4進コードまたは他のコードで保存され得る。特別な実施態様において、ポリマーはDNA(例えば一本鎖DNA)であり、ここでDNAは2種の塩基のみを含み、いかなる自己ハイブリダイズできる塩基も含まない(例えばDNAは、アデニンとグアニン、アデニンとシトシン、チミジンとグアニン、またはチミジンとシトシンを含む)。いくつかの実施態様において、2種の塩基には、1以上の追加の塩基が点在してもよく、例えばAとCは、例えばコード配列中に中断を示すことによって配列を「分断する」ために、有意な自己ハイブリダイゼーションをもたらさない頻度で、Tを含み得る。他の実施態様において、例えば核酸が二本鎖である場合、いくつかまたは全ての利用可能な塩基が用いられ得る。
【0056】
ヌクレオチド塩基は天然であってもよく、またはいくつかの実施態様において、例えばMalyshev, D. et al. "A semi-synthetic organism with an expanded genetic alphabet", Nature (2014) 509: 385-388に記載される(これは参照によって本明細書に組み込まれる)ように、非天然塩基からなってもよく、または非天然塩基を含んでもよい。
【0057】
ある実施態様において、データは単一のモノマー(例えばDNAの場合、単一のヌクレオチド)のポリマーへの付加によって保存される。ある実施態様において、ポリマーはDNAであり、モノマーはアデニン(A)およびシトシン(C)残基である。(i)AとCは大きなサイズの違いを有し、従ってナノポアによる区別が容易となるはずであり、(ii)AとCは互いに対形成しないため、ナノポアの信号の解釈を複雑にし得る有意な二次構造を形成せず、(iii)Gはグアニン四重鎖を形成することが知られているため、同様の理由のためにあまり好ましくないことから、AおよびC残基が有利である。ヌクレオチドは末端トランスフェラーゼ(またはポリヌクレオチドホスホリラーゼ)によって付加されるが、単一のヌクレオチドのみが一度に付加されるように、ヌクレオチドは3’ブロック化されている。ブロック化は次のヌクレオチドの付加の前に除去される。
【0058】
いくつかの実施態様において、DNAはナノチップ内に置かれる。他の実施態様において、DNAは取り出され、例えば長期間の安定性を増強するために、場合により二本鎖DNAに変換され、かつ/または、場合により結晶形に変換される。さらなる他の実施態様において、DNAは増幅され得、増幅されたDNAは長期間の保存のために取り出されるが、元の鋳型DNA(例えばナノチップ内のチャンバーの壁に結合しているDNA)はナノチップ内に残され得、これは読み取られ得、かつ/または追加のDNAを作製するために鋳型として使用され得る。
【0059】
いくつかの実施態様において、DNAまたは他のポリマーは合成中にナノポアに近接した表面に係留されている。例えば、ある実施態様において、DNA分子の3’末端が、保持チャンバーから、ナノポアを通して、3’保護されたdNTPを付加するポリメラーゼまたは末端トランスフェラーゼ酵素と共に3’保護されたdNTPの流れを含むフローチャンバーに引き出され得るように、または、dNTPを付加しないようにナノポアが酵素を排除している保持チャンバーに保持され得るように、一本鎖DNA分子は各5’末端がナノポアに近接した表面に結合されており、各ナノポアにおける電流はそのナノポアのための電極によって独立して調節され得る。例えば
図12~16並びに
図18および
図19の描写を参照すること。他の実施態様において、一本鎖DNAは、下記により詳細に記述されるように、トポイソメラーゼを用いて(結合された3’末端を伴う)5’末端への付加によって構築される。各DNA分子が各サイクルに関与するか否かを制御することによって、各DNA分子の配列が、例えば以下のように正確に制御され得る:
【表2】
Aを流す=3’保護されたdATP
Cを流す=3’保護されたdCTP
【0060】
この図式におけるナノポア1およびナノポア2は異なるDNA鎖と結合しており、その位置(フローチャンバー内または外)は別々に制御できる。DNAは、保持チャンバー内の特異的な酵素によって、または、フローチャンバー内の流れを変化させ、酵素的手段、化学的手段、光触媒の手段または他の手段によって脱保護をもたらすことによって、脱保護され得る。ある実施態様において、脱ブロック化試薬が基本単位のヌクレオチドを脱保護しないように、脱ブロック化試薬はAを流すサイクルとCを流すサイクルの間(例えば、フローチャンバーがバッファーで洗浄されている時)に流れる。他の実施態様において、脱保護剤は非常に嵩高いため、ナノポアを通ってフローチャンバーに渡ることはできない。
【0061】
上述の例の最終結果は、AおよびCがナノポア1のDNAに付加され、CおよびCがナノポア2のDNAに付加されることであろう。
【0062】
他の実施態様において、チャンバーの配置は類似しているが、ナノポアに近接した表面に係留されている二本鎖DNAを用いて、それぞれバイナリコードに対応している(例えば2以上の種類の)オリゴヌクレオチドフラグメントが、例えば部位特異的リコンビナーゼ(即ち、部位特異的組換え配列として知られる配列セグメント中の核酸の二本鎖の少なくとも一方の鎖を自発的に認識および切断する酵素)を用いて、例えば以下に記述されるトポイソメラーゼを装填された(topoisomerase-charged)オリゴヌクレオチドを用いて、連続的に付加される。
【0063】
ある実施態様において、荷電ポリマー(例えばDNA)を合成後に凝集状態で保持することが望ましい場合がある。これにはいくつかの理由がある:
・ポリマーはこの形状においてより安定であるはずである、
・ポリマーを凝集させることはクラウディングを低く保ち、小さな体積でより長いポリマーの使用を可能にする、
・秩序のある凝集は、ポリマーがノットまたはもつれを形成する可能性を減少させ得る、
・任意のチャンバーが相互接続されている場合、電流が適用された場合に想定されているポアとは異なるポアをポリマーが通過して長くなることを防ぐのに役立つ、
・凝集はポリマーを電極から離すのに役立ち、ここで電気化学はポリマーを損傷させ得る。
【0064】
ヒト細胞は約10ミクロンであるが、80億塩基対のDNAを含む。このDNAを伸ばすと1メートルを超える。DNAはヒストンタンパク質に巻き付いているため、細胞に収まっている。ある実施態様において、ヒストンまたは類似のタンパク質は本発明のナノチップにおいて類似の機能を提供する。いくつかの実施態様において、ナノチップの内部表面は、荷電ポリマー(例えばDNA)がそれらに弱く張り付く傾向を持つように、わずかに正に帯電している。
【0065】
ある実施態様において、荷電ポリマー、例えば一本鎖または二本鎖DNAは、ナノポアに近接した表面に結合している。これは様々な方法で達成され得る。一般に、ナノポアを通過できないほど大きな直径(例えば>10nm、例えば20~50nm)を有する相対的に嵩高い構造体(例えばビーズ、タンパク質、または(以下に記述される)DNAオリガミ構造)にポリマーを結合し、電流を用いて荷電ポリマーをナノポアを通して引っ張り、嵩高い構造から遠いポリマーの末端をナノポアに隣接する表面に係留し、嵩高い構造を切り離すことによって、ポリマーをナノポアに局在化させる。
【0066】
嵩高い構造から遠いポリマーの末端をナノポアに隣接する表面に係留する工程は様々な方法で達成され得る。ある実施態様において、ポリマーは一本鎖DNAであり、一本鎖DNAの一部と相補的な予め結合しているDNA鎖(約50bp)が存在し、一本鎖DNAと予め結合しているDNA鎖は塩基対形成を介して結合できる。この塩基対形成が十分強い場合、DNAを操作している間でさえ係留し続けるのに十分である。この結合方法の利点は、DNAの長期間の保存のために望まれる場合、DNAをナノポアチップから取り出せることである。あるいは、この鎖は、結合化学(例えば、下記の実施例1に記載されるストレプトアビジン-ビオチン共役)または「クリック」ケミストリー(Kolb, et al. Angew. Chem. Int. Ed. (2001)40: 2004-2021参照のこと、これは参照によって本明細書に組み込まれる)のいずれか、および/または酵素的結合(例えば、オリゴを遠い表面にあらかじめ共有結合させ、次にDNAリガーゼを用いてそれらを結合させることによる)を用いて、表面に共有結合される。
【0067】
鎖の遠い末端がナノポアに隣接する表面に結合すると、嵩高い構造は、例えば嵩高い構造付近の制限部位を切断するエンドヌクレアーゼを用いて切断される。
【0068】
嵩高い構造は、ビーズ、嵩高い分子(例えばDNA鎖に可逆的に結合するタンパク質)、またはDNAオリガミ構造であり得る。DNAオリガミは3次元DNA構造を作製するための塩基対形成の使用を含む。DNAオリガミ技術は一般にBell, et al, Nano Lett. (2012)12: 512-517に記述され、これは参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、本発明において、DNAオリガミは、単一のDNA分子をナノポアに隣接する表面に結合させるために使用され得る。ある実施態様において、この構造は「ハニカム状の立方体」(例えば各辺が約20nm)である。これは、この部分のDNAが(添付書類にある通り)ナノポアを通過するのを妨げる。オリガミ構造に結合する長鎖の(一本鎖または二本鎖)DNAが存在する。オリガミ構造がナノポアに直面し、さらなる進行を阻害するまで、DNA鎖はナノポアを通って進む。その後電流を止め、鎖をナノポアに隣接する表面に結合させる。
【0069】
別の実施態様において、オリガミ構造を伴う荷電ポリマー(例えばDNA)は、3つのチャンバー配置の中央のチャンバーにある。オリガミはDNAが他の2つのチャンバー(または2つのチャンバーの例において他の1つのチャンバー)に完全に入るのを防ぐ。従って、この例において、ポリマーは表面に係留されることを必要としない。これはポリマーが結び目を作るリスクを減少させ、ポリマーの一端を表面に結合する工程、および他端の嵩高い部分を切断する工程の必要性を回避する。オリガミを含むチャンバーの体積は、ポリマーが相対的にポアの近くに留まるようにできるだけ小さくするべきであり、これは電流がかけられた場合にポリマーが迅速に移動するのを確実にするのに役立つ。ポリマーのオリガミ部分を含む中央のチャンバーは他の中央のチャンバーと相互接続できない(そうでなければ種々のポリマーが混合する)が、他のチャンバー(または3つのチャンバーの例ではチャンバーの組)は相互接続できることを注記しておく。DNAが他のチャンバーに移動する際、ポリマーは必ずポアの近くにある(実際にはその一部はポアの内部にある)ため、これらの他のチャンバーは、所望により、より大きな体積を有してもよい。
【0070】
いくつかの実施態様において、デバイスは3つの直列のチャンバーを含み、ここで付加チャンバーは流れを可能にするために連続しており、共通の電極を有するが、「脱保護」チャンバーはナノポアを通る流れ以外は流体的に隔離されており、固有の電極を有する。
【0071】
他の実施態様において、DNAまたは他の荷電ポリマーは係留されないが、合成チャンバーと脱保護チャンバーとの間をチャンバー内の電極の制御下で移動でき、一方ポリメラーゼおよび脱保護化剤はチャンバーを接続するナノポアを通過できないほど嵩高く、かつ/または、チャンバー内の表面に係留されているため、チャンバー間の移動を制限される。例えば
図1~9および16~17を参照のこと。
【0072】
荷電ポリマーをナノポアを通して移動させるために必要とされる電流は、例えばポリマーの性質、ナノポアのサイズ、ナノポアを含む膜の材料および塩濃度に依存し、要求に応じて特定のシステムに最適化される。本明細書の実施例において使用されるDNAの場合、電圧および電流の例は、例えば100mM~1Mの桁数の塩濃度で、50~500mV(通常100~200mV)および1~10nA(例えば約4nA)である。
【0073】
荷電ポリマー、例えばDNAのナノポアを通る移動は、通常、非常に速く、例えば1塩基毎に1~5μs、即ち1秒毎に100万塩基の桁数(周波数の用語を採用する場合、1MHz)であり、これはシステムにおいてノイズと区別される正確な読み取りを得るための課題を示す。本方法を使用して、(i)測定可能な特徴的な変化をもたらすために、ヌクレオチドは、配列中で、例えば連続して約100回、繰り返される必要がある、または、(ii)アルファヘモリジン(αHL)またはマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)ポリンA(MspA)などのタンパク質のポアを使用すること、これは、塩基がポリマーを通過する際に複数の読み取りの可能性のある比較的長いポアを提供し、いくつかの場合では、そのポアを通して1回に1個の塩基に制御されたDNAの供給をもたらすように調整でき、いくつかの場合では、各塩基が通過する際にそれを切断するエキソヌクレアーゼを使用する。様々なアプローチが可能であり、例えば、
・ポリマーの速度を、約1MHzから約100~200Hzに落とすこと、例えば、電圧をかけるとより粘性が増し、それにより、ナノポアを通過するポリマーの速度を落とす電気粘性流体を含む媒体、または、媒体の粘性を光により制御できるプラズモンの流体系;または、分子モーターまたはラチェットを使用する;
・ポリマー中、例えば一本鎖DNA中に、ナノポアにはまるために直鎖状にされなければならない嵩高い二次構造、例えば、「ヘアピン」、「ハンマーヘッド」または「ダンベル」の配置を形成する配列を提供し、それにより、情報の密度を薄くし、長い期間を有するシグナルを提供する;
・同じ配列の多数の読み取りを提供すること、例えば、急速に変化する電流を使用して、同じ配列フレームの多数の読み取りを可能にし、分子を次の配列フレームに引き出す直接的な電流の短いバーストと組み合わせることにより、配列全体を複数回読み取ることにより、または、複数の同一配列を並行して読み取ることによる。各場合で読み取りをまとめて、シグナルを増幅する共通の読み取りを提供する;
・電流または抵抗の変化を直接測定するよりも、むしろ、モノマー(例えば、ヌクレオチド)がナノポアを通過する際の静電容量の変化により誘導される高周波数のシグナルにおけるインピーダンスの変化を測定すること;
・異なる塩基間の電流、抵抗または静電容量の差異を増強すること、例えば、サイズがより大きく異なるか、または、その他の方法で修飾されて異なるシグナルを与える非天然塩基を使用することにより、または、大きいサイズのために増強されたシグナルをもたらす「ヘアピン」、「ハンマーヘッド」または「ダンベル」配置などのより大きい二次構造をDNA中に形成することによる;
・光学的読み取りシステムを使用すること、例えば、その内容が参照によって本明細書に組み込まれるNam, et al., "Graphene Nanopore with a Self-Integrated Optical Antenna", Nano Lett. (2014)14: 5584-5589に記載されるものなどの、光トランスデューサー(または光シグナルエンハンサー)として作用して標準的イオン電流測定を補足または代替する、ナノポアに隣接した集積化光アンテナを使用すること。いくつかの実施態様では、それぞれ異なるモノマーが、ナノポアとその光学アンテナのジャンクションを通過するときにシグネチャー強度で蛍光を発するように、モノマー、例えばDNAヌクレオチドを蛍光染料で標識する。いくつかの実施態様では、例えば、各内容が参照によって本明細書に組み込まれるMcNally et al., "Optical recognition of converted DNA nucleotides for single molecule DNA sequencing using nanopore arrays", Nano Lett. (2010)10(6): 2237-2244, および Meller A., "Towards Optical DNA Sequencing Using Nanopore Arrays", J Biomol Tech. (2011) 22(Suppl): S8-S9に記載されるように、ポリマーが高速でナノポアを通過するときに、固相のナノポアが蛍光標識をはがし、一連の検出可能な光子のバーストを導く。
【0074】
ある実施態様では、荷電ポリマーは核酸、例えば一本鎖DNAであり、その配列が二次構造をもたらす。参照により本明細書に組み込まれるBell, et al., Nat Nanotechnol.(2016)11(7):645-51は、固相ナノポア形式で検出可能なダンベル配置の比較的短い配列を使用して免疫アッセイの抗原を標識することを記載している。Bellらに使用されたナノポアは、ダンベル構造全体がポアを通過できるように比較的大きかったが、ダンベル配置の直径よりも小さいナノポアを使用すると、DNAは「ファスナーを開かれ(unzip)」、直鎖状になる。より複雑な配置、例えば、各ビットがtRNAに似た配列に対応する配置を使用できる(例えば、参照により本明細書に組み込まれるHenley, et al. Nano Lett. (2016)16: 138-144を参照されたい)。従って、本発明は、少なくとも2種類の二次構造を有し、その二次構造がデータ(例えば、1つのタイプの二次構造が1であり、第2の二次構造が0であるバイナリデータ)をコードする荷電ポリマー、例えば一本鎖DNAを提供する。他の実施態様では、二次構造を使用して、DNAのナノポア通過を減速するか、または、配列に中断をもたらし、配列の読み取りを容易にする。
【0075】
他の実施態様では、本発明は一連の少なくとも2つの異なるDNAモチーフを含むDNA分子を利用し、各モチーフは特定のリガンド(例えば二本鎖DNAに対する遺伝子調節タンパク質、または、一本鎖DNAに対するtRNA)に特異的に結合し、少なくとも2つの異なるDNAモチーフが(例えば1つのモチーフが1であり、第2のモチーフが0であるバイナリコードで)情報をコードし、例えば、リガンドは、DNAがナノポアを通過する際にナノポアにかかるシグナルの差異(例えば電流または静電容量の変化)を増強する。
【0076】
上記で論じた通り、異なるモノマーがナノポアを通過するとき、それらは、主としてナノポアを物理的に塞ぎ、ナノポアのコンダクタンスを変化させることにより、ナノポアを通る電流に影響を与える。既存のナノポアシステムでは、この電流の変化を直接測定する。現行の読み取りシステムの問題は、システムにかなりのノイズがあり、DNAの場合、例えば、異なるヌクレオチドユニットがナノポアを通過する際の電流変動を測定するときに、異なるモノマー間、例えば異なる塩基間の差異を正確に検出するには、100分の1秒の桁数で、比較的長い積分時間が必要とされることである。最近、インピーダンスおよび静電容量の変化が、塩および生体分子の複雑な相互作用の可能性にも拘わらず、細胞および生物システムを研究するのに有用であり得ることが示された。例えば、Laborde, et al. Nat Nano. (2015)10(9):791-5(参照により本明細書に組み込まれる)は、高周波インピーダンス分光法を、生理的塩条件下で静電容量の小さい変化を検出し、微粒子および生きている細胞をデバイの限界(Debye limit)を超えて画像化するのに使用できることを立証している。
【0077】
従って、本発明のある実施態様では、電流の変動を直接測定するよりも、むしろ、容量変動を測定し、例えば、モノマー(例えば、ヌクレオチド)がナノポアを通過する際の静電容量の変化により誘導される無線周波シグナルの相変化を測定することにより、荷電ポリマーの配列を同定する。
【0078】
簡潔に述べると、静電容量は、一方の電気伝導体と他方の電気伝導体の間にギャップがあるいかなる回路にも存在する。電流は静電容量と共に直接的に変動するが、静電容量と同時には変動しない。例えば、交流電流の容量回路で電流と電圧を経時的にプロットする場合、電流と電圧の両方がそれぞれ正弦波を形成するが、波の位相は不一致であるとわかるであろう。電流に変化があるとき、静電容量に変化があり、それはシグナルの位相の変化に反映される。無線周波交流電流は一定の周波数と振幅のシグナルをもたらすが、シグナルの位相は回路の静電容量に伴って変動する。本願のシステムでは、荷電ポリマーがナノポアを通って(DNAの場合は陽極に向かって)引き出されるように、交流電流よりも、むしろ、脈流直流電流(即ち、極性が維持され、一方の電極は陽極のままであり、他方は陰極のままであるように、電圧は2つの値の間で変化するが、「ゼロ」のラインを超えない)を使用する。ナノポア中に何もない場合、静電容量は1つの値であり、それはポリマーの異なるモノマーがナノポアを通過するときに変化する。適する周波数の範囲は、無線周波数の範囲にあり、例えば1MHz~1GHz、例えば50~200MHz、例えば約100MHzであり、例えば、媒体の有意な誘電加熱を引き起こし得る高マイクロ波の周波数より低い。干渉の可能性を低減するために、複数のナノポアを1つの無線周波数の入力ラインで同時に測定できるように、異なるナノポアに異なる周波数を適用できる。
【0079】
インピーダンスの変化(例えば、静電容量の変化に起因するもの)を高周波数で測定することは、1/fノイズ、即ち、電気的測定回路に内在する「ピンク」ノイズの影響を低減するので、ある一定の期間に利用できるシグナル対ノイズを高める。所定の期間内に多くの測定が行われるので、高周波数のシグナルの使用はシグナル対ノイズ比を高め、環境またはデバイスの変動およびゆらぎに起因するインピーダンス変化と容易に区別される、より安定なシグナルをもたらす。
【0080】
これらの原理を本発明に応用して、本発明は、ある実施態様では、モノマー(例えば、ヌクレオチド)がナノポアを通過する際の静電容量の変化により誘導される高周波数のシグナルにおけるインピーダンスの変化を測定する方法を提供する。例えば、少なくとも2つの異なる種類のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNA分子のモノマー配列を読み取る方法を提供し、これは、無線周波数の脈流直流電流を、例えば1MHz~1GHz、例えば50~200MHz、例えば約100MHzの周波数でナノポアにかけ、脈流直流電流が荷電ポリマーをナノポアを通して引き出し、荷電ポリマーがナノポアを通過する際にナノポアの容量変動を測定することによりモノマー配列を読み取ることを含む。
【0081】
いくつかの実施態様では、本発明は、少なくとも2つの別個のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNAの配列決定用のナノチップを提供する。そのナノチップは、少なくとも第1および第2の反応チャンバーを含み、これらはそれぞれ電解質媒体を含み、1以上のナノポアを含む膜により分離されており、回路に(例えば向かい合うプレートの形態で)連結された電極対が1以上のナノポアを含む膜のいずれかの側に配置されており、電極は1~30ミクロン、例えば約10ミクロン離されていて、荷電ポリマーを、ナノポアを通して、例えば1つのチャンバーから次のチャンバーに引き出すために、無線周波数の脈流直流電流、例えば1MHz~1GHzが電極にかけられたときに、電極間のギャップが静電容量を有するように、そして、脈流直流無線周波数電流の位相が、荷電ポリマーがナノポアを通過する際の静電容量の変化に伴って変化し、それにより、荷電ポリマーのモノマー配列の検出を可能にするようになっている。ある種の実施態様では、ナノチップは複数のセットの反応チャンバーを含み、1セット内の反応チャンバーは、1以上のナノポアを有する膜により分離されており、これらの反応チャンバーのセットは、反応チャンバーのセット間の電気的干渉を最小にし、かつ/または、複数の線状ポリマーを分離してそれらが並行して配列決定されることを可能にする、スクリーニング層により分離されている。
【0082】
例えば、ある実施態様では、電極は、共振回路に埋め込まれたコンデンサの上下のプレートを形成し、DNAがプレート間のポアを通過する際に静電容量の変化が測定される。
【0083】
ある種の実施態様では、ナノチップは、例えば、下記のナノチップ1のいずれかに従って、ポリマー、例えばDNAを合成するための試薬をさらに含む。
【0084】
従って、ある実施態様では、本発明は少なくとも2つの別個のモノマーを含む荷電ポリマー[例えば、核酸(例えば、DNAまたはRNA)]をナノチップ中で合成する方法(方法1)を提供し、このナノチップは、
単一のモノマーまたはオリゴマーのみが1つの反応サイクルにおいて付加され得るように、1以上のモノマー[例えばヌクレオチド]またはオリゴマー[例えば、オリゴヌクレオチド]を、緩衝液中で、末端が保護された形態で、荷電ポリマーに付加するための試薬を含む、1以上の付加チャンバー;および、
緩衝液を含むが、1以上のモノマーまたはオリゴマーの付加に必要な全ての試薬を含むわけではない、1以上の保存チャンバー
(ここで、チャンバーは、1以上のナノポアを含む1以上の膜により分離されており、
荷電ポリマーはナノポアを通過できるが、1以上のモノマーまたはオリゴマーの付加用の試薬の少なくとも1つは通過できない)
を含み、
この方法は、
a)第1の末端と第2の末端を有する荷電ポリマーの第1の末端を、電気的引力により付加チャンバーに移動させ、それによりモノマーまたはオリゴマーをブロック化された形態で第1の末端に付加すること、
b)荷電ポリマーの第1の末端を、ブロック化された形態で付加されたモノマーまたはオリゴマーと共に、保存チャンバーへ移動させること、
c)付加されたモノマーまたはオリゴマーを脱ブロック化すること、および、
d)所望のポリマー配列が得られるまで、工程a~cを繰り返すこと、ここで、工程a)で付加されるモノマーまたはオリゴマーは、同じであるか、または異なる、
を含む。
【0085】
例えば、本発明は、以下のものを提供する。
1.1 ポリマーが核酸である、例えば、ポリマーがDNAまたはRNAである、例えば、DNA、例えばdsDNAまたはssDNAである、方法1。
【0086】
1.2 ポリマー、例えば核酸の第2の末端が保護されているか、またはナノポアに隣接する基板に結合している、上述のいずれかの方法。
【0087】
1.3 各チャンバー内の電極間に電圧をかけることにより電気的引力が提供され、電極間の極性および電流を、例えば核酸が陽極に誘引されるように制御できる、上述のいずれかの方法。
【0088】
1.4 ポリマーが核酸であり、
(i)核酸の第1の末端が3’末端であり、ヌクレオチドの付加が5’から3’への方向であり、ポリメラーゼにより触媒され、例えば、ポリメラーゼは(例えば、そのサイズのために、または、第1のチャンバー内の基板に係留されているために)ナノポアを通過できなくされており、ヌクレオチドは、付加時に3’-保護されており、3’-保護ヌクレオチドを核酸の3’-末端に付加した後、核酸上の3’-保護基を、例えば、保存チャンバー内で除去する;または
(ii)核酸の第1の末端が5’末端であり、ヌクレオチドの付加が3’から5’への方向であり、ヌクレオチドは、付加時に5’-保護されており、5’-保護ヌクレオチドを核酸の5’-末端に付加した後、5’-保護基を、例えば、第2のチャンバー内で除去する;(例えば、5’-保護ヌクレオチド上のリン酸は、ナノポアを通過できない嵩高い基に5’-保護基を介して結合したヌクレオシドホスホラミダイトであり、核酸へのカップリングに続いて、未反応のヌクレオチドを洗い流し、嵩高い5’-保護基を核酸から切り離し、洗い流し、核酸の5’-末端を保存チャンバーに移動できるようにされている);
ここで、核酸へのヌクレオチドの付加は、1以上の付加チャンバーを出入りする核酸の第1の末端の動きにより制御され、このサイクルは所望の配列が得られるまで継続される、
上述のいずれかの方法。
【0089】
1.5 かくして合成されるポリマー中のモノマーまたはオリゴマーの配列[例えば、核酸中のヌクレオチドの配列]がバイナリコードに対応する、上述のいずれかの方法。
1.6 かくして合成されるポリマーが一本鎖DNAである、上述のいずれかの方法。
1.7 モノマーまたはオリゴマー[例えば、ヌクレオチド塩基]をそれらがナノポアを通過する際に配列決定し、配列決定におけるエラーを同定することにより、ポリマー[例えば核酸]の配列を加工または合成中に確認する、上述のいずれかの方法。
【0090】
1.8 かくして合成されるポリマーが一本鎖DNAであり、少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば、実質的に全ての配列中の塩基が、鎖中の他の塩基とハイブリダイズしない2つの塩基から選択され、例えばアデニンおよびシトシンから選択される塩基である、上述のいずれかの方法。
【0091】
1.9 異なる配列を有するポリマー[オリゴヌクレオチド]が得られるように、ポリマーが1以上の付加チャンバーまたは1以上の保存チャンバーに存在するか否かを個別に制御することにより、複数のポリマー[例えばオリゴヌクレオチド]が並行して独立に合成される、上述のいずれかの方法。
【0092】
1.10 異なるモノマーまたはオリゴマー、例えば異なるヌクレオチドを付加するのに適する試薬を含む少なくとも2つの付加チャンバーがあり、例えば、第1のモノマーまたはオリゴマーの付加に適する試薬を含む1以上の付加チャンバー、および、第2の異なるモノマーまたはオリゴマーの付加に適する試薬を含む1以上の付加チャンバーがあり、例えば、アデニンヌクレオチドの付加に適する試薬を含む1以上の付加チャンバー、および、シトシンヌクレオチドの付加に適する試薬を含む1以上の付加チャンバーがある、上述のいずれかの方法。
【0093】
1.11 少なくとも1つの付加チャンバーがフローチャンバーであり、(i)第1のモノマーまたはオリゴマーの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第2の異なるモノマーまたはオリゴマーの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、を含むフローサイクルを提供し、合成が完了するまでこのサイクルを繰り返し、ポリマー中のモノマーまたはオリゴマーの配列は、各サイクルの工程(i)または(iii)において、ポリマーの第1の末端をフローチャンバーに導入するか、またはそこから排除することにより制御される、上述のいずれかの方法;
【0094】
1.12 ポリマーがDNAであり、少なくとも1つの付加チャンバーがフローチャンバーであり、(i)第1の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第2の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、を含むフローサイクルを提供し、合成が完了するまでこのサイクルを繰り返し、配列は、フローチャンバーにおけるDNAの第1の末端(例えば3’-末端)の有無を制御することにより制御される、上述のいずれかの方法。
【0095】
1.13 ポリマーがDNAであり、少なくとも1つの付加チャンバーがフローチャンバーであり、(i)第1の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第2の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、(i)第3の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第4の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、を含むフローサイクルを提供し、合成が完了するまでこのサイクルを繰り返し、配列は、異なる種類のヌクレオチドの付加に適する試薬が存在するときにフローチャンバーにおけるDNAの第1の末端(例えば3’-末端)の有無を制御することにより制御される、上述のいずれかの方法。
【0096】
1.14 ポリマーがDNAであり、ナノチップがフローチャンバーである2つの付加チャンバーを含み、(a)第1のフローチャンバーが、(i)第1の種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第2の異なる種類のヌクレオチドの付加に適するフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、を含むフローサイクルを提供し、合成が完了するまでこのサイクルを繰り返し、そして、(b)第2のフローチャンバーが、(i)第3の種類のヌクレオチドの付加に適する第2のフローチャンバー試薬を提供すること、(ii)洗い流すこと、(iii)第4の異なる種類のヌクレオチドの付加に適する第2のフローチャンバー試薬を提供すること、および、(iv)洗い流すこと、を含むフローサイクルを提供し、合成が完了するまでこのサイクルを繰り返し、ここで、ヌクレオチドは、dATP、dTTP、dCTPおよびdGTPから選択され、配列は、DNAの第1の末端(例えば3’-末端)を、次の所望のヌクレオチドが提供された場合にフローチャンバーに導入することにより制御される、上述のいずれかの方法。
【0097】
1.15 ポリマーがDNAであり、ナノポアチップが、dATPを付加するための1以上の付加チャンバー、dTTPを付加するための1以上の付加チャンバー、dCTPを付加するための1以上の付加チャンバー、および、dGTPを付加するための1以上の付加チャンバーを含む、上述のいずれかの方法。
【0098】
1.16 合成されるポリマー[例えば核酸]が、それぞれ、それらの第2の末端を介して、ナノポアに近接する表面に結合している、上述のいずれかの方法。
【0099】
1.17 ポリマー[例えば核酸]の配列が、ポリマーがナノポアを通過する際の電圧、電流、抵抗、静電容量および/またはインピーダンスの変化を検出することにより、各サイクルに続いて決定される、上述のいずれかの方法。
【0100】
1.18 ポリマーが核酸であり、核酸の合成が、緩衝液、例えば、pH7~8.5、例えば約pH8とするためのバッファー、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、適当な酸、および、場合によりキレーター、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含むバッファー、例えば、Trisベース、酢酸およびEDTAの混合物を含むTAEバッファー、または、Trisベース、ホウ酸およびEDTAの混合物を含むTBEバッファーを含む溶液中で;例えば、10mM Tris pH8、1mM EDTA、150mM KCl、または、例えば、50mM酢酸カリウム、20mM Tris-アセテート、10mM酢酸マグネシウムを含む溶液(pH7.9@25℃)中で起こる、上述のいずれかの方法。
【0101】
1.19 ポリマーが一本鎖DNAであり、合成された一本鎖DNAを二本鎖DNAに変換することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0102】
1.20 ポリマー[例えば核酸]を、ポリマー合成の完了後にナノチップから取り出すことをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0103】
1.21 ポリマーが核酸であり、適切なプライマーおよびポリメラーゼ(例えばPhi29)を使用して、合成された核酸のコピーを増幅および回収することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0104】
1.22 ポリマーが核酸であり、合成された核酸を制限酵素で切断し、核酸をナノチップから取り出すことをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0105】
1.23 ポリマーが核酸であり、かくして合成された核酸を増幅することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0106】
1.24 ポリマー[例えば、核酸]をナノチップから取り出し、ポリマーを結晶化することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0107】
1.25 ポリマーが核酸であり、例えば、例えば参照により本明細書に組み込むUS8283165B2に記載されている通り、核酸を含む溶液を、1以上のバッファー(例えば、ホウ酸バッファー)、抗酸化剤、湿潤剤、例えばポリオール、および、場合により、キレート剤と共に乾燥させることにより;または、核酸とポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(l-リジン)(PEG-PLL)AB型ブロックコポリマーとの間にマトリックスを形成することにより;または、相補的核酸鎖またはDNAに結合するタンパク質の添加により、核酸を安定化することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0108】
1.26
(i)核酸を、3’-保護ヌクレオチドと、付加チャンバー中で、3’-保護ヌクレオチドの核酸の3’末端への付加を触媒するポリメラーゼの存在下で、反応させること;
(ii)かくして得られた3’-保護核酸の少なくとも3’末端を、付加チャンバーから、少なくとも1つのナノポアを通して、保存チャンバーに引き出すこと、ここで、ポリメラーゼは(例えば、そのサイズのために、または、第1のチャンバー内の基板に係留されているために)ナノポアを通過できなくされている;
(iii)3’-保護核酸を、例えば化学的または酵素的に、脱保護すること;および
(iv)さらなる3’-保護dNTPをオリゴヌクレオチドに付加することが望ましい場合は、工程(i)~(iii)が繰り返されるように、オリゴヌクレオチドの3’末端を同一または異なる付加チャンバーに引き出すこと、または、それが望ましくない場合は、所望の3’-保護dNTPが付加チャンバーに提供されるさらなるサイクルまで、核酸の3’末端を保存チャンバーに留まらせること;および
(v)所望の核酸配列が得られるまで工程(i)~(iv)を繰り返すこと、
を含む、上述のいずれかの方法。
【0109】
1.27 ポリマーが核酸の一本鎖DNA(ssDNA)であり、1以上のナノポアが、ssDNAを通過させるが、二本鎖DNA(dsDNA)を通過させない直径、例えば、約2nmの直径を有する、上述のいずれかの方法。
【0110】
1.28 モノマーが3’-保護ヌクレオチド、例えば、例えばデオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)から選択されるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、例えばdATPまたはdCTPである、上述のいずれかの方法。
【0111】
1.29 ポリマーが核酸であり、ヌクレオチドの核酸への付加がポリメラーゼ、例えば、鋳型に依存しないポリメラーゼ、例えば、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)またはポリヌクレオチドホスホリラーゼにより触媒される、例えば、ポリメラーゼがDNAの3’-ヒドロキシル末端でデオキシヌクレオチドの組み込みを触媒する、上述のいずれかの方法。
【0112】
1.30 膜が、複数のナノポアと、それぞれナノポアに近接する表面に結合した複数のポリマー、例えば、ナノポアに近接する表面に5’末端を介して結合した複数の核酸を含む、上述のいずれかの方法。
【0113】
1.31 それぞれナノポアに近接する表面に結合した複数のポリマー、例えば、ナノポアに近接する表面に5’末端で結合した複数の核酸が、独立して合成され、各ナノポアが電極対を伴い、電極対の一方の電極がナノポアの一方の末端に近接した位置にあり、他方の電極がナノポアの他方の末端に近接した位置にあり、電極対により与えられる電流により各ポリマーを第1および第2のチャンバーの間で独立して動かせるようにする、上述のいずれかの方法。
【0114】
1.32 ポリマーが、ナノポアに近接する表面に5’末端で結合した3’-保護核酸であり、3’-保護核酸の3’末端が、電気力を使用することにより、例えば、隣接するチャンバー内の電極からかけられる電気力を使用することにより、ナノポアを通して引き出される、上述のいずれかの方法。
【0115】
1.33 新しい3’-保護dNTPが、第1の3’-保護dNTPと同一であるか、または異なる、1.20の方法。
【0116】
1.34 サイクルの工程(i)で使用される3’-保護dNTPが、各サイクルで3’-保護dATPと3’-保護dCTPの間で交互になる、1.20の方法。
【0117】
1.35 ポリマーが核酸であり、核酸の脱保護が、ssDNA上の3’-保護基を除去するが3’保護dNTP上の3’-保護基を除去しない酵素により実行される、上述のいずれかの方法。
【0118】
例えば、本発明は、ナノチップ中で核酸を合成する方法を提供し、ナノチップは、少なくとも1つのナノポアを含む膜で分離されている少なくとも第1のチャンバーおよび第2のチャンバーを含み、合成は、第1の末端および第2の末端を有する核酸の第1の末端へのヌクレオチド付加のサイクルにより緩衝液中で実行され、ここで、核酸の第1の末端は、1以上の付加チャンバー(ヌクレオチドを付加できる試薬を含む)と1以上の保存チャンバー(ヌクレオチドの付加に必要な試薬を含まない)の間で電気的引力により動かされ、チャンバーは、各々1以上のナノポアを含む1以上の膜により分離されており、ナノポアは、核酸を通過させるのに十分な大きさであるが、ヌクレオチドの付加に必須の少なくとも1つの試薬を通過させるには小さすぎ、例えば、この方法は記載された方法1のいずれかに対応する。
【0119】
ある種の実施態様では、ポリマーの配列はバイナリコードに対応し、例えば、ポリマーが核酸であり、配列がバイナリコードに対応し、各ビット(0または1)が塩基、例えばAまたはCにより表される。
【0120】
ある種の実施態様では、ポリマーはDNAである。
【0121】
ある他の実施態様では、各ビットは、単一のモノマーよりも、むしろ、モノマーの短い配列により表される。例えば、そのようなある実施態様では、DNAの塊を合成し、各塊はナノポアを介して独自のシグナルを生成し、0または1に対応する。この実施態様は、単一のヌクレオチドをナノポア中で、特に固相ナノポア中で検出するのがより難しい点である種の利点を有するので、塊を使用すると、ポリマーにおける情報の密度は相応して減少するが、読み取りのエラーは生じにくくなる。
【0122】
例えば、部位特異的リコンビナーゼ、即ち、部位特異的組換え配列として知られている配列セグメント内で核酸二本鎖の少なくとも一方の鎖を自発的に認識して切断する酵素を使用して、(二本鎖)ヌクレオチドの塊を付加できる。あるそのような実施態様では、部位特異的リコンビナーゼは、トポ結合した(topo-conjugated)dsDNAオリゴヌクレオチド塊を配列に連結するのに使用されるトポイソメラーゼである。これらのオリゴヌクレオチド自体は、制限酵素で切断されるまで、さらなる連結に適合する構造を有さない。ワクシニアウイルストポイソメラーゼIは、DNA配列5’-(C/T)CCTT-3’を特異的に認識する。トポイソメラーゼは、二本鎖DNAに結合し、5’-(C/T)CCTT-3’切断部位でそれを切断する。トポイソメラーゼはDNAを一方の鎖のみで切断するので切断は完全ではなく(他方の鎖に近傍のニックがあることは、ある種の二本鎖切断をもたらすが)、切断時に、トポイソメラーゼは3’ヌクレオチドの3’リン酸に共有結合することに留意されたい。その後、その酵素は、DNAの3’末端に共有結合したままであり、共有結合的に保持された鎖を、最初に切断されたのと同じ結合で再連結でき(DNA弛緩において生じる通り)、あるいは、適合するオーバーハングを有する異種のアクセプターDNAに再連結し、組換え分子を生成できる。この実施態様では、トポイソメラーゼ組換え部位およびトポイソメラーゼ連結部位を生成する制限部位に隣接した、dsDNAドナーオリゴヌクレオチド(例えば、一方は「0」、他方は「1」の、少なくとも2つの異なる配列のうち1つを含む)を生成する。これらのカセットは、トポ装填される(Topo-charged);即ち、それらは、レシーバーオリゴヌクレオチド上のトポイソメラーゼ連結部位にそれらを結合させるトポイソメラーゼに共有結合する。伸長しているレシーバーのDNA鎖が制限酵素で切断されると、トポ装填されたカセットに連結できるようになる。よって、伸長しているDNAを制限酵素からトポ装填されたカセットに連続的に循環させるだけでよく、各サイクルが他のドナーオリゴヌクレオチドを付加する。関連するアプローチがクローニングのために説明されており、例えば、参照により本明細書に組み込む Shuman S., Novel approach to molecular cloning and polynucleotide synthesis using vaccinia DNA topoisomerase. J Biol Chem. (1994); 269(51):32678-84を参照されたい。
【0123】
類似の戦略を用いて、単一の塩基を付加できる。適当な一本鎖の「脱保護された」「アクセプター」DNAの存在下で、トポ装填されたDNAは、そのトポイソメラーゼによりアクセプターに酵素的かつ共有結合的に連結(「付加」)され、トポイソメラーゼはこの過程でDNAから除去される。IIS型制限酵素は、1つの塩基(「付加」されている塩基)以外の付加されたDNAを全て切り離せる。この脱保護-付加の過程を繰り返し、さらなる塩基(ビット)を付加できる。本明細書において実施例で立証される通り、単一のヌクレオチドを標的一本鎖DNAの5’末端に付加するために、トポ/IIS型制限酵素の組合せを使用することができる。IIS型制限酵素の使用は、認識配列とは異なる位置でのDNAの切断を可能にする(他のIIS型制限酵素は、https://www.neb.com/tools-and-resources/selectioncharts/type-iis-restriction-enzymes に見出される)。この系においてイノシン(「普遍的塩基」として作用し、他のいかなる塩基とも対になる)を使用すると、この反応は、標的DNAにいかなる配列の要件も付さずに生じ得る。一本鎖標的DNAに付加されるヌクレオチドの正体は、ワクシニアトポイソメラーゼが3’リン酸を介して結合する3’ヌクレオチドである。ワクシニアトポイソメラーゼの認識配列は(C/T)CCTTであるので、この系を標的DNAに「T」を付加するのに使用した。関連するトポイソメラーゼのSVFがあり、それは認識配列CCCTGを使用できる(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8661446)。従って、SVFは「T」の代わりに「G」を付加するのに使用できる。ワクシニアトポと組み合わせると、バイナリデータは、TおよびGでコードされ得る。
【0124】
単一の塩基の付加の他のアプローチでは、5’リン酸が保護基を提供し、3’から5’への方向の単一の塩基の付加をもたらす。装填反応は、5’リン酸基を有する単一のT(またはG、または所望により他のヌクレオチド)をトポイソメラーゼに装填する。装填されたトポイソメラーゼが5’ブロック化されていない(リン酸化されていない)一本鎖DNA鎖を「見つける」と、それはその鎖にTを付加し、5’にTが付加されたDNAをもたらす。この付加は、トポイソメラーゼおよび一本鎖アクセプターDNAが結合できる配列を有するアダプターDNAの存在により促進される(アダプターDNAは触媒的である-それは、繰り返される反応において、鋳型として再使用され得ることに留意されたい)。付加されたヌクレオチドは5’リン酸を有するので、5’リン酸を除去するホスファターゼに曝されるまで、さらなる付加の基質にならない。単一の「T」を標的一本鎖DNAの5’末端に付加するワクシニアトポイソメラーゼおよび単一の「G」を付加するSVFトポイソメラーゼを使用して、この過程を繰り返し、かくして、TおよびGのバイナリ情報をコードする配列を構築できる。他のトポイソメラーゼを使用してAまたはCを付加できるが、この反応の効率は低い。
【0125】
トポイソメラーゼに媒介される戦略を使用する利点の1つは、モノマーがトポイソメラーゼに共有結合し、従って、「脱出」して他の反応に干渉できないことである。ポリメラーゼを使用すると、モノマーは拡散でき、ポリメラーゼおよび/または脱ブロック化剤は特異的(例えばA対Cに選択的)であるべきであるか、あるいは、混合する機会がないように、モノマーはフローにより提供される。
【0126】
ある態様では、本発明は単一のヌクレオチドを装填されたトポイソメラーゼ、即ち、単一のヌクレオチドに結合したトポイソメラーゼを提供する。ここで、例えば、トポイソメラーゼは、ヌクレオチドの3’-リン酸を介して結合し、ヌクレオチドは5’-位で保護、例えば、リン酸化されている。
【0127】
他の態様では、本発明は、単一のヌクレオチドまたはオリゴマーをDNA鎖に3’から5’への方向で付加することにより、トポイソメラーゼに媒介される連結を用いるDNA分子の合成方法(方法A)を提供し、それは、(i)所望のヌクレオチドまたはオリゴマーを装填されたトポイソメラーゼとDNA分子を反応させること、ここで、ヌクレオチドまたはオリゴマーは、5’末端でのさらなる付加を妨げられている、次いで、(ii)かくして形成されたDNAの5’末端を脱ブロック化し、所望のヌクレオチド配列が得られるまで工程(i)および(ii)を繰り返すことを含む。例えば、以下のものが提供される。
【0128】
A1.1 (i)5’保護形態の所望のヌクレオチドがDNAの5’末端に付加されるように、DNA分子を、5’保護形態、例えば、5’リン酸化形態の所望のヌクレオチドを装填したトポイソメラーゼと反応させること、次いで、(ii)かくして形成されたDNAの5’末端を、ホスファターゼ酵素を使用して脱保護すること、および、所望のヌクレオチド配列が得られるまで工程(i)および(ii)を繰り返すことを含む、単一のヌクレオチドを3’から5’への方向で付加することによるDNA分子の合成方法である、方法A;または
【0129】
A1.2 (i)所望のオリゴマーを装填されたトポイソメラーゼとDNA分子を反応させ、それによりオリゴマーをDNA分子に連結すること、次いで、(ii)制限酵素を使用して、他のオリゴマーのトポイソメラーゼに媒介される連結のための5’部位を提供すること、および、所望のオリゴマー配列が得られるまで工程(i)および(ii)を繰り返すことを含む、オリゴマーを3’から5’への方向で付加することによるDNA分子の合成方法である、方法A。
【0130】
A1.3 DNA中のニックを封じるリガーゼおよびATPを提供することを含む、上述のいずれかの方法[NB:トポイソメラーゼ連結は、一方の鎖のみを連結する]。
【0131】
A1.4 トポイソメラーゼ装填ドナーオリゴヌクレオチドが、トポイソメラーゼを有する鎖と相補的な鎖に5’オーバーハングを含み、ポリイノシン配列を含む、上述のいずれかの方法[NB:イノシンは「普遍的塩基」として作用し、他のいかなる塩基とも対になる]。
【0132】
A1.5 制限酵素が、単一の塩基(「付加」されている塩基)以外の付加されたDNAを全て切り離せるIIS型制限酵素である、上述のいずれかの方法。
【0133】
A1.6 トポイソメラーゼが、ワクシニアトポイソメラーゼおよびSVFトポイソメラーゼIから選択される、上述のいずれかの方法。
【0134】
A1.7 ワクシニアトポイソメラーゼ((C/T)CCTTを認識する)を使用してdTTPヌクレオチドを付加し、SVFトポイソメラーゼI(CCCTGを認識する)を使用してdGTPヌクレオチドを付加し、例えばバイナリコードを提供する、上述のいずれかの方法
【0135】
A1.8 DNAが二本鎖であり、保存チャンバーがさらにリガーゼおよびATPを含み、トポイソメラーゼにより連結されなかったDNA鎖を修復する、上述のいずれかの方法。
【0136】
A1.9 遊離のトポイソメラーゼのDNAオリゴマーへの結合および活性を抑制するトポイソメラーゼ阻害剤の使用を含み、例えば、阻害剤がノボビオシンおよびクーママイシンから選択される、上述のいずれかの方法。
【0137】
A1.10 かくして提供されるDNA鎖が、チミジン(T)ヌクレオシドおよびデオキシグアニジン(G)ヌクレオシドを含む配列を有する、上述のいずれかの方法。
【0138】
A1.11 トポイソメラーゼが単一の塩基を付加するが、トポイソメラーゼにより付加された塩基から5’方向の1つのヌクレオチドである位置で制限酵素が切断する、上述のいずれかの方法。
【0139】
A1.12 かくして提供されたDNA鎖が、「TT」および「TG」ジヌクレオチドの配列を含む配列を有する、上述のいずれかの方法。
【0140】
A1.13 DNAが一本鎖である、上述のいずれかの方法、
A1.14 DNAが二本鎖である、上述のいずれかの方法。
【0141】
A1.15 DNAが基板または磁気ビーズ上にあり、所望の配列を与えるのに必要な試薬に選択的に暴露されるか、またはそれから除去され得る、上述のいずれかの方法。
【0142】
A1.16 DNAの付加または脱ブロック化用の一部または全部の試薬がフローにより供給され、洗い流すことにより除去される、上述のいずれかの方法。
【0143】
A1.17 単一のヌクレオチドまたはオリゴマーの一本鎖DNAへの結合が、トポイソメラーゼおよび一本鎖アクセプターDNAが結合できる配列を有するアダプターDNAの存在により促進される、上述のいずれかの方法。
【0144】
A1.18 例えば下記方法2のいずれかに記載される通り、ナノポアがトポイソメラーゼを含むチャンバーをホスファターゼまたは制限酵素を含むチャンバーから隔てている系において実施され、ナノポアが電気的引力によるDNAの移動を可能にするが、酵素の移動は可能にしない、上述のいずれかの方法。
【0145】
生じ得る1つの懸念は、ポリG配列がG四重鎖二次構造を形成し得ることである。制限酵素を1塩基戻し(トポ配列の5’に)、同様のトポ/IIS戦略に従うことにより、「TT」または「TG」を付加でき、これらはそれぞれ異なるビットを表し得る。これは1ビットをコードするのに2塩基を要するが、ポリG配列を回避できる利点がある。他の実施態様では、トポ認識配列の3’末端にある他の塩基は、(C/T)CCTTより効率は低いが、(C/T)CCTA、(C/T)CCTCおよび(C/T)CCTGを用いて、ポックスウイルストポイソメラーゼを使用する結合を可能にする(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17462694)。タンパク質工学/選択技術を使用して、同様にこれらの反応の効率を改善することができ、同様のアプローチを、非標準塩基の付加に使用できる。
【0146】
ある種の実施態様では、この方法によりDNAを合成する方法は、DNAをリガーゼおよびATPで処理することを含む。トポイソメラーゼは、DNAの片側しか連結しない(他方には、本質的にニックがある)。リガーゼは、ニックを修復し、トポイソメラーゼ自体が反応産物を再切断し、それを切り離さないことを確実にする。
【0147】
ある種の実施態様では、この方法は、遊離のトポイソメラーゼのDNAオリゴマーに対する結合および活性を抑制するために、トポイソメラーゼ阻害剤の使用を含む。適する阻害剤には、ノボビオシンおよびクーママイシンが含まれる。低レベルのトポイソメラーゼ活性はコイル状DNAの「弛緩」を助け、特に長いDNA鎖を合成するときに有用であるので、完全な阻害は望ましくないことに留意されたい。
【0148】
従って、他の実施態様では、本開示は、ナノチップ中でDNAを合成する方法(方法2)を提供し、ナノチップは、トポイソメラーゼ装填オリゴヌクレオチド(即ち、3’末端でトポイソメラーゼに結合したオリゴヌクレオチド)を含む1以上の付加チャンバー、および、制限酵素または脱ブロック化剤、例えばホスファターゼを含む1以上の保存チャンバーを含み、これらのチャンバーは、適合する緩衝液も含み、少なくとも1つのナノポアを含む膜により分離されており、ここで、トポイソメラーゼおよび制限酵素は、ナノポアの通過を妨げられており(例えば、それらは大きすぎるので、かつ/または、それらは第1および第2のチャンバーの基板にそれぞれ係留されているので)、合成は、単一のヌクレオチドまたは短いオリゴヌクレオチド塊を、第1の末端および第2の末端を有する核酸の第1の末端に付加するサイクルにより実行され、ここで、核酸の第1の末端は、電気的引力により付加チャンバーと保存チャンバーの間を動かされ、例えば、ある実施態様では以下の通りである:
(i)レシーバーDNA(例えば、二本鎖DNA)の5’末端を、電気力により、第1の付加チャンバーに移動させること、
(ii)第1の付加チャンバーに、トポイソメラーゼ装填ドナーオリゴヌクレオチドを提供すること、ここで、ドナーオリゴヌクレオチドは、トポイソメラーゼ結合部位、情報配列(例えば、少なくとも2つの異なるヌクレオチドまたは配列から選択され、例えば、バイナリコードで、一方の配列が「0」に、他方が「1」に対応する)、制限酵素により切断されるとトポイソメラーゼ連結部位を与える制限部位を含む;
(iii)ドナーオリゴヌクレオチドがレシーバーDNAに連結し、かくしてそれを伸長するのに十分な時間をとること;
(iv)かくして伸長されたレシーバーDNAの5’末端を、電気力により、保存チャンバーに移動させ、例えば、制限酵素がレシーバーDNAを切断してトポイソメラーゼ連結部位をもたらすように、または、単一のヌクレオチドの付加の場合、脱ブロック化剤、例えば、ホスファターゼが、一本鎖DNA上に5’が脱ブロック化されたヌクレオチドを生成するようにすること;および
(v)所望のDNA配列が得られるまで、工程(i)~(iv)のサイクルを繰り返し、同一または異なる情報配列を有するオリゴヌクレオチドを付加すること。
【0149】
例えば、本発明は、以下を提供する。
2.1 レシーバーDNAの3’末端がナノポアに近接して結合しており、レシーバーオリゴヌクレオチドの5’末端がトポイソメラーゼ連結部位を含む方法2であって、工程(iv)の後に、第1の付加チャンバーを洗い流し、新しいトポイソメラーゼ装填ドナーオリゴヌクレオチドを第1の付加チャンバーに提供することにより、さらなるオリゴヌクレオチドをレシーバーDNAの5’末端に付加することを含み、ここで、新しいドナーオリゴヌクレオチドは、以前のドナーオリゴヌクレオチドとは異なる情報配列を有し;新しいドナーオリゴヌクレオチドがレシーバーDNAに付加されるのが望ましい場合、レシーバー核酸の5’末端を第1のチャンバーに引き戻し、工程(i)~(iii)を繰り返し、または、それが望ましくない場合、所望のドナーオリゴヌクレオチドが第1のチャンバーに提供されるまで、レシーバーDNAを第2のチャンバーに留まらせる、方法2。
【0150】
2.2 複数のレシーバーDNA分子が独立して並行して合成され、それらが第1のチャンバーに存在するか否かを別々に制御することにより、異なる配列を有するDNA分子が得られるようにする、上述のいずれかの方法。
【0151】
2.3 それぞれ3’末端でナノポアに近接する表面に結合した複数のレシーバーDNA分子が独立して合成され、各ナノポアが電極対を伴い、電極対の一方の電極がナノポアの一方の末端に近接した位置にあり、他方の電極がナノポアの他方の末端に近接した位置にあり、電極対により与えられる電流により各レシーバーDNA分子を第1のチャンバーと第2のチャンバーの間で独立して動かせるようにする、上述のいずれかの方法。
【0152】
2.4 サイクルの工程(i)で使用されるドナーオリゴヌクレオチドが、各サイクルで第1の情報配列を含むドナーオリゴヌクレオチドと第2の情報配列を含むドナーオリゴヌクレオチドの間で交互になる、上述のいずれかの方法。
【0153】
2.5 レシーバーDNAの5’末端を第1の付加チャンバーに戻して同じ情報配列を有するオリゴヌクレオチドを付加することにより、または、レシーバーDNAの5’末端を、3’末端でトポイソメラーゼに結合したドナーオリゴヌクレオチドを有する第2の付加チャンバーに移動させることにより(ここで、第2の付加チャンバー中のドナーオリゴヌクレオチドは、第1の付加チャンバー中のドナーオリゴヌクレオチドとは異なる情報配列を有する)、さらなるオリゴヌクレオチドをレシーバーDNAの5’末端に付加する工程を含む、方法2。
【0154】
2.6 ドナーオリゴヌクレオチドが以下の構造:
【化1】
[ここで、Nは任意のヌクレオチドを表し、制限酵素はAcc1であり、これは、DNA(例えば上記の配列中のGTCGAC)を切断し、適切なオーバーハングを提供できる]
を有する、上述のいずれかの方法。
【0155】
2.7 ドナーオリゴヌクレオチドがヘアピン構造を有する上述のいずれかの方法、例えば、上下の鎖のNNNNN基が結合している2.6。
【0156】
2.8 トポイソメラーゼ装填オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、以下の構造:
【化2】
を有する、上述のいずれかの方法。
【0157】
2.9 トポイソメラーゼ装填オリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、以下の構造:
【化3】
を有する、上述のいずれかの方法。
【0158】
2.10 トポイソメラーゼ装填オリゴヌクレオチドを用いる、上述のいずれかの方法。
2.11 オリゴヌクレオチドがナノポアを通過する際の電圧、電流、抵抗、静電容量および/またはインピーダンスの変化を検出することにより、合成されたDNAの配列を各サイクルに続いて決定する、上述のいずれかの方法。
【0159】
2.12 DNAの合成が、緩衝液、例えば、pH7~8.5、例えば約pH8とするためのバッファー、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、適当な酸、および、場合によりキレーター、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含むバッファー、例えば、Trisベース、酢酸およびEDTAの混合物を含むTAEバッファー、または、Trisベース、ホウ酸およびEDTAの混合物を含むTBEバッファーを含む溶液中で;例えば、10mM Tris pH8、1mM EDTA、150mM KCl、または、例えば、50mM酢酸カリウム、20mM Tris-アセテート、10mM酢酸マグネシウムを含む溶液(pH7.9@25℃)中で起こる、上述のいずれかの方法。
【0160】
2.13 DNAをナノチップから取り出すことをさらに含む、上述のいずれかの方法。
上述のいずれかの方法。
【0161】
2.14 かくして合成されたDNAを増幅することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0162】
2.15 DNAをナノチップから取り出し、DNAを結晶化することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0163】
2.16 例えば参照により本明細書に組み込むUS8283165B2に記載されている通り、DNAを含む溶液を、1以上のバッファー(例えば、ホウ酸バッファー)、抗酸化剤、湿潤剤、例えばポリオール、および、場合によりキレート剤と共に乾燥させること;または、核酸とポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(l-リジン)(PEG-PLL)AB型ブロックコポリマーとの間にマトリックスを形成することなどにより、核酸を安定化することをさらに含む、上述のいずれかの方法。
【0164】
2.17 DNA中のニックを封じるリガーゼおよびATPを提供することを含む、上述のいずれかの方法[NB:トポイソメラーゼ連結は、一方の鎖のみを連結する]。
【0165】
2.18 トポイソメラーゼを装填されたドナーオリゴヌクレオチドが、トポイソメラーゼを有する鎖と相補的な鎖に5’オーバーハングを含み、ポリイノシン配列を含む、上述のいずれかの方法[NB:イノシンは「普遍的塩基」として作用し、他のいかなる塩基とも対になる]。
【0166】
2.19 制限酵素が、単一の塩基(「付加」されている塩基)以外の付加されたDNAを全て切り離せるIIS型制限酵素である、上述のいずれかの方法。
【0167】
2.20 トポイソメラーゼが、ワクシニアトポイソメラーゼおよびSVFトポイソメラーゼIから選択される、上述のいずれかの方法。
【0168】
2.21 ワクシニアトポイソメラーゼ((C/T)CCTTを認識する)を使用してdTTPヌクレオチドを付加し、SVFトポイソメラーゼI(CCCTGを認識する)を使用してdGTPヌクレオチドを付加し、例えばバイナリコード情報を提供する、上述のいずれかの方法。
【0169】
2.22 保存チャンバーがさらにリガーゼおよびATPを含み、トポイソメラーゼにより連結されなかったDNA鎖を修復する、上述のいずれかの方法。
【0170】
2.23 遊離のトポイソメラーゼのDNAオリゴマーへの結合および活性を抑制するトポイソメラーゼ阻害剤の使用を含み、例えば、阻害剤がノボビオシンおよびクーママイシンから選択される、上述のいずれかの方法。
【0171】
2.24 かくして提供されるDNA鎖が、チミジン(T)ヌクレオシドおよびデオキシグアニジン(G)ヌクレオシドを含む配列を有する、上述のいずれかの方法。
【0172】
2.25 トポイソメラーゼが単一の塩基を付加するが、トポイソメラーゼにより付加された塩基から5’方向の1つのヌクレオチドである位置で制限酵素が切断する、上述のいずれかの方法。
【0173】
2.26 かくして提供されたDNA鎖が、「TT」および「TG」ジヌクレオチドの配列を含む配列を有する、上述のいずれかの方法。
【0174】
2.27 単一のヌクレオチドを3’から5’への方向で付加することによりDNA分子を合成する方法であって、(i)5’保護形態の所望のヌクレオチドがDNAの5’末端に付加されるように、DNA分子を、5’保護形態、例えば5’リン酸化形態の所望のヌクレオチドを装填されたトポイソメラーゼと反応させること、次いで、(ii)ホスファターゼ酵素を使用して、かくして形成されたDNAの5’末端を脱保護すること、および、所望のヌクレオチド配列が得られるまで、工程(i)および(ii)を繰り返すことを含む、上述のいずれかの方法。
【0175】
2.28 オリゴマーを3’から5’への方向で付加することによりDNA分子を合成する方法であって、(i)DNA分子を、所望のオリゴマーを装填されたトポイソメラーゼと反応させ、それにより、オリゴマーをDNA分子に連結させること、次いで、(ii)制限酵素を使用して、トポイソメラーゼに媒介されるさらなるオリゴマーの連結のために5’部位を提供すること、および、所望のヌクレオチド配列が得られるまで、工程(i)および(ii)を繰り返すことを含む、上述のいずれかの方法。
2.29 記載される方法Aに準じる方法である、上述のいずれかの方法。
【0176】
合成反応の生成物を、検出し、品質管理の目的で調査し、ポリマーにコードされたデータを抽出するために読み取ることができる。例えば、DNAを常套の手段で増幅し、配列決定し、ナノポアの配列決定の頑健性を確認し得る。
【0177】
他の実施態様では、本発明は、トポイソメラーゼ結合部位、情報配列(例えば、少なくとも2つの異なる配列から選択され、例えば、バイナリコードで、一方の配列が「0」に、他方が「1」に対応する)、および、制限酵素により切断されるとトポイソメラーゼ連結部位を与える制限部位を含む、例えば、以下の配列:
【化4】
[ここで、情報配列AまたはBは、3~12個、例えば、約8個のヌクレオチドの配列である]
を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0178】
他の実施態様では、本発明は、トポイソメラーゼを装填されたオリゴヌクレオチドであって、トポイソメラーゼ結合部位、情報配列(例えば、少なくとも2つの異なる配列から選択され、例えば、バイナリコードで、一方の配列が「0」に、他方が「1」に対応する)、および、制限酵素により切断されるとトポイソメラーゼ連結部位を与える制限部位を含むオリゴヌクレオチド;例えば、以下の構造を有するトポイソメラーゼを装填されたオリゴヌクレオチド:
【化5】
[ここで、情報配列AまたはBは、3~12個、例えば、約8個のヌクレオチドの配列であり、*は、オリゴヌクレオチドに共有結合したトポイソメラーゼ;例えば、トポイソメラーゼはワクシニアウイルストポイソメラーゼIである]
を提供する。
【0179】
他の実施態様では、本発明は、上記の一本鎖または二本鎖DNA分子であって、一本鎖またはコード配列が、本質的にハイブリダイズしない塩基、例えばアデニンおよびシトシン(AおよびC)からなり、それらが、例えばデータ保存方法における使用のために、バイナリコードに相当する配列で配置されている、DNA分子を提供する。例えば、本発明は、DNAが一本鎖または二本鎖であり、少なくとも1000ヌクレオチド長、例えば、1000~1,000,000ヌクレオチド、例えば、5,000~20,000ヌクレオチド長であり、ヌクレオチドの配列がバイナリコードに対応する、DNA(DNA1);例えば、以下のものを提供する。
【0180】
1.1 DNAが一本鎖であるDNA1。
1.2 DNAが二本鎖であるDNA1。
【0181】
1.3 一本鎖またはコード配列中のヌクレオチドが、アデニン、チミンおよびシトシンヌクレオチドから選択され、例えば、アデニンおよびシトシンヌクレオチド、または、チミンおよびシトシンヌクレオチドから選択される、上述のいずれかのDNA。
【0182】
1.4 一本鎖の形態のときに有意な二次構造を形成しないように、主としてハイブリダイズしないヌクレオチドからなる、上述のいずれかのDNA。
【0183】
1.5 ヌクレオチドが、少なくとも95%、例えば99%、例えば100%、アデニンおよびシトシンヌクレオチドである、上述のいずれかのDNA。
【0184】
1.6 連続的な1または0をより容易に読み取れるように、バイナリコードを含むヌクレオチドを分離または分断するために、例えば、1と0、または1と0のグループを分離するために、付加されたヌクレオチドまたはヌクレオチド配列を含む、上述のいずれかのDNA。
【0185】
1.7 (a)バイナリコードの各ビットが単一のヌクレオチドに対応する、例えば1および0が、各々AまたはCに対応する;または、(b)バイナリコードの各ビットが、1より多いヌクレオチド、例えば2、3または4個のヌクレオチドの連続物、例えば、AAAまたはCCCに対応する、上述のいずれかのDNA。
【0186】
1.8 結晶化されている、上述のいずれかのDNA。
1.9 例えば参照により本明細書に組み込むUS8283165B2に記載されている通り、核酸を含む溶液を、1以上のバッファー塩(例えば、ホウ酸バッファー)、抗酸化剤、湿潤剤、例えばポリオール、および、場合により、キレート剤と共に乾燥形態で;かつ/または、核酸とポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(l-リジン)(PEG-PLL)AB型ブロックコポリマーとの間のマトリックス中に;かつ/または、相補的核酸またはDNAに結合するタンパク質と共に提供される、上述のいずれかのDNA。
【0187】
1.10 記載される方法1または記載される方法2または記載される方法Aのいずれかにより製造された、上述のいずれかのDNA。
【0188】
ナノチップは、例えば
図23~29に示す通りに作製できる。例えば、ある形式では、各ポリマー鎖は2個または4個の付加チャンバーを伴い、2個の付加チャンバーの形式は、ポリマー中にバイナリコードをコードするのに有用であり、4個の付加チャンバーの形式は、カスタムDNA配列を作製するのに特に有用である。各付加チャンバーは、個別に制御可能な電極を含む。付加チャンバーは、バッファー中のポリマーにモノマーを付加する試薬を含む。付加チャンバーは、1以上のナノポアを含む膜により、保存チャンバーから分離されており、それは、複数の付加チャンバーに共通であり得、付加チャンバーで付加された保護モノマーまたはオリゴマーを脱保護する脱保護試薬およびバッファーを含む。ナノチップは、多数のポリマーの並列合成を可能にする複数の付加チャンバーのセットを含む。
【0189】
高帯域幅かつ低ノイズのナノポアセンサーおよび検出電子工学が、単一DNA塩基の分解能を達成するのに重要である。ある種の実施態様では、ナノチップは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップに電気的に連結している。例えば、参照によりその内容を本明細書に組み込む、Uddin, et al., "Integration of solid-state nanopores in a 0.5 μm cmos foundry process", Nanotechnology (2013) 24(15): 155501に記載の通り、固相ナノポアは、CMOSプラットフォーム内に、バイアス電極およびカスタム設計された増幅電子工学の近傍に組み込むことができる。
【0190】
他の実施態様では、本開示は、少なくとも2個の別個のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNAを、合成および/または配列決定するためのナノチップ(ナノチップ1)であって、1以上のナノポアを含む膜により分離されている少なくとも第1および第2の反応チャンバーを含み、各反応チャンバーは、荷電ポリマーをチャンバー内に引き出すための1以上の電極を含み、電解質媒体および場合によりモノマーをポリマーに付加するための試薬をさらに含むナノチップを提供し、例えば、以下のものを提供する。
【0191】
1.1 ナノポアの直径が2~20nm、例えば2~10nm、例えば2~5nmである、ナノチップ1。
【0192】
1.2 ナノチップの反応チャンバーの壁の一部または全部が、シリコン材料、例えば、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素またはこれらの組合せ、例えば窒化ケイ素を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0193】
1.3 ナノチップの反応チャンバーの壁の一部または全部が、シリコン材料、例えば、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素またはこれらの組合せ、例えば窒化ケイ素を含み、ナノポアの一部または全部がイオン照射により作製されたものである、上述のいずれかのナノチップ。
【0194】
1.4 ナノポアの一部または全部が、ポア形成タンパク質のα-ヘモリジンを含む膜、例えば脂質二重膜で構成されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0195】
1.5 反応チャンバーの壁の一部または全部が、試薬との相互作用を最小にするために被覆されている、例えば、ポリエチレングリコールなどのポリマーで、または、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質で被覆されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0196】
1.6 電解質媒体を含む、上述のいずれかのナノチップ。
1.7 pH7~8.5、例えば約pH8とするためのバッファー、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、適当な酸、および、場合によりキレーター、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含むバッファー、例えば、Trisベース、酢酸およびEDTAの混合物を含むTAEバッファー、または、Trisベース、ホウ酸およびEDTAの混合物を含むTBEバッファーを含む溶液中で;例えば、10mM Tris pH8、1mM EDTA、150mM KCl、または、例えば、50mM酢酸カリウム、20mM Tris-アセテート、10mM酢酸マグネシウムを含む溶液(pH7.9@25℃)などのバッファーを含む電解質媒体を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0197】
1.8 モノマーをポリマーに付加するための試薬を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0198】
1.9 ポリマーの合成(例えば、モノマーまたはモノマーのグループを連続的にポリマーに付加することによる「書き込み」)および配列決定(例えば、モノマーがナノポアを通過する際の電流および/またはインダクタンスの変化を測定することによる「読み取り」)の両方が可能である、上述のいずれかのナノチップ。
【0199】
1.10 例えば、ナノポアを流れる電流が電解質媒体を介してナノポアを通って確立され得るように、例えば、電流がナノポアを通してポリマーを引き出すことができ、ポリマーがナノポアを通過する際、ナノポアにかかる電位の変化を測定し得、ポリマー内のモノマーの配列を同定するのに使用し得るように、1以上のナノポアを含む膜が両側に金属表面を含み、金属表面は、絶縁体、例えば窒化ケイ素膜により分離されており、金属表面は、例えばリソグラフィーの手段により、各ナノポアの各末端に電極をもたらすように形成されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0200】
1.11 DNAである荷電ポリマーを含む、上述のいずれかのナノチップ。
1.12 一本鎖DNA(ssDNA)である荷電ポリマーを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0201】
1.13 予め決定された制限部位を含むDNAである荷電ポリマーを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0202】
1.14 DNAである荷電ポリマーを含み、DNAが上記のDNA1に記載のDNAである、上述のいずれかのナノチップ。
【0203】
1.15 DNAである荷電ポリマーを含み、DNAが少なくとも95%、例えば99%、例えば100%のアデニンおよびシトシンを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0204】
1.16 DNAである荷電ポリマーを含み、DNAがアデニンおよびシトシンのみを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0205】
1.17 バッファーおよび試薬の導入および洗い流しを可能にする1以上のポートを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0206】
1.18 緩衝液、例えば、pH7~8.5、例えば約pH8とするためのバッファー、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、適当な酸、および、場合によりキレーター、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含むバッファー、例えば、Trisベース、酢酸およびEDTAの混合物を含むTAEバッファー、または、Trisベース、ホウ酸およびEDTAの混合物を含むTBEバッファーを含む溶液;例えば、10mM Tris pH8、1mM EDTA、150mM KCl、または、例えば、50mM酢酸カリウム、20mM Tris-アセテート、10mM酢酸マグネシウムを含む溶液(pH7.9@25℃)を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0207】
1.19 保存およびその後の再水和のために凍結乾燥されているか、または、凍結乾燥することができる、例えば、ナノチップの構造が、水和性または水透過性ポリマーを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0208】
1.20 例えば、ナノチップの構造が、水和性または水透過性ポリマーを含み、一度書き込みプロセスが完了したら、使用に先立ち水和され、場合により、長期保存のために凍結乾燥される、乾燥形態で合成される上述のいずれかのナノチップ。
【0209】
1.21 荷電ポリマー、例えばDNAが、ヒストンで安定化されている、上述のいずれかのナノチップ。
1.22 内表面が正に荷電されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0210】
1.23 電極が、無線周波数の脈流直流電流を、例えば1MHz~1GHz、例えば50~200MHz、例えば約100MHzの周波数でナノポアにかけることができる容量回路に、作動可能に連結されており、例えば、脈流直流電流が荷電ポリマーをナノポアを通して引き出すことができ、荷電ポリマーがナノポアを通過する際にナノポアの容量変動を測定することによりモノマー配列を決定できる、上述のいずれかのナノチップ。
【0211】
1.24 付加チャンバーの1つにおけるモノマーまたはオリゴマーの付加後に、ポリマーを脱保護するための試薬を含む保存チャンバーまたは脱ブロック化剤チャンバーを含む、上述のいずれかのナノチップ。
1.25 複数の付加チャンバーの対を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0212】
1.26 例えば
図24に記載の、ウエハー接合によって接合された電気制御層、フルイディクス層および電気的アース層を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0213】
1.27 ナノポアが、FIB、TEM、ウェットエッチングもしくはドライエッチングを用いて穿孔することによって作成される、上述のいずれかのナノチップ。
【0214】
1.28 ナノポアを含む膜が1原子層から30nmの厚さである、上述のいずれかのナノチップ。
【0215】
1.29 ナノポアを含む膜が、SiN、BN、SiOx、グラフェン、遷移金属ジカルコゲナイド、例えばWS2またはMoS2で作られたものである、上述のいずれかのナノチップ。
【0216】
1.30 金属またはポリシリコンで作られた配線を含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0217】
1.31 配線の密度が、誘電成膜(例えば、PECVD、スパッタリング、ALDなどによる)によって与えられる電気的遮蔽を伴う3次元スタッキングによって増大する、上述のいずれかのナノチップ。
【0218】
1.32 付加チャンバーにおける電極との接触が、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)によるシリコン貫通電極(TSV)を用いて、例えば、クライオ処理またはBOSCH処理を用いて、または、ウェットシリコンエッチングによりなされる、上述のいずれかのナノチップ。
【0219】
1.33 各付加チャンバーの電極の個別の電圧制御が、各付加チャンバーの電極を個別に制御およびモニターすることを可能にする、上述のいずれかのナノチップ。
【0220】
1.34 各ポリマーが第1の付加チャンバー、第2の付加チャンバーおよび脱ブロック化チャンバーを伴う、上述のいずれかのナノチップ。
【0221】
1.35 1以上のチャンバーに流体のフローがある、上述のいずれかのナノチップ。
1.36 1以上のチャンバーが流体的に分離されている、上述のいずれかのナノチップ。
1.37 脱ブロック化チャンバーに流体のフローがある、上述のいずれかのナノチップ。
1.38 付加チャンバーに共通の流体のフローがある、上述のいずれかのナノチップ。
【0222】
1.39 チャンバー間の配線が、類似する種類のチャンバーで(例えば、第1の付加チャンバーで、第2の付加チャンバーで、脱チャンバーで)共通である、上述のいずれかのナノチップ。
【0223】
1.40 付加チャンバーが個別の電圧制御を有し、脱ブロック化チャンバーが共通の電気的アースを有する、上述のいずれかのナノチップ。
【0224】
1.41 脱ブロック化チャンバーが個別の電圧制御を有し、第1の付加チャンバーが共通の電気的アースを有し、第2の付加チャンバーが共通の電気的アースを有する、上述のいずれかのナノチップ。
【0225】
1.42 ナノチップがウエハー接合によって作製され、チャンバーが接合に先立ち所望の試薬で予め満たされる、上述のいずれかのナノチップ。
1.43 1以上の内部表面がシラン処理されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0226】
1.44 流体の導入または除去のための1以上のポートを含む、上述のいずれかのナノチップ。
【0227】
1.45 チャンバー内の電極が荷電ポリマーとの直接的接触を制限されている、例えば、ナノポアに隣接する表面に結合した荷電ポリマーが到達できないほど、電極がナノポアから離れて配置されている、または、水および単一原子のイオン(例えば、Na+、K+およびCl-イオン)を通過させるが、ポリマーまたはポリマーに加わるべきモノマーまたはオリゴマー試薬は通過させない物質により電極が保護されている、上述のいずれかのナノチップ。
【0228】
1.46 相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップに電気的に連結している、上述のいずれかのナノチップ。
【0229】
例えば、ある実施態様では、本発明は、少なくとも2つの別個のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNAの配列決定のために、ナノチップ、例えば、上記ナノチップ1のいずれかに記載のナノチップを提供し、ナノチップは、電解質媒体を含み、1以上のナノポアを含む膜により分離されている、少なくとも第1および第2の反応チャンバーを含み、各反応チャンバーは、膜の反対側に配置された少なくとも1対の電極を含み、電極は、無線周波数の脈流直流電流を、例えば1MHz~1GHz、例えば50~200MHz、例えば約100MHzの周波数でナノポアにもたらすことができる容量回路に作動可能に連結されており、例えば、脈流直流電流は、荷電ポリマーをナノポアを通して引き出すことができ、荷電ポリマーがナノポアを通過する際にナノポアの容量変動を測定することによりモノマー配列を読み取ることができる。
【0230】
他の実施態様では、本発明は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNA分子のモノマー配列を読み取る方法を提供し、その方法は、無線周波数の脈流直流電流を、例えば1MHz~1GHz、例えば50~200MHz、例えば約100MHzの周波数でナノポアにかけ、脈流直流電流が、荷電ポリマーをナノポアを通して引き出し、荷電ポリマーがナノポアを通過する際にナノポアの容量変動を測定することによりモノマー配列を読み取ることを含む。
【0231】
他の実施態様では、本発明は、情報を保存するための方法における上記DNA1の使用を提供する。
【0232】
他の実施態様では、本発明は、情報を保存するための方法における一本鎖DNAの使用を提供し、この方法では、例えば、配列は実質的に自己ハイブリダイズしない。
【0233】
他の実施態様では、本発明は、データ保存方法およびデバイスを提供し、これは、例えば、上記方法1および/または2のいずれかに従って、少なくとも2つの異なる種類のモノマーを含む荷電ポリマー、例えばDNAを作製するために、ナノチップ、例えば、上記ナノチップ1のいずれかを使用し、モノマーまたはオリゴマーがバイナリコードに対応する順番で配列される。
【0234】
例えば、ある実施態様では、かくして合成されたポリマーを含むナノチップは、ナノチップを活性化することができ、ポリマーをナノチップに通過させることによりポリマーの配列をいつでも検出できるので、データ保存デバイスを提供する。他の実施態様では、ポリマーはナノチップから取り出され、または、増幅され、増幅されたポリマーがナノチップから取り出され、必要なときまで保存され、常套のシークエンサー、例えば、常套のナノポア配列決定デバイスにより、読み取られる。
【0235】
他の実施態様では、本発明は、例えば上記方法1または上記方法2のいずれかに従って上記のDNA1を合成することを含む、情報の保存方法を提供する。
【0236】
他の実施態様では、本発明は、本明細書に記載の通りに、ナノポアシークエンサーを使用して、例えば上記ナノチップ1を使用して、例えば上記DNA1にコードされているバイナリコードを読み取る方法を提供する。
【0237】
荷電ポリマーを分解する酵素、例えば、DNAを加水分解するデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を使用して、ナノチップが消去される、上述のいずれかの方法。
【実施例】
【0238】
実施例
実施例1-ナノポアに隣接するDNAの一方の末端の固定、および、電流によるDNAの前進および後退の制御
DNAが、関連するタンパク質がチャンバー間を移動しない条件下で、ナノポアで分離された2つのチャンバーの間を電流により行き来することを立証するために、実験手順を開発した。
【0239】
2つのチャンバーを含むナノチップを窒化ケイ素から作製した。<4nm(dsDNAまたはssDNA)および2nm(ssDNAのみ)のナノポアを、Briggs K, et al. Automated fabrication of 2-nm solid-state nanopores for nucleic acid analysis, Small (2014)10(10):2077-86 に記載の通りに調製した。2つのチャンバーを「遠い」チャンバーおよび「近い」チャンバーと称し、遠いチャンバーは、DNAの3’末端が結合しているチャンバーである。
【0240】
ssDNA(2nmポア)およびssDNA+dsDNA(4nmポア)はナノポアを通過するが、タンパク質はしないことが示される。ナノポアの通過は、電流の混乱により検出される。
【0241】
ポア表面へのDNAの結合:5’アミノ修飾DNAを、カルボジイミドに媒介される結合により、カルボキシ被覆されたポリスチレンビーズ(Fluoresbrite(登録商標)BB Carboxylate Microspheres 0.05μm、Polysciences, Inc.)に結合させる。DNAの3’をビオチンで標識する。DNAは、予め特定した長さのものである。
【0242】
ストレプトアビジン結合: Arafat, A. Covalent Biofunctionalization of Silicon Nitride Surfaces. Langmuir (2007) 23 (11): 6233-6244 に記載の通り、結合は、窒化ケイ素ナノポアコンジュゲートストレプトアビジンの「遠い」側で、その表面に対して行った。
【0243】
ナノポアに近いDNAの固定:バッファー中のDNA結合ポリスチレンビーズを、「近い」チャンバーに添加し、バッファーを「遠い」チャンバーに添加する(標準バッファー:10mM Tris pH8、1mM EDTA、150mM KCl)。電流の混乱が観察されるまで電圧(約100mV)をかける(Axon Nanopatch200B パッチクランプ増幅器を使用)。50nmのビーズはナノポアを通過できず、よって、DNA鎖が通り過ぎ、ビーズがナノポアの末端に押しつけられるときに、電流が大きく乱れる。DNAが、ビオチンの結合により、遠い側に固定されたストレプトアビジンに不可逆的に結合するまで、電流を1~2分間維持する。DNAが固定されたことを確認するために、電流を逆にする。DNAがポアの中または外にあれば、異なる電流が観察される。DNAが固定されていないことがわかったら、この過程を繰り返す。
【0244】
エンドヌクレアーゼによるビーズの解放:制限酵素バッファー中の制限酵素を、DNAが結合しているチャンバーに添加する。ある実施態様では、DNAは一本鎖であり、一本鎖DNAを切断する酵素により切断できる制限部位を含む。例えば、Nishigaki, K., Type II restriction endonucleases cleave single-stranded DNAs in general. Nucleic Acids Res. (1985) 13(16): 5747-5760 を参照されたい。代替的な実施態様では、相補的オリゴヌクレオチドをDNAが結合しているチャンバーに添加し、30分間ハイブリダイズさせ、dsDNAを創出し、次いで、制限酵素を添加する。ビーズが解放されたら、それを洗い流す。電流を前後に切り換え、DNAがポアを通って出入りすることを確認する。
【0245】
前進および後退の制御を立証する:標準バッファーを使用して、シグナルの混乱が観察されるまで、電流を前向きにかけ、DNAが通過した後、「通常」に戻す。シグナルの混乱が観察されるまで、逆の電流をかける。DNAがポアに留まると、シグナルは通常に戻らないことが観察される。前向きおよび逆向きの電流をかけることを数サイクル繰り返し、DNAがナノポアを通って前進および後退することを確認する。
【0246】
実施例1a:二酸化ケイ素チップにおいてナノポアに隣接してDNAを固定する
ナノチップ内壁を二酸化ケイ素で作製する。両側をシラン処理するが、オリゴヌクレオチドをチップ壁の片側だけに結合させ、次いで、ナノポアを創出する。
【0247】
シラン処理:チップ壁の表面を30℃でピラニア溶液(様々な銘柄を購入でき、一般的に、硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)の混合物を含み、表面から有機残渣を除去する)で処理し、再蒸留水で洗浄する。50%メタノール(MeOH)、47.5%APTES、2.5%ナノピュアH2Oで(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)の原液を調製し、>1時間、4℃で熟成させた。APTES原液を、次いで、MeOHで1:500に希釈し、室温でチップ壁に適用し、インキュベートする。次いで、チップ壁をMeOHですすぎ、110℃で30分間乾燥させる。
【0248】
結合:次いで、チップ壁を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の1,4-フェニレンジイソチオシアナート(PDC)の0.5%w/v溶液中、5時間室温でインキュベートする。DMSOで2回軽く洗浄し、再蒸留水で2回軽く洗浄する。次いで、チップ壁を、再蒸留水(pH8)中で100nMアミン修飾一本鎖DNAオリゴマー(約50mers)と終夜37℃でインキュベートする。次いで、チップ壁を28%アンモニア溶液で2回洗浄し、未反応の物質を不活性化し、再蒸留水で2回洗浄する。次いで、1以上のナノポアを壁に創出する。
【0249】
ナノチップの作製が完了したら、内壁を約50bp長のDNAオリゴマーで被覆する。これは、ssDNAを比較的嵩高い構造(例えば、ナノポアを通過できないほど大きな直径を有するビーズ、タンパク質、またはDNAオリガミ構造)に結合させ(ここで、表面に結合したDNAに相補的な配列は、嵩高い構造から離れている)、電流を使用して荷電ポリマーをナノポアを通して引き出し、ssDNAを、ナノポアに隣接する相補的な表面に結合したDNAオリゴマーと結合させ、嵩高い構造を切り離すことにより、表面に結合したDNAに相補的な末端配列を有する一本鎖DNAをナノポアに配置することを可能にする。
【0250】
実施例2:DNA合成-単一のヌクレオチドの付加
適当な電流をかけ、DNAの動きを検出することにより、DNAを「保存」チャンバーに動かす。
【0251】
適当なバッファー(50mM酢酸カリウム、20mM Tris-アセテート、10mM酢酸マグネシウム、pH7.9@25℃)中の末端トランスフェラーゼ酵素(TdT, New England Biolabs)、および、可逆的にブロック化されたdATP*を、「付加」チャンバーに添加する。また、バッファーを「保存」チャンバーに添加する。
【0252】
3’-OHに可逆的なブロック化を有するdNTPを使用して、ヌクレオチドをDNAに付加する。DNA鎖に付加されると、次のdNTPは、ブロック化されたdNTPが脱ブロック化されるまで、付加できない。
【0253】
脱ブロック化は、化学的または酵素的であり得る。様々なアプローチが利用される:
a.3’O-アリル:アリルは、Ju J, Four-color DNA sequencing by synthesis using cleavable fluorescent nucleotide reversible terminators. Proc Natl Acad Sci U S A. (2006);103(52):19635-40 に記載の通り、水性緩衝液中でPdに触媒される脱アリル化により;または、Shankaraiah G., et al., Rapid and selective deallylation of allyl ethers and esters using iodine in polyethylene-400. Green Chem. (2011)13: 2354-2358 に記載の通り、ポリエチレングリコール-400中のヨウ素(10mol%)を使用することにより、除去される。
【0254】
b.3’O-NH2:US8034923に記載の通り、アミンは、緩衝化されたNaNO2中で除去される。
【0255】
c.3’-リン酸。リン酸は、エンドヌクレアーゼIV(New England Biolabs)で加水分解される。エンドヌクレアーゼIVにより除去できる他の可能な3’修飾には、ホスホグリコアルデヒドおよびデオキシリボース-5-リン酸が含まれる。
【0256】
d.3’-O-Ac:酢酸は、Ud-Dean, A theoretical model for template-free synthesis of long DNA sequence. Syst Synth Biol (2008) 2:67-73 に記載の通り、酵素的加水分解により除去される。
【0257】
次いで、適当な電流をかけ、DNAの動きを検出することにより、DNAを「遠い」チャンバーに動かす。バッファーを交換し、上記a~dに記載の通りに脱ブロック化バッファー/液を加えることにより、DNAを脱保護する。
所望によりプロセスを繰り返し、目的の配列を作製する。
【0258】
実施例3:DNA合成:オリゴヌクレオチド塊の付加
二本鎖DNAの3’末端を、4nmの開口部を有するナノポアに隣接して結合させる。DNAの5’末端は、(5’から3’に読んで)CGのオーバーハングを有する。
【0259】
以下の通りにオリゴカセットAおよびBを作製する:
【化6】
【0260】
コードAおよびコードBは、各々、情報配列を表す。Nは、任意のヌクレオチドを表す。5’配列はトポイソメラーゼ認識部位を含み、3’配列はAcc1制限部位を含む。オリゴをトポイソメラーゼに曝すと、トポイソメラーゼは3’チミジンに結合する:
【化7】
【0261】
適当な電流をかけることにより、DNAを「近い」チャンバーに動かし、DNAの動きを検出する。トポイソメラーゼを装填された「コードA」オリゴを、「付加」チャンバーに提供する。適当な電流をかけることにより、DNAを付加チャンバーに動かし、DNAの動きを検出し、その際にコードAオリゴがDNAに結合する。Acc1を「保存」チャンバーに添加し、そこでそれは制限部位を切断し、トポイソメラーゼ連結部位をもたらす。
【0262】
所望の配列に到達するまでこのプロセスを繰り返し、他の「コードA」または「コードB」を付加する。「保存」チャンバーに新しいAcc1を継続的に添加する必要はないことに留意されたい;コードAまたはコードBから切り換えるときに、「付加」チャンバー中のコードAまたはコードBオリゴを洗い流すだけでよい。
【0263】
ssDNAのみを通過させるポアで配列決定するために、上記のプロトコールにいくつかの変更が必要である。ssDNAのみが通過する小さいポア(2nm)にdsDNAが遭遇すると、相補鎖が「脱落する」ことが既に知られている。従って、この合成を2nmのポアで行うのなら、正しいdsDNAが他方の側で確実に再形成できるようにしなければならない。このために、「CGAAGGG<コードAまたはB>GTCGACNNNNN」を、近いチャンバーに(制限部位が創成されるように)、「CGAAGGG<コードAまたはB>GT」を遠いチャンバーに(トポ適合部位が生成されるように)加え得る。
【0264】
上述の方法を詳しく述べると、DNAにコードされた情報を、≧2の連続的付加(データの2ビットを表す)で、伸長しているDNA鎖に連続的に「付加」し、その各々が「付加」および「脱保護」の工程を含むことを立証する。コンセプトの最適化および検証のための初期の実験は、マイクロチューブで実施する。
【0265】
この実施例に記載のアプローチでは、情報の1ビットは、一連のヌクレオチド中にコードされる。「付加」されるDNAのビットは、ワクシニアトポイソメラーゼI(トポ)に結合した短いdsDNA配列である。適当な「脱保護」「アクセプター」DNAの存在下で、トポ装填されたDNAの「ビット」は、トポイソメラーゼによりアクセプターに酵素的かつ共有結合的に連結(「付加」)され、このプロセスのトポイソメラーゼは、その後DNAから除去される。次いで、制限酵素は、付加されたビットを切断してそれを「脱保護」し、次のビットを付加するための適当な「アクセプター」配列を創成する。
【0266】
トポ装填:一般的な装填スキームは以下の通りであり、
図22および下記に図解され、ここで、Nは任意のヌクレオチド、A、T、GおよびCは、各々アデニン、チミン、グアニンおよびシトシン塩基を有するヌクレオチドを表す。相互の上にあるNは、相補的である。この実施例は制限酵素HpyCH4IIIを使用するが、基本的戦略は、例えば実施例4で立証する通り、他の制限酵素でも成立する。
【化8】
【化9】
【0267】
以下のオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies (IDT)に発注する。一部のオリゴヌクレオチドの末端の「b」は、ビオチンを示す):
BAB: CGATAGTCTAGGCACTGTTTGCTGCGCCCTTGTCCGTGTCGCCCTTATCTACTTAAGAGATCATACAGCATTGCGAGTACG
B1: b-CACGTACTCGCAATGCTGTATGATCTCTTAAGTAGATA
B2: ATCTACTTAAGAGATCATACAGCATTGCGAGTACG
TA1: b-CACACTCATGCCGCTGTAGTCACTATCGGAAT
TA2: AGGGCGACACGGACAGTTTGAATCATACCG
TA3b: AACTTAGTATGACGGTATGATTCAAACTGTCCGTGTCGCCCTTATTCCGATAGTGACTACAGCGGCATGAG
TB1: b-CACACTCATGCCGCTGTAGTCACTATCGGAAT
TB2: AGGGCGCAGCAAACAGTGCCTAGACTATCG
TB3b: AACTTAGTATGACGATAGTCTAGGCACTGTTTGCTGCGCCCTTATTCCGATAGTGACTACAGCGGCATGAG
FP1: CACGTACTCGCAATGCT
FP2: CGGTATGATTCAAACTGTCCG
FP3: GCCCTTGTCCGTGTC
オリゴヌクレオチドをTEバッファー中に100uMに溶解し、-20Cで保存する。
【0268】
後述の通りにオリゴヌクレオチドを混合し、95℃に5分間加熱し、次いで、温度を3分間に5℃の速度で20℃に達するまで下げることにより、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを作製する。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを4℃または-20℃で保存する。オリゴヌクレオチドの組合せは以下の通りである:
B1/2
48 uL B1
48 uL B2
4 uL 5M NaCl
A5
20 uL TA1
20 uL TA2
5 uL TA3b
4 uL 5M NaCl
51 uL TE
B5
20 uL TB1
20 uL TB2
5 uL TB3b
4 uL 5M NaCl
51 uL TE
【0269】
以下のバッファーおよび酵素をこの実施例で使用する:
TE:10M Tris pH8.0、1mM EDTA、pH8.0
WB:1M NaCl、10mM Tris pH8.0、1mM EDTA pH8.0
1xTopo:20mM Tris pH7.5、100mM NaCl、2mM DTT、5mM MgCl2
1xRE:50mM K-酢酸、20mM Tris-酢酸、10mM Mg-酢酸、100ug/ml BSA pH7.9@25C
ワクシニアDNAトポイソメラーゼI(トポ)は、Monserate Biotech (10,000 U/mL)から購入する
HypCH4IIIは、NEBから購入する
ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ(s-MagBeads)は、ThermoFisher から購入する。
【0270】
アクセプターを、次の通りに調製する:5uLのs-magbeads を200uLのWBで1回洗浄する(結合時間1分間)。5uLのB1/2+195uLのWBをビーズに添加し、15分間室温でインキュベートし、次いで、200uLのWBで1回洗浄し、次いで、200uLの1xTopoで1回洗浄し、150uLの1xTopoに再懸濁する。
【0271】
トポ装填されたA5(
図20参照)を、以下の通りに調製する:4uLの10xトポバッファー+23uLの水+8uLのA5+5uLのトポを、37℃で30分間インキュベートし、5uLのs-magbeads(200uLのWBで1x洗浄、200uLの1xトポで1x洗浄、150uLの1xトポに再懸濁)に添加し、室温で15分間結合させる。
【0272】
装填A5をアクセプターに「付加」する:s-magbeads を、トポ装填A5から除去し、アクセプターに添加し、37℃で60分間インキュベートする。アリコートを取り出し、TE中に1/200で希釈し、-20Cで保存する。
【0273】
脱保護:物質を200uLのWBで1回洗浄し、200uLの1xREで1回洗浄し、15uLの10xREおよび120uLの水に再懸濁する。15uLのHypCH4IIIを添加する。混合物を37℃で60分間インキュベートし、次いで200uLのWBで1回洗浄し、200uLの1xトポで1回洗浄し、「アクセプター-A5」と称する生成物を産生する。
【0274】
トポ装填B5(
図21参照)を、次の通りに調製する:4uLの10xトポバッファー、23uLの水および8uLのB5+5uLトポを合わせ、37℃で30分間インキュベートする。生成物を5uLのs-magbeads(200uLのWBで1x洗浄、200uLのトポで1x洗浄、150uLの1xトポに再懸濁)に添加し、室温で15分間結合させる。
【0275】
装填されたB5をアクセプター-A5に「付加」する:s-magbeads をトポ装填B5から除去し、アクセプター-A5に添加し、37℃で60分間インキュベートする。アリコートを取り出し、TE中に1/200で希釈し、-20℃で保存する。
【0276】
脱保護:物質を200uLのWBで1回洗浄し、200uLの1xREで1回洗浄し、15uLの10xREおよび120uLの水に再懸濁する。15uLのHypCH4IIIを添加し、混合物を37℃で60分間インキュベートする。
【0277】
上記の反応が機能したことの確認は、A5(A5が付加されたアクセプター:工程iii、図解の「A5付加」)およびB5(B5が付加されたアクセプター-A5:工程vi、図解の「B5付加」)のアリコートのPCR増幅により行った。「鋳型なし」をA5の負の対照として使用し、A5をB5の負の対照として使用し、オリゴBABをB5の正の対照として使用する。A5PCRに予想される生成物のサイズは68bpであり、B5PCRに予想される生成物のサイズは、57bpである。(予想サイズ約47bpのB1/2もゲルに流すが、オーバーハングがあり、ビオチン化されているため、これは近似値であり得る)。PCR反応(95/55/68(各1分間)の30サイクルを次の通りに実施する:
【表3】
【0278】
4-20%Tris-グリシンゲルを用いるSDS-PAGEを使用して、予想されるサイズのオリゴヌクレオチドが産生されることを確認する。装填は上記の通りに実施するが、装填(37℃のインキュベーション工程)の直後に、ローディングバッファーを混合し、サンプルを70℃に2分間加熱し、ゲルに流す前に冷ます。ゲルをクーマシーで染色する。負の対照として、トポの代わりに水を反応に添加する。
図30は結果を示し、A5PCRおよびB5PCRに予想される生成物サイズに対応するバンドを明確に示している。
【0279】
かくして、トポイソメラーゼ装填DNAカセットを介するDNAビットの付加および制限酵素により実行される脱保護は、実施可能であることが示される。これらのコンセプトの検証実験において、DNAはストレプトアビジン結合磁気ビーズにより固定され、異なる反応混合物に連続的に移動するが、ナノポアチップの形式では、別個の反応チャンバーを創成し、電流を使用してDNAをこれらの異なる反応チャンバーに動かす。
【0280】
最終的に、情報の「ビット」に対応するDNA配列の連続的付加を実行すると、予想されるDNA配列が創成されることを、PCRにより立証する。これらの反応は設計された通りに作用し、最適化は最小限でよい。
【0281】
実施例2および3に記載の通りに作製されたDNAを回収し、購入できるナノポアシークエンサー(Oxford Nanopore の MinION)を使用して配列決定し、所望の配列が得られることを裏付ける。
【0282】
実施例4-DNA合成:異なる制限酵素を使用するオリゴヌクレオチド塊の付加
以下の合成は、実施例3と同様に、ただし、「ACGCGT」で切断して
【化10】
を形成する制限酵素MluIを使用して実行する。
【0283】
この実施例では、TOPOが装填され、装填されたTOPOがDNAをMluIで切断されたDNAに移動できるようにする配列相補性を有する複合体を形成する:
【化11】
【0284】
先行する実施例と同様のプロセスにより、装填されたTOPOを使用して、相補的なアクセプター配列を有する合成されている鎖の5’末端にオリゴマーを付加し、それによりTOPOを解放し、その鎖は、MluIを用いて「脱保護」され、このサイクルはオリゴマーの所望の配列が得られるまで繰り返される。
【0285】
実施例5-トポイソメラーゼ戦略を用いる単一の塩基の付加
トポイソメラーゼのシステムを、単一の塩基を一本鎖DNA鎖に付加するように設計することもできることを見出した(「カセット」を付加することを記載する実施例3と比較)。「付加」されるDNAビットは、ワクシニアトポイソメラーゼI(トポ)に結合した短いDNA配列に含まれる。適当な一本鎖の「脱保護」「アクセプター」DNAの存在下で、トポ装填されたDNAは、トポイソメラーゼによりアクセプターに酵素的かつ共有結合的に連結され(「付加」)、それは、このプロセスにおいてDNAから除去される。IIS型制限酵素は、単一の塩基(「付加」されている塩基)以外の付加されたDNAを全て切り離せる。この脱保護-付加の過程を繰り返し、さらなる塩基(ビット)を付加する。
【0286】
トポ装填:一般的な装填プロトコールは、実施例3と同様であり、以下の通りである:
【化12】
【0287】
実施例3と同様に、相互の上にあるNは相補的である。Iはイノシンである。ビオチンを使用して未反応生成物および副生成物を除去する。単一の塩基の付加は、以下の通りに実行する。
【化13】
【0288】
脱保護は、BciVI制限酵素(部位は太字)を使用して、以下のように例示される:
【化14】
【0289】
以下のオリゴヌクレオチドを商業的に合成する(B=ビオチン、P-リン酸、I=イノシン):
NAT1 CACGTCAGGCGTATCCATCCCTTCACGTACTCGCAATGCTGTATGGCGAT
NAT1b P-CACGTCAGGCGTATCCATCCCTTCACGTACTCGCAATGCTGTATGGCGAT-B
NAT9cI P-IIIIIAAGGGATGGATACGCCTGACGTG
NAT9x P-ATCGCCATACAGCATTGCGAG
NAT9 ACGTGAAGGGATGGATACGCCTGACGTG
Nat9Acc CACGTAGCAGCAAACAGTGCCTAGACTATCG
Nat1P CACGTCAGGCGTATCCATCC
FP4 CGATAGTCTAGGCACTGTTTG
オリゴヌクレオチドをTEバッファー中100μMに溶解し、-20℃で保存する。
【0290】
ハイブリダイゼーション:記載したオリゴヌクレオチドを混合し、95℃に5分間加熱し、次いで、温度を20℃に達するまで3分間に5℃下げることにより、以下のハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを作製する。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを4℃または-20℃で保存する。
NAT1b/NAT9cI/NAT9x
8 μL NAT1B
10 μL NAT9cI
10 μL NAT9x
48 μL TE
4 μL 5M NaCl
NAT1/NAT9cI
10 μL NAT1
10 μL NAT9cI
80 uL PBS
NAT1/NAT9
10 μL NAT1
10 μL NAT9
80 uL PBS
【0291】
バッファーおよび酵素:以下のバッファーを使用する:
TE:10M Tris pH8.0、1mM EDTA、pH8.0
PBS:リン酸緩衝食塩液(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4)(pH7.4)
10x Cutsmart:500mM KAc、200mM Tris-Ac、100mM Mg-Ac、1mg/mL BSA pH7.9
BciVIはNEBから購入し、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ (s-MagBeads) はThermoFisher から購入する。
【0292】
付加反応は以下の通りに実行する。
1.トポ装填:下表の通りに試薬を合わせる:
【表4】
【0293】
次いで、試薬を37℃で30分間インキュベートする。トポバッファー中のストレプトアビジン磁気ビーズ(5uL)を使用して、室温で10分間結合させた後、副生成物を除去する。
【0294】
【0295】
次いで、試薬を37℃で30分間インキュベートする。付加反応は以下の通りに進行すると予想される:
【化15】
【0296】
アスタリスク(*)はトポイソメラーゼを表す。NAT9cIはリン酸化されているが、図解の目的では表示されていないことに留意されたい。
【0297】
装填されたトポがアクセプター配列に存在するとき、以下の反応に進む:
【化16】
【0298】
PCR増幅およびアガロースゲルでの生成物の分子量の測定により、予想された生成物が産生されたことを確認する。正しいサイズのバンドをレーン1(実験)に示し、負の対照にバンドを示さない、
図30参照。
【0299】
B.脱保護反応:下表の通りに試薬を合わせる:
【表6】
【0300】
試薬を37℃で90分間インキュベートする。脱保護反応のために、購入したオリゴヌクレオチドを用いて付加反応の代表的な生成物を作製し、BciVI制限酵素による切断について試験する:
【化17】
【0301】
切断部位の3’が「通常の」塩基と向かい合うイノシンの連続であることから、制限酵素が意図通りにDNAを切断するか否かはわからなかった。正の対照として、「適切な」塩基対のNAT1/NAT9cIの同等物を作製した(NAT1/NAT9c):
【化18】
【0302】
生成物のPCR増幅と、それに続くアガロースゲルでの分子量の測定(
図31)は、酵素が意図通りに作用することを示す。正の対照には、切断されないと大きいバンドが観察されるが(レーン1)、切断されると小さいバンドが観察される。同じパターンがNAT1/NAT9cIで観察され、イノシンの存在が切断を無効化または妨害しないことを示す。少量の未切断生成物がNAT1/NAT9cIで残っていると思われ、少なくともこれらの条件下で、切断はNAT1/NAT9cほど有効ではないことを示唆する。切断効率は、バッファー条件の変更、および/または、NAT9cIの5’末端にイノシンをもっと付加することにより改善され得る。
【0303】
上述の実施例は、トポ/IIS型制限酵素の組合せを使用して、単一のヌクレオチドを標的一本鎖DNAの5’末端に付加することができることを示す。配列CCCTG(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8661446)を認識する関連トポイソメラーゼのSVFは、類似のプロセスを用いて、「T」の代わりに「G」を付加するために使用され、かくして、TおよびGでバイナリ情報をコードする配列の構築を可能にする。
【0304】
上記の通り、トポイソメラーゼ戦略を使用してdsDNAを生成する場合、反対側の鎖のDNAにおけるニックは、リガーゼをATPと共に使用して修復できる。しかしながら、本実施例のように単一のヌクレオチドを付加するとき、修復されるべきニックはなく、リガーゼを使う必要もないように、一本鎖DNAを構築している。
【0305】
実施例6-トポイソメラーゼの戦略を5’リン酸結合と組み合わせて用いる単一の塩基の付加
単一の塩基の付加に対する別のアプローチでは、3’から5’への方向で単一の塩基対の付加をもたらすために、ブロッキング基として5’リン酸を使用する。装填反応は、トポイソメラーゼに、5’リン酸基を有する単一のT(またはG、または所望により他のヌクレオチド)を装填する。装填されたトポイソメラーゼが5’がブロック化されていない(リン酸化されていない)一本鎖DNA鎖を「見つける」と、それはTをその鎖に付加し、5’にTが付加されたDNAをもたらす。この付加は、トポイソメラーゼおよび一本鎖アクセプターDNAが結合できる配列を有するアダプターDNAの存在により促進される。(アダプターDNAは触媒的であることに留意されたい-反復される反応において、鋳型として再使用できる。)付加されたヌクレオチドは5’リン酸を有するので、5’リン酸を除去するホスファターゼに暴露されるまで、さらなる付加の基質にはならない。標的一本鎖DNAの5’末端に単一の「T」を付加するためにトポを、単一の「G」を付加するためにSVFトポイソメラーゼを使用してこの過程を繰り返し、かくして、TおよびGのバイナリ情報をコードする配列の構築を可能にする。この過程を、以下の通り、模式的に示す:
【0306】
【0307】
【0308】
実施例7-ナノポアに隣接してDNAを結合させるためのDNAオリガミの使用
一端に大きいオリガミ構造を有するDNA鎖をナノポア中に捕捉し、DNAの末端のビオチン部分を介して、表面に結合したストレプトアビジンに固定する。オリガミ構造を制限酵素で切断した後、電流の混乱により確認される通り、固定されたDNAはポアを通って行き来できる。固定は、ポアを通る単一のDNA分子の動きの制御を可能にし、それは、DNAへの情報の「読み取り」および「書き込み」を可能にする。
【0309】
図35に示す通り、大きすぎてナノポアにはまれない嵩高い二本鎖DNAユニットが形成され、一本鎖領域が、合成中に付加されるべきDNAを係留するのに役立つ2つの短い二本鎖領域により、その嵩高い部分に連結される。次いで、一本鎖領域を分離し、ナノポアに隣接する表面に係留し、オリガミ構造を解放し得る。
図33参照。
【0310】
ナノポアを、20nm SiO2を有する3mmのチップに、50*50μmの開口部で形成する。チップは Nanopore Solutions により提供される。ナノポアカセットホルダーおよびフローセルは、Nanopore Solutions により提供される。増幅器は、Tecella Pico 2 増幅器である。これは、制御のためにusb-コンピューターインターフェースを使用する、usbから電源供給される増幅器である。Tecella は、増幅器を制御する(Windows)ソフトウェアを供給する。回路計は、0.1uAまで低い電流を検出できる FLUKE 17B+ Digital Multimeter である。無線周波数ノイズのスクリーニングのために、USBインターフェースを有する Concentric Technology Solutions TC-5916A Shield Box (Faraday Cage) を使用する。オリゴヌクレオチドは IDT.com から入手する。「PS」は、http://www.gelest.com/product/o-propargyl-n-triethoxysilylpropylcarbamate-90/のプロパルギルシラン-O-(プロパルギル)-N-(トリエトキシシリルプロピル)カルバメートである。
【0311】
オリガミ構造は、一辺約20nmの「ハニカム状の」立方体オリガミ構造を有する一本鎖m13をベースとする。それぞれユニークな制限部位を含む、ハニカムに隣接する二本鎖領域がある。これらの部位の1つを用いて修飾DNAを結合させ、ナノポア近傍での結合を可能にし、DNAが結合したら、他の部位を用いてオリガミ構造を切り離す。
【0312】
ナノポア形成:以下の通りに、誘電破壊を使用してチップにナノポアを形成させる:
1.チップを注意深くカセットにマウントする
2.ウェッティング:100%エタノールを注意深くピペットでチップに置く。気泡を除去しなければならない。しかしながら、チップ上の溶液を直接ピペッティングすることは避けるべきであり、さもないとチップは割れ得る(SiO2はわずか20nmである)。
3.表面処理:エタノールを除去し、新たに調製したピラニア溶液(75%硫酸、25%過酸化水素(30%))をピペットでチップに置く。(ピラニア溶液を室温にさせる)。30分間放置する。
4.蒸留水で4回すすぐ。
5.HKバッファー(10mM HEPES pH8、1M KCl)で2回すすぐ。
6.カセットをフローセル中に組み立てる。
7.フローセルの各チャンバーに700μLのHKバッファーを添加する。
8.増幅器に取り付けた銀電極を挿入し、ファラデーケージを閉じる。
9.300mVで抵抗を試験する。電流は検出されるべきではない。もし検出されたら、チップは割れていると思われ、やり直さなければならない。
10.電極を6VのDC電流に接続し、回路計で電流を試験する。電流は低いべきであり、変化しないべきである。電圧を1.5V上げ、抵抗が増加するまで電圧を維持する。5~10分後に抵抗が増加しなければ、電圧をさらに1.5V上げ、再試行する。抵抗が増加するまで繰り返し、その時点でかけた電圧をすぐに止めるべきである。(十分な電圧で、誘電破壊が起こり、SiO2膜に「ポア」が作られる。最初にできたとき、ポアは小さいが、電圧を維持すると大きくなる。)
11.増幅器を使用してポアを試験する。300mVで数nAの電流が見られるべきである。電流が高いほど、ポアは大きい。
【0313】
図34は基本的な機能するナノポアを示す。各パネルにおいて、y軸は電流(nA)であり、x軸は時間(秒)である。左のパネル「RFノイズのスクリーニング」はファラデーケージの有用性を示す。ナノポアを有さないチップをフローセル内に配置し、300mVをかける。ファラデーケージの蓋を閉じると(最初の矢印)、ノイズの減少が見られる。ラッチを閉じると(2番目の矢印)、小さなスパイクが生じる。電流が約0nAであることが分かる。ポアの製造後(中央のパネル)、300mVの適用(矢印)は約3.5nAの電流をもたらす。DNAをアースチャンバーに適用し、+300mVをかけると、DNAの移行(右のパネル)が電流の一過性の減少として観察され得る。(この場合にTS緩衝液が使用されていることを言及しておく:50mM Tris、pH8、1M NaCl。)ラムダDNAがこのDNA移行実験に使用されている。
【0314】
塩化銀電極:
1.銀ワイヤーを絶縁銅ワイヤーにはんだ付けする。
2.銅ワイヤーを磨き、銀を新しい30%次亜塩素酸ナトリウムに30分間浸す。
3.銀は濃灰色の被覆(塩化銀)を得るはずである。
4.銀ワイヤーを蒸留水でよくすすぎ、乾燥させる。
5.それはもう使用できる。
【0315】
ビーズのシラン処理:シラン処理の方法は、まずSiO2被覆磁気ビーズ(GBioscience)で開発/試験する。以下のプロトコールを採用する:
1.新鮮なピラニア溶液中で30分間ビーズを予処理する。
2.蒸留水で3回洗浄する。
3.メタノールで2回洗浄する。
4.APTES原液をメタノールで1:500に希釈する。
5.希釈したAPTESをビーズに添加し、RTで45分間インキュベートする。
6.メタノールですすぐ。
7.100℃で30分間。
8.真空下で保存する。
【0316】
シリコンチップのシラン処理
1.ナノポアを有するチップをカセットにマウントする。
2.メタノールですすぎ、気泡を注意深く除去する。
3.新鮮なピラニア溶液(室温に平衡化したもの)を添加し、30分間インキュベートする。
4.蒸留水で4回洗浄する。
5.メタノールで3回洗浄する。
6.APTES原液をメタノールで1:500に希釈し、これを使用してチップを2回洗浄する。RTで45分間インキュベートする。
7.メタノールで2回すすぐ。
8.気流のもとで乾燥させる。
9.真空下で終夜保存する。
【0317】
ビーズのストレプトアビジン結合:ストレプトアビジン結合は、まず、上記で調製されたシラン処理ビーズで開発/試験する。
1.シラン処理ビーズを改変リン酸緩衝食塩液(MPBS)で洗浄する。
2.MPBS中の1.25%グルタルアルデヒド溶液を新たに作る(冷凍保存した50%グルタルアルデヒド原液を使用する)。
3.1.25%グルタルアルデヒドをビーズに添加し、15分ごとに静かに上下にピペッティングしながら、60分間静置する。
4.MPBSで2回洗浄する。
5.水で2回洗浄する。
6.真空下で乾燥させる。
7.ストレプトアビジン(MPBS中500μg/mL)をビーズに添加し、60分間インキュベートする(負の対照のビーズには、ストレプトアビジンの代わりにウシ血清アルブミン(BSA)(MPBS中2mg/mL)を用いる)。
8.ストレプトアビジンを除去し、BSA(MPBS中2mg/mL)を添加する。60分間インキュベートする。
9.MPBSで2回洗浄する。
10.4℃で保存する。
【0318】
シリコンチップのストレプトアビジン結合
1.シラン処理されたチップをエタノールで2回すすぐ。
2.シラン処理されたチップをMPBSで2回すすぐ。
3.MPBS中の1.25%グルタルアルデヒド溶液を新たに作る(冷凍保存した50%グルタルアルデヒド原液を使用する)。
4.チップを1.25%グルタルアルデヒドで2回すすぎ、15分ごとに静かに上下にピペッティングしながら、60分間静置する。
5.MPBSで2回洗浄する。
6.水で2回洗浄する。
7.気流のもとで乾燥させる。
8.チップの2分の1にBSA(MPBS中2mg/mL)を添加し、他方にストレプトアビジン(MPBS中500μg/mL)を添加する。60分間インキュベートする。チップのどちらの半分がストレプトアビジン修飾されているかを示す印をカセットにつける。
9.チップの両方の半分をBSA(MPBS中2mg/mL)ですすぐ。60分間インキュベートする。
10.MPBSで洗浄する。
【0319】
ここで使用するバッファーは、以下の通りに作製する:
MPBS:8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/Lリン酸二ナトリウム、0.240g/Lリン酸カリウム、0.2g/Lポリソルベート-20(pH7.2)
PBS:8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/Lリン酸二ナトリウム、0.240g/Lリン酸カリウム
TS:50mMTrispH8.0、1MNaCl
HK:10mM HEPES pH8.0、1M KCl
TE:10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0
ピラニア溶液:75%過酸化水素(30%)+25%硫酸
APTES原液:50%メタノール、47.5%APTES、2.5%ナノピュア水。4℃で少なくとも1時間熟成させる。4℃で保存する。
PDC原液:DMSO中の0.5%w/v1,4-フェニレンジイソチオシアナート
【0320】
オリゴヌクレオチド(5’から3’へ)を注文する:
o1 CTGGAACGGTAAATTCAGAGACTGCGCTTTCCATTCTGGCTTTAATG
o3 GGAAAGCGCAGTCTCTGAATTTAC
N1 CTTACTGGAACGGCTATCGATATCGCAGCAGGACAGA
BN1 Biotin-CTTACTGGAACGGCTATCGATATCGCAGCAGGACAGA
N2 GTCCTGCTGCGATATCGATAGCCGTTCCAGTAAG
【0321】
オリゴヌクレオチド対のハイブリダイゼーションは、以下の通りに実行する:
1.オリゴの原液をTEバッファー中、100uMの濃度で作製する
2.オリゴをPBSで10μMに希釈する
3.サーマルサイクラーで85℃に5分間加熱する
4.3分間に5℃の勾配をつけて25℃まで冷ます
5.4℃または-20℃で保存する
【0322】
ストレプトアビジン結合:SiO
2へのストレプトアビジンの結合を、SiO2被覆した磁気ビーズを使用して開発および試験し、次いで、そのプロトコールをSiO
2チップに適合させた。ビオチン化オリゴのストレプトアビジンおよびBSA結合ビーズへの結合を試験する。予想通り、無視できる結合がBSA結合ビーズで観察され、強い結合がストレプトアビジン結合ビーズで観察される。
図38参照。結合を高塩濃度で実施するとより便利であろうから(DNAの移動を高塩濃度で実施する)、ビーズがHKバッファー中で結合する能力も試験する。HKバッファー中の結合は、MPBSバッファー中の結合に匹敵する(
図39)。
【0323】
オリガミコンストラクトを作製し、上記の通り、作動可能であることを
図35~37で確認する。オリゴヌクレオチドを用いてオリガミ構造のビオチン化を試験する。上記
図37に示す「オリガミの」結果から、AlwNI部位が活性であることが既にわかっている。オリガミDNAの正確な配列のセグメントを再創成するオリゴヌクレオチド対を下記で使用する(o1/o3)。オリガミ分子を以下に示す:
【化21】
【0324】
オリゴ対o1/o3は、以下の通りである。
【化22】
【0325】
下記の反応に従って、T4DNAリガーゼ、および、オリガミ配列の3’側のオーバーハングに相補的なビオチン化されたオリゴ(それは長いssDNA配列に結合しており、ssDNA配列はオリガミの他方の側に結合している)の存在下で、DNAをAlwNIで切断する:
【化23】
【0326】
この戦略では、AlwN1は標的DNAを切断する。リガーゼを添加すると、このDNAは再び連結され得るが、制限酵素は再度切断するであろう。しかしながら、(o1/o3の)(右の)断片がBN1/N2に結合すると、制限部位は再創成されず、この生成物は切断されない。制限酵素の有無で試験することにより、特異的結合を確認する:
【表7】
【0327】
リガーゼ以外の全ての試薬を添加し、溶液を37℃で60分間インキュベートする。リガーゼを添加し、溶液を終夜16℃でインキュベートする。10xlig buffは、NEB 10x T4 DNAリガーゼバッファーを表す。リガーゼはNEB T4 DNAリガーゼである。o1/o3およびn1/n2は、上記の通り、アニールしたオリゴ対を表す。単位はマイクロリットルである。アガロースゲル分析は、AlwNIの存在下で、より大きい生成物が形成されることを確認し、それは、オリガミ構造に結合した長いssDNAアームに結合したビオチン化オリゴヌクレオチドに相当する。同様の戦略を、所望により、3’ビオチン化に使用する。
【0328】
DNAが電圧に誘導されてポアを通って移動することを検出するナノポアを形成および使用する能力、そのビオチンから遠い末端で結合した長いss領域を有するオリガミ分子の創成、ストレプトアビジンの二酸化ケイ素への結合、および、それを使用してビオチン化DNAを捕捉することを、上記で立証する。これらのツールを使用して、単一のDNA分子をナノポアの近くに結合させ、その動きを制御する。
【0329】
第1工程は、ストレプトアビジンをSiO2ナノポアの1つの表面に(そしてBSAを他方の側に)結合させることである。これは、上記のプロトコールにより達成される。得られるポアは、それらが最初に有するよりも低い電流を有する傾向がある。いくつかの短い6vのパルスの後、電流を元の電流近くに戻す。この時点の機能しているナノポアを
図40に示す。
【0330】
次に、オリガミDNAを挿入する。オリガミDNAを適当なチャンバーに加え、電流を流すと、オリガミはチャンバーに入る。この代表例を
図41に示す。オリガミが最終濃度50pMで導入されたときの実験結果は、オリガミを有するDNAが比較的早く(典型的には数秒で)ポアに入り、それがその結果としてのナノポアを流れる電流の減少(例えば、これらの実施例では、オリガミ挿入前の電流は約3nAであり、挿入後は約2.5nAである)により検出可能であることを裏付ける。電流がより長い時間流れれば、二重の挿入が観察できる。より高い濃度を使用すると、挿入が起こるのが早すぎて観察できない。
【0331】
挿入されたDNAのチップへの結合。オリガミがナノポアに挿入された後、再度電圧をかけるまで、15分間経過させる。オリガミのssDNA領域の末端はビオチンを含み、ストレプトアビジンがナノポアの表面に結合している。ストレプトアビジンは共有結合に近い結合定数でアビジンに結合する。この15分間は、DNAを拡散させ、ビオチン末端がストレプトアビジンを発見し結合することを可能にする。DNAが実際に表面に結合していたら、電圧を逆にしたときに観察される電流は以前よりもわずかに少ないはずである。また、電流を前後に切り換えると、空いているポアで見られるよりも低い電流を双方向でもたらすはずである。ここで示す実施例では、空いているポアは約3nAの電流を示す。
図42は、結合したDNAの代表例を示し、
図43は、結合したオリガミDNAを切り換える電圧の実験結果を示す。双方向で見られる電流は約+/-2.5nAであり、空いているポアで観察される約+/-3nAよりも低いことに留意されたい。DNAが表面に結合していなかったら、電圧を切り換えると元の電流が回復するであろう(
図44)。
【0332】
オリガミ構造を除去するために、オリガミ構造を含むフローセルチャンバー内のバッファーを除去し、1uL Swa1/20Lを含む1xSwa1バッファーで置き換える。他のフローセルチャンバー内のバッファーを、Swa1を含まない1xSwa1バッファーで置き換える。これを室温で60分間インキュベートし、次いでHKバッファーで洗浄し、電圧をかける。
図45に示すDNAの前進および後退は、
図46に示す実験データにより裏付けられ、固定されたDNAがSiO2ナノポアを通って制御されて動くことを示す。
【0333】
実施例8-ポリマーをナノポアに隣接する表面に結合させる代替的手段
上述の実施例は、DNAをビオチン化し、結合表面をストレプトアビジンで被覆することによる、ナノポアに隣接する表面へのDNAの結合を記載する。ポリマー結合のいくつかの代替的手段を
図47に示す。
a)DNAハイブリダイゼーション:ある方法では、本発明の方法において伸長されるDNAを、ナノポアの近傍に結合している短いオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。合成が完了したら、合成されたDNAは制限酵素を必要とせずに容易に取り出すことができ、または、結合したオリゴヌクレオチドと合成されたDNAにより形成される二本鎖は、制限酵素の基質を提供できる。この実施例では、ビオチン-ストレプトアビジンを用いて短いオリゴマーを表面に結合させるか、または、以下の通り、1,4-フェニレンジイソチオシアナートを使用して連結させる:
【0334】
ビオチン化DNAのSiO2への結合:
A.シラン処理:
1.予処理:nha溶液30分間、再蒸留H2O(ddH2O)で洗浄する
2.APTES原液の調製:50%MeOH、47.5%APTES、2.5%ナノピュアH2O:熟成>1時間4℃
3.APTES原液をMeOH中で1:500に希釈する
4.チップを室温でインキュベートする
5.MeOHですすぐ
6.乾燥させる
7.110℃で30分間加熱する
【0335】
結合:
1.チップをPDC原液で5時間(室温)処理する(PDC原液:DMSO中の0.5%w/v1,4-フェニレンジイソチオシアナート)
2.DMSOで2回洗浄する(短く)
3.ddH2Oで2回洗浄する(短く)
4.ddH2O(pH8)中、100nMアミノ修飾DNA、O/N37℃
5.28%アンモニア溶液で2回洗浄する(不活性化)
6.ddH2Oで2回洗浄する
【0336】
結合したオリゴヌクレオチドに相補的な末端配列を有する一本鎖DNAを、上記の通りに導入し、結合したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。
【0337】
b)クリックケミストリー:クリックケミストリーとは、簡潔かつ熱力学的に効率的で、毒性または高反応性の副生成物を創成せず、水または生物適合性溶媒中で行われ、目的の物質を特定の生体分子に結合させるのにしばしば使用される反応についての、一般的な用語である。この場合のクリック結合は、a)でオリゴヌクレオチドの結合に使用されたのと同様の化学を使用するが、ここでは、本発明の方法において合成の過程で伸長されるポリマーを結合するのにそれだけが使用される。この実施例ではDNAはポリマーであるが、この化学は、適合するアジド基の付加により官能化された他のポリマーを結合させるのにも使える。
【0338】
シラン処理:
1.予処理:ピラニア溶液30分間、ddH2Oで洗浄する
2.PS(プロパルギルシラン)原液の調製:50%MeOH、47.5%PS、2.5%ナノピュアH2O:熟成>1時間、4C
3.APTES原液をMeOHで1:500に希釈する
4.チップを室温でインキュベートする
5.MeOHですすぐ
6.乾燥させる
7.110℃で30分間加熱する
【0339】
アジド官能基で終結するDNAは、この表面に共有結合する(
図47に示す通り)。アジドで終結するオリゴを注文し、先にDNAへのビオチンの付加について記載した通り、より長いオリガミDNAに結合させる。
【配列表】