(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光拡散制御部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240830BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2019225517
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019648(WO,A1)
【文献】特開2000-275408(JP,A)
【文献】特開2013-037337(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051700(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051639(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/051560(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0235184(US,A1)
【文献】特開2014-002188(JP,A)
【文献】特開2019-144418(JP,A)
【文献】特開2013-19988(JP,A)
【文献】特開2005-326824(JP,A)
【文献】特開2005-227566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の光拡散制御層と、前記第一の光拡散制御層における片面側に積層された第二の光拡散制御層とを備えた光拡散制御部材の製造方法であって、
前記光拡散制御部材において、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層は、それぞれ、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有し、
前記光拡散制御部材における前記第一の光拡散制御層に近位な面を第一の面とし、前記光拡散制御部材における前記第二の光拡散制御層に近位な面を第二の面とした場合に、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層のそれぞれにおいて、前記屈折率が相対的に高い領域が、前記第二の面側から前記第一の面側に向けて延在しているとともに、前記延在の方向に平行な直線が、前記光拡散制御部材の厚さ方向に対して傾斜しており、
前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層のそれぞれについて、前記延在の方向に平行であるとともに、前記第二の面側から前記第一の面側に向くベクトルを想定した場合に、それらのベクトルを前記第一の面にそれぞれ射影して得られる2つのベクトルのなす角度が0°超、90°以下となるように、前記第一の光拡散制御層と前記第二の光拡散制御層とが積層されており、
前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層の少なくとも一方において、前記屈折率が相対的に高い領域が、前記第二の面側から前記第一の面側に向けて延在している柱状物であるとともに、前記規則的内部構造が、前記屈折率が相対的に低い領域中に前記柱状物を林立させてなるカラム構造であり、
前記第一の光拡散制御層と前記第二の光拡散制御層とが、互いに独立した層として積層されており、
前記製造方法は、
工程シートの片面に、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を塗布することで塗膜を形成する工程と、
前記塗膜における前記工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面を貼合する工程と、
前記工程シートまたは前記剥離シート越しに、前記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化させることにより、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層をそれぞれ形成する工程と、
形成された前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層を積層する工程と
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記柱状物が、その一端と他端との間において屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第一の光拡散制御層と、前記第一の光拡散制御層における片面側に積層された第二の光拡散制御層とを備えた光拡散制御部材の製造方法であって、
前記光拡散制御部材において、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層は、それぞれ、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有し、
前記光拡散制御部材をミラーの反射面に積層してなる測定サンプルにおける前記光拡散制御部材側の面における任意の一点に対し、前記面の法線となす角度が30°の光線を、前記一点を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向からそれぞれ照射して、前記一点から拡散反射される反射光を前記方位角ごとに生じさせ、前記反射光のうち前記面の正面方向に向かう反射光の輝度(cd/m
2
)を前記方位角ごとに測定し、得られた4つの輝度のうち最小の輝度の値をL
min
とし、最大の輝度の値をL
max
とするとともに、
標準白色板における片面の任意の一点に対し、前記片面の法線となす角度が30°の光線を、前記L
min
が測定された方位角から照射して、前記一点から正面方向に拡散反射した反射光の輝度(cd/m
2
)の値をL
STD
としたとき、
L
1
=L
min
/L
STD
で表されるL
1
が、次式(1)
L
1
>1.00 …(1)
を満たし、
L
2
=L
min
/L
max
で表されるL
2
が、次式(2)
0.6≦L
2
≦1.00 …(2)
を満たし、
前記測定サンプルにおける前記光拡散制御部材側の面における任意の一点に対し、前記面の法線となす角度が30°の光線を、前記一点を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向からそれぞれ照射して、前記一点から拡散反射される反射光を前記方位角ごとに生じさせ、前記反射光のうち、前記一点および前記法線を含む平面であって、前記光線が照射された方位角に対して垂直な平面内を進むとともに、前記法線となす角度が30°以内となる前記反射光について、それらの輝度の標準偏差(cd/m
2
)の値をL
3
としたとき、前記4方向全てについて、次式(3)
L
3
<2.00 …(3)
を満たし、
前記光拡散制御部材における前記第一の光拡散制御層に近位な面を第一の面とし、前記光拡散制御部材における前記第二の光拡散制御層に近位な面を第二の面とした場合に、
前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層の少なくとも一方において、前記屈折率が相対的に高い領域が、前記第二の面側から前記第一の面側に向けて延在している柱状物であるとともに、前記規則的内部構造が、前記屈折率が相対的に低い領域中に前記柱状物を林立させてなるカラム構造であり、
前記第一の光拡散制御層と前記第二の光拡散制御層とが、互いに独立した層として積層されており、
前記製造方法は、
工程シートの片面に、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を塗布することで塗膜を形成する工程と、
前記塗膜における前記工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面を貼合する工程と、
前記工程シートまたは前記剥離シート越しに、前記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して前記塗膜を硬化させることにより、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層をそれぞれ形成する工程と、
形成された前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層を積層する工程と
を備えることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御層を備える光拡散制御部材、および当該光拡散制御部材を備える反射型表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ、電子ペーパーなどといった表示体には、反射層を備える反射型表示体に分類されるものがある。このような反射型表示体では、一般的に、室内照明や太陽等の光源や、表示体の表示面側に設けられた光源により反射型表示体の表示面を照らし、これらの光源からの光を反射層によって反射させ、その反射光によって表示の良好な視認を可能にする。
【0003】
反射型表示体では、外部の光源を利用することに起因して、通常、光源と視認者との位置関係が一定とはならない。その結果、光源の位置に依っては視認者に十分な光が到達せず、視認性が低下したり、表示体全体を明るく照明できないという問題が生じ易い。このような問題を解決するために、光拡散板を表示体に組み込むことが考えられる。しかし、一般的な光拡散板を単に組み込むだけでは、良好な視認性を得るために必要な拡散性が十分に得られなかったり、高い拡散を実現しようとすると迷光や後方散乱による光損失が生じ、画像鮮明度が損なわれるという問題がある。これらの問題を解消する観点から、反射型表示体においては、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御層を、視認者側の表面と反射層との間に設けることが検討されている(例えば、特許文献1)。上記光拡散制御層が存在することにより、反射層にて反射された光は適度に拡散されるものとなり、光源の位置に依存した視認性の低下が低減される。
【0004】
また、上述した光拡散制御層を2層以上重ねることも検討されている。例えば、特許文献2には、光拡散制御層を2層備える光拡散制御部材が開示されている。特に、特許文献2の実施例には、透過拡散する光の指向性が互いに逆向きとなるように2層の光拡散制御層が積層されてなる光拡散制御部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6250648号公報
【文献】特開2013-37337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のスマートフォンやタブレットの多くには、その表示面の上下方向の姿勢に応じて表示内容の上下方向が切り替わる機能が備わっている。すなわち、表示面の短辺を地面と平行にした場合、表示内容の上下方向が表示面の長辺と平行となるように表示され、表示面の長辺を地面と平行にした場合、表示内容の上下方向が表示面の短辺と平行となるように表示される。
【0007】
このような、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成された反射型表示体においては、表示内容の上下方向が変更された場合に、上述した光拡散制御層による視認性の向上の効果を十分得られなくなる問題があった。例えば、表示面の短辺を地面と平行にして、表示内容の上下方向が表示面の長辺と平行となるように表示させた場合に良好な視認性が得られたとしても、表示面の長辺を地面と平行にして、表示内容の上下方向が表示面の短辺と平行となるように表示させた場合には、光拡散制御層がその効果を十分発揮することができず、十分な視認性も得られなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、表示内容の上下方向が変更される反射型表示体に組み込まれた場合であっても、表示内容の上下方向にかかわらず優れた視認性を実現できる光拡散制部材、およびそのような視認性を有する反射型表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、第一の光拡散制御層と、前記第一の光拡散制御層における片面側に積層された第二の光拡散制御層とを備えた光拡散制御部材であって、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層は、それぞれ、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有し、前記光拡散制御部材における前記第一の光拡散制御層に近位な面を第一の面とし、前記光拡散制御部材における前記第二の光拡散制御層に近位な面を第二の面とした場合に、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層のそれぞれにおいて、前記屈折率が相対的に高い領域が、前記第二の面側から前記第一の面側に向けて延在しているとともに、前記延在の方向に平行な直線が、前記光拡散制御部材の厚さ方向に対して傾斜しており、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層のそれぞれについて、前記延在の方向に平行であるとともに、前記第二の面側から前記第一の面側に向くベクトルを想定した場合に、それらのベクトルを前記第一の面にそれぞれ射影して得られる2つのベクトルのなす角度が0°超、90°以下となるように、前記第一の光拡散制御層と前記第二の光拡散制御層とが積層されていることを特徴とする光拡散制御部材を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る光拡散制御部材は、上述した2つのベクトルのなす角度が0°超、90°以下となるように、第一の光拡散制御層と第二の光拡散制御層とが積層されていることにより、表示内容の上下方向が変更される反射型表示体に組み込まれた場合に、表示内容の上下方向が変更されても、均一で良好な明るさを実現することができ、その結果、優れた視認性を実現することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層の少なくとも一方において、前記屈折率が相対的に高い領域が、前記第二の面側から前記第一の面側に向けて延在している柱状物であり、前記規則的内部構造が、前記屈折率が相対的に低い領域中に前記柱状物を林立させてなるカラム構造であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明2)において、前記柱状物が、その一端と他端との間において屈曲していることが好ましい(発明3)。
【0013】
第2に本発明は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有する光拡散制御層を備える光拡散制御部材であって、前記光拡散制御部材をミラーの反射面に積層してなる測定サンプルにおける前記光拡散制御部材側の面における任意の一点に対し、前記面の法線となす角度が30°の光線を、前記一点を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向からそれぞれ照射して、前記一点から拡散反射される反射光を前記方位角ごとに生じさせ、前記反射光のうち前記面の正面方向に向かう反射光の輝度(cd/m2)を前記方位角ごとに測定し、得られた4つの輝度のうち最小の輝度の値をLminとし、最大の輝度の値をLmaxとするとともに、任意の標準白色板における片面の任意の一点に対し、前記片面の法線となす角度が30°の光線を、前記Lminが測定された方位角から照射して、前記一点から正面方向に拡散反射した反射光の輝度(cd/m2)の値をLSTDとしたとき、L1=Lmin/LSTDで表されるL1が、次式(1)
L1>1.00 …(1)
を満たし、L2=Lmin/Lmax
で表されるL2が、次式(2)
0.6≦L2≦1.00 …(2)
を満たし、前記測定サンプルにおける前記光拡散制御部材側の面における任意の一点に対し、前記面の法線となす角度が30°の光線を、前記一点を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向からそれぞれ照射して、前記一点から拡散反射される反射光を前記方位角ごとに生じさせ、前記反射光のうち、前記一点および前記法線を含む平面であって、前記光線が照射された方位角に対して垂直な平面内を進むとともに、前記法線となす角度が30°以内となる前記反射光について、それらの輝度の標準偏差(cd/m2)の値をL3としたとき、前記4方向全てについて、次式(3)
L3<2.00 …(3)
を満たすことを特徴とする光拡散制御部材を提供する(発明4)。
【0014】
第3に本発明は、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成された反射型表示体であって、前記光拡散制御部材(発明1~4)と、前記光拡散制御部材における片面側に設けられた表示装置と、前記表示装置における前記光拡散制御部材とは反対の面側に設けられているか、または、前記表示装置内に組み込まれた反射層とを備える反射型表示体を提供する(発明5)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光拡散制御部材によれば、表示内容の上下方向にかかわらず優れた視認性を実現できる反射型表示体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材を用いて製造される反射型表示体の一例の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における光拡散制御層の規則的内部構造の一例(カラム構造)を概略的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態における光拡散制御層に関する種々の方向を説明する斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材における、第一の光拡散制御層の方向と第二の光拡散制御層の方向との関係を説明する平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材における光学物性の測定方法を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材における光学物性の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る光拡散制御部材の断面図が示される。本実施形態に係る光拡散制御部材1は、第一の光拡散制御層11と、第一の光拡散制御層11における片面側に積層された第二の光拡散制御層12とを備えることが好ましい。なお、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、光拡散制御部材1における第一の光拡散制御層11に近位な面を第一の面101とし、光拡散制御部材1における第二の光拡散制御層12に近位な面を第二の面102とする。
【0018】
本実施形態に係る光拡散制御部材1は、反射型表示体の製造に好適に使用することができる。
図2には、そのような反射型表示体の一例の断面図が示される。当該反射型表示体100は、上述した光拡散制御部材1と、光拡散制御部材1における片面側に設けられた表示装置2と、表示装置2における光拡散制御部材1とは反対の面側に設けられた反射層3とを備える。また、本実施形態に係る反射型表示体100は、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成されたものであることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る光拡散制御部材1において、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12(以下では、これらの層を総称して「光拡散制御層11,12」と記載する場合がある。)は、それぞれ、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有していることが好ましい。
図3の斜視図には、このような規則的内部構造の一例として、カラム構造(詳細は後述)が概略的に示される。
図3に示されるように、光拡散制御層11,12中では、屈折率が相対的に高い領域111(柱状物)が厚さ方向に複数延在し、その周囲を、屈折率が相対的に低い領域112が埋める構造となっている。ここで、規則的内部構造とは、屈折率が相対的に低い領域112中に、複数の屈折率が相対的に高い領域111が所定の規則性をもって配置されてなる内部構造(例えば、光拡散制御層11,12の表面と平行な平面で光拡散制御層11,12を切断して得られる断面であって、上記規則的内部構造が存在する位置にて切断して得られる断面をみた場合に、屈折率が相対的に低い領域112中に、屈折率が相対的に高い領域111が、上記断面内の少なくとも1方向に沿って、同程度のピッチをもって繰り返して配置されてなる内部構造)をいうものである。そして、ここにおける規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域111が、光拡散制御層11,12の厚さ方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0020】
そして、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12のそれぞれにおいては、屈折率が相対的に高い領域111が、光拡散制御部材1の第二の面102側から第一の面101側に向けて延在しているとともに、当該延在の方向に平行な直線が、光拡散制御部材1の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。この点について、
図4に基づいて詳細に説明する。
図4の斜視図は、光拡散制御層11,12の内部に本来であれば複数存在する屈折率が相対的に高い領域111を、説明のために1つのみを残して省略して描いたものである。この
図4において、屈折率が相対的に高い領域111は、第二の面102側から第一の面101側(
図4中、下側から上側)に向けて延在しており、その延在の方向(方向A)に平行な直線は、光拡散制御層11,12の厚さ方向(方向B)に対して、角度aの分だけ傾斜している。
【0021】
なお、角度aは、ベクトルを用いて次のように表すこともできる。まず、延在の方向(方向A)に平行であるとともに第二の面102側から第一の面101側(
図4中、下側から上側)に向いたベクトルをベクトルAとする。また、光拡散制御層11,12の厚さ方向に平行であるとともに、第二の面102側から第一の面101側(
図4中、下側から上側)向きのベクトルをベクトルBとする。そうした場合、ベクトルAとベクトルBとがなす角度として角度aを表すことができる。なお、本発明を表現する手段として用いられる「ベクトル」は、基本的に、その方向が重要な意味を有する。そのため、本明細書における「ベクトル」という語句は、特に説明がない限り、任意の大きさのベクトル量を有するものとする。
【0022】
さらに、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とが、以下の条件を満たすように積層されていることが好ましい。まず、光拡散制御層11,12のそれぞれについて上述したベクトルAを想定し、さらに当該ベクトルAを第一の面101(
図4においては上面)に射影して得られるベクトルを、
図4に示されるようにベクトルCとする。次に、
図5に基づいて、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12との積層の状態について説明する。
図5(a)は、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とが積層される状態を模式的に表したものである。また、
図5(b)は、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とが積層されてなる光拡散制御部材1を第1の面101側から平面視した図である。
図5(a)に示されるように、第一の光拡散制御層11についてのベクトルCをベクトルC
1とし、第二の光拡散制御層12についてのベクトルCをベクトルC
2とする。そして、
図5(b)に示されるように、ベクトルC
1とベクトルC
2とのなす角度を角度bとする。そうしたとき、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、角度bが、0°超、90°以下となるように、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とが積層されたものとなっていることが好ましい。
【0023】
従来の反射型表示体に設けられる光拡散制御部材では、光拡散制御層が単層のみとなっていたり、2層存在する場合であっても、上述した角度bが180°であるなど、0°超、90°以下という条件を満たすものではなかった。このような反射型表示体では、例えば反射型表示体を横倒しして、表示内容の上下方向を変更させた場合に、表示体に対して上方向から照射される光を正面方向に十分に拡散反射させることが不十分であったり、照射の方向の変化に伴う表示の明るさの変動が大きいといった問題があった。
【0024】
これに対し、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、上述した角度bが0°超、90°以下となるように第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とが積層されていることにより、当該光拡散制御部材1が組み込まれた反射型表示体が優れた視認性を有するものとなる、具体的には、まず、光拡散制御部材1を設けない場合と比較して、外部から照射される光を正面方向に効果的に拡散反射することができ、明るい表示を実現することができる。また、例えば反射型表示体を横倒しすることにより、表示内容の上下方向が変更となった場合であっても、当該上下方向の変更に伴う表示の明るさの変動を抑えることができ、一様な明るさの表示を実現することができる。さらに、外部から照射される光の方向が変わった場合であっても、視認者の水平方向に対して一様な明るさで拡散反射することができ、視認者が明るさのムラを認識にし難いものとなる。
【0025】
上述したように、光拡散制御部材1を設けない場合と比較して、より明るく表示することを効果的に実現する観点からは、上述した角度bは、10°以上であることが好ましく、特に40°以上であることが好ましく、さらには50°以上であることが好ましい。同様の観点から、上述した角度bは、90°以下であることが好ましく、特に80°以下であることが好ましく、さらには70°以下であることが好ましい。
【0026】
また、上述したように、上下方向が変更された場合であっても一様な明るさをより効果的に実現するとともに、視認者が明るさのムラを認識しにくい表示をより効果的に実現する観点からは、上述した角度bは、10°以上であることが好ましく、特に60°以上であることが好ましく、さらには70°以上であることが好ましい。同様の観点から、上述した角度bは、90°以下であることが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、前述した角度aが、0°超であることが好ましく、特に1°以上であることが好ましく、さらには2°以上であることが好ましい。このような範囲であることにより、表示内容をより明るく表示することが可能となる。また、上記角度aは、30°以下であることが好ましく、特に15°以下であることが好ましく、さらには8°以下であることが好ましく、5°以下であることが最も好ましい。このような範囲であることにより、表示内容の上下方向を変更した際の明るさの差異をより低減することが可能となる。なお、上記角度aは、光学デジタル顕微鏡を用いて光拡散制御層11の断面を観察することにより測定することができる。
【0028】
なお、本実施形態に係る光拡散制御部材1では、規則的内部構造が上述したカラム構造であるとともに、屈折率が相対的に高い領域111が上述した柱状物である場合、当該柱状物は、その一端と他端との間において屈曲していてもよい。この場合、上述した延在の方向(方向A)とは、当該柱状物における、屈曲部位から片端までにおける延在の方向をいうものとし、特に、屈曲部位から視認者側の一端までにおける延在の方向をいうものとする。
【0029】
1.光拡散制御部材の構成
本実施形態に係る光拡散制御部材1は、前述した通り、第一の光拡散制御層11と、第二の光拡散制御層12とを備えることが好ましい。なお、本実施形態に係る光拡散制御部材1の形態は特に限定されないものの、フィルム状、板状等であることが好ましく、特にフィルム状であることが好ましい。以下では、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12について説明する。
【0030】
本実施形態における光拡散制御層11,12は、屈折率が相対的に低い領域112中に屈折率が相対的に高い領域111を複数備えた規則的内部構造を有し、且つ、屈折率が相対的に高い領域111が、光拡散制御層11,12の一方の面側から他方の面側に向けて延在しているとともに、当該延在の方向に平行な直線が、光拡散制御層11,12の厚さ方向に対して傾斜しているものである限り、特に限定されない。
【0031】
上述したような規則的内部構造を形成し易いという観点から、本実施形態における光拡散制御層11,12は、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであることが好ましい。特に、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。
【0032】
(1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0033】
高屈折率成分の(重量平均)分子量は、2500以下であることが好ましく、特に1500以下であることが好ましく、さらには1000以下であることが好ましい。また、高屈折率成分の(重量平均)分子量は、150以上であることが好ましく、特に200以上であることが好ましく、さらには250以上であることが好ましい。高屈折率成分の(重量平均)分子量が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11,12を形成し易くなる。なお、上記高屈折率成分が、分子構造に基づいて理論分子量を特定可能である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、当該理論分子量(重量平均分子量ではない分子量)を指すものとする。一方、上記高屈折率成分が、例えば高分子成分であることに起因して、上述した理論分子量が特定困難である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値として得られる重量平均分子量をいうものとする。なお、本明細書における重量平均分子量の測定方法は、当該GPC法により測定した標準ポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0034】
高屈折率成分の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、特に1.54以上であることが好ましく、さらには1.56以上であることが好ましい。また、高屈折率成分の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、特に1.65以下であることが好ましく、さらには1.59以下であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11,12を形成し易くなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御層用組成物を硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0035】
光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、特に300質量部以下であることが好ましく、さらには200質量部以下であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される光拡散制御層11,12の規則的内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11,12を形成し易くなる。
【0036】
(2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0038】
上述した(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0039】
上述した(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0040】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300以上であることが好ましく、特に3000以上であることが好ましく、さらには4000以上であることが好ましい。また、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、19500以下であることが好ましく、特に14300以下であることが好ましく、さらには12300以下であることが好ましい。
【0041】
上述した(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましい。
【0043】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、特に5000以上であることが好ましく、さらには7000以上であることが好ましい。また、低屈折率成分の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、特に15000以下であることが好ましく、さらには13000以下であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量が上記範囲であることにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11,12を形成し易くなる。
【0044】
低屈折率成分の屈折率は、1.59以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、特に1.49以下であることが好ましく、さらには1.48以下であることが好ましい。また、低屈折率成分の屈折率は、1.30以上であることが好ましく、特に1.40以上であることが好ましく、さらには1.46以上であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11,12を形成し易くなる。
【0045】
(3)その他の成分
前述した光拡散制御層用組成物は、高屈折率成分および低屈折率成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0046】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御層用組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光拡散制御層用組成物が光重合開始剤を含有することで、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御層11,12を効率的に形成し易いものとなる。
【0047】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、特に0.5質量部以上とすることが好ましく、さらには1質量部以上とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、特に15質量部以下とすることが好ましく、さらには10質量部以下とすることが好ましい。光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散制御層11,12を効率的に形成し易いものとなる。
【0049】
また、光拡散制御層用組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。光拡散制御層用組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、光拡散制御層用組成物の塗膜に対して活性エネルギー線を照射した際に、紫外線吸収剤によって、所定波長の活性エネルギー線が所定の範囲で選択的に吸収されることとなる。紫外線吸収剤の添加量を最適化することにより、光拡散制御層用組成物の硬化を阻害することなく、形成される屈折率が相対的に高い領域111(柱状物)に屈曲を生じさせ易くなる。その結果、光拡散制御層11,12が、より広い光拡散の角度範囲を実現できるものとなる。
【0050】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられ、中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。上述した紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
紫外線吸収剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.001質量部以上とすることが好ましく、特に0.01質量部以上とすることが好ましく、さらには0.03質量部以上とすることが好ましく、0.06質量部以上とすることが最も好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、特に1質量部以下とすることが好ましく、さらには0.5質量部以下とすることが好ましく、0.1質量部以下とすることが最も好ましい。光拡散制御層用組成物中の紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることで、効率的に、屈折率が相対的に高い領域111(柱状物)に屈曲を生じさせることができる。
【0052】
(4)光拡散制御層用組成物の調製
光拡散制御層用組成物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分、ならびに、所望により光重合開始剤、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。
【0053】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御層用組成物を得てもよい。また、得られる光拡散制御層用組成物が所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0054】
(5)規則的内部構造
前述した通り、本実施形態における光拡散制御層11,12は、その内部に、屈折率が相対的に低い領域112中に屈折率が相対的に高い領域111を複数備えた規則的内部構造を有する。そして、光拡散制御層11,12中においては、屈折率が相対的に高い領域111が、光拡散制御層11の一方の面側から他方の面側に向けて延在しているとともに、当該延在の方向に平行な直線が、光拡散制御層11,12の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0055】
上述した規則的内部構造のより具体的な例としては、
図3に示されるように、屈折率が相対的に低い領域112中に、屈折率が相対的に高い領域111としての柱状物を、光拡散制御層11,12の厚さ方向に複数林立させてなるカラム構造が挙げられる。本実施形態における光拡散制御層11,12においては、優れた視認性を達成し易いという観点から、規則的内部構造としてカラム構造を有することが好ましい。なお、
図3では、柱状物が、光拡散制御層11,12内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、光拡散制御層11,12の厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、柱状物が存在しないものとなっていてもよい。
【0056】
このようなカラム構造を有する光拡散制御層11,12に入射された光は、所定の入射角度範囲内となる場合、所定の開き角をもって強く拡散しながら光拡散制御層11,12から出射される。一方、入射光が上記入射角度範囲外の角度による入射となる場合、拡散することなく透過するか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散を伴って出射されるものとなる。なお、カラム構造によって生じる上記入射角度範囲内の入射光による拡散光は、光拡散制御層11,12表面と平行に造影体を配置する場合、いずれの方向にも広がりを有する、円形状もしくは略円形状(楕円形状など)となる。一方、上記入射角度範囲外の入射光による上記弱い拡散の場合は、三日月状の拡散光となる。
【0057】
上記カラム構造においては、屈折率が相対的に高い領域111(柱状物)の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域112の屈折率との差が、0.01以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.1以上であることが好ましい。上記差が0.01以上であることで、効果的な拡散を行うことが可能となる。なお、上記差の上限は特に限定されず、例えば、0.3以下であってもよい。
【0058】
上述した柱状物は、光拡散制御層11,12の一方の面から他方の面に向かって、直径が増加する構造を有していることが好ましい。このような構造を有する柱状物は、一方の面から他方の面に向かって直径がほぼ変化しない柱状物と比較して、柱状物の延在方向と平行な光の進行方向を変更させ易くなり、これにより、光拡散制御層11,12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0059】
また、柱状物を、延在方向に水平な面で切断したときの断面における、直径の最大値は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、当該最大値は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。直径の最大値が上記範囲であることで、光拡散制御層11,12が効果的に光を拡散させることが可能となる。なお、柱状物の延在方向と垂直な面で切断したときの断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
【0060】
上述したカラム構造においては、隣接する柱状物間の距離が、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、上記距離は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。隣接する柱状物間の距離が上記範囲であることで、光拡散制御層11,12が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0061】
なお、以上のカラム構造の規則的内部構造に係る寸法等は、光学デジタル顕微鏡を用いてカラム構造の断面を観察することにより測定することができる。
【0062】
本実施形態における光拡散制御層11,12の規則的内部構造は、上述したカラム構造を変形させた構造であってもよい。例えば、光拡散制御層11,12は、内部構造として、上述したカラム構造における柱状物が、光拡散制御層11,12の厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有することが好ましい。これにより、光拡散制御層11,12が、光拡散を示す入射角度領域のより広いものとなる。また、光拡散制御層11,12は、光拡散制御層11,12の厚さ方向に傾斜角度の異なる柱状物の領域を2つ以上有するカラム構造であってもよい。
【0063】
(6)光拡散制御層の厚さ
本実施形態における光拡散制御層11,12のそれぞれの厚さは、30μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが最も好ましい。光拡散制御層11,12のそれぞれの厚さがこのような範囲であることで、より明るい表示を実現し易くなるとともに、表示内容の上下方向を変更した際の表示の明るさの差異をより低減することが可能となる。
【0064】
2.光拡散制御部材の物性
本実施形態に係る光拡散制御部材1は、当該光拡散制御部材1を備える反射型表示体に対して光線を照射した場合に、以下のような光学特性を示すことが好ましい。
【0065】
まず、上述した光学特性を検討するにあたり、次のような測定を行う。
図6には、測定サンプルを準備し、得られた測定サンプルに対して所定の光線を照射する工程が示される。最初に、
図6(a)に示されるように、光拡散制御部材1をミラー4の反射面に積層することで、測定サンプル200を準備する。続いて、
図6(b)(測定サンプル200を光拡散制御部材1側の面から平面視したもの)に示されるように、当該測定サンプル200における光拡散制御部材1側の面における任意の一点を照射点201と想定するとともに、上記照射点201を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向を想定する。そして、
図6(c)に示されるように、照射点201に対し、光拡散制御部材1側の面の法線となす角度が30°の光線202を、上述した4つの方位角のいずれかから照射する。
【0066】
照射された光線202は測定サンプル200によって拡散反射され、それにより反射光が生じるが、光拡散制御部材1の光学特性を取得するにあたっては、生じた反射光の一部について、その輝度を測定する。そのような測定の対象となる反射光は2種類存在しており、
図7を用いてそれらを説明する。
【0067】
図7(a)には、1つ目の測定対象が示される。図示されるように、光線202が拡散反射されてなる反射光のうち、照射点201から、光拡散制御部材1側の面の法線方向(正面方向)に向かう反射光203を測定対象とする。そして、上述した4つの方位角ごとに、当該測定対象となる反射光203の輝度(cd/m
2)を測定した後、得られた4つの輝度のうち最小の輝度の値をL
minとし、最大の輝度の値をL
maxとする。
【0068】
図7(b)には、2つ目の測定対象が示される。まず、図示されるように、照射点201を含むとともに、光拡散制御部材1側の面の法線を含む平面であって、光線202が照射された方位角(
図7(b)では0°)に対して垂直(換言すれば、
図7(b)では方位角90°および270°に平行)な平面Pを想定する。そして、光線202が拡散反射されてなる反射光のうち、上記平面P内を進むとともに、上記法線となす角度が30°以内となる反射光(
図7(b)中、反射光204aと反射光204bとが端部となって、扇型を形成する反射光の集合)を測定対象とする。そして、それらの輝度の標準偏差(cd/m
2)を算出し、その値をL
3とする。その結果、上記4方向それぞれについてL
3が得られる。
【0069】
また、基準として、次の測定も行う。すなわち、任意の標準白色板における片面の任意の一点に対し、当該片面の法線となす角度が30°の光線を、上記Lminが測定された方位角から照射して、上記一点から正面方向に拡散反射した反射光の輝度(cd/m2)の値をLSTDとする。
【0070】
以上の場合において、本実施形態に係る光拡散制御部材1は、
L1=Lmin/LSTD
で表されるL1が、次式(1)
L1>1.00 …(1)
を満たすことが好ましい。上記式(1)を満たす場合、最も輝度が低い場合(Lmin)であっても、標準白色板において生じる拡散(ランバーシャン拡散)のときの輝度(LSTD)よりも、高い輝度が得られるものとなる。そのため、光拡散制御部材1を組み込んだ反射型表示体では、表示面に対して様々な方位角から照射された光を用いて、より明るい表示を実現し易いものとなる。この観点から、L1は、特に1.30以上であることが好ましく、さらには1.80以上であることが好ましく、1.95以上であることが最も好ましい。なお、L1の上限値については特に限定されず、例えば、4.00以下であってよく、特に2.50以下であってよい。
【0071】
また、本実施形態に係る光拡散制御部材1は、
L2=Lmin/Lmax
で表されるL2が、次式(2)
0.6≦L2≦1.00 …(2)
を満たすことも好ましい。上記式(2)を満たす場合、最も輝度が低い場合(Lmin)と最も輝度が高い場合(Lmax)との差異が、比較的小さいものとなる。そのため、光拡散制御部材1を組み込んだ反射型表示体では、例えば当該反射型表示体を横倒しにして、表示面と外部光源との位置関係が変更された場合であっても、表示の明るさの変化を抑制し、一様な明るさを実現し易いものとなる。この観点から、L2は、特に0.65以上であることが好ましく、さらには0.72以上であることが好ましく、0.78以上であることが最も好ましい。また、L2の上限値は1.00以下であれば特に制約されないが、後述のL3と両立し易さの観点から、特に0.98以下であることが好ましく、さらには0.89以下であることが好ましい。
【0072】
さらに、本実施形態に係る光拡散制御部材1は、上記4方向全てについて、次式(3)
L3<2.00 …(3)
を満たすことも好ましい。上記式(3)を満たす場合、いずれの方向から光が照射された場合であっても、光拡散制御部材1を組み込んだ反射型表示体では、視認者の水平方向に向けて、一様の光を拡散反射できることとなる。そのため、視認者は、右目と左目とで同程度の輝度で表示を視認することが可能となり、明るさのムラを認識し難いものとなる。この観点から、L3は、特に1.5以下であることが好ましく、さらには1.1以下であることが好ましい。なお、L3の下限値については特に限定されず、例えば、0.1以上であってよく、特に0.4以上であってよい。なお、光拡散制御部材1を備えた反射型表示体100を、方位角270°側が地面側となるように表示させた場合、方位角270°からの照射光202は、地面側からの照射光に相当するため、方位角270°についてのL3が比較的高い値となったとしても、通常それによる視認性への影響は小さいものとなる。
【0073】
なお、以上のような輝度に関する測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0074】
3.光拡散制御部材の製造方法
本実施形態に係る光拡散制御部材1の製造方法としては特に限定されず、従来の製造方法により製造することができる。例えば、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12をそれぞれ作製した後、前述したベクトルCの向きを考慮しながら前述した角度bの条件を満たすように第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を積層することで、光拡散制御部材1を得ることができる。
【0075】
光拡散制御層11,12の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、工程シートの片面に、前述した光拡散制御層用組成物を塗布し、塗膜を形成した後、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面(特に剥離面)を貼合する。続いて、工程シートまたは剥離シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御層11,12を形成することができる。このように、上記塗膜に剥離シートを積層することにより、剥離シートと工程シートとのギャップを保ち、塗膜が押しつぶされることを抑制して、均一な厚さを有する光拡散制御層11,12を形成し易いものとなる。
【0076】
上述した塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御層用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0077】
塗膜に対する活性エネルギー線の照射は、形成しようとする規則的内部構造に応じて、異なる態様により行う。このような照射は従来公知の方法により行うことができる。例えば、前述したカラム構造を形成する場合には、塗膜に対して、光線の平行度が高い平行光を照射する。
【0078】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0079】
活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cm2とすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cm2とすることが好ましい。
【0080】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。
【0081】
4.反射型表示体
本実施形態に係る光拡散制御部材1は、前述した通り、反射型表示体100の製造に好適に使用することができる。反射型表示体100は、例えば、上述した光拡散制御部材1と、光拡散制御部材1における片面側に設けられた表示装置2と、表示装置2における光拡散制御部材1とは反対の面側に設けられているか、または、表示装置内2に組み込まれた反射層3とを備えることが好ましい。
【0082】
反射型表示体100は、本実施形態に係る光拡散制御部材1を備えることにより、前述したように優れた視認性を実現することができる。特に、表示内容の上下方向が変更された場合であっても、一様な明るさの表示を実現することができるため、反射型表示体100は、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成されたものであることが好適である。
【0083】
なお、本実施形態に係る光拡散制御部材1を用いて反射型表示体100を製造する場合には、光拡散制御部材1を構成する第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12の少なくとも一方について、屈折率が相対的に高い領域111の延在の方向に平行であるとともに、第二の面102側から第一の面101側に向くベクトルを第一の面101に射影して得られるベクトル(
図5のベクトルC
1およびベクトルC
2)が、次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、表示内容の初期の上下方向の下方向を0°とする場合、上記ベクトルC
1およびベクトルC
2の少なくとも一方の向き(好ましくは、両方のベクトルの向き)が、-90°~90°の範囲になるように、反射型表示体100中において光拡散制御部材1を積層することが好ましい。このことを
図6(b)の方位角で表した場合には、表示内容の初期の上下方向の下方向を方位角270°に一致させたとき、上記ベクトルC
1およびベクトルC
2の少なくとも一方の向き(好ましくは、両方のベクトルの向き)が、180°~0°(360°)の範囲になるように、反射型表示体100中において光拡散制御部材1を積層することが好ましい。このような構成であれば、反射型表示体100を180°回転させる場合以外は、明るい表示をより確保しやすいものとなる。
【0084】
なお、上述した「初期の上下方向」とは、反射型表示体100が使用される際に、基準とされる上下方向を指すものとする。通常、そのような基準とされる上下方向は、表示内容の主要な上下方向(例えば、最も採用される上下方向、表示装置の操作部の上下方向と一致した上下方向等)に基づいて選択される。「初期の左右方向」という場合も、同様の観点から、基準とされる左右方向を指すものとする。
【0085】
反射型表示体100の表示面の形状は特に限定されないものの、典型的には、表示面が矩形の形状を有していることが好ましい。この場合、表示面は、一対の長辺と一対の短辺とからなる長方形であってもよく、また、全ての辺の長さが等しい正方形であってもよい。そして、表示面がこのような矩形の形状となる場合には、表示内容の上下方向が、少なくとも、上記矩形の一辺と平行な方向、および当該方向と直交する方向を少なくともとり得るように構成されていることが好ましい。その他にも、表示面の形状は、ひし形、台形、平行四辺形等の矩形以外の四角形であってもよく、三角形、五角形等の四角形以外の多角形であってもよく、正円形、楕円形等の円形であってもよく、さらにはこれら以外の不定形な形状であってもよい。
【0086】
(1)表示装置
上記表示装置2は特に限定されず、一般的な反射型表示体に組み込まれる表示装置であってよい。例えば、表示装置2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、電気泳動ディスプレイ、MEMSディスプレイ、固体結晶ディスプレイ等が挙げられ、また、これらのディスプレイにさらにタッチパネルが積層されたものであってもよい。
【0087】
(2)反射層
上記反射層3は特に限定されず、一般的な反射型表示体の反射層として使用されるものであってよい。反射層3の好ましい例としては、金属を所定の表面に蒸着させて得られた金属蒸着膜が挙げられる。そのような金属の好ましい例としては、アルミニウム、銀、ニッケル等が挙げられる。
【0088】
上述した金属蒸着膜からなる反射層3の厚さは、特に限定されないものの、例えば、1nm以上であることが好ましく、特に10nm以上であることが好ましく、さらには50nm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、3μm以下であることが好ましく、特に1μm以下であることが好ましく、さらには400nm以下であることが好ましい。
【0089】
上述した金属蒸着膜からなる反射層3は、支持体としての樹脂フィルムの表面に設けられていてもよい。このような樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0090】
また、上記反射層3は、反射電極であってもよい。この場合、当該反射電極は、例えば、表示装置2内に組み込まれるものであってもよい。反射電極は、通常、反射型表示体100の表示面の全面を覆うように設けられてはおらず、電極が未形成の部分も存在する。そのため、反射電極を備える反射型表示体100では、反射電極によって外光を反射させることができる一方、電極が未形成の部分において、表示装置2の背面に設けられたバックライト等の光を透過させることができる。上記反射層3としての反射電極の材料は特に限定されず、一般的な反射電極の材料によって形成することができる。
【0091】
なお、
図2に示される反射型表示体100では、反射層3が、表示装置2から独立した構成要素として描かれており、また、反射層3が、横方向の全域(表示装置2における光拡散制御部材1とは反対側の面の全域)に存在するように描かれている。しかしながら、本実施形態に係る反射型表示体100は、
図2に示されたものに限定されず、反射層3として上述した反射電極を備えるものも包含するものである。
【0092】
上記反射層3は、その他にも、光を透過する性質と光を反射する性質との両方を示す半透過半反射性を有する反射層であってもよい。
【0093】
(3)その他の構成部材
反射型表示体100は、上述した光拡散制御部材1、表示装置2および反射層3以外の構成部材を備えていてもよい。例えば、光拡散制御部材1における表示装置2とは反対の面側には、表面コート層やカバーパネル等が設けられていてもよい。また、表示装置2における光拡散制御部材1とは反対の面側にバックライトが設けられていてもよい。
【0094】
(4)反射型表示体の製造方法
反射型表示体100の製造方法としては特に限定されず、従来の製造方法により製造することができる。例えば、
図2に示される反射型表示体100を製造する場合、光拡散制御部材1、表示装置2および反射層3をそれぞれ製造した後、これらを積層することで反射型表示体100を得ることができる。
【0095】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0097】
〔作製例1〕(光拡散制御層A)
(1)光拡散制御層用組成物の調製
低屈折率成分としての、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、高屈折率成分としての、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、紫外線吸収剤としてのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BSF社製,製品名「TINUVIN 384-2」)0.08質量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御層用組成物を得た。
【0098】
(2)光拡散制御層の形成
得られた光拡散制御層用組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートシートの片面に塗布し、塗膜を形成した。続いて、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PLZ383030」,厚さ:38μm)の剥離面を積層した。
【0099】
これにより得られた、剥離シートと上記塗膜と工程シートとからなる積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における剥離シート側の面が上側となるとともに、積層体の長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック社製)を設置した。このとき、当該光源が、積層体における塗膜側の面の法線方向に対して、コンベアの流れ方向に5°傾斜した方向の平行光を照射できるように設置した。
【0100】
その後、コンベアを作動させて、積層体を移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度1.02mW/cm2、積算光量26.35mJ/cm2の条件で、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させ、厚さ110μmの光拡散制御層Aを形成した。その結果、工程シートと、光拡散制御層A(厚さ:110μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体が得られた。
【0101】
なお、形成された光拡散制御層Aの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層Aの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御層A内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、光拡散制御層Aにおける
図4の方向Cについて確認したところ、紫外線照射面を上側にした場合に、コンベア進行側(MD方向)と方向Cとが一致していることがわかった。また、上記柱状物は、延在方向の途中において屈曲していることが確認された。さらに、上述した柱状物の屈曲の部位よりも紫外線照射面側の部分における延在の方向(
図4中ではA方向)と、光拡散制御層Aの厚さ方向(
図4中ではB方向)とがなす角度(
図4中では角度a)は、3.2°であることが確認された。なお、本明細書において、当該角度は、A方向が、B方向を基準としてコンベア進行側(MD方向)に傾いているときの角度をプラスで表記し、コンベア進行側とは反対側に傾いているときの角度をマイナスで表記するものとする。
【0102】
また、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。光拡散制御層Aの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0103】
〔作製例2〕(光拡散制御層B)
光拡散制御層の厚さが60μmとなるように形成した以外は、作成例1と同様にして、工程シートと、光拡散制御層B(厚さ:60μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を作製した。
【0104】
なお、形成された光拡散制御層Bの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層Bの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御層B内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、光拡散制御層Bにおける
図4の方向Cについて確認したところ、紫外線照射面を上側にした場合に、コンベア進行側(MD方向)と方向Cとが一致していることがわかった。また、上記柱状物は、延在方向の途中において屈曲していることが確認された。さらに、上述した柱状物の屈曲の部位よりも紫外線照射面側の部分における延在の方向(
図4中ではA方向)と、光拡散制御層Bの厚さ方向(
図4中ではB方向)とがなす角度(
図4中では角度a)は、3.2°であることが確認された。
【0105】
〔作製例3〕(光拡散制御層C)
紫外線吸収剤を添加していない光拡散制御層用組成物を使用するとともに、紫外線スポット平行光源から照射する平行光の照射角度を変更した以外は、作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層C(厚さ:60μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0106】
なお、形成された光拡散制御層Cの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層Cの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御層C内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、光拡散制御層Cにおける
図4の方向Cについて確認したところ、紫外線照射面を上側にした場合に、コンベア進行側(MD方向)と方向Cとが一致していることがわかった。また、上述した柱状物の延在の方向(
図4中ではA方向)と、光拡散制御層Cの厚さ方向(
図4中ではB方向)とがなす角度(
図4中では角度a)は、6.4°であることが確認された。
【0107】
〔作製例4〕(光拡散制御層D)
紫外線吸収剤を添加していない光拡散制御層用組成物を使用するとともに、紫外線スポット平行光源から照射する平行光の照射角度を変更した以外は、作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層D(厚さ:60μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0108】
なお、形成された光拡散制御層Dの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層Dの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御層D内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、光拡散制御層Dにおける
図4の方向Cについて確認したところ、紫外線照射面を上側にした場合に、コンベア進行側(MD方向)と方向Cとが一致していることがわかった。また、上述した柱状物の延在の方向(
図4中ではA方向)と、光拡散制御層Dの厚さ方向(
図4中ではB方向)とがなす角度(
図4中では角度a)は、9.6°であることが確認された。
【0109】
なお、以上の通り作製した光拡散制御層A~Dの詳細を表1にまとめる。
【0110】
〔実施例1〕
作製例1で作製した積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御層Aを得て、これを第一の光拡散制御層とした。また、作製例1で作製した積層体から上記と同様に光拡散制御層Aを得て、これを第二の光拡散制御層とした。そして、上記第一の光拡散制御層における、紫外線を照射した面と反対の面に対し、上記第二の光拡散制御層における紫外線を照射した面を積層した。この積層の際、
図4における方向C(前述の通り、MD方向と関連)を調整し、
図5における角度bが90°となるように積層した。これにより、光拡散制御部材を得た。
【0111】
続いて、ミラー(JDSU社製,製品名「BV2ミラー」)を準備した。当該ミラーには、その鏡面を平面視したときに、上下左右が規定されているものとし、具体的には、鏡面の中心を基準として右方向を方位角0°とし、上方向を方位角90°とし、左方向を方位角180°とし、下方向を方位角270°とする。そして、当該ミラーの鏡面に対し、上記光拡散制御部材における第二の光拡散制御層側の面を積層した。このとき、上記光拡散制御部材の第二の光拡散制御層の
図4における方向Cと、ミラーにおける方位角270°とが一致するように積層した。なお、この場合、第一の光拡散制御層の
図4における方向Cは、ミラーにおける方位角0°と一致することとなる。以上により、反射型表示体サンプルを得た。
【0112】
〔実施例2〕
第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層を、ともに作製例2で作製した光拡散制御層Bに変更した以外は、実施例1と同様に光拡散制御部材を得た後、反射型表示体サンプルを得た。
【0113】
〔実施例3〕
第一の光拡散制御層と第二の光拡散制御層とを積層する際の、
図5における角度bが30°となるように積層した以外は、実施例2と同様に光拡散制御部材を得た後、反射型表示体サンプルを得た。なお、当該反射型表示体サンプルでは、第一の光拡散制御層の
図4における方向Cが、ミラーにおける方位角300°と一致することとなる。
【0114】
〔実施例4〕
第一の光拡散制御層と第二の光拡散制御層とを積層する際の、
図5における角度bが45°となるように積層した以外は、実施例2と同様に光拡散制御部材を得た後、反射型表示体サンプルを得た。なお、当該反射型表示体サンプルでは、第一の光拡散制御層の
図4における方向Cが、ミラーにおける方位角315°と一致することとなる。
【0115】
〔実施例5〕
第一の光拡散制御層と第二の光拡散制御層とを積層する際の、
図5における角度bが60°となるように積層した以外は、実施例2と同様に光拡散制御部材を得た後、反射型表示体サンプルを得た。なお、当該反射型表示体サンプルでは、第一の光拡散制御層の
図4における方向Cが、ミラーにおける方位角330°と一致することとなる。
【0116】
〔実施例6〕
第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層を、ともに作製例3で作製した光拡散制御層Cに変更した以外は、実施例1と同様に光拡散制御部材を得た後、反射型表示体サンプルを得た。
【0117】
〔比較例1〕
作製例1で作製した積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御層Aを得て、この光拡散制御層A単層を光拡散制御部材とした。
【0118】
続いて、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Aの紫外線を照射した面とは反対の面をミラー(JDSU社製,製品名「BV2ミラー」)の鏡面に積層した。このとき、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Aの
図4における方向Cと、ミラーにおける方位角270°とが一致するように積層した。これにより、反射型表示体サンプルを得た。
【0119】
〔比較例2〕
作製例1で作製した積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御層Aを得て、この光拡散制御層A単層を光拡散制御部材とした。
【0120】
続いて、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Aの紫外線を照射した面とは反対の面をミラー(JDSU社製,製品名「BV2ミラー」)の鏡面に積層した。このとき、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Aの
図4における方向Cが、ミラーにおける方位角315°に一致するように積層した。これにより、反射型表示体サンプルを得た。
【0121】
〔比較例3〕
作製例4で作製した積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御層Dを得て、この光拡散制御層D単層を光拡散制御部材とした。
【0122】
続いて、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Dの紫外線を照射した面とは反対の面をミラー(JDSU社製,製品名「BV2ミラー」)の鏡面に積層した。このとき、上記光拡散制御部材を構成する光拡散制御層Dの
図4における方向Cと、ミラーにおける方位角270°とが一致するように積層した。これにより、反射型表示体サンプルを得た。
【0123】
〔試験例〕(輝度の測定)
(1)実施例および比較例で製造した反射型表示体サンプルについて、
図6(b)に示されるように、光拡散制御部材側の面(照射面)の一点を照射点(
図6(b)中、符号201の点)として想定するとともに、当該照射点を中心として方位角0°、90°、180°および270°の4方向を想定した。このような反射型表示体サンプルを、コノスコープ(Autronic Melcher社製)に設置し、反射モードにて、上記照射点に対して光線を照射し、それによって拡散反射した反射光の輝度分布を測定した。このとき、
図6(c)に示されるように、上記光線と、反射型表示体サンプルの上記面の法線とがなす角度が30°となるように、上述した4つの方位角のそれぞれから上記光線を照射した。そして、方位角ごとに輝度分布を測定した。
【0124】
また、反射型表示体サンプルを標準白色板に変更し、上記と同様の条件にて、4種の方位角についての輝度分布を測定した。
【0125】
(2)上述した反射型表示体サンプルについて測定された4種の輝度分布のそれぞれから、正面方向(上記反射型表示体サンプルの片面の法線と平行な方向)に反射した反射光(
図7(a)中、符号203で示される光線)についての輝度(cd/m
2)を読み取った。そして、得られた4種の輝度のうち、最小の輝度をL
minとし、最大の輝度をL
maxとした。
【0126】
また、上述した標準白色板について測定された4種の輝度分布のうち、上述した最小の輝度Lminを与えた方位角と同一の方位角について測定された輝度分布から、正面方向に反射した反射光についての輝度を読み取り、それをLSTDとした。
【0127】
(3)以上の通り規定されたLmin、LmaxおよびLSTDの値を用いて、
L1=Lmin/LSTD
の式、および
L2=Lmin/Lmax
の式からL1およびL2を算出した。それらの値(cd/m2)を表2に示す。
【0128】
(4)
図7(b)に示されるように、上記反射型表示体サンプルの照射点に対して方位角0°の方向から光線を照射した場合について、当該照射点および照射面に対する法線を含む平面であって、方位角0°に対して垂直(すなわち、方位角90°および270°に平行)な平面(
図7(b)中、平面P)を想定した。そして、上述した平面内を進行するとともに、上記照射面の法線となす角度が30°以内となる反射光の輝度を、方位角0°についての輝度分布から読み取り、それらの標準偏差(cd/m
2)を算出し、それをL
3とした。
【0129】
さらに、方位角90°、180°および270°から光線を照射した場合についても、それぞれ上記と同様に平面を想定し、標準偏差L3を算出した。
【0130】
以上のように得られた4つの方位角についてのL3を表2に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
表2に示されるように、実施例に係る反射型表示体サンプルでは、L1>1.00となり、正面方向に対する明るさに関し、通常の拡散反射(ランバーシャン反射)の場合よりも明るく表示できることがわかる。また、実施例に係る反射型表示体サンプルでは、0.6≦L2≦1.00となっており、反射型表示体を、例えば縦置きから横置きに回転させた場合であっても、明るさの変化が生じ難いことがわかる。さらに、実施例に係る反射型表示体サンプルでは、4種の方位角全てにおいてL3<2.00となっており、4種の方向のいずれから光を受けた場合であっても、視認者の水平方向に向けて、一様な明るさで表示できることがわかる。以上より、実施例に係る反射型表示体サンプルは、優れた視認性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の光拡散制御部材は、表示内容の上下方向が変更可能なように構成されたスマートフォンやタブレット等の表示体の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0135】
1…光拡散制御部材
11…第一の光拡散制御層
12…第二の光拡散制御層
101…第一の面
102…第二の面
111…屈折率が相対的に高い領域(柱状物)
112…屈折率が相対的に低い領域
2…表示装置
3…反射層
4…ミラー
100…反射型表示体
200…測定サンプル
201…照射点
202…光線
203,204a,204b…反射光