(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ミシンの押さえ
(51)【国際特許分類】
D05B 29/10 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
D05B29/10
(21)【出願番号】P 2020055689
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】本田 光一
(72)【発明者】
【氏名】小俣 志貴
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02979745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00-97/12
D05C1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ベース部材を有する支持部と、
前記支持ベース部材に回動
自在に支持される直径
が異な
り、縫製時には被縫製物に対して接触しつつ回転する複数の回動部材を有し、全体として円錐状のローラ部と、を備え、
前記複数の回動部材
の夫々
が被縫製物を押えることを特徴とするミシンの押さえ。
【請求項2】
前記回動部材は、隣接する前記回動部材に当接且つ滑り可能としてなる突出片を有することを特徴とする請求項1に記載のミシンの押さえ。
【請求項3】
隣接する前記回動部材同士の間には中間支持部材が具備されてなることを特徴とする請求項1に記載のミシンの押さえ。
【請求項4】
前記支持ベース部材は、円錐状又は軸状としてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のミシンの押さえ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜させて布,皮革,ビニール等の生地を押さえる円錐側面を有するミシンの押さえであって、本来のカーブ縫いだけでなく、直線縫いにも好適となるミシンの押さえに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンの押さえには種々の縫製に適したものが多く存在している。そのような押さえにおいて、円錐状の外周側面を有するローラタイプのものが特許文献1,特許文献2等が存在する。このタイプのものでは、その形状によって特にカーブ縫いに好適な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1-62779号公報
【文献】実開平6-13770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、円錐状の外周側面を有するローラ状の押さえは、カーブ縫いに特化されたものである。その反面、直線縫いには不適当である。つまり、円錐形状のローラとした押さえでは、ローラの軸方向に沿う各位置の外径が異なるため、直線縫いを行うときに不適当である。引用文献1及び引用文献2において、円錐形状のローラとした押さえは、具体的なものとしては、ミシン針を基準として該ミシン針に最も近接する右端側で外径が最大となり、ミシン針から最も離間した左端側で外径が最小となっている。
【0005】
このような、円錐形状のローラにて直線縫いを行うと、押え付けられているそれぞれの箇所で送り量が異なることになる。その結果、布にしわが生じ、良好な縫製が出来なくなり、直線縫いには極めて不適当なものとなる。そこで、本発明の目的は、押さえに円錐形状のローラを使用するときに、カーブ縫いだけでなく、直線縫いも良好に対応できるミシンの押さえを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、支持ベース部材を有する支持部と、前記支持ベース部材に回動自在に支持される直径が異なり、縫製時には被縫製物に対して接触しつつ回転する複数の回動部材を有し、全体として円錐状のローラ部と、を備え、前記複数の回動部材の夫々が被縫製物を押えることを特徴とするミシンの押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【0007】
請求項2の発明を、前記回動部材は、隣接する前記回動部材に当接且つ滑り可能としてなる突出片を有することを特徴とする請求項1に記載のミシンの押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項3の発明を、隣接する前記回動部材同士の間には中間支持部材が具備されてなることを特徴とする請求項1に記載のミシンの押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項4の発明を、前記支持ベース部材は、円錐状又は軸状としてなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のミシンの押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、支持ベース部材を有する支持部と、前記支持ベース部材に回動可能に支持される直径の異なる複数の回動部材を有し、全体として円錐状のローラ部と、を備え、前記複数の回動部材は夫々独立して回動して被縫製物を押える構成としたミシンの押さえである。
【0011】
そして、複数の回動部材がそれぞれ独立して回動することができることにより、本来はカーブ縫いを目的とした押さえであるが、直線縫いとした場合であっても、複数の回動部材がそれぞれ独立して回転するので、直線方向におけるそれぞれの回動部材の外周速度を等しくすることができる。したがって、直線縫いにおいても、布にしわが生じず良好な直線縫いができる。
【0012】
請求項2の発明では、前記回動部材は、隣接する前記回動部材に当接且つ滑り可能としてなる突出片を有する構成としたことにより、回動部材同士の接触範囲が少なくなり、回動部材同士の干渉を最小限に抑えることができ、それぞれの回動部材の回動動作を良好にすることができる。
【0013】
請求項3の発明では、隣接する前記回動部材同士の間には中間支持部材が具備されてなる構成としたことにより、隣接する回動部材同士は非接触となり、隣接する回動部材同士が干渉し合うことなく、それぞれの回動部材の回動動作を良好にできる。
【0014】
請求項4の発明では、前記支持ベース部材は、円錐状又は軸状とした構成により、全体として円錐状のローラ部とすることが、容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は本発明の第1実施形態における押さえをシャンク8に装着した状態の側面図、(B)は本発明の第1実施形態の一部断面とした縦断側面図である。
【
図2】(A)は本発明の第1実施形態の一部断面とした分解側面図、(B)は(A)の要部拡大断面図、(C)は本発明の分解斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の第1実施形態における回動部材,中間支持部材と支持ベース部材とを分離した一部切除した断面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視端面図、(C)は(A)のY2-Y2矢視端面である。
【
図4】(A)は本発明の第1実施形態の第1変形例の一部断面にした側面図、(B)は本発明の第1実施形態の第1変形例の分解縦断側面図である。
【
図5】(A)は本発明の第1実施形態の第2変形例の一部断面にした側面図、(B)は(A)の(α)部拡大図、(C)は本発明の第1実施形態の第2変形における回動部材の縦断側面図である。
【
図6】(A)は本発明の第1実施形態における押さえをミシンの押さえ棒に装着した状態のミシンの正面より見た図、(B)は第1実施形態における押さえをミシンの押さえ棒に装着した状態のミシンの正面より見た斜視図である。
【
図7】(A)は本発明の第2実施形態における押さえをシャンクに装着した状態の一部断面にした側面図、(B)は本発明の第2実施形態における押さえの分解縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明には、複数の実施形態が存在する。まず、第1実施形態を
図1乃至
図3に基づいて説明する。本発明の第1実施形態では、主に支持部Aと、ローラ部Bとを備えている。さらに、本発明における押さえをミシンの押さえ棒91に装着するためのシャンク8を備える必要がある(
図6参照)。
【0017】
支持部Aは、支持ベース部材1と収め部材2とを有する(
図1,
図2等参照)。支持ベース部材1は、全体として円錐形状であり、その外周に円錐外周側面11aを有している(
図2参照)。円錐状の支持ベース部材1の内方には凹状空隙部11dが形成されている〔
図1(B),
図2参照〕。支持ベース部材1の一端に連結部12が扁平円筒形状に形成されている。凹状空隙部11dは、円錐状と円筒状の空間が連続している。また、連結部12の中心には、連結孔12aが形成され、ビス等の固着具14が挿入するようになっている(
図2参照)。
【0018】
収め部材2は、円錐状の支持ベース部材1に装着されるローラ部Bを構成する回動部材4を安定的に収める役目と、シャンク8の腕部81に装着するための役目をなすものである〔
図1(B)参照〕。収め部材2は、扁平円筒状の接続部21と、該接続部21の外周縁に形成された環状の鍔板状部22とを備えている(
図2参照)。
【0019】
前記接続部21の底面の中心位置には、連結孔21aが形成され、前記支持ベース部材1とビス等の固着具14にてシャンク8の腕部81に連結される。鍔板状部22は、円錐状の支持ベース部材1の円錐状外周面11aに装着された回動部材4が支持ベース部材1から外れないようにするための押さえの役目をなす〔
図1(B)参照〕。支持部Aにおいて、収め部材2は、支持部Aをシャンク8に取り付けた時の付根部分となる。そして、支持ベース部材1は、ミシン針92に近接する部分となる(
図6参照)。支持部Aにおける支持ベース部材1と収め部材2は、金属材又は合成樹脂にて形成される。
【0020】
ローラ部Bは、複数の回動部材4が軸方向に集合して構成されたものである(
図1,
図2参照)。複数の回動部材4は、それぞれの直径が異なり、軸方向にそれぞれの軸方向に沿って小径から次第に大径となるように配列構成されている〔
図1,
図2,
図3(A)等参照〕。
【0021】
なお、軸方向とは、前記固着具14のネジ軸の軸芯線の方向のことであり、この軸方向は、支持部A,ローラ部Bの何れにも共通する方向を示すものとして適用される。回動部材4は、厚みが薄い細幅状の環(リング)状に形成された部材である〔
図3(C)参照〕。回動部材4の円周方向に直交する断面形状は略方形状であり、外周側面4aは、円錐の円周側面を構成している(
図3参照)。
【0022】
このような複数の回動部材4からなるローラ部Bが、支持部Aの支持ベース部材1に装着される〔
図1,
図2(B)参照〕。ローラ部Bを構成する複数の回動部材4は、外周側面4aの直径が次第に大きくなる順序で、支持ベース部材1の円錐状の支持ベース部材1に装着される。具体的には、支持部Aの収め部材2側から支持ベース部材1側に向かって、複数の回動部材4の外周側面4aの直径が次第に大きくなり、略円錐状輪となるように構成されている。
【0023】
或いは、本発明のミシン押さえをシャンク8に装着した状態で、ミシン針92から最も離間した位置から最も近接した位置に向かって複数の回動部材4の直径が次第に大きくなり、略円錐状輪となるように構成されている(
図6参照)。つまり、ミシン針92に最も近い側に最大外径の回動部材4が配置され、ミシン針92から最も離れた側位に最小外径の回動部材4が配置される(
図6参照)。そして、複数の回動部材4は、それぞれが独立して回動する構成である。回動部材4は、金属材又は合成樹脂にて形成される。回動部材4は、特に被縫製物Wと接触しつつ回転することにより、耐久性が要求され、このようなことから金属製であることが好ましい。また、回動部材4の外周側面4aは滑らかな面としたり、或いはローレット加工等が施されることもある。
【0024】
そして、該中間支持部材5は、支持ベース部材1と、回動部材4との間や隣接する回動部材4との間に設けられ、回動部材4を円錐状の支持ベース部材1に対して軸方向にずれることなく定められた位置で、円滑に回転させる役目をなすものである〔
図1(B),
図2(B)参照〕。中間支持部材5は、回動部材4の数に応じて複数備えられる。中間支持部材5は、環(リング)状に形成され、座部51と仕切り部52とを有している。これら座部51と仕切り部52とによって、周方向に直交する断面は略L字形状である〔
図2(A)参照〕。
【0025】
中間支持部材5の仕切り部52は、支持ベース部材1に装着された複数の回動部材4において隣接する回動部材4の間に配置されることになる〔
図1(B),参照〕。つまり、仕切り部52は、隣接する回動部材4同士が直接接触しないように離間させ、相互に回動動作における干渉を防止する役目をなすものである。中間支持部材5の座部51は、円錐状の前記支持ベース部材1の円錐状外周面11aに配置される。また、中間支持部材5の仕切り部52は、円錐状の支持ベース部材1の円錐状外周面11aに対して直角となる〔
図1(B),
図2(B)参照〕。
【0026】
円錐状の支持ベース部材1は、円錐状であり、円錐状外周面11aの軸方向の軸芯線に対する傾斜角度θを有する。中間支持部材5は、前述したように、支持ベース部材1に装着されるものであり、複数の回動部材4がそれぞれ円滑に回動可能となるように軸受的な役目をなすものである。
【0027】
複数個の中間支持部材5における座部51の内周面51aの内径はd1,d2としたものが存在する〔
図3(A)参照〕。中間支持部材5の内径d1と内径d2は異なり、内径d2が内径d1よりも大きい。そして、中間支持部材5の内周面51aは、その軸方向に沿って傾斜しており、前記円錐状外周面11aの傾斜角度θと同等である〔
図2(A),
図3(A)参照〕。
【0028】
また、円錐状の支持ベース部材1は、直径が異なるそれぞれの中間支持部材5の設置位置が決まっている。そして、中間支持部材5の内周面51aの内径d1及び内径d2に対応して円錐状の支持ベース部材1は、軸方向に沿って外径D1及び外径D2の位置を有している〔
図3(A)参照〕。ここで、それぞれの中間支持部材5の内周面51aの内径d1及び内径d2は、円錐状内周面のため、軸方向の中間位置を平均値とした基準としている。
【0029】
これによって、中間支持部材5を円錐状の支持ベース部材1に装着したときに、内径d1を有する中間支持部材5は、円錐状の支持ベース部材1の外径D1の位置に固定されることになる。また、同様に、内径d2を有する中間支持部材5は、円錐状の支持ベース部材1の外径D2の位置に固定されることになる〔
図3(A)参照〕。
【0030】
中間支持部材5は、前述したように、回動部材4と円錐状の支持ベース部材1との間に配置され、回動部材4の軸受的な役目をなす。したがって、中間支持部材5は、円錐状の支持ベース部材1に対して回転不能な固定状態で装着される。中間支持部材5は、異なる内周側の直径を有する回動部材4に対応させて、その直径に等しい座部51の外径が決定される。
【0031】
回動部材4の内周側面4bは、回動自在となるように中間支持部材5の座部51の外周側面51a上に配置され、回動部材4が装着された中間支持部材5は、円錐状の支持ベース部材1に配置される〔
図2(B)参照〕。そして、直径の大きい回動部材4及び中間支持部材5を支持ベース部材1の円錐状の支持ベース部材1の軸方向における外径の大きい位置、換言するなら最もミシン針92に近接する位置に装着させ、次第に直径の小さい回動部材4及び中間支持部材5となる順番で装着される。
【0032】
中間支持部材5は、複数の回動部材4の個数と同一となるように合わせてもよいが、必ずしも個数を同一にする必要はない。例えば、円錐状の支持ベース部材1に対して軸方向に沿って最外側に位置する回動部材4は、円錐状の支持ベース部材1に対して中間支持部材5を介さないで、直接、回動自在に装着することもできる〔
図1(B),
図2参照〕。このとき、回動部材4の環状の内周側面4bの内径d3は、円錐状の支持ベース部材1の最外側の外径D3に回転自在に対応するようになっている。
【0033】
中間支持部材5は、回動部材4の軸受的な役目をはたすことから中間支持部材5自体は、支持ベース部材1の円錐状の支持ベース部材1に対して空転することがないように固定される。具体的には、円錐状の支持ベース部材1と中間支持部材5の座部51との間に係止突起71と係止溝72とが形成されている。具体的には、係止突起71は突起状であり、係止溝72は、係止突起71が嵌められる溝状であり、相互に係止する(
図3参照)。
【0034】
図3の実施形態では、円錐状の支持ベース部材1の軸方向に沿って直線状の係止突起71が形成され、中間支持部材5の内周側面に溝状の係止溝72が形成されている。ここで、該係止溝72は、中間支持部材5に座部51が存在する場合では、該座部51の内周側面に形成され、該座部51が存在せず仕切り部52のみで構成される場合では該仕切り部52の内周側面に係止溝72が形成される。係止突起71と係止溝72とが係止することで、中間支持部材5が円錐状の支持ベース部材1に空転不能に固定される。
【0035】
このようにして、中間支持部材5の円錐状の支持ベース部材1に沿って、外径の小さい回動部材4から外径の大きい回動部材4の順となるように装着される。通常では、
図1,
図6等に示すように、ミシン針92から最も離間した位置に最も直径の小さい回動部材4が位置し、ミシン針92に最も近接した位置に最も直径の大きい回動部材4が位置する。中間支持部材5は、金属材又は合成樹脂により形成される。
【0036】
特に、回動部材4の軸受的な役目をなすものであるため、回動部材4が円滑に回動できる材質であることが好ましい。そのため、中間支持部材5は、回動部材4と接触する座部51の外周側面や、仕切り部52の表面が摩擦係数が極めて少ない円滑な面であることが好ましい。そこで、中間支持部材5は、合成樹脂製であることが特に好ましい。また、中間支持部材5を金属製とする場合では、表面を円滑に加工処理することが好ましい。
【0037】
中間支持部材5は、前述したように、回動部材4と円錐状の支持ベース部材1との間に配置され、回動部材4が円滑に回動できるように軸受的な役目をなす。具体的には、中間支持部材5は支持ベース部材1に対して回動不能に固定され、回動部材4が中間支持部材5に対して回動する。ローラ部Bにおける複数の回動部材4は、円錐状の支持ベース部材1に対して直径の小さい順から大きい順に円錐状を構成するように配置される。
【0038】
そして、複数の回動部材4は、全て被縫製物Wに対して接触し、縫製時には同時に回転する。直線縫いのときには、複数の回動部材4のなかで、直径が最小の回動部材4の回転速度が最も速くなり、直径が最大の回動部材4は回転速度が最も遅くなる。
図1に示すように、ローラ部Bを構成する回動部材4を3個とした場合では、ミシン針92から最も離間した位置にある直径が最小の回動部材4の回転速度が最も速く、ミシン針92に近接する回動部材4の回転速度が最も遅い。
【0039】
そして、支持ベース部材1に中間支持部材5及び回動部材4が装着され、前記支持ベース部材1の連結部12の部分に、収め部材2の円形深皿形状の接続部21を被せるようにして接続し、支持ベース部材1の連結孔12aと、収め部材2の連結孔21aにビス等の固着具14のネジ軸を通して、シャンク8に固着させる(
図1参照)。
【0040】
また、第1実施形態には、変形例が存在する(
図4,
図5参照)。第1実施形態の第1変形例として、
図4に示すように、中間支持部材5は、仕切り部52のみで構成され、座部51が存在しないタイプとしたものが存在する。そして、回動部材4と、支持ベース部材1の円錐状の支持ベース部材1との間に仕切り部52のみが配置された構成となる〔
図4(B)参照〕。
【0041】
つまり、回動部材4の内周側面4bが円錐状の支持ベース部材1の円錐状外周面11aに回動自在に直接、接触するようにして装着されるものである。この第1実施形態の変形例は、仕切り部52のみを有する中間支持部材5を設けることで、隣接する回動部材4同士は仕切り部52によって非接触となり、回動動作による相互干渉を防止するものである〔
図4(A)参照〕。
【0042】
第1実施形態の第2変形例として、
図5に示すように、ローラ部Bを構成する環状とした回動部材4の軸方向に直交状となる一方側の側面4cに突出片41が形成される〔
図5(B),(C)参照〕。該突出片41は、円周状に連続する突起であり、ローラ部Bにおいて隣接する回動部材4の軸方向に直交状の他方側の側面4dに当接可能する〔
図5(B),(C)参照〕。
【0043】
回動部材4の突出片41は、隣接する回動部材4の側面4dに当接し、同士の接触面積を最小限とし、ほとんど非接触状態となるように離間させる役目をなす〔
図5(B),(C)参照〕。これにより、隣接する回動部材4同士が相互に回動するときの干渉を最小限とし、それぞれが略独立した回動動作をできるようにしたものである。
【0044】
さらに、特に図示しないが、全ての回動部材4を直接、円錐状の支持ベース部材1に装着し、中間支持部材5を設けないこともある。この場合では、回動部材4を形成する材質は、摩擦係数が極めて小さいものが使用されることが好適である。或いは、回動部材4の表面を摩擦係数が小さくなるように、円滑な表面加工が施されることが好適である。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態では、
図7に示すように、支持部Aは、支持ベース部材1が軸状となっている〔
図7(B)参照〕。軸状の該支持ベース部材1は、何れの箇所も同一となる直径を有する軸部材である〔
図7(B)参照〕。第2実施形態におけるローラ部Bを構成する複数の回動部材4は、直径の異なる外径を有する円板形状であり、その中心に軸貫通孔42が形成されている〔
図7(B)参照〕。
【0046】
また、第2実施形態における中間支持部材5は、円板状の板材であり、その外径は、隣接する回動部材4の外径よりも小さい外径とする。つまり、隣接する回動部材4から直径方向外方に突出しないようにしている〔
図7(B)参照〕。そして、中間支持部材5の直径中心位置には、軸貫通孔53が形成されている。なお、中間支持部材5を用いずに、第1実施形態のように回動部材4は突出片を設けてもよい。
【0047】
軸貫通孔42及び軸貫通孔53の内径は、軸状の支持ベース部材1の外径よりも僅かに大きい程度であり、具体的には回動部材4にはガタが出ないようで且つ円滑に回動動作ができることが好適である。そして、シャンク8との連結箇所である付根側からミシン針92側に向かって、直径の小さい回動部材4及び中間支持部材5から直径の大きい回動部材4及び中間支持部材5となる順に配置され、ローラ部Bは全体として円錐状である。また、それぞれの軸貫通孔42及び軸貫通孔53に軸状の支持ベース部材1が挿入する〔
図7(A)参照〕。
【0048】
該軸状の支持ベース部材1は、具体的に段付きボルト状とし、外ネジ部13aとボルト頭部13bと大径支持部13cとを備えている〔
図7(B)参照〕。該大径支持部13cは、回動部材4と中間支持部材5とからなるローラ部Bを、軸支且つ回動させる役目なす部位である。そして、大径支持部13cは、その軸長方向に沿って同一直径となる軸である。また、全ての回動部材4の軸貫通孔42は、前記大径支持部13cが挿通し、回動部材4が円滑に回動できる程度の内径である。全ての回動部材4の軸貫通孔42は、同一の内径である。
【0049】
同様に、全ての中間支持部材5の軸貫通孔53についても、前記大径支持部13cが挿通し、中間支持部材5が円滑に回動できる程度の内径であり、全ての中間支持部材5の軸貫通孔53は、同一の内径である。また、回動部材4の軸貫通孔42と中間支持部材5の軸貫通孔53の内径も同一である〔
図7(B)参照〕。ボルト頭部13bは、薄板状に形成されている。そして、大径支持部13cに軸支された回動部材4からなるローラ部Bは、2つの座金13dにて挟持され、外ネジ部13aにナット13eが螺合締付される。
【0050】
本発明における押さえは、シャンク8を介して、針棒に装着されるものである。複数の回動部材4は、いずれもが被縫製物を押さえるように直径が次第に大きくなる順序で前記支持ベース部材1に装着されると共にそれぞれの回動部材4は独立して回動する構成としたことで、直線縫いにおいて、複数の回動部材4は、それぞれが独立して同一の外周速度で回動でき、良好な直線縫いができる。また、直線縫い以外でも各回動部材4が独立して回動するため、所望の縫い方に応じて各回動部材4が被縫製物を適切に押えて回転し、良好な縫いが可能となる。
【0051】
シャンク8は、腕部81と取付部82と押さえ棒連結部83とからなる。腕部81は、取付本体部82に対して折り畳み自在とすることもある。また、押さえ棒接続部83は、押さえ棒91にビス等の固着具にて連結する部位である。押さえ棒接続部83は、取付本体部82に対して水平方向にスライド且つ固定自在となる構成である。
【0052】
腕部81の先端部分には内螺子孔81aが形成され、押さえを固着具14の螺子軸と螺合し、押さえと腕部81とを連結する役目をなす〔
図1(B)参照〕。本発明におけるミシンの押さえは、シャンク8の腕部81に装着すると共に、シャンク8の押さえ棒接続部83を介して押さえ棒91にビス等の固着具にて固着する(
図6参照)。
【符号の説明】
【0053】
A…支持部、1…支持ベース部材、B…ローラ部、4…回動部材、41…突出片、
5…中間支持部材。