(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】操作つまみ装置
(51)【国際特許分類】
G05G 1/08 20060101AFI20240830BHJP
H01H 25/06 20060101ALI20240830BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20240830BHJP
【FI】
G05G1/08 B
H01H25/06 B
G06F3/0362 461
(21)【出願番号】P 2020059299
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】西本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 薫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健二
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073542(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/073539(WO,A1)
【文献】特開2003-241893(JP,A)
【文献】特開2002-8495(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/08
H01H 25/06
G06F 3/0362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の保持部を有し、表示パネルに対して前記保持部の軸線が交差するように前記表示パネルに隣接して配置されるホルダと、
前記表示パネルと対向する第1端と、前記第1端に対して前記表示パネルとは反対側に位置する第2端とを有し、前記軸線周りの回転が許容されるように前記保持部に配置されたロータと、
前記ロータに対して前記軸線に沿った方向の相対移動が許容され、前記ロータに対して前記軸線を中心とする周方向の相対移動が規制されるように、前記ロータの前記第2端側に配置されたノブと、
前記ロータの前記第1端側に配置された導電性を有する伝達部材と
を備え、
前記伝達部材は、
前記ノブに連動して前記軸線に沿って移動する第1伝達部と、
前記ロータと一体に回転するように前記第1端に取り付けられ、前記ノブの非操作状態で前記第1端に対して前記第1伝達部よりも突出している第2伝達部と、
前記第1伝達部と前記第2伝達部を導通可能に接続する接続部と
を有し、
前記第1伝達部は、一対の端部を有する円弧状で、
前記第2伝達部は、前記第1伝達部の円周上に位置するように前記一対の端部間に配置され、
前記接続部は、可撓性を有するとともに、前記ノブの非操作状態で、前記
第1伝達部と前記
第2伝達部の間に突出する余剰部分を有し、前記余剰部分によって前記第2伝達部に対する前記第1伝達部の前記軸線に沿った方向の相対移動を許容する、操作つまみ装置。
【請求項2】
前記ノブは、前記ロータを貫通して前記第1端側へ突出する連結部を有し、
前記第1伝達部は、前記連結部に取り付けられている、請求項1に記載の操作つまみ装置。
【請求項3】
前記第1伝達部及び前記第2伝達部は金属製であり、
前記接続部は導電性フィルムからなる、請求項1又は2に記載の操作つまみ装置。
【請求項4】
前記第1伝達部はゴム製で、前記第2伝達部は金属製であり、
前記接続部は前記第1伝達部と一体構造である、請求項1又は2に記載の操作つまみ装置。
【請求項5】
前記第1伝達部、前記第2伝達部、及び前記接続部はゴム製で一体構造である、請求項1又は2に記載の操作つまみ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作つまみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置又はセンターディスプレイ等の車載製品には、静電容量方式のタッチ検出機能を備えた表示パネルが採用されている。車載製品を操作する場合、凹凸がない表示パネルの定められた操作領域に指を当てる必要があるため、ユーザは操作領域の位置を目で確認する必要がある。
【0003】
特許文献1には、表示パネルの表面に配置する操作つまみ装置が開示されている。操作つまみ装置は、表示パネルに固着されるホルダ、プッシュ式のボタン、及び回転式のノブを備える。ボタン内の伝達部材の接近によって表示パネルの静電容量が変化することで、表示パネルはボタンのプッシュ操作を検出できる。ノブ内の伝達部材によって静電容量が変化する位置が移動することで、表示パネルはノブの回転操作を検出できる。操作つまみ装置が表示パネルから突出しているため、ユーザは表示パネルを見ることなく車載製品を操作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の操作つまみ装置では、伝達部材と表示パネルの間に樹脂製のホルダの隔壁が介在しているため、伝達部材による表示パネルの静電容量の変化が小さい。よって、表示パネルによる操作の検出性、つまり伝達部材による操作の伝達性について、特許文献1の操作つまみ装置には改良の余地がある。
【0006】
本発明は、プッシュ操作と回転操作の伝達性を向上できる操作つまみ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、環状の保持部を有し、表示パネルに対して前記保持部の軸線が交差するように前記表示パネルに隣接して配置されるホルダと、前記表示パネルと対向する第1端と、前記第1端に対して前記表示パネルとは反対側に位置する第2端とを有し、前記軸線周りの回転が許容されるように前記保持部に配置されたロータと、前記ロータに対して前記軸線に沿った方向の相対移動が許容され、前記ロータに対して前記軸線を中心とする周方向の相対移動が規制されるように、前記ロータの前記第2端側に配置されたノブと、前記ロータの前記第1端側に配置された導電性を有する伝達部材とを備え、前記伝達部材は、前記ノブに連動して前記軸線に沿って移動する第1伝達部と、前記ロータと一体に回転するように前記第1端に取り付けられ、前記ノブの非操作状態で前記第1端に対して前記第1伝達部よりも突出している第2伝達部と、前記第1伝達部と前記第2伝達部を導通可能に接続する接続部とを有し、前記第1伝達部は、一対の端部を有する円弧状で、前記第2伝達部は、前記第1伝達部の円周上に位置するように前記一対の端部間に配置され、前記接続部は、可撓性を有するとともに、前記ノブの非操作状態で、前記第1伝達部と前記第2伝達部の間に突出する余剰部分を有し、前記余剰部分によって前記第2伝達部に対する前記第1伝達部の前記軸線に沿った方向の相対移動を許容する、操作つまみ装置を提供する。
【0008】
第1伝達部と第2伝達部が導通可能に接続されているため、これらの静電容量を大きくできる。具体的には、第1伝達部を表示パネルが検出する際、第1伝達部の静電容量は第2伝達部の静電容量を加えた大きさになり、第2伝達部を表示パネルが検出する際、第2伝達部の静電容量は第1伝達部の静電容量を加えた大きさになる。よって、個々の伝達部の形状(静電容量に相当する体積)を過度に大きくする必要がないため、伝達部材を小型化できる。また、伝達部材の静電容量を大きくできるため、表示パネルの検出性、つまりノブ操作の伝達性を向上できる。さらに、例えばユーザが絶縁材料からなる手袋をしていても、伝達部材によってノブの操作を表示パネルが検出できる。
【0009】
具体的には、ノブをプッシュ操作すると、ロータの第1端側に配置された第1伝達部が表示パネルに向けて一体に移動する。導電性を有する第1伝達部の接近によって表示パネルの静電容量が変化することで、表示パネルはノブのプッシュ操作を検出できる。ノブを回転操作すると、ロータと第1端側に取り付けられた第2伝達部とが一体に回転する。導電性を有する第2伝達部の回転によって表示パネルの静電容量が変化する位置が移動することで、表示パネルはノブの回転操作を検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の操作つまみ装置では、ノブのプッシュ操作と回転操作の伝達性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る操作つまみ装置を表示パネルに配置した斜視図。
【
図2B】プッシュ操作した操作つまみ装置の断面図。
【
図4】
図3のホルダ、リング部材、及びフィルムの分解斜視図。
【
図5】
図3のロータ、第1伝達部材、第2伝達部材、及びノブの分解斜視図。
【
図6】ロータ、付勢部材、及びスタビライザの分解斜視図。
【
図7】ロータ、第1伝達部材、及び第2伝達部材を後方から見た分解斜視図。
【
図9】ノブに対するスタビライザの配置を示す正面図。
【
図10】第2実施形態の操作つまみ装置のロータ、第1伝達部材、及び第2伝達部材を示す分解斜視図。
【
図11】
図10のロータ、第1伝達部材、取付部材、第2伝達部材、及び保持部材を後方から見た分解斜視図。
【
図12】
図10の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材の分解斜視図。
【
図13】
図10の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材を後方から見た分解斜視図。
【
図14】第3実施形態の操作つまみ装置の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材の分解斜視図。
【
図15】
図14の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材を後方から見た分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1及び
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る操作つまみ装置10を示す。操作つまみ装置10が配置されている表示パネル1は、静電容量の変化によってユーザの操作を検出するタッチ検出機能を備え、ナビゲーション装置又はセンターディスプレイ等の車載製品に搭載されている。
【0014】
図1に示すように、操作つまみ装置10は、表示パネル1の定められた操作領域に配置され、表示パネル1から車内側へ突出している。操作つまみ装置10は、全体として円環形状であり、軸線Aが表示パネル1に対して直交方向に延びるように配置されている。操作つまみ装置10は、1個のノブ(操作部)30を備え、このノブ30のプッシュ操作及び回転操作を表示パネル1に伝達する。
【0015】
図2A及び
図3に示すように、操作つまみ装置10は、ホルダ20、ロータ25、ノブ30、付勢部材33、伝達部材35、リング部材45、及びフィルム50を備える。接着層52aを備えるフィルム50によって、操作つまみ装置10は表示パネル1の表面に固着されている。本実施形態の伝達部材35は、ノブ30のプッシュ操作を伝達する第1伝達部材36と、ノブ30の回転操作を伝達する第2伝達部材38とを備える。
【0016】
ホルダ20とリング部材45は、表示パネル1に隣接するようにフィルム50に固着されている。ロータ25は、軸線A周りの回転が許容されるようにホルダ20に配置されている。ノブ30は、軸線Aに沿った方向の直動が許容されるようにロータ25に取り付けられ、軸線Aを中心としてロータ25を一体に回転させる。付勢部材33は、ロータ25とノブ30の間に配置され、ノブ30を表示パネル1から離れる向きへ付勢する。第1伝達部材36は、ノブ30に取り付けられ、ノブ30の直動に連動して軸線Aに沿って移動する。第2伝達部材38は、ロータ25に取り付けられ、ロータ25と一体に回転する。
【0017】
図2Bに示すように、ノブ30を表示パネル1に向けてプッシュ操作すると、第1伝達部材36がフィルム50に向けて一体に直動する。表示パネル1は、導電性を有する第1伝達部材36の接近によって静電容量が変化することで、ノブ30のプッシュ操作を検出できる。ノブ30から手を離すと、ノブ30と第1伝達部材36は、付勢部材33によって表示パネル1から離れる向きへ移動する。表示パネル1は、第1伝達部材36による静電容量の変化が無くなることで、プッシュ操作の解除を検出できる。ノブ30のプッシュ操作では、第2伝達部材38は表示パネル1に接近した状態を維持し、表示パネル1において第2伝達部材38によって静電容量が変化する領域は変化しない。
【0018】
図2Aの状態でノブ30を回転操作すると、ロータ25と第2伝達部材38がノブ30と同じ向きへ一体に回転する。表示パネル1は、導電性を有する第2伝達部材38の回転によって静電容量が変化する位置が移動(回転)することで、ノブ30の回転操作を検出できる。回転操作が止められると、ロータ25と第2伝達部材38の回転も停止する。表示パネル1は、静電容量が変化する位置が止まることで、回転操作の停止を検出できる。表示パネル1は、静電容量の変化停止位置を検出することで、ユーザが希望する機能の実行、停止、或いは調整量を検出できる。ノブ30の回転操作では、第1伝達部材36は一体に回転するが、表示パネル1から離れた状態を維持するため、第1伝達部材36によって表示パネル1の静電容量は変化しない。
【0019】
次に、操作つまみ装置10の構成部品について具体的に説明する。なお、以下の説明では、表示パネル1に最も近いフィルム50側を車外側といい、表示パネル1から最も離れたノブ30の端壁部30c側を車内側ということがある。
【0020】
図3及び
図4に示すように、ホルダ20は、フィルム50の外周部に固着され、表示パネル1に対して他の構成部品を保持する。ホルダ20は、絶縁性を有する(つまり導電性がない)樹脂(例えばABS)からなる。ホルダ20は、表示パネル1の一部を露出させる開口部(内部空間)21を備える円環状の筒体である。
【0021】
ホルダ20の内周部には、径方向内向きに突出し、軸線Aに沿った車外側へのロータ25の移動を規制し、軸線Aを中心としてロータ25を回転可能に保持する円環状の保持部20aが設けられている。保持部20aの軸線Aが表示パネル1に対して直交方向に延びるように、ホルダ20が表示パネル1に配置される。保持部20aに対して車内側に隣接するように、ホルダ20の内周部には、径方向内向きに突出する三角柱状の突起20bが周方向へ複数並設されている。周方向に隣り合う突起20b間は、後述する係合部材28を係合する係合溝20cを構成する。突起20bの車内側の端は、ホルダ20の車内側の端よりも車外側に位置し、これらによって段部20dが形成されている。
【0022】
図3及び
図5に示すように、ロータ25は、開口部21に連通する開口部(内部空間)26を備え、軸線Aを中心とする円環状の板体である。ロータ25は、絶縁性を有する樹脂(例えばPBT)からなる。
図2Aを併せて参照すると、ロータ25は、車外側に配置されてフィルム50(表示パネル1)と対向する第1端25aと、車内側に配置されてフィルム50とは反対側に位置する第2端25bとを備える。ロータ25が保持部20a内に配置されることで、第1端25aが保持部20aに当接し、第2端25bがホルダ20の車内側端部と面一に位置する。
【0023】
ロータ25の外径は、保持部20aの内径よりも大きく、複数の突起20bの先端を結ぶ仮想円(図示せず)の直径よりも小さい。ロータ25の第2端25b側の端部には、径方向外向きに突出し、ホルダ20の段部20dに配置されるフランジ部25cが設けられている。フランジ部25cの外径は、複数の突起20bの先端を結ぶ仮想円の直径よりも大きく、段部20dの内径よりも小さい。これによりロータ25は、ホルダ20の内側で軸線Aを中心として回転できる。
【0024】
図3に示すように、ロータ25の外周には、径方向内向きに窪む断面円形状の空間からなる取付穴25dが設けられている。取付穴25d内には、スプリング27と球状の係合部材28とが配置されている。係合部材28の直径は、取付穴25dの直径よりも小さく、係合溝20cの径方向の溝深さよりも大きい。ホルダ20に対してロータ25が回転されると、突起20bの傾斜面によって係合部材28が取付穴25d内へ移動し、スプリング27を収縮させる。スプリング27によって外向きに付勢された係合部材28が係合溝20cに係合することで、ロータ25がホルダ20に対して所定の回転角度位置に保持される。
【0025】
図2Aを参照すると、ロータ25には、軸線Aに沿ってノブ30の移動を許容するための挿通孔25eが設けられている。
図6を参照すると、ロータ25の第2端25b側には、付勢部材33を配置する配置部25f、及び後述するスタビライザ55を配置するための凹部25nが設けられている。
図7を参照すると、ロータ25の第1端25a側には、第1伝達部材36を支持する位置決めリブ25h,25i、及び第2伝達部材38を取り付ける取付部25kが設けられている。これらについては後で詳述する。
【0026】
図3及び
図5に示すように、ノブ30は、開口部21に連通して表示パネル1の一部を視認可能な開口部31を備え、軸線Aを中心とする円環状のカバーである。ノブ30は、絶縁性を有する樹脂(例えばPC/ABS)からなる。ノブ30は、ロータ25に対して軸線Aに沿った方向の相対移動が許容され、ロータ25に対して軸線Aを中心とする周方向の相対移動が規制されるように、ロータ25の第2端25b側に配置されている。
【0027】
具体的には、
図2A及び
図5に示すように、ノブ30は、開口部31を画定する円錐筒状の内壁部30aと、内壁部30aの外側を取り囲む円錐筒状の外壁部30bとを備える。内壁部30aは、最も内側に位置するように、ホルダ21及びロータ25の開口部21,26内に配置されている。外壁部30bは、最も外側に位置するように、ホルダ20の外側に配置されている。これらは軸線Aを中心とする同心円筒状である。
【0028】
内壁部30a及び外壁部30bにおける車内側の端は、これらに連なる端壁部30cによって塞がれている。内壁部30a及び外壁部30bにおける車外側の端は、開放された開放部30dである。つまり、外壁部30bに連なる端壁部30cには、開口部21を通して表示パネル1の一部を視認可能な開口部31が形成され、この開口部31の縁に内壁部30aが連なって設けられている。
【0029】
内壁部30aと外壁部30bは、端壁部30cから開放部30dに向かうに従って、互いに離反するように傾斜している。開放部30d側に位置する内壁部30aの外端の直径はロータ25の内径よりも小さく、内壁部30aの外端はロータ25よりも車外側に突出している。開放部30d側に位置する外壁部30bの外端の直径はホルダ20の外径よりも大きく、外壁部30bの外端はロータ25よりも車外側に突出している。内壁部30a、外壁部30b、及び端壁部30cの内部には、ホルダ20の大部分とロータ25とが収容されている。
【0030】
引き続いて
図2A及び
図5を参照すると、端壁部30cには、ロータ25を貫通して開放部30d側(車外側)へ突出する円筒状のボス(連結部)30eが設けられている。ボス30eは、端壁部30cに対して周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3個)設けられている。端壁部30c側の端から開放部30d側の端にかけたボス30eの全長は、第2端25bから第1端25aまでのロータ25の厚みよりも長く、内壁部30aの全長よりも短い。
【0031】
図2A及び
図7に示すように、ロータ25には、複数のボス30eにそれぞれ対応する挿通孔25eが設けられている。
図6を参照すると、挿通孔25eの車内側は、スタビライザ55を配置する凹部25nと空間的に連通している。挿通孔25eは、ボス30eの外径よりも大きく、ボス30eが挿通され、軸線Aに沿った方向のボス30eの移動を許容する。これにより、軸線Aに沿った方向において、ロータ25に対するノブ30の相対的な移動が許容される。また、挿通孔25eの孔壁にボス30eが当接することで、軸線Aを中心とした周方向において、ロータ25に対するノブ30の相対的な移動が規制される。
【0032】
図9を参照すると、ノブ30には、ロータ25に対する軸線Aに沿った方向への移動ガイド、及びロータ25に対する軸線Aを中心とした周方向への移動規制の機能を兼ね備える規制部30jが更に設けられている。
図9において下側に形成された規制部30jは、スタビライザ55を支持する機能を兼ね備えた一対のリブによって構成されており、これらの間に
図6に示す配置部25fを有するブロック25rが挟み込まれる。
図9において左側に形成された規制部30jは、筒状で一対のボス30eからそれぞれ突出した一対のリブからなり、これらの間に
図6に示す配置部25fを有するブロック25rが挟み込まれる。
図9において上側に形成された規制部30jは、スタビライザ55を支持する機能を兼ね備えた一対のリブと、ボス30eの外周部とで構成されており、これらの間に
図6に示す配置部25fを有するブロック25rが挟み込まれる。
【0033】
図2A及び
図2Bに示すように、付勢部材33は、ロータ25とノブ30の間に配置され、軸線Aに沿ってロータ25から離れる向きへノブ30を付勢する。付勢部材33は、弾性を有するゴム(例えばシリコーンゴム)製であり、概ね円錐筒状に形成されている。但し、付勢部材33は、コイルスプリング又は板バネであってもよいし、ロータ25に設けた切起構造の樹脂バネであってもよい。
【0034】
具体的には、
図5及び
図6に示すように、付勢部材33は、ロータ25の第2端25b側に周方向へ等間隔で複数(本実施形態では4個)配置されている。個々の付勢部材33は、円環状の基部33aと、基部33aから円錐筒状に突出する突出部33bと、突出部33bの先端に設けられた円柱状の頭部33cとを備える。
【0035】
ロータ25の第2端25bには、付勢部材33を配置する配置部25fが設けられている。配置部25fは、基部33aを配置可能な断面円形状の窪みからなり、挿通孔25eとは異なる角度位置に設けられている。軸線Aが延びる方向における配置部25fの深さは、付勢部材33の全高よりも浅く、付勢部材33の頭部33cは第2端25bからノブ30側へ突出している。配置部25fの底には、第1端25aにかけて貫通する貫通孔25gが設けられている。貫通孔25gは、
図2A及び
図2Bに示す付勢部材33の弾性変形に伴う空気の流動を許容する。ノブ30の端壁部30cの内面には、付勢部材33の頭部33cを保持する保持部30fが設けられている。
【0036】
図2A及び
図5に示すように、伝達部材35を構成する第1伝達部材(第1導電部)36と第2伝達部材(第2導電部)38は、可撓性及び導電性を有する接続部材(接続部)41によって導通可能に接続されている。第1伝達部材36及び第2伝達部材38は、内壁部30aと外壁部30bの間、かつ第1端25a側であるロータ25とフィルム50との間に配置されている。第1伝達部材36はノブ30に取り付けられ、第2伝達部材38はロータ25に取り付けられている。ノブ30のプッシュ操作によって、第1伝達部材36は連動して軸線Aに沿って移動するが、第2伝達部材38は移動しない。ノブ30の回転操作によって、第1伝達部材36は一体に回転し、第2伝達部材38はロータ25を介して一体に回転する。つまり、第2伝達部材38に対して第1伝達部材36は、軸線Aに沿って相対移動するが、軸線Aを中心とした周方向には相対移動しない。
【0037】
図5及び
図7に示すように、第1伝達部材36は、導電性を有する金属(例えば真鍮)からなるC字状の板体である。但し、第1伝達部材36は、導電性を有する材料であれば、ゴム製又は樹脂製であってもよい。周方向における第1伝達部材36の第1端36aから第2端36bまでの角度は、概ね270度である。第1伝達部材36の径方向の幅は、ロータ25の径方向の幅よりも狭い。
【0038】
図2Aに示すように、第1伝達部材36はネジ(連結部材)37によってボス30eに連結されている。第1伝達部材36の貫通孔を貫通させたネジ37をボス30eに締め付けることで、ノブ30と第1伝達部材36は、ロータ25に対する取付状態が維持される。また、第1伝達部材36の外周部には、径方向外向きに突出し、保持部20aの車外側端面に当接する複数(本実施形態で5個)の突出部36cが設けられている。
【0039】
ノブ30の非操作状態で第1伝達部材36は、付勢部材33の付勢によって突出部36cが保持部20aに当接することで、ロータ25の第1端25aに近接した位置に後退している。また、保持部20aへの突出部36cの当接によって、それ以上のノブ30、ロータ25及び第1伝達部材36の車内側への移動が規制される。
図2Bに示すように、ノブ30のプッシュ操作によって第1伝達部材36は、軸線Aに沿ってフィルム50に接触する位置まで進出する。
【0040】
図7を参照すると、ロータ25の第1端25aには、ロータ25に対する第1伝達部材36の配置を補助する位置決めリブ25h,25iが設けられている。第1位置決めリブ25hは、周方向に延びるように一対設けられている。第2位置決めリブ25iは、概ねU字形状に突出するように設けられている。一対の位置決めリブ25h,25i間において、第1伝達部材36が配置される部分には、車外側から車内側へ窪む凹溝25jが設けられている。
【0041】
図5及び
図7に示すように、第2伝達部材38は、導電性を有する金属(例えば真鍮)からなる楕円柱状の板体である。但し、第2伝達部材38は、導電性を有する材料であれば、ゴム製又は樹脂製であってもよい。
【0042】
第2伝達部材38は、第1伝達部材36と
同一円周上に位置するように、両端36a,36b間に配置されている。第2伝達部材38は、保持部材39を介してロータ25の第1端25aに配置され、スプリング40によって車外側へ付勢されている。
図2Aに示すように、ノブ30の非操作状態で第2伝達部材38は、第1端25aに対して第1伝達部材36よりも突出し、フィルム50に当接している。
【0043】
図7及び
図8に示すように、保持部材39は、第2伝達部材38の形状に対応する楕円柱状の窪み39aを備える。軸線Aが延びる方向の窪み39aの深さは第2伝達部材38の厚みよりも浅く、第2伝達部材38は保持部材39の端面から突出している。保持部材39には、車内側へ突出する一対の係止片39bが設けられている。係止片39bは、ロータ25からの離脱を防ぐための爪部39cを備える。保持部材39の車内側中央には、スプリング40の一端を配置する凸部39dが設けられている。
【0044】
引き続いて
図7及び
図8を参照すると、ロータ25の第1端25aには、保持部材39を取り付ける取付部25kが設けられている。取付部25kは、複数の配置部25fのうちの1つの車外側に隣接して設けられている。取付部25kは、係止片39bが貫通される一対の貫通孔25lと、スプリング40を配置する凹部25mとを備える。貫通孔25lはそれぞれ、位置決めリブ25h,25iに隣接して設けられている。貫通孔25lの車内側は、スタビライザ55を配置する凹部25nと空間的に連通している。凹部25mは、車外側から車内側へ窪むように、一対の貫通孔25l間に設けられている。第2端25b側に位置する貫通孔25lの縁と爪部39cとの間には、ロータ25に対する保持部材39の軸線Aに沿った方向の移動を許容する隙間が確保されている。
【0045】
図5及び
図7に示すように、接続部材41は、第1伝達部材36及び第2伝達部材38に機械的に接続されている。接続部材41は、電気的な導通が可能な樹脂である導電性フィルムからなり、第1伝達部材36と第2伝達部材38を導通可能に接続する。接続部材41は、第1伝達部材36と
同一円周上に延びる
ように、第1伝達部材36の曲率と同じ曲率の円弧状に形成されている。
【0046】
接続部材41の一端には、第1伝達部材36に接続する第1接続端41aが設けられている。第1接続端41aはネジ37を挿通可能な貫通孔41bを備える。第1伝達部材36の端に位置するネジ37を貫通孔41bに通し、取付部25kに隣接する挿通孔25eを通してネジ37をボス30eに締め付ける。これにより、第1接続端41aが第1伝達部材36とボス30eの間に挟み込まれ、接続部材41と第1伝達部材36の導通が確保される。
【0047】
接続部材41の他端には、第2伝達部材38に接続する矩形状の第2接続端41cが設けられている。周方向における保持部材39の一端には、窪み39aに連通する挿通溝39eが設けられている。挿通溝39eを通して窪み39aに第2接続端41cを配置した後、窪み39aに第2伝達部材38を配置する。これにより、第2接続端41cが第2伝達部材38と保持部材39の間に挟み込まれ、接続部材41と第2伝達部材38の導通が確保される。
【0048】
接続部材41は、可撓性を有し、第2伝達部材38に対する第1伝達部材36の相対移動によって変形可能である。具体的には、接続部材41は、
図2Aに示すノブ30の非操作状態で、第1伝達部材36と第2伝達部材38の間から突出する余剰(ゆとり)部分を確保できる寸法設定である。この余剰部分によって接続部材41は、第2伝達部材38に対する第1伝達部材36の相対移動を許容する。
【0049】
図3及び
図4に示すように、リング部材45は、開口部21,31に連通して表示パネル1の一部を露出させる開口部46を備え、軸線Aを中心とする円環状の筒体である。リング部材45は、絶縁性を有する樹脂(例えばABS)からなる。リング部材45は、ロータ25の開口部26の孔壁(内周面)と内壁部30aとの間、つまりロータ25の内側かつ内壁部30aの外側に配置されている。
【0050】
リング部材45は、フィルム50の内周部に固着された基部45aと、基部45aの外周部からノブ30内へ突出する突出部45bとを備える。車内側に位置する突出部45bの先端は、
図2Aに示すノブ30の非操作状態で、ノブ30の開放部30dよりも端壁部30c側へ位置している。
【0051】
引き続いて
図3及び
図4を参照すると、フィルム50は、表示パネル1の一部を露出させる開口部51を備え、軸線Aを中心とする円環状の部材である。フィルム50は、絶縁性、耐水性、及び耐熱性に優れた樹脂(例えばPET)からなる。フィルム50は、射出成形によって製造可能な樹脂成形品の壁の最小厚みよりも薄い厚みである。具体的には、フィルム50の厚みは、0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましく、本実施形態では0.1mmである。フィルム50は、ホルダ20及びリング部材45の車外側端面に固着され、第1伝達部材36及び第2伝達部材38の表示パネル1側を覆う。
【0052】
フィルム50の外径はホルダ20の最大部分の外径と同一であり、フィルム50の内径はリング部材45の最小部分の内径と同一である。
図2Aを併せて参照すると、フィルム50において、表示パネル1と対向する車外側の面には接着層52aが設けられている。フィルム50の車内側の面には、外周部にホルダ20を固着する接着層52bが設けられ、内周部にリング部材45を固着する接着層52cが設けられている。
【0053】
図5及び
図6に示すように、操作つまみ装置10は、プッシュ操作時にロータ25に対するノブ30の傾きを抑制するスタビライザ55を備える。スタビライザ55は、ロータ25とノブ30の端壁部30cとの間に複数配置されている。本実施形態では、4本のスタビライザ55が軸線Aを中心として周方向へ90度間隔で配置されている。
【0054】
個々のスタビライザ55は、基部55a、一対のスライド部55b、及び一対の腕部55cを備え、線材によって形成されている。
【0055】
図9に示すように、基部55aは、内壁部30aの径方向外側に隣接して配置されている。隣り合うスタビライザ55の基部55aは、直交方向に延びている。
【0056】
基部55aは、端壁部30cに突設された保持部30gに回転可能に保持されている。保持部30gは、基部55aの長手方向の両端近傍に位置するように設けられており、基部55aの両側に位置し、基部55aを保持する一対の爪部を備える。
【0057】
スライド部55bは、腕部55cを介して基部55aに連続し、基部55aに対して平行に延びている。軸線Aが延びる方向から見て、隣り合うスタビライザ55の基部55aとスライド部55bとは、直交方向に交差している。つまり、第1のスタビライザ55の基部55aと、第1のスタビライザ55と隣り合う第2のスタビライザ55のスライド部55bとが交差している。
【0058】
図5及び
図6に示すように、スライド部55bは、ロータ25の第2端25bに形成された凹部25nに配置され、ロータ25の外周部に形成されたスライド溝25oに保持されている。
【0059】
凹部25nは、挿通孔25e及び配置部25fとは異なる角度位置の4カ所に設けられている。凹部25nは、車内側から車外側へ窪んでおり、スライド部55bの移動を許容する底面を備える。凹部25nの形成領域、挿通孔25eの形成領域、及び貫通孔25lの形成領域は、空間的に連通している。
【0060】
スライド溝25oは、凹部25nと空間的に連通し、凹部25nからロータ25の外周面にかけて貫通した長穴からなる。スライド溝25oは、1カ所の凹部25nに2個、合計で8個設けられている。1カ所の凹部25nに形成される一対のスライド溝25oは直交方向に延びており、それぞれ異なるスタビライザ55のスライド部55bが配置される。スライド部55bの先端をスライド溝25o内に配置することで、第2端25bに沿ったスライド部55bの移動が許容されている。
【0061】
図6及び
図9に示すように、腕部55cは、基部55aの外端及びスライド部55bの内端に連続している。腕部55cは、基部55a及びスライド部55bに対して直交方向に延びている。前述のように、基部55aがノブ30に保持され、スライド部55bがロータ25に保持されているため、腕部55cは、凹部25nの底面に対して傾斜している。この傾斜によって、隣り合うスタビライザ55の腕部55cは、干渉することなく三次元的に配置されている。
【0062】
なお、基部55aを保持する保持部をロータ25に設け、スライド部55bを保持するスライド溝をノブ30に設けてもよい。
【0063】
次に、操作つまみ装置10の動作について説明する。
【0064】
図2Aに示すように、ノブ30の非操作状態では、付勢部材33の付勢によってノブ30がロータ25から離反した位置に保持されている。これにより、ボス30eに連結された第1伝達部材36がフィルム50から離れて位置する。また、第2伝達部材38は、スプリング40の付勢によってフィルム50に当接した位置に保持されている。
【0065】
この非操作状態では、表示パネル1において、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量は変化せず、第2伝達部材38と対向する部分の静電容量だけが変化する。但し、第2伝達部材38によって静電容量が変化する位置は、所定位置に維持されている。よって、表示パネル1は、ノブ30が操作されていないことを検出できる。
【0066】
ノブ30をプッシュ操作すると、付勢部材33の付勢力に抗してロータ25にノブ30が接近する。この際、ノブ30の直動によってスタビライザ55の基部55aが押圧され、スライド部55bが凹部25nの底面及びスライド溝25oに沿って移動する。これにより、ロータ25に対してノブ30の傾きが抑制される。また、ノブ30の直動によってボス30eを介して第1伝達部材36がフィルム50に接近又は接触する。
【0067】
プッシュ操作によって表示パネル1の静電容量は、第2伝達部材38の対向部分に加え、第1伝達部材36と対向する部分も変化する。よって、表示パネル1の静電容量が変化する領域は、非操作状態と比較して広範囲になる。この静電容量の変化領域の増大によって、表示パネル1はノブ30のプッシュ操作を検出できる。
【0068】
プッシュ操作が止められると、付勢部材33の付勢力によって、ロータ25に対してノブ30と第1伝達部材36が車内側へ移動する。これにより、表示パネル1において、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量の変化が無くなるため、静電容量が変化する領域はプッシュ操作状態と比較して局所的になる。この静電容量の変化領域の減少によって、表示パネル1はノブ30のプッシュ操作の解除を検出できる。
【0069】
ノブ30を回転操作すると、ロータ25を介して第2伝達部材38が一緒に回転する。この際、付勢部材33によってノブ30は、ロータ25から離れた状態に保持されているため、第1伝達部材36もフィルム50から離れた状態に維持される。
【0070】
回転操作によって表示パネル1では、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量は変化せず、第2伝達部材38と対向する部分の静電容量だけが変化するが、変化する位置が軸線Aを中心として回転する。よって、表示パネル1は、ノブ30が回転する向き(時計回りか反時計回りか)を含めて、ノブ30の回転操作を検出できる。
【0071】
回転操作が止められると、ロータ25及び第2伝達部材38の回転も停止する。これにより、表示パネル1では、静電容量が変化する位置の移動が停止する。よって、表示パネル1は、ノブ30の回転操作の停止を検出できる。
【0072】
以上のように構成した第1実施形態の操作つまみ装置10は、以下の特徴を有する。
【0073】
接続部材41によって第1伝達部材36と第2伝達部材38が導通可能に接続されているため、これらの静電容量を大きくできる。具体的には、第1伝達部材36を表示パネル1が検出する際、第1伝達部材36の静電容量は第2伝達部材38の静電容量を加えた大きさになる。また、第2伝達部材38を表示パネル1が検出する際、第2伝達部材38の静電容量は第1伝達部材36の静電容量を加えた大きさになる。
【0074】
これにより、個々の伝達部材36,38の形状(静電容量に相当する体積)を過度に大きくする必要がないため、伝達部材36,38を小型化できる。また、伝達部材36,38の静電容量を大きくできるため、表示パネル1の検出性、つまりノブ操作の伝達性を向上できる。
【0075】
また、例えば特許文献1の操作つまみ装置における静電容量を大きくする構成、つまり導電材料で形成したノブを電気的に第1伝達部材および第2伝達部材に接続し、ノブに人体が接触することで、変化する静電容量を大きくする構成を必要としない。それだけでなく、例えばユーザが絶縁材料からなる手袋をしていても、伝達部材36,38によってノブ30の操作を表示パネル1が検出できる。
【0076】
第1伝達部材36と第2伝達部材38を接続する接続部材41は可撓性を有する。よって、簡単な構成で第1伝達部材36及び第2伝達部材38の相対移動、つまり第2伝達部材38に対する第1伝達部材36の進退移動を実現できる。また、第1伝達部材36と第2伝達部材38は、導電性を有するゴム又は樹脂よりも静電容量が大きい金属で形成されている。よって、伝達部材36,38の静電容量を容易に確保できる。
【0077】
射出成形による樹脂成形品の壁と比較して、フィルム50は薄くて電荷を通し易いため、導電性を有する第1伝達部材36又は第2伝達部材38によって変化する表示パネル1の静電容量を増大できる。よって、この点でも表示パネル1の検出性、つまりノブ操作の伝達性を向上できる。
【0078】
フィルム50によって第1伝達部材36及び第2伝達部材38が表示パネル1に接触しないため、ノブ30の操作による表示パネル1の損傷を防止できる。しかも、ノブ30のプッシュ操作時に、表示パネル1に第1伝達部材36が衝突することによる音を低減できる。
【0079】
(第2実施形態)
図10及び
図11は第2実施形態の操作つまみ装置に用いるロータ25及び伝達部材35を示す。図示していないホルダ、ノブ、付勢部材、リング部材、及びフィルムの構成は第1実施形態と同一である。
【0080】
第2実施形態では、導電性を有するゴムによって伝達部材35を構成する第1伝達部材(第1伝達部60a)60を構成し、この第1伝達部材60に一体構造で接続部60eを設けた点で、第1実施形態と相違する。また、第2実施形態では、ゴム製の第1伝達部材60をノブ30に取り付けるために、絶縁性を有する樹脂(例えばナイロン)からなる取付部材61が設けられている。
【0081】
図10及び
図11に示すように、第2実施形態のロータ25の第1端25aには、
図2Aに示すホルダ20の保持部20aに係止し、軸線Aに沿った車内側へのロータ25の移動を規制する係止片25pが設けられている。また、ロータ25の凹溝25jには、規制部30jに対応する貫通孔25qが設けられている。貫通孔25qは、軸線Aを中心として周方向に複数(本実施形態では3個)設けられている。
【0082】
図11に示すように、第1伝達部材60は、プッシュ操作を伝達する第1伝達部60aと、第2伝達部材38を導通可能に接続する一対の接続部60eとを一体に備える。第1伝達部材60は、導電性ゴムからなる。但し、第1伝達部材60は、導電性及び可撓性を有する材料であれば、樹脂製であってもよい。
【0083】
第1伝達部60aは、軸線Aに沿った方向から見てC字状の板体であり、第1端60bから第2端60cまで角度は概ね270度である。径方向における第1伝達部60aの幅、及び軸線Aに沿った方向における第1伝達部60aの厚みは、静電容量を大きくするために可能な限り大きくすることが好ましい。本実施形態では生産性を考慮して、幅を5mm、厚みを1mmとしている。
【0084】
第1伝達部60aは、取付手段によって取付部材61に取り付けられている。取付手段には、両面テープ及び接着剤等の接着部材による方式、圧入及び固定片等の機械的構造による方式を用いることができる。第1伝達部60aの内周部には、第1端60cから第2端60cまでの周方向中央に位置するように、位置決め突起60dが突設されている。
【0085】
接続部60eは、第1伝達部60aの第1端60b及び第2端60cから突出している。径方向における接続部60eの幅は、径方向における第1伝達部60aの幅よりも狭い。これにより、第1伝達部60aの弾性的な変形は抑制する一方、第1伝達部60aに連なる接続部60eの弾性的な変形を許容している。本実施形態では、軸線Aに沿った方向における接続部60eの厚みは、第1伝達部60aの厚みと同一にしているが、接続部60eの弾性的な変形を促進するために、第1伝達部60aの厚みよりも薄くしてもよい。
【0086】
一対の接続部60eの先端にはそれぞれ、第2伝達部材38に導通可能に接続するための接続端60fが設けられている。接続端60fは、軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、その直径は接続部60eの幅よりも大きい。接続端60fの中心には、厚さ方向に貫通した貫通孔60gが設けられている。第1伝達部60aの端60b,60cから接続端60fまでの長さは、ノブの非操作状態で、第1伝達部60aと第2伝達部材38の間に余剰部分を確保できる寸法設定である。
【0087】
図10及び
図11に示すように、取付部材61は、一対の接続部60e及び第2伝達部材38を配置する部分に切欠部61aを備える概ね円環状の板体である。取付部材61の直径及び径方向の幅は、ロータ25の凹溝25jに嵌まる大きさである。切欠部61aは、径方向の外側から内側に向けて扇型状に切り欠かれている。切欠部61aの径方向内側は、切り欠くことなく残存させた連続部61bである。つまり、取付部材61の内周部は、円環状に連続している。
【0088】
図11を参照すると、取付部材61において、周方向における切欠部61a以外の部分には、第1伝達部60aを配置する凹溝61cが設けられている。凹溝61cの周方向中央には、第1伝達部60aの位置決め突起60dと対応する位置決め溝61dが形成されている。凹溝61cの両端には、第1伝達部60aの第1端60b及び第2端60cに係止する一対の係止部61eがそれぞれ設けられている。一対の係止部61e間は、接続部60eを挿通する溝である。
【0089】
取付部材61には、
図2Aに示すノブ30のボス30eに締め付けるネジ37を貫通させる貫通部61fが設けられている。
図10を参照すると、取付部材61には、貫通部61fに隣接するように、車外側から車内側へ突出し、貫通孔25qを貫通した規制部30j間に配置される位置決め凸部61gが設けられている。位置決め凸部61gは、ノブ30に対して、軸線Aを中心とする取付部材61の相対移動(回転)を規制する。3個の位置決め凸部61gのうち、2個は軸線Aに沿った方向から見てH字状に突出するリブによって構成され、残りの1個は周方向に間隔をあけて突出する板状で一対のリブによって構成されている。
【0090】
図10及び
図11に示すように、第2伝達部材38は、第1伝達部材60とは別体に形成され、保持部材39を介して第1伝達部材60に一体化されている。第1実施形態と同様に、第2伝達部材38は、導電性を有する金属(例えば真鍮)からなる板体である。但し、第2伝達部材38は、導電性を有する材料であればゴム製又は樹脂製であってもよい。
【0091】
第2実施形態の第2伝達部材38は扇型状である。第2伝達部材38の四隅には、矩形状をなすように切り欠いた位置決め用の切欠部38aが設けられている。第2伝達部材38の中心には、ネジ62を貫通させる貫通部38bが設けられている。
【0092】
図12及び
図13に示すように、第2実施形態の保持部材39は、第2伝達部材38の形状に対応する扇型状の板体である。保持部材39の四隅には、切欠部38aに位置する位置決め用の凸部39fが設けられている。第1実施形態と同様に、保持部材39の車内側中央には、スプリング40の一端を配置する凸部39dが設けられている。
【0093】
保持部材39の車外側には、一対の接続部60eの先端をそれぞれ配置する一対の窪み39gが設けられている。窪み39gは、接続部60eにおいて、接続端60fを配置する円形状部分と、接続端60fの近傍を配置する矩形状部分とを備える。窪み39gの深さは、接続部60eの厚みよりも浅く、保持部材39の車外側端面から接続部60eが突出するように構成されている。窪み39gには、貫通孔60gを貫通する円柱状の突出部39hが設けられている。突出部39hの突出寸法は、窪み39gの深さよりも小さい。
【0094】
一対の窪み39g間には、ネジ62を締め付けるネジ孔39iが設けられている。ネジ孔39iは、円柱状の凸部39dの軸線と同軸に設けられている。窪み39gに接続部60eを配置した後、その外側に第2伝達部材38を配置し、貫通部38bを貫通させたネジ62をネジ孔39iに締め付ける。これにより、第2伝達部材38と保持部材39の間に接続部60eが圧接状態で挟み込まれることで、第1伝達部材60と第2伝達部材38の導通が確保される。
【0095】
このように構成した第2実施形態の操作つまみ装置の動作は、第1実施形態の操作つまみ装置と同様である。
【0096】
ノブの非操作状態(
図2A参照)では、取付部材61を介して第1伝達部60aがフィルムから離れて位置する。また、第2伝達部材38は、スプリング40の付勢によってフィルムに当接した位置に保持されている。よって、表示パネルにおいて、第1伝達部60aと対向する部分の静電容量は変化せず、第2伝達部材38と対向する部分の静電容量だけが変化する。但し、第2伝達部材38によって静電容量が変化する位置は、所定位置に維持されているため、表示パネルは、ノブが操作されていないことを検出できる。
【0097】
ノブをプッシュ操作すると(
図2B参照)、ノブの直動によって取付部材61と一体に第1伝達部60aがフィルムに接近又は接触する。よって、表示パネルの静電容量は、第2伝達部材38の対向部分に加え、第1伝達部60aと対向する部分も変化するため、表示パネルはノブのプッシュ操作を検出できる。ノブのプッシュ操作が止められると、付勢部材の付勢力によって取付部材61と一体に第1伝達部60aが車内側へ移動する。よって、表示パネルの静電容量が変化する領域が減少するため、表示パネルはノブのプッシュ操作の解除を検出できる。
【0098】
ノブを回転操作すると、第1伝達部材60と第2伝達部材38はロータ25と一緒に回転する。また、第1伝達部60aはフィルムから離れた状態に維持され、第2伝達部材38はスプリング40によってフィルムの近傍に位置する状態に維持される。表示パネルの静電容量は第2伝達部材38と対向する部分だけが変化するが、変化する位置が軸線Aを中心として回転するため、表示パネルはノブの回転操作を検出できる。回転操作が止められると、ロータ25及び第2伝達部材38の回転も停止するため、表示パネルはノブの回転操作の停止を検出できる。
【0099】
以上のように構成した第2実施形態の操作つまみ装置は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。つまり、接続部60eによって第1伝達部60aと第2伝達部材38が導通可能に接続されているため、これらの静電容量を大きくできる。よって、個々の伝達部材60,38の形状を過度に大きくする必要がないため、伝達部材60,38を小型化できる。また、伝達部材60,38の静電容量を大きくできるため、表示パネルの検出性、つまりノブ操作の伝達性を向上できる。
【0100】
第1伝達部材60(第1伝達部60a)はゴム製で、第2伝達部材38は金属製であり、接続部60eは第1伝達部60aと一体構造である。表示パネルに接離する第1伝達部60aが弾性を有するゴムで形成されているため、ノブのプッシュ操作時に表示パネルへの第1伝達部60aの衝突による音を低減できる。また、表示パネルと衝突しない第2伝達部材38が導電性ゴムよりも静電容量が大きい金属で形成されているため、伝達部材35の静電容量を確保したうえで、第1伝達部60aの衝突音を効果的に低減できる。
【0101】
仮にプッシュ操作時にノブ30が傾くことで、第1伝達部60aが少し傾いた状態で表示パネル1に接触した場合でも、ゴムで形成された第1伝達部60aの弾性変形によって、ノブ30の傾きを吸収できる。よって、表示パネル1に対する第1伝達部60aの接触面積を大きくすることができる。これにより、表示パネルによる第1伝達部60aの検出性を向上できる。
【0102】
(第3実施形態)
図14及び
図15は第3実施形態の操作つまみ装置の伝達部材65を示す。この伝達部材65以外の構成、つまりホルダ、ノブ、付勢部材、リング部材、及びフィルムの構成は第1実施形態と同一であり、ロータ、及び取付部材の構成は第2実施形態と同一である。
【0103】
図14及び
図15に示すように、伝達部材65は、プッシュ操作を伝達するための第1伝達部65a、回転操作を伝達するための第2伝達部65d、及びこれらを導通可能に接続する接続部65hを一体構造で備えている。伝達部材65は導電性ゴムによって形成されている。但し、伝達部材65は、導電性及び可撓性を有する材料であれば、樹脂製であってもよい。
【0104】
第1伝達部65aは、軸線Aに沿った方向から見てC字状の板体であり、第1端65bから第2端65cまで角度は概ね270度である。第1伝達部65aの内周部には、第1端65bから第2端65cまでの周方向中央に位置するように、位置決め突起(
図11参照)が突設されている。
【0105】
第2伝達部65dは扇型状の板体であり、四隅には矩形状をなすように切り欠いた位置決め用の切欠部65eが設けられている。第2伝達部65dの中心には車内側へ突出する軸部65fが設けられ、その先端に球状の圧入部65gが設けられている。
【0106】
接続部65hは、第1伝達部65aの第1端65b及び第2端65cからそれぞれ突出している。一対の接続部65hの先端は円形状の接続端65iであり、軸部65fの両側に位置するように、第2伝達部65dの車内側の面に連設されている。つまり、接続端65iは、第2伝達部65dに連なり、第2伝達部65dから車内側へ突出している。第1伝達部65aの端65b,65cから接続端65iまでの長さは、ノブの非操作状態で、第1伝達部65aと第2伝達部65dの間に余剰部分を確保できる寸法設定である。
【0107】
保持部材39は、第2伝達部65dの形状に対応する扇型状の板体であり、切欠部65eに対応する凸部39fを備える。保持部材39には、第2実施形態と同様に、凸部39d及び窪み39gが設けられている。但し、第3実施形態の窪み39gには、
図13に示す第2実施形態の突出部39hは設けられていない。また、保持部材39には、第2実施形態のネジ孔39iの代わりに、圧入部65gの直径よりも小さく、圧入部65gを圧入可能な取付孔39jが設けられている。
【0108】
このように構成した第3実施形態の操作つまみ装置の伝達部材65は、第2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、第1伝達部65a、第2伝達部65d、及び接続部65hがゴム製で一体構造であるため、部品点数を削減できるとともに、軽量化を図ることもできる。また、ノブのプッシュ操作時に表示パネルへの第1伝達部65aの衝突による音を効果的に低減できる。
【0109】
なお、本発明の操作つまみ装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、伝達部材を構成する第1伝達部、第2伝達部、及び接続部は、第1実施形態から第3実施形態に示す構成に限られず、必要に応じて変更が可能である。特に、接続部は、第2実施形態のように、第2伝達部とは別体で第1伝達部と一体に設けてもよいし、第1伝達部とは別体で第2伝達部と一体に設けてもよい。
【0111】
前記実施形態では、筒状のホルダ20の端をフィルム50によって覆ったが、ホルダ20に一体に設けた隔壁によって覆い、表示パネル1と伝達部材65との間に前記隔壁を介在させてもよい。導電性を有する接続部によって第1伝達部と第2伝達部を接続し、伝達部材による静電容量を大きくしたため、このようにしても、表示パネル1の検出性、つまり操作つまみ装置の伝達性を確保できる。また、第1伝達部60aを導電性ゴムによって形成した場合、表示パネル1に第1伝達部60aが衝突することによる音を低減できるため、フィルム50をなくしてもよい。
【0112】
本発明の操作つまみ装置10は、タッチ検出機能を備える表示パネル1を搭載した製品であれば、車載製品以外にも用いることができる。
【符号の説明】
【0113】
1 表示パネル
10 操作つまみ装置
20 ホルダ
20a 保持部
20b 突起
20c 係合溝
20d 段部
21 開口部
25 ロータ
25a 第1端
25b 第2端
25c フランジ部
25d 取付穴
25e 挿通孔
25f 配置部
25g 貫通孔
25h 第1位置決めリブ
25i 第2位置決めリブ
25j 凹溝
25k 取付部
25l 貫通孔
25m 凹部
25n 凹部
25o スライド溝
25p 係止片
25q 貫通孔
25r ブロック
26 開口部
27 スプリング
28 係合部材
30 ノブ
30a 内壁部
30b 外壁部
30c 端壁部
30d 開放部
30e ボス(連結部)
30f 保持部
30g 保持部
30j 規制部
31 開口部
33 付勢部材
33a 基部
33b 突出部
33c 頭部
35 伝達部材
36 第1伝達部材(第1伝達部)
36a 第1端
36b 第2端
36c 突出部
37 ネジ
38 第2伝達部材(第2伝達部)
38a 切欠部
38b 貫通部
39 保持部材
39a 窪み
39b 係止片
39c 爪部
39d 凸部
39e 挿通溝
39f 凸部
39g 窪み
39h 突出部
39i ネジ孔
39j 取付孔
40 スプリング
41 接続部材(接続部)
41a 第1接続端
41b 貫通孔
41c 第2接続端
45 リング部材
45a 基部
45b 突出部
46 開口部
50 フィルム
51 開口部
52a,52b,52c 接着層
55 スタビライザ
55a 基部
55b スライド部
55c 腕部
60 第1伝達部材
60a 第1伝達部
60b 第1端
60c 第2端
60d 位置決め突起
60e 接続部
60f 接続端
60g 貫通孔
61 取付部材
61a 切欠部
61b 連続部
61c 凹溝
61d 位置決め溝
61e 係止部
61f 貫通部
61g 位置決め凸部
62 ネジ
65 伝達部材
65a 第1伝達部
65b 第1端
65c 第2端
65d 第2伝達部
65e 切欠部
65f 軸部
65g 圧入部
65h 接続部
65i 接続端
A 軸線