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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびその架橋体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20240830BHJP
   C08F 236/20 20060101ALI20240830BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240830BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20240830BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08L23/04
C08F236/20
C08K5/14
C08K9/06
C08L61/12
C08L61/28
F16F1/36 B
F16F1/36 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020070939
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167381
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 清秀
(72)【発明者】
【氏名】末利 優樹
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119095(JP,A)
【文献】特開2013-133433(JP,A)
【文献】特開平06-322145(JP,A)
【文献】特開2002-220480(JP,A)
【文献】特開2004-245394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105694177(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08F 236/20
C08K 5/14
C08K 9/06
C08L 61/12
C08L 61/28
F16F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部と、
(B)ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ:2~400質量部と、
(C)レゾルシノール系化合物:0.1~30質量部と、
(D)メラミン樹脂:0.1~30質量部と、
架橋剤として
(E)有機過酸化物:0.1~15質量部と
を含有するゴム組成物であって、
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、エチレン(a1)に由来する構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位とを有し、且つ、下記(i)~(iv)の要件を満たすことを特徴とするゴム組成物:
【化1】
(i)エチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、50~100の範囲にある。
(iv)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gの範囲にある。
【請求項2】
前記レゾルシノール系化合物(C)が変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記メラミン樹脂(D)がホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物が架橋してなる架橋体。
【請求項5】
請求項4に記載の架橋体からなる防振ゴム。
【請求項6】
請求項4に記載の架橋体を含む、自動車部品用防振ゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその架橋体、より詳しくは、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含むゴム組成物およびその架橋体に係る。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などのジエン系ゴムは、耐動的疲労性及び動的特性に優れるゴムとして知られており、自動車タイヤ及び防振ゴム製品の原料ゴムとして使用されている。しかしながら、昨今、これらのゴム製品が使用される環境が大きく変化し、ゴム製品の耐熱性、耐候性の向上が求められている。そこで、機械的特性、耐動的疲労性及び動的特性に優れるジエン系ゴムと、耐熱性及び耐候性に優れるエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を防振ゴム製品等に用いる試みが従来種々検討されている。
【0003】
自動車において、防振ゴム製品は、エンジンから発生する振動、騒音が自動車室内に伝わるのを抑制するために用いられている。この防振ゴム製品は、マフラーを自動車本体に吊り下げるための部材であるマフラーハンガーの形でも用いられている。防振ゴム製品はエンジンの振動、騒音が自動車室内へ伝わらないよう高い防振特性が要求される。また、エンジンを支える役割も持つエンジンマウントでは高いゴム弾性も要求される。
【0004】
また、防振ゴム製品は、エンジンマウント等のほかに、マフラーを自動車本体に吊り下げるための部材であるマフラーハンガーの形でも用いられている。マフラーは排気管を介してエンジンと結合していることから、エンジンからの振動によりマフラーも振動する。もしこのようなマフラーを自動車本体に直結すると、エンジンからマフラーを介して伝わる振動により自動車本体が破損する恐れがある。そのため、多くの自動車において、マフラーは、マフラーハンガーを介して自動車本体に固定されているのであるのである。このことから、マフラーハンガーには、マフラーの荷重に耐えうるに十分な強度と、高い防振特性とが求められる。
【0005】
ここで、タイヤ及び防振ゴム製品などの用途では、動的特性(省エネルギー性、製品寿命等を決める因子)が重要視される。動的特性の指標の1つとして、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比である損失係数(tanδ)の値が挙げられ、このtanδの値が小さいほど動的特性が優れている。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の動的特性を向上させるためには、架橋密度を高くする必要がある。ところが、既存の技術では、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の動的特性をNR等のジエン系ゴムの動的特性と同等に合わせようとすると架橋密度が高くなりすぎ、結果として引張破断伸び等の機械的特性が悪くなり、動的特性との物性を両立させることはできなかった。そのため、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体について、高い動的特性と引張破断伸び等の機械的特性との両立を図るため、種々の試みがなされてきた。
【0006】
これに関連して、特許文献1は、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)などの特定の非共役ポリエンに由来する構成単位を有する特定のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を開示している。特許文献1には、このようなエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を使用すると、分子量が低くても、架橋密度が上がりやすく、架橋密度を上げても伸びが低下しないことが示されている。また、特許文献1には、このようなエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、特定のメタロセン触媒で重合することにより得ることができ、これにより長鎖分岐が少なくなり、その結果、架橋後の未反応ジエンが少なくなり、耐熱老化性が向上することも示されている。
【0007】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に特定の成分を添加することにより、高い動的特性と引張破断伸び等の機械的特性との両立を図ろうとする試みもなされている。例えば、特許文献2には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカとを特定の割合で含有する防振ゴム用組成物が開示されている。ここで、特許文献2には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカを配合することにより、動倍率とゴム弾性(圧縮永久歪み)を同時に大幅に改良できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/122495号
【文献】特開2018-119095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、ゴム組成物を製造するにあたり、ロール加工が多用されている。このロール加工において、(i)原料ゴムおよびその他の配合成分を、回転する一対のロールの間に投入し、ロールの表面に当該原料ゴムを巻き付ける工程と、(ii)当該原料ゴムを、ロールに巻き付いた状態で当該一対のロールの間を複数回通過される工程とが行われる。これらの工程を経て、ゴムの混練が行われ、ゴム組成物が得られる。ところが、ロール加工に際して、原料ゴムおよびその他の配合成分の配合内容、一対のロールの間隔、一対のロールの回転速度の比などの諸要因によっては、原料ゴムがロールの表面に密着せず、この表面から浮き上がることがある。このような現象は、バギングと呼ばれている。このようなバギングが発生すると、混練り効率が低下することがある。また、浮いた原料ゴムを、作業者が手でロールに押しつける必要が生じることもあり、作業の安全面でも問題となる。
【0010】
特許文献2に開示されている防振ゴム用組成物は、動倍率とゴム弾性(圧縮永久歪み)を同時に大幅に改良できる一方、ロール加工性、機械強度および耐熱老化性の点では、依然として改良の余地がある。
【0011】
本発明は、加工性、機械強度、伸びおよび耐熱老化性のバランスに優れる防振ゴムを与えることのできるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカを配合してなるゴム組成物に対して、さらに特定の接着剤成分を配合することにより、加工性、機械強度、伸び、耐熱老化性のバランスが取れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、下記[1]~[6]に係るものである。
[1]
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部と、
(B)ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ:2~400質量部と、
(C)レゾルシノール系化合物:0.1~30質量部と、
(D)メラミン樹脂:0.1~30質量部と、
架橋剤として
(E)有機過酸化物:0.1~15質量部と
を含有するゴム組成物であって、
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、エチレン(a1)に由来する構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位とを有し、且つ、下記(i)~(iv)の要件を満たすことを特徴とするゴム組成物:
【0014】
【化1】
【0015】
(i)エチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、5~100の範囲にある。
(iv)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gの範囲にある。
【0016】
[2]
前記レゾルシノール系化合物(C)が変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂である前記[1]に記載のゴム組成物。
[3]
前記メラミン樹脂(D)がホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物である前記[1]または[2]に記載のゴム組成物。
【0017】
[4]
前記[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物が架橋してなる架橋体。
[5]
前記[4]に記載の架橋体からなる防振ゴム。
[6]
前記[4]に記載の架橋体を含む、自動車部品用防振ゴム製品。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加工性、機械強度、伸びおよび耐熱老化性のバランスに優れる防振ゴムを与えることのできるゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
〔ゴム組成物〕
本発明に係るゴム組成物は、
(A)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部と、
(B)ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ:2~400質量部と、
(C)レゾルシノール系化合物:0.1~30質量部と、
(D)メラミン樹脂:0.1~30質量部と、
架橋剤として
(E)有機過酸化物:0.1~15質量部と
を含有する。
【0020】
ここで、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン(a1)に由来する構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位とを有し、且つ、下記(i)~(iv)の要件を満たす:
【0021】
【化2】
【0022】
(i)エチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、5~100の範囲にある。
(iv)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gの範囲にある。
【0023】
本明細書において、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部に対する各成分の質量部は、「phr」と呼ばれることがある。また、「phr」という表現は油展ゴムにおける油展量についても用いられる場合もあるが、その場合、油展ゴム中の構成ゴムの量100質量部に対して配合されているオイルの量を表す。
【0024】
なお、本明細書において、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、単に「共重合体(A)」と称することがあり、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ(B)は、単に「疎水性シリカ(B)」と称することがある。
【0025】
以下、本発明のゴム組成物、および、本発明のゴム組成物を構成する各構成成分について詳細に説明する。
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
本発明のゴム組成物を構成するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン(a1)に由来する構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位と、非共役ポリエン(a3)とに由来する構成単位とを有する。
【0026】
上記α-オレフィン(a2)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(A)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。
【0027】
上記α-オレフィン(a2)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。すなわち、上記共重合体(A)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0028】
上記非共役ポリエン(a3)としては、非共役不飽和結合を2個以上有する化合物であれば特に制限されないが、例えば下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む化合物が挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
上記非共役ポリエン(a3)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に過酸化物との反応性が良好で、重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから、非共役ポリエン(a3)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(a3)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(a3)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0031】
上記共重合体(A)は、上記(a1)、(a2)、(a3)に由来する構造単位に加えて、さらに上記般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0032】
上記非共役ポリエン(a4)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に硫黄や加硫促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(a4)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0033】
上記共重合体(A)が、上記非共役ポリエン(a4)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0034】
上記共重合体(A)は、下記(i)~(v)の要件(以下、それぞれ要件(i)~(v)とも記す。)を満たす。
(i)エチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(a3)の分子量((a3)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(a3)の重量分率/100/(a3)の分子量≦40 …(1)
(iv)レオメーターを用いた線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率((a3)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(a3)の重量分率×6 …(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) …(3)
【0035】
≪要件(i)≫
要件(i)は、上記共重合体(A)中のエチレン(a1)/α-オレフィン(a2)のモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22である。
要件(i)を満たす共重合体(A)を用いることにより、ゴム弾性、機械的強度および柔軟性に優れた防振ゴムを得ることができる。なお、共重合体(A)中のエチレン量(エチレン(a1)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(a2)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0036】
≪要件(ii)≫
要件(ii)は、上記共重合体(A)中において、非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率が、共重合体(A)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
要件(ii)を満たす共重合体(A)は、充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなり、また、過酸化物を用いて架橋した場合、早い架橋速度を示すものとなる。なお、共重合体(A)中の非共役ポリエン(a3)量(非共役ポリエン(a3)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0037】
≪要件(iii)≫
要件(iii)は、上記共重合体(A)において、共重合体(A)の125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、5~100の範囲にあることを特定するものである。共重合体(A)の125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)は、好ましくは20~95、より好ましくは50~90である。
上記共重合体(A)が、要件(iii)を満たすことにより、加工性および流動性が良好となり、優れたゴム物性を示し、また良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示す傾向にある。ムーニー粘度は、ムーニー粘度計(例えば、(株)島津製作所製SMV202型ムーニービスコメータ)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定することができる。
【0038】
≪要件(iv)≫
要件(iv)は、上記共重合体(A)の、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~5dL/gの範囲にあることを特定するものである。共重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.5~5.0dL/g、より好ましくは0.9~4.0dL/gである。[η]が上記範囲にある共重合体(A)は、成形加工性に優れる傾向にある。
【0039】
[η]は、具体的には以下のように測定する。共重合体(S)約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として採用する。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0040】
≪共重合体(A)の製造方法≫
上記共重合体(A)は、エチレン(a1)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)と、非共役ポリエン(a3)と、必要に応じて非共役ポリエン(a4)とからなるモノマーを共重合して製造することができる。
【0041】
上記共重合体(A)は、上記要件(i)~(iv)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
上記共重合体(A)は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号に記載の方法を採用することにより製造することができる。
【0042】
上記メタロセン化合物の例として、国際公開第2015/122495号に「メタロセン化合物」の項で例示されている化合物、すなわち、無置換シクロペンタジエニル基または置換基を有するペンタジエニル基と、無置換フルオレニル基または置換基を有するフルオレニル基とが、ジアリールメチレン基またはジアリールシリレン基を介して互いに連結してなる構造を有する配位子を有する特定のメタロセン化合物が挙げられる。本発明の特に好適な態様において用いられるメタロセン化合物の例として、下記に示す構造式で表されるジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(下記(A))、および、ジ(p-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(下記(B))メタロセン化合物が挙げられる。
【0043】
【化4】
【0044】
また、メタロセン化合物のほかの例として、上記例示の化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子に置き換えた化合物、あるいは上記化合物のシクロペンタジエニル基を3-メチルシクロペンタジエニル基、3-フェニルシクロペンタジエニル基、3-t-ブチルシクロペンタジエニル基、3-t-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル基、3-t-ブチル-5-エチルシクロペンタジエニル基、3,5-ジメチルシクロペンタジエニル基に置き換えた化合物、あるいは上記化合物の塩素原子をメチル基、ベンジル基に置き換えた化合物、あるいはこれらの組み合わせ等が挙げられるがこれらに限定されるものでもない。
【0045】
上記メタロセン化合物は、1種単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせても良い。
また、メタロセン化合物を含む触媒として、
(a)上記メタロセン化合物と、
(b)(b-1)有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(b-3)該メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「イオン化イオン性化合物」ともいう。)と、さらに必要に応じて、
(c)担体と
から構成される触媒(以下「メタロセン触媒」ともいう。)が挙げられる。
【0046】
このうち、上記有機金属化合物(b-1)としては、国際公開第2015/122495号に有機金属化合物(b-1)として記載されている各種化合物が挙げられる。本発明の特に好適な態様において用いられる有機金属化合物(b-1)の例として、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。このような有機金属化合物(b-1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0047】
上記有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)としては、国際公開第2015/122495号に有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)として記載されている各種化合物が挙げられる。すなわち、上記有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0048】
上記イオン化イオン性化合物(b-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。本発明の特に好適な態様において用いられるイオン化イオン性化合物(b-3)の例として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。このようなイオン化イオン性化合物(b-3)は、1種単独でまたは2種以上を組み合せて用いることできる。
【0049】
本発明において、触媒として、上記メタロセン化合物(a)と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機金属化合物(b-1)、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)、およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(b-3)とを含むメタロセン触媒を用いると、上記共重合体(A)の製造に際して非常に高い重合活性を示すことができる。
【0050】
また、上記メタロセン触媒は、必要に応じて、担体(c)をさらに含んでいてもよい。
本発明で、必要に応じて用いられる担体(c)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体であり、その例として、国際公開第2015/122495号に担体(c)として記載されている各種無機化合物および有機化合物が挙げられる。
【0051】
本発明に使用されるメタロセン触媒は、メタロセン化合物(a)と、(b-1)有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(b-3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)と、必要に応じて用いられる担体(c)と共に、必要に応じて有機化合物成分(d)を含むこともできる。
【0052】
本発明において、有機化合物成分(d)は、必要に応じて重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0053】
上記のようなメタロセン触媒を用いて、エチレン(a1)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)と、非共役ポリエン(a3)と、必要に応じて非共役ポリエン(a4)とからなるモノマーを共重合させる際、前述したメタロセン触媒を構成する各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、下記(1)~(5)のような方法が例示される。
(1)メタロセン化合物(a)を単独で重合器に添加する方法。
(2)メタロセン化合物(a)および化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)メタロセン化合物(a)を担体(c)に担持した触媒成分、化合物(b)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)化合物(b)を担体(c)に担持した触媒成分、メタロセン化合物(a)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)メタロセン化合物(a)と化合物(b)とを担体(c)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0054】
上記(2)~(5)の各方法においては、化合物(a)、化合物(b)、担体(c)の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。
化合物(b)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない化合物(b)を、任意の順序で添加してもよい。この場合化合物(b)
は、担体(c)に担持されている化合物(b)と同一でも異なっていてもよい。
【0055】
また、上記の担体(c)にメタロセン化合物(a)が担持された固体触媒成分、担体(c)にメタロセン化合物(a)および化合物(b)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0056】
上記共重合体(A)は、上記のようなメタロセン触媒の存在下に、モノマーを共重合することにより好適に得ることができる。
上記のようなメタロセン触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、メタロセン化合物(a)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-8モルになるような量で用いられる。
【0057】
化合物(b-1)は、化合物(b-1)と、メタロセン化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-1)/M〕が、通常0.01~50000、好ましくは0.05~10000となるような量で用いられる。化合物(b-2)は、化合物(b-2)中のアルミニウム原子と、メタロセン化合物(a)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-2)/M〕が、通常10~50000、好ましくは20~10000となるような量で用いられる。化合物(b-3)は、化合物(b-3)と、メタロセン化合物(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(b-3)/M〕が、通常1~20、好ましくは1~15となるような量で用いられる。
【0058】
本発明において、共重合体(A)を製造する方法は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0059】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用い、上記メタロセン触媒の存在下に、エチレン(a1)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(a2)と、非共役ポリエン(a3)および必要に応じて非共役ポリエン(a4)とからなるモノマーを共重合し、共重合体(A)の重合反応液を得る工程である。
なお、重合溶媒に対する共重合体(A)の濃度が上記範囲を超える場合、重合溶液の粘度が高すぎるため、溶液が均一に攪拌せず、重合反応が困難な場合がある。
【0060】
重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。なお、これらのうち、得られる共重合体(A)との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0061】
また、重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~+200℃の範囲、より好ましくは、+80~+200℃の範囲であり、用いるメタロセン触媒系の到達分子量、重合活性によるが、より高温(+80℃以上)であることが触媒活性、共重合性および生産性の観点から望ましい。
【0062】
重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0063】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間である。
【0064】
得られる共重合体(A)の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(b)の量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。
【0065】
また、エチレン(a1)と上記α-オレフィン(a2)との仕込みのモル比((a1)/(a2))は、好ましくは40/60~99.9/0.1、より好ましくは50/50~90/10、さらに好ましくは55/45~85/15、最も好ましくは55/45~78/22である。
【0066】
非共役ポリエン(a3)の仕込み量は、エチレン(a1)と、α-オレフィン(a2)と、非共役ポリエン(a3)との合計(全モノマー仕込み量)100重量%に対して、通常0.07~10重量%、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
【0067】
<疎水性シリカ(B)>
本発明のゴム組成物は、疎水性シリカ(B)を含有する。本発明で用いられる疎水性シリカ(B)は、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたものである。このような疎水性シリカ(B)を用いることにより、得られる防振ゴムの動倍率および圧縮永久歪を改善することができる。
【0068】
上記疎水性シリカ(B)の平均粒子径は、好ましくは1~50nm、より好ましくは2~45nm、さらに好ましくは5~40nmである。平均粒子径が前記範囲内であると、組成物中における疎水性シリカ(B)の分散性に優れる。また、上記疎水性シリカ(B)の比表面積(BED法)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100~400m2/gである。
【0069】
上記表面処理前のシリカとしては、公知の方法で製造されたものを用いることできるが、乾式法又は高温加水分解法により製造されたものが好ましい。また、ヘキサメチルジシラザンによる表面処理の方法としては特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
上記疎水性シリカ(B)の市販品としては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルシリーズのRX50、RX200、RX300、R8200、NX90Sなどが挙げられる。
【0070】
本発明のゴム組成物における疎水性シリカ(B)の含有量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、2~400質量部、好ましくは5~60質量部、より好ましくは10~50質量部の範囲である。疎水性シリカ(B)の含有量が前記範囲内であることにより、動倍率および圧縮永久歪の改善効果が優れる。
【0071】
<レゾルシノール系化合物(C)>
本発明のゴム組成物は、レゾルシノール系化合物(C)を含有する。本発明において、レゾルシノール系化合物(C)は、ゴム組成物のロール加工性を向上させるとともに、得られる防振ゴムの伸び特性を向上させるために用いられる。本発明で用いられるレゾルシノール系化合物(C)は、主に接着剤として作用するものであれば特に限定はなく、例えば、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド(RF)樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、蒸散性、吸湿性、ゴムとの相溶性の点で、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が好適に用いられる。
【0072】
上記変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、下記の一般式(C1)または(C3)で表されるものがあげられる。このなかでも、下記の一般式(C1)で表されるものが特に好ましい。
【0073】
【化5】
(式中、Rは炭化水素基を示し、nは正数である。)
【0075】
【化7】
(式中、nは正数である。)
【0076】
これらレゾルシノール系化合物(C)は、田岡化学工業社から商品名:スミカノール620(変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂)として、製造販売されている。
本発明のゴム組成物におけるレゾルシノール系化合物(C)の含有量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、0.1~30質量部、好ましくは(0.1~20)質量部、より好ましくは(0.5~10)質量部の範囲である。レゾルシノール系化合物(C)の含有量が前記範囲内であることにより、コストアップを抑えながらロール加工性を十分に高くすることができる。
【0077】
<メラミン樹脂(D)>
本発明のゴム組成物は、上記レゾルシノール系化合物(C)に加えて、さらにメラミン樹脂(D)を含有する。本発明で用いられるメラミン樹脂(D)は、主に接着助剤として作用するものであれば特に限定はなく、例えば、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、蒸散性、吸湿性、ゴムとの相溶性の点で、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好適に用いられる。
上記ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、例えば、下記の一般式(D1)で表されるものが好適に用いられる。
【0078】
【化8】
(式中、nは正数である。)
【0079】
本発明に係るメラミン樹脂(D)のなかでも、上記一般式(D1)で表される化合物の混合物が好ましく、n=1の化合物が43~44重量%、n=2の化合物が27~30重量%、n=3の化合物が26~30重量%の混合物が特に好ましい。
【0080】
これらメラミン樹脂(D)としては、田岡化学工業社から商品名:スミカノール507AP(ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物)として、製造販売されている。
本発明のゴム組成物におけるメラミン樹脂(D)の含有量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、0.1~30質量部、好ましくは(0.1~20)質量部、より好ましくは(0.5~10)質量部の範囲である。
【0081】
また、上記レゾルシノール系化合物(C)に対するメラミン樹脂(D)の量は、一定以上の引張強さおよび伸びを有する防振ゴムを得る観点からはある程度多い方が好ましいが、過度に多いとコストアップにつながることがある。このことから、メラミン樹脂(D)との配合比は、レゾルシノール系化合物(C)とメラミン樹脂(D)との質量比で、1/0.5~1/2の範囲が好ましく、1/0.77~1/1.5の範囲が特に好ましい。
【0082】
<有機過酸化物(E)>
本発明のゴム組成物は、架橋剤として、有機過酸化物(E)を含有する。本発明で用いられる有機過酸化物(E)としては、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。
【0083】
具体的には、
ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルヒドロペルオキシド等のアルキルペルオキシド類;
t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシマレイン酸、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシフタレート等のペルオキシエステル類;
ジシクロヘキサノンペルオキシド等のケトンペルオキシド類などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、1分半減期温度が130~200℃である有機過酸化物が好ましく、たとえばジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシドおよびt-ブチルヒドロペルオキシドなどが好ましい。
【0084】
本発明のゴム組成物における有機過酸化物(E)の含有量は、充分な架橋により目的とする物性を得るとともに、過剰の分解生成物による悪影響の防止およびコストの点から、上記共重合体(A)100質量部に対して、0.1~15質量部、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~8質量部の範囲である。
【0085】
<その他の成分>
本発明の組成物は、上述した成分(A)~(C)以外にも、本発明の目的が損なわれない限り、それ自体公知のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、カーボンブラック、軟化剤、老化防止剤、架橋助剤、架橋促進剤、充填剤、加工助剤、活性剤、酸化防止剤、発泡剤、可塑剤、粘着付与剤等を適宜配合することができる。
【0086】
≪α,β-不飽和有機酸の金属塩≫
本発明の組成物が、α,β-不飽和有機酸の金属塩を含有すると、組成物の耐動的疲労性と耐摩耗性とをバランスよく向上させることができる。
【0087】
α,β-不飽和有機酸の金属塩としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、エタクリル酸、ビニル-アクリル酸、イタコン酸、メチルイタコン酸、アコニチン酸、メチルアコニチン酸、クロトン酸、アルファ-メチルクロトン酸、桂皮酸および2、4-ジヒドロキシ桂皮酸のような酸の金属塩である。これらの塩は亜鉛、カドミウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはアルミニウム塩であることができるが、特には亜鉛塩であることが好ましい。好ましいα,β-不飽和有機酸の金属塩としては、ジアクリル酸亜鉛およびジメタクリル酸亜鉛であり、特に好ましくはジメタクリル酸亜鉛である。α,β-不飽和有機酸の金属塩は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0088】
α,β-不飽和有機酸の金属塩は、上記共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5~30質量部、より好ましくは5~25質量部、特に好ましくは7~20質量部の範囲で用いられる。
【0089】
≪カーボンブラック≫
本発明の組成物が、特定量のカーボンブラックを含有すると、組成物の加工性を向上させ、しかも引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上したゴム組成物を得ることができる。
【0090】
カーボンブラックとしては、例えば、旭#55G、旭#60G(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT、G-SO等)(以上、東海カーボン(株)製)などの公知のものを使用することができる。これらは、単独で使用することもできるし、併用することもできる。また、シランカップリング剤などで表面処理したものを使用することもできる。
【0091】
カーボンブラックは、上記共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.5~50質量部、特に好ましくは1~20質量部の範囲で用いられる。カーボンブラックの配合量が前記範囲内にあれば、動倍率(動的弾性率/静的弾性率)、加工性、機械的性質等に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0092】
≪軟化剤≫
軟化剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などが挙げられる。なかでも石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルがより好ましく、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等がさらに好ましく、パラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。これらの軟化剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0093】
軟化剤は上記共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは20~150質量部、より好ましくは20~80質量部、特に好ましくは20~70質量部の範囲で用いられる。軟化剤の配合量が前記範囲内にあれば、タックが少なく、加工性、耐熱老化性、機械的性質等に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0094】
≪老化防止剤≫
老化防止剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の老化防止剤を用いることができる。具体的には、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤などが挙げられる。
【0095】
イオウ系老化防止剤の例として、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0096】
フェノール系老化防止剤の例として、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
【0097】
アミン系老化防止剤の例として、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤が挙げられる。
本発明において、老化防止剤は、単独で用いてもよいが、高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0098】
本発明において、イオウ系老化防止剤は、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、特に好ましくは0.2~6質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でイオウ系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0099】
フェノール系老化防止剤は、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、特に好ましくは0.5~3質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でフェノール系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0100】
アミン系老化防止剤は、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、特に好ましくは0.2~3質量部の範囲で用いられる。前記範囲でアミン系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0101】
≪架橋助剤≫
架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p- キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して好ましくは0.5~2モル、より好ましくは約等モルの量で用いられる。
【0102】
≪充填剤≫
充填剤としては、例えば、シリカ、微粉ケイ酸、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような充填剤は、共重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1~500質量部、より好ましくは1~400質量部、さらに好ましくは1~300質量部の範囲で用いられる。充填剤の配合量が前記範囲内であると、防振ゴムの引張強度、引裂強度、耐摩耗性等の機械的性質を向上させることができる。
【0103】
≪加工助剤≫
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。加工助剤は、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れる。
【0104】
≪活性剤≫
活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;ジ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが挙げられる。これらの活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。活性剤は、共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.2~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部の範囲で適宜配合することができる。
【0105】
<ゴム組成物の調製>
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を、公知の方法により逐次または同時に配合することにより調製することができる。本発明の典型的な態様において、本発明のゴム組成物の調製方法は、上記共重合体(A)と、上記疎水性シリカ(B)と、上記レゾルシノール系化合物(C)と、上記メラミン樹脂(D)と、上記有機過酸化物(E)とを含む混合物を混練する工程(混練工程)を含んでいる。この混合物には、上記「その他の成分」がさらに含まれていても良い。
【0106】
ここで、上記混練工程に供される上記共重合体(A)は、共重合体(A)とオイルとからなる油展ゴムの形態を有していても良い。その場合、上記混合物を構成する各成分の質量部は、当該油展ゴム中の構成ゴムの量(すなわち、共重合体(A)自体の量)が基準となる。
【0107】
本発明のゴム組成物は、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、上述した各成分を、好ましくは80~190℃、より好ましくは80~170℃の温度で、好ましくは2~20分間、より好ましくは3~10分間混練した後、オープンロールのようなロール類またはニーダーを用いて、ロール温度40~80℃で3~30分間混練した後、混練物を押出し/分出しすることにより調製することができる。また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、加硫促進剤などを同時に混練してもよい。
【0108】
本発明のゴム組成物の調製方法は、前記混練工程により得られるゴム組成物(以下、「未架橋のゴム組成物」と呼ばれる場合がある。)を、意図する形状に成形する工程(成形工程)をさらに含んでいても良い。この成形工程における成形は、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機などを用いる種々の成形法によって行うことができる。
前記混練工程と前記成形工程とは、それぞれ別個に行われても良く、あるいは、連続的に行われても良い。
【0109】
〔架橋体および防振ゴム〕
本発明の架橋体は、本発明のゴム組成物が架橋してなるもの、すなわち、本発明のゴム組成物の架橋体である。
【0110】
本発明の架橋体は、本発明のゴム組成物を架橋することにより得ることができる。本発明のゴム組成物から架橋体を製造するには、公知のゴム組成物を架橋するときと同様に、未架橋のゴム組成物を一度調製し、次いで、このゴム組成物を意図する形状に成形した後に架橋を行えばよい。
【0111】
このような本発明の架橋体は、防振ゴムとして用いることができる。見方を変えると、本発明の防振ゴムは、本発明のゴム組成物の架橋体からなる。このことから、本発明の架橋体の製造方法、および、本発明の防振ゴムの製造方法は、本発明のゴム組成物を架橋する工程(架橋工程)を含む。
【0112】
上記架橋は、100~270℃の温度で1~40分間加熱するか、あるいは、光、γ線、電子線などの放射線を照射することにより行うことができる。また、常温で架橋することもできる。
【0113】
上記架橋工程は、上記「ゴム組成物の調製」で上述した混練工程および成形工程とは別個に行われても良く、あるいは、連続的に行われても良い。例えば、架橋工程は、上記成形工程と合わせた一連の工程として行われていても良い。この場合、例えば、上記混練工程で得られた未架橋のゴム組成物は、種々の成形法により意図する形状に成形され、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入した後に上記架橋に供せられる。また、上記混練工程、上記成形工程および上記架橋工程のすべてが一連の工程として行われていても良い。
【0114】
上記架橋工程は、金型を用いて行ってもよいし、また金型を用いないで行ってもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)等の加熱槽を用いる方法などが挙げられる。
【0115】
本発明の防振ゴムは、自動車部品用防振ゴム製品に好適に用いることができる。すなわち、本発明の自動車部品用防振ゴム製品は、本発明のゴム組成物の架橋体を含む。本発明の自動車部品用防振ゴム製品の具体例として、エンジンマウントおよびマフラーハンガーが挙げられる。
【実施例
【0116】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における各物性の評価方法は次の通りである。
【0117】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の組成>
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の、各構成単位の重量分率(重量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0118】
<極限粘度>
極限粘度[η]は、(株)離合社製 全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0119】
<ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)>
125℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)125℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型ムーニービスコメータ)を用いて、125℃の条件下で測定した。
【0120】
<加硫ゴム物性>
(1)硬さ試験(デュロ-A硬度)
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmの加硫ゴムシート6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0121】
(2)引張試験
実施例および比較例で得た加硫ゴムシートを打抜いてJIS K 6251(2001年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製した。この試験片を用いて同JIS K 6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、25%モジュラス(M25)、50%モジュラス(M50)、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0122】
<耐熱老化性(引張)>
(硬さ試験(ショア-A硬度))
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0123】
(耐熱老化性試験)
JIS K 6257に従って、耐熱老化性試験を行った。すなわち、シートを200℃のオーブン中に70時間入れて老化させた後、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。また、前記(硬さ試験(ショア-A硬度))の項と同様の方法で、硬度を測定した。
【0124】
[製造例1]エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造
連続重合装置を用いて、以下のようにしてエチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)共重合体(A-1)の製造を行った。
【0125】
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C65)3CB(C65)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0126】
前記重合反応器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器に供給した。このとき、排出ラインには重合禁止剤であるエタノールを、前記重合反応器から抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0127】
前記相分離器において、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下相部)と少量のポリマーを含む希薄相(上相部)とに分離した。
【0128】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで熱交換器Kに導き、さらにホッパー内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0129】
得られた共重合体(A-1)の物性を前記記載の方法で測定した。共重合体(A-1)のムーニー粘度ML(1+4)125℃は69であり、モル比(エチレン単位/プロピレン単位)は70/30であり、VNB単位の含有割合は1.4質量%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.8dL/gであった。なお、得られた共重合体(A-1)の分子量分布は二峰性を示した。
【0130】
下記実施例および比較例においては、エチレン・プロピレン・VNB共重合体として、上記共重合体(A-1)100質量部に対して、液状エチレン・プロピレン共重合体(100℃動粘度:2000 mm2/s)15質量部を配合してなる油展ゴム(以下「油展ゴム(Ao-1)」)を使用した。
【0131】
[実施例1]
(未架橋のゴム配合物の調製)
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得た油展ゴム(Ao-1) 115質量部を1分間素練りし、次いでこれに、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ(商品名:アエロジルRX200;日本アエロジル(株)製) 40質量部、活性亜鉛華(商品名:META-Z 102;井上石灰工業(株)製) 5質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:Irganox 1010;BASF社製) 2質量部、2-メルカプトベンズイミダゾール(商品名:サンダントMB;三新化学工業(株)製) 4質量部、パラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスPW-380;出光興産(株)製) 25質量部、および、ステアリン酸 1質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、配合物Aを得た。
【0132】
配合物Aの組成を表1に示す。ここで、表1において、油展ゴム(Ao-1)の配合量につき、上段に示された値は、油展ゴムとしての全体量を表し、下段に括弧つきの斜体で示された値は、共重合体成分量(すなわち、油展ゴムとしての全体量から当該油展ゴムに含まれるオイルの量を除いた残りの量)を表す。
【0133】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物Aを、8インチロール(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm、前ロールと後ロールとの間隔5mm)に巻き付けて、これに、架橋剤(E)として、ジクミルパーオキシド(DCP-40C、化薬アクゾ社製)を6.8質量部と、レゾルシノール系化合物(C)として、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、田岡化学工業社製)を1.5質量部と、メラミン樹脂(D)として、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507AP、田岡化学工業社製)を1.5質量部とを加え10分間混練して未架橋のゴム配合物(配合物B)を得た。
【0134】
(ロール加工性の評価)
ロール加工性の評価は、以下のように行った。
第二段階において、前ロールの表面温度を20℃に、後ロールの表面温度を20℃に、前ロールの回転数を18rpmに、後ロールの回転数を15rpmに変更した以外は、上記「未架橋のゴム配合物の調製」と同様に、未架橋のゴム配合物の調製を試みた。ここで、第二段階の混練を、前ロールと後ロールとの間隔を5mmとした状態で試み、その際、配合物Aがロールに巻き付くかどうかについて、以下の評点に基づき評価を行った:
評点1:配合物Aがロールに全く巻き付かず、すぐにバギングが起こる。
評点2:配合物Aがロールに一時的には巻き付くが、すぐにロール表面から剥離しバギングが起こる。
評点3:配合物Aがロールに巻き付き、度々(10秒に1回)バンク部分からの剥離が発生するが、バギングは起こらない。
評点4:配合物Aがロールに巻き付き、ごくまれに(30秒に1回)バンク部分からの剥離が発生するが、バギングは起こらない。
評点5:配合物Aがロールに巻き付き、バンク部分からの剥離が全く発生せず、バギングも起こらない。
結果を、表1に示す。
【0135】
(加硫ゴムシートの調製)
上記「未架橋のゴム配合物の調製」で得られた配合物Bをシート状に分出し、厚さ2mmの未架橋シートを調製した。得られた厚さ2mmの未架橋シートを、100トンプレス成形機を用いて170℃で15分間プレスし、厚み2mmの加硫ゴムシートを調製した。これを用いて、加硫ゴム物性の評価、および、耐熱老化性(引張)の測定を行った。結果を表2に示す。
【0136】
[比較例1]
実施例1において、第一段階および第二段階で配合する各成分の種類および量を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、上記「未架橋のゴム配合物の調製」、上記「ロール加工性の評価」、および、上記「加硫ゴムシートの調製」を行い、評価を行った。
結果を表1および表2に示す。ここで、下記表1において、「シーストG-SO」とあるのは、カーボンブラック(シーストG-SO、東海カーボン(株)社製)を指す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】