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特許7546383コンクリート構造物の剥落防止材及び剥落防止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の剥落防止材及び剥落防止構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20240830BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240830BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E21D11/38 A
E04G23/02 A
E21D11/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020102428
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021036122
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019151974
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】出蔵 貴司
(72)【発明者】
【氏名】加納 拓磨
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205987(JP,A)
【文献】特開2009-052390(JP,A)
【文献】実開昭60-032499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
E04G 23/02
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の剥落防止材であって、
シート本体と、前記シート本体の背面に間隔を隔ててシート本体の長手方向に沿って一体に突設した形状弾性を有する複数の導水補強リブと、を有し、コンクリート小片の捕捉機能と導水機能を兼備した排水シートと、
前記シート本体の前面に沿って配置し、升目を形成するように複数の縦桟と複数の横桟とを格子状に組み合わせて形成し、コンクリート片の捕捉機能と排水シートの分散支圧機能を兼備した格子材と、を備え、
前記排水シートとコンクリート面との間に、コンクリート面に押圧する隣り合う導水補強リブとコンクリート面によって包囲された複数の導水路を形成し、
前記格子材の升目寸法が前記排水シートの導水補強リブの間隔より大きい寸法関係にあることを特徴とする、
剥落防止材。
【請求項2】
前記シート本体が、前記導水補強リブを有する導水部と、前記導水補強リブを有さない封止部からなり、前記封止部を、前記シート本体の幅方向の少なくとも一側に沿って帯状に設けたことを特徴とする、請求項1に記載の剥落防止材。
【請求項3】
前記封止部を、前記シート本体の幅方向両側に沿って帯状に設けたことを特徴とする、請求項2に記載の剥落防止材。
【請求項4】
前記封止部を、更に前記シート本体の長手方向の少なくとも一側に沿って帯状に設けたことを特徴とする、請求項2又は3に記載の剥落防止材。
【請求項5】
前記格子材の縦桟の延在方向が、前記導水補強リブの延在方向と平行であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の剥落防止材。
【請求項6】
前記排水シートが透明又は半透明であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の剥落防止材。
【請求項7】
背面をコンクリート構造物のコンクリート面と対向させ、前記コンクリート面に沿って配置した、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の剥落防止材と、
前記格子材の前面に配置した複数の固定部材と、
先端が前記コンクリート構造物内に配置し、頭部が前記コンクリート面から突出して前記剥落防止材と前記固定部材を連通した複数のアンカー材と、を備え、
前記剥離防止材とコンクリート面との間に隣り合う導水補強リブとコンクリート面によって包囲された複数の導水路を形成するように、前記固定部材による前記格子材の支圧を介して、前記剥落防止材を構成する複数の導水補強リブの先端をコンクリート面に押圧させて前記コンクリート面に固定し
前記排水シートでコンクリート小片を捕捉しつつ、前記格子材でコンクリート小片より大きいコンクリート片を捕捉することを特徴とする、
コンクリート構造物の剥落防止構造。
【請求項8】
前記固定部材が中央にボルト孔を有する矩形の板状体からなり、前記固定部材が前記格子材の升目より大きいことを特徴とする、請求項7に記載のコンクリート構造物の剥落防止構造。
【請求項9】
前記排水シートの隣り合う前記導水補強リブの間隔と、前記格子材の隣り合う縦桟の間隔が略同一であり、前記縦桟が隣り合う前記導水補強リブの中間に位置することを特徴とする、請求項7又は8に記載のコンクリート構造物の剥落防止構造。
【請求項10】
前記排水シートの側端から所定の範囲に位置する前記導水補強リブを、前記排水シートの中央方向に傾斜させて突設することを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の剥落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物の剥落防止材及び剥落防止構造に関し、特に、簡易な構造でありながらコンクリート面に確実に固定でき、導水機能を備えながら端部処理を要さずに連結可能なコンクリート構造物の剥落防止材、及びこれを用いた剥落防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや高架橋等のコンクリート構造物において、経年や損傷などの原因によってコンクリート面の表層が劣化して破壊され、コンクリート面からコンクリート片が剥落する事故が発生している。このため、コンクリート片の剥落を防止するための様々な工法や構造が開発されている。
特許文献1には、FRP格子筋をアンカーボルトを介してコンクリート面に固定するとともに、FRP格子筋とコンクリート面との間に、FRP格子筋の升目より小さい升目を有したシート状の網状物と、導水フィルムを設けることにより、コンクリート面に沿ってFRP格子筋、網状物、及び導水フィルムを敷設する、剥落防止材が開示されている。
この剥落防止材は、FRP格子筋によって大きなコンクリート片の落下を防ぎ、網状物によって小さなコンクリート片の落下を防ぐとともに、コンクリート面に沿って敷設した導水フィルムによって、コンクリート面から染み出た漏水を下方へと誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-141566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には、次のような課題がある。
<1>車両の通行による振動や風圧などによって、アンカーボルトのナットが緩みやすい。ナットが緩むことで剥落防止機能が損なわれたり、端部の止水機能が損なわれ、端部やボルト孔の隙間から漏水するおそれがある。
<2>コンクリート面からの漏水が導水フィルムの表面に沿って自由に流れるため、導水フィルムの両側端部から水漏れするおそれがある。これを防ぐためには、導水フィルムの両側端部に止水パッキン等による端部処理を行う必要がある。
<3>FRP格子筋、網状物、導水フィルムの3部材の組み合わせからなり、止水のための端部処理も必要であるため、材料コストが高く、現場での施工にも手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決すべく、簡易な構造でありながらコンクリート面に確実に固定でき、導水機能を備えながら端部処理を要さずに連結可能な剥落防止材及び剥落防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、シート本体と、シート本体の背面の長手方向に沿って突設した複数の導水補強リブと、を有する排水シートと、シート本体の前面に沿って配置した格子材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、シート本体が、導水補強リブを有する導水部と、導水補強リブを有さない封止部からなり、封止部を、シート本体の幅方向の少なくとも一側に沿って帯状に設けてもよい。
【0008】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、封止部を、シート本体の幅方向両側に沿って帯状に設けてもよい。
【0009】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、封止部を、更にシート本体の長手方向の少なくとも一側に沿って帯状に設けてもよい。
【0010】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、格子材の縦桟の延在方向が、導水補強リブの延在方向と平行であってもよい。
【0011】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、排水シートが透明又は半透明であってもよい。
【0012】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止構造は、背面をコンクリート構造物のコンクリート面と対向させ、コンクリート面に沿って配置した剥落防止材と、格子材の前面に配置した複数の固定部材と、先端がコンクリート構造物内に配置し、頭部がコンクリート面から突出して剥落防止材と固定部材を連通した複数のアンカー材と、を備え、固定部材による格子材の支圧を介して、剥落防止材をコンクリート面に固定したことを特徴とする。
【0013】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止構造は、固定部材が中央にボルト孔を有する矩形の板状体からなり、固定部材が格子材の升目より大きくてもよい。
【0014】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止構造は、排水シートの隣り合う導水補強リブの間隔と、格子材の隣り合う縦桟の間隔が略同一であり、縦桟が隣り合う導水補強リブの中間に位置してもよい。
【0015】
本発明のコンクリート構造物の剥落防止構造は、排水シートの側端から所定の範囲に位置する導水補強リブを、排水シートの中央方向に傾斜させて突設してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上の構成より、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>形状弾性を有する導水補強リブの復元力によって、ナットの緩みを防ぎ、剥落防止材をコンクリート面に安定的に固定することができる。
<2>導水補強リブによる排水シート長手方向への導水機能と、封止部による幅方向の止水機能の組み合わせにより、コンクリート面から染み出た水を側端部から漏らすことなく下方へ確実に排水できる。
<3>封止部を重ねて連結する構造により、端部処理を必要とせずに剥落防止材を幅方向に連続配置することができる。
<4>側端部や重合部に止水パッキン等を用いた止水処理を行う必要がないため、施工が容易である。
<5>排水シートと格子材を組み合わせた簡易な構造によって、大小のコンクリート片の落下を防止することができるため、製造コストが安価である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るコンクリート構造物の剥落防止材の説明図。
図2】本発明に係るコンクリート構造物の剥落防止材の説明図。
図3】本発明に係るコンクリート構造物の剥落防止材の説明図。
図4】本発明に係るコンクリート構造物の剥落防止構造の説明図。
図5】剥落防止構造の施工方法の説明図。
図6】実施例2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明のコンクリート構造物の剥落防止材及び剥落防止構造について詳細に説明する。
なお、本明細書と請求項において「コンクリート面」とは、コンクリート構造物の表面であるが、壁面などの垂直方向の面に限られず、天井面や底面など、コンクリートの剥落が生じる可能性のある全ての面を含む。
【実施例1】
【0019】
[コンクリート構造物の剥落防止材]
<1>全体の構成(図1)。
本発明のコンクリート構造物の剥落防止材は、コンクリート構造物のコンクリート面から剥離したコンクリート片の落下を防止するためのシート状の部材である。
剥落防止材1は、排水シート10と、排水シート10の前面に付設した格子材20と、の組み合わせからなる。
排水シート10と、格子材20とは、別部材を貼り合わせて構成してもよいし、接着剤等によって一体に構成してもよい。また、現場で両者を組み合わせて構成してもよい。
本例では剥落防止材1として、幅60cm×長さ2mの矩形のシート体を採用する。なお、図1では長さ方向を省略して記載している。
なお、本発明において剥落防止材1の「背面」とは、供用時にコンクリート面に対向する面であり、「前面」とはその反対面である。また、剥落防止材1の「幅方向」とは、供用時に水平方向に対応する方向であり、「長手方向」とは幅方向と直行する方向である。
【0020】
<2>排水シート。
排水シート10は、コンクリート小片の捕捉機能と、導水機能を兼備する構成要素である。
排水シート10は、シート本体11と、シート本体11の導水部11aの背面側に一体に突設した複数の導水補強リブ12と、を備える。
排水シート10には、可撓性を有する素材を用いる。
本例では排水シート10として、難燃剤を添加したオレフィン系樹脂を素材としたシート材を採用する。ただしこれに限らず、塩化ビニル樹脂等を採用してもよい。特に本願の剥落防止材1をトンネル内で使用する場合には、本例のように難燃性の材料を採用することが望ましい。
また、排水シート10を透明又は半透明の樹脂により構成することで、コンクリート面のひび割れや剥離の状況、漏水箇所の確認等を、排水シート10越しに目視で点検することが可能となる。
【0021】
<2.1>導水部と封止部(図2)。
本例ではシート本体11が、導水機能を有する導水部11aと、隣り合う剥落防止材1との連結機能及び止水機能を有する封止部11bと、からなる。
導水部11aには、背面に導水補強リブ12を形成する。
封止部11bには、導水補強リブ12を形成しない。
封止部11bは、シート本体11の幅方向の少なくとも一側に沿って帯状に設ける。本例では、幅10cm程度の封止部11bを、シート本体11の幅方向両側に設ける。
シート本体11の幅方向端部に導水補強リブ12のない封止部11bを設け、封止部11bをコンクリート面に直接押し付けることで、封止部11b付近の導水補強リブ12をコンクリート面に押圧してコンクリート面に密着変形させて、剥落防止材1の幅方向端部からの漏水を防ぐことができる。
また、封止部11bを隣り合う剥落防止材1の封止部11b又は導水部11aと重ね合わせることで、幅方向に隣り合う剥落防止材1同士を、止水加工を要さずに連結することが可能となる。
なおシート本体11に封止部11b設けず、シート本体11の全面に導水補強リブ12を設けてもよい(図3)。
【0022】
<2.2>導水補強リブ。
導水補強リブ12は、導水機能、補強機能、及び復元機能を兼備する構成要素である。
導水補強リブ12は、シート本体11の導水部11aの背面に、シート本体11の長手方向に沿って複数形成する。
導水補強リブ12の上端をコンクリート面に接触させることで、隣り合う導水補強リブ12とコンクリート面によって包囲された導水路13を形成することができる。
また、シート本体11の長手方向に沿って導水補強リブ12を形成することで、排水シート10に、トンネル内壁のように内側にオーバーハングしたコンクリート面上でも平坦な形状を維持可能な保形性と、支圧変形から復元可能な形状弾性を持たせることができる。
導水補強リブ12の高さは2~10mm程度が好ましく、特に4~7mm程度が好適である。高さが2mmより低いと導水性能に劣り、排水シート10の幅方向に漏水するおそれがある。また、高さが10mmより高いと成形しづらく、現場での施工性も劣る。
【0023】
<3>格子材。
格子材20は、コンクリート片の捕捉機能と、排水シート10の分散支圧機能を兼備する構成要素である。
格子材20は、剥落防止材1の長手方向に延在する複数の縦桟21と、剥落防止材1の幅方向に延在する複数の横桟22と、を連続する格子状に組み合わせてなる。
本例では、縦桟21の延在方向を、導水補強リブ12の延在方向と平行にする。
本例では格子材20として、ビニルエステル樹脂に炭素繊維を複合させたFRP(繊維強化プラスチック)を採用する。
ただし樹脂と繊維の組み合わせはこれに限られず、例えば樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を採用することができる。また、繊維には、アラミド繊維、バサルト繊維、ガラス繊維等を採用することができる。
【0024】
<4>剥落防止機能。
本発明の剥落防止材1は、排水シート10と格子材20とを組み合わせた剥落防止機能に一つの特徴を有する。
格子材20は、コンクリート片を格子で捕捉することにより、その升目よりも大きなコンクリート片の落下を防止することができる。
排水シート10はシート状の部材であるが、導水補強リブ12によって補強されることで、格子材20の升目を通る小さなコンクリート片の落下を防止することができる。
このように、排水シート10と格子材20を組み合わせた簡易な構造によって、従来技術のように別途網状物を配置することなく、大小のコンクリート片の落下を効果的に防止することができる。
【0025】
[剥落防止構造]
<1>全体の構成(図4)。
本発明の剥落防止構造Aは、トンネルや橋梁などのコンクリート構造物に設置して、コンクリート面から剥離したコンクリート片の落下を防止するための構造である。
本発明の剥落防止構造Aは、コンクリート面に敷設した複数の剥落防止材1を、複数の固定部材2と複数のアンカー材3とでコンクリート面に固定してなる。
複数の剥落防止材1は、封止部11b同士、又は封止部11bと導水部11aの端部を重ね合わせて、幅方向に連続配置する。
本例では、剥落防止構造Aを、トンネル内壁のコンクリート面上に設置した例について説明する。
【0026】
<2>固定部材。
固定部材2は、剥落防止材1をコンクリート面に支圧する板状の部材である。
本例では固定部材2として、矩形の金属製プレートを採用する。
固定部材2の縦横の長さは格子材20の升目より大きくする。すなわち、剥落防止構造Aを垂直のコンクリート面に設置した状態の正面視において、固定部材2が格子材20の升目を完全に覆う大きさに設計する。
固定部材2の中央には、アンカー材3のアンカー本体3aを挿通可能なボルト孔を穿設する。
【0027】
<3>アンカー材。
アンカー材3は、固定部材2を介して、剥落防止材1をコンクリート面に固定するための部材である。
本例ではアンカー材3として、先端にネジを切ったアンカー本体3aと、アンカー本体3aの先端に螺着可能なナット3bとの組み合わせからなる芯棒打ち込み式の拡張アンカーを採用する。
芯棒打ち込み式の拡張アンカーは、コンクリート構造物のアンカー孔内に差し込んだ後に、ハンマーなどで頭部の芯棒を打撃することで、先端部がアンカー孔内で押し広げられることによって、コンクリート面に強固に固定される構造である。
アンカー本体3aの先端は、コンクリート構造物内に固定する。
アンカー本体3aの頭部は、コンクリート面から突出し、剥落防止材1と固定部材2のボルト孔を連通した先端にナット3bを螺着する。ナット3bの螺着によって、固定部材2が剥落防止材1の格子材20を支圧することで、剥落防止材1をコンクリート面に押し付けて固定する。
なお、アンカー材3は、拡張アンカーに限られず、接着式やねじ込み式のアンカーを採用してもよい。又は打ち込み式のアンカーピンであってもよい。
【0028】
<4>剥落防止構造の機能。
本発明の剥落防止構造Aは、ナット3bの締結によって、固定部材2を介して剥落防止材1をコンクリート面に押し付けて固定する構造である。
本例では、固定部材2が格子材20の升目より大きいため、固定部材2が格子材20の縦桟21及び横桟22を格子状に支圧することで、支圧力を広い範囲に分散して剥落防止材1を効率的に固定することができる。
この際、コンクリート面に押し付けられた導水補強リブ12が弾性変形した復元力によって、固定部材2が押し戻されることで、ナット3bのゆるみを防ぐことができる。
また本例では、縦桟21と導水補強リブ12が平行であるため、固定部材2に支圧された縦桟21が導水補強リブ12を線状に押さえ込むことで、導水補強リブ12をコンクリート面に線状に密着させて、導水補強リブ12とコンクリート面の隙間から幅方向への漏水を防ぐことができる。
【0029】
<5>剥落防止構造の施工方法。
本発明の剥落防止構造Aは、例えば以下の手順で施工する。
(1)排水シート10に、所定の間隔で両面を連通する挿通孔を設けておく。挿通孔は格子材20の格子の中心付近にくるように設計する。
(2)コンクリート面に複数のアンカー孔を穿設する。アンカー孔は排水シート10の挿通孔の位置に対応させる。
(3)アンカー孔内にアンカー本体3aを挿入し、芯棒を打撃してアンカー本体3aを壁面に固定する。
(4)コンクリート面上に剥落防止材1を配置する。この際、剥落防止材1の背面、すなわち排水シート10側の面をコンクリート面に対向させ、導水補強リブ12をコンクリート面からの漏水を誘導したい方向に平行させる。アンカー本体3aの頭部を排水シート10の挿通孔に挿通させる。封止部11bには必ずアンカー本体3aを1本以上挿通させる。
(5)排水シート10の前面から突出したアンカー本体3aの頭部に、固定部材2のボルト孔を連通して、ナット3bを螺着する。この際、固定部材2が、格子材20の格子の前面を押えるように位置決めする。
(6)ナット3bを締結して、固定部材2を介して格子材20を支圧し、排水シート10をコンクリート面に押し付ける。同様の作業を、剥落防止材1上の全てのアンカー本体3aに対して行い、剥落防止材1をコンクリート面に固定する。
(7)固定した剥落防止材1の側方のコンクリート面上に、接続する剥落防止材1’を配置する。この際、固定した剥落防止材1の封止部10bの上に、接続する剥落防止材1’の封止部10bを重ね合わせ、上記の作業を繰り返して、剥落防止材1’をコンクリート面に固定する。このようにしてコンクリート面上に所定の数の剥落防止材1を固定して、剥落防止構造Aを構築する(図5)。
なお、上記(1)~(7)の工程は一例にすぎない。例えば、排水シート10への挿通孔はアンカー本体3aを設置したのちに設けてもよい。また、先にコンクリート面に剥落防止材1を位置決めした上で、剥落防止材1を挿通するようにコンクリート面にアンカー本体3aを打ち込み、最後にナット3bを締結するなどの方法によってもよい。
【実施例2】
【0030】
[封止部を長手方向端部にも設けた例]
本例では封止部11bを、シート本体11の幅方向両側に加え、長手方向の一側に沿って帯状に設ける(図6)。
本例における長手方向一側の封止部11bは幅約10cmである。
本例の場合、長手方向に隣り合う剥落防止材1の端部を封止部11bと重ね合わせることで、定尺品の剥落防止材1を長さ方向に連結して、長さを延長することが可能となる。
なお、封止部11bは、長手方向の一側のみでなく両側、すなわちシート本体11の上下両側に設けてもよい。
【実施例3】
【0031】
[格子材の縦桟を導水補強リブの中間に配置した例]
排水シート10の前面には格子材20が配置されている。このため、導水補強リブ12の間隔P1と格子材20の縦桟21の間隔P2を略同一とし、平面視で、隣り合う導水補強リブ12の中間に縦桟21が位置するように配置することにより、格子材20と導水補強リブ12がお互いに補完する関係となり、少ない本数の導水補強リブ12によって、大小のコンクリート片の落下を防止することができる。
【実施例4】
【0032】
[導水補強リブを傾斜させた例]
本発明の導水補強リブ12は、排水シート10の背面から略垂直に突設するが、排水シート10の側端から所定の範囲に位置する導水補強リブ12を、排水シート10の中央方向に傾斜させてもよい。
側端から所定の範囲の導水補強リブ12を傾斜させることで、導水路13内の漏水を排水シート1の内側方向に押さえ込み、側端部の漏水シール機能を高めることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 剥落防止材
10 排水シート
11 シート本体
11a 導水部
11b 封止部
12 導水補強リブ
13 導水路
20 格子材
21 縦桟
22 横桟
2 固定部材
3 アンカー材
3a アンカー本体
3b ナット
A 剥落防止構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6