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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】グラフト共重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/06 20060101AFI20240830BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08F255/06
C08F2/44 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117705
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015082
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義治
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-035288(JP,A)
【文献】特公昭49-024596(JP,B1)
【文献】特開平07-196746(JP,A)
【文献】特開2005-264050(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105682(WO,A1)
【文献】特開2002-080540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとからなるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来するグラフト部と
を含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)が、アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位を含むラフト共重合体(X)を製造する方法であって、
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程
を有し、かつ、
下記式(I)で定義されるグラフト化率が0.01質量%以上0.1質量%以下であることを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量)}/エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量×100 …(I)
【請求項2】
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を構成するα-オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
前記アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物の、エステル部のアルキル基が、メチル基であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載の製造方法
【請求項4】
前記グラフト共重合体(X)が、エチレン由来の構成単位と、上記α-オレフィン由来の構成単位と、上記エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位とからなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は現在、自動車分野、産業分野などの様々な分野に汎用的に使用されている。近年それらに対して更なる高付加価値が求められている。
【0003】
ポリマーに新たな付加価値を与える手段の1つとして、ポリマーへのグラフト重合が挙げられる。一般的なポリオレフィンにアクリル系モノマーをグラフト重合することは従来種々行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン素材に対し、ベンゾフェノン等の光増感剤存在下で、アクリル酸等のアクリル系モノマーを紫外線照射によりグラフト共重合してなるグラフト共重合体が開示されている。ここで、特許文献1には、ポリオレフィン素材として、ポリエチレンのフィルム、ポリプロピレンのフィルム、ポリテトラフルオロエチレンの織布、または、ポリプロピレン繊維を用いてなるグラフト共重合体が具体的に開示されており、このグラフト共重合体が吸水材として用いられることも開示されている。また、特許文献1には、ポリオレフィン素材として、エチレンプロピレンコポリマーを用いることもできることも開示されている。
【0005】
特許文献2にも、ポリオレフィン素材として特定の大きさの微細孔を有するものを採用したことを除いては特許文献1に記載のものと同様のグラフト共重合体が開示されている。
【0006】
ところで、一般に有機過酸化物を開始剤としたグラフト反応は、高温で反応を行う必要があり、ポリマーの分解が問題となる。この問題を回避すべく、グラフト反応を低温で行うための試みもなされてきた。
【0007】
そのような問題を回避する試みの1つとして、アルキルホウ素を開始剤とするポリマーへのグラフト重合が検討されている(特許文献3、非特許文献1)。
ここで、特許文献3には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのα-オレフィン重合体と、トリヘキシルホウ素などのアルキルホウ素と、ベンゼンなどの溶媒とを含む混合物を、まず室温にて空気と接触させ、次いで、4-ビニルピリジンやアクリロニトリルなどの極性モノマーを加えて20~150℃で反応させてなるグラフト共重合体が開示されている。ここで、特許文献3の実施例には、極性モノマーとの反応を125℃で行うよりも60~80℃で行う方が好ましいことが示されている。
【0008】
特許文献4には、まず、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィンと、トリブチルボランなどのトリアルキルボランと、無水マレイン酸と、ベンゼンなどの溶媒とを0~150℃で混合して、トリアルキルボラン-無水マレイン酸複合体を含む反応混合物を形成させ、次いで、この反応混合物に空気などの含酸素酸化剤を0~150℃で接触させることにより得られるグラフト共重合体が開示されている。ここで、特許文献4は、グラフト重合反応に関与する反応活性種が、トリアルキルボランに酸素が1分子付加することにより生成する過酸化物であると特定している。その上で、特許文献4は、この過酸化物から生じるアルコキシラジカルがポリオレフィン鎖上にある水素を引き抜き、得られるポリマーラジカルが無水マレイン酸と反応することを示唆している。
【0009】
また、特許文献5には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体などのポリオレフィンと、トリブチルホウ素と、水とを含む混合物を空気に接触させ、その後、メタクリル酸やメタクリル酸エステルなどの単量体と反応させることにより得られるグラフト共重合体が開示されている。ここで、特許文献5には、得られたグラフト共重合体が、ポリオレフィンに由来する主鎖部を含むコア部と、単量体のグラフト重合により生成するグラフト部を含むシェル部とからなるコアシェル型構造を有することも示されている。
【0010】
なお、特許文献3~5のいずれにも、グラフト重合の対象とするポリマーとして、ポリオレフィンに代えてEPDMゴムを用いることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭62-263213号公報
【文献】特開昭63-83111号公報
【文献】米国特許第3141862号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0198327号明細書
【文献】国際公開第2018/105682号
【非特許文献】
【0012】
【文献】MACROMOLECULES: vol38,8966-8970(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に対するグラフト重合として、無水マレイン酸などを、ラジカル反応剤を用いて反応させるグラフト重合などが行われている。しかし、そのようなグラフト重合は、高温反応であるため、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体由来の構造が崩れたり、グラフト重合の際に非共役ポリエン同士が優先的に反応してしまうことによるゲル化、消失等が生じるなどの懸念がある。
【0014】
そこで、本発明は、架橋反応に利用可能な不飽和結合を維持しつつ変性されているエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らの鋭意検討により、非共役ポリエンとして、エチリデン基を有する非共役ポリエンを有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に対し、有機ホウ素をラジカル反応剤として用いた低温条件下での変性を行うことで、エチリデン基を一部残したゴム組成物が得られるとの知見を得、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1]
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとからなるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来するグラフト部と
を含み、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)が、アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位を含むことを特徴とするグラフト共重合体(X)。
【0017】
[2]
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を構成するα-オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする前記[1]に記載のグラフト共重合体(X)。
【0018】
[3]
前記アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物の、エステル部のアルキル基が、メチル基であることを特徴とする前記[1]~[2]のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)。
【0019】
[4]
エチレン由来の構成単位と、上記α-オレフィン由来の構成単位と、上記エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位とからなることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)。
【0020】
[5]
下記式(I)で定義されるグラフト化率が0.01質量%以上300質量%以下であることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量)}/エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量×100 …(I)
【0021】
[6]
前記[1]~[5]のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)を製造する方法であって、
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程
を有することを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、架橋反応に利用可能な不飽和結合を維持しつつ変性されているエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
<グラフト共重合体(X)>
本発明のグラフト共重合体(X)は、
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとからなるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)(以下、本明細書において、単に「共重合体(A)」と呼ばれる場合がある。)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)(以下、本明細書において、単に「重合体(B)」と呼ばれる場合がある。)に由来するグラフト部とを含む。
【0024】
ここで、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位を含む。
すなわち本発明のグラフト共重合体(X)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとからなるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の重合体あるいは共重合体であるポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体(B)とのグラフト共重合体である。
【0025】
ここで、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル酸アルキル」とはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルを意味する。
【0026】
また、「重合体」とは単独重合体または共重合体を意味する。
また、本明細書において、重合体を構成するあるモノマーをMとしたときに、「M由来の構成単位」なる表現が用いられる場合がある。この場合、「M由来の構成単位」とは、モノマーMに対応する構成単位をいい、モノマーMがR12C=CR34(R1,R2,R3,R4は、水素原子またはモノマーMが有しうる適当な置換基であり、モノマーMの種類によっては、R1,R2,R3,R4のうちの2以上が互いに結合して環を形成する場合がある。)で表される構造を有する場合、当該M由来の構成単位は、-CR12-CR34-で表される構造を有している。例えば、エチレン由来の構成単位とは、-CH2-CH2-で表される構造を有する構成単位をいう。なお、モノマーMが重合反応可能な二重結合を2以上有する場合、「M由来の構成単位」が取り得る構造が2種以上存在することがある。
【0027】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとの共重合体である。すなわち、前記共重合体(A)は、エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位(以下、単に「α-オレフィン由来の構成単位」と呼ばれる場合がある。)と、エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位(以下、単に「非共役ポリエン由来の構成単位」と呼ばれる場合がある。)とを有する。
【0028】
本発明のグラフト共重合体(X)において、前記共重合体(A)は、主鎖部を構成する。
前記共重合体(A)を構成する炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、2-メチルブテン-1、3-メチルブテン-1、ヘキセン-1、3-メチルペンテン-1、4-メチルペンテン-1、3,3-ジメチルブテン-1、ヘプテン-1、メチルヘキセン-1、ジメチルペンテン-1、トリメチルブテン-1、エチルペンテン-1、オクテン-1、メチルペンテン-1、ジメチルヘキセン-1、トリメチルペンテン-1、エチルヘキセン-1、メチルエチルペンテン-1、ジエチルブテン-1、プロピルペンテン-1等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種単独で用いられていてもよく、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。言い換えると、共重合体(A)は、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位を1種のみ含んでいても良く、あるいは、2種以上含んでいても良い。
【0029】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、これらのうち、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンがより好ましく、プロピレンまたはブテンがさらに好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0030】
エチリデン基を有する非共役ポリエンとしては、5-エチリデン-2-ノルボルネンが挙げられる。エチリデン基を有する非共役ポリエンは、1種単独で用いられていてもよく、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。言い換えると、共重合体(A)は、エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位を1種のみ含んでいても良く、あるいは、2種以上含んでいても良い。
【0031】
前記共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとの共重合体であればよいが、好ましくは、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとのランダム共重合体である。本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)として、特に好ましい共重合体としては、たとえば、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネンランダム共重合体が挙げられる。
【0032】
前記共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとの共重合比を特に限定するものではない。ただ、共重合体(A)において、エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位とのモル比は、40/60~99.9/0.1、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22である。ここで、共重合体(A)が炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位を2種以上含む場合、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の合計に対するエチレン由来の構成単位のモル比が前記比となる。このような共重合体(A)は、機械的強度ならびに低温柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0033】
また、共重合体(A)100質量%中(すなわち全構成単位の含有割合の合計100質量%中)、エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位の含有割合は、0.07~10質量%、好ましくは0.1~8.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%である。ここで、共重合体(A)がエチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位を2種以上含む場合、エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位の含有割合の合計が前記割合となる。このような共重合体(A)は、本発明の組成物から得られる加硫ゴムが優れたゴム弾性を示し、機械特性に優れたものとなるため好ましい。
【0034】
前記共重合体(A)のエチレン由来の構成単位の含有率、α-オレフィン由来の構成単位の含有率、およびエチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位の含有率は、たとえば、13C-NMR法で測定することができ、「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)に記載の方法等に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0035】
前記共重合体(A)は、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.05~15dL/g、より好ましくは0.1~10dL/g、さらに好ましくは0.5~3dL/gの範囲であるのが望ましい。また、190℃、2.16kgf荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、通常0.01~200g/10分、好ましくは0.1~180g/10分、より好ましくは1~150g/10分、であることが望ましい。
【0036】
前記共重合体(A)は、特に限定されることなく、従来公知の方法で調製することができる。また、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、エチリデン基を有する非共役ポリエンとの共重合体である市販のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を共重合体(A)として用いることもできる。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)
本発明のグラフト共重合体(X)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来するグラフト部を有する。言い換えると、本発明のグラフト共重合体(X)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)は、グラフト部を構成する。
【0038】
本発明において、本発明のグラフト共重合体(X)は、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)を導入して得てもよく、また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)の単量体であるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物を重合することによって得てもよい。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)は、単量体であるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物の一方のみに由来する構成単位を含む。すなわち前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)は、アクリル酸アルキルエステル化合物の単独重合体あるいはアクリル酸アルキルエステル化合物同士の共重合体、または、メタクリル酸アルキルエステル化合物の単独重合体あるいはメタクリル酸アルキルエステル化合物同士の共重合体である。
【0040】
前記アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物の、エステル部のアルキル基の炭素数は、通常1~20であり、好ましくは1~10である。本発明の特に好適な態様において、エステル部のアルキル基は、メチル基である。
【0041】
アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル等が挙げられる。また、メタクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル等が挙げられる。
【0042】
このようなアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物を単量体として用いることにより、グラフト共重合体(X)に多くのグラフト部を導入することができる。
【0043】
グラフト共重合体(X)
本発明のグラフト共重合体(X)は、上述したエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する主鎖部と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来するグラフト部とを有する。なお本発明では、グラフト部の鎖長が主鎖部の鎖長よりも長い場合においても、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する部分を主鎖部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来する部分をグラフト部として扱う。
【0044】
本発明の典型的な態様において、グラフト共重合体(X)は、エチレン由来の構成単位と、上記α-オレフィン由来の構成単位と、上記エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物由来の構成単位とからなる。
【0045】
このような本発明のグラフト共重合体(X)は、グラフト部の導入割合が高く、好ましくは、下記式(I)で定義されるグラフト化率が、0.01質量%以上300質量%以下である。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量)}/エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量×100 …(I)
【0046】
ここで、上記グラフト化率は、具体的には、グラフト共重合体(X)を構成する全構成単位のうち、エチレン由来の構成単位の含有質量をM1、α-オレフィン由来の構成単位の含有質量をM2、エチリデン基を有する非共役ポリエン由来の構成単位の含有質量をM3、および、グラフトモノマー由来の構成単位の含有質量をMgとしたときに、グラフト共重合体(X)の質量=M1+M2+M3+Mg、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量=M1+M2+M3として上記式(I)に当てはめることにより求めることができる。言い換えると、上記グラフト化率は、Mg/(M1+M2+M3)×100の値として求めることができる。
【0047】
本発明のグラフト共重合体(X)は、上記主鎖部において、上記非共役ポリエンに由来するエチリデン基を一定以上の割合で有している。これにより、グラフト共重合体(X)は、母体となるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が有する特性を一定以上有することができる。具体的には、変性後においてエチリデン基が70%以上残っていることであり、好ましくは、変性後においてエチリデン基が80%残っていることである。ここで、グラフト共重合体(X)中のエチリデン基の量は、13C-NMR法を用い、エチリデン基を構成する炭素原子に対応するピークの所在および積算値に基づいて求めることができる。
【0048】
本発明のグラフト共重合体(X)は、特に限定されるものではないが、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.05~15dL/g、より好ましくは0.1~10dL/g、さらに好ましくは0.5~3dL/gの範囲であるのが望ましい。
【0049】
本発明のグラフト共重合体(X)は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が、通常60,000~400,000、好ましくは70,000~150,000、より好ましくは80,000~150,000の範囲であるのが望ましい。
【0050】
また本発明のグラフト共重合体(X)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量分子(Mn)とから求められる分子量分布(Mw/Mn)の値が、好ましくは1.5~6.0、より好ましくは2.0~5.0、さらに好ましくは2.5~4.0の範囲を満たすことが好ましい。
【0051】
本発明において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の条件で、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求めた値である。
【0052】
本発明のグラフト共重合体(X)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する主鎖部が高度に変性され、極性基を有するグラフト部が高い割合で導入されていることから、親水性物質および疎水性物質のいずれとも親和性が高く、親水性物質および疎水性物質の両方を含む組成物を調製する場合においても、本発明のグラフト共重合体(X)を共存させることにより、均質な組成物を容易に調製することができる。
【0053】
グラフト共重合体(X)の製造方法
本発明のグラフト共重合体(X)は、
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、上記アクリル酸アルキルエステル化合物及び/またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程を有する製造方法によって得ることができる。ここで、グラフト共重合体(X)は、上述のように、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)を導入して得てもよく、また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)の単量体であるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物をグラフト共重合することによって得てもよい。
【0054】
これらのうちでは、主鎖となるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)の単量体であるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物をグラフト共重合する方法を好ましく採用することができる。
【0055】
ここで、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とのグラフト共重合反応の態様は、開始剤の種類によって変わる傾向にある。ここで、このようなグラフト共重合反応を、ジアルキルパーオキサイド、過酸化ジアシル、過カルボン酸アルキルエステルなどの有機過酸化物の存在下で行う場合、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来するエチリデン基でのグラフト共重合反応、および、複数のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)分子が、そのエチリデン基を介して互いに結合する反応が進行しやすい傾向にある。この場合、得られるグラフト共重合体は、エチリデン基をほとんどまたは全く含まない傾向にあり、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が有していた性質、例えば、ゴムとしての性質、が失われることがある。一方、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とのグラフト共重合反応を、アルキルホウ素存在下で行う場合、グラフト共重合反応は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来するエチリデン基をある程度維持した態様で行われる傾向にある。この場合、得られるグラフト共重合体は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が有していた性質、例えば、ゴムとしての性質、をある程度有することができる傾向にある。このことから、本発明のグラフト共重合体(X)の製造においては、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程を有することが好ましい。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)を構成する単量体であるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物とを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合させた場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に由来する主鎖部に対して、高いグラフト化率で(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体(B)に由来するグラフト部を有する、グラフト共重合体(X)を好適に製造することができる。
【0056】
アルキルホウ素を用いたグラフト共重合工程においては、アルキルホウ素を酸素と反応させて過酸化物とした開始剤を使用することができる。このような、アルキルホウ素を用いたグラフト共重合反応は、たとえば、US3141862、Macromolecules 2005, 38, 8966-8970、J. APPL. POLYM. SCI. 2015,42186およびJournal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 47, 6163-6167 (2009) などに記載の方法を参照して行うことができる。
【0057】
アルキルホウ素としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トリブチルホウ素などのトリアルキルホウ素を好適に用いることができる。
グラフト重合反応に用いられる溶媒としては、水の他、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒;γ-ブチロラクトン;N-メチル-2-ピロリドン;2,4-ペンタジエン;ジメチルスルフォキシド;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ベンジルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセチルクエン酸トリブチル、n-アルキルアジペート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートなどのエステルを挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせたものであっても良い。これらの溶媒の中でも、特にノルマルヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒が安全性の面から好ましい。
【0058】
グラフト共重合反応を行うに当たり、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、グラフトモノマーであるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物と、アルキルホウ素との接触方法および接触順序については、特に制限はなく、種々の方法を採用することができる。また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)へ、アクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物、あるいはアルキルホウ素を事前に含浸させておいてもよい。グラフト共重合反応においては、さらに、グラフトポリマーの分子量を調整するために公知の連鎖移動剤を併用することができる。
【0059】
一方、アルキルホウ素と酸素との接触順序に関しては、反応開始点となるため、反応系にアルキルホウ素を先に装入してから、酸素を導入して接触させる方法が好ましい。また、グラフトモノマーであるアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物は、予め窒素通気処理をして残存酸素を十分にパージしておくことが好ましい。
【0060】
また、本発明の目的を妨げない範囲において、公知の添加剤、たとえば、ヒンダードフェノール化合物などの酸化防止剤、プロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、塩酸吸収剤、難燃剤、ブルーミング防止剤、ピペリジン類などのニトロキシラジカル類に代表されるラジカル捕捉剤、公知の軟化剤、粘着付与剤、加工助剤、密着性付与剤、炭素繊維、ガラス繊維、ウイスカなどの充填剤、などの各種の添加剤を併用することができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の高分子化合物を少量ブレンドすることも可能である。
【0061】
上記のようなグラフト共重合反応は、混合および加熱が可能な装置であれば特に制限なく使用することができる。例えば縦型および横型のいずれの反応器であっても使用することができる。具体的には、流動床、移動床、ループリアクター、攪拌翼付横置反応器、攪拌翼付縦置反応器、回転ドラム、等を挙げることができる。また、プラネタリーミキサーなどの多軸・自転公転併用方式の混合機、ニーダー、パドルドライヤー、ヘンシェルミキサー、スタティックミキサー、Vブレンダー、タンブラー、ナウターミキサーも使用することができる。
【0062】
グラフト共重合反応の工程終了後には、未反応のアクリル酸アルキルエステル化合物またはメタクリル酸アルキルエステル化合物等を溶解することのできる溶媒で、得られたグラフト共重合体を洗浄する、洗浄工程を有することも好ましい。
【0063】
洗浄工程に用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、好ましくはケトン、アルコールであり、アセトン、メタノールが特に好ましい。また、洗浄温度は、生成したグラフト共重合体(X)が損なわれない限りにおいては限定されるものではないが、好ましくは0~110℃、より好ましくは室温~100℃程度である。
【0064】
ここで、洗浄工程は、洗浄温度を洗浄溶媒の大気圧における沸点よりも高く設定する場合には、洗浄溶媒の揮散を防止するために、密閉状態で行うことが好ましい。
【実施例
【0065】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例等において、測定および評価方法は次の通りである。
【0066】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、POLYMER LABORATORIES社製のPL-GPC220型 高温ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて以下のように測定した。分離カラムとして、TSKgel GMHHR-H(S)HT(2本)とTSKgel GMHHR-M(S)(1本)を用い、カラム温度を140℃とし、移動相には1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を用い、展開速度を1.0mL/分とし、試料濃度を1.0mg/mLとし、試料注入量を0.5mLとし、検出器として、示差屈折率計/装置内蔵(POLYMER LABORATORIES社製)、PD2040型2角度光散乱光度計(PRECISION DETECTORS社製)、PL-BV400型ブリッジ型粘度計(POLYMER LABORATORIES社製)を用いた。装置の較正は、単分散ポリスチレン(東ソー社製、分子量190,000)、直鎖状ポリエチレン(NIST1475a dn/dc=0.100 IV=1.01)を用いて実施した。分子量分布(Mw/Mn)は、上記測定法により測定したMwを、同じく上記測定法により測定したMnで除して算出した。
【0067】
<極限粘度[η]>
離合社製自動動粘度測定装置VMR-053PCおよび改良ウベローデ型毛細管粘度計を用い、デカリン中、135℃での比粘度ηspを求め、下記式より極限粘度([η])を算出した。
[η]=ηsp/{c(1+K・ηsp)}
(c:溶液濃度[g/dl]、K:定数)
【0068】
<ポリマー組成>
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を構成する各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を構成する非共役ポリエンから導かれる構成単位の含有率は、エチリデン基を構成する炭素原子に対応するピークの所在および積算値に基づいて求めた。
また、グラフト共重合体を構成する各構成単位の質量分率(質量%)も、同様に求めた。
【0069】
<グラフト化率(%)>
共重合体のグラフト化率は、下記式(I)により求めた。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量)}/エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量×100 …(I)
ここで、上記グラフト化率は、具体的には、グラフト共重合体(X)につき、上記「ポリマー組成」に記載の方法により、エチレン由来の構成単位の含有質量M1、α-オレフィン由来の構成単位の含有質量M2、非共役ポリエン由来の構成単位の含有質量M3、および、グラフトモノマー由来の構成単位の含有質量Mgをそれぞれ求め、グラフト共重合体(X)の質量=M1+M2+M3+Mg、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の質量=M1+M2+M3として求めた。
【0070】
[実施例1](グラフト共重合体-1の製造)
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)として、エチレン含有量65.9質量%、非共役ポリエン含有量4.6質量%、極限粘度[η]=2.4dL/gのエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ペレット(EPE-1)を用い、グラフトモノマーとして、エステル部のアルキル基が炭素数1のメタクリル酸アルキルエステル化合物である、メタクリル酸メチル(MMA)を用いた。
【0071】
窒素雰囲気下、水500mLとエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ペレット(EPE-1)100gを2Lのセパラブルフラスコに装入し、液温を40℃に調整し、撹拌しながら窒素を毎分2Lの速度で30分間、液中に通気(窒素バブリング)した。その後、トリブチルホウ素(TBB)を0.05g加え、空気30mLを通気し、温度40℃にて30分撹拌した後、メタクリル酸メチル100gを装入して、2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、ペレットを濾過、アセトンで十分洗浄し、60℃で120分間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-1を得た。
【0072】
グラフト共重合体-1の収量は111gであり、グラフト化率は0.1質量%であった。
結果を下記表1に示す。なお、下記表1において「ENB」とあるのは、5-エチリデン-2-ノルボルネンを指す。
【0073】
[比較例1]
実施例1で用いたエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ペレット(EPE-1)につき、グラフト共重合を行うことなくそのまま用いた。
【0074】
結果を下記表1に示す。
【0075】
【表1】