IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-放射線撮像装置 図1
  • 特許-放射線撮像装置 図2
  • 特許-放射線撮像装置 図3
  • 特許-放射線撮像装置 図4
  • 特許-放射線撮像装置 図5
  • 特許-放射線撮像装置 図6
  • 特許-放射線撮像装置 図7
  • 特許-放射線撮像装置 図8
  • 特許-放射線撮像装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20240830BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240830BHJP
【FI】
G01T1/17 C
A61B6/42 500S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020117931
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022022844
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 亮介
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195949(JP,A)
【文献】特開2020-089714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素行および複数の画素列を構成するように配置された画素行列であって、複数の第1画素と、前記複数の第1画素よりも放射線に対する感度が低い複数の第2画素とを備える画素行列と、
前記複数の画素列に対応して配置された複数の信号線であって、所定数の信号線が並ぶ第1信号線群および前記所定数の信号線が並ぶ第2信号線群を備える複数の信号線と、
前記複数の信号線を通じて前記画素行列から信号を読み出す読み出し回路であって、前記第1の信号線群が接続される第1の増幅回路群および前記第2の信号線群が接続される第2の増幅回路群を含む複数の増幅回路群と、前記第1の増幅回路群および前記第2の増幅回路群が接続されるマルチプレクサと、を備える読み出し回路と、
前記複数の第1の画素から信号を読み出すことで取得され第1信号情報を、前記複数の第2の画素から信号を読み出すことで取得され第2信号情報に基づき補正する処理部と、を備え、
前記読み出し回路は、前記第1の信号線群の各々の信号線に対する前記第1の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なり、且つ、前記第2の信号線群の各々の信号線に対する前記第2の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なる周期構造を有し、
前記複数の第2画素は、前記複数の第2画素を含む各画素列の列番号を前記所定数で割った余りが2種類以上となるように配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記複数の画素列は、前記複数の第1画素の何れかを含みかつ前記複数の第2画素の何れも含まない画素列を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記複数の第1画素は、前記複数の画素列のうち前記複数の第2画素を含まない画素列に含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記複数の第2画素は、前記複数の第2画素を含む画素列の列番号を前記所定数で割った余りが前記所定数と同数の種類となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記複数の第2画素を含む画素列の列番号は周期を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記所定数と、前記複数の第2画素を含む画素列の列番号の周期とは、互いに素であることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記複数の増幅回路群の各々は、前記複数の信号線のうちの接続された信号線からの信号を増幅する増幅器を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記複数の増幅回路群の各々は、前記複数の信号線のうちの接続された信号線からの信号を保持するサンプルホールド回路を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記読み出し回路は
前記マルチプレクサを含む複数のマルチプレクサを含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
複数の画素行および複数の画素列を構成するように配置された画素行列であって、複数の第1の画素と、前記複数の第1の画素よりも放射線に対する感度が低い複数の第2の画素と、を備える画素行列と、
前記複数の画素列に対応して配置された複数の信号線であって、所定数の信号線が並ぶ第1の信号線群および前記所定数の信号線が並ぶ第2の信号線群を備える複数の信号線と、
前記複数の信号線を通じて前記画素行列から信号を読み出す読み出し回路であって、前記第1の信号線群が接続される第1の増幅回路群および前記第2の信号線群が接続される第2の増幅回路群を含む複数の増幅回路群と、前記第1の増幅回路群および前記第2の増幅回路群が接続されるマルチプレクサと、を備える読み出し回路と、
前記複数の第1の画素から信号を読み出すことで取得される第1の信号情報と、前記複数の第2の画素から信号を読み出すことで取得される第2の信号情報と、に基づき放射線の照射を停止させるための通信を制御する処理部と、を備え、
前記読み出し回路は、前記第1の信号線群の各々の信号線に対する前記第1の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なり、且つ、前記第2の信号線群の各々の信号線に対する前記第2の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なる周期構造を有し、
前記複数の第2の画素は、前記複数の第2の画素を含む各画素列の列番号を前記所定数で割った余りが2種類以上となるように配置されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮像装置が広く使用されている。こうした放射線撮像装置において、放射線撮像装置に入射する放射線をモニタすることが知られている。特許文献1に、放射線量をリアルタイムで検出することによって、放射線の照射中に入射した放射線の積算線量を把握し、自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-220116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の放射線撮像装置は、放射線信号を取得するための撮像用画素と、補正用信号を取得するための補正用画素とを有する。放射線撮像装置は、補正用信号を事前に取得しておき、これを使用して放射線信号を補正する。補正用信号は、ノイズを低減するために、複数の画素列にわたって平均される。補正用信号を読み出してから放射線信号を読み出すまでの間に、例えば放射線撮像装置内の温度変化によって、読み出し回路の特性が変化することがある。この特性の変化は、読み出し回路の内部構造に起因して空間的な周期性を有しうる。そのため、補正用画素の配置によって、放射線信号の補正の精度が異なることを発明者らは見出した。本発明の1つの側面は、放射線信号を精度よく補正するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、複数の画素行および複数の画素列を構成するように配置された画素行列であって、複数の第1画素と、前記複数の第1画素よりも放射線に対する感度が低い複数の第2画素とを備える画素行列と、前記複数の画素列に対応して配置された複数の信号線であって、所定数の信号線が並ぶ第1信号線群および前記所定数の信号線が並ぶ第2信号線群を備える複数の信号線と、前記複数の信号線を通じて前記画素行列から信号を読み出す読み出し回路であって、前記第1の信号線群が接続される第1の増幅回路群および前記第2の信号線群が接続される第2の増幅回路群を含む複数の増幅回路群と、前記第1の増幅回路群および前記第2の増幅回路群が接続されるマルチプレクサと、を備える読み出し回路と、前記複数の第1の画素から信号を読み出すことで取得され第1信号情報を、前記複数の第2の画素から信号を読み出すことで取得され第2信号情報に基づき補正する処理部と、を備え、前記読み出し回路は、前記第1の信号線群の各々の信号線に対する前記第1の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なり、且つ、前記第2の信号線群の各々の信号線に対する前記第2の増幅回路群の各々の増幅回路の接続位置が異なる周期構造を有し、前記複数の第2画素は、前記複数の第2画素を含む各画素列の列番号を前記所定数で割った余りが2種類以上となるように配置されていることを特徴とする放射線撮像装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、放射線信号を精度よく補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の放射線撮像装置の構成を示す図。
図2】本発明の実施形態の増幅回路の構成を示す図。
図3】本発明の実施形態の各画素の構成を示す平面図。
図4】本発明の実施形態の各画素の構成を示す断面図。
図5】本発明の実施形態の放射線撮像装置を含む放射線撮像システムの構成例を示す図。
図6】本発明の実施形態の放射線撮像装置の動作を示す図。
図7】本発明の実施形態の検出画素及び補正画素の位置を示す図。
図8】本発明の実施形態の検出画素及び補正画素の位置を示す図。
図9】本発明の実施形態の読み出し回路の特性の周期変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一部の実施形態に係る放射線撮像装置100の構成例を示す。放射線撮像装置100は、複数の画素行及び複数の画素列を構成するように撮像領域IRに配置された複数の画素と、複数の駆動線110と、複数の信号線120とを有する。複数の駆動線110は、複数の画素行に対応して配置されており、各駆動線110が何れか1つの画素行に対応する。複数の信号線120は、複数の画素列に対応して配置されており、各信号線120が何れか1つの画素列に対応する。
【0010】
複数の画素は、放射線画像を取得するために用いられる複数の撮像画素101と、放射線の照射量をモニタするために用いられる複数の検出画素104と、放射線の照射量を補正するために用いられる複数の補正画素107とを含む。放射線に対する補正画素107の感度は、放射線に対する検出画素104の感度よりも低い。
【0011】
撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する変換素子102と、対応する信号線120と変換素子102とを互いに接続するスイッチ素子103とを含む。検出画素104は、放射線を電気信号に変換する変換素子105と、対応する信号線120と変換素子105とを互いに接続するスイッチ素子106とを含む。検出画素104は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。補正画素107は、放射線を電気信号に変換する変換素子108と、信号線120と変換素子108とを互いに接続するスイッチ素子109とを含む。補正画素107は、複数の撮像画素101によって構成される行及び列に含まれるように配置される。図1及び後続の図面では、変換素子102、変換素子105及び変換素子108に対して相異なるハッチングを付すことによって撮像画素101、検出画素104及び補正画素107を区別する。
【0012】
変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を光に変換するシンチレータ及び光を電気信号に変換する光電変換素子とによって構成されてもよい。シンチレータは、一般的に、撮像領域IRを覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有される。これに代えて、変換素子102、変換素子105及び変換素子108は、放射線を直接に電気信号に変換する変換素子で構成されてもよい。
【0013】
スイッチ素子103、スイッチ素子106及びスイッチ素子109は、例えば、非晶質シリコン又は多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含んでもよい。
【0014】
変換素子102の第1電極は、スイッチ素子103の第1主電極に接続され、変換素子102の第2電極は、バイアス線130に接続される。1つのバイアス線130は、列方向に延びていて、列方向に配列された複数の変換素子102の第2電極に共通に接続される。バイアス線130は、電源回路140からバイアス電圧Vsを受ける。1つの列に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の第2主電極は、1つの信号線120に接続される。1つの行に含まれる1つ以上の撮像画素101のスイッチ素子103の制御電極は、1つの駆動線110に接続される。
【0015】
検出画素104及び補正画素107も撮像画素101と同様の画素構成を有しており、対応する駆動線110及び対応する信号線120に接続される。検出画素104と補正画素107とは、信号線120に排他的に接続されている。すなわち、検出画素104が接続されている信号線120に補正画素107は接続されていない。また、補正画素107が接続されている信号線120に検出画素104は接続されていない。撮像画素101は、検出画素104又は補正画素107と同じ信号線120に接続されてもよい。
【0016】
駆動回路150は、制御部180からの制御信号に従って、複数の駆動線110を通じて、駆動対象の画素に対して駆動信号を供給するように構成される。本実施形態では、駆動信号は、駆動対象の画素に含まれるスイッチ素子をオンにするための信号である。各画素のスイッチ素子は、ハイレベルの信号でオンとなり、ローレベルの信号でオフとなる。そのため、このハイレベルの信号を駆動信号と呼ぶ。画素に駆動信号が供給されることによって、この画素の変換素子に蓄積された信号が読み出し回路160によって読み出し可能な状態となる。駆動線110が検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続されている場合に、その駆動線110を検出駆動線111と呼ぶ。
【0017】
読み出し回路160は、複数の信号線120を通じて複数の画素から信号を読み出すように構成される。読み出し回路160は、複数の増幅回路161と、1つ以上のマルチプレクサ162と、バッファ増幅器163と、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器)164とを含む。複数の信号線120のそれぞれは、読み出し回路160の複数の増幅回路161のうち対応する増幅回路161に接続される。1つの信号線120は、1つの増幅回路161に対応する。増幅回路161は、信号線120からの信号を増幅し、マルチプレクサ162に自身の出力を供給する。マルチプレクサ162は、複数の増幅回路161を所定の順番で選択し、選択した増幅回路161からの信号をバッファ増幅器163に供給する。バッファ増幅器163は、マルチプレクサ162から供給された信号をインピーダンス変換し、アナログ信号をAD変換器164へ供給する。AD変換器164は、供給されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0018】
撮像画素101から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、信号処理部170によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は演算部171及び記憶部172を含んでおり、演算部171が撮像画素101から読み出された信号に基づいて放射線画像を生成し、制御部180へ供給する。信号処理部170、演算部171及び記憶部172は、それぞれ信号処理回路、演算回路及び記憶回路であってもよい。検出画素104及び補正画素107から読み出された信号は、信号処理部170に供給され、その演算部171によって演算、記憶などの処理がなされる。具体的に、信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107から読み出された信号に基づいて、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を示す情報を出力する。例えば、信号処理部170は、放射線撮像装置100に対する放射線の照射を検出したり、放射線の照射量及び/又は積算照射量を決定したりする。
【0019】
制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、駆動回路150及び読み出し回路160を制御する。制御部180は、制御回路であってもよい。制御部180は、信号処理部170からの情報に基づいて、例えば、露出(照射された放射線に対応する撮像画素101による電荷の蓄積)の開始及び終了を制御する。
【0020】
放射線の照射量を決定するために、制御部180は、駆動回路150を制御することによって、検出駆動線111のみを走査し、検出画素104及び補正画素107からの信号だけを読み出し可能な状態にする。次に、制御部180は、読み出し回路160を制御することによって、検出画素104及び補正画素107に対応する画素列の信号を読み出し、放射線の照射量を示す情報として出力する。そのような動作により、放射線撮像装置100は、検出画素104における照射情報を放射線照射中に得ることができる。
【0021】
図2は、増幅回路161の詳細な回路構成例を示す。増幅回路161は、積分増幅器201と、可変増幅器202と、サンプルホールド回路203と、バッファアンプ204とを含む。積分増幅器201は、信号線120に現れた信号を増幅して出力する。制御部180は、積分増幅器201のスイッチ素子に制御信号φRを供給することによって、信号線120の電位をリセットできる。積分増幅器201は、例えば、演算増幅器と、積分容量と、リセットスイッチとを含みうる。演算増幅器は、信号線120を介して提供される電気信号を受ける反転入力端子と、基準電源から基準電圧Vrefを受ける非反転入力端子と、出力端子とを有する。積分容量およびリセットスイッチは、反転入力端子と出力端子との間に並列に配置される。積分容量は、可変の容量値Cfを有しうる。可変増幅器202は、積分増幅器201からの電気信号を増幅する。
【0022】
可変増幅器202からの出力は、サンプルホールド回路203によって保持可能である。制御部180は、サンプルホールド回路203のスイッチ素子に制御信号φSHを供給することによって、サンプルホールド回路203に信号を保持させる。サンプルホールド回路203は、例えば、サンプリングスイッチと、サンプリング容量とによって構成されうる。サンプルホールド回路203は相関二重サンプリング回路の構成であってもよい。サンプルホールド回路203に保持された信号は、バッファアンプ204を介してマルチプレクサ162によって読み出される。
【0023】
図3及び図4を参照して、放射線撮像装置100の画素の構造例について説明する。図3は、放射線撮像装置100における撮像画素101、検出画素104及び補正画素107の構成を示す平面図である。平面図は、放射線撮像装置100の撮像領域IRに平行な面への正投影と等価である。ハッチングで示すように、補正画素107の変換素子108の上に金属層が配置されており、この金属層によって変換素子108が遮光されている。
【0024】
図4(a)は、図3のA-A’線に沿った撮像画素101の断面図である。検出画素104の断面図は撮像画素101の断面図と同様である。ガラス基板等の絶縁性の支持基板400の上にスイッチ素子103が配置されている。スイッチ素子103は、TFT(薄膜トランジスタ)であってもよい。スイッチ素子103の上に、層間絶縁層401が配置されている。層間絶縁層401の上に変換素子102が配置されている。この変換素子102は、光を電気信号に変換可能な光電変換素子である。変換素子102は、例えば電極402、PINフォトダイオード403、電極404で構成される。変換素子102は、PIN型のフォトダイオードであるかわりに、MIS型のセンサによって構成されてもよい。
【0025】
変換素子102の上に、保護膜405、層間絶縁層406、バイアス線130、保護膜407が順に配置されている。保護膜407の上に、不図示の平坦化膜及びシンチレータが配置されている。電極404は、コンタクトホールを介してバイアス線130に接続されている。電極404の材料として、光透過性を有するITOが用いられ、不図示のシンチレータで放射線から変換された光を透過可能である。
【0026】
図4(b)は、図3のB-B’線に沿った補正画素107の断面図である。補正画素107は、変換素子108が遮光部材408によって覆われている点で撮像画素101及び検出画素104とは異なり、他の点は同じであってもよい。遮光部材408は、例えばバイアス線130と同層の金属層によって形成される。補正画素107の変換素子108は遮光部材408によって覆われているので、放射線に対する補正画素107の感度は、撮像画素101及び検出画素104の感度と比べて著しく低い。補正画素107の変換素子108に蓄積される電荷は放射線に起因しないということもできる。
【0027】
図5は、放射線撮像装置100を含む放射線撮像システム500の構成例を示す。放射線撮像システム500は、放射線撮像装置100と、放射線源501と、放射線源インタフェース502と、通信インタフェース503と、コントローラ504とを備える。
【0028】
コントローラ504に、目標線量、照射上限時間(ms)、管電流(mA)、管電圧(kV)、放射線をモニタすべき領域である関心領域(ROI)などが入力される。放射線源501に付属された曝射スイッチが操作されると、コントローラ504は、放射線撮像装置100に開始要求信号を送信する。開始要求信号は、放射線の照射開始を要求する信号である。放射線撮像装置100は、開始要求信号を受信したことに応じて、放射線の照射を受け入れる準備を開始する。放射線撮像装置100は、放射線の照射の受け入れの準備が整ったら、通信インタフェース503を介して放射線源インタフェース502に開始可能信号を送信する。開始可能信号は、放射線の照射開始が可能であることを通知する信号である。放射線源インタフェース502は、開始可能信号を受信したことに応じて、放射線源501に放射線の照射を開始させる。
【0029】
放射線撮像装置100の制御部180は、例えば、関心領域(ROI)に配置された検出画素104から読み出された信号の積分値が基準線量に到達したことに応じて、通信インタフェース503に放射を停止させるためのトリガ信号を送る。これに応答して、通信インタフェース503は、放射線源インタフェース502に曝射停止信号を送る。曝射停止信号を受け取った放射線源インタフェース502は、放射線源501に放射線の放射を停止させる。
【0030】
基準線量は、目標線量、放射線照射強度、各ユニット間の通信ディレイ、処理ディレイ等に基づいて、制御部180によって決定されうる。放射線の照射時間が照射上限時間に達した場合に、放射線源501は、爆射停止信号の有無にかかわらず、放射線の照射を停止する。
【0031】
本実施形態において、放射線撮像装置100は、放射線を検出した結果として、放射を停止させるためのトリガ信号を通知しているが、放射の停止方法はこれに限られない。例えば、放射線撮像装置100が、検出結果として到達線量の積算値を送信し、通信インタフェース503、もしくは放射線源インタフェース502が、基準線量と比較し、放射線源501を停止させるための信号を送る構成であってもよい。
【0032】
放射線の照射停止後、放射線撮像装置100は、撮像画素101のみが接続された駆動線110(検出駆動線111以外の駆動線110)を順次走査し、各撮像画素101の画像信号を読み出し回路160により読み出すことによって、放射線画像を取得する。検出画素104に蓄積された電荷は放射線の照射中に読み出されており、補正画素107は遮光されているため、これらの画素からの信号は放射線画像の形成に使用できない。そこで、放射線撮像装置100の信号処理部170は、検出画素104及び補正画素107の周囲の撮像画素101の画素値を用いて補間処理を行うことによって、これらの画素の位置における画素値を補間する。
【0033】
図6を参照して、放射線撮像装置100の動作例について説明する。この動作は、駆動回路150及び読み出し回路160を制御する制御部180と、信号処理部170とが連携することによって実行される。図6において、「放射線」は、放射線撮像装置100に放射線が照射されているか否かを示す。ローの場合に放射線が照射されておらず、ハイの場合に放射線が照射されている。「Vg1」~「Vgn」は、駆動回路150から複数の駆動線110に供給される駆動信号を示す。「Vgk」はk行目(k=1,...,駆動線の本数)の駆動線110に対応する。上述のように、複数の駆動線110の一部は、検出駆動線111とも呼ばれる。j番目の検出駆動線111を「Vdj」(j=1,...,検出駆動線の本数)と表す。φSHは、増幅回路161のサンプルホールド回路203に供給される制御信号のレベルを示す。φRは、積分増幅器201のリセットスイッチに供給される制御信号のレベルを示す。「検出画素信号」は、検出画素104から読み出された信号の値を示す。「補正画素信号」は、補正画素107から読み出された信号の値を示す。「積算照射量」は、放射線撮像装置100に照射された放射線の積算値を示す。この積算値の決定方法については後述する。
【0034】
放射線撮像装置100は時刻t0でリセット動作を開始し、リセット動作を繰り返す。リセット動作とは、各画素の変換素子に蓄積した電荷を除去する動作のことであり、具体的には駆動線110に駆動信号を供給することによって各画素のスイッチ素子を導通状態にすることである。制御部180は、駆動回路150を制御することによって、1行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。続いて、制御部180は、2行目の駆動線110に接続された各画素をリセットする。制御部180は、この動作を最後の行の駆動線110まで繰り返す。
【0035】
時刻t1において、放射線撮像装置100は、オフセット信号読み出し動作を開始する。オフセット信号読み出し動作とは、オフセット補正を行うための補正値(後述の補正値Od及び補正値Oc)を決定するための信号を画素から読み出す動作のことである。制御部180は、検出画素104及び補正画素107から信号を読み出す読み出し動作を所定の回数だけ繰り返し実行する。
【0036】
1回の読み出し動作において、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110(すなわち検出駆動線111)に駆動信号を同じタイミングで供給する。それによって、同じ信号線120に接続されている複数の画素からの信号が合わさって読み出し回路160に読み出される。オフセット信号読み出し動作において、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の何れにも接続されていない駆動線110に駆動信号を供給しない。
【0037】
画素からの信号が読み出し回路160に読み出された後、制御部180は、制御信号φSHを一時的にハイレベルにすることによって、信号線120を通じて画素から読み出し回路160に読み出された信号をサンプルホールド回路203に保持する。制御部180は、この保持された信号を、マルチプレクサ162によって画素列ごとに順に信号処理部170へ読み出す。その後、制御部180は、制御信号φRを一時的にハイレベルにすることによって、読み出し回路160(具体的にはその増幅回路161の積分増幅器201)をリセットする。撮像領域IR内に関心領域が設定されている場合に、制御部180は、この関心領域に含まれない検出画素104から信号を読み出さなくてもよい。
【0038】
読出し動作を実行する所定の回数が1回の場合に、1回の読み出し動作においてi番目(i=1,...,信号線の本数)の信号線120から読み出された信号を信号値Oiと表す。読出し動作を実行する所定の回数が複数回の場合に、複数回の読み出し動作においてi番目の信号線120から読み出された複数個の信号の平均値を信号値Oiと表す。平均値に代えて中央値などの他の統計値が用いられてもよい。以下に説明する他の値の平均値についても、中央値などの他の統計値が用いられてもよい。
【0039】
複数の信号線120は複数の画素列に対応して配置されているため、信号線120の順番(i)は、画素列の順番も示す。そこで、以下ではこの順番(i)を列番号と呼ぶこともある。また、複数の信号線120のそれぞれに増幅回路161が接続されているため、信号線120の順番(i)は、増幅回路161の順番も示す。検出画素104と補正画素107とは排他的に信号線120に接続されているので、読み出し回路160は、感度の異なる画素の信号を分離して読み出せる。i番目の画素列が少なくとも1つの検出画素104を含む場合に、信号値Oiを信号値Odiと表す。i番目の画素列が少なくとも1つの補正画素107を含む場合に、信号値Oiを信号値Ociと表す。
【0040】
信号処理部170は、複数の画素列のうち複数の検出画素104を含む複数の画素列の信号値Odiに基づいて1つの補正値Odを決定する。例えば、信号処理部170は、複数の画素列についての信号値Odiを平均することによって補正値Odを決定してもよい。同様に、信号処理部170は、複数の画素列のうち複数の補正画素107を含む複数の画素列の信号値Ociに基づいて1つの補正値Ocを決定する。例えば、信号処理部170は、複数の画素列についての信号値Ociを平均することによって補正値Ocを決定してもよい。複数の画素列の信号値を平均することによって、信号値に含まれるノイズを低減できる。信号処理部170は、このようにして決定した補正値Od、Ocを記憶部172に格納し、後続の処理に使用可能にする。
【0041】
信号処理部170は、撮像領域IRにROIが設定されている場合に、対象の画素列のうちROIに含まれる画素列の信号値のみを平均してもよい。信号処理部170は、ROIが複数設定されている場合に、対象の画素列の信号値を、ROIごとに平均化してもよい(すなわち、ROIごとの1つの補正値Od及び1つの補正値Ocが決定される)。さらに、信号処理部170は、1つのROIを複数の領域に分け、領域ごとに対象の画素列の信号値を平均してもよい。
【0042】
所定の回数の読み出し動作を行った後、時刻t2において、放射線撮像装置100は、リセット動作の反復を開始する。時刻t3において、制御部180は、放射線照射の開始要求信号を受信すると、最終行までリセット動作を行った後、時刻t4から読み出し動作の反復を開始する。ここで行われる読み出し動作は、オフセット信号読み出し動作における読出し動作と同じであってもよい。そして、制御部180は、時刻t5で開始可能信号を送信する。これに応じて、時刻t6で放射線の照射が開始される。
【0043】
これにかえて、放射線撮像装置100は、リセット動作から読み出し動作に移行後、所定の時間(例えば、数ms~数十ms)が経過してから開始可能信号を送信してもよい。これによって、動作切替直後の出力変動が大きい期間に信号を読み出すことを抑制できる。
【0044】
時刻t6以降、制御部180は、放射線撮像装置100に照射中の放射線の量を決定するための決定動作を開始する。決定動作において、制御部180は、検出画素104及び補正画素107から信号を読み出す読み出し動作を繰り返し実行する。繰り返される読み出し動作は、各時点の放射線の量を継続的に決定するために行われる。
【0045】
具体的に、各読み出し動作において、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の少なくとも一方に接続された駆動線110(すなわち検出駆動線111)に駆動信号を同時に(すなわち同じタイミングで)供給する。それによって、同じ信号線120に接続されている複数の画素からの信号が合わさって読み出し回路160に読み出される。オフセット信号読み出し動作において、駆動回路150は、複数の駆動線110のうち検出画素104及び補正画素107の何れにも接続されていない駆動線110に駆動信号を供給しない。
【0046】
画素からの信号が読み出し回路160に読み出された後、制御部180は、制御信号φSHを一時的にハイレベルにすることによって、信号線120を通じて画素から読み出し回路160に読み出された信号をサンプルホールド回路203に保持する。制御部180は、この保持された信号を、マルチプレクサ162によって画素列ごとに順に信号処理部170へ読み出す。その後、制御部180は、制御信号φRを一時的にハイレベルにすることによって、読み出し回路160(具体的にはその増幅回路161の積分増幅器201)をリセットする。撮像領域IR内に関心領域が設定されている場合に、制御部180は、この関心領域に含まれない検出画素104から信号を読み出さなくてもよい。
【0047】
読み出し動作においてi番目(i=1,...,信号線の本数)の信号線120から読み出された信号を信号値Siと表す。i番目の画素列が少なくとも1つの検出画素104を含む場合に、信号値Siを信号値Sdiと表す。i番目の画素列が少なくとも1つの補正画素107を含む場合に、信号値Siを信号値Sciと表す。
【0048】
信号処理部170は、複数の画素列のうち複数の検出画素104を含む複数の画素列の信号値Sdiに基づいて1つの信号値Sdを決定する。例えば、信号処理部170は、複数の画素列についての信号値Sdiを平均することによって信号値Sdを決定してもよい。信号値Sdは、放射線量に応じて変化する。同様に、信号処理部170は、複数の画素列のうち複数の補正画素107を含む複数の画素列の信号値Sciに基づいて1つの信号値Scを決定する。例えば、信号処理部170は、複数の画素列についての信号値Sciを平均することによって信号値Scを決定してもよい。信号値Scは、放射線による影響をほとんど受けない。
【0049】
信号処理部170は、撮像領域IRにROIが設定されている場合に、対象の画素列のうちROIに含まれる画素列の信号値を平均してもよい。信号処理部170は、ROIが複数設定されている場合に、対象の画素列の信号値を、ROIごとに平均化してもよい(すなわち、ROIごとの1つの補正値Od及び1つの補正値Ocが決定される)。さらに、信号処理部170は、1つのROIを複数の領域に分け、領域ごとに対象の画素列の信号値を平均してもよい。
【0050】
その後、信号処理部170は、信号値Sd、信号値Sc、補正値Od及び補正値Ocを以下の式(1)に適用することによって、照射量DOSEを算出する。
DOSE=(Sd-Od)-(Sc-Oc) …式(1)
この式では、放射線の成分を有する信号値Sdが、信号値Sc、補正値Od及び補正値Ocを用いて補正されている。
【0051】
信号処理部170は、式(1)に代えて、信号値Sd、信号値Sc、補正値Od及び補正値Ocを以下の式(2)に適用することによって、DOSEを算出してもよい。
DOSE=Sd-Od×Sc/Oc …式(2)
この式でも、放射線の成分を有する信号値Sdが、信号値Sc、補正値Od及び補正値Ocを用いて補正されている。
【0052】
検出画素104から読み出される信号は、温度環境等で変化したり、図6に示すように、リセット動作の終了直後(時刻t4の直後)に大きく時間変化し、時間の経過とともに(例えば100ms程度で)安定したりする。そのため、検出画素104から得られる信号値Sd及び補正値Odだけを用いてDOSEを算出しても、オフセット量を十分に除去できない。
【0053】
本実施形態では、補正画素107から読み出された信号値Sc及び補正値Ocをさらに用いて照射量DOSEを決定する。補正画素107は放射線に対する感度が非常に低いため、放射線の照射開始後に補正画素107から読み出された信号の値Scは、検出画素104から読み出された信号値Sdのオフセット成分を表すとみなせる。さらに、本実施形態では、放射線の照射開始前に検出画素104及び補正画素107から読み出された信号に基づく補正値Od及びOcを用いて照射量DOSEを決定している。それによって、各画素の固有の特性違い(検出回路のチャネルの差異、各画素寄生抵抗、寄生容量の差異など)を補正できる。
【0054】
時刻t7で積算照射量が基準線量に到達すると、制御部180は、放射を停止させるためのトリガ信号を送信する。これに応答して、時刻t8で、放射線の照射が停止される。
【0055】
補正値Od及び補正値Ocは、センサの温度環境等で変化してしまうことがある。そのため、放射線撮像装置100は、補正値Od及び補正値Ocを定期的に(例えば、放射線撮像装置100の起動ごとに)更新してもよい。図6の例で、放射線撮像装置100は、放射線照射の開始要求信号の受信前に補正値Od及び補正値Ocを決定する。これにかえて、放射線撮像装置100は、放射線照射の開始要求信号の受信後に補正値Od及び補正値Ocを決定してもよい。この場合に、制御部180は、補正値Od及び補正値Ocを決定した後に放射線源インタフェース502へ開始可能信号を送信し、これに応じて放射線の照射が開始される。補正値Od及び補正値Ocの決定は、放射線の照射開始前であればいつ行われてもよい。例えば、放射線撮像装置100の製造出荷時や、使用する設備への設置時、又は使用前の起動時に補正値Od及び補正値Ocが決定され記憶されてもよい。
【0056】
図7及び図8を参照して、検出画素104及び補正画素107の配置の具体例について説明する。これらの図では検出画素104及び補正画素107の配置を明確にするため、撮像画素101を省略する。また、読み出し回路160の構成要素のうち、積分増幅器201、サンプルホールド回路203及びマルチプレクサ162を示し、他の構成要素を省略する。
【0057】
図7の例では、撮像領域IRの一部に関心領域ROI_A~ROI_Eが設定されている。図8の例では、撮像領域IRの一部に関心領域ROI_A及びROI_Bが設定されている。関心領域とは、AECでモニタされる領域であり、この関心領域のそれぞれに検出画素104が配置される。1つの関心領域は、数センチメートルから十数センチメートルの長方形(正方形を含む)の領域であってもよい。1つの関心領域の幅及び高さはともに、数百~千数百程度の画素を含んでもよい。
【0058】
図7及び図8の例で、検出画素104は関心領域内にのみ配置されており、それ以外の領域に配置されていない。一方、補正画素107は、関心領域内と、それ以外の領域との両方に配置されている。これにかえて、検出画素104及び補正画素107は関心領域内にのみ配置されており、それ以外の領域に配置されていなくてもよい。
【0059】
上述したように、検出画素104と補正画素107とは信号線120に排他的に接続されている。言い換えると、検出画素104は、撮像領域IRに配置された複数の画素列のうち、補正画素107を含まない画素列に含まれる。また、撮像領域IRに配置された複数の画素列は、複数の検出画素104の何れかを含みかつ複数の補正画素107の何れも含まない画素列を含む。
【0060】
図7及び図8に示すように、読み出し回路160の内部構造は周期を有する。具体的に、読み出し回路160の複数の積分増幅器201の回路パターンは周期的に変化している。図の例では、マルチプレクサ162に対する積分増幅器201の相対位置(例えば、距離)が4個単位(4チャネル単位)で変化している。すなわち、複数の積分増幅器201の回路パターンは4周期の周期性を有する。したがって、読み出し回路160の周期は、複数の積分増幅器201の回路パターンと同じ4であるとみなしうる。
【0061】
また、図7及び図8に示すように、読み出し回路160の複数のサンプルホールド回路203の回路パターンが周期的に変化している。図の例では、マルチプレクサ162に対するサンプルホールド回路203の相対位置(例えば、距離)が4個単位(4チャネル単位)で変化している。すなわち、複数のサンプルホールド回路203の回路パターンは4周期の周期性を有する。したがって、読み出し回路160の周期は、複数のサンプルホールド回路203の回路パターンと同じ4であるとみなしうる。
【0062】
さらに、図7及び図8に示すように、1つのマルチプレクサ162に対して複数(図の例では8個)の積分増幅器201からの出力が供給される。マルチプレクサ162も固有の特性を有しうる。そのため、読み出し回路160の周期は、1つのマルチプレクサ162に出力を供給する積分増幅器201の個数と同じ8であるとみなされてもよい。
【0063】
読み出し回路の周期は、複数の積分増幅器201の回路パターンのみに基づいて決定されてもよい。この場合に、上述の例で、読み出し回路の周期は4となる。読み出し回路の周期は、複数のサンプルホールド回路203の回路パターンのみに基づいて決定されてもよい。この場合に、上述の例で、読み出し回路の周期は4となる。読み出し回路の周期は、1つのマルチプレクサ162に出力を供給する積分増幅器201の個数のみに基づいて決定されてもよい。この場合に、上述の例で、読み出し回路の周期は8となる。読み出し回路の周期は、これらの複数の要素に基づいて決定されてもよい。例えば、読み出し回路の周期は、これらの複数の要素の周期の最大公約数であってもよい。上述の例では、複数の積分増幅器201の回路パターンの周期が4であり、複数のサンプルホールド回路203の回路パターンの周期が4であり、1つのマルチプレクサ162に出力を供給する積分増幅器201の個数が8である。そこで、これらの最大公約数の4を読み出し回路の周期とみなしてもよい。
【0064】
図7及び図8の例では読み出し回路160の周期が4である場合を説明したが、読み出し回路160の周期は2以上の他の値であってもよい。例えば、読み出し回路160の周期は、4以外の他の2のべき乗であってもよいし、他の値であってもよい。
【0065】
読み出し回路160の内部構造の周期性に応じて、読み出し回路160の特性(例えば、温度変化に対する各増幅回路161のオフセットレベルの変化量)も周期性を有しうる。これは、回路の既成容量・寄生抵抗等のばらつきに起因すると考えられる。
【0066】
上述したように、式(1)及び式(2)において、補正値Ocに基づいて信号値Sdが補正される。補正値Ocは、補正画素107を含む複数の画素列から読み出された複数の信号値Ociに基づいて(例えば平均によって)決定される。複数の補正画素107を含む画素列が、読み出し回路160の周期と同じ周期を有する場合に、補正値Ocは、同じ特性を有するチャネル(言い換えると、列番号を周期で割った値が同じになるチャネル)からの信号値Ociに基づいて決定されることになる。そのため、信号値Ociの読み出しの特性が偏ってしまい、信号値Sdの補正の精度が低下する。
【0067】
そこで、一部の実施形態において、複数の補正画素107は、複数の補正画素107を含む画素列の列番号を読み出し回路160の周期で割った余りが2種類以上となるように配置されている。このように配置することによって、補正値Ocは、2種類以上の特性のチャネルからの信号値Ociに基づいて決定されるため、信号値Sdの補正の精度が向上する。さらに、複数の補正画素107は、複数の補正画素107を含む画素列の列番号を読み出し回路160の周期で割った余りが読み出し回路160の周期と同数の種類となるように配置されてもよい。これによって、補正値Ocは、すべての特性のチャネルからの信号値Ociに基づいて決定されるため、信号値Sdの補正の精度がさらに向上する。
【0068】
補正画素107を含む画素列は、撮像領域IRを構成する複数の画素列において、周期的に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。図8の例で、補正画素107を含む画素列は、周期3となるように配置されている。そのため、複数の補正画素107を含む画素列の列番号を読み出し回路160の周期の4で割った余りは、4種類(0、1、2、又は3)となる。この例では、読み出し回路160の周期(図8の例では、4)と、補正画素107を含む画素列の列番号の周期(図8の例では、3)とが互いに素である。この場合に、複数の補正画素107を含む画素列の列番号を読み出し回路160の周期で割った余りが読み出し回路160の周期と同数の種類となる。複数の補正画素107を含む画素列の列番号は、3以外の値であってもよく、例えば他の奇数であってもよいし、他の値であってもよい。
【0069】
図9は、図8に示した読み出し回路160の特性の周期的変化を示す。図9(a)及び図9(b)では、横軸に列番号をとり、縦軸に各列番号に対応する増幅回路161の温度特性を示す。図9(a)及び図9(b)に示すように、温度特性は周期4の周期性を有している。図9(a)は、比較例として、補正画素107を周期4で配置した場合を示す。この場合に、温度特性の1種類のチャネルのみが使用されるため、補正値Ocの決定に使用される信号値Ociの特性が偏ってしまう。一方、図9(b)は、図8のように、補正画素107を周期3で配置した場合を示す。この場合に、温度特性のすべての種類のチャネルが使用されるため、補正値Ocの決定に使用される信号値Ociの特性が偏らない。
【0070】
上述の実施形態では、検出画素104から得られた信号値Sdを、補正画素107から得られた補正値Ocを使用して補正する例について説明した。上述の実施形態は、それ以外の補正についても使用されてもよい。例えば、図6の時刻t8以降に撮像画素101から得られた信号値を補正するために、補正画素107から得られた補正値Ocが使用されてもよい。この場合に、撮像画素101は、補正画素107と同じ画素列に含まれていてもよい。
【0071】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0072】
100 放射線撮像装置、101 撮像画素、104 検出画素、107 補正画素、110 駆動線、111 検出駆動線、120 信号線、150 駆動回路、160 読み出し回路、170 信号処理部、180 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9