(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】除菌ケース
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240830BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20240830BHJP
A45C 11/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61L2/10
A45C11/00 Z
A45C11/04 A
(21)【出願番号】P 2020131533
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左近 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】上松 正和
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-081307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0064064(US,A1)
【文献】特開2011-078678(JP,A)
【文献】特開2020-081744(JP,A)
【文献】特開平10-085022(JP,A)
【文献】特開2011-045810(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158989(WO,A1)
【文献】特開平11-318566(JP,A)
【文献】特開2005-111034(JP,A)
【文献】特表2012-524286(JP,A)
【文献】特開2020-007629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A45C 11/00
A45C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服のポケットに収納され得る大きさの長尺状の収容ケースと、
前記収容ケース内に設けられ、当該収容ケース内の収容空間に向かってUVC領域の波長の紫外線を照射する光源とを備え、
前記光源は、前記収容ケースの長手方向の側壁に設けられており、
前記収容ケースの内面には、前記光源から照射された紫外線を前記収容空間に向けて反射させるためのアルミニウム層が前記収容ケース内の全ての面に形成されており、
前記アルミニウム層は、予め定められた表面積の領域に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が前記領域の表面積に対して0.05%以下であり、前記領域内に存在する晶出物の総表面積が前記領域の表面積に対して2%以下であり、前記晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm
2以下であり、前記領域の表面粗さRaが20nm未満
のアルミニウム箔であり、
前記アルミニウム層表面の一部に、シリコーンゴム、合成樹脂、ガラス、金属の少なくともいずれかの材料を含む凸部状の保護部を備える、
いることを特徴とする、除菌ケース。
【請求項2】
前記アルミニウム層の表面に、ガラスコートが施されていることを特徴とする、請求項1に記載の除菌ケース。
【請求項3】
前記アルミニウム層の表面に、陽極酸化被膜が施されていることを特徴とする、請求項1に記載の除菌ケース。
【請求項4】
前記収容ケースは、前記収容空間を形成するケース本体と、
前記ケース本体を閉塞するための閉塞部材と、
前記閉塞部材が、前記ケース本体の開口を閉塞した閉塞位置にあることを検出する検出部と、
前記検出部で前記閉塞部材が前記閉塞位置にあることが検出されたときに、前記光源に紫外線を照射させる制御部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の除菌ケース。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部で前記閉塞部材が前記閉塞位置にあることが検出されてから所定の時間が経過するまで前記光源に紫外線を照射させ、その後、前記閉塞部材が前記閉塞位置を離れて再び前記閉塞位置に戻ったことが検出されるまでの間、前記光源から紫外線を照射させないスリープ状態となることを特徴とする、請求項4に記載の除菌ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用者が携帯可能な除菌ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ、ノロウイルス、コロナウイルス等、世界各国において細菌や真菌やウイルスによる健康被害が懸念されている。こうした中、細菌や真菌やウイルスを拡散させないためにも、マスクを着用することが常態化しており、年中問わずマスク着用する人も一定数存在する。しかしながら日常生活において、食事や挨拶等においてマスクを一時的に取り外すことがあり、取り外したマスクは、ポケットやカバン、テーブルの上に一時的に置かれることが多い。
【0003】
そうした場合、一時的に置く場所が菌やウイルスに汚染されている場合、再びマスクを着用すると、着用者に更なる健康被害のリスクに晒されるおそれがある。そこで、例えば、非特許文献1に示されるように。マスクを収容してUVC波長を照射して菌やウイルスを不活性化する収容ケースが考案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社MEDIK, "[新商品]最新のUV-C LEDを使ってマスクを除菌できるマスク除菌ケースを新発売", [online], 2019年12月4日, [2020年7月15日検索], インターネット<URL:https://medik.co.jp/news/20191204_idam_mask.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の技術では、携帯性を有するとはいえども大型であり、衣服のポケットに収納できるサイズではないという問題がある。例えば、使用者が昼食等において外出する際に除菌ケースを携行する場合に、除菌ケースを直接手で持ち歩くか、除菌ケースを入れるためのカバンを持ち歩いて使用時にカバンから取り出す必要がある。しかしながら、例えば、細菌や真菌やウイルスの流行が報じられていない状況において、そうした商品を持ち歩くことが大袈裟に思われるのを恥じて、携行を控えてしまうおそれがある。除菌ケースを小型化することもできるが、光源による紫外線の照射角度が狭いために、光源からの紫外線がマスク全体にいきわたらないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、小型でありながらマスク等の小物全体にUVC領域の波長(以下、UVC波長ともいう)の紫外線を照射して除菌可能な除菌ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る除菌ケースは、衣服のポケットに収納され得る大きさの長尺状の収容ケースと、前記収容ケース内に設けられ、UVC領域の波長の紫外線を当該収容ケース内の収容空間に向かって照射する光源とを備え、前記収容ケースの内壁面に、前記光源から出力された紫外線を前記収容空間に向けて反射させるためのアルミニウム層が形成されている。
【0008】
本開示において、「除菌」とは、細菌や真菌の増殖を抑制することを示すが、これに限らずウイルスの不活性化による増殖抑制を含む。
【0009】
除菌ケースが上記構成であることにより、ポケットに収容可能なサイズでありながら、光源から照射される紫外線が収容ケースの内面でアルミニウム層に反射されて、収容したマスク等の小物に無駄なく照射される。すなわち、小型でありながら収容ケースに収容された小物全体に紫外線を照射させて除菌することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る除菌ケースは、小型でありながら収容ケースに収容された小物全体に紫外線を照射させて除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】衣類のポケットに除菌ケースを収納している様子を示す図
【
図4】LEDから照射されたUVC光が収容ケースの内面で反射される様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の除菌ケース1は、使用者Mが片手での把持が可能であり、衣服CのポケットPに収納され得る大きさの長尺状の収容ケース2と、収容ケース2内に設けられ、後述する収容空間Qに向かってUVC波長の紫外線(以下「UVC光」という)を照射する光源4とを備える。除菌ケース1が収容される衣服CのポケットPの場所やサイズは、特に限定されないが、例えば、シャツやスーツなどの胸ポケット、ジャケット等の内ポケットや腰ポケット、ズボンの後ろポケット、ズボンやスカートの横ポケットが例示される。
図1では、ズボンの後ろポケットPに除菌ケース1を収容しているところを示している。
【0014】
-収容ケース-
図2は、除菌ケースの構成例を示す。
図2では、説明の便宜上、収容ケース2をテーブル等に置いた状態を基準として上下を定義し、後述する蓋体27が閉じる方向を手前、開く方向を奥とする。また、手前側から見た正面視を基準にして左右を定義する。
【0015】
収容ケース2は、前述のとおり衣服CのポケットPに収納され得る大きさの長尺状であり、その外形サイズは、例えば、奥行きDが3cm以上7cm以下、高さHが1cm以上6cm以下、長さLが10cm以上20cm以下であるのが好ましい。より好ましくは、一般的なメガネケースよりも、奥行寸法が小さく、長手方向の寸法が同程度か長い形状が好ましい。そのように構成することで、シャツやスーツなどの胸ポケット、ズボンのポケット等に収納しやすくなる。本開示において、「ポケットに収納」とは、収容ケース2の全体がポケットPに完全に収納される状態に限定されず、例えば、収容ケース2の概ね半分以上がポケットPに収納される一方で、その一部がポケットPの外にはみ出しているような状態も含むものとする(
図1参照)。
【0016】
収容ケース2の外形形状は、特に限定されない。例えば、長手方向の一方から見た側面視(以下、単に側面視という)において、断面が略半円状のカマボコ型の形状であってもよいし、布等の生地や樹脂製シート、不織布を縫って形成された長袋状の形状であってもよい(後述する
図5参照)。また、例えば、収容ケース2が、直方体形状であってもよいし、側断面形状が楕円や円形等の円柱形状であってもよいし、側断面形状が三角形や五角形以上の多角柱形状でもよい。なお、直方体形状以外の形状の場合には、収容ケース2の閉塞状態において、例えば、奥行きD、高さH及び長さLのそれぞれについて、最も寸法の大きい箇所が前述の数値範囲におさまっているのが好ましい。収容ケース2の閉塞状態及び開放状態については、後ほど説明する。
【0017】
収容ケース2を構成する材料としては特に限定されない。例えば、金属板を折り曲げ加工したもの、プラスッチック成型したもの、布等の生地を縫ったもの、布等の生地や樹脂製シート等と厚紙等とを組み合わせたものが例示される。また、ケース外面に、意匠性を向上させるために、収容ケース2のベースとなる構成部材の表面に、皮革、合皮、樹脂シート等の公知の材料で形成されたシート等を貼り合わせてもよく、同表面に印刷やエンボス加工等を施してもよい。
【0018】
収容ケース2の内側には、マスクや筆記具のような除菌対象となる小物G(以下単に「小物G」という)を収容するための収容空間Qが形成されている。収容空間Qの広さは、収容ケース2の肉厚を薄くすることで、収容ケース2の外形サイズと実質的に同じような範囲で設定される。具体的に、収容空間Qの広さは、例えば、奥行きDが3cm以上7cm以下、高さHが1cm以上6cm以下、長さLが10cm以上20cm以下である。収容空間Qの広さは、例えば、大人用のマスクを広げた状態でちょうど入るようなサイズであってもよいし、マスクを折りたたんだり、少し丸めることで収納できる広さに設定されてもよい。なお、収容空間Qの広さが、上記の下限値よりも狭い場合、小物Gが収容できないか、又は、小物Gと収容ケース2の内面20(
図4参照)との間に隙間ができずに、小物Gの一部にしか光源4からのUVC光が照射されないおそれがある。一方で収容空間Qの広さが、上記の上限値より大きいと、除菌ケース1がポケットPに入らずにかさばって携行されなかったり、少ない光源4で収容ケース2の全体に照射しきれず、光源4の数を増やす必要がでてくる場合がある。
【0019】
図2の収容ケース2は、概ねのサイズが長さL×奥行きDである矩形状の底板21と、底板21の左右両端から互いに対向するように立設された左側板22及び右側板23と、底板21の前後端において両側板22,23と連続しかつ互いに対向するように立設された前板24及び背板25とを備える。また、前板24の内側には、円筒状のバッテリー48(例えば、蓄電池)が配置されており、そのバッテリー48の外側を覆うように側面視で円弧状の電池カバー28が設けられている。
【0020】
ケース本体は、底板21、両側板22,23、背板25及び前板24により構成されている。そして、前述の収容空間Qは、底板21、両側板22,23、蓋体27、背板25及び前板24(電池カバー28)の内側の空間、すなわち、ケース本体と蓋体27とで囲まれた空間である。また、前述の収容ケース2の内面20とは、両側板22,23、蓋体27、背板25及び前板24(電池カバー28)の内側の面(収容空間Qに露出した面)を指している。
【0021】
収容ケース2の上方は、開放され、マスク等の小物を収容空間Qに出し入れするための開口部26が形成されている。収容ケース2には、開口部26を閉塞したり/開放させたりする(以下、単に「開閉させる」ともいう)ための蓋体27が設けられている。
【0022】
図2の例では、蓋体27は、収容ケース2の背板25と連続一体的に形成され、背板25の上端を支点とした前後方向(奥行方向)への回動により、開口部26を閉塞したり/開放させたりすることができるように構成されている。開口部26が閉塞された状態を閉塞状態と呼び、開口部26が開放された状態を開放状態と呼ぶものとする。
図2は、収容ケース2が開放状態の図である。
【0023】
蓋体27は、閉塞状態が保持できるように構成されているのが好ましい。例えば、
図2では、蓋体27の開放端側端部と、前板24の上端部との対応する位置にそれぞれマグネット31,32を設け、閉塞状態において両マグネット31,32の引力により、閉塞状態が保持されるようになっている。これにより、不用意に蓋体27が開いて収容空間Q内に収納された小物Gが脱落して細菌やウイルス等に汚染されるのを防ぐことができる。
【0024】
なお、開口部26の開閉方法は、
図2の構成に限定されない。例えば、(1)左右の一方端部(例えば左側板22)が開閉されるように構成されていてもよいし、(2)収容ケース2と蓋体27とが別体かつ取り付け/取り外し可能な構成(例えば、入れ子構造や螺合構造)になっていてもよいし、(3)収容ケース2と蓋体27との一部が、例えばヒンジ等により接続されて開閉可能に構成されていてもよい。なお、収容ケース2と蓋体27との一部が互いに接続されて開口部26の開閉が可能に構成されていると、小物Gの収納/取り出しが容易なため好ましい。
【0025】
また、
図2の例では、背板25よりも前板24の高さを低くしており、収容ケース2を開放状態としたときの正面視において、収容空間Qに収容された小物Gが見えやすく、取出しやすいようになっている。
【0026】
-光源-
収容ケース2には、収容ケース2の収容空間Qに向かってUVC光を照射する光源4が設けられている。光源4の数及び種類は、特に限定されないが、例えば、LED41を好適に用いることができる。UVC光が照射可能なLED41として、従来から知られているものを用いることができる。LED41は、照射角度が概ね120度程度のものを好適に用いることができる。ただし、LED41の照射角度が120度よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0027】
なお、光源4は、収容ケースの長手方向の側壁である左側板22及び/又は右側板23の内面20に設けられているのが好ましい。これにより、収容ケース2の収容空間Qの全体にUVC光を行き届かせることができる。
図2では、左右両側板22,23の中央に、それぞれ1つずつLED41(点光源)が設けられた例を示している。左側板22、右側板23は、側壁の一例である。
【0028】
さらに好ましくは、左右の両側板22,23に加え、背板25や前板24の長手方向の中間付近にもLED41が設けられているとよい。これにより、収容ケース2の収容空間Qの全体にさらにUVC光を行き届かせることができる。また、小物Gとしてマスクを収容する場合に、口元に相当する部位に対してUVC光をより強く当てることができる。
【0029】
ここでUVC波長とは、200nm~280nm波長を指すものとする。したがって、光源4として、ピーク波長が200nm~280nmのLEDを用いるのが好ましい。また、光源4として、ピーク波長が300nm以上であり、200nm~280nm波長の紫外線も照射可能に構成されたLEDを用いてもよい。より好ましくは、光源4のピーク波長が220~276nmの範囲であると、除菌に対するエネルギー効率がよいため好ましい。
【0030】
UVC光は、細菌や真菌やウイルスに共通する核酸塩基(DNA,RNA)に対してダメージを与えることが報告されており、これらの増殖を防ぐことが期待される。そのため、細菌や真菌やウイルスの種類に特定されず、様々な病原体の抑制に効果を発揮することができる。
【0031】
光源4の出力レベルは特に限定されないが、除菌ケース1の光源全体でのUVC波長の出力が0.3mW以上60mW以下であることが好ましい。例えば、
図2のように光源4としてLED41を2つ用いる場合には、各LED41のUVC波長の出力が0.1mW以上6mW以下であることが好ましい。特に、UVC波長を出力可能なLEDはUVC波長出力5mW以上の出力において高い発熱が見られるので、除菌ケース1の電源として収容ケース2に内蔵されたバッテリー48を用いる場合、消費電力や発熱性を鑑みてUVC波長の出力が1mW以上5mW以下とすることが好ましい。
【0032】
またLED41の数は限定されず、1個でも備えていればよいが、長尺状のケースの内面全面にUVC波長の光が行き届くように、長尺方向の両端(
図2では両側板22,23)にそれぞれ備えられていることが好ましい。以下の説明では、光源4にLED41を用いるものとして説明する。
【0033】
-アルミニウム層-
収容ケース2の内面20には、LED41から照射された紫外線を収容空間Qに向けて反射させるためのアルミニウム層29が形成されている。アルミニウム層29の形態は、特に限定されず、例えば、アルミニウム箔であってもよいし、アルミニウム板であってもよいし、アルミニウム蒸着フィルムであってもよいし、アルミニウム顔料やアルミニウムペーストであってもよい。アルミニウム箔は、加工性に優れ、軽量で且つ圧延工程等により表面状態を均一化乃至平坦化することができるため好ましい。
【0034】
アルミニウム層29の材質は、特に限定されないが、反射率が最大60%以上であるアルミニウムを用いるのが好ましく、反射率を最大80%以上に高めたアルミニウム(以下、「高反射アルミニウム」という)を用いるのがより好ましい。また、アルミニウム層29として、抗菌性を高めたアルミニウム(以下、「抗菌性アルミニウム」という)を用いてもよい。アルミニウム顔料やアルミニウムペーストを用いる場合には、ボールミルやアトライターミルの中で粉砕媒体の存在下で粉砕助剤を用いて粉砕もしくは摩砕することにより作られる一般的に知られているリーフィング型アルミニウム顔料や、これに分散剤や脂肪酸等を加えたアルミニウムペーストを好適に用いることができる。こうしたアルミニウム顔料やアルミニウムペーストをハケやスプレーによって収容ケース2の内面20に塗布して乾燥することで、複雑な形状であっても均一にアルミニウム層を設けることができる。
【0035】
〔高反射アルミニウム〕
高反射アルミニウムは、UVC光の反射率を最大80%以上に高めたアルミニウムであればよく、組成・構成等は特に限定されないが、例えば、WO2017/158989に開示されている紫外線反射材用アルミニウム箔を好適に用いることができる。上記紫外線反射材用アルミニウム箔は、例えば、予め定められた表面積の領域(以下、単に「領域R」という)に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が、領域Rの表面積に対して0.05%以下であり、領域R内に存在する晶出物の総表面積が領域Rの表面積に対して2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm2以下であり、領域Rの表面粗さRaが20nm未満であるという特徴を有する。
【0036】
高反射アルミニウムの組成は特に限定されないが、Feの含有量は0.001%質量以上0.5質量%以下であることが好ましい。Feはアルミニウムへの固溶度が小さいため、アルミニウムの鋳造時にFeAl3等の金属間化合物が晶出しやすくなる。これらの晶出物は、アルミニウム素地よりも紫外線の反射率が低く、アルミニウム箔としての紫外線反射率を低下させる原因になる。Feの含有量が0.5質量%以上になると、添加しているFeが全て晶出した場合、Al‐Fe系金属間化合物としてのFeAl3の晶出量が1.2質量%を超えて存在することになり、250nm~400nmの紫外線全反射率は85%よりも低くなる傾向がある。このため、Feの含有量を0.5質量%以下にするのが望ましい。また、Feの含有量が0.001質量%未満であると、アルミニウム箔の強度が低下する傾向がある。
【0037】
また、本実施の形態に係るアルミニウム箔においてMnの含有量は0.5質量%以下であることが好ましい。Feと同様にMnもアルミニウムへの固溶度が小さいため、アルミニウムの鋳造時にAl‐Fe‐Mn系の化合物等が晶出しやすくなる。Al‐Fe‐Mn系の晶出物は、Al‐Fe系の晶出物よりも微細であるが、これらの晶出物は、アルミニウム素地よりも紫外線の反射率が低く、アルミニウム箔としての紫外線反射率を低下させる原因になる。マンガンの含有量が0.5質量%以上になると、添加しているMnが全て晶出した場合、Al‐Fe‐Mn系金属間化合物が1.5質量%を超えて存在することになり、250nm~400nmの紫外線全反射率は85%よりも低くなる傾向がある。このため、Mnの含有量を0.5質量%以下にするのが望ましい。
【0038】
さらに、本実施の形態に係るアルミニウム箔においてSiの含有量は0.001%質量%以上0.3質量%以下であることが好ましい。Siはアルミニウムへの固溶度が大きく晶出物を形成し難いため、アルミニウム箔において晶出物を生成させない程度の含有量であれば紫外線の反射率を低下させることがない。また、Siを含むと固溶強化によってアルミニウム箔の機械的強度を向上させることができるので、厚みが薄い箔の圧延を容易にすることができる。Siの含有量が0.001質量%未満では、上述の効果を十分に得られない傾向にある。Siの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な晶出物が発生しやすくなり、反射特性が低下するだけでなく、結晶粒の微細化効果も損なわれるため、強度と加工性も低下する傾向にある。
【0039】
本実施の形態に係るアルミニウム箔においてMgの含有量は3質量%以下であることが好ましい。Mgはアルミニウムへの固溶度が最大で18質量%と大きく、晶出物の発生が極めて少ないため、アルミニウム箔の反射特性に大きな影響をおよぼすことなく、アルミニウム箔の機械的強度を改善することができる。しかし、Mgの含有量が3質量%を超えると、アルミニウム箔の機械的強度が高くなりすぎるので、アルミニウム箔の圧延性が低下する傾向がある。アルミニウム箔の好ましい反射特性と機械的強度とを兼ね備えるためには、Mgの含有量を2質量%以下にすることがさらに好ましい。
【0040】
なお、高反射アルミニウムは、上記の特性と効果に影響を与えない程度の含有量で、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)等の元素を含んでいてもよい。
【0041】
上記のような構成にすることで、アルミニウム層29として、UVC波長の光を最大80%以上反射させることができ、効率よくUVC波長の光を小物Gに照射することができる。
【0042】
〔抗菌性アルミニウム〕
抗菌性アルミニウムは、通常のアルミニウムよりも抗菌性を高めたアルミニウムであればよく、組成・構成等は特に限定されないが、例えば、Cuの含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下の範囲にあるアルミニウムを用いることができる。これにより、アルミニウム層29による抗菌作用も発揮されるので、収容空間Qの除菌効果を高めることができる。また、上記の構成とすることで、UVC波長の光を最大60%以上反射することができるため好ましい。
【0043】
また、抗菌性アルミニウムとして、特開2020-7629に開示されているように、0<Si≦0.20質量%のSi、1.0≦Fe≦1.7質量%のFe、0.05≦Cu≦0.30質量%のCu、0<Mn≦0.20質量%のMn、0<Mg≦0.20質量%のMg、0<Zn≦0.03質量%のZn、及び0<Ti≦0.03質量%のTiを含有し、残部がAl及び不可避不純物であるアルミニウム合金を用いてもよい。このアルミニウム合金を公知の方法によって展伸してアルミニウム箔とし、そのアルミニウム箔の厚み方向表層2μm以内に1.0質量%以上のFeが濃化されるのが好ましい。このアルミニウム箔はJIS Z2801に規定する抗菌力試験において、抗菌活性値が3.0以上が発現することが確認されている。これにより、収容空間Qに収納される汚染されたマスク等の小物Gにより収容ケース2の内面20が汚染されるのを効果的に抑制することができる。特に、小物Gと抗菌性アルミニウムで形成されたアルミニウム層29とが接触している箇所においては、照射されるUVC光との相乗効果により、より高い抗菌/殺菌効果が得られる。
【0044】
図3は、アルミニウム箔と、ステンレス箔(
図3ではSUSと記載)や銅箔(
図3ではCuと記載)とにおいて、紫外線の反射率を比較した図である。
図3に示すように、アルミニウム箔は、ステンレス箔や銅箔と比較して、UVC光に対して高い反射性を持つ。したがって、アルミニウム層29を用いることで、効率よく反射させたUVC光が収容空間Qに収容された小物Gの広い範囲に照射される。
【0045】
アルミニウム層29は、小物Gの広い範囲にUVC光を照射させて、より効率よく除菌・抗菌が行われるようにする観点から、UVC光が反射されやすくなるように、収容ケース2の収容空間Qに露出された全ての面に形成されているのが好ましい。具体的には、
図2の構成において両側板22,23、蓋体27、背板25及び前板24(電池カバー28)のすべての内面20に、一様にアルミニウム層29が形成されているのが好ましい。なお、アルミニウム層29は、収容ケース2の全ての内面20に形成されていなくてもよい。例えば、
図2に示すように、LED41が、左右の両側板22,23に設けられている場合に、そのLED41の光軸に沿う方向(
図2では長手方向)に延びる壁面にのみ、アルミニウム層29を形成するようにしてもよい。この場合、
図2の例では、蓋体27、背板25及び前板24(電池カバー28)の内面20にアルミニウム層29が形成される。このような構成にすることで、
図4に示すように、LED41から照射されたUVC光が収容ケース2の内面20で反射されて、小物Gの広い範囲にUVC光を照射させることができる。なお、収容ケース2の内面20において、アルミニウム層29は、一様に形成されているものとしたが、製造上の理由などにより、アルミニウム層29の一部が欠けていたり、ストライプ状のようにアルミニウム層29と他の素材の層とが混在していてもよい。
【0046】
アルミニウム層29の表面に、収容空間Qに収容される小物Gによる傷つきなどを抑えるために、樹脂コーティング、塗料コーティング、ガラスコーティング等、陽極酸化被膜の形成を施してもよい。特に、傷つきなどを抑えるための強度を確保しつつ、UVC光の透光性が高いとの観点から、ガラスコーティング及び/又は陽極酸化被膜処理を施すことが好ましい。
【0047】
また、小物Gが金属製の鍵や鋭利な先端を有する筆記用具等の場合に、収容する際に強くアルミニウム層29に当ててしまって傷を付けるおそれがあり、また指の指紋が付いて意匠性およびUVC光の反射性が低下するおそれがあるため、アルミニウム層表面の一部に、シリコーンゴム、合成樹脂、ガラス、金属等の少なくともいずれかの材料を含む凸部状の保護部を備えてもよい。例えばこうした材料が、アルミニウム層29の表面上に、規則的又は不規則的なドットパターン、直線や曲線状のパターン、文字や図柄を呈するパターン、幾何学模様等の所定の凸部形状に備えられていることで、直接小物Gや指等の物体がアルミニウム層に触れて傷がつきにくくなるため好ましい。またこうした保護部を設ける場合、保護部によってUVCの光の反射が妨げられるおそれがあるため、アルミニウム層29の表面積に対して保護部が設けられた面積の割合が20%以下の範囲であることが好ましい。こうした保護部によってアルミニウム層29が保護されるだけでなく、保護部によって小物Gとアルミニウム層29との間に隙間が生じるので、UVCの光が反射して広がる光路にもなり、より小物Gの表面全体にUVCの光を行き届かせることができる。
【0048】
-光源のオン/オフ切替-
LED41のオン/オフ切替の方法は、特に限定されない。
【0049】
例えば、収容ケース2に、収容ケース2が閉塞状態になったことを検出するセンサやスイッチなどの検出部を設けて、検出部により、収容ケース2が閉塞状態であることが検出されたときに、LED41を点灯させるようにしてもよい。このような構成にすることで、使用者がLED41のオンとオフを切り替える手間を煩わせる必要がなく、小物Gを収容したら自動でUVC光が小物Gに照射される。また、収容ケース2の閉塞状態が解除された際にLED41が自動でオフになるように構成してもよい。これにより、子供等が収容ケース2の蓋体27を不用意にあけることで、点灯中のLEDを触ったり、UVC光が目に照射されたりするおそれがなく、安全に使用することができる。
【0050】
また、点灯時間を計測するタイマーを設けて、所定の時間が経過したときにLED41を消灯させるようにすることで、点灯時間をコントロールするようにしてもよい。そして、収容ケース2の閉塞状態が解除されて、再び閉塞状態になれば、LED41が再点灯されるように構成される。
【0051】
収容ケース2が閉塞状態にあるか否かを検出するスイッチは、タクトスイッチやオルタネイトスイッチ等の公知のスイッチを使うことができるほか、静電容量スイッチやリードスイッチ等を用いることができる。
【0052】
好ましくは、指や他の物品により不用意にスイッチを押すことが無いように、リードスイッチにより収容ケース2が閉塞状態にあるか否かを検出できることが好ましい。
図2の例では、前板24の上端部にリードスイッチ34を設け、蓋体27のリードスイッチ34と対応する位置にマグネット33を設けている。これにより、蓋体27が閉じられると、マグネット33の作用により、リードスイッチ34がオン(導通)されるので、LED41を点灯制御させることができる。また、蓋体27が開けられると、リードスイッチ34がオフ(遮断)されるので、LED41の消灯させることができる。リードスイッチ34は、閉塞部材としての蓋体27が閉塞位置にあることを検出する検出部の一例である。
【0053】
なお、上記の機能を、マイコン45を用いて実現するようにしてもよい。この場合のマイコン45は、検出部で蓋体27(閉塞部材)が閉塞位置にあることが検出されたときに、光源に紫外線を照射させる制御部の一例である。マイコン45は、例えば、収容ケース2に取り付けられた基板43に実装される。例えば、マイコン45とLED41との間は配線42で接続され、マイコン45とリードスイッチ34との間は配線44で接続される。
【0054】
電源供給方法は、特に限定されないが、例えば、携行性の観点から、収容ケース2内がバッテリー48(乾電池やキャパシタ等を含む)備えられ、バッテリー48からLED41やマイコン45に電源が供給される。
【0055】
LED41の点灯時間は、LED41のUVC出力によっても変わり特に限定されないが、例えば、LED41のUVCの合計出力が1mW以上10mW以下の範囲においては、LED41を30秒以上20分以下の範囲であらかじめ設定されるのが好ましい。一般的に、UVC光を30秒照射させれば大半の細菌やウイルスが不活性化することが知られている。また、10分を超えてLED41を照射させても、完全に細菌やウイルスが不活性化するとは限らず、エネルギー効率や発熱の観点から好ましくない。より好適には、1分以上10分以下であると、99%以上の細菌や真菌やウイルスを不活性化することができる。なお、使用者Mの設定により、LED41の点灯時間(所定時間)が変更できるように構成されていてもよい。
【0056】
マイコン45は、小物Gが収容されていてもされていなくても、蓋体27が閉じられるとLED41をオン制御し、所定時間の経過後にLED41をオフ制御するように、プログラミングされているのが好ましい。LED41をオフ制御した後に、マイコン45自身もスリープ状態にしてもよい。その後、蓋体27が開かれ(閉塞位置を離れて)再び閉じられるたことが検出されるまでの間、スリープ状態(LED41のオフ状態を含む)が継続される。そして、マイコン45は、蓋体27が再び閉じられるたことが検出されると、LED41を所定時間オンさせる。
【0057】
このような構成にすることで、LED41の切り忘れを防ぐだけでなく、無駄なエネルギーを節約すること、およびLED41による過度の発熱を防ぐことができる。また、小物Gが収容されていなくてもLED41を所定時間オンすることは、収容ケース2内を常に清潔に保つために好ましい。細菌や真菌やウイルスは飛沫として空気中に浮遊しているものもあり、収容ケース2が開けられるたびにこうした浮遊物が入り込む恐れがある。そうすると、次に収容ケース2に小物Gを収容した際にそれが小物に付着してしまうおそれがある。また、使用者Mにより、所定時間を待たずに小物Gが取り出された場合、小物Gの収容前よりも収容ケース2内が汚染されているリスクが生じる。そこで、小物Gを収容していなくても収容ケース2の蓋体27が閉じられるたびにLED41がオンされるのが好ましい。また、蓋体27の開閉に応じてLED41の点灯/消灯を制御することで、例えば、小物Gがマスクのような厚くて光を吸収しやすい素材の場合に、使用者がマスクを折り返して複数回収容してマスク全面にUVC波長の光を照射するような使い方もできる。
【0058】
なお、UVC光を照射するLED41とは別に、収容ケース2の外側に向かって発光する可視光のLED(図示省略)を設けてもよい。この場合、例えば、マイコン45は、LED41の点灯タイミングにあわせて、収容ケース2の外側に設けた可視光LEDを点灯させる。そうすることで、ケース内のLED41の照射を使用者に伝えることができる。また、LED41の消灯タイミングに合わせて、上記の可視光LEDを消灯させることで、収容ケース2内においてLED41が消灯されていることを使用者Mに伝えることができる。
【0059】
こうした可視光のLED41は、収容ケース2の内側に向かって発光するように、収容ケース内部に設けておき、且つ収容ケース2の少なくとも一部に光透過性の樹脂によって収容ケース2の外側から収容ケース内部を視認可能な覗き窓を設けてもよい。これにより、収容ケース内で小物GにUVCが照射されていることを擬似的に体感することができると共に、LED41のオンとオフとを視認により確認することができる。
【0060】
なお、覗き窓は光透過樹脂であれば可視光やUVCの光源から発せられる光のうちUVA光等の長波長域の一部は透過するものの、波長が極めて短いUVC波長の光は吸収されるため、ケース外にUVC光は漏れず、安全に収容ケースの内部を視認することができる。
【0061】
こうした光透過樹脂の種類は特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、これらの共重合体を含む)、アクリル系樹脂を好適に用いることができる。
【0062】
こうした覗き窓は、収容ケース内部においてUVCの光の反射を妨げる要因になるため、10cm2以下の大きさであることが好ましく、より好ましくは3cm2以下の大きさであることが好ましい。また覗き窓の位置は特に限定されないが、収容ケース2の蓋体27又は本体のうち、UVC光源(LED41)の近傍の側面であって、UVC光源の死角(UVC光源の照射角から外れた領域)に設けられていることが好ましい。この位置であれば、UVC光源から出力される直接的なUVC光は収容ケース内で効率的に反射させて利用する一方で、複数回の反射を経て覗き窓に届いたUVC光は既に相応に減衰しているため、より無駄なくUVC光を利用することができる。
【0063】
また、マイコン45は、バッテリー48の電圧を監視するようにしてもよい。そして、例えば、マイコン45において、バッテリー48の電圧が所定値以下となってバッテリー切れが推定される場合に、上記の可視光LEDを点灯又は点滅させて、使用者Mにバッテリー切れを伝えてもよい。
【0064】
以下において、一実施態様を示し、本発明の特徴を一層明確にする。ただし、本発明の範囲は、この実施態様に限定されるものではない。
【0065】
<実施態様>
樹脂製であり、蓋と容器とがヒンジで接合され、マグネットで閉塞状態が保持されるように構成された市販のポケッタブルメガネケース(幅16cm、高さ3cm、奥行き5cm、側断面がカマボコ形状)を用意した。メガネケースの内面のフェルトを剥がし、予め定められた表面積の領域(以下、単に「領域R」という)に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が、領域Rの表面積に対して0.05%以下であり、領域R内に存在する晶出物の総表面積が領域Rの表面積に対して2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm2以下であり、領域Rの表面粗さRaが20nm未満であるアルミニウム箔(東洋アルミニウム製高反射箔、厚さ20μm)をメガネケースの内面全面に市販の両面テープにより貼り付けた。メガネケースは、収容ケース2に相当し、アルミニウム箔はアルミニウム層29に相当する。
【0066】
次いで、市販のUVC波長を照射可能に構成された表面実装型LED(257nmピーク波長、UVC出力3mW)を2個用意した。表面実装型LEDは、長尺側の両側壁の中心付近にそれぞれ貼り付けて、内側の収容空間に向かってUVC光が照射されるようにした。すなわち、2つの表面実装型LEDを対向するように配置し、それぞれの光軸が一直線上に揃うようにした。表面実装型LEDは、LED41に相当する。
【0067】
次いで、市販のPICマイコンを用意し、市販のリードスイッチと、2つの表面実装型LEDを接続した。電源は、単4電池(AAAサイズ)3本の電池ボックスをメガネケースの外に接着剤で貼り付けて設置した。リードスイッチは、メガネケースの淵であって、蓋を閉じたときに蓋のマグネットに近接することでオンされるような位置に設置した。マイコンは、リードスイッチがオンとなったときに、60秒間LEDをオンさせ、その後スリープするようにプログラミングした。また、リードスイッチがオフになったときには、マイコンの電源が断たれるように構成した。PICマイコンは、マイコン45に相当する。
【0068】
次いで、このメガネケースを用いた作成した除菌ケースの性能を評価するために、電池ボックスに電池を入れて、中に常用している長さ約15cm、太さ約1cmボールペンを収容し、60秒間UVC波長の光を照射した後、ペンを市販のアガロースゲル培地に擦り付けて、37℃のインキュベータにて1日間インキュベーションした。なお、ペンは中心部と一方端部とをそれぞれ別のアガロースゲル培地に擦り付け、1回の実験あたり2種類のサンプルを用意した。ボールペンは、小物Gに相当する。
【0069】
検証実験結果の評価は、培地を肉眼で見て、黄色ブドウ球菌等のコロニーを観察した。2サンプルとも培地全面に菌が見られたものを×、いずれかのサンプルに小さなコロニーが視認可能であったものを△、どちらのサンプルもコロニーが少ないことが確認できたものを○、どちらのサンプルにもコロニーが全く見当たらなかったものを◎とした。
【0070】
次いで、アルミニウム箔を剥がし、市販されている一般のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、1N30、厚さ20μm)をメガネケースの内面全面に市販の両面テープにより貼り付け、上記と同様にしてLEDを1分間照射して菌のコロニー観察をした。
【0071】
次いで、除菌ケースに電池を入れずにそのまま1分間、別のペンを入れたものを、同様にして菌のコロニー観察をした。次いで、ケース内面のアルミニウム箔を剥がし樹脂がむき出しとなった状態にして、電池ボックスに電池を入れて、LEDを1分間照射して菌のコロニー観察をした。
【0072】
上記の検証実験の結果を以下の表1に示す。
【0073】
【0074】
以上の検証実験の結果、本発明の除菌ケースは、小型でありながら小物Gの全体にUVC領域の波長の紫外線を照射して除菌することができることがわかった。
【0075】
<その他の実施形態>
図5は、除菌ケース1の変形例を示している。
図5では、
図2と対応する構成について共通の符号を付している。また、以下の変形例の説明では、
図2の構成との違いを中心に説明するものとし、共通または類似の構成について、説明を省略する場合がある。
【0076】
図5では、収容ケース5が、ケース本体51と、ケース本体51に取り付けられたファスナー52とを備える。ケース本体51は、合皮やエラストマーのように、柔軟性と弾力性を有するような素材からなる。ケース本体51は、中央付近に平坦な平坦部511を有し、その平坦部の両側から内側に、一方の側辺と他方の側辺とが重なるように折り畳まれている。そして、この重なるように構成されたケース本体51の側辺部分にファスナー52が縫い付けられている。
【0077】
ファスナー52は、それぞれの周縁部において長手方向の全体にわたって設けられた務歯54と、対向する務歯54同士を係合させたり、その係合を解除させるためのスライダー53とを備える。そして、スライダー53の移動にともなって対向する務歯54同士が係合したり、その係合が解除されることで、ファスナー52が開閉するようになっている。ケース本体51の内側には、収容空間Qが形成されており、ファスナー52が閉じられると、除菌ケース1が閉塞されるようになっている。
【0078】
ファスナー52の閉塞状態のときのスライダー53の位置である閉塞終端位置(図面右端)の近傍には、リードスイッチ34が設けられている。そして、スライダー53が、閉塞終端位置に到達すると、リードスイッチ34がオンされるようになっている。スライダー53によるリードスイッチのオン構造は、特に限定されないが、例えば、スライダー53自体がマグネットで形成されていてもよいし、スライダー53にマグネットが取り付けられてもよい。
【0079】
ケース本体51の内面には、アルミニウム層29が形成されている。また、ケース本体51の長手方向の側壁には、ケース本体51内側の収容空間Qに向かって、UVC光を照射するためのLED41が設けられている。また、平坦部511には、マイコン45が搭載された基板43と、除菌ケース1の各構成要素に電源を供給するためのバッテリー48が設けられている。
図5において、アルミニウム層29、LED41、基板43、マイコン45、バッテリー48には、上記実施形態と同様のものを用いることができ、
図5の構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、小型でありながら収容ケースに収容された小物全体に紫外線を照射させて除菌することが可能であり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 除菌ケース
2 収容ケース
5 収容ケース
22 左側板(側壁)
23 右側板(側壁)
27 蓋体(閉塞部材)
29 アルミニウム層
34 リードスイッチ(検出部)
41 LED(光源)
45 マイコン(制御部)