(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】レジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20240830BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240830BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240830BHJP
G03F 7/38 20060101ALI20240830BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G03F7/40
G03F7/20 501
G01N37/00 101
G03F7/38
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2020164142
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛志
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 和宏
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-030971(JP,A)
【文献】特開2002-151381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/40
G03F 7/20
G01N 37/00
G03F 7/38
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に線幅の大きな第一領域と、線幅の小さな
第二領域とを有する所定のレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、
基板表面にポジ型レジスト膜を塗布するレジスト塗布工程と、
前記レジストパターンに対応したマスクを用い、前記レジスト膜の
前記第一領域をジャスト露光し、
前記第二領域をアンダー露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を現像する現像工程と、を備え、
前記露光工程および前記現像工程は、前記レジストパターンを形成するとともに、前記第二領域の前記レジスト膜に残渣部を形成する工程であり、
前記現像工程の後に前記残渣部をエッチングマスクとして利用せず、前記残渣部を除去する残渣除去工程を備えたことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項2】
基板上に線幅の小さな第一領域と、線幅の大きな
第二領域とを有する所定のレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、
基板表面にネガ型レジスト膜を塗布するレジスト塗布工程と、
前記レジストパターンに対応したマスクを用い、前記レジスト膜の
前記第一領域をジャスト露光し、
前記第二領域をオーバー露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を現像する現像工程と、を備え、
前記露光工程および前記現像工程は、前記レジストパターンを形成するとともに、前記第二領域の前記レジスト膜に残渣部を形成する工程であり、
前記現像工程の後に前記残渣部をエッチングマスクとして利用せず、前記残渣部を除去する残渣除去工程を備えたことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項3】
前記残渣除去工程は、前記残渣部をアッシングにより除去する工程であることを特徴とする請求項1または2に記載のレジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生化学分析用のデバイスの研究が盛んに行われており、試料の送液や検体の検出などにマイクロ流路とよばれる微小な流路系を備えたマイクロ流路チップが主に用いられている。例えば特許文献1には、血液流動性計測システムにおいて血液の流動性を計測するためのフィルタ(マイクロ流路チップ)を利用することが記載されている。フィルタは、シリコン単結晶基板とガラス平板との間に血液が流れる微細な流路群の孔部を備え、この孔部には2つの六角形の土手(テラス)に挟まれる部分として形成された多数のゲートを備えている。ゲートは、その両端が幅の広い血液の導入、排出口であり、中央部が導入、排出口より幅の狭いチャネル部である。このようなマイクロ流路の製造方法としては、極微細な加工が要求されるために半導体製造用の超微細加工技術が不可欠であり、フォトリソグラフィ技術により基板表面にフォトレジストからなる所定形状のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして基板をエッチングする方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるマイクロ流路チップの製造においては、ゲートにおける幅の広い導入、排出口の部分と、導入、排出口より幅の狭いチャネル部とを一括露光した場合、フォトレジストの露光線幅の相違に起因して次のような課題が発生する。つまり、露光線幅の小さな部分の露光を確実に実施するに必要十分な適正な露光量で露光を行う(ジャスト露光する)と、露光線幅の大きな部分の露光量が過剰(オーバー露光)となり、露光線幅の大きな部分におけるレジストパターンの輪郭部または輪郭部の一部において所望の寸法、形状を達成できないという問題が生じる。なお、特許文献1に記載されるマイクロ流路チップでは、フォトレジストにポジ型レジストを用いた場合、露光線幅の小さい部分はゲート部、露光線幅の大きい部分は導入、排出口であり、ネガ型レジストを用いた場合、露光線幅の小さい部分はテラスの導入、排出口に対応する部分、露光線幅の大きい部分はテラスのゲート部に対応する部分である。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、フォトリソグラフィ技術を利用したレジストパターンの形成において、レジストの露光線幅の大きい部分と小さい部分とを一括露光する場合であっても、所望の寸法、形状のレジストパターンを形成することが可能なレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基板上に所定のレジストパターンを形成するレジストパターンの形成方法であって、 基板表面にレジスト膜を塗布するレジスト塗布工程と、前記レジストパターンに対応したマスクを用い、前記レジスト膜の第一領域をジャスト露光し、第二領域をアンダー露光またはオーバー露光する露光工程と、露光された前記レジスト膜を現像する現像工程と、を備え、前記露光工程および前記現像工程は、前記レジストパターンを形成するとともに、前記第二領域の前記レジスト膜に残渣部を形成する工程であり、前記現像工程の後に前記残渣部を除去する残渣除去工程を備えたレジストパターンの形成方法とする。
また、前記レジスト膜はポジ型レジスト膜であり、前記第一領域は前記レジストパターンの線幅の大きな部分、前記第二領域は前記レジストパターンの線幅の小さな部分であり、前記露光工程は前記第二領域をアンダー露光する工程であるレジストパターンの形成方法としてもよい。
また、前記レジスト膜はネガ型レジスト膜であり、前記第一領域は前記レジストパターンの線幅の小さな部分、前記第二領域は前記レジストパターンの線幅の大きな部分であり、前記露光工程は前記第二領域をオーバー露光する工程であるレジストパターンの形成方法としてもよい。
さらにまた、前記残渣除去工程は、前記残渣部をアッシングにより除去する工程であるレジストパターンの形成方法としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レジストの露光線幅の大きい部分と小さい部分とを一括露光する場合であっても、所望の寸法、形状のレジストパターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例を説明するための図であり、流路チップを示す図である。
【
図2】本発明の一実施例を説明するための図であり、流路チップの製造方法を示す図である。
【
図3】本発明の別の実施例を説明するための図であり、流路チップの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。本実施例では、基板上に六角形状のテラスを備えた流路チップの製造方法を例として本発明のレジストパターンの形成方法を説明する。
図1は、本発明の一実施例を説明するための図であり、六角形状のテラスを備えた流路チップを示す図である。流路チップ10は、基板11と、基板11上に複数配列された六角形状の凸部であるテラス12を備えている。テラス12は、その一辺が隣り合うテラス12の一辺と平行となるよう等間隔に基板11上に配置されており、流路チップ10には、テラス12の隣り合う一辺の間に位置した凹部である流路部13と、隣り合うテラス12の間であり流路部13に接続されるとともに流路部13から離間するにしたがい拡幅した凹部である導入排出部14とを備えている。また、テラス12は、隣り合うテラス12との間で流路部13を形成する部位である流路部テラス12bと、流路部テラス12bと接続され、隣り合うテラス12との間で導入排出部14を形成し、流路部13から離間するにしたがい幅が狭くなる三角形状の導入排出部テラス12aとを備える。本実施例では、流路部13の長さL1を30μm、幅W1を6.8μmとし、流路部から離間した側の導入排出部14の端部における幅W2を16μm、三角形状である導入排出部テラス12aの先端角θを100°とした。またテラス12の高さ(流路部13、導入排出部14の深さ)を5μmである。
【0010】
図2は、本発明の一実施例を説明するための図であり、流路チップ10の製造方法を示す図である。なお、
図2は
図1のA-A断面における製造方法を示している。
【0011】
(レジスト膜塗布工程)
流路チップ10の製造は、先ず平板状のSi基板11を用意し、基板11の表面にポジ型のレジスト膜15を4μmの厚さで塗布する(
図2(a))。
【0012】
(露光工程)
次いで、流路チップ10におけるテラス部12を除く箇所が開口した露光マスク16を基板11の上部に配置し、開口を通してレジスト膜15を露光する(
図2(b))。この露光工程では、露光線幅の大きい導入排出部14がオーバー露光または露光が不十分なアンダー露光とならない適正な露光量、露光時間にて、露光マスク16の開口から露出するレジスト膜15の全域を一括して露光する。このように露光することで、露光線幅の小さい流路部13の露光が不十分となる。つまりこの露光は、流路部13に対して相対的に露光線幅の大きい導入排出部14に対応する部分がジャスト露光であり、導入排出部14に対して相対的に露光線幅の小さい流路部13に対応する部分がアンダー露光となる条件にて露光される。
【0013】
(現像工程)
次に、露光工程にて露光したレジスト膜15を現像する(
図2(c))。導入排出部14に位置するレジスト膜15は、露光工程にてジャスト露光されているため現像することによって基板11上からすべて剥離、除去され、対応する部分のレジストパターンに細りや太り、輪郭のガタツキは生じない。対して流路部13に位置するレジスト膜15は、露光工程にてアンダー露光されているため、現像によって露光の光源側である表面側のレジスト膜15は剥離、除去されるが、基板11と密着している基板側のレジスト膜15は基板11上に残渣部15aとして残存する。つまり、流路部13に位置するレジスト膜15は、現像前と比較し厚みが薄くなり基板11上に残存する。これは、この部位のレジスト膜15がアンダー露光されているためであり、露光深度の浅い表面側は十分露光され、露光深度の深い基板側の露光が十分でないためである。なお、この部位における表面側のレジスト膜15(残存部15aの表面側に位置し剥離除去されたレジスト膜15)の露光は十分に行われているため、この部位のレジスト膜15の除去、剥離がされた表面側においてはレジストパターンの細りや輪郭のガタツキは生じない。
【0014】
(残渣除去工程)
次に、現像工程にて基板11上に残存したレジスト膜15の残渣部15aを除去する(
図2(d))。残渣部15aの除去は、基板11の表面側の全面をアッシングすることにより行う。アッシングは、O
2プラズマアッシングであり、レジスト膜15の残渣部15aが基板11上から完全に除去されるまで、残渣部15aを除くレジスト膜15が完全に除去されない条件によって行う。このアッシングにより、基板11上のレジスト膜15はすべて表面側より全体的に除去されていき、レジスト膜15の残渣部15aの厚みが残渣部15aを除く部分より薄いことから、残渣部15aが除去された後はテラス12の形成部位にテラス12に対応したレジスト膜15からなるレジストパターンが形成される。ここで、基板11上のレジスト膜15はすべて表面側より全体的に除去されていくため、残渣部15aの除去は残渣部15aの上部のレジスタ膜15に沿って進行し、残渣部15aが存在していた位置のレジストパターンにも細りや輪郭のガタツキが生じない。以上の工程より、形成されたレジストパターンは、全体において細りや太り、輪郭にガタツキがない、または少ない所望寸法、形状のレジストパターンとなる。
【0015】
(エッチング工程)
次に、テラス12の形状に対応するレジストパターン(レジスト膜15)をエッチングマスクとして、基板11表面からの深さが5μmとなるまでエッチングする(
図2(e))。本実施例では、このエッチングを反応性イオンエッチング(RIE)により行ったが、エッチングについては、例えばイオンビームエッチング等のその他のドライエッチングやウェットエッチングでもよく、基板11やレジスト膜15の材質により適宜その方法は選択可能である。
【0016】
(レジスト膜剥離工程)
最後に基板11上に残存したレジスト膜15を剥離、除去して流路チップ10が完成する。
【0017】
次に、本発明の別の実施例について図面を参照して説明する。なお、本実施例では先の実施例と同様に流路チップ10の製造方法を例として本発明のレジストパターンの形成方法を説明する。先の実施例と同様の工程、具体的にはエッチング工程及びレジスト膜剥離工程についてはここでの説明を省略する。
【0018】
図3は、本発明の別の実施例を説明するための図であり、流路チップ10の製造方法を示す図である。なお、
図3は
図1における流路チップ10のA-A断面における製造方法を示している。先の実施例ではレジスト膜としてポジ型レジスト膜を利用した例を説明したが、本実施例ではネガ型レジスト膜を利用した例を説明する。
【0019】
(レジスト膜塗布工程)
流路チップ10の製造は、先ず平板状のSi基板11を用意し、基板11の表面にネガ型のレジスト膜25を4μmの厚さで塗布する(
図3(a))。
【0020】
(露光工程)
次いで、流路チップ10におけるテラス部12に対応する箇所が開口した露光マスク26を基板11の上部に配置し、開口を通してレジスト膜25を露光する(
図3(b))。この露光工程では、導入排出部14に対応するテラス12の部位であり露光線幅の小さい導入排出部テラス12aがオーバー露光または露光が不十分なアンダー露光とならない適正な露光量、露光時間にて、露光マスク26の開口から露出するレジスト膜25の全域を一括して露光する。このように露光することで、流路部13に対応するテラス12の部位であり露光線幅の大きい流路部テラス12bの露光が過剰となる。つまりこの露光は、流路部テラス12bに対して相対的に露光線幅の小さい導入排出部テラス12aに対応する部分の露光がジャスト露光であり、導入排出部テラス12aに対して相対的に露光線幅の大きい流路部テラス12bに対応する部分の露光がオーバー露光となる条件にて行う。
【0021】
(現像工程)
次に、露光工程にて露光したレジスト膜25を現像する(
図3(c))。導入排出部テラス12aに位置するレジスト膜25は、露光工程にてジャスト露光されているため現像することによって基板11上からすべて剥離、除去され、対応する部分のレジストパターンに細りや太り、輪郭のガタツキは生じない。対して流路部テラス12bに位置するレジスト膜25は、露光工程にてオーバー露光されているため、レジスト膜25を透過した露光光源の光が基板11の表面にて反射し、露光部の周囲であり、基板11と密着している側のレジスト膜25にも光が吸収され、その部位のレジスト膜25が残渣部25aとして残存する。つまり、流路部テラス12bに位置するレジスト膜25は、残渣部25aを含み略台形状として基板11上に残存する。
【0022】
(残渣除去工程)
次に、現像工程にて基板11上に残存したレジスト膜25の残渣部25aを除去する(
図3(d))。残渣部25aの除去は、基板11の表面側の全面をアッシングすることにより行う。アッシングは、O
2プラズマアッシングであり、レジスト膜25の残渣部25aが基板11上から完全に除去されるまで、残渣部25aを除くレジスト膜25が完全に除去されない条件によって行う。ここで、テラス12に対応する位置のレジスト膜25は、略台形状のレジスト膜25の裾部にあたる残渣部25aより厚いため、基板11上のレジスト膜25を表面側より全体的に除去していくことで、残渣部25aが完全に除去された後もテラス12に対応する位置のレジスト膜25は基板11上に残存する。以上の工程より、テラス12の形状に対応したレジスト膜25からなるレジストパターンを得ることができ、形成されたレジストパターンは全体において細りや太り、輪郭のガタツキがない、または少ない、所望寸法、形状のレジストパターンとなる。
【0023】
流路チップ10は、残渣部除去工程の後、先の実施例と同様にエッチング工程、レジスト膜剥離工程を順次行い完成となる。
【0024】
以上、本発明のレジストパターンの形成方法を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば実施例では、残渣部除去工程において基板面の全体をアッシングすることで残渣部の除去を行ったが、残渣部のみが露出したステンシルマスクやマスク材をレジスト膜に配置、形成して、残渣部のみを除去するようにしてもよい。また、残渣部の除去をO2プラズマアッシングにより行ったが、光励起アッシングで行ってもよく、ウェットエッチングやドライエッチング等で行ってもよい。また、流路チップを例に本発明のレジストパターンの形成方法を説明したが、形成したいレジストパターンに露光線幅の大きさが異なる部分が存在すれば、本発明のレジストパターンの形成方法は種々の対象物に適応することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 流路チップ
11 基板
12 テラス
12a 導入排出部テラス
12b 流路部テラス
13 流路部
14 導入排出部
15 レジスト膜
15a 残渣部
16 露光マスク
25 レジスト膜
25a 残渣部
26 露光マスク