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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】座席装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20240830BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240830BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20240830BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240830BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20240830BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/22
B60N2/14
A47C7/74 C
A47C1/024
A47C3/18 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020182630
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072924
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 征輝
(72)【発明者】
【氏名】長尾 裕
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-158005(JP,A)
【文献】特開2016-114183(JP,A)
【文献】実開平05-063965(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
B60N 2/22
B60N 2/14
A47C 7/74
A47C 1/024
A47C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に設置されるベース部と、前記ベース部上に水平回転可能に支持され、座部及び背ズリを支持した台枠と、を備えた座席装置であって、
前記台枠の下から前記座部の下及び前記背ズリ内部を経由して前記背ズリ外に連通する空調用通気路が設けられており、
前記空調用通気路は、前記台枠の下から前記座部側に延びたダクトを含んでおり、
前記ダクトは、前記ベース部に固定された第1ダクトと、前記台枠に固定された第2ダクトと、が嵌め合わされて構成されており、
前記台枠の回転軸と前記第2ダクトの回転軸とが一致しており、前記第2ダクトは前記第1ダクトに対して回転可能であり、
前記第1ダクトが、第1円筒部と、該第1円筒部の外周面から延びた第1鍔部と、該第1鍔部に環状に形成された、前記第1円筒部と同軸の複数の第1環状リブと、を有し、
前記第2ダクトが、前記第1円筒部と同軸上に配置された第2円筒部と、該第2円筒部の外周面から延びた第2鍔部と、該第2鍔部に環状に形成された、前記第2円筒部と同軸の複数の第2環状リブと、を有し、
前記第1ダクトと前記第2ダクトとは互いに接触せず(前記第1ダクトと前記第2ダクトの間にシール部材が介在したものを除く)、
前記第1環状リブ間に前記第2環状リブが配置され、前記第2環状リブ間に前記第1環状リブが配置されている
ことを特徴とする座席装置。
【請求項2】
前記第1ダクトが、前記第1円筒部の内側に形成された第1ワイヤ配索部を有し、
前記第1ワイヤ配索部は、一端が前記第1円筒部の内周面に繋がって前記第1円筒部外に連通しており、他端が前記第2円筒部側に開口しており、
前記第2ダクトが、前記第2円筒部の内側に形成された第2ワイヤ配索部を有し、
前記背ズリが前記座部に対してリクライニング可能であり、
リクライニング状態の前記背ズリをアップライト状態に復帰させるためのワイヤが、前記第1ワイヤ配索部と前記第2ワイヤ配索部とを通される
ことを特徴とする請求項に記載の座席装置。
【請求項3】
前記ベース部に固定された内輪と、前記台枠に固定された外輪と、転動体と、を有する回転盤を備え、
前記第1ダクトは、前記内輪に取り付けられることで前記ベース部に固定されており、
前記第2ダクトは、前記外輪に取り付けられることで前記台枠に固定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の座席装置。
【請求項4】
前記座部及び前記背ズリを複数組備え、これら座部及び背ズリは横並び配置されて単一の前記台枠に支持されており、
前記単一の台枠に対して前記ダクトが一つ設けられている
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の座席装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
劇場やホールの床に据え付けられる座席の背ズリに通気路を設け、床下の通気路から導かれた空調空気を背ズリの通気路に通して背ズリ上部から外部へ吹き出すことで室内を空調する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-154771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、回転可能な座席が設置された車両等に上記空調技術を適用することを検討したが、特許文献1の座席は回転不能に据え付けられたものであり、座席が回転可能であるものにおいては上記空調技術をそのまま適用することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、床側から導かれた空調空気が通される空調用通気路が設けられた回転可能な座席装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床に設置されるベース部と、前記ベース部上に水平回転可能に支持され、座部及び背ズリを支持した台枠と、を備えた座席装置であって、前記台枠の下から前記座部の下及び前記背ズリ内部を経由して前記背ズリ外に連通する空調用通気路が設けられており、前記空調用通気路は、前記台枠の下から前記座部側に延びたダクトを含んでおり、前記ダクトは、前記ベース部に固定された第1ダクトと、前記台枠に固定された第2ダクトと、が嵌め合わされて構成されており、前記台枠の回転軸と前記第2ダクトの回転軸とが一致しており、前記第2ダクトは前記第1ダクトに対して回転可能であり、前記第1ダクトが、第1円筒部と、該第1円筒部の外周面から延びた第1鍔部と、該第1鍔部に環状に形成された、前記第1円筒部と同軸の複数の第1環状リブと、を有し、前記第2ダクトが、前記第1円筒部と同軸上に配置された第2円筒部と、該第2円筒部の外周面から延びた第2鍔部と、該第2鍔部に環状に形成された、前記第2円筒部と同軸の複数の第2環状リブと、を有し、前記第1ダクトと前記第2ダクトとは互いに接触せず(前記第1ダクトと前記第2ダクトの間にシール部材が介在したものを除く)、前記第1環状リブ間に前記第2環状リブが配置され、前記第2環状リブ間に前記第1環状リブが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2ダクトが第1ダクトに対して回転可能であることにより、ダクトをねじらせることなく台枠を回転させることができるので、台枠の回転に影響されることなく常時安定した通気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる座席装置の斜視図である。
図2図1の座席装置の分解図である。
図3図2の台枠と座部側ダクトとを分離した図である。
図4図1の座席装置の座部と背ズリと座部側ダクトの上板とを外した状態の斜視図である。
図5図2のダクトが回転盤に取り付けられた状態の斜視図である。
図6図5中のA-A線に沿った断面図である。
図7図5のダクトのみの斜視図である。
図8図7のダクトの分解図である。
図9図7のダクトに通されるワイヤの配索経路を示す説明図である。
図10図5のダクト及び回転盤の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
図11図10の第2ダクト及び外輪が60度回転した状態の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる「座席装置」を図1~11を参照して説明する。図1に示す座席装置1は、鉄道車両の客室内に設置されるものである。
【0010】
座席装置1は、図1,2に示すように、客室内の床に設置される脚台(ベース部に相当)2と、脚台2上に回転盤4を介して水平回転可能に支持された台枠3と、横並び配置されて台枠3に支持された3つの座席7と、肘掛12と、を備えている。すなわち、本例の座席装置1は三人掛けタイプである。各座席7は、座部71と、座部71に対してリクライニング可能な背ズリ72と、を備えている。
【0011】
脚台2にはペダル11が取り付けられており、このペダル11を踏むことで台枠3を回転させることが可能になる。すなわち、座席7の向きを180度変えることができる。また、ペダル11を踏むことでリクライニング状態の背ズリ72がアップライト状態に復帰する。
【0012】
回転盤4は、同軸上に配置された内輪41及び外輪42と、内輪41と外輪42の間に設けられた玉(転動体)と、を有している。内輪41は、脚台2の中心部に固定されている。外輪42は、台枠3の中心部に固定されており、台枠3と共に回転する。
【0013】
台枠3は、図3に示すように、複数の金属性の棒が長方形枠状に組まれて構成されている。
【0014】
座席装置1には、床下の通気路(不図示)と接続されて温風・冷風等の空調空気が通される空調用通気路が設けられている。図2中の一点鎖線矢印は、空調用通気路を通される空調空気の流れを表している。この空調用通気路は、図2,4に示すように、台枠3の下から座部71側に延びたダクト5と、台枠3上に取り付けられ、座部71の下に配置された座部側ダクト6と、各背ズリ72の内部に設けられた背ズリ側空間75と、座部側ダクト6と各背ズリ側空間75とを繋いだ不図示の連結部と、で構成されている。
【0015】
ダクト5は、単一の台枠3に対して一つ設けられている。ダクト5は、図5~11に示すように、内輪41に取り付けられることで脚台2に固定された第1ダクト51と、外輪42に取り付けられることで台枠3に固定された第2ダクト52と、が非接触状態で嵌め合わされて構成されている。すなわち、第2ダクト52は第1ダクト51に対して回転可能である。これにより、ダクト5をねじらせることなく台枠3を回転させることができるので、台枠3の回転に影響されることなく常時安定した通気を行うことができる。また、ダクト5は回転盤4に直接取り付けられているので軸がぶれにくい。
【0016】
第1ダクト51は、合成樹脂で構成されており、第1円筒部54aと、第1円筒部54aの外周面から延びた第1鍔部55aと、第1鍔部55aに環状に形成された、第1円筒部54aと同軸の複数の第1環状リブ56aと、第1円筒部54aの内側に形成された第1ワイヤ配索部53aと、を一体で有している。第1鍔部55aには、ボルト挿通孔57aが複数形成されている。これらボルト挿通孔57aには、第1ダクト51を内輪41に取り付けるボルトが通される。第1ダクト51は、第1円筒部54aが内輪41の内側に配置された状態で内輪41に取り付けられる。第1ワイヤ配索部53aは、一端が第1円筒部54aの内周面に繋がって第1円筒部54a外に連通しており、他端が第2円筒部54b側に開口している。
【0017】
第2ダクト52は、合成樹脂で構成されており、第1円筒部54aと同軸上に配置された第2円筒部54bと、第2円筒部54bの外周面から延びた第2鍔部55bと、第2鍔部55bに環状に形成された、第2円筒部54bと同軸の複数の第2環状リブ56bと、第2円筒部54bの内側に形成され、第1ワイヤ配索部53aの直上に配置された第2ワイヤ配索部53bと、第2ワイヤ配索部53bの外周面と第2円筒部54bの内周面とを繋いだ複数のリブ58と、を一体で有している。第2鍔部55bには、ボルト挿通孔57bが複数形成されている。これらボルト挿通孔57bには、第2ダクト52を外輪42に取り付けるボルトが通される。
【0018】
図6に示すように、第2鍔部55bは第1鍔部55aと近接位置で対向しており、第1環状リブ56a間に第2環状リブ56bが配置され、第2環状リブ56b間に第1環状リブ56aが配置されている。これら第1鍔部55a、第2鍔部55b、複数の第1環状リブ56a、複数の第2環状リブ56bは、第1円筒部54aと第2円筒部54bとの隙間からの空気漏れを抑制するラビリンスシールとして機能する。
【0019】
このようなダクト5は、第1円筒部54aが不図示のダクトを介して床下の通気路と接続され、第2円筒部54bが座部側ダクト6の入り口62に配置されている。よって、床下の通気路からの空調空気は、不図示のダクト、第1円筒部54a内、第2円筒部54b内を経由して座部側ダクト6内に送られる。また、第1ワイヤ配索部53aと第2ワイヤ配索部53bとには、リクライニング状態の背ズリ72をアップライト状態に復帰させるためのワイヤが通される。図9中の矢印Rは、ワイヤの配索経路を示している。このワイヤは、上述したペダル11の操作に連動して機能する。また、第2ワイヤ配索部53bは、座部側ダクト6を貫通して座部側ダクト6外に連通している。
【0020】
座部側ダクト6は、図4に示す下板61と不図示の上板とが組み付けられて構成され、台枠3よりも一回り小さい扁平な箱状に形成されている。下板61の中心部に形成された入り口62から座部側ダクト6内に送られた空調空気は、座部側ダクト6の背ズリ72側の長辺部に設けられた3つの出口それぞれから不図示の連結部を介して各背ズリ側空間75に送られる。このように座部側ダクト6は、3つの座部71に対して共通で一つ設けられており、座部71と同数の3つの出口が設けられ、各出口と各背ズリ側空間75とが不図示の連結部で繋がれている。
【0021】
各背ズリ側空間75は、背ズリ72の下端から上端にわたって設けられている。背ズリ72下端の入り口73から背ズリ側空間75に送られた空調空気は、背ズリ72上端の吹き出し口74から外部に吹き出されて客室内を空調する。
【0022】
上述した実施形態では、座席装置1が複数の座席7を備えていたが、本発明の座席装置は、座席が1つであってもよい。また、上述した実施形態では、鉄道車両に設置される座席装置1について説明したが、本発明の座席装置は鉄道車両以外、例えば自動車に設置されるものであってもよい。
【0023】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 座席装置
2 脚台(ベース部)
3 台枠
4 回転盤
5 ダクト
51 第1ダクト
52 第2ダクト
71 座部
72 背ズリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11