(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 514
(21)【出願番号】P 2020189308
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 靖尚
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-254233(JP,A)
【文献】特開2004-073253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
長尺状の外形を有するコアシャフトと、
前記コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置されたコイル体と、
を備え、
前記コアシャフトは、
先端から基端に向かって、前記コイル体の内側に配置された第1シャフト部と、前記コイル体の内側に配置された第2シャフト部と、先端側の少なくとも一部分が前記コイル体の内側に配置された第3シャフト部と、を有しており、
前記第1シャフト部は、NiとTiとを含む第1の金属材料により形成され、
前記第2シャフト部は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成され、
前記第3シャフト部は、NiとTiとを含む第3の金属材料により形成されており、
前記コイル体は、前記第2シャフト部に対してロウ付けまたは半田付けされている、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記第2シャフト部の長さは、前記コイル体を構成する素線の外径の5倍以上、かつ、10倍以下である、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記第2の金属材料は、ステンレス合金である、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記コイル体を構成する素線の表面は、前記第2の金属材料により形成され、または、前記第1の金属材料及び前記第3の金属材料とは異なる金属材料により形成されている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、さらに、前記第3シャフト部よりも基端側に配置され、前記第1の金属材料とは異なる第4の金属材料により形成された第4シャフト部を有する、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記コアシャフトよりも先端側に配置された板状部材であって、先端部において前記コイル体と固定され、基端部において前記コアシャフトと固定された板状部材を備える、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管や消化器官等にカテーテル等の医療用デバイスを挿入する際に用いられるガイドワイヤが知られている。このようなガイドワイヤでは、曲げに対する柔軟性や復元性、手元部分におけるガイドワイヤへの操作を先端側へと伝達するトルク伝達性(「回転追従性」とも呼ばれる)や押し込み性が求められる。例えば、特許文献1には、ガイドワイヤの先端側に設けられたコイルの内側に、ステンレス鋼により形成された第1ワイヤを配置し、第1ワイヤよりも基端側に、擬弾性合金により形成された第2ワイヤを配置することが開示されている。特許文献1の構成によれば、ガイドワイヤにおけるトルク伝達性を向上させると共に、先端部のリシェイプ(形状付け)を容易にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステンレス鋼は、弾性率が高く塑性変形しやすい。特許文献1に記載のガイドワイヤは、このようなステンレス鋼により形成された第1ワイヤをコイルの内側に配置しているため、第1ワイヤの弾性率の高さに起因して、複雑に蛇行湾曲した血管を損傷する虞があると共に、第1ワイヤが塑性変形しやすいことに起因して、ガイドワイヤの血管選択性(すなわち、目的とする血管にガイドワイヤの先端部を導く性能)が低下するという課題があった。また、特許文献1に記載のガイドワイヤは、トルク伝達性(回転追従性)には優れるものの、曲げに対する柔軟性や復元性には劣るという課題があった。なお、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるガイドワイヤの全般に共通する。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、安全性、血管選択性、柔軟性、及び復元性を向上させたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤであって、長尺状の外形を有するコアシャフトと、前記コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置されたコイル体と、を備え、前記コアシャフトは、先端から基端に向かって、前記コイル体の内側に配置された第1シャフト部と、前記コイル体の内側に配置された第2シャフト部と、先端側の少なくとも一部分が前記コイル体の内側に配置された第3シャフト部と、を有しており、前記第1シャフト部は、NiとTiとを含む第1の金属材料により形成され、前記第2シャフト部は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成され、前記第3シャフト部は、NiとTiとを含む第3の金属材料により形成されており、前記コイル体は、前記第2シャフト部に対してロウ付けまたは半田付けされている。
【0008】
この構成によれば、コイル体の内側において先端に配置された第1シャフト部は、NiとTiとを含む第1の金属材料により形成されている。このため、第1シャフト部を、弾性率が高く塑性変形しやすいステンレス鋼により形成する場合と比較して、ガイドワイヤの安全性、血管選択性、及び復元性を向上できる。具体的には、第1の金属材料は、ステンレス鋼よりも柔軟性が高いため、複雑に蛇行湾曲した血管を損傷する虞を低減できる(安全性を向上できる)。また、第1の金属材料は、ステンレス鋼と比べて塑性変形しづらいため、塑性変形に伴う血管選択性の低下を抑制して目的とする血管にガイドワイヤの先端部を容易に導くことができる(血管選択性を向上できる)と共に、先端部のリシェイプ(形状付け)を繰り返し行うことが可能である。また、第3シャフト部は、NiとTiとを含む第3の金属材料により形成されているため、ステンレス鋼により形成される場合と比較して、柔軟性を向上できると共に、塑性変形に伴う操作性の低下を抑制できる。さらに、第1シャフト部と第3シャフト部の間には、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成された第2シャフト部が設けられており、コイル体は、第2シャフト部に対してロウ付けまたは半田付け(以降「ろう接」とも呼ぶ)されている。ここで、良好なろう接を行うためには、ろう材の母材に対するぬれが重要となるところ、母材の表面には、ろう材のぬれを阻害する酸化被膜が存在するため、ろう接に先立って、母材の表面の酸化被膜の除去が行われる。この点、本構成では、コイル体にろう接される第2シャフト部は、NiとTiとを含む第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成されているため、第2シャフト部を第1の金属材料により形成する場合と比較して、第2シャフト部の表面の酸化被膜を除去しやすく、良好なろう接を実現できる。さらに、第1シャフト部と第3シャフト部の間に、NiとTiとを含む第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成された第2シャフト部を設けることにより、ガイドワイヤの基端から先端(換言すれば、第3シャフト部から第1シャフト部)へのトルク伝達性(回転追従性)を向上できる。これらの結果、本構成のガイドワイヤによれば、安全性、血管選択性、柔軟性、及び復元性を向上させたガイドワイヤを提供できる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第2シャフト部の長さは、前記コイル体を構成する素線の外径の5倍以上、かつ、10倍以下であってもよい。
この構成によれば、第2シャフト部の長さは、コイル体を構成する素線の外径の5倍以上であるため、コアシャフトとコイル体との接合強度を向上できる。また、第2シャフト部の長さは、コイル体を構成する素線の外径の10倍以下であるため、コアシャフトの塑性変形を抑制して、ガイドワイヤの安全性、血管選択性、及び復元性を向上できる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第2の金属材料は、ステンレス合金であってもよい。
この構成によれば、第2の金属材料は、酸化被膜を除去するためのフラックスの種類が豊富なステンレス合金であるため、酸化被膜を除去しやすく、良好なろう接を実現できる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記コイル体を構成する素線の表面は、前記第2の金属材料により形成され、または、前記第1の金属材料及び前記第3の金属材料とは異なる金属材料により形成されていてもよい。
この構成によれば、コイル体を構成する素線の表面は、第2の金属材料により形成され、または、第1の金属材料及び第3の金属材料とは異なる金属材料により形成されている。このため、コイル体を構成する素線の表面を第1及び第3の金属材料により形成する場合と比較して、コイル体を構成する素線の表面の酸化被膜を除去しやすく、より一層良好なろう接を実現できる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトは、さらに、前記第3シャフト部よりも基端側に配置され、前記第1の金属材料とは異なる第4の金属材料により形成された第4シャフト部を有していてもよい。
この構成によれば、コアシャフトは、さらに、第3シャフト部よりも基端側に配置された第4シャフト部を有し、第4シャフト部は、第1の金属材料とは異なる第4の金属材料により形成されている。このため、第4シャフト部によって、ガイドワイヤのトルク伝達性(回転追従性)や押し込み性をより一層向上できる。
【0013】
(6)上記形態のガイドワイヤでは、さらに、前記コアシャフトよりも先端側に配置された板状部材であって、先端部において前記コイル体と固定され、基端部において前記コアシャフトと固定された板状部材を備えてもよい。
この構成によれば、コアシャフトよりも先端側には板状部材が設けられている。このため、ガイドワイヤの先端部のリシェイプ(形状付け)を、より一層容易にできる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤ、コアシャフト、コアシャフトを用いたカテーテル等の医療用デバイス、及びこれらの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図2】ガイドワイヤの先端側の一部分(
図1:破線枠内)の拡大図である。
【
図3】
図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。
【
図4】
図2のB-B線における横断面構成を例示した説明図である。
【
図5】第2実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図6】第3実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図7】第4実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図8】第5実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図9】第6実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図10】第7実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【
図11】第8実施形態のガイドワイヤの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の構成を例示した説明図である。ガイドワイヤ1は、血管や消化器官にカテーテル等の医療デバイスを挿入する際に用いられる医療器具である。ガイドワイヤ1は、コアシャフト10,20,30,40と、コイル体60と、先端接合部71と、基端接合部72と、板状部材73とを備えている。ガイドワイヤ1は、コアシャフト10,20,30がそれぞれ後述する材料により形成され、かつ、第2シャフト部20とコイル体60とがロウ付けまたは半田付け(以降「ろう接」とも呼ぶ)されていることにより、安全性、血管選択性、柔軟性、及び復元性を向上できる。なお、以降の例では、血管を例示して説明するが、ガイドワイヤ1は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用できる。
【0017】
図1では、ガイドワイヤ1の中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。
図1の例では、軸線Oは、コアシャフト10,20,30,40及びコイル体60の各中心を通る軸とそれぞれ一致している。しかし、軸線Oは、上述の各構成部材の各中心軸と相違していてもよい。
図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸はガイドワイヤ1の長手方向に対応し、Y軸はガイドワイヤ1の高さ方向に対応し、Z軸はガイドワイヤ1の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、ガイドワイヤ1及び各構成部材の長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。また、先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0018】
図2は、ガイドワイヤ1の先端側の一部分(
図1:破線枠内)の拡大図である。
図3は、
図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。板状部材73は、コイル体60の内側であって、コアシャフト10,20,30,40よりも先端側(具体的には、第1シャフト部10よりも先端側)に配置されている。板状部材73は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状であり(
図2,
図3)、
図3に示す横断面において、Y軸方向の長さがZ軸方向の長さよりも短い、板状の部材である。板状部材73の先端部は、先端接合部71によって、コイル体60と固定されている。板状部材73の基端部は、コアシャフト10,20,30,40(具体的には、第1シャフト部10)と接合され固定されている。接合には、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤を利用できる。
【0019】
板状部材73は、第1シャフト部10の第1の金属材料(詳細は後述)とは異なる金属材料であって、第1の金属材料よりも塑性変形しやすい材料により形成されている。板状部材73は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金により形成できる。板状部材73は、術者がガイドワイヤ1の先端部に湾曲などの形状を付す際、形状付けを容易にするための部材であり「リボン」とも呼ばれる。なお、板状部材73の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。なお、板状部材73と第1シャフト部10とは同軸でなくてもよい。この場合、板状部材73の基端側の一側面と、第1シャフト部10の先端側の一側面とが接合されてもよい。また、板状部材73は省略されてもよい。
【0020】
図2に戻り、説明を続ける。コアシャフト10,20,30,40は、軸線Oに沿って延びる長尺状の外形を有している。コアシャフト10,20,30,40は、先端から基端に向かって、第1シャフト部10と、第2シャフト部20と、第3シャフト部30と、第4シャフト部40とを有している。
【0021】
第1シャフト部10は、コイル体60の内側であって、コアシャフト10,20,30,40の最も先端側に配置されている。第1シャフト部10は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端側が細径で基端側が太径の先細り形状である。第1シャフト部10の先端部は、板状部材73に接合されている。第1シャフト部10の基端部は、第2シャフト部20に溶接されている。以降、第1シャフト部10と第2シャフト部20とが溶接されている部分を、第1溶接部81とも呼ぶ。
【0022】
第1シャフト部10は、Ni(ニッケル)とTi(チタン)とを含む第1の金属材料により形成されている。第1の金属材料としては、例えば、NiTi(ニッケルチタン)合金や、NiTiと他の金属との合金のような、擬弾性合金(「超弾性合金」とも呼ばれる)を利用できる。なお、第1シャフト部10の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0023】
第2シャフト部20は、コイル体60の内側であって、第1シャフト部10と第3シャフト部30との間に配置されている。第2シャフト部20は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状である。第2シャフト部20の先端部は、第1シャフト部10に溶接されている(第1溶接部81)。第2シャフト部20の基端部は、第3シャフト部30に溶接されている。以降、第2シャフト部20と第3シャフト部30とが溶接されている部分を、第2溶接部82とも呼ぶ。
【0024】
第2シャフト部20は、第1の金属材料(第1シャフト部10を構成する金属材料)とは異なる第2の金属材料により形成されている。第2の金属材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金や、コバルトクロム合金を利用できる。なお、第2シャフト部20の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0025】
図4は、
図2のB-B線における横断面構成を例示した説明図である。第2シャフト部20は、コイル体60に対して、ろう接(ロウ付けまたは半田付け)されている。以降、第2シャフト部20とコイル体60とがろう接されている部分を、ろう接部50とも呼ぶ。
図2に示すように、第2シャフト部20の軸線O方向の長さをL2とし、コイル体60を構成する素線61の外径をΦ61とする。このとき、本実施形態の第2シャフト部20の長さL2は、素線61の外径Φ61の5倍以上、かつ、10倍以下である。ここで、ろう接部50は、第2シャフト部20の軸線O方向の全体にわたって形成されている。このため、ろう接部50の長さは、第2シャフト部20の長さL2とほぼ等しく、素線61の外径Φ61の5倍以上、かつ、10倍以下となる。
【0026】
第3シャフト部30は、第2シャフト部20と第4シャフト部40との間に配置されている。
図1に示すように、第3シャフト部30は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端から基端に向かって、第1細径部31と、太径部32と、第2細径部33とを有している。
【0027】
第1細径部31は、第3シャフト部30の先端側に配置された、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状の部分である。太径部32は、第1細径部31と第2細径部33との間に配置され、第1細径部31及び第2細径部33よりも太い外径を有する略円柱形状の部分である。第2細径部33は、第3シャフト部30の基端側に配置された、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状の部分である。第3シャフト部30の先端部(具体的には、第1細径部31の先端部)は、第2シャフト部20に溶接されている(第2溶接部82)。第3シャフト部30の基端部(具体的には、第2細径部33の基端部)は、第4シャフト部40に溶接されている。以降、第3シャフト部30と第4シャフト部40とが溶接されている部分を、第3溶接部83とも呼ぶ。
【0028】
第3シャフト部30は、NiとTiとを含む第3の金属材料により形成されている。第3の金属材料としては、例えば、NiTi合金や、NiTiと他の金属との合金のような、擬弾性合金(超弾性合金)を利用できる。第3シャフト部30を形成する第3の金属材料は、第1シャフト部10を形成する第1の金属材料と同じでもよく、相違してもよい。なお、第3シャフト部30、第1細径部31、太径部32、及び第2細径部33の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0029】
第4シャフト部40は、コアシャフト10,20,30,40の最も基端側に配置されている(
図1)。換言すれば、第4シャフト部40は、第3シャフト部30よりも基端側に配置されている。第4シャフト部40は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状である。第4シャフト部40の先端部は、第3シャフト部30に溶接されている(第3溶接部83)。第4シャフト部40の基端部は、術者によって把持され、操作される。
【0030】
第4シャフト部40は、第1の金属材料(第1シャフト部10を構成する金属材料)とは異なる第4の金属材料により形成されている。第4の金属材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金や、コバルトクロム合金を利用できる。第4シャフト部40を構成する第4の金属材料は、第2シャフト部20を構成する第2の金属材料と同じでもよく、相違してもよい。なお、第4シャフト部40の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0031】
コイル体60は、コアシャフト10,20,30,40の先端側の一部分を取り囲んで配置されている。具体的には、コイル体60は、板状部材73と、第1シャフト部10と、第2シャフト部20と、第3シャフト部30の先端側の一部分と、を取り囲んで配置されている。コイル体60は、素線61を螺旋状に巻回して形成された略円筒形状を有している。なお、コイル体60は、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルであってもよく、複数本の素線を多条に巻回して形成される多条コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルであってもよい。
【0032】
コイル体60を構成する素線61は、第2の金属材料(第2シャフト部20を構成する金属材料)により形成されている。なお、コイル体60を構成する素線61は、第1の金属材料(第1シャフト部10を構成する金属材料)及び第3の金属材料(第3シャフト部30を構成する金属材料)とは異なる金属材料により形成されていてもよい。なお、コイル体60の素線61の線径と、コイル体60におけるコイル平均径(コイル体60の外径と内径の平均径)、及びコイル体60の長さは、任意に決定できる。
【0033】
先端接合部71は、コイル体60の先端部に配置され、コイル体60の先端部と、板状部材73の先端部とを一体的に保持している。基端接合部72は、コイル体60の基端部に配置され、コイル体60の基端部と、コアシャフト10,20,30,40(具体的には、第3シャフト部30の一部分)とを一体的に保持している。先端接合部71及び基端接合部72は、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成できる。先端接合部71と基端接合部72とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。また、ガイドワイヤ1は、先端接合部71及び基端接合部72とは異なる接合部(例えば、コイル体60の中央部分とコアシャフト10,20,30,40の一部分とを固定する中間接合部等)を、さらに備えていてもよい。
【0034】
以上のように、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、コイル体60の内側において先端に配置された第1シャフト部10は、NiとTiとを含む第1の金属材料により形成されている。このため、第1シャフト部10を、弾性率が高く塑性変形しやすいステンレス鋼により形成する場合と比較して、ガイドワイヤ1の安全性、血管選択性、及び復元性を向上できる。具体的には、第1の金属材料は、ステンレス鋼よりも柔軟性が高いため、複雑に蛇行湾曲した血管を損傷する虞を低減できる(安全性を向上できる)。また、第1の金属材料は、ステンレス鋼と比べて塑性変形しづらいため、塑性変形に伴う血管選択性の低下を抑制して目的とする血管にガイドワイヤ1の先端部を容易に導くことができる(血管選択性を向上できる)と共に、ガイドワイヤ1の先端部のリシェイプ(形状付け)を繰り返し行うことが可能となる。
【0035】
また、第3シャフト部30は、NiとTiとを含む第3の金属材料により形成されているため、ステンレス鋼により形成される場合と比較して、ガイドワイヤ1の柔軟性を向上できると共に、塑性変形に伴う操作性の低下を抑制できる。
【0036】
さらに、第1シャフト部10と第3シャフト部30の間には、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成された第2シャフト部20が設けられており、コイル体60は、第2シャフト部20に対してろう接(ロウ付けまたは半田付け)されている。ここで、一般に、良好なろう接を行うためには、ろう材の母材に対するぬれが重要となるところ、母材の表面には、ろう材のぬれを阻害する酸化被膜が存在するため、ろう接に先立って、母材の表面の酸化被膜の除去が行われる。この点、第1実施形態のガイドワイヤ1では、コイル体60にろう接される第2シャフト部20は、NiとTiとを含む第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成されているため、第2シャフト部20を第1の金属材料により形成する場合と比較して、第2シャフト部20の表面の酸化被膜を除去しやすく、良好なろう接を実現できる。さらに、第1シャフト部10と第3シャフト部30の間に、NiとTiとを含む第1の金属材料とは異なる第2の金属材料により形成された第2シャフト部20を設けることにより、ガイドワイヤ1の基端から先端(換言すれば、第3シャフト部30から第1シャフト部10)へのトルク伝達性(回転追従性)を向上できる。
【0037】
これらの結果、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、安全性、血管選択性、柔軟性、及び復元性を向上させたガイドワイヤ1を提供できる。
【0038】
また、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、第2シャフト部20の長さL2は、コイル体60を構成する素線61の外径Φ61の5倍以上である(
図2)。このため、コアシャフト10,20,30,40とコイル体60との接合強度を向上できる。また、第2シャフト部20の長さL2は、コイル体60を構成する素線61の外径Φ61の10倍以下である(
図2)。このため、コアシャフト10,20,30,40の塑性変形を抑制して、ガイドワイヤ1の安全性、血管選択性、及び復元性を向上できる。さらに、第2シャフト部20を構成する第2の金属材料として、酸化被膜を除去するためのフラックスの種類が豊富なステンレス合金を採用すれば、酸化被膜を除去しやすく、良好なろう接を実現できる。すなわち、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、第2シャフト部20の長さL2を、素線61の外径Φ61の5倍以上、かつ、10倍以下とすることにより、ガイドワイヤ1の安全性、血管選択性、及び復元性の向上と、コアシャフト10,20,30,40とコイル体60との接合強度の向上とを両立できる。
【0039】
さらに、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、コイル体60を構成する素線61は、第2の金属材料により形成され、または、第1の金属材料及び第3の金属材料とは異なる金属材料により形成されている。このため、コイル体60を構成する素線61を、第1及び第3の金属材料により形成する場合と比較して、コイル体60を構成する素線61の酸化被膜を除去しやすく、より一層良好なろう接を実現できる。
【0040】
さらに、第1実施形態のガイドワイヤ1によれば、コアシャフト10,20,30,40は、さらに、第3シャフト部30よりも基端側に配置された第4シャフト部40を有し、第4シャフト部40は、第1の金属材料とは異なる第4の金属材料により形成されている。このため、第4シャフト部40によって、ガイドワイヤ1のトルク伝達性(回転追従性)や押し込み性をより一層向上できる。また、コアシャフト10,20,30,40よりも先端側には、板状部材73が設けられている。このため、ガイドワイヤ1の先端部のリシェイプ(形状付け)を、より一層容易にできる。
【0041】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のガイドワイヤ1Aの構成を例示した説明図である。
図5の下段(破線枠内)には、素線61Aの概略図を示す。第2実施形態のガイドワイヤ1Aは、第1実施形態で説明した構成において、コイル体60に代えてコイル体60Aを備える。コイル体60Aは、素線61Aを螺旋状に巻回して形成されている点を除いて、第1実施形態と同様の構成を有する。素線61Aは、
図5下段に示すように、長尺状の芯材の外周面に被覆部62が設けられた構成である。素線61Aの芯材は、任意の樹脂材料や、任意の金属材料により形成されている。被覆部62は、第1実施形態で説明した第2の金属材料(第2シャフト部20を構成する金属材料)により形成されている。なお、被覆部62は、第1の金属材料(第1シャフト部10を構成する金属材料)及び第3の金属材料(第3シャフト部30を構成する金属材料)とは異なる金属材料により形成されていてもよい。
【0042】
このように、コイル体60Aの構成は種々の変更が可能であり、コイル体60Aを構成する素線61Aのうち、少なくとも表面(すなわち被覆部62)が第2の金属材料により形成され、または、第1の金属材料及び第3の金属材料とは異なる金属材料により形成されていれば足りる。このような第2実施形態のガイドワイヤ1Aにおいても、素線61Aの表面(すなわち被覆部62)を、第1及び第3の金属材料により形成する場合と比較して、素線61Aの酸化被膜を除去しやすく、より一層良好なろう接を実現でき、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態のガイドワイヤ1Aによれば、コイル体60Aを構成する素線61Aにおいて、任意の材料により形成された芯材を使用できる。
【0043】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のガイドワイヤ1Bの構成を例示した説明図である。第3実施形態の1Bは、第1実施形態で説明した構成において、第2シャフト部20に代えて第2シャフト部20Bを備え、ろう接部50に代えてろう接部50Bを備える。第2シャフト部20Bは、軸線O方向の長さL2Bが異なる点を除いて、第1実施形態と同様の構成を有する。第2シャフト部20Bの軸線O方向の長さL2Bは、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下である(図示の例では、約11倍である)。第1実施形態と同様に、ろう接部50Bは、第2シャフト部20Bの軸線O方向の全体にわたって形成されているため、ろう接部50Bの長さは、第2シャフト部20Bの長さL2Bとほぼ等しく、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下となる。
【0044】
このように、第2シャフト部20Bの構成は種々の変更が可能であり、第2シャフト部20Bの長さL2Bは、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下としてもよい。ここで、第2シャフト部20Bの長さL2Bを下限値に近づければ近づけるほど、コアシャフト10,20B,30,40の塑性変形を抑制して、ガイドワイヤ1Bの安全性、血管選択性、及び復元性を向上できる。また、第2シャフト部20Bの長さL2Bを上限値に近づければ近づけるほど、コアシャフト10,20B,30,40とコイル体60との接合強度を向上できる。すなわち、このような第3実施形態のガイドワイヤ1Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態のガイドワイヤ1Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態で説明した構成において、第2シャフト部20に代えて第2シャフト部20Cを備え、ろう接部50に代えてろう接部50Cを備え、さらに、第5シャフト部91と、第6シャフト部92と、ろう接部93とを備える。
【0046】
第2シャフト部20Cは、次の点において、第1実施形態で説明した第2シャフト部20とは異なる構成を有する。具体的には、第2シャフト部20Cは、軸線O方向の長さL21が、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下である(図示の例では、約3倍である)。また、第2シャフト部20Cの基端部は、第5シャフト部91に溶接されている(第2溶接部82)。ろう接部50Cは、次の点において、第1実施形態で説明したろう接部50とは異なる構成を有する。具体的には、ろう接部50Cは、第2シャフト部20Cの軸線O方向の全体にわたって形成されている。このため、ろう接部50Cの長さは、第2シャフト部20Cの長さL21とほぼ等しく、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下となる。
【0047】
第5シャフト部91は、コイル体60の内側であって、第2シャフト部20Cと第6シャフト部92との間に配置されている。第5シャフト部91は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状である。第5シャフト部91の先端部は、第2シャフト部20Cに溶接されている(第2溶接部82)。第5シャフト部91の基端部は、第6シャフト部92に溶接されている。以降、第5シャフト部91と第6シャフト部92とが溶接されている部分を、第4溶接部84とも呼ぶ。第5シャフト部91は、NiとTiとを含む第5の金属材料により形成されている。第5の金属材料としては、例えば、NiTi合金や、NiTiと他の金属との合金のような、擬弾性合金(超弾性合金)を利用できる。第5の金属材料は、第1及び第3の金属材料と同じでもよく、相違してもよい。なお、第5シャフト部91の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0048】
第6シャフト部92は、コイル体60の内側であって、第5シャフト部91と第3シャフト部30との間に配置されている。第6シャフト部92は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端から基端にかけて略一定の外径を有する略円柱形状である。第6シャフト部92の先端部は、第5シャフト部91に溶接されている(第4溶接部84)。第6シャフト部92の基端部は、第3シャフト部30(具体的には第1細径部31)に溶接されている。以降、第6シャフト部92と第3シャフト部30とが溶接されている部分を、第5溶接部85とも呼ぶ。第6シャフト部92は、第1の金属材料(第1シャフト部10を構成する金属材料)とは異なる第6の金属材料により形成されている。第6の金属材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金や、コバルトクロム合金を利用できる。第6の金属材料は、第2の金属材料と同じであってもよく、相違してもよい。なお、第6シャフト部92の外径、軸線O方向の長さ、及び横断面形状は、任意に決定できる。
【0049】
第6シャフト部92は、コイル体60に対して、ろう接されている。以降、第6シャフト部92とコイル体60とがろう接されている部分を、ろう接部93とも呼ぶ。
図7に示すように、第6シャフト部92の軸線O方向の長さをL22は、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下である(図示の例では、約3倍である)。ろう接部93は、第6シャフト部92の軸線O方向の全体にわたって形成されているため、ろう接部93の長さは、第6シャフト部92の長さL22とほぼ等しく、素線61の外径Φ61の1倍以上、かつ、50倍以下となる。
【0050】
このように、ガイドワイヤ1Cの構成は種々の変更が可能であり、コアシャフト10,20C,91,92,30,40は、複数のろう接部によって、コイル体60に接合されていてもよい。図示の例では、2か所のろう接部(ろう接部50C、ろう接部93)と、各ろう接部に対応する2か所の酸化被膜除去が容易なシャフト部(第2シャフト部20C、第6シャフト部92)とを設ける構成とした。しかし、ガイドワイヤ1Cは、ろう接部と、酸化被膜除去が容易なシャフト部との組を、3か所以上備えていてもよい。このような第4実施形態のガイドワイヤ1Cにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第4実施形態のガイドワイヤ1Cによれば、複数のろう接部によって、コアシャフト10,20C,91,92,30,40とコイル体60とが固定されるため、ガイドワイヤ1Cの塑性変形を抑制して、ガイドワイヤ1Bの安全性、血管選択性、及び復元性をより一層向上できると共に、コアシャフト10,20C,91,92,30,40とコイル体60との接合強度をより一層向上できる。
【0051】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態のガイドワイヤ1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態のガイドワイヤ1Dは、第3シャフト部30に代えて第3シャフト部30Dを備え、コイル体60に代えてコイル体60Dを備え、基端接合部72に代えて基端接合部72Dを備える。第3シャフト部30Dは、太径部32及び第2細径部33を備えない点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。コイル体60Dは、板状部材73と、第1シャフト部10と、第2シャフト部20と、第3シャフト部30Dと、第4シャフト部40の先端側の一部分と、を取り囲んで配置されている点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。基端接合部72Dは、コイル体60Dの基端部に配置され、コイル体60Dの基端部と、コアシャフト10,20,30D,40(具体的には、第4シャフト部40の一部分)とを一体的に保持している点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0052】
このように、ガイドワイヤ1Dの構成は種々の変更が可能であり、コイル体60Dの基端部は、第4シャフト部40の一部分に固定されてもよい。また、第5実施形態のガイドワイヤ1Dにおいて、第4実施形態で説明したように、ろう接部と、酸化被膜除去が容易なシャフト部との組を複数設けてもよい。このような第5実施形態のガイドワイヤ1Dにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態のガイドワイヤ1Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態のガイドワイヤ1Eは、第3シャフト部30に代えて第3シャフト部30Eを備え、コイル体60に代えてコイル体60Eを備え、基端接合部72に代えて基端接合部72Eを備える。第3シャフト部30Eは、太径部32及び第2細径部33を備えない点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。コイル体60Eは、板状部材73と、コアシャフト10,20,30E,40の全体と、を取り囲んで配置されている点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。基端接合部72Eは、コイル体60Eの基端部に配置され、コイル体60Eの基端部と、コアシャフト10,20,30E,40(具体的には、第4シャフト部40の基端部)とを一体的に保持している点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0054】
このように、ガイドワイヤ1Eの構成は種々の変更が可能であり、コイル体60Eは、コアシャフト10,20,30E,40の全体を覆って配置されていてもよい。また、第6実施形態のガイドワイヤ1Eにおいて、第4実施形態で説明したように、ろう接部と、酸化被膜除去が容易なシャフト部との組を複数設けてもよい。このような第6実施形態のガイドワイヤ1Eにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態のガイドワイヤ1Fの構成を例示した説明図である。第7実施形態のガイドワイヤ1Fは、第1実施形態で説明した構成において、第1シャフト部10に代えて第1シャフト部10Fを備えると共に、板状部材73を備えていない。
【0056】
第1シャフト部10Fは、次の点において、第1実施形態で説明した第1シャフト部10とは異なる構成を有する。具体的には、第1シャフト部10Fは、先端から基端に向かって、板状部11と、テーパ部12とを有している。板状部11は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状であり(
図10)、
図3の板状部材73と同様の、板状の部材である。板状部11は、例えば、第1シャフト部10Fの先端側の一部分をプレス加工することにより形成できる。テーパ部12は、ガイドワイヤ1の軸線Oと同軸に延びる長尺状の部材であり、先端側が細径で基端側が太径の先細り形状の部材である。第1シャフト部10Fの先端部(具体的には、板状部11の先端部)は、先端接合部71によって、コイル体60と固定されている。板状部11は、術者がガイドワイヤ1の先端部に湾曲などの形状を付す際、形状付けを容易にするためのリボンとして機能する。
【0057】
このように、ガイドワイヤ1Fの構成は種々の変更が可能であり、第1実施形態で説明した板状部材73を省略して、第1シャフト部10Fの先端側の一部分(
図10の例では、第1シャフト部10Fの板状部11)をリボンとして機能させてもよい。なお、第1シャフト部10Fは、板状部11に代えて、テーパ部12の外径よりも細い外径を有する略円柱形状の細径部を有していてもよい。このような第7実施形態のガイドワイヤ1Fにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態のガイドワイヤ1Gの構成を例示した説明図である。第8実施形態のガイドワイヤ1Gは、第1実施形態で説明した構成において、第4シャフト部40を備えていない。このように、ガイドワイヤ1Gの構成は種々の変更が可能であり、第4の金属材料により形成された第4シャフト部40を備えない、コアシャフト10,20,30を用いてもよい。このような第8実施形態のガイドワイヤ1Gにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
[変形例1]
上記第1~8実施形態では、ガイドワイヤ1,1A~1Gの構成の一例を示した。しかし、ガイドワイヤ1の構成は種々の変更が可能である。例えば、ガイドワイヤ1は、コイル体60の内側に設けられ、板状部材73と第1シャフト部10の先端側の一部分とを覆う、内側コイル体をさらに備えていてもよい。例えば、ガイドワイヤ1は、第1実施形態で説明した板状部材73や、第7実施形態で説明した板状部11を備えていなくてもよい。この場合、第1シャフト部10の先端部が、先端接合部71によって、コイル体60と固定される。
【0061】
[変形例2]
上記第1~8実施形態では、コアシャフト10,20,30,40の構成の一例を示した。しかし、コアシャフト10,20,30,40の構成は種々の変更が可能である。例えば、第2シャフト部20,20B,20Cの長さは、コイル体60を構成する素線61の外径の1倍未満であってもよく、コイル体60を構成する素線61の外径の50倍より大きくてもよい。また、例えば、コアシャフト10,20,30,40の各シャフト部には、ガイドワイヤ1に求められる性能に応じて、細径部、太径部、偏平部、テーパ部等が適宜設けられてもよい。
【0062】
[変形例3]
第1~8実施形態のガイドワイヤの構成、及び上記変形例1,2のガイドワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第3~第8実施形態で説明したガイドワイヤ1において、第2実施形態で説明したコイル体60Aを有していてもよい。例えば、第2,第4~第8実施形態で説明したガイドワイヤ1において、第3実施形態で説明した第2シャフト部20B及びろう接部50Bを有していてもよい。例えば、第2~第4,第7実施形態で説明したガイドワイヤ1において、第5実施形態で説明したコイル体60Dを有していてもよく、第6実施形態で説明したコイル体60Eを有していてもよい。
【0063】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A~1G…ガイドワイヤ
10,20,30,40…コアシャフト
10,10F…第1シャフト部
11…板状部
12…テーパ部
20,20B,20C…第2シャフト部
30,30D,30E,30G…第3シャフト部
31…第1細径部
32…太径部
33…第2細径部
40…第4シャフト部
50,50B,50C…ろう接部
60,60A,60D,60E…コイル体
61,61A…素線
62…被覆部
71…先端接合部
72,72D,72E…基端接合部
73…板状部材
81…第1溶接部
82…第2溶接部
83…第3溶接部
84…第4溶接部
85…第5溶接部
91…第5シャフト部
92…第6シャフト部
93…ろう接部