(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】モールクリップ及びモールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/36 20160101AFI20240830BHJP
B60J 10/75 20160101ALI20240830BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240830BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60J10/36
B60J10/75
B60R13/04 Z
F16B2/22 B
(21)【出願番号】P 2020189311
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 直
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-053308(JP,U)
【文献】実開昭60-163113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/22
B60J 1/02
10/00-10/90
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用モールディングと車体パネルとを接続するモールクリップであって、
基体と、
前記基体に接続されると共に前記車両用モールディングを支持するモールディング支持部と、
前記基体に接続されると共に前記車体パネルを挟持する挟持部と、
前記基体に接続されると共に前記車体パネルの頂部に弾性変形可能に上方から当接可能とされた反力生成部と
を有し、
前記モールディング支持部、前記挟持部及び前記反力生成部が水平方向に配列され、 前記反力生成部は、前記モールディング支持部と前記挟持部との間に配置されている
ことを特徴とするモールクリップ。
【請求項2】
車両用モールディングと車体パネルとを接続するモールクリップであって、
基体と、
前記基体に接続されると共に前記車両用モールディングを支持するモールディング支持部と、
前記基体に接続されると共に前記車体パネルを挟持する挟持部と、
前記基体に接続されると共に前記車体パネルの頂部に弾性変形可能に上方から当接可能とされた反力生成部と
を有し、
前記反力生成部は、
前記車体パネルの頂部に当接する接触片と、
前記基体から上方に突設された根本部と、
前記根本部の上端と前記接触片の水平方向の一端とを接続すると共に湾曲された湾曲部と
を有する
ことを特徴とするモールクリップ。
【請求項3】
前記車体パネルの頂部の鉛直方向の位置に応じて前記反力生成部が姿勢変更されることを特徴とする請求項1
または2記載のモールクリップ。
【請求項4】
前記車体パネルが、前記頂部の下方位置に下方から係止可能な係止端を有し、
前記基体に接続されると共に前記係止端に下方から係止される係止爪部を有し、
前記係止爪部は、前記反力生成部の真下に配置されている
ことを特徴とする請求項1~
3いずれか一項に記載のモールクリップ。
【請求項5】
車両用モールディングと、前記車両用モールディングと車体パネルとを接続するモールクリップとを有するモールアセンブリであって、
前記モールクリップとして、請求項1~
4いずれか一項に記載のモールクリップを備える
ことを特徴とするモールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールクリップ及びモールアセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪自動車等の車両には、アウトサイドモール等の車両用モールディングが装着されている。このような車両用モールディングは、一般的に水平方向に長尺な形状とされており、複数のモールクリップによって車体パネルに対して接続されている。例えば、特許文献1には、車体パネルの頂部に上方から当接されてアウトサイドモールの上下方向の位置決めを行う当接部を有するモールクリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車体パネルの頂部の高さ位置は、車体パネルの形状誤差によって、同一車種の車両であっても、車両個体ごとに変位する。このため、特許文献1のように、車体パネルの頂部に対してほとんど変形が不能な当接部を当接させて車両用モールディングの位置決めを行う場合には、車体パネルの形状誤差の影響によって車両用モールディングの位置が変位することになり、車両用モールディングを意図した位置に配置できない場合がある。
【0005】
このため、モールクリップに対して上述のような位置決め用の剛性が高い当接部を設けずに、車両用モールディングの下部に設けられたシールリップを車体パネルに対して当てることで車両用モールディングの位置決めを行う場合がある。このように、車両用モールディングを車体パネルに対して直接的に接触させることによって位置決めを行うことで、車両用モールディングの下方に隙間等が生じることを防止できる。
【0006】
さらに、シールリップは、弾性体である。このため、車両用モールディングの車体パネルに対する取付け時に、作業者が車両用モールディングを下方に押し込み過ぎた場合であっても、シールリップの復元力によって車両用モールディングを上方に戻す反力が生成され、車両用モールディングを上方位置に戻すことが可能となる。
【0007】
しかしながら、近年においては、車両用モールディングの下部に設けられるシールリップが外部から視認されないようにするため、シールリップを外部から視認されない位置に小さく設ける場合がある。このような場合には、シールリップによる反力が十分に得られず、押し込み過ぎた車両用モールディングを上方位置に戻すことができなくなる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、車体パネルの形状誤差に影響されることなく、かつ、シールリップの反力のみによらずに車両用モールディングを位置決めすることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、車両用モールディングと車体パネルとを接続するモールクリップであって、基体と、上記基体に接続されると共に上記車両用モールディングを支持するモールディング支持部と、上記基体に接続されると共に上記車体パネルを挟持する挟持部と、上記基体に接続されると共に上記車体パネルの頂部に弾性変形可能に上方から当接可能とされた反力生成部とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記車体パネルの頂部の鉛直方向の位置に応じて上記反力生成部が姿勢変更されるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記モールディング支持部、上記挟持部及び上記反力生成部が水平方向に配列され、上記反力生成部が、上記モールディング支持部と上記挟持部との間に配置されているという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記反力生成部が、上記車体パネルの頂部に当接する接触片と、上記基体から上方に突設された根本部と、上記根本部の上端と上記接触片の水平方向の一端とを接続すると共に湾曲された湾曲部とを有するという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記車体パネルが、上記頂部の下方位置に下方から係止可能な係止端を有し、上記基体に接続されると共に上記係止端に下方から係止される係止爪部を有し、上記係止爪部が、上記反力生成部の真下に配置されているという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、車両用モールディングと、上記車両用モールディングと車体パネルとを接続するモールクリップとを有するモールアセンブリであって、上記モールクリップとして、上記第1~第5いずれかの発明であるモールクリップを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車体パネルの頂部に対して当接される弾性変形可能な反力生成部を設けている。このような反力生成部は、車体パネルの頂部に対して上方から当接され、弾性変形されることによって、モールクリップさらにモールクリップに接続された車両用モールディングに対して上方に付勢する反力を生成する。したがって、本発明によれば、取付け作業時に作業者が車両用モールディングを押し込み過ぎた場合であっても、車両用モールディングを上方に戻すことが可能となる。
【0017】
このような本発明によれば、車体パネルの頂部に当接される剛性の高い当接部を備えておらず、また車両用モールディングの一部によらずに車両用モールディングを押し込み過ぎた場合の反力を得ることができる。したがって、本発明によれば、車体パネルの形状誤差に影響されることなく、かつ、シールリップの反力のみによらずに車両用モールディングを位置決めすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態におけるモールアセンブリが設置される車両のフロントドアの正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるモールアセンブリが備えるモールクリップを車外側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるモールアセンブリが備えるモールクリップを車内側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態におけるモールアセンブリが備えるモールクリップの変形例を車外側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態におけるモールアセンブリが備えるモールクリップの変形例を車内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るモールクリップ及びモールアセンブリの一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態のモールアセンブリが設置される車両のフロントドア10の正面図である。
図1に示すように、車両のフロントドア10は、ドアパネル11(車体パネル)と、窓枠12と、ドアガラス13と、モールアセンブリ1とを備えている。ドアパネル11は、鋼板からなる強度部材であり、
図2に示すように、外装パネルであるドアアウタパネルと、当該ドアアウタパネルの内側に配置されるドアインナパネルとを有している。窓枠12は、ドアパネル11の上部に設けられる枠体である。ドアガラス13は、窓枠12で囲われた領域に配置されており、不図示の昇降機構によって昇降される。
【0021】
本実施形態のモールアセンブリ1は、アウトサイドモール2(車両用モールディング)と、モールクリップ3とを備えている。アウトサイドモール2は、モールクリップ3を介してドアパネル11の上端に接続されており、車両の前後方向(
図1の左右方向)に延在する長尺状の部品であり、ドアパネル11とドアガラス13との隙間を埋めるように配置されている。
【0022】
図2は、
図1のA-A断面図である。この図に示すように、モールアセンブリ1が取り付けられるドアパネル11は、ドアアウタパネル11aの上端部がドアインナパネル11bの上端部を覆うように、車両の外側から内側に向けて折り返されている。このようにドアアウタパネル11aが折り返された部位を以下、折り返し部11c(縁部)と称する。ドアパネル11は、上述の折り返し部11cが車両の前後方向の端部まで設けられた形状を有している。また、折り返し部11cの上端がドアパネル11の頂部11dとなっている。また、折り返し部11cが設けられることによって、下方に向けられたドアアウタパネル11aの端面は、モールクリップ3の後述するパネル係止爪部3eが下方から係止される係止端11eとなっている。
【0023】
本実施形態のアウトサイドモール2は、
図2に示すように、芯材2aと、車内側樹脂部2bと、低摩擦層2cと、車外側樹脂部2dとを備えている。芯材2aは、ロール成形により形成されたステンレス鋼からなる部品であり、アウトサイドモール2の延在方向に沿って配設されている。この芯材2aは、車内側樹脂部2b、低摩擦層2c及び車外側樹脂部2dを直接的または間接的に支持している。芯材2aは、車内側樹脂部2bが固着される鉛直領域2a1と、車外側樹脂部2dが固着される先端領域2a2と、鉛直領域2a1と先端領域2a2を繋ぐ露出領域2a3とを有している。
【0024】
鉛直領域2a1と先端領域2a2とは、ドアパネル11の折り返し部11cを挟むように対向配置されており、鉛直領域2a1が車内側に配置され、先端領域2a2が車外側に配置されている。また、露出領域2a3は、鉛直領域2a1と先端領域2a2とを繋ぐように湾曲されている。この露出領域2a3は、本実施形態のモールアセンブリ1が車両に装着された状態では、外面が車両外側に向けて露出される領域である。なお、鉛直領域2a1と先端領域2a2とは、本実施形態のモールアセンブリ1が車両に装着された状態では、表面を外部から視認することはできない。
【0025】
車内側樹脂部2bは、芯材2aの鉛直領域2a1の車内側全面に固着される樹脂部品である。この車内側樹脂部2bは、車内側に突出する2つのリップ2b1と、上方に突出する装飾リップ2b2とを有している。リップ2b1は、低摩擦層2cを介してドアガラス13に当接しており、ドアガラス13とアウトサイドモール2との間に雨水等が入り込むことを防止する。また、リップ2b1は、ドアガラス13の昇降を阻害しない程度の可撓性を有している。低摩擦層2cは、リップ2b1よりも低摩擦なナイロンパイル等を植毛した層であり、リップ2b1の表面に形成され、ドアガラス13に対して直接当接される。
【0026】
また、車内側樹脂部2bは、芯材2aの鉛直領域2a1の下端を下方から包み込んでおり、芯材2aよりも下方まで配置されている。このような車内側樹脂部2bの下端がアウトサイドモール2の下端とされている。また、車内側樹脂部2bの下部には、モールクリップ3の後述するモール係止爪部3fが上方から係止される係止段部2b3が設けられている。この係止段部2b3は、芯材2aよりも車内側に設けられており、リップ2b1よりも下方に配置されている。
【0027】
車外側樹脂部2dは、芯材2aの先端領域2a2に固着される樹脂製の部位である。この車外側樹脂部2dは、下方に突出してドアパネル11の表面に当接して芯材2aとドアパネル11との隙間を埋設するシールリップ2d1を有している。シールリップ2d1は、芯材2aの先端領域2a2の外部から視認され難い部位に設けられており、ドアパネル11とアウトサイドモール2との間に雨水等が入り込むことを防止する。
【0028】
モールクリップ3は、アウトサイドモール2とドアパネル11とを接続するための部品であり、
図1に示すように、アウトサイドモール2の長手方向に配列されて複数設けられている。なお、
図1に示すモールクリップ3の数は5つであるが、実際に設けられるモールクリップ3の数は適宜変更可能である。
図2に示すように、モールクリップ3は、芯材2aの鉛直領域2a1と先端領域2a2との間に配置されている。
【0029】
図3及び
図4は、モールクリップ3の斜視図である。
図3は、モールクリップ3を車外側から見た斜視図である。また、
図4は、モールクリップ3を車内側から見た斜視図である。モールクリップ3は、樹脂によって形成されており、
図3及び
図4に示すように、基体3aと、モール支持部3b(モールディング支持部)と、パネル挟持部3c(挟持部)と、反力生成部3dと、パネル係止爪部3e(係止爪部)と、モール係止爪部3fとを備えている。
【0030】
基体3aは、モール支持部3b、パネル挟持部3c、反力生成部3dと、パネル係止爪部3e及びモール係止爪部3fを支持する板状の部位である。この基体3aには、上部に反力生成部3dが配置される上部開口3a1が設けられている。また、基体3aには、中央部にパネル係止爪部3eが配置される中央開口3a2が設けられている。上部開口3a1の真下に中央開口3a2が配置されている。つまり、反力生成部3dが配置される領域の真下にパネル係止爪部3eが配置される領域が設けられている。
【0031】
基体3aの上端には、水平方向にて上部開口3a1を挟み込むように、モール支持部3bとパネル挟持部3cとが設けられている。
図5は、
図3のB-B断面図である。この図に示すように、モール支持部3bは、基体3aの上端に接続されており、基体3aの上端から下方に向けて垂下された部位である。このモール支持部3bは、例えば
図2に示すように、モールクリップ3がアウトサイドモール2に装着された場合に、下方に向けられた先端にアウトサイドモール2の芯材2aの先端が係止され、アウトサイドモール2を内側から支持する。このモール支持部3bは、反力生成部3dの後述する接触片3d1よりも上方にて基体3aと接続されており、下方からパネル挟持部3cと基体3aとの間に差し込まれるドアパネル11の頂部11dに反力生成部3dよりも先に当接されることがない形状とされている。
【0032】
図6は、
図3のC-C断面図である。この図に示すように、パネル挟持部3cは、基体3aの上端に接続されており、基体3aの上端から下方に向けて垂下された部位である。このパネル挟持部3cは、基体3aと共に水平方向からドアパネル11を挟持する。このパネル挟持部3cは、反力生成部3dの後述する接触片3d1よりも上方にて基体3aと接続されており、下方からパネル挟持部3cと基体3aとの間に差し込まれるドアパネル11の頂部11dに反力生成部3dよりも先に当接されることがない形状とされている。
【0033】
図2で示す断面は、
図3のD-D断面に相当する。
図2及び
図3に示すように、反力生成部3dは、基体3aに設けられた上部開口3a1の下側内壁面から上方に向けて立設されており、ドアパネル11の頂部11dに当接する接触片3d1と、基体3aから上方に突設された根本部3d2と、根本部3d2の上端と接触片3d1の水平方向の一端とを接続すると共に湾曲された湾曲部3d3とを有している。つまり、反力生成部3dは、ドアパネル11の頂部11dに当接される接触片3d1が湾曲部3d3及び根本部3d2によって片持ち支持された形状とされている。
【0034】
このような反力生成部3dは、例えば湾曲部3d3が弾性変形して曲率が変化することで、接触片3d1の姿勢を容易に変更可能とされている。つまり、本実施形態において反力生成部3dは、基体3aに接続されると共にドアパネル11の頂部11dに弾性変形可能に上方から当接可能とされている。このような反力生成部3dは、湾曲部3d3が弾性変形されると、湾曲部3d3の復元力によって接触片3d1を下方に向かわせる付勢力を発生させる。このため、モールクリップ3がドアパネル11に対して下方に押し込まれ、ドアパネル11の頂部11dによって接触片3d1が押し上げられると、湾曲部3d3の復元力によってモールクリップ3を上方に向かわせる反力を生成する。
【0035】
なお、湾曲部3d3の復元力は、外力が作用していない状態で水平状態の平板状の接触片3d1が、外力(ドアパネル11の頂部11dから受ける上方向への押圧力)を受けて傾動されることで発生する。このような復元力は、接触片3d1の水平面に対する傾動角度が大きくなるにしたがって大きくなる。一方で、接触片3d1の水平面に対する傾動角度がさらに大きくなると、上記復元力が水平方向に作用するようになり、モールクリップ3を上方に向かわせる反力が小さくなる。このように、接触片3d1の水平面に対する傾動角度が大きくなり、湾曲部3d3の復元力の上方に向かう成分が小さくなった時点では、シールリップ2d1がドアパネル11に強く押圧され、シールリップ2d1の復元力によってモールクリップ3が上方に戻される。
【0036】
このように、本実施形態のモールクリップ3によれば、例えばドアパネル11の長さ寸法が設計基準値に近いあるいは設計基準値よりも短いような場合には、モールクリップ3を押し込み過ぎてもシールリップ2d1から十分な反力が得られないが、反力生成部3dによってモールクリップ3(アウトサイドモール2)を上方に押し上げる反力を得ることができる。一方で、本実施形態のモールクリップ3によれば、例えばドアパネル11の長さ寸法が設計基準値よりも長い場合には、モールクリップ3の傾動角度が大きくなった状態が維持されることで、モールクリップ3(アウトサイドモール2)が意図せずに持ち上げられることはない。ただし、モールクリップ3(アウトサイドモール2)を押し込み過ぎた場合には、シールリップ2d1の復元力によってモールクリップ3(アウトサイドモール2)が上方に戻される。
【0037】
パネル係止爪部3eは、基体3aの中央開口3a2の上側内壁面から下方に向けて垂下されるように設けられており、反力生成部3dの直下に配置されている。つまり、上方から見て、パネル係止爪部3eは反力生成部3dと重なる位置に配置されている。このようなパネル係止爪部3eは、ドアパネル11の下方に向いて形成された係止端11eに下方から係止される。
【0038】
モール係止爪部3fは、基体3aの下端に接続されており、モール支持部3b及びパネル挟持部3cと反対側に設けられている。基体3aの水平方向における両端部に対してモール係止爪部3fが設けられている。つまり、モールクリップ3には2つのモール係止爪部3fが設けられている。これらのモール係止爪部3fは、モールクリップ3がアウトサイドモール2に装着された場合に、
図2に示すように、アウトサイドモール2の係止段部2b3に上方から係止される。
【0039】
このようなモールクリップ3がアウトサイドモール2に装着されることで、モールアセンブリ1となる。具体的には、モールクリップ3をアウトサイドモール2の芯材2aの鉛直領域2a1と先端領域2a2との間に差し込み、基体3aの背面を芯材2aの鉛直領域2a1に当接させ、モール支持部3bを芯材2aの先端領域2a2に係止し、モール係止爪部3fを係止段部2b3に係止する。これによってモールクリップ3がアウトサイドモール2に固定される。なお、複数のモールクリップ3がアウトサイドモール2に対して装着される。これらのモールクリップ3は、アウトサイドモール2が延伸する方向に沿って配列される。
【0040】
また、このような本実施形態のモールアセンブリ1をドアパネル11に装着する場合には、モールクリップ3の基体3aとパネル挟持部3cとの間にドアパネル11の折り返し部11cが挿入されるようにモールアセンブリ1の全体を押し下げる。このようにモールアセンブリ1をドアパネル11に対して押し下げると、パネル係止爪部3eがドアパネル11の係止端11eに下方から係止されることで、モールクリップ3がドアパネル11に接続され、さらにはモールアセンブリ1の全体がドアパネル11に対して固定される。
【0041】
ここで、作業者が、パネル係止爪部3eがドアパネル11の係止端11eに下方から係止される位置よりも、モールアセンブリ1をさらに下方に押し込み過ぎた場合には、モールクリップ3が備える反力生成部3dの接触片3d1がドアパネル11の頂部11dによって押し上げられて傾動される。接触片3d1が傾動されることによって湾曲部3d3が曲率が小さくなるように弾性変形し、湾曲部3d3の復元力によってアウトサイドモール2を上方に押し戻す反力が生成される。この結果、パネル係止爪部3eがドアパネル11の係止端11eに係止されるまで、モールアセンブリ1がドアパネル11に対して上方に移動される。
【0042】
なお、ドアパネル11の長さ寸法が設計基準値よりも長い場合には、モールクリップ3の傾動角度が大きくなった状態が維持されることで、モールアセンブリ1が意図せずに持ち上げられることはない。ただし、このような場合であっても、モールアセンブリ1を下方に押し込み過ぎた場合には、シールリップ2d1の復元力によって、パネル係止爪部3eがドアパネル11の係止端11eに係止されるまで、モールアセンブリ1が上方に戻される。
【0043】
以上のような本実施形態のモールアセンブリ1が備えるモールクリップ3は、アウトサイドモール2とドアパネル11とを接続する。このモールクリップ3は、基体3aと、基体3aに接続されると共にアウトサイドモール2を支持するモール支持部3bと、基体3aに接続されると共にドアパネル11を挟持するパネル挟持部3cと、基体3aに接続されると共にドアパネル11の頂部11dに弾性変形可能に上方から当接可能とされた反力生成部3dとを有している。
【0044】
このようにモールクリップ3によれば、ドアパネル11の頂部11dに対して当接される弾性変形可能な反力生成部3dを設けている。反力生成部3dは、ドアパネル11の頂部11dに対して上方から当接され、弾性変形されることによって、モールクリップ3さらにモールクリップ3に接続されたアウトサイドモール2に対して上方に付勢する反力を生成する。したがって、モールクリップ3によれば、取付け作業時に作業者がアウトサイドモール2を押し込み過ぎた場合であっても、アウトサイドモール2を上方に戻すことが可能となる。
【0045】
このようなモールクリップ3によれば、ドアパネル11の頂部11dに当接される剛性の高い当接部を備えておらず、またアウトサイドモール2の一部によらずにアウトサイドモール2を押し込み過ぎた場合の反力を得ることができる。したがって、モールクリップ3によれば、ドアパネル11の形状誤差に影響されることなく、かつ、通常時にはシールリップ2d1の反力のみによらずにアウトサイドモール2を位置決めすることが可能である。
【0046】
また、モールクリップ3においては、ドアパネル11の頂部11dの鉛直方向の位置に応じて反力生成部3dが姿勢変更される。具体的には、本実施形態においては、ドアパネル11の頂部11dの位置にモールクリップ3に対して相対的に高くなるに連れて、接触片3d1の水平面に対する傾動角度が大きくなると共に湾曲部3d3の曲率が小さくなる。このように、接触片3d1の水平面に対する傾動角度及び湾曲部3d3の曲率が変更されることでアウトサイドモール2を上方に戻す反力が変更される。したがって、モールクリップ3によれば、ドアパネル11の頂部11dの鉛直方向の位置に応じて、アウトサイドモール2を上方に戻す反力を変更することが可能となる。
【0047】
また、モールクリップ3においては、モール支持部3b、パネル挟持部3c及び反力生成部3dが水平方向に配列され、反力生成部3dが、モール支持部3bとパネル挟持部3cとの間に配置されている。このようなモールクリップ3によれば、水平方向におけるモールクリップ3の中央部に反力生成部3dが配置されている。このため、モールクリップ3が反力を発生させる場合に、この反力は、水平方向におけるモールクリップ3の中央部に作用することになる。したがって、反力発生時にモールクリップ3が傾くことを抑止することができる。
【0048】
また、モールクリップ3においては、反力生成部3dが、ドアパネル11の頂部11dに当接する接触片3d1と、基体3aから上方に突設された根本部3d2と、根本部3d2の上端と接触片3d1の水平方向の一端とを接続すると共に湾曲された湾曲部3d3とを有している。このため、ドアパネル11がモールクリップ3に対して深く挿し込まれた場合には、接触片3d1が水平面に対して大きく傾動され、反力生成部3dで発生する復元力の水平成分を大きくし、アウトサイドモール2を上方に押し戻す反力を抑制することができる。このため、ドアパネル11の長さ寸法が設計基準値よりも長い場合であっても、反力生成部3dがドアパネル11の挿入を阻害することを防止できる。
【0049】
また、モールクリップ3においては、ドアパネル11が、頂部11dの下方位置に下方から係止可能な係止端11eを有し、基体3aに接続されると共に係止端11eに下方から係止されるパネル係止爪部3eを有し、パネル係止爪部3eが、反力生成部3dの真下に配置されている。このため、反力生成部3dの復元力とパネル係止爪部3eから受ける反力とが鉛直方向から見て重なり、モールクリップ3に対して回転モーメントが作用することを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態のモールアセンブリ1は、アウトサイドモール2と、アウトサイドモール2とドアパネル11とを接続するモールクリップ3とを有している。このため、ドアパネル11の形状誤差に影響されることなく、かつ、通常時にはシールリップ2d1の反力のみによらずにアウトサイドモール2を位置決めすることが可能とされている。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、反力生成部3dが基体3aに設けられた上部開口3a1の下側内壁面に接続されて設けられた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図7は、上記実施形態におけるモールクリップ3の変形例を車外側から見た斜視図である。また、
図8は、上記実施形態におけるモールクリップ3の変形例のモールクリップ3を車内側から見た斜視図である。これらの図に示すように、反力生成部3dが基体3aに設けられた上部開口3a1の上側内壁面に接続されて設けられた構成を採用することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、車両用モールディングがアウトサイドモール2である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。車両用モールディングがアウトサイドモール2と異なる他のモール部品である構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1……モールアセンブリ、2……アウトサイドモール(車両用モールディング)、2a……芯材、2b3……係止段部、2d1……シールリップ、3……モールクリップ、3a……基体、3b……モール支持部(モールディング支持部)、3c……パネル挟持部(挟持部)、3d……反力生成部、3d1……接触片、3d2……根本部、3d3……湾曲部、3e……パネル係止爪部(係止爪部)、3f……モール係止爪部、11……ドアパネル(車体パネル)、11d……頂部、11e……係止端