(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】波型伝熱フィンおよびヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240830BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2020201671
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】大内 琢也
(72)【発明者】
【氏名】東海林 千帆
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158020(WO,A1)
【文献】特開2011-216517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 7/02
F28F99/00
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に所定寸法を有し、波形の流通面によって前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定周期のうねりが形成され、前記流通面を流体が流通する波型伝熱フィンであって、
前記うねりは、前記第2方向に向きが異なる直線部を交互に接続した形状であり、
各々の前記直線部には前記第1方向に窪み部あるいは突部が設けられ
、
前記突部および前記窪み部は、1側辺を前記流体の流通方向における上流側とし、他の2側辺を前記流通方向の下流側とする三角柱形状であることを特徴とする波型伝熱フィン。
【請求項2】
第1方向に所定寸法を有し、波形の流通面によって前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定周期のうねりが形成され、前記流通面を流体が流通する波型伝熱フィンであって、
前記うねりは、前記第2方向に向きが異なる直線部を交互に接続した形状であり、
各々の前記直線部には前記第1方向に窪み部あるいは突部が設けられ
、
前記突部および前記窪み部は、頂部を前記流体の流通方向における上流側とし、底面を前記流通方向の下流側とする三角錐形状であることを特徴とする波型伝熱フィン。
【請求項3】
前記突部および前記窪み部は、角部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の波型伝熱フィン。
【請求項4】
ヒートシンク内の冷媒流路に設けられることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の波型伝熱フィン。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の波型伝熱フィンを備えることを特徴とするヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波型伝熱フィンおよびヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、熱交換器用伝熱管が開示されている。この熱交換器用伝熱管は、その
図1等に明示されているように、偏平管の内周面に波形フィン構造体を内装したものである。この波形フィン構造体は、断面形状略矩形のチャンネル形状の波形で、長手方向に所定の波長で波形のうねりが形成された湾曲曲面を有するものであり、チャンネル形状の波幅をH、長手方向におけるうねりの波長をL、長手方向におけるうねりの振幅をAとした場合に、H/Lを0.17~0.20とし、かつH-Aによって求められるギャップGとHとの比(G/H)を-0.21~0.19とするものである。
【0003】
また、下記特許文献2には、熱交換器およびコルゲートフィンが開示されている。この特許文献2におけるコルゲートフィンは、その
図3等に明示されているように、一方向に並ぶ複数本のチューブの相互間に波形状を成すように曲がって形成され、チューブ内を流れる第1流体とチューブの相互間に流れる第2流体との熱交換を促進するものである。
【0004】
より詳しくは、特許文献2のコルゲートフィンは、チューブに接合される複数の接合部と、波形状に沿って隣り合う接合部同士の間をつなぐように該接合部のそれぞれに連結する複数のフィン本体部とを備える。上記フィン本体部は、一部が切り起こされた形状を成す切り起こし部を有し、当該切り起こし部は、第2流体を案内する切り起こし本体部と、該切り起こし本体部から延設された板状を成し前記切り起こし部のうち一方向の少なくとも一方の端に設けられた切り起こし端部とを有し、当該切り起こし端部の表面の親水性を高めるように形成された凹凸形状を切り起こし端部の板厚方向の少なくとも一方に有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-078194号公報
【文献】特開2019-211115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の波形フィン構造体(波型伝熱フィン)は、コルゲートフィンと言えるものであり、波幅H、うねり波長L、うねり振幅Aの関係を最適化することによって、排気ガス流路を通流する高温の排気ガスが均一な流速分布を以って通流し、かつ伝熱管の外側を通流する冷却媒体との熱交換を促進するものである。また、特許文献2のコルゲートフィンは、フィン本体部に切り起こし部を設けることにより、第1流体と第2流体との間における伝熱の促進を図るものである。
【0007】
ここで、特許文献1の波形フィン構造体に特許文献2の切り起こし部を設けることにより、特許文献1の波形フィン構造体における排気ガスと冷却媒体との間における伝熱の促進を図ることが可能である。しかしながら、波形フィン構造体において切り起こし部を形成する構造では、波形フィン構造体の内側と外側とに冷媒が流れてしまうので、冷媒の乱流が発生し難い。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、冷媒の乱流が従来よりも発生し易い波型伝熱フィンおよびヒートシンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、波型伝熱フィンに係る第1の解決手段として、第1方向に所定寸法を有し、波形の流通面によって前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定周期のうねりが形成され、前記流通面を流体が流通する波型伝熱フィンであって、前記うねりは、前記第2方向に向きが異なる直線部を交互に接続した形状であり、各々の前記直線部には前記第1方向に窪み部あるいは突部が設けられている、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、波型伝熱フィンに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記突部および前記窪み部は、角部を備えている、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、波型伝熱フィンに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記突部および前記窪み部は、1側辺を前記流体の流通方向における上流側とし、他の2側辺を前記流通方向の下流側とする三角柱形状である、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、波型伝熱フィンに係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記突部および前記窪み部は、頂部を前記流体の流通方向における上流側とし、底面を前記流通方向の下流側とする三角錐形状である、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、波型伝熱フィンに係る第5の解決手段として、上記第1~第4の何れかの解決手段において、ヒートシンク内の冷媒流路に設けられる、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、ヒートシンクに係る解決手段として、上記第1~第5の何れかの解決手段に係る波型伝熱フィンを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷媒の乱流が従来よりも発生し易い波型伝熱フィンおよびヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態におけるヒートシンクAの分解構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコルゲートフィン3A、3B(波型伝熱フィン)の形状を示す正面図(a)および側面図(b)である。
【
図3】本発明の一実施形態における窪み部3iおよび突部3jの形状を示す側面図(a)および断面図(b)である。
【
図4】本発明の一実施形態の第1変形例における窪み部3i’および突部3j’の形状を示す側面図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
最初に、
図1を参照して本実施形態におけるヒートシンクAの構造を説明する。なお、この
図1では、方向を明確化するために、互いに直行する3軸(X軸、Y軸およびZ軸)を付記している。これら3軸に沿った各方向うち、Z軸に平行な方向は、本発明の第1方向に相当し、またY軸に平行な方向は本発明の第2方向に相当する。
【0018】
このヒートシンクAは、電動車両に搭載されると共に複数の半導体スイッチングトランジスタを備えるPCU(Power Control Unit)の構成部品であり、PCU本体の下面に装着される。また、このヒートシンクAは、電力をスイッチングする関係で発熱する複数の半導体スイッチングトランジスタの熱を放熱させる機械部品である。
【0019】
なお、PCUは、周知のように電動車両に備えられた走行用モータを駆動する電力変換器(昇降圧コンバータやインバータ等)であり、リチウムイオン電池等の高圧電源から給電された直流電力を複数の半導体スイッチングトランジスタを用いて交流電力に変換して走行用モータに出力する。
【0020】
本実施形態におけるヒートシンクAは、このようなPCUにおける複数の半導体スイッチングトランジスタ(半導体チップ)が発生させる熱を外部に放熱させるためのものであり、
図1に示すようにアッパーカバー1、ロアーカバー2、2つのコルゲートフィン3A、3B(波型伝熱フィン)、ステー4、第1接続部材5Aおよび第2接続部材5Bを備えている。
【0021】
アッパーカバー1、ロアーカバー2、2つのコルゲートフィン3A、3Bおよびステー4のうち、アッパーカバー1およびロアーカバー2は、ヒートシンクAの筐体を構成する機械部品である。この筐体は、後述するように略長方形状の流体流通路Rを内包している。
【0022】
すなわち、アッパーカバー1は、略長方形状の平板状部材であり、上面が上記半導体チップが熱結合した状態で接合される平板なチップ接合面1aである。また、このアッパーカバー1は、下面つまりチップ接合面1aの裏面がロアーカバー2が接合される平板なカバー接合面1bである。
【0023】
また、アッパーカバー1には、図示するように合計で8個のネジ穴1c~1jが設けられている。これら8個のネジ穴1c~1jのうち、4個のネジ穴1c~1fは、アッパーカバー1の外周近傍部位に離散的に配置されている。これら4個のネジ穴1c~1fは、ヒートシンクAをPCU本体に固定するためのものであり、各々に固定用ネジ(図示略)が挿通される。
【0024】
残りの4個のネジ穴1g~1jのうち、2個のネジ穴1g、1hは、アッパーカバー1が有する一対の短辺のうち、一方の短辺の近傍部位に対として配置されている。これら2個のネジ穴1g、1hは、第1接続部材5Aを固定するためのものであり、各々に固定用ネジ(図示略)が挿通される。
【0025】
さらに、残りの2個のネジ穴1i、1jは、アッパーカバー1における他方の短辺の近傍部位に対として配置されている。これら2個のネジ穴1i、1jは、第2接続部材5Bを固定するためのものであり、各々に固定用ネジ(図示略)が挿通される。
【0026】
ロアーカバー2は、周縁部がZ軸方向に所定寸法だけ立ち上がった略長方形状の平板状部材であり、上記周縁部つまり立上り部の先端がアッパーカバー1のカバー接合面1bに当接した状態で接合される。このようなアッパーカバー1およびロアーカバー2によって構成されるヒートシンクAの筐体は、内部に略長方形状の空洞(冷媒流路R)が形成された中空状の筐体である。
【0027】
すなわち、ロアーカバー2は、上面が冷媒流路Rの底面を構成する流路形成面2aであり、下面が固定面2bである。なお、上述したアッパーカバー1のカバー接合面1bのうち、ロアーカバー2の立上り部によって囲われる領域は、ロアーカバー2の流路形成面2aと第1方向において対峙した状態で冷媒流路Rの天面を構成する流路形成面である。
【0028】
このようなアッパーカバー1およびロアーカバー2によって形成される冷媒流路Rは、短辺方向がX軸に平行な方向、長辺方向がX軸に平行な方向、また高さ方向がZ軸に平行な方向となる。また、このような流体流通路Rは、短辺寸法、長辺寸法および高さ寸法によって決定される容積を備える。
【0029】
また、ロアーカバー2には、流体流入口2cと流体流出口2dとが設けられている。これら流体流入口2cは、略長方形状のロアーカバー2において一方の短辺近傍に設けられており、液体冷媒が上記冷媒流路Rに向かって流入する開口である。流体流出口2dは、略長方形状のロアーカバー2において他方の短辺近傍に設けられており、液体冷媒が上記冷媒流路Rから流出する開口である。
【0030】
すなわち、本実施形態におけるヒートシンクAでは、液体冷媒は、流体流入口2cから冷媒流路Rに進入し、冷媒流路Rを流体流入口2cから最も離間した位置に設けられた流体流出口2dに向かって流通し、また流体流入口2cから外部に流出する。このような液体冷媒は、冷媒流路Rを流通する間に複数の半導体チップの熱によって加熱される。
【0031】
2つのコルゲートフィン3A、3Bは、図示するように所定高さを有する長方形の部材であり、何れも同一形状に形成されている。これらコルゲートフィン3A、3Bは、互いに隣り合うように冷媒流路R内に収納されている。すなわち、2つのコルゲートフィン3A、3Bは、
図1における上面がアッパーカバー1の流路形成面にロウ付け等によって固定されている。
【0032】
ここで、コルゲートフィン3A、3Bにおいて、高さ方向(Z軸方向)は本発明の第1方向に相当し、長辺方向(Y軸方向)は本発明の第2方向に相当する。すなわち、2つのコルゲートフィン3A、3Bは、自身の長辺が同様に長方形状に形成された流体流通路Rの長辺方向(Y軸方向)と平行になるように、かつ、冷媒流路Rの短辺方向(X軸方向)に隣り合うような姿勢で流体流通路R内に収納されている。
【0033】
続いて、
図2を参照してコルゲートフィン3A、3Bの詳細形状を説明する。これら2つのコルゲートフィン3A、3Bは、板金(母材)をプレス加工することによって波形(波板状)に成形されたプレス成型品であり、平行に並ぶ複数の波部3aの連続体である。複数の波部3aは、ロアーカバー2の流路形成面2aからアッパーカバー1側に所定の寸法Dかつ所定の間隔Eで突出する部位である。すなわち、コルゲートフィン3A、3Bは、高さ方向であるZ軸方向(第1方向)に所定寸法Dを有している。
【0034】
また、複数の波部3aは、図示するように、高さ方向(Z軸方向、第1方向)に直交する長辺方向(Y軸方向、第2方向)に沿って所定周期Tでうねっている。すなわち、コルゲートフィン3A、3Bは、波形の波部3aによって高さ方向(Z軸方向、第1方向)に直交する長辺方向(Y軸方向、第2方向)に沿って所定周期Tのうねりが形成されている。
【0035】
上記うねりは、図示するように、向きが異なる直線部3bを交互に接続したような形状に形成されている。すなわち、このうねりは、長辺方向(Y軸方向、第2方向)に延在する波部3aを短辺方向(X軸方向)に屈曲させた形状、換言すると屈曲方向が長辺方向(Y軸方向、第2方向)に対して逆方向となる直線部3bを長辺方向(Y軸方向、第2方向)において交互に接続したような形状を有している。
【0036】
また、上記うねりは、全ての波部3aについて長辺方向(Y軸方向、第2方向)に同一位相となるように設けられている。すなわち、コルゲートフィン3A、3Bでは、互いに隣り合う波部3aの間隔は、長辺方向(Y軸方向、第2方向)の何れの箇所においても略一定に保たれている。
【0037】
また、複数の波部3aは、配列方向がコルゲートフィン3A、3Bの短辺方向(X軸方向)であり、延在方向がコルゲートフィン3A、3Bの長辺方向(Y軸方向)である。このような複数の波部3aは、コルゲートフィン3A、3Bが冷媒流路R内に収納された状態において、
図2に示すように頂部3dがアッパーカバー1の流路形成面にロウ付け固定され、底部3cがロアーカバー2の流路形成面2aに当接している。
【0038】
また、このような複数の波部3aにおいて、一端はロアーカバー2の流体流入口2cに臨む冷媒流入端3eであり、他端はロアーカバー2の流体流出口2dに臨む冷媒流出端3fである。すなわち、複数の波部3aにおいて、一端(冷媒流入端3e)は流体流入口2cの近傍に位置し、他端(冷媒流出端3f)は流体流出口2dの近傍に位置している。
【0039】
このようなヒートシンクAでは、流体流入口2cから冷媒流路Rに流入した液体冷媒は、冷媒流入端3eから複数の波部3aに進入し、複数の波部3aの表面つまり第1流通面3gと裏面つまり第2流通面3hを流通して冷媒流出端3fを経由して流体流出口2dに至る。
【0040】
すなわち、上述した冷媒流路Rは、第1流通面3gとアッパーカバー1の流路形成面とによって囲まれた第1冷媒流路R1と第2流通面3hとロアーカバー2の流路形成面2aとによって囲まれた第2冷媒流路R2とからなる。
【0041】
ここで、
図3は、隣り合う2つの直線部3bの側面図(a)および当該側面図のX-Y平面における断面図(b)である。この
図3に示すように、各々の直線部3bの両側(X軸方向における両側)には、高さ方向(Z軸方向、第1方向)の全体ではなく、その一部に窪み部3iあるいは突部3jが設けられている。
【0042】
すなわち、長辺方向(Y軸方向)に平行対峙すると共に長辺方向(Y軸方向、第2方向)に延在する複数の波部3aにおいて、各々の直線部3bの両側(X軸方向における両側)には窪み部3iあるいは突部3jが交互に形成されている。より具体的には、ある直線部3bの両側には窪み部3iが形成され、当該直線部3bに隣接する直線部3bの両側には突部3jが形成されている。
【0043】
このような窪み部3iおよび突部3jのうち、窪み部3iは、
図3に示すように、隅部3kと角部3mとを有し、当該隅部3kと角部3mとの距離に相当する所定の段差(深さ)を有する。このような隅部3kおよび角部3mは、略90°の角度を有し、また隅部3kと角部3mとを接続する面(接続面3n)は平面である。なお、この窪み部3iにおける隅部3kおよび角部3mは、本発明における他の2側辺に相当する。
【0044】
このような窪み部3iは、1側辺3pを流体の流通方向における上流側とし、隅部3kおよび角部3m(他の2側辺)を上記流通方向の下流側とする略三角柱形状に形状設定されている。すなわち、本実施形態における窪み部3iの形状は、コルゲートフィン3A、3Bの長辺方向(Y軸方向)において、冷媒流入端3e側に1側辺3pが位置し、冷媒流出端3f側に隅部3kおよび角部3m(他の2側辺)が位置する形状である。
【0045】
また、突部3jは、
図3に示すように、隅部3qと角部3rとを有し、当該隅部3qと角部3rとの距離に相当する所定の段差(深さ)を有する。このような突部3jにおける隅部3qおよび角部3rは、略90°の角度を有し、また隅部3qと角部3rとを接続する面(接続面3s)は平面である。なお、突部3jにおける隅部3qおよび角部3rは、本発明における他の2側辺に相当する。
【0046】
このような窪み部3iは、1側辺3tを流体の流通方向における下流側とし、隅部3qおよび角部3r(他の2側辺)を上記流通方向の上流側とする略三角柱形状に形状設定されている。すなわち、本実施形態における窪み部3iの形状は、コルゲートフィン3A、3Bの長辺方向(Y軸方向)において、冷媒流入端3e側に1側辺3tが位置し、冷媒流出端3f側に隅部3qおよび角部3r(他の2側辺)が位置する形状である。
【0047】
各々の波部3aにおける各窪み部3iおよび各突部3jは、接続面3n、3sが液体冷媒の流れに対向する向きに設けられているので、第1流通面3gを冷媒流入端3eから冷媒流出端3fに向かって流れる液体冷媒に対して剥離現象を生じさせる剥離部として機能する。すなわち、各窪み部3iおよび各突部3jは、各々の波部3aにおいて、上記剥離現象に基づいて液体冷媒を撹拌することにより、第1冷媒流路R1において液体冷媒を層流として流通させるのではなく、乱流として流通させる。
【0048】
一方、
図1に示したステー4は、上記筐体をPCU本体に固定するための板状部材であり、合計4ヶ所にネジ穴4a~4dが設けられている。このステー4は、上面がロアーカバー2の固定面2b(下面)に接合されている。また、このステー4は、自身の各ネジ穴4a~4dとアッパーカバー1における4個のネジ穴1c~1f共通に挿入された固定用ネジ(図示略)によってPCU本体に固定される。すなわち、アッパーカバー1およびステー4は、固定用ネジによって共締めされた状態でPCU本体に固定される。
【0049】
第1接続部材5Aは、中央部に開口5aが設けられると共に周縁部の2ヶ所に開口5aを挟むようにネジ穴5b、5cが各々設けられた略円板状部材である。この第1接続部材5Aは、ヒートシンクAに液体冷媒を供給する外部配管をロアーカバー2の流体流入口2cに接続するための接続具である。
【0050】
第2接続部材5Bは、中央部に開口5dが設けられると共に周縁部の2ヶ所に開口5dを挟むようにネジ穴5e、5fが各々設けられた略円板状部材である。この第2接続部材5Bは、液体冷媒をヒートシンクAから外部に排出する外部配管をロアーカバー2の流体流出口2dに接続するための接続具である。
【0051】
次に、このように構成されたヒートシンクAの作用効果、特に本実施形態に係るコルゲートフィン3A、3B(波型伝熱フィン)の作用効果について詳しく説明する。
【0052】
上述したように本実施形態におけるヒートシンクAでは、アッパーカバー1のチップ接合面1aに複数の半導体チップ(発熱備品)が熱結合した状態で接合されている。すなわち、ヒートシンクAのアッパーカバー1には、複数の半導体チップで発生した熱が伝熱される。そして、ヒートシンクAの冷媒流路Rに収納された2つのコルゲートフィン3A、3Bには、上記半導体チップの熱が伝熱される。
【0053】
そして、コルゲートフィン3A、3Bに伝熱した半導体チップの熱は、冷媒流路Rを流通する液体冷媒に伝熱して当該液体冷媒を加熱させる。液体冷媒は、ロアーカバー2の流体流入口2cから流体流出口2dに向かって流通しているので、つまり冷媒流路R内を流通しているので、コルゲートフィン3A、3Bに伝熱した半導体チップの熱は液体冷媒に順次伝熱し半導体チップの温度上昇を抑制する。
【0054】
ここで、コルゲートフィン3A、3Bには、波部3aを構成する複数の直線部3bに窪み部3iあるいは突部3jがそれぞれ設けられているので、窪み部3iおよび突部3jが設けられていない場合に比較して伝熱性能が向上している。すなわち、本実施形態に係るコルゲートフィン3A、3Bは、窪み部3iおよび突部3jが設けられていないものに比べて伝熱性能に優れている。
【0055】
このような2つのコルゲートフィン3A、3Bは、板金(母材)をプレス加工することによって窪み部3iおよび突部3jを備えるように成形されたものであり、窪み部3iおよび突部3jの形成が極めて容易である。すなわち、本実施形態によれば、冷媒の乱流が従来よりも発生し易いコルゲートフィン3A、3B(波型伝熱フィン)およびヒートシンクAを提供することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、窪み部3iが角部3mを備え、また突部3jが角部3rを備えているので、また窪み部3iおよび突部3jが略三角柱形状に形状設定されているので、窪み部3iおよび突部3jが角部3m、3rを備えない場合、また窪み部3iおよび突部3jが略三角柱形状に形状設定されていない場合に比較して、上記乱流をより効果的に発生させることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、窪み部3iおよび突部3jを略三角柱形状としたが、本発明はこれに限定されない。窪み部3iおよび突部3jの形状は、乱流を発生することができる形状であれば他の形状でも良い。例えば、窪み部3iおよび突部3jの変形例として、
図4に示す窪み部3i’および突部3j’が考えられる。
【0058】
図4の窪み部3i’は、頂点3uを流体の流通方向における上流側とし、底面3xを流通方向の下流側とする略三角錐形状である。また、突部3j’は、頂点3vを流体の流通方向における下流側とし、底面3wを流通方向の上流側とする略三角錐形状である。この変形例における底面3x、3wは、液体冷媒の流れに対向する向きに設けられているので、液体冷媒を効果的に乱流化することが可能である。
【0059】
(2)上記実施形態では、各々の直線部3bの両側(X軸方向における両側)に窪み部3iあるいは突部3jを設けたが、本発明はこれに限定されない。各々の直線部3bの片側に窪み部3iあるいは突部3jを設けてもよい。なお、各直線部3bの片側に窪み部3iあるいは突部3jを設ける場合には、X軸方向に隣り合う波部3aによって形成される一対の対向面の何れか一方に窪み部3iあるいは突部3jが存在するように窪み部3iあるいは突部3jを設けることが好ましい。
【0060】
(3)上記実施形態では、複数の直線部3bが長辺方向(Y軸方向、第2方向)に接続した形状の波部3aにおいて、窪み部3iあるいは突部3jを交互に設けたが、本発明はこれに限定されない。長辺方向(Y軸方向、第2方向)において、例えば連続する所定数の直線部3bに窪み部3iを設け、当該所定数の直線部3bに連続する所定数の直線部3bに突部3jを設けてもよい。すなわち、複数の直線部3b毎に窪み部3iと突部3jとを交互に設けてもよい。
【0061】
(4)上記実施形態では、2つのコルゲートフィン3A、3Bを冷媒流路R内に収納したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2つのコルゲートフィン3A、3Bを一体化させたもの、つまり1つのコルゲートフィンを冷媒流路R内に収納してもよい。
【0062】
(5)上記実施形態では、2つのコルゲートフィン3A、3BをX軸方向に並べたが、本発明はこれに限定されない。例えば、Y軸方向の長さが比較的短いコルゲートフィンをY軸方向に複数並べてもよい。この場合、液体冷媒は、上流側から下流側に順次位置するコルゲートフィンの周りを流れる。
【0063】
このように複数のコルゲートフィンをY軸方向に並べる場合、Y軸方向に隣り合うコルゲートフィンの間隔を空けることが好ましい。すなわち、Y軸方向に隣り合うコルゲートフィンの間隔を空けた場合、上流側のコルゲートフィンの周囲を流通した液体冷媒は、下流側のコルゲートフィンの上流側端部によって剥離作用を受ける。このような剥離作用は、複数のコルゲートフィンにおいて各々発生するので、液体冷媒をより効果的に乱流化することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
A ヒートシンク
R1 第1冷媒流路
R2 第2冷媒流路
1 アッパーカバー
1a チップ接合面
1b カバー接合面
1c~1j、4a~4d、5c~5f ネジ穴
2 ロアーカバー
2a 流路形成面
2b 固定面
2c 流体流入口
2d 流体流出口
3A、3B コルゲートフィン(波型伝熱フィン)
3a 波部
3b 直線部
3c 底部
3d 頂部
3e 冷媒流入端
3f 冷媒流出端
3g 第1流通面
3h 第2流通面
3i 窪み部
3j 突部
3k、3q 隅部
3m、3r 角部
3n、3s 接続面
3p、3t 1側辺
3u、3v 頂点
3x、3w 底面
4 ステー
5A 第1接続部材
5B 第2接続部材
5a、5b 開口