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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303P
A01B69/00 303J
A01B69/00 303M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020205187
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092393
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089388(JP,A)
【文献】特許第3765185(JP,B2)
【文献】特開2011-062115(JP,A)
【文献】特開2019-106983(JP,A)
【文献】特開2019-187352(JP,A)
【文献】特許第6704130(JP,B2)
【文献】特開2019-175261(JP,A)
【文献】特開2008-182939(JP,A)
【文献】特開2015-112070(JP,A)
【文献】特開2020-095566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0118915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 34/24 - 34/27
G05D 1/40 - 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と
昇降可能に構成されると共に前記圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記機体の自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、
前記自動走行制御部による制御によって、前記収穫部が平面視で前記圃場外縁部に一時的に重複する方向転換である第1方向転換、及び、前記収穫部が平面視で前記圃場外縁部に重複しない方向転換である第2方向転換を行うことが可能であり、
前記圃場外縁部のうち前記機体の進行方向前方に位置する部分の高さに応じて、前記第1方向転換または前記第2方向転換を行う農作業機。
【請求項2】
圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記圃場外縁部のうち、前記検出部による状態の検出が不完全な領域である未確認領域を決定する未確認領域決定部と、を備え、
前記パラメータ調節部は、前記未確認領域に基づいて前記制御パラメータを調節する農作業機。
【請求項3】
前記検出部による検出結果に基づいて前記圃場外縁部の状態の分布を示す外縁部マップを生成するマップ生成部を備える請求項1または2に記載の農作業機。
【請求項4】
圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記圃場外縁部の状態の分布を示す外縁部マップを生成するマップ生成部と、を備え、
前記圃場の外周領域において行われる作業走行である第1作業走行と、前記第1作業走行の後に前記外周領域よりも内側の作業対象領域において行われる作業走行である第2作業走行と、によって前記圃場における作業走行を実行可能に構成されており、
前記外縁部マップに基づいて前記第2作業走行のための目標走行経路を生成する経路生成部を備える農作業機。
【請求項5】
前記検出部は、圃場走行中に、前記機体の進行方向前方に位置する領域である前方領域に存在する物体の位置及び高さを検出する検出装置と、圃場走行中に前記前方領域を撮像する撮像装置と、を有しており、
前記検出部は、前記検出装置による検出結果と、前記撮像装置による撮像結果と、に基づいて前記圃場外縁部の状態を検出する請求項1から4の何れか一項に記載の農作業機。
【請求項6】
昇降可能に構成されると共に前記圃場の作物を収穫する収穫部を備え、
前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記収穫部の高さを決定する前記制御パラメータである収穫高さパラメータを調節する請求項1から5の何れか一項に記載の農作業機。
【請求項7】
前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、車速を決定する前記制御パラメータである車速パラメータを調節する請求項1から6の何れか一項に記載の農作業機。
【請求項8】
前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、旋回状態を決定する前記制御パラメータである旋回パラメータを調節する請求項1から7の何れか一項に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような農作業機として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この農作業機(特許文献1では「コンバイン」)は、収穫部(特許文献1では「刈取部」)を備えている。この収穫部は、機体に対して昇降可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-35017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部には、畦畔や給排水ポンプ等が含まれている。そして、収穫機が圃場の角部において方向転換する際、収穫部が平面視で圃場外縁部に重複する位置まで前進してから切り返し走行を行うことにより、効率の良い方向転換を行いやすい。ただし、収穫部が平面視で圃場外縁部に重複する状態となる際、収穫部が圃場外縁部のうち機体の進行方向前方に位置する部分に干渉することを回避する必要がある。
【0005】
ここで、特許文献1には、圃場外縁部のうち機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて収穫部の昇降を制御することについて記載されていない。
【0006】
このように、従来では、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体を制御することについては、考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体を制御可能な農作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と、昇降可能に構成されると共に前記圃場の作物を収穫する収穫部と、前記機体の自動走行を制御する自動走行制御部と、を備え、前記自動走行制御部による制御によって、前記収穫部が平面視で前記圃場外縁部に一時的に重複する方向転換である第1方向転換、及び、前記収穫部が平面視で前記圃場外縁部に重複しない方向転換である第2方向転換を行うことが可能であり、前記圃場外縁部のうち前記機体の進行方向前方に位置する部分の高さに応じて、前記第1方向転換または前記第2方向転換を行うことにある。
【0009】
本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、制御パラメータが調節される。これにより、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、機体が制御されることとなる。従って、本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体を制御可能な農作業機を実現できる。
【0010】
さらに、本発明において、前記検出部は、圃場走行中に、前記機体の進行方向前方に位置する領域である前方領域に存在する物体の位置及び高さを検出する検出装置と、圃場走行中に前記前方領域を撮像する撮像装置と、を有しており、前記検出部は、前記検出装置による検出結果と、前記撮像装置による撮像結果と、に基づいて前記圃場外縁部の状態を検出すると好適である。
【0011】
この構成によれば、検出装置による検出結果と、撮像装置による撮像結果と、を組み合わせることによって、圃場外縁部の状態の検出精度が良好になりやすい。その結果、圃場外縁部の状態に基づく機体の制御を良好に行いやすい。
【0012】
本発明の別の特徴は、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記圃場外縁部のうち、前記検出部による状態の検出が不完全な領域である未確認領域を決定する未確認領域決定部と、を備え、前記パラメータ調節部は、前記未確認領域に基づいて前記制御パラメータを調節することにある
【0013】
本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、制御パラメータが調節される。これにより、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、機体が制御されることとなる。従って、本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体を制御可能な農作業機を実現できる。
また、この構成によれば、未確認領域が存在するか否かとは無関係に制御パラメータが調節される場合に比べて、機体の制御を良好に行いやすい。
【0014】
例えば、農作業機が未確認領域から比較的遠く離れた位置を走行しているときには走行速度が比較的高く制御され、農作業機が未確認領域に比較的近い位置を走行しているときには走行速度が比較的低く制御される構成であれば、未確認領域が存在するか否かとは無関係に走行速度が比較的低く制御される構成に比べて、農作業機が未確認領域から比較的遠く離れた位置を走行しているときの作業効率が向上しやすい。また、未確認領域が存在するか否かとは無関係に走行速度が比較的高く制御される構成に比べて、未確認領域に障害物等が存在していた場合に即座に停車しやすい。このように、上記の構成によれば、機体の制御を良好に行いやすい。
【0015】
さらに、本発明において、前記検出部による検出結果に基づいて前記圃場外縁部の状態の分布を示す外縁部マップを生成するマップ生成部を備えると好適である。
【0016】
この構成によれば、外縁部マップに基づいて機体を制御することが可能となる。その結果、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分だけでなく、それ以外の部分の状態にも基づいて、機体を制御することが可能となる。これにより、機体の方向転換や後進を行うときに、機体の制御を良好に行いやすい。
【0017】
本発明の別の特徴は、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に前記圃場外縁部の状態を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記機体の状態を決定する制御パラメータを調節するパラメータ調節部と、前記検出部による検出結果に基づいて前記圃場外縁部の状態の分布を示す外縁部マップを生成するマップ生成部と、を備え、前記圃場の外周領域において行われる作業走行である第1作業走行と、前記第1作業走行の後に前記外周領域よりも内側の作業対象領域において行われる作業走行である第2作業走行と、によって前記圃場における作業走行を実行可能に構成されており、前記外縁部マップに基づいて前記第2作業走行のための目標走行経路を生成する経路生成部を備えることにある
【0018】
本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、制御パラメータが調節される。これにより、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、機体が制御されることとなる。従って、本発明であれば、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体を制御可能な農作業機を実現できる。
また、この構成によれば、外縁部マップに基づいて機体を制御することが可能となる。その結果、圃場外縁部のうち、機体の進行方向前方に位置する部分だけでなく、それ以外の部分の状態にも基づいて、機体を制御することが可能となる。これにより、機体の方向転換や後進を行うときに、機体の制御を良好に行いやすい。
また、この構成によれば、外縁部マップに基づいて第2作業走行のための目標走行経路が生成されるため、第2作業走行の効率が良好になりやすい。例えば、目標走行経路に、圃場外縁部の近傍において農作業機が方向転換する際の目標となる走行経路が含まれている場合、その走行経路は外縁部マップに基づいて生成されるため、方向転換が効率良く行われやすい。その結果、第2作業走行の効率が良好になりやすい。
【0019】
さらに、本発明において、昇降可能に構成されると共に前記圃場の作物を収穫する収穫部を備え、前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記収穫部の高さを決定する前記制御パラメータである収穫高さパラメータを調節すると好適である。
【0020】
この構成によれば、圃場外縁部の状態に応じて、収穫部が圃場外縁部に干渉しないように収穫部の昇降が制御される構成を実現できる。
【0021】
さらに、本発明において、前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、車速を決定する前記制御パラメータである車速パラメータを調節すると好適である。
【0022】
この構成によれば、圃場外縁部の状態に応じて車速が制御される構成を実現できる。これにより、圃場外縁部の状態とは無関係に車速が制御される構成に比べて、圃場外縁部に機体が干渉することを回避しながらも、効率的に圃場走行が行われる農作業機を実現しやすい。
【0023】
さらに、本発明において、前記パラメータ調節部は、前記検出部による検出結果に基づいて、旋回状態を決定する前記制御パラメータである旋回パラメータを調節すると好適である。
【0024】
この構成によれば、圃場外縁部の状態に応じて機体の旋回が制御される構成を実現できる。これにより、圃場外縁部の状態とは無関係に旋回が制御される構成に比べて、圃場外縁部に機体が干渉することを回避しながらも、効率的に圃場走行が行われる農作業機を実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】第1作業走行を示す図である。
図4】第2作業走行を示す図である。
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図6】検出部による検出結果に基づいて収穫部の高さが制御される場合の例を示す図である。
図7】未確認領域及び検出済領域を示す図である。
図8】外縁部マップの一例を示す図である。
図9】第2経路生成部により生成される目標走行経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1図2図7に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図2及び図7に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1及び図7に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0027】
〔コンバインの全体構成〕
以下では、本実施形態における普通型のコンバイン(本発明に係る「農作業機」に相当)について説明する。図1及び図2に示すように、コンバインの機体1は、収穫部H、左右のクローラ11aを有する走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0028】
走行装置11は、コンバインの機体1における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバインは、走行装置11によって自走可能である。
【0029】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバインの作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバインの機外からコンバインの作業を監視していても良い。
【0030】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0031】
収穫部Hは、機体1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含んでいる。
【0032】
刈取装置15は、圃場5(図3参照)の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0033】
この構成により、収穫部Hは、圃場5の穀物(本発明に係る「作物」に相当)を収穫する。そして、コンバインは、刈取装置15によって圃場5の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0034】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0035】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0036】
ここで、コンバインは、図3及び図4に示すように、圃場外縁部6の内側に位置する圃場5において、穀物を収穫するように構成されている。尚、圃場外縁部6は、圃場5を囲む状態で設けられている。圃場外縁部6には、例えば、畦畔61や給排水ポンプ62(図8参照)等が含まれている。
【0037】
コンバインは、図3に示すように、第1作業走行を実行可能に構成されている。第1作業走行とは、圃場5の外周領域SAにおいて行われる作業走行である。尚、外周領域SAとは、図4に示すように、圃場5内の外周部に位置する領域である。
【0038】
本実施形態において、第1作業走行での周回数は1回である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1作業走行での周回数は、2回以上のいかなる回数であっても良い。
【0039】
そして、コンバインは、第1作業走行を行った後、図4に示すように、第2作業走行を行うことにより、圃場5における作業走行を実行可能である。第2作業走行とは、第1作業走行の後に外周領域SAよりも内側の作業対象領域CAにおいて行われる作業走行である。
【0040】
即ち、コンバインは、圃場5の外周領域SAにおいて行われる作業走行である第1作業走行と、第1作業走行の後に外周領域SAよりも内側の作業対象領域CAにおいて行われる作業走行である第2作業走行と、によって圃場5における作業走行を実行可能に構成されている。
【0041】
尚、本実施形態における「作業走行」は、具体的には、植立穀稈を刈り取りながら走行する刈取走行である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、本発明に係る「作業走行」として、走行しながら、植立穀稈の刈り取り以外の作業が行われても良い。
【0042】
本実施形態においては、図3に示す第1作業走行は手動走行により行われる。また、図4に示す第2作業走行は自動走行により行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1作業走行は自動走行により行われても良い。また、第2作業走行は手動走行により行われても良い。
【0043】
〔制御部に関する構成〕
図5に示すように、コンバインは、制御部20を備えている。制御部20は、自車位置算出部21、領域算出部22、第1経路生成部23、自動走行制御部24を有している。自動走行制御部24は、コンバインの自動走行を制御する。また、自動走行制御部24は、経路選択部27及び走行制御部29(本発明に係る「パラメータ調節部」に相当)を含んでいる。
【0044】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、図5に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバインの自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0045】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0046】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバインの位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバインの経時的な位置座標は、領域算出部22及び自動走行制御部24へ送られる。
【0047】
領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの経時的な位置座標に基づいて、図4に示すように、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。
【0048】
より具体的には、領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの経時的な位置座標に基づいて、圃場5における第1作業走行でのコンバインの走行軌跡を算出する。そして、領域算出部22は、算出されたコンバインの走行軌跡に基づいて、コンバインが第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAにより囲まれた領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0049】
例えば、図3においては、圃場5における第1作業走行でのコンバインの走行経路が矢印で示されている。この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場5は、図4に示す状態となる。
【0050】
図4に示すように、領域算出部22は、コンバインが第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。また、領域算出部22は、算出された外周領域SAにより囲まれた領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0051】
そして、図5に示すように、領域算出部22による算出結果は、第1経路生成部23へ送られる。
【0052】
第1経路生成部23は、領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、図4に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LIを生成する。尚、図4に示すように、本実施形態においては、刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。また、複数のメッシュ線は直線でなくても良く、湾曲していても良い。
【0053】
図5に示すように、第1経路生成部23により生成された複数の刈取走行経路LIは、自動走行制御部24へ送られる。
【0054】
自動走行制御部24における経路選択部27は、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの位置座標と、第1経路生成部23から受け取った複数の刈取走行経路LIと、に基づいて、コンバインが次に走行するべき刈取走行経路LIを選択する。経路選択部27により選択された刈取走行経路LIを示す情報は、走行制御部29へ送られる。
【0055】
走行制御部29は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部29は、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの位置座標と、経路選択部27により選択された刈取走行経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバインの自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部29は、図4に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバインの走行を制御する。
【0056】
この自動走行において、走行制御部29は、現在走行している刈取走行経路LIの次に、経路選択部27により選択された刈取走行経路LIに沿った刈取走行が行われるように、コンバインの走行を制御する。
【0057】
図1及び図5に示すように、コンバインは、刈取シリンダ15Aを備えている。また、図5に示すように、制御部20は、昇降制御部40(本発明に係る「パラメータ調節部」に相当)を有している。
【0058】
昇降制御部40は、刈取シリンダ15Aを制御可能に構成されている。昇降制御部40が刈取シリンダ15Aを伸び方向に制御すると、搬送部16及び収穫部Hは、一体的に、収穫部Hが上昇する方向に揺動する。これにより、収穫部Hは上昇する。
【0059】
また、昇降制御部40が刈取シリンダ15Aを縮み方向に制御すると、搬送部16及び収穫部Hは、一体的に、収穫部Hが下降する方向に揺動する。これにより、収穫部Hは下降する。
【0060】
この構成により、昇降制御部40は、収穫部Hの昇降を制御可能である。また、収穫部Hは昇降可能である。
【0061】
即ち、コンバインは、昇降可能に構成されると共に圃場5の穀物を収穫する収穫部Hを備えている。
【0062】
以上で説明した構成により、機体1における収穫部Hの地上からの高さは、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さに応じて決まる。即ち、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さは、機体1の状態を決定する制御パラメータである。より具体的には、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さは、収穫部Hの高さを決定する制御パラメータである。
【0063】
そして、昇降制御部40は、機体1の状態を決定する制御パラメータを調節する。より具体的には、昇降制御部40は、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さを調節する。尚、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さは、本発明に係る「収穫高さパラメータ」に相当する。
【0064】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる自車位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0065】
〔検出部の構成〕
図1図2図5に示すように、本実施形態のコンバインは、検出部30を備えている。検出部30は、圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、コンバインの圃場走行中に、圃場外縁部6の状態を検出する。
【0066】
即ち、コンバインは、圃場5を囲む状態で設けられた圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、圃場走行中に圃場外縁部6の状態を検出する検出部30を備えている。
【0067】
詳述すると、検出部30は、検出装置31及び撮像装置32を有している。本実施形態における検出装置31は、ToF(Time of flight)測定方式の測定装置である二次元スキャンLiDARである。尚、本発明はこれに限定されず、検出装置31は、三次元スキャンLiDARであっても良い。また、検出装置31の測定方式は、ToF測定方式に限定されず、ステレオマッチング測定方式等であっても良い。
【0068】
尚、本発明に係る「圃場走行」は、圃場5において走行することを意味する。例えば、圃場5における最外周部分を走行することは、本発明に係る「圃場走行」の具体例である。また、圃場5における最外周部分よりも内側を走行することも、本発明に係る「圃場走行」の具体例である。
【0069】
図5に示すように、自車位置算出部21により算出されたコンバインの位置座標は、検出部30へ送られる。そして、検出装置31は、ToF測定方式の測定結果と、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの位置座標と、に基づいて、前方領域FA(図1参照)に存在する物体の位置及び高さを示す点群データを出力する。この構成により、検出装置31は、圃場走行中に、機体1の進行方向前方に位置する領域である前方領域FAに存在する物体の位置及び高さを検出する。
【0070】
また、撮像装置32は、圃場走行中に前方領域FAを撮像する。本実施形態における撮像装置32は、色情報を含む撮影画像を取得するカメラである。
【0071】
即ち、検出部30は、圃場走行中に、機体1の進行方向前方に位置する領域である前方領域FAに存在する物体の位置及び高さを検出する検出装置31と、圃場走行中に前方領域FAを撮像する撮像装置32と、を有している。
【0072】
尚、本実施形態において、検出装置31による検出範囲、及び、撮像装置32による撮像範囲は、何れも、図1及び図2に示す前方領域FAに一致している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、検出装置31による検出範囲と、撮像装置32による撮像範囲と、は互いに一致していなくても良い。
【0073】
そして、検出部30は、検出装置31による検出結果と、撮像装置32による撮像結果と、に基づいて圃場外縁部6の状態を検出する。
【0074】
詳述すると、本実施形態における検出部30は、検出装置31により出力された点群データに、撮像装置32により取得された撮像画像を処理して得られる色情報を付与する。そして、検出部30は、色情報の付与された点群データに基づいて、圃場5と圃場外縁部6との境界を判定する。そして、検出部30は、点群データのうち、圃場外縁部6に対応するデータに基づいて、圃場外縁部6の立体形状を検出する。
【0075】
尚、撮像装置32により取得された撮像画像に対して、機械学習されたニューラルネットワークを利用した画像認識を行うことにより、圃場5と圃場外縁部6との境界が判定されても良い。
【0076】
また、検出部30は、圃場外縁部6における畦畔61以外の物体(例えば、給排水ポンプ62や樹木等)の存否を検出するように構成されていても良い。圃場外縁部6の立体形状、及び、圃場外縁部6における畦畔61以外の物体の存否は、何れも、本発明に係る「圃場外縁部の状態」の具体例である。
【0077】
図5に示すように、検出部30による検出結果は、昇降制御部40へ送られる。昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、収穫部Hが圃場外縁部6に干渉しないように、収穫部Hの昇降を制御する。このとき、昇降制御部40は、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さを調節することにより、収穫部Hの昇降を制御する。
【0078】
このように、昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、収穫部Hの高さを決定する制御パラメータである刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さを調節する。言い換えれば、コンバインは、検出部30による検出結果に基づいて、機体1の状態を決定する制御パラメータを調節する昇降制御部40を備えている。
【0079】
図6には、検出部30による検出結果に基づいて収穫部Hの高さが制御される場合の例が示されている。図6に示すように、畦畔61は、側面部61a及び上面部61bを有している。側面部61aは、外側ほど(圃場5から離れるほど)高くなるように傾斜している。また、上面部61bは水平である。
【0080】
この例では、コンバインが圃場外縁部6の近傍で方向転換(本発明に係る「第1方向転換」に相当)を行う。そして、方向転換の途中で、一時的に、収穫部Hが平面視で圃場外縁部6に重複する状態となる。このとき、昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、収穫部Hと圃場外縁部6との間の離間距離D1が所定値よりも広い状態が維持されるように、刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さを調節する。尚、この所定値は、任意に設定可能である。
【0081】
尚、検出部30による検出結果に基づいた昇降制御部40による刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さの調節は、コンバインが手動走行しているときに実行されても良いし、コンバインが自動走行しているときに実行されても良い。
【0082】
また、本実施形態における検出部30は、圃場外縁部6だけでなく、圃場5の状態も検出可能に構成されている。より具体的には、検出部30は、圃場5における植立穀稈の高さや倒伏度合いを検出可能である。
【0083】
以上で説明した構成によれば、コンバインが圃場5において作業走行をしているときに、検出部30による検知がリアルタイムに行われると共に、検出部30によるリアルタイムでの検知結果に基づいて、機体1の状態を決定する制御パラメータが調節される。
【0084】
そして、後述の未確認領域UAや外縁部マップに基づいて制御パラメータが調節される構成において、検出部30によるリアルタイムでの検知結果にも基づいて制御パラメータが調節されることにより、高精度な制御パラメータの調節が実現できる。
【0085】
また、検出部30によるリアルタイムでの検知結果に基づいて制御パラメータが調節される構成であれば、未確認領域UAや外縁部マップに依存することなく、制御パラメータを適切に調節することも可能である。即ち、検出部30によるリアルタイムでの検知結果に基づいて制御パラメータが調節される構成であれば、未確認領域UAを決定するための構成や、外縁部マップを生成するための構成を省くことも可能である。
【0086】
〔未確認領域の決定に関する構成〕
図5に示すように、制御部20は、未確認領域決定部26を備えている。検出部30による検出結果は、未確認領域決定部26へ送られる。未確認領域決定部26は、検出部30による検出結果に基づいて、圃場外縁部6のうち、検出部30による状態の検出が不完全な領域である未確認領域UA(図7参照)を決定する。
【0087】
即ち、コンバインは、検出部30による検出結果に基づいて、圃場外縁部6のうち、検出部30による状態の検出が不完全な領域である未確認領域UAを決定する未確認領域決定部26を備えている。
【0088】
図7では、未確認領域決定部26により未確認領域UAが決定される場合の例が示されている。この例では、圃場5において、穀物が畦畔61のすぐ近くまで植えられている。また、図7の上部に示すように、検出部30による検出は植立穀稈の頂部によって阻まれるため、前方領域FAのうち、図7に示す下限ラインLLよりも下側は、検出部30による検出の死角となる。
【0089】
このとき、未確認領域決定部26は、検出部30による検出結果に基づいて、未確認領域UA及び検出済領域DAを決定する。尚、検出済領域DAは、圃場5及び圃場外縁部6のうち、検出部30による状態の検出が行われた領域である。より具体的には、検出済領域DAは、検出部30による状態の検出が十分に行われ、存在する物体の種類や、その物体の位置及び高さが検出された領域である。
【0090】
図7に示す例では、圃場外縁部6のうち、下限ラインLLよりも下側に位置する部分は、検出部30による状態の検出が不完全である。より具体的には、側面部61aにおける下部は、検出部30による状態の検出が不完全である。そのため、図7の下部に示すように、側面部61aにおける下部に対応する領域は、未確認領域決定部26によって未確認領域UAとして決定される。
【0091】
尚、本実施形態においては、対応する点群データが存在しない領域が、未確認領域UAとして決定される。また、対応する点群データが存在する領域が、検出済領域DAとして決定される。
【0092】
また、前方領域FAのうち、未確認領域UAに対してコンバイン側に位置する領域の状態は、検出部30によって十分に検出されている。より具体的には、検出部30によってこの領域における植立穀稈の位置及び高さが検出されている。そのため、この領域は、未確認領域決定部26によって検出済領域DAとして決定される。
【0093】
また、前方領域FAのうち、未確認領域UAに対してコンバインとは反対側に位置する領域の状態は、検出部30によって十分に検出されている。より具体的には、検出部30によってこの領域における畦畔61の位置及び立体形状が十分に検出されている。そのため、この領域は、未確認領域決定部26によって検出済領域DAとして決定される。
【0094】
尚、未確認領域決定部26により決定される未確認領域UA及び検出済領域DAは、二次元の領域(平面において規定される領域)であっても良いし、三次元の領域(空間において規定される領域)であっても良い。
【0095】
また、本実施形態において、未確認領域決定部26は、検出部30による現時点での検出結果のみに基づいて、未確認領域UA及び検出済領域DAを決定する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、未確認領域決定部26は、検出部30による経時的な検出結果に基づいて、未確認領域UA及び検出済領域DAを決定しても良い。
【0096】
例えば、未確認領域決定部26は、検出部30による経時的な検出結果に基づいて、検出マップを生成しても良い。この場合、この検出マップは、未確認領域UA及び検出済領域DAの分布を示すマップである。
【0097】
検出マップが生成される構成では、コンバインが圃場5における刈取走行を開始する前は、検出マップの全体が未確認領域UAである。そして、コンバインが圃場5における刈取走行を進めていくことに伴い、検出部30によって状態の検出された領域が拡大していく。そのため、コンバインが圃場5における刈取走行を進めていくことに伴い、検出マップにおける検出済領域DAが拡大していくと共に、未確認領域UAが狭まっていくことになる。
【0098】
〔未確認領域に基づく制御〕
図5に示すように、未確認領域決定部26により決定された未確認領域UA及び検出済領域DAを示す情報は、走行制御部29へ送られる。走行制御部29は、この情報に基づいて、走行装置11を制御する。
【0099】
詳述すると、走行制御部29は、自車位置算出部21から受け取ったコンバインの位置座標と、未確認領域UA及び検出済領域DAを示す情報と、に基づいて、所定条件が満たされているか否かを判定する。本実施形態において、この所定条件は、「コンバインが未確認領域UAに近づく方向に走行しており、且つ、コンバインの現在位置から未確認領域UAまでの距離が所定距離以下である」ことである。この所定条件が満たされていると判定された場合、走行制御部29は、車速が減少するように、走行装置11におけるクローラ11aの回転速度を調節する。このとき、走行制御部29は、クローラ11aの回転速度を減少させる。尚、この所定条件は、適宜変更しても良い。
【0100】
尚、本実施形態のコンバインにおいて、車速は、クローラ11aの回転速度に応じて決まる。即ち、クローラ11aの回転速度は、機体1の状態を決定する制御パラメータである。より具体的には、クローラ11aの回転速度は、車速を決定する制御パラメータである。そして、クローラ11aの回転速度は、本発明に係る「車速パラメータ」に相当する。
【0101】
このように、走行制御部29は、未確認領域UAに基づいてクローラ11aの回転速度を調節する。
【0102】
また、以上で説明した通り、未確認領域決定部26により決定される未確認領域UAは、検出部30による検出結果に基づいている。即ち、走行制御部29は、検出部30による検出結果に基づいて、車速を決定する制御パラメータであるクローラ11aの回転速度を調節する。言い換えれば、コンバインは、検出部30による検出結果に基づいて、機体1の状態を決定する制御パラメータを調節する走行制御部29を備えている。
【0103】
尚、未確認領域UA、あるいは、検出部30による検出結果に基づいた走行制御部29によるクローラ11aの回転速度の調節は、コンバインが手動走行しているときに実行されても良いし、コンバインが自動走行しているときに実行されても良い。
【0104】
〔外縁部マップに関する構成〕
図5に示すように、制御部20は、マップ生成部25を有している。検出部30による検出結果は、マップ生成部25へ送られる。
【0105】
マップ生成部25は、検出部30による検出結果に基づいて、外縁部マップを生成する。外縁部マップとは、圃場外縁部6の状態の分布を示すマップである。本実施形態における外縁部マップは、圃場外縁部6の立体形状の分布を示すものである。
【0106】
即ち、コンバインは、検出部30による検出結果に基づいて圃場外縁部6の状態の分布を示す外縁部マップを生成するマップ生成部25を備えている。
【0107】
図8には、マップ生成部25により生成される外縁部マップの一例が示されている。図8に示す外縁部マップには、畦畔61の側面部61aの位置及び立体形状と、畦畔61の上面部61bの位置及び立体形状と、給排水ポンプ62の位置及び立体形状と、が含まれている。
【0108】
尚、図8に示す外縁部マップは、圃場外縁部6の全周に対応している。即ち、この外縁部マップは、圃場外縁部6の全周に亘る状態の分布を示している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0109】
例えば、圃場外縁部6の一部のみの状態が検出部30によって検出済みであるときに、その部分のみの状態の分布を示すマップが、外縁部マップとして生成されても良い。また、この場合、コンバインが圃場5を走行し、検出部30によって状態の検出された領域が拡大していくに伴って、外縁部マップが更新されていくように構成されていても良い。この場合、コンバインが圃場5における刈取走行を進めていくことに伴い、外縁部マップにより示される領域が拡大していくこととなる。
【0110】
また、図5に示すように、自動走行制御部24は、第2経路生成部28(本発明に係る「経路生成部」に相当)を有している。マップ生成部25により生成された外縁部マップは、第2経路生成部28へ送られる。そして、第2経路生成部28は、第2作業走行のための目標走行経路TL(図6及び図9参照)を生成する。
【0111】
以下では、目標走行経路TLについて詳述する。
【0112】
図6では、コンバインが圃場外縁部6の近傍で方向転換をする例が示されている。この例では、マップ生成部25により、外縁部マップが既に生成されている。また、この例では、コンバインは、自動走行によって上述の第2作業走行を行っている。
【0113】
図6に示す例では、コンバインは、まず、作業対象領域CAにおいて刈取走行を行いながら直進する。そして、収穫部Hが作業対象領域CAから外周領域SAに進入すると、コンバインは、αターンによって方向転換を行う。
【0114】
より具体的には、収穫部Hが作業対象領域CAから外周領域SAに進入すると、走行制御部29の制御により、コンバインは、減速しながら機体左側へ旋回する。そして、コンバインは、収穫部Hが平面視で圃場外縁部6に重複する状態で、一旦停止する。
【0115】
その後、コンバインは後進及び前進を行いながら、機体1の向きを変更する。これにより、コンバインの方向転換が完了する。
【0116】
ここで、収穫部Hが作業対象領域CAから外周領域SAに進入する前に、第2経路生成部28は、経路選択部27により選択された刈取走行経路LIを示す情報を受け取る。そして、第2経路生成部28は、この情報と、マップ生成部25から受け取った外縁部マップと、に基づいて、方向転換の際に目標となるコンバインの走行経路である目標走行経路TLを生成する。このとき、第2経路生成部28は、圃場外縁部6の状態の分布に応じて、コンバインが効率的に方向転換できるように、且つ、方向転換の際に収穫部Hが圃場外縁部6に干渉しないように、目標走行経路TLを生成する。尚、図6では、刈取走行経路LIの図示を省略している。
【0117】
即ち、コンバインは、外縁部マップに基づいて第2作業走行のための目標走行経路TLを生成する第2経路生成部28を備えている。
【0118】
そして、走行制御部29は、生成された目標走行経路TLに沿ってコンバインが方向転換を行うように、コンバインの走行を制御する。このとき、走行制御部29は、目標走行経路TLに基づいて、走行装置11における左右のクローラ11aの速度差を調節する。
【0119】
尚、本実施形態のコンバインにおいて、機体1の旋回状態は、左右のクローラ11aの速度差に応じて決まる。即ち、左右のクローラ11aの速度差は、機体1の状態を決定する制御パラメータである。より具体的には、左右のクローラ11aの速度差は、旋回状態を決定する制御パラメータである。そして、左右のクローラ11aの速度差は、本発明に係る「旋回パラメータ」に相当する。
【0120】
また、以上で説明した通り、第2経路生成部28により生成される目標走行経路TLは、外縁部マップに基づいている。マップ生成部25により生成される外縁部マップは、検出部30による検出結果に基づいている。即ち、走行制御部29は、検出部30による検出結果に基づいて、旋回状態を決定する制御パラメータである左右のクローラ11aの速度差を調節する。
【0121】
尚、検出部30による検出結果に基づいた走行制御部29による左右のクローラ11aの速度差の調節は、コンバインが手動走行しているときに実行されても良いし、コンバインが自動走行しているときに実行されても良い。
【0122】
また、コンバインが方向転換を行う際、圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分の地上高さが所定高さよりも高い場合、第2経路生成部28は、図6に示すようなαターンの目標走行経路TLではなく、図9に示すような目標走行経路TLを生成する。尚、この所定高さは、任意に設定可能である。また、図9では、刈取走行経路LIの図示を省略している。そして、走行制御部29は、生成された目標走行経路TLに沿ってコンバインが方向転換(本発明に係る「第2方向転換」に相当)を行うように、コンバインの走行を制御する。
【0123】
図9に示す例では、コンバインは、まず、作業対象領域CAにおいて刈取走行を行いながら直進する。そして、収穫部Hが作業対象領域CAから外周領域SAに進入した後、コンバインは、収穫部Hが平面視で圃場外縁部6に重複しない状態で、一旦停止する。
【0124】
その後、コンバインは後進及び前進を繰り返しながら、機体1の向きを変更する。これにより、コンバインの方向転換が完了する。
【0125】
以上で説明した構成であれば、圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、制御パラメータが調節される。これにより、圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて、機体1が制御されることとなる。従って、以上で説明した構成であれば、圃場外縁部6のうち、機体1の進行方向前方に位置する部分の状態に応じて機体1を制御可能なコンバインを実現できる。
【0126】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。例えば、走行装置11がホイール式である場合、ホイールの回転速度は、本発明に係る「車速パラメータ」に相当する。また、旋回時のホイールの切れ角は、本発明に係る「旋回パラメータ」に相当する。
【0127】
(2)上記実施形態においては、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線でなくても良い。例えば、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、渦巻き状の走行経路であっても良い。また、刈取走行経路LIは、別の刈取走行経路LIと直交していなくても良い。また、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であっても良い。
【0128】
(3)自車位置算出部21、領域算出部22、第1経路生成部23、自動走行制御部24、マップ生成部25、未確認領域決定部26、経路選択部27、第2経路生成部28、走行制御部29、昇降制御部40のうち、一部または全てがコンバインの外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバインの外部に設けられた管理施設や管理サーバに備えられていても良い。
【0129】
(4)コンバインは、自動走行ができないように構成されていても良い。
【0130】
(5)上記実施形態においては、昇降制御部40は、収穫部Hと圃場外縁部6との間の離間距離D1が所定値よりも広い状態が維持されるように、収穫部Hの昇降を制御する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、このような所定値が設定されていなくても良い。
【0131】
(6)外縁部マップは、畦畔61の側面部61aにおける最も低い部分の位置及び高さと、畦畔61の側面部61aにおける最も高い部分の位置及び高さと、を示すものであっても良い。
【0132】
(7)上記実施形態においては、領域算出部22が、コンバインが第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。外周領域SAは、コンバインが第1作業走行を行う前に決定されていても良い。
【0133】
(8)第1経路生成部23は、外縁部マップに基づいて刈取走行経路LIを生成しても良い。この場合、第1経路生成部23は本発明に係る「経路生成部」に相当し、刈取走行経路LIは本発明に係る「目標走行経路」に相当する。
【0134】
(9)昇降制御部40は、未確認領域UAに基づいて刈取シリンダ15Aの伸縮方向での長さを調節しても良い。例えば、昇降制御部40は、収穫部Hが平面視で未確認領域UAに重複する状態となる際、刈取シリンダ15Aを設計上の最大長さまで伸ばすように構成されていても良い。これにより、収穫部Hは、設計上の最上昇位置まで上昇することとなる。
【0135】
(10)上記実施形態において、未確認領域決定部26は、圃場5及び圃場外縁部6のうち、検出部30による状態の検出が行われた領域を検出済領域DAとして決定する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。未確認領域決定部26は、圃場外縁部6についてのみ、検出済領域DAを決定するように構成されていても良い。
【0136】
(11)上記実施形態において、走行制御部29は、未確認領域UAに基づいてクローラ11aの回転速度を調節する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。走行制御部29は、未確認領域UAに基づくことなく、クローラ11aの回転速度を調節するように構成されていても良い。
【0137】
例えば、走行制御部29は、検出部30による検出結果を受け取って、その検出結果に基づいて、クローラ11aの回転速度を調節するように構成されていても良い。この場合、例えば、走行制御部29は、コンバインが圃場外縁部6に近づく方向に走行しており、且つ、コンバインの現在位置から圃場外縁部6までの距離が所定距離以下である場合に、クローラ11aの回転速度を減少させても良い。
【0138】
(12)上記実施形態において、走行制御部29は、目標走行経路TLに基づいて左右のクローラ11aの速度差を調節する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。走行制御部29は、目標走行経路TLに基づくことなく、左右のクローラ11aの速度差を調節するように構成されていても良い。
【0139】
例えば、走行制御部29は、検出部30による検出結果を受け取って、その検出結果に基づいて、左右のクローラ11aの速度差を調節するように構成されていても良い。この場合、例えば、走行制御部29は、コンバインが圃場外縁部6に近づく方向に走行しており、且つ、コンバインの現在位置から圃場外縁部6までの距離が所定距離以下である場合に、コンバインが圃場外縁部6に近づかない方向へコンバインの進行方向を変化させるように、左右のクローラ11aの速度差を調節しても良い。
【0140】
(13)上記実施形態においては、本発明を適用したコンバインについて説明した。しかしながら、本発明はコンバインに限定されない。例えば、本発明が田植機(本発明に係る「農作業機」に相当)に適用されても良い。即ち、上記実施形態についての説明のうち、田植機にも適用可能な部分は、田植機にも同様に当てはまる。
【0141】
例えば、田植機の後部に、苗載せ台を有する苗植付装置が備えられており、且つ、この田植機が、苗植付装置を昇降させる油圧式の昇降シリンダと、検出部30と、昇降制御部40と、を備えていても良い。そして、昇降制御部40が、この昇降シリンダを制御可能に構成されていても良い。
【0142】
この構成において、昇降制御部40は、苗植付装置の昇降を制御可能である。また、昇降シリンダの伸縮方向での長さ、及び、苗植付装置の昇降高さは、本発明に係る「制御パラメータ」に相当する。
【0143】
この構成において、昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、苗植付装置が圃場外縁部6に干渉しないように、苗植付装置の昇降を制御するように構成されていても良い。
【0144】
例えば、昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、苗植付装置が畦畔61に干渉しないように、苗植付装置の昇降を制御するように構成されていても良い。また、圃場外縁部6に障害物が存在する場合、昇降制御部40は、検出部30による検出結果に基づいて、苗植付装置がその障害物に干渉しないように、苗植付装置の昇降を制御するように構成されていても良い。
【0145】
また、この田植機が、左右の前車輪及び左右の後車輪を備えると共に、走行制御部29を備えていても良い。この場合、走行制御部29は、検出部30による検出結果に基づいて、車速を決定する制御パラメータである左右の前車輪及び左右の後車輪の回転速度を調節するように構成されていても良い。
【0146】
さらに、この田植機における前車輪または後車輪が操向可能な操向輪として構成されている場合、走行制御部29は、検出部30による検出結果に基づいて、旋回状態を決定する制御パラメータである操向輪の切れ角を調節するように構成されていても良い。
【0147】
また、この田植機において、検出部30による検出は、前進走行中に行われても良いし、後進走行中に行われても良い。尚、後進走行中において、田植機の機体の後方は、本発明に係る「機体の進行方向前方」に相当する。また、この田植機において、昇降制御部40及び走行制御部29による制御パラメータの調節は、前進走行中に行われても良いし、後進走行中に行われても良い。
【0148】
(14)上記実施形態においては、本発明を適用したコンバインについて説明した。しかしながら、本発明はコンバインに限定されない。例えば、本発明がトラクタ(本発明に係る「農作業機」に相当)あるいはトラクタのインプルメント(本発明に係る「農作業機」に相当)に適用されても良い。即ち、上記実施形態についての説明のうち、トラクタやインプルメントにも適用可能な部分は、トラクタやインプルメントにも同様に当てはまる。
【0149】
例えば、トラクタの後部に、インプルメントである畦塗り機が取り付けられており、且つ、このトラクタあるいは畦塗り機が、畦塗り機の左右位置や傾き等を変化させるアクチュエータと、検出部30と、畦塗り制御部(本発明に係る「パラメータ調節部」に相当)と、を備えていても良い。そして、畦塗り制御部が、このアクチュエータを制御可能に構成されていても良い。
【0150】
この構成において、畦塗り制御部は、畦塗り機の左右位置や傾き等を制御可能である。また、畦塗り機の左右位置や傾き等は、本発明に係る「制御パラメータ」に相当する。
【0151】
この構成において、畦塗り制御部は、検出部30による検出結果に基づいて、好適な畦畔61が形成されるように、畦塗り機の左右位置や傾き等を制御するように構成されていても良い。この場合、畦塗り制御部は、検出部30による検出結果に基づいて、畦塗り機の左右位置や傾き等を調節することとなる。
【0152】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機等、種々の農作業機に利用可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 機体
5 圃場
6 圃場外縁部
24 自動走行制御部
25 マップ生成部
26 未確認領域決定部
28 第2経路生成部(経路生成部)
29 走行制御部(パラメータ調節部)
30 検出部
31 検出装置
32 撮像装置
40 昇降制御部(パラメータ調節部)
CA 作業対象領域
FA 前方領域
H 収穫部
SA 外周領域
TL 目標走行経路
UA 未確認領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9