IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-コンバイン 図1
  • 特許-コンバイン 図2
  • 特許-コンバイン 図3
  • 特許-コンバイン 図4
  • 特許-コンバイン 図5
  • 特許-コンバイン 図6
  • 特許-コンバイン 図7
  • 特許-コンバイン 図8
  • 特許-コンバイン 図9
  • 特許-コンバイン 図10
  • 特許-コンバイン 図11
  • 特許-コンバイン 図12
  • 特許-コンバイン 図13
  • 特許-コンバイン 図14
  • 特許-コンバイン 図15
  • 特許-コンバイン 図16
  • 特許-コンバイン 図17
  • 特許-コンバイン 図18
  • 特許-コンバイン 図19
  • 特許-コンバイン 図20
  • 特許-コンバイン 図21
  • 特許-コンバイン 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20240830BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A01D41/127 110
A01D41/127 140
A01F12/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020206138
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093059
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 高範
(72)【発明者】
【氏名】植田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】山岡 京介
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-034232(JP,A)
【文献】特開2003-070339(JP,A)
【文献】特開2020-000028(JP,A)
【文献】特開昭60-196123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置によって得られた穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記脱穀装置によって得られた穀粒を、前記脱穀装置から前記穀粒タンクへ搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される穀粒の流量を計測する流量計測装置と、
前記脱穀装置に還元される二番物の流量を計測する二番物センサと、
前記流量を、前記二番物の流量で補正する補正部と、
特定の収量値を受け付ける収量受付部と、
前記流量に基づいて、収穫作業によって得られた穀粒の収量が前記特定の収量値に到達するために必要な作業量を算定する作業量算定部と、が備えられているコンバイン。
【請求項2】
作物を刈り取る刈取部を備え、
前記補正部は、前記刈取部が収穫作業を開始してから前記流量が所定量に達するまでは、前記流量に前記二番物の流量を加えて補正し、前記刈取部が作業対象領域を刈り抜けた後は、前記流量から前記二番物の流量を減じて補正する請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記作業量算定部は、前記流量を積算することによって前記収量を算定する請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記作業量算定部は、前記流量に基づいて単位時間あたりの平均収量を算出し、前記特定の収量値から前記収量を減算して得られた値を前記平均収量で除算して、前記作業量として、作業時間を算定する請求項1から3の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記作業量算定部は、前記流量に基づいて単位走行距離あたりの平均収量を算出し、前記特定の収量値から前記収量を減算して得られた値を前記平均収量で除算して、前記作業量として、作業走行距離を算定する請求項1から3の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記作業量は、前記穀粒タンクに前記特定の収量値に対応する穀粒が貯留されるまでの作業量である請求項1からの何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記流量計測装置に、搬送される穀粒が接触して揺動するアーム部と、前記アーム部の揺動角度を検出するセンサ部と、前記センサ部によって検出された揺動角度に基づいて前記流量を算出する算出部と、が備えられている請求項1からの何れか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置によって得られた穀粒を脱穀装置から穀粒タンクへ搬送する搬送装置と、搬送装置によって搬送される穀粒の流量を計測する流量計測装置と、が備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2019-216744号公報(特許文献1)に開示されたコンバインでは、穀粒タンク(特許文献1では「グレンタンク」)内に貯留された穀粒の収量(特許文献1では「収穫量」)が検出され、圃場において穀粒タンクが満杯になる位置が収量に基づいて予測される。穀粒の収量は、例えば特開2020-000107号公報(特許文献2)に示されるように、穀粒タンク(特許文献2では「穀粒タンク」)の重量を測定するロードセル(特許文献2では「重量測定器」)によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-216744号公報
【文献】特開2020-000107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に開示されたコンバインでは、圃場において穀粒タンクが満杯になる位置が収量に基づいて予測される構成となっているが、例えば穀粒タンクが満杯となる前であっても、特定の収量に基づく種々の作業(例えば穀粒の排出作業や、収量に応じたメンテナンス作業)が必要な場合も考えられる。このため、特定の収量に到達するまでの作業量を算定可能な構成であることが望ましい。また、このような特定の収量に到達するまでの作業量を算定するために、収量が精度よく検出されることが重要である。しかし、特許文献2に示された構成だと、穀粒タンク内における穀粒の溜まり方(例えば、前後一方寄りや左右一方寄りに偏倚して溜まる場合等)によってはロードセルの検出値が異なる場合もあるため、収量の検出精度の向上が課題である。
【0005】
本発明の目的は、ニーズに応じた特定の収量に到達するまでの作業量を精度良く算定可能なコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコンバインでは、作物を脱穀処理する脱穀装置と、前記脱穀装置によって得られた穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記脱穀装置によって得られた穀粒を、前記脱穀装置から前記穀粒タンクへ搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される穀粒の流量を計測する流量計測装置と、前記脱穀装置に還元される二番物の流量を計測する二番物センサと、前記流量を、前記二番物の流量で補正する補正部と、特定の収量値を受け付ける収量受付部と、前記流量に基づいて、収穫作業によって得られた穀粒の収量が前記特定の収量値に到達するために必要な作業量を算定する作業量算定部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では収量受付部が備えられているため、例えばオペレータや管理者は、収量受付部を介してニーズに応じた特定の収量を指定できる。このため、本発明であれば、例えば穀粒タンクが満杯となる前であっても、特定の収量に基づく種々の作業(例えば穀粒の排出作業や、収量に応じたメンテナンス作業)が必要となるまでの作業量を算定が可能となる。また、搬送装置によって搬送される穀粒の流量が流量計測装置によって計測され、記特定の収量値に到達するために必要な作業量が当該流量に基づいて算定される。つまり、穀粒タンク内における穀粒の溜まり方(例えば、前後一方寄りや左右一方寄りに偏倚して溜まる場合等)に左右されることなく、作業量の算定が可能となる。これにより、ニーズに応じた特定の収量に到達するまでの作業量を精度良く算定可能なコンバインが実現される。
また、本発明において、作物を刈り取る刈取部を備え、前記補正部は、前記刈取部が収穫作業を開始してから前記流量が所定量に達するまでは、前記流量に前記二番物の流量を加えて補正し、前記刈取部が作業対象領域を刈り抜けた後は、前記流量から前記二番物の流量を減じて補正すると好適である。
【0008】
本発明において、前記作業量算定部は、前記流量を積算することによって前記収量を算定すると好適である。
【0009】
本構成によると、流量を積算することによって収量が算出されるため、穀粒タンク内における穀粒の溜まり方(例えば、前後一方寄りや左右一方寄りに偏倚して溜まる場合等)に関係なく、収量の算出が可能となる。このことから、例えば穀粒タンクの重量をロードセルで測定することによって穀粒の収量が計測される構成と比較して、収量の検出精度が向上する。
【0010】
本発明において、前記作業量算定部は、前記流量に基づいて単位時間あたりの平均収量を算出し、前記特定の収量値から前記収量を減算して得られた値を前記平均収量で除算して、前記作業量として、作業時間を算定すると好適である。また、本発明において、前記作業量算定部は、前記流量に基づいて単位走行距離あたりの平均収量を算出し、前記特定の収量値から前記収量を減算して得られた値を前記平均収量で除算して、前記作業量として、作業走行距離を算定すると好適である。
【0011】
本構成によって、オペレータや管理者は、作業量として算定された作業時間と作業走行距離との少なくとも一方に基づいて、圃場における収穫作業を計画できる。
【0012】
本発明において、前記作業量は、前記穀粒タンクに前記特定の収量値に対応する穀粒が貯留されるまでの作業量であると好適である。
【0013】
本構成であれば、作業量が穀粒タンク内における穀粒の貯留状態に基づいて算定されるため、オペレータや管理者は、例えば穀粒の排出作業等の具体的な作業と、当該具体的な作業が必要となるまでの収穫作業と、を計画できる。
【0014】
本発明において、前記流量計測装置に、搬送される穀粒が接触して揺動するアーム部と、前記アーム部の揺動角度を検出するセンサ部と、前記センサ部によって検出された揺動角度に基づいて前記流量を算出する算出部と、が備えられていると好適である。
【0015】
本構成によると、穀粒がアーム部と接触するとアーム部が揺動し、アーム部の揺動角度がセンサ部によって検出される。コンバインの振動に起因してアーム部が共振する場合、例えばアーム部に掛かる荷重をセンサ部(例えばロードセル)が検出する構成であると、当該共振がセンサ部による荷重の検出に及ぼす影響は大きくなりがちである。一方、アーム部が共振しても、共振のみに起因してアーム部が揺動するわけではないため、センサ部がアーム部の揺動角度を検出する構成であれば、当該共振がセンサ部による揺動角度の検出に及ぼす影響は小さい。このことから、例えばアーム部に掛かる荷重をセンサ部が検出する構成と比較して、流量計測装置がコンバインの振動の影響を受け難くなる。つまり、アーム部の揺動角度の大小は、コンバインの振動の影響を受け難いため、算出部は揺動角度の大小に応じて穀粒の流量を精度良く算出できる。これにより、流量計測装置は穀粒の収量を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンバインの全体右側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】脱穀装置の縦断左側面図である。
図4】穀粒タンク、揚穀装置、及び脱穀装置の正面図である。
図5】一番物センサを示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図6】一番物センサを示す平面図である。
図7】一番物センサを示す機体前後方向視の縦断面図である。
図8】一番物センサが穀粒を検出する状態を示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図9】一番物センサが穀粒を検出する状態を示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図10】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
図11】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
図12】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
図13】二番物センサの側面図である。
図14】バケットがハンプと接触する状態を示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図15】バケットがハンプと接触する状態を示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図16】バケットがハンプと接触する状態を示す揚穀装置の縦断右側面図である。
図17】作業量の算定、及び脱穀処理物の量の測定に係る機能部を示すブロック図である。
図18】一番物回収量及び二番物還元量の検出結果を示す図である。
図19】脱穀制御に係る制御状態を示す図である。
図20】自脱型コンバインにおける一番物センサを示す穀粒タンク側壁の側面図である。
図21】一番物回収量及び二番物還元量の検出結果を示す図である。
図22】作業量の算定、及び脱穀処理物の量の測定に係る機能部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るコンバインは、脱穀された作物から選別された穀粒を適切に貯留することができるように構成される。以下、本実施形態のコンバインについて、普通型コンバインを例に挙げて説明する。
【0018】
図1はコンバインの右側面図であり、図2はコンバインの平面図である。ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印「F」の方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1に示す矢印「B」の方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、「上」(図1に示す矢印「U」の方向)及び「下」(図1に示す矢印「D」の方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。更に、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)、すなわち、「左」(図2に示す矢印「L」の方向)及び「右」(図2に示す矢印「R」の方向)は、夫々、機体の左方向及び右方向を意味するものとする。
【0019】
コンバインには、クローラ式の走行装置3と、走行装置3によって支持された機体フレーム2と、圃場の作物(稲、麦、大豆、菜種などの各種作物)を刈り取る刈取部4と、フィーダ11と、脱穀装置1と、穀粒タンク12と、穀粒排出装置14と、が備えられている。
【0020】
刈取部4は、作物を掻き込む掻き込みリール5と、圃場の作物を切断するバリカン型の切断装置6と、刈り取られた作物をフィーダ11まで横送りするオーガ7と、を備える。刈取部4によって刈り取られた作物は、フィーダ11によって脱穀装置1に搬送され、脱穀装置1によって脱穀選別処理される。脱穀装置1によって脱穀選別処理された選別処理物は、穀粒タンク12に貯留され、適宜、穀粒排出装置14によって機外に排出される。
【0021】
刈取部4の後方に、フィーダ11と横並び状態で運転部9が備えられ、運転部9は機体右側に偏倚した状態で設けられている。運転部9は、キャビン10によって覆われている。運転部9の下方にはエンジンルームERが備えられ、エンジンルームERにはエンジンEや、特に図示はしないが、冷却ファンやラジエータ等が収容されている。エンジンEの動力は、不図示の動力伝達機構によって、走行装置3と、刈取部4や脱穀装置1等の作業装置と、に伝達される。
【0022】
キャビン10に衛星測位モジュール83が設けられている。衛星測位モジュール83は、人工衛星(不図示)からのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を取得する。なお、衛星測位モジュール83による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール83に組み込まれている。なお、慣性航法ユニットは、コンバインにおいて衛星測位モジュール83と別の箇所に配置されても良い。
【0023】
次に、図3に示される脱穀装置1の縦断左側面図を用いて、脱穀装置1の構成を説明する。脱穀装置1は機体フレーム2に設けられ、扱胴22によって作物を脱穀する脱穀部41と、脱穀処理物を揺動選別処理する選別部42と、を備える。脱穀部41は、脱穀装置1における上部領域に配置され、脱穀部41の下方に、受網23が設けられ、選別部42は、受網23の下方に設けられている。選別部42は、受網23から漏下してきた脱穀処理物を、回収すべき穀粒を含む選別処理物と、排藁等の排出物とに選別する。
【0024】
脱穀部41は、脱穀装置1の左右の側壁と、天板53と、受網23とに囲われた扱室21を備える。扱室21には、回転によって作物を脱穀処理する扱胴22と、複数の送塵弁53aと、が備えられている。扱胴22は回転軸芯Xまわりに回転する。フィーダ11によって搬送された作物は、扱室21に投入され、扱胴22によって脱穀処理される。扱胴22によって連れ回される作物は、送塵弁53aの送り作用によって後方に向けて移送される。
【0025】
送塵弁53aはプレート状であり、天板53の内面(下面)に前後方向に沿って所定の間隔で設けられる。送塵弁53aは、平面視で回転軸芯Xに対して傾斜する姿勢で設けられる。そのため、夫々の送塵弁53aは、扱室21において扱胴22とともに回転する刈取穀稈を後側に移動させる力を作用させる。また、送塵弁53aは、回転軸芯Xに対する傾斜角度を調整することができる。扱胴22内を作物が後方に送られる速度は、送塵弁53aの傾斜角度によって決まる。また、作物が脱穀される脱穀効率は、作物が扱胴22内を送られる速度にも影響される。その結果、作物が脱穀される処理能力は、様々な手段を用いて調整することができるが、送塵弁53aの傾斜角度を変更することを1つの手段として調整することができる。特に図示はしないが、送塵弁53aの傾斜姿勢を変更制御可能な送塵弁制御機構が備えられており、送塵弁53aの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0026】
脱穀装置1は、一番物回収部26と、二番物回収部27と、二番物還元装置32と、を備える。選別部42は、シーブケース33を有する揺動選別装置24と唐箕19とを備える。
【0027】
唐箕19は、選別部42の前部領域の下部領域に設けられ、揺動選別装置24の前側から後方に向かって、処理物の搬送方向に沿って選別風を発生させる。選別風は、比較的比重の軽い排藁等をシーブケース33の後側に向けて送り出す作用を有する。また、揺動選別装置24においては、揺動駆動機構43によってシーブケース33が揺動することによって、シーブケース33の内部の脱穀処理物が後方に移送されながら揺動選別処理が行われる。このような理由から、以下の説明では、揺動選別装置24において、処理物の搬送方向の上流側が前端あるいは前側と称され、下流側が後端あるいは後側と称される。なお、唐箕19は選別風の強度(風量、風速)を変更することができる。選別風を強くすると、脱穀処理物を後方に送り出し易くなり、選別速度が高速になる。逆に、選別風を弱くすると、脱穀処理物が長くシーブケース33内に留まり、選別精度が高くなる。そのため、唐箕19は選別風の強度を変更することによって、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整できる。特に図示はしないが、唐箕19の選別風の強度を変更制御可能な唐箕制御機構が備えられており、唐箕19の選別風の強度を自動的に変更することができる。
【0028】
シーブケース33の前半部分には、第一チャフシーブ38が備えられ、シーブケース33の後半部分には、第二チャフシーブ39が備えられている。一般的な構成であるため特に説明はしないが、シーブケース33には、第一チャフシーブ38等以外に、グレンパンやグレンシーブ40が備えられている。受網23を漏下した脱穀処理物は、第一チャフシーブ38や第二チャフシーブ39に落下する。脱穀処理物のほとんどは、受網23から第一チャフシーブ38を含むシーブケース33の前半部分へ漏下し、シーブケース33の前半部分によって粗選別及び精選別される。一部の脱穀処理物は、受網23から第二チャフシーブ39へ漏下したり、第一チャフシーブ38から下方へ漏下せずに第二チャフシーブ39まで移送されたりして、第二チャフシーブ39において漏下選別される。
【0029】
第一チャフシーブ38の下方には、上記グレンシーブ40が備えられている。すなわち、揺動選別装置24は、第一チャフシーブ38の下方に設けられたグレンシーブ40を備えている。グレンシーブ40は、パンチングメタルや網体等の多孔部材によって構成され、第一チャフシーブ38から漏下してきた脱穀処理物を受け止めて漏下選別する。
【0030】
シーブケース33の前半部分の下方に、スクリュー式の一番物回収部26が備えられ、シーブケース33の後半部分の下方に、スクリュー式の二番物回収部27が備えられている。シーブケース33の前半部分によって選別処理されて漏下してきた一番物、すなわち、選別部42によって選別された選別処理物のうちの一番物は、一番物回収部26によって回収されて、穀粒タンク12の側(機体左右方向右側)に向けて搬送される。シーブケース33の後半部分(第二チャフシーブ39)によって選別処理されて漏下してきた二番物(一般的に選別処理精度が低く、切藁などの比率が高い)、すなわち、選別処理物のうちの二番物は、二番物回収部27によって回収される。二番物は、脱穀処理物のうち、選別処理物として選別されなかった脱穀処理物が相当する。二番物回収部27によって回収された二番物は、二番物還元装置32によって選別部42の前部に還元され、シーブケース33によって再選別される。
【0031】
第一チャフシーブ38には、脱穀処理物の移送(搬送)方向(前後方向)に沿って並んで設けられた複数の板状のチャフリップが備えられている。各チャフリップは、後端側ほど斜め上方に向かう傾斜姿勢で配置されている。チャフリップの傾斜角度は可変であり、傾斜角度を急にするほど、隣り合うチャフリップ同士の間隔が広がり、脱穀処理物が漏下し易くなる。すなわち、複数のチャフリップの姿勢を変更することで漏下開度を変更可能に構成されている。そのため、チャフリップの傾斜角度を調整することによって、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整することができる。チャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能なリップ制御機構が備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0032】
第二チャフシーブ39も、第一チャフシーブ38と同様の構成である。第二チャフシーブ39のチャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能な角度制御機構も備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0033】
図4は穀粒タンク12、揚穀装置29、及び脱穀装置1の正面図であり、図5は揚穀装置29の縦断右側面図である。図4及び図5に示すように、一番物回収部26によって回収された選別処理物を穀粒タンク12に搬送する揚穀装置29が備えられている。揚穀装置29は、脱穀装置1と穀粒タンク12との間に配置され、上下方向に沿った姿勢で立設されている。揚穀装置29は、バケットコンベア式に構成されている。揚穀装置29によって揚送された選別処理物は、揚穀装置29の上端部において、横送り搬送装置30に受け渡される。横送り搬送装置30は揚穀装置29に隣り合う状態で連結されている。横送り搬送装置30は、スクリューコンベア式に構成され、穀粒タンク12の前部左側の壁部から穀粒タンク12の内部に突っ込まれている。横送り搬送装置30は、機体横向き軸芯Y1まわりに回転するスクリュー部30Sを有する。横送り搬送装置30のタンク内部側の端部に、穀粒放出装置30Aが備えられている。穀粒放出装置30Aは、板状の放出回転体30Bを備えており、スクリュー部30Sと一体回転する。選別処理物(穀粒)は、横送り搬送装置30によって横送りされ、最終的に、穀粒放出装置30Aによって穀粒タンク12内に投擲される。つまり、横送り搬送装置30は、揚穀装置29によって搬送された穀粒を受け取って横送りし、穀粒タンク12に投入する。揚穀装置29及び横送り搬送装置30は、本発明の『搬送装置』である。
【0034】
揚穀装置29においては、図4及び図5に示すように、駆動スプロケット29Aと従動スプロケット29Bとにわたって巻き掛けられた無端回動チェーン29Cの外周側に複数のバケット31が一定間隔で取り付けられている。つまり、揚穀装置29は、脱穀装置1で得られた穀粒を揚送する複数のバケット31を有する。揚穀装置29は、選別処理物が収納されたバケット31が上昇する送り経路29Dと、選別処理物を横送り搬送装置30に排出した後のバケット31が下降する戻り経路29Eと、を備える。送り経路29Dと戻り経路29Eとは、送り経路29Dが後側になるように、穀粒タンク12の左側壁12bに沿って並んで配置される。
【0035】
〔一番物センサの構成〕
揚穀装置29と横送り搬送装置30との間に一番物センサ60が備えられている。一番物センサ60は、本発明の『流量計測装置』である。揚穀装置29の上端部において、バケット31から横送り搬送装置30に受け渡される選別処理物の量を測定するように、一番物センサ60が配置される。一番物センサ60は、揚穀装置29及び横送り搬送装置30によって搬送される穀粒の流量Fv1(図17参照)を計測する。一番物センサ60に、搬送される穀粒が接触して揺動するアーム部63と、第一センサ部64(本発明の『センサ部』)と、第一流量算出部81A(図17参照、本発明の『算出部』)と、が備えられている。第一センサ部64は、アーム部63の揺動角度θ1(図8図9図17参照)を検出する。第一流量算出部81Aは、検出された揺動角度θ1に基づいて流量Fv1を算出する。
【0036】
図5に示されるように、バケット31が送り経路29Dに沿って上向きに移動し、穀粒はバケット31に積載され、一番物回収部26から揚穀装置29の上端部へ搬送される。揚穀装置29の上端部に吐出口29hが形成されている。吐出口29hは、揚穀装置29の上端部における戻り経路29Eの位置する側部分のうちの送り経路29Dとは反対側の側部に備えられている。揚穀装置29の上端部においてバケット31が送り経路29Dから戻り経路29Eへ移動する際に、バケット31は上昇姿勢から下降姿勢に姿勢反転する。このとき、バケット31は従動スプロケット29Bの回動軸芯まわりに180度(または略180度)旋回動作し、バケット31に積載された穀粒に遠心力が作用する。そして、吐出口29hにおいてバケット31は当該旋回動作時に穀粒を投擲する。換言すると、揚穀装置29の上端部において上昇姿勢から下降姿勢に姿勢反転するバケット31によって、穀粒が吐出口29hで投擲される。揚穀装置29の上端部、即ち送り経路29D及び戻り経路29Eの夫々の上端部は、天板61に覆われている。また、横送り搬送装置30は吐出口29hに連結されている。即ち、吐出口29hの外側かつ横送り搬送装置30の上方に、揚穀装置29と横送り搬送装置30との受け渡し空間が形成されている。穀粒は、バケット31から投擲されると、天板61の下方空間で放物線を描きながら、横送り搬送装置30へ投入される。
【0037】
図5図6及び図7に示されるように、揚穀装置29における天板61に膨出部65が設けられている。膨出部65は天板61の表面部分よりも上側に膨出し、膨出部65の内部に内部空間62が形成されている。一番物センサ60は膨出部65に支持される。一番物センサ60は、バケット31から投擲された穀粒の流量Fv1を測定する。一番物センサ60に、アーム部63と、第一センサ部64と、回転軸66と、が備えられている。
【0038】
膨出部65に回転軸66が支持される。回転軸66と一体回動可能なようにアーム部63が回転軸66に取り付けられている。アーム部63は、回転軸66から下方に向けて延出している。アーム部63は回転軸66の揺動軸芯Y2まわりで揺動可能に支持されている。
【0039】
アーム部63は、バケット31から投擲される穀粒の投擲経路上(投擲経路領域S1)に位置し、バケット31によって投擲された穀粒が接触することで揺動する。アーム部63は、穀粒が接触していない状態で、吐出口29hの対向する垂下姿勢で設けられ、かつ、吐出口29hの上下長さよりも短く構成されている。膨出部65のうち、回転軸66の真上に位置する部分が最も高い位置となるように、膨出部65は形成されている。また、膨出部65の機体前部に傾斜面65aが形成され、傾斜面65aは機体前側ほど天板61に近付く。なお、アーム部63を判り易く示すため、図6の傾斜面65aは、前下側の部分のみを示している。
【0040】
膨出部65の機体左方にフランジ部65bが形成され、フランジ部65bにステー67がボルトBoによって連結されている。平面視において、ステー67の長手方向中央領域はステー67の長手方向両端部よりも膨出部65から離れる側へ突出する。ステー67の長手方向中央領域に第一センサ部64が支持される。第一センサ部64は、膨出部65のフランジ部65bを挟んで揚穀装置29よりも外側に位置する。つまり、第一センサ部64は、バケット31から投擲された穀粒の投擲経路領域S1から外れた位置において、投擲経路領域S1と区画された状態で設けられている。
【0041】
膨出部65のフランジ部65bに貫通孔が形成され、回転軸66は当該貫通孔を貫通する。回転軸66のうち、膨出部65のフランジ部65bを挟んでアーム部63の位置する側と反対側の端部にリンクアーム66Aが備えられ、リンクアーム66Aは回転軸66の径方向外方に延びる。また、ステー67の長手方向中央領域に貫通孔が形成され、第一センサ部64の回転軸部64Aは当該貫通孔を貫通する。第一センサ部64の回転軸部64Aの先端部にリンクアーム64Bが連結され、リンクアーム64Bは径方向外方に延びている。リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとがピン連結される。これにより、回転軸66と一体回転するアーム部63と、第一センサ部64と、がリンクアーム66Aとリンクアーム64Bとピン99とを介して連動連結される。この構成によって、第一センサ部64と回転軸66とが直接連結される構成と比較して、第一センサ部64がアーム部63から衝撃を受け難く、第一センサ部64が故障し難くなる。第一センサ部64は、アーム部63の揺動角度θ1(図17参照)を検出する。また、揺動角度θ1に基づいて流量Fv1を算出する第一流量算出部81Aが備えられている(図17参照)。例えば、揺動角度θ1と流量Fv1との関係を示すマップや式が第一流量算出部81Aに予め記憶されている。揺動角度θ1と流量Fv1との関係を示すマップや式は、実験及び計算(実験または計算)によって予め取得される。そして第一流量算出部81Aは、当該マップや式に基づいて流量Fv1を算出する。
【0042】
リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとの一方に長孔が形成され、リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとの他方に丸孔が形成されている。長孔は当該一方の長手方向に沿って延びる。そして、当該一方の長孔と当該他方の丸孔とに一本のピン99が挿通されることによって、リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとがピン連結される。リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとの一方に長孔が形成されているため、リンクアーム66Aとリンクアーム64Bとのピン連結における芯出しの誤差が許容される。この構成によって、第一センサ部64の回転軸部と回転軸66とを同一軸芯上に精密に合わせる必要がなく、一番物センサ60における第一センサ部64の組付けが容易になる。
【0043】
ステー67の左右端部にボルトBoを挿通するための挿通孔が形成され、当該挿通孔の径はボルトBoの呼び径よりも大きく(例えば当該呼び径よりも3mm程度大きい)、かつ、ボルトBoの頭部の径よりも小さくなるように形成されている。この構成によって、回転軸66に対する第一センサ部64の回転軸部の位置合わせが容易になる。即ち、一番物センサ60における第一センサ部64の組付けが容易になる。
【0044】
ステー67にバネ受け部67aが設けられている。リンクアーム66Aの遊端部とバネ受け部67aとにわたってコイルバネ68が張設される。アーム部63は、コイルバネ68の引っ張り付勢力によって揚穀装置29に近づくように揺動付勢されている。アーム部63における揺動基端部側の領域が係止部69に接当して、コイルバネ68のバネ付勢力に抗して下向き待機姿勢で位置保持される。アーム部63が係止部69に接当し、かつ、アーム部63にコイルバネ68の付勢力が作用する構成であれば、圃場の凹凸による振動やエンジンからの振動等がアーム部63に伝わっても、アーム部63は振動の影響を殆ど受けずに下向き待機姿勢に保持される。
【0045】
以上の構成によって、アーム部63は、下向き姿勢の位置と、傾斜面65aの前下端部と、の範囲で揺動可能に構成されている。この場合のアーム部63の揺動角度θ1は、例えば40度に設定されている。
【0046】
横送り搬送装置30のうち、スクリュー部30Sを覆う筒状ケースの搬送方向始端部に受け部30dが形成され、受け部30dは、バケット31から投擲された穀粒を受け入れる。受け部30dは横送り搬送装置30のスクリュー部30Sよりも揚穀装置29の位置する側へ延出する。受け部30dは、スクリュー部30Sの位置する側ほど下側に位置するように傾斜する。
【0047】
図5に示されるように、機体側面視において受け部30dの延出先端部の位置する領域が仮想線L1で示され、アーム部63は、仮想線L1よりも横送り搬送装置30のスクリュー部30Sの位置する側に配置されている。また、機体側面視においてスクリュー部30Sの機体横向き軸芯Y1の位置する部分が仮想線L2で示され、アーム部63は、穀粒が衝突せずに下向きに延びる状態で仮想線L2よりも揚穀装置29の位置する側に配置されている。つまり、アーム部63は、穀粒が衝突せずに下向きに延びる状態で、仮想線L1と仮想線L2との間の領域に配置されている。換言すると、アーム部63は、揚穀装置29と横送り搬送装置30との受け渡し空間において、スクリュー部30Sよりも高い位置、かつ、揚穀装置29と横送り搬送装置30とが隣り合う方向において、吐出口29hと機体横向き軸芯Y1との間の位置に設けられた揺動軸芯Y2まわりに揺動するように構成されている。
【0048】
穀粒がアーム部63に衝突すると、穀粒はアーム部63からの反発力によって下方へ落下する。このことから、アーム部63に衝突する穀粒は、アーム部63に衝突しない穀粒と比較して、戻り経路29Eへ落下する可能性が高い。本実施形態であれば、アーム部63は、受け部30dの延出先端部よりも横送り搬送装置30のスクリュー部30Sの位置する側に配置されている。このため、アーム部63に衝突して跳ね返される穀粒の多くが受け部30dに受け止められ、横送り搬送装置30によって穀粒タンク12内へ案内される。この結果、アーム部63に衝突する穀粒が戻り経路29Eへ落下し難くなる。
【0049】
アーム部63の幅は、バケット31の幅の半分以下となるように、アーム部63は形成されている。バケット31の幅方向において、穀粒はバケット31から概ね均一に投擲されるため、バケット31から投擲される穀粒の半分以上がアーム部63に衝突せずに受け部30dに受け止められる。この結果、穀粒がアーム部63によって跳ね返されて戻り経路29Eへ落下する虞が軽減される。即ち、アーム部63の横幅は、バケット31の開口の横幅よりも狭く設定されている。
【0050】
また、アーム部63は、穀粒が衝突せずに下向きに延びる状態で仮想線L2よりも揚穀装置29の位置する側に配置されている。このため、アーム部63が仮想線L2よりも揚穀装置29の位置する側と反対側に配置される構成と比較して、穀粒がアーム部63に強く衝突する。このことから、バケット31から投擲される穀粒の量が少量であっても、一番物センサ60は穀粒の流量Fv1を精度よく測定できる。
【0051】
図8及び図9に示されるように、穀粒がバケット31から投擲されると、穀粒は上下に連続する帯状となって放物線を描きながら受け部30dの位置する側へ落下する。アーム部63は穀粒の投擲経路上(投擲経路領域S1)に位置し、上下に連続する帯状の穀粒のうち上側に位置する穀粒がアーム部63と接触する。バケット31から投擲された穀粒がアーム部63に接触すると、その押圧力によってアーム部63がコイルバネ68の付勢力に抗して穀粒を投擲したバケット31から離間する方向に揺動する。アーム部63に衝突した穀粒は、アーム部63からの反発力によって下方へ落下し、受け部30dに受け止められてスクリュー部30Sの位置する側へ案内される。アーム部63の揺動基端部は、穀粒の投擲経路領域S1よりも上側に外れている。つまり、アーム部63は、バケット31から投擲された穀粒の投擲経路領域S1から外れた位置に設けられた揺動軸芯Y2まわりに揺動するように構成されている。
【0052】
図5に仮想線L3が示される。仮想線L3は、揺動軸芯Y2から下方に延び、投擲経路領域S1の上端線に対して直交する方向で交わる。アーム部63の遊端部は、穀粒が衝突せずに下向きに延びる状態で、仮想線L3よりも仮想線L2の位置する側に位置する。このことから、アーム部63が仮想線L2の位置する側に揺動するほど、アーム部63のうちの投擲経路領域S1の範囲外にはみ出る部分が多くなる。つまり、アーム部63は、揺動角度θ1が大きいほど、投擲経路領域S1の外にはみ出る割合が多くなるように構成されている。
【0053】
図8に示されるように、穀粒がバケット31から投擲されてアーム部63と接触すると、アーム部63が揺動する。そして、バケット31から投擲される穀粒の多くがアーム部63の位置する領域を通過し終えると、アーム部63はコイルバネ68の付勢力によって下向き姿勢側へ戻される。本実施形態では、1秒間に20~30個のバケット31が揚穀装置29の上端部を通過し、吐出口29hにおいて穀粒が1/20秒~1/30秒間隔でバケット31から投擲される。このことから、アーム部63は1/20秒~1/30秒の周期で揺動(振動)する。
【0054】
図9に示される例では、図8に示される例よりもバケット31から投擲される穀粒の量が多くなっている。バケット31から投擲される穀粒の量が多くなると、投擲される穀粒が吐出口29hにおいて塊状になって厚みを増す。バケット31から投擲される穀粒の量が多くなって、アーム部63の揺動角度θ1が大きくなる。また、バケット31から投擲される穀粒が多くなると、穀粒は吐出口29hにおいて塊状になって厚みを増すため、投擲経路領域S1を塊状の穀粒が通過するのに要する時間が長くなる。このため、アーム部63が下向き姿勢側に戻される間も殆どなく、揺動角度θ1が大きく保持されたままとなる。
【0055】
アーム部63と傾斜面65aの前下端部とが当接すると、アーム部63の揺動が止まる。換言すると、アーム部63と傾斜面65aの前下端部とが当接することによって、アーム部63の揺動が最大に振り切れる。この状態で、アーム部63のうち遊端部以外の略全体が、内部空間62に収納される。このとき、天板61の内周側面部に沿って放物線状に投擲された穀粒は、アーム部63の遊端部のみに触れるため、穀粒の多くがアーム部63と触れることなく、横送り搬送装置30の受け部30dへ案内される。
【0056】
〔二番物センサの構成〕
上述したように、二番物は二番物還元装置32によって揺動選別装置24の前部である上流側に還元される。具体的には、二番物還元装置32の二番物排出口32Aは、円弧状の受網23における径方向外側の位置(受網23の側方であって、二番物が受網23を通らない位置)に設けられ、この位置において二番物が排出される。脱穀装置1には、このように還元される二番物の流量Fv2(二番物還元量、図17参照)を測定する二番物センサ70が備えられている。図10図13には、このような二番物排出口32Aの配置形態が示される。
【0057】
本実施形態では、図10に示されるように、二番物排出口32Aは受網23側に向けて設けられる。図11及び図12に示されるように、二番物排出口32Aの近傍には、二番物還元装置32を構成するスクリューとともに回転する回転羽根32Bが設けられ、二番物還元装置32によって搬送された二番物は、脱穀部41の側壁50に形成された挿通孔を通して回転羽根32Bによって二番物排出口32Aから径方向外側に放出され、図12の破線矢印で示されるように排出される。
【0058】
二番物排出口32Aには、放出された二番物を揺動選別装置24の処理物移送方向上手側に向けて案内する案内部32Cが設けられる。案内部32Cは、二番物排出口32Aに対向する内周面を有する筒状の一部を呈する形状で構成される。換言すると、案内部32Cは、帯板を円弧状に曲げた形状となっている。このような案内部32Cの内周面によって、回転羽根32Bによって放出された二番物の排出方向が規制される。
【0059】
図11及び図12に示すように、二番物センサ70は、脱穀部41における側壁50の内部側部分に支持される。二番物センサ70は、二番物還元装置32における回転羽根32Bによって放出された二番物に接触して還元される二番物の流量Fv2を測定するように構成されている。二番物センサ70は、二番物還元装置32によって放出される二番物の放出延長上に位置して放出された二番物が接触することによって揺動する揺動アーム72と、揺動アーム72の揺動角度θ2(図17参照)に基づいて二番物の流量Fv2を測定する第二センサ部73と、第二センサ部73及び揺動アーム72を支持する支持フレーム74と、二番物センサ70の上方を覆うカバー体75と、を備えている。
【0060】
第二センサ部73は、ケースにポテンショメータが内装され、支持フレーム74の内方側箇所に対してボルトによる締結固定されている。第二センサ部73は、回転軸76が支持フレーム74を挿通して外方側(側壁50側)に突出して設けられ、回転軸76に一体回動可能に揺動アーム72が取り付けられている。揺動アーム72は、回転軸76から下方に向けて延びており、案内部32Cによって二番物が案内される案内経路内に位置する状態で備えられている。揺動アーム72は回転軸76の軸芯まわりで揺動可能に支持されている。
【0061】
カバー体75は、揺動アーム72、第二センサ部73、及び支持フレーム74の夫々の上方を覆うように構成されている。このカバー体75によって、受網23を通して漏下する脱穀処理物のうち細かな塵埃が揺動アーム72や第二センサ部73に降りかかって計測動作を阻害することを防止できる。
【0062】
図13に示されるように、揺動アーム72は回転軸76よりも上方に延出する延出部を有し、延出部とバネ受け部77とにわたってコイルバネ78が張設される。揺動アーム72は、コイルバネ78の引っ張り付勢力によって二番物排出口32Aに近づくように揺動付勢されている。揺動アーム72は、上端部が係止部79に接当して、バネ付勢力に抗して下向き待機姿勢で位置保持される。
【0063】
二番物排出口32Aを通して回転羽根32Bによって放出された二番物が揺動アーム72に接触すると、その押圧力によって揺動アーム72がコイルバネ78の付勢力に抗して二番物排出口32Aから離間する方向に揺動する。この時の揺動角度θ2が第二センサ部73によって計測され、第二流量算出部81B(図17参照)が、第二センサ部73の計測結果に基づいて二番物の流量Fv2を算定する。具体的には、揺動角度θ2と二番物の流量Fv2との関係を示すマップや式を第二流量算出部81Bに記憶しておき、当該マップや式に基づいて二番物の流量Fv2を算定すると好適である。
【0064】
〔バケットと接触するハンプの構成〕
図5に示されたハンプ30eの詳細に関して、図14図15及び図16に基づいて説明する。上述の通り、吐出口29hにおいてバケット31は従動スプロケット29Bの回動軸芯まわりに180度(または略180度)旋回動作しながら穀粒を放出する。しかし、例えばバケット31の内側に穀粒がこびり付いたりする虞が考えられる。バケット31の内側にこびり付いた穀粒は、バケット31の旋回動作だけでは穀粒がバケット31から放出されない虞がある。このことから、バケット31の内側に穀粒がこびり付くと、揚穀装置29の搬送効率の低下、穀粒の収量ロス等に繋がる虞がある。このような不都合を軽減するため、受け部30dの突出先端部にゴム製のハンプ30eがボルト連結されている。ハンプ30eはバケット31と接触するように位置する。ハンプ30eとバケット31とが接触した衝撃で、バケット31に残された穀粒が弾き出されて受け部30dへ案内される。そしてバケット31が下方へ移動すると、ハンプ30eが下向きに弾性変形しながら、バケット31は上向きに揺動する。バケット31が戻り経路29Eを更に下方へ移動すると、ハンプ30eとバケット31とが離れる。このとき、ハンプ30eの弾性エネルギーは解放され、ハンプ30eは勢いよく元の形状に戻る。また、バケット31も、ハンプ30eと離れるときに、ハンプ30eの弾性エネルギーに起因する衝撃がバケット31に伝達され、バケット31に残された穀粒が弾き出されて下方へ落下する。下方へ落下した穀粒は、戻り経路29Eを伝って一番物回収部26へ戻される。この構成によって、バケット31の内部に穀粒がこびり付く虞が軽減される。
【0065】
〔作業量の算出について〕
作業量の算出に関して図17に基づいて説明する。第一流量算出部81Aは、第一センサ部64によって計測されたアーム部63の揺動角度θ1に基づいて、揚穀装置29及び横送り搬送装置30を流れる穀粒の流量Fv1を算出する。揺動角度θ1と穀粒の流量Fv1との相関関係は、例えば実験データや学習アルゴリズムによって得られる。実験データや学習アルゴリズムによって得られた揺動角度θ1と穀粒の流量Fv1との相関関係のデータが記憶装置(不図示)等に記憶される。本実施形態では、第一流量算出部81Aは、穀粒の流量Fv1を、例えば1/20秒~1/30秒のサンプリング周期で算出可能である。このことから、第一流量算出部81Aは、揚穀装置29及び横送り搬送装置30を流れる穀粒の流量Fv1をリアルタイム(または略リアルタイム)に算出可能である。
【0066】
第二流量算出部81Bは、第二センサ部73によって計測された揺動アーム72の揺動角度θ2に基づいて、二番物排出口32Aから排出される二番物の流量Fv2を算出する。揺動角度θ2と二番物の流量Fv2との相関関係は、例えば実験データや学習アルゴリズムによって得られる。実験データや学習アルゴリズムによって得られた揺動角度θ2と二番物の流量Fv2との相関関係のデータが記憶装置(不図示)等に記憶される。第一流量算出部81Aと同じように、第二流量算出部81Bは、二番物排出口32Aから排出される二番物の流量Fv2をリアルタイム(または略リアルタイム)に算出可能である。
【0067】
補正部80は、第一流量算出部81Aによって算出された穀粒の流量Fv1を、第二流量算出部81Bによって算出された二番物の流量Fv2で補正する。図18は、本実施形態における穀粒の流量Fv1及び二番物の流量Fv2に関する検出量の一例である。具体的には、補正部80は、作業対象領域において収穫作業を開始してから穀粒の流量Fv1が所定量に達するまでは、穀粒の流量Fv1に二番物の流量Fv2を加えて補正する。作業対象領域とは、コンバインが圃場において作物の刈取作業を行う領域である。図18に示されるように、作物の収穫作業を開始してから穀粒の流量Fv1が所定量(所定値)に達するまで、すなわち、図18における刈始からt1までは穀粒の流量Fv1は次第に増大し、二番物の流量Fv2は急激に(急峻に)増大した後、次第に減少する。そこで、補正部80は、刈始からt1までは一番物センサ60によって検出された穀粒の流量Fv1に二番物の流量Fv2を加えて、一番物センサ60の検出結果を補正する。
【0068】
一方、補正部80は、作業対象領域を刈り抜けた後は、穀粒の流量Fv1から二番物の流量Fv2を減じて補正する。作業対象領域を刈り抜けた後とは、コンバインの刈取部4が圃場において作物の刈取作業を行う領域を走り抜けた後をいう。このような状態にあっては、図18に示されるように、刈抜から所定時間経過したt2の後は、穀粒の流量Fv1は急激に(急峻に)増大した後、次第に減少し、二番物の流量Fv2は次第に減少する。そこで、補正部80は、刈抜から所定時間経過したt2の後は、一番物センサ60によって検出された穀粒の流量Fv1から二番物の流量Fv2を減じて、一番物センサ60の検出結果を補正する。補正部80によって補正された穀粒の流量Fv1は、作業量算定部84へ送られる。
【0069】
収量受付部85は特定の収量値Vdを受け付ける。特定の収量値Vdとして、穀粒タンク12の既知の容量に対応した収量値や、運搬車が運搬可能な容量(または残量)に対応した収量値や、乾燥施設の乾燥機が乾燥可能な容量に対応した収量値等が例示される。特定の収量値Vdは、例えば、予め記憶装置(不図示)等に記憶された穀粒タンク12の容量を読み出す構成であっても良いし、運転部9の操作パネルにおいてオペレータが設定する構成であっても良い。また、特定の収量値Vdは、無線通信ネットワークを通じて外部からデータを受信する構成であっても良い。収量受付部85によって受け付けられた特定の収量値Vdは、作業量算定部84へ送られる。
【0070】
機体位置算出部88は、衛星測位モジュール83によって出力された測位データに基づいて、機体の位置座標を経時的に算出する。即ち、機体位置算出部88は、衛星測位を用いて機体位置を算出する。算出された機体の経時的な位置座標は、作業量算定部84へ送られる。
【0071】
作業量算定部84は、第一流量算出部81Aによって算出され、かつ、補正部80によって補正された穀粒の流量Fv1を積算することによって、穀粒タンク12に貯留された穀粒の総量、即ち収量Viをリアルタイムに算定する。穀粒の流量Fv1は、例えば1/20秒~1/30秒毎に第一流量算出部81Aから次々に送られてくるため、作業量算定部84は、穀粒の流量Fv1に基づいて単位時間あたりの平均収量Vtを算出可能である。
【0072】
また、作業量算定部84は、機体位置算出部88によって算出された機体の経時的な位置座標を受け取るため、機体の経時的な位置座標の差分を算出することによって走行距離や速度を算出可能である。このことから、作業量算定部84は、穀粒の流量Fv1に基づいて単位走行距離あたりの平均収量Vrを算出可能である。
【0073】
更に、作業量算定部84は、特定の収量値Vdと、穀粒の流量Fv1と、機体位置算出部88によって算出された機体の位置座標と、に基づいて種々の作業量を算定するように構成されている。本実施形態では、種々の作業量は、穀粒タンク12に特定の収量値Vdに対応する穀粒が貯留されるまでの作業量である。例えば特定の収量値Vdが穀粒タンク12の容量であれば、作業量算定部84は、穀粒タンク12が満杯になるまでの作業量を算出する。また、例えば特定の収量値Vdが運搬車の運搬可能な容量(または残量)であれば、作業量算定部84は、運搬車の運搬可能な容量(または残量)に対応する作業量を算出する。
【0074】
具体例として、作業量算定部84は、作業量として残量値Vreを下記の式で算出する。
Vre=Vd-Vi
残量値Vreは、特定の収量値Vdから収量Viを減算した値である。また、作業量算定部84は、作業量として作業時間Twを下記の式で算出する。
Tw=Vre/Vt
作業時間Twは、特定の収量値Vdから収量Viを減算した残量値Vreを単位時間あたりの平均収量Vtで除算した値である。加えて、作業量算定部84は、作業量として作業走行距離Dwを下記の式で算出する。
Dw=Vre/Vr
作業走行距離Dwは、特定の収量値Vdから収量Viを減算した残量値Vreを単位走行距離あたりの平均収量Vrで除算した値である。このように、作業量算定部84は、穀粒の流量Fv1に基づいて、収穫作業によって得られた穀粒の収量Viが特定の収量値Vdに到達するために必要な作業量を算定する。
【0075】
作業量算定部84によって算定された作業量(例えば、残量値Vre、作業時間Tw、作業走行距離Dw等)が報知部87によってオペレータ等に報知される。報知部87が、例えば運転部9に設けられた液晶モニタである場合、第一流量算出部81Aと作業量算定部84との夫々の算出結果が当該液晶モニタに表示される。なお、報知部87は、LEDランプ、ブザー、音声案内等であっても良い。
【0076】
穀粒排出装置14のスクリューコンベア14Aが回転すると、穀粒タンク12に貯留された穀粒が機外に排出される。排出量算出部86は、穀粒排出装置14のスクリューコンベア14Aの回転速度Rvに基づいて穀粒タンク12から排出された穀粒の量を算出する。本実施形態では、スクリューコンベア14Aの回転速度Rvは回転数検出部14Bによって検出される。穀粒排出装置14によって排出される穀粒の単位時間当たりの排出量は、スクリューコンベア14Aの回転速度Rvと比例関係(または略比例関係)にある。このため、スクリューコンベア14Aの回転速度Rvに時間を掛けることによって、穀粒の排出量がリアルタイムに算出される。穀粒が機外に排出される前に、穀粒タンク12に貯留された穀粒の収量Viは作業量算定部84によって算出されている。このため、排出量算出部86は、穀粒の排出中に、収量Viから積算排出量を減算することによって、穀粒タンク12の内部に残された穀粒の残量をリアルタイムに算出しても良い。排出量算出部86の算出結果は報知部87によってオペレータ等に報知される。報知部87が液晶モニタである場合、排出量算出部86の算出結果が当該液晶モニタに表示される。
【0077】
穀粒タンク12に貯留された穀粒は山状に溜まりがちであるが、本構成であれば、揚穀装置29と横送り搬送装置30との間で一番物センサ60が穀粒の流量Fv1を検出する。揚穀装置29と横送り搬送装置30との間で一番物センサ60が穀粒の流量Fv1を検出する構成によって、穀粒タンク12の内部における穀粒の溜まり形状に左右されることなく、精度良い作業量の算定が可能となる。
【0078】
〔チャフシーブの漏下開度の調整について〕
図17に示されるように、補正部80によって補正された穀粒の流量Fv1は制御ユニット82に伝達される。制御ユニット82は、補正された穀粒の流量Fv1と、二番物の流量Fv2と、に基づいて、脱穀装置1を制御する。具体的には、図19に示されるように、制御ユニット82は、穀粒の流量Fv1が第1閾値を超え、且つ、二番物の流量Fv2が第2閾値以下であれば、選別部42における第一チャフシーブ38及び第二チャフシーブ39の少なくともいずれか一方の漏下開度を小さくする。これにより、穀粒の流量Fv1を低減して、二番物の流量Fv2を増大させ、脱穀装置1において選別する脱穀処理物の量を増大させ、より選別精度を高めることができる。したがって、一番物に混入する夾雑物の量を低減することが可能となる。
【0079】
また、制御ユニット82は、穀粒の流量Fv1が予め設定された第1閾値よりも小さい第3閾値よりも小さくなると、チャフシーブの漏下開度を大きくすると好適である。これにより、穀粒の流量Fv1が所定量以下の場合に穀粒の流量Fv1を増大させることができる。
【0080】
また、場合によっては、第一チャフシーブ38及び第二チャフシーブ39の漏下開度が小さくされた場合であっても、穀粒の流量Fv1が第1閾値よりも大きい状態が継続したり、あるいは、二番物の流量Fv2が第2閾値以下である状態が継続したり、穀粒の流量Fv1に対する二番物の流量Fv2の比率が小さくならないことが想定されるが、これは脱穀装置1に供給される作物の量が多過ぎることに起因する。そこで、第一チャフシーブ38及び第二チャフシーブ39の漏下開度が大きくされた場合であっても、特に二番物の流量Fv2が第2閾値よりも大きいときには、機体フレーム2の走行制御を行う走行装置3が、機体フレーム2の走行速度を低減させると好適である。これにより、脱穀装置1に供給される作物の量を少なくし、脱穀装置1における脱穀量及び選別量を低減することが可能となる。したがって、例えばグレンシーブ40において脱穀処理物が詰まっている状態となることによって二番物の流量Fv2が増大している場合には、当該脱穀処理物が詰まっている状態を解消することが可能となる。
【0081】
このような走行装置3は、機体フレーム2を自動走行させるように構成することも可能である。係る場合には、上記第1閾値や第2閾値に基づいて、機体フレーム2の走行速度を低減させたり、停車させたりすることが可能となる。
【0082】
更に、予期しない理由によって、第一チャフシーブ38及び第二チャフシーブ39の漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに、穀粒の流量Fv1に対する二番物の流量Fv2の比率が小さくならないときや、機体フレーム2の走行速度が低減されてから予め設定された時間が経過するまでに、穀粒の流量Fv1に対する二番物の流量Fv2の比率が小さくならないときは、走行装置3は、機体フレーム2を停止させると好適である。これにより、脱穀装置1への作物の供給を、一旦、中断することができるので、脱穀装置1における脱穀処理及び選別処理に係る負荷を低減することが可能となる。したがって、現在、脱穀装置1内における作物に対する処理を行い、グレンシーブ40における脱穀処理物が詰まっている状態を解消することが可能となる。
【0083】
なお、送塵弁53aの傾斜姿勢を変更可能である場合には、穀粒の流量Fv1と二番物の流量Fv2とに基づいて当該傾斜角度を変更するように構成することも可能である。
【0084】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0085】
(1)上記実施形態では、コンバインが普通型コンバインである場合の例を挙げて説明したが、コンバインは自脱型コンバインであっても良い。上記実施形態に示された一番物センサ60の構成は、自脱型コンバインにも適用可能である。例えば、図20に示されているように、一番物センサ91が穀粒タンク12の天板12tに支持される構成であっても良い。穀粒タンク12の左側壁12bに、上下に延びる揚穀装置90が支持され、揚穀装置90に、スクリューコンベア90Aが備えられ、スクリューコンベア90Aは平面視において時計回りに回転する。左側壁12bのうち、揚穀装置90の上端部の位置する箇所に吐出口12hが形成され、吐出口12hは揚穀装置90の内部空間と連通する。
【0086】
スクリューコンベア90Aは、脱穀装置1の底部から穀粒を垂直に搬送し、スクリューコンベア90Aの上端部に回転羽根90Bが備えられている。回転羽根90Bはスクリューコンベア90Aと一体回転する。吐出口12hは、回転羽根90Bの位置する箇所に設けられている。
【0087】
一番物センサ91に、アーム部92とセンサ部93とが備えられている。吐出口12hから穀粒が放出されると、穀粒の幾らかがアーム部92と接触し、アーム部92が揺動する。センサ部93によってアーム部92の揺動角度θ1が計測され、その計測結果に基づいて穀粒の流量Fv1が算出される。
【0088】
穀粒タンク12の天板12tに膨出部95が形成されている。膨出部95は天板12tの表面部分よりも上側に膨出し、膨出部95の内部に膨出空間が形成されている。膨出部95にアーム部92の回転軸94が支持される。膨出部95のうち、回転軸94の真上に位置する部分が最も高い位置となるように、膨出部95は形成されている。また、膨出部95の機体前部に傾斜面95aが形成され、傾斜面95aは機体前側ほど天板12tに近付く。
【0089】
図20に仮想線L3が示される。仮想線L3は、揺動軸芯Y2から下方に延び、投擲経路領域S1の上端線に対して直交する方向で交わる。アーム部92の遊端部は、穀粒が衝突せずに下向きに延びる状態で、仮想線L3よりも吐出口12hの位置する側と反対側に位置する。このことから、アーム部92が吐出口12hの位置する側と反対側に揺動するほど、アーム部92のうちの投擲経路領域S1の範囲外にはみ出る部分が多くなる。つまり、アーム部92は、揺動角度θ1が大きいほど、投擲経路領域S1の外にはみ出る割合が多くなるように構成されている。
【0090】
吐出口12hから放出される一番物の量が多くなると、アーム部92が上向きに大きく揺動する。このとき、アーム部92のうち揺動基端部側が、天板12tよりも上側に位置し、膨出部95に収納される。つまり、吐出口12hから放出される一番物の量が多くなると、アーム部92が上向きに大きく揺動し、アーム部92のうち穀粒の投擲経路領域S1よりも上側に外れる部分の割合が多くなる。また、アーム部92が上向きに大きく揺動するほど、アーム部92のうち膨出部95に収納される部分の割合が多くなる。このため、一番物の多くがアーム部92と接触することなく、放物線に沿って穀粒タンク12の内部へ拡散する。
【0091】
(2)上記実施形態では、二番物センサ70によって検出された二番物の流量Fv2が第2閾値よりも大きいときに、機体フレーム2の走行制御を行う走行装置3が、機体フレーム2の走行速度を低減させる構成が示されているが、この実施形態に限定されない。第一チャフシーブ38の漏下開度が小さく設定されると、穀粒の流量Fv1が低減し、穀粒の流量Fv1の低減分が二番物として二番物回収部27に回収され、より選別精度が高められる。一方、二番物回収部27に回収される量が増大し過ぎると、二番物回収部27から二番物が溢れ出し、排藁等とともにそのまま排出されて収穫ロスとなる。このような不都合を回避するため、例えば図21に示されるように、二番物の流量Fv2が第4閾値よりも大きいときに、制御ユニット82が第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくしても良い。これにより、第一チャフシーブ38からの選別処理物の漏下が促されて穀粒の流量Fv1が増大し、二番物回収部27に回収される量が低減するため、二番物回収部27から二番物が溢れ出す虞が軽減される。
【0092】
図18に示される第2閾値と、図21に示される第4閾値と、が同じであれば、二番物の流量Fv2が第2閾値及び第4閾値よりも大きい場合、制御ユニット82は、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくし、かつ、機体の走行速度を低減させる。
【0093】
図21に示される第4閾値が図18に示される第2閾値よりも大きい場合について説明する。二番物の流量Fv2が第2閾値よりも大きく、かつ、第4閾値よりも小さい場合、制御ユニット82は、機体の走行速度を低減させるが、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくしない。そして、二番物の流量Fv2が第2閾値よりも大きく、かつ、第4閾値よりも大きくなると、制御ユニット82は、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくし、かつ、機体の走行速度を低減させる。また、二番物の流量Fv2が第2閾値よりも大きく、かつ、第4閾値よりも大きくなると、制御ユニット82は、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくし、機体の走行速度を変更前の状態に戻す構成であっても良い。
【0094】
図21に示される第4閾値が図18に示される第2閾値よりも小さい場合について説明する。二番物の流量Fv2が第4閾値よりも大きく、かつ、第2閾値よりも小さい場合、制御ユニット82は、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくするが、機体の走行速度を低減させない。そして、二番物の流量Fv2が第4閾値よりも大きく、かつ、第2閾値よりも大きくなると、制御ユニット82は、第一チャフシーブ38の漏下開度を大きくし、かつ、機体の走行速度を低減させる。また、二番物の流量Fv2が第4閾値よりも大きく、かつ、第2閾値よりも大きくなると、制御ユニット82は、機体の走行速度を低減させ、第一チャフシーブ38の漏下開度を変更前の状態に戻す構成であっても良い。
【0095】
(3)上記実施形態では、補正部80は、第一流量算出部81Aによって算出された穀粒の流量Fv1を、第二流量算出部81Bによって算出された二番物の流量Fv2で補正するが、この実施形態に限定されない。例えば、補正部80が備えられず、穀粒の流量Fv1が補正部80によって補正されない構成であっても良い。
【0096】
(4)作業量は、チャフシーブの漏下開度の調整値であっても良い。例えば、図22に示されるように、作業量算定部84が、穀粒の流量Fv1に基づいて漏下開度の調整値を制御ユニット82へ出力する構成であっても良い。そして制御ユニット82は、作業量算定部84から受信した調整値に基づいて第一チャフシーブ38及び第二チャフシーブ39の漏下開度を調整する構成であっても良い。
【0097】
(5)上記実施形態では、作業量としての作業時間Twは、特定の収量値Vdから収量Viを減算した残量値Vreを単位時間あたりの平均収量Vtで除算した値であるが、この実施形態に限定されない。また、上記実施形態では、作業量としての作業走行距離Dwは、特定の収量値Vdから収量Viを減算した残量値Vreを単位走行距離あたりの平均収量Vrで除算した値であるが、この実施形態に限定されない。例えば、作業量は、特定の収量値Vdから収量Viを減算した残量値Vreを流量Fv1(瞬時値)で除算した値であっても良い。
【0098】
(6)上記実施形態では、作業量は、穀粒タンク12に特定の収量値Vdに対応する穀粒が貯留されるまでの作業量であるが、この実施形態に限定されない。例えば、作業量は、穀粒搬送用のトラックに特定の収量値Vdに対応する穀粒が貯留されるまでの作業量であっても良い。また、作業量は、乾燥施設の乾燥機に特定の収量値Vdに対応する穀粒が貯留されるまでの作業量であっても良い。
【0099】
(7)上述の実施形態では、一番物センサ60は、アーム部63の揺動角度θ1を第一センサ部64で検出するように構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、一番物センサ60に、板部分とロードセルとが備えられる構成であっても良い。板部分に穀粒が衝突し、ロードセルは板部分からの荷重を検出する構成であっても良い。
【0100】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取り、脱穀装置によって刈取穀稈の脱穀選別処理を行うコンバインに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 :脱穀装置
12 :穀粒タンク
29 :揚穀装置(搬送装置)
30 :横送り搬送装置(搬送装置)
60 :一番物センサ(流量計測装置)
63 :アーム部
64 :第一センサ部(センサ部)
81A :第一流量算出部(算出部)
84 :作業量算定部
85 :収量受付部
Fv1 :穀粒の流量
Vi :穀粒の収量
Vd :特定の収量値
Vr :単位走行距離あたりの平均収量
Vt :単位時間あたりの平均収量
Dw :作業走行距離(作業量)
Tw :作業時間(作業量)
θ1 :アーム部の揺動角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22