(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ロータリーキルンの制御の最適化
(51)【国際特許分類】
F27B 7/42 20060101AFI20240830BHJP
F27B 7/36 20060101ALI20240830BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20240830BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F27B7/42
F27B7/36
F27D19/00 A
F27D21/00 G
(21)【出願番号】P 2020560330
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 SE2019050339
(87)【国際公開番号】W WO2019209156
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520412464
【氏名又は名称】オプティメイション アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】Optimation AB
【住所又は居所原語表記】Djupviksgatan 20, 941 33 Pitea, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリク ベリ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エリクソン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-011990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0287375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00- 7/42
F27D 7/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システム(1)によってロータリーキルン(100)内を通るガス流を制御することおよびバーナー(120)への燃料投入を制御することにより、前記バーナー(120)を備えた、前記ロータリーキルン(100)の回転軸線(110)に沿った前記ロータリーキルン(100)の半部である燃焼端部領域(BE)から材料投入手段(130)を備えた、前記ロータリーキルン(100)の回転軸線(110)に沿った前記ロータリーキルン(100)の半部である供給端部領域(FE)まで、前記ロータリーキルン(100)内の回転軸線(110)に沿って温度勾配および平均温度を制御する方法であって、該方法が、
前記燃焼端部領域(BE)で測定される実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を受信するステップ(S1)と、
前記供給端部領域(FE)で測定される実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を受信するステップ(S2)と、
燃焼端部平均重み関数(w
BE-A)によって重み付けされた前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と供給端部平均重み関数(w
FE-A)によって重み付けされた前記供給端部領域温度(T
FE-A)との平均を形成することにより、実際の平均温度(T
A-A)を算定するステップ(S3)と、
燃焼端部示差重み関数(w
BE-D)によって重み付けされた前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と供給端部示差重み関数(w
FE-D)によって重み付けされた前記供給端部領域温度(T
FE-A)との差を形成することにより、実際の示差温度(T
D-A)を算定するステップ(S4)と、
平均温度制御信号(S
T-A)を出力することによって前記平均温度(T
A-A)を平均設定値温度(T
A-SP)に向けて制御して、前記バーナー(120)への前記燃料投入を制御するステップ(S5)と、
示差温度制御信号(S
T-D)を出力することによって前記示差温度(T
D-A)を示差設定値温度(T
D-SP)に向けて制御して、前記ロータリーキルン(100)を通る前記ガス流を制御するステップ(S6)と、
を含み、
前記実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を受信する前記ステップが、
少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値を受信することをさらに含み、前記燃焼端部領域温度の値の各々が、前記燃焼端部領域(BE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(160)で測定され、
前記実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を受信する前記ステップが、
少なくとも1つの実際の供給端部領域温度の値を受信することをさらに含み、前記供給端部領域温度の値の各々が、前記供給端部領域(FE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(170)で測定され、
前記平均温度(T
A-A)を算定する前記ステップと前記示差温度(T
D-A)を算定する前記ステップとの各々が、
前記少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値の各々の前記所定の位置(160)と、前記少なくとも1つの供給端部領域温度の値の各々の前記所定の位置(170)とに基づき、前記重み関数(w
BE-A,w
FE-A,w
BE-D,w
FE-D)を算定することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記重み関数(w
FE-A,w
BE-A,w
FE-D,w
BE-D)が静的関数または動的関数である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を受信する前記ステップが、
少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値を受信するステップであって、前記燃焼端部領域温度の値の各々が、前記燃焼端部領域(BE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(160)で測定される、ステップと、
前記少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値の平均を形成することにより、前記実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を算定するステップと、
前記少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値が測定される前記所定の位置(160)の平均を形成することにより、燃焼端部位置を算定するステップと、
をさらに含み、
前記実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を受信する前記ステップが、
少なくとも2つの実際の供給端部領域温度の値を受信するステップであって、前記供給端部領域温度の値の各々が、前記供給端部領域(FE)の前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(170)で測定される、ステップと、
前記少なくとも2つの供給端部領域温度の値の平均を形成することにより、前記実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を算定するステップと、
前記少なくとも2つの供給端部領域温度の値が測定される前記所定の位置(170)の平均を形成することにより、供給端部位置を算定するステップと、
をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記平均温度(T
A-A)を算定する前記ステップが、
前記燃焼端部位置と前記供給端部位置との平均を形成することにより、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った平均位置を算定することをさらに含み、
前記示差温度(T
D-A)を算定する前記ステップが、
前記燃焼端部位置と前記供給端部位置との間の差を形成することにより、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った位置の差を算定することをさらに含み、
前記平均温度(T
A-A)を制御する前記ステップは、前記平均設定値温度(T
A-SP)が前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った前記平均位置に応じて設定されることをさらに含み、
前記示差温度(T
D-A)を制御する前記ステップは、前記示差設定値温度(T
D-SP)が前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った前記位置の差に応じて設定されることをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
受信された前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と受信された前記供給端部領域温度(T
FE-A)との各々が、前記燃焼端部領域(BE)内の少なくとも1つの所定の位置(160)と、前記供給端部領域(FE)内の少なくとも1つの所定の位置(170)とのそれぞれにおいて測定され、
前記方法が、実際の平均温度(T
A-A)を算定する前記ステップおよび温度勾配(T
G-A)を算定するステップの前に、
前記回転軸線(110)に沿った温度プロファイル関数を算定するステップであって、前記回転軸線(110)に沿った前記所定の位置(160,170)で測定された前記測定温度間の差を最小にするように、前記温度プロファイル関数を適用することにより、前記回転軸線(110)に沿った位置の関数として温度を記述する、ステップと、
適用された前記温度プロファイル関数に基づき、前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と前記供給端部領域温度(T
FE-A)とをそれぞれ算定するステップと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
前記バーナーにおいて測定された燃料投入信号(S
FUEL)を受信するステップと、
前記平均温度制御信号(S
T-A)および前記燃料投入信号(S
FUEL)に基づき、前記バーナーへの燃料投入を制御するステップと、
をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
前記供給端部領域(FE)において測定される酸素レベル信号(S
OXYGEN)を受信するステップと、
前記示差温度制御信号(S
T-D)および前記酸素レベル信号(S
OXYGEN)に基づいて酸素レベルを制御することにより、前記ガス流を制御するステップと、
をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
バーナー(120)を備え
、ロータリーキルン(100)の回転軸線(110)に沿った前記ロータリーキルン(100)の半部である燃焼端部領域(BE)から材料投入手段(130)を備え、前記ロータリーキルン(100)の回転軸線(110)に沿った前記ロータリーキルン(100)の半部である供給端部領域(FE)まで、ロータリーキルン(100)内の回転軸線(110)に沿って温度勾配および平均温度を制御するための制御システム(1)であって、
前記バーナー(120)への燃料投入が燃料投入ユニットによって制御されており、前記ロータリーキルン(100)を通るガス流がガス流ユニットによって制御されており、前記制御システム(1)が、
前記燃焼端部領域(BE)で測定される実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を受信し、
前記供給端部領域(FE)で測定される実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を受信し、
燃焼端部平均重み関数(w
BE-A)によって重み付けされた前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と供給端部平均重み関数(w
FE-A)によって重み付けされた前記供給端部領域温度(T
FE-A)との平均を形成することにより、実際の平均温度(T
A-A)を算定する、
ように構成された、平均温度ユニット(10)と、
平均温度制御信号(S
T-A)を前記燃料投入ユニットに出力することによって前記平均温度(T
A-A)を平均設定値温度(T
A-SP)に向けて制御する
ように構成された、平均温度コントローラ(30)と、
前記燃焼端部領域(BE)で測定される前記実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を受信し、
前記供給端部領域(FE)で測定される前記実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を受信し、
燃焼端部示差重み関数(w
BE-D)によって重み付けされた前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と供給端部示差重み関数(w
FE-D)によって重み付けされた前記供給端部領域温度(T
FE-A)との差を形成することにより、実際の示差温度(T
D-A)を算定する、
ように構成された、示差温度ユニット(20)と、
示差温度制御信号(S
T-D)を前記ガス流ユニットに出力することによって前記示差温度(T
D-A)を示差設定値温度(T
D-SP)に向けて制御する
ように構成された、示差温度コントローラ(40)と、
を備えており、
前記平均温度ユニット(10)と前記示差温度ユニット(20)との各々が、
少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値を受信し、前記燃焼端部領域温度の値の各々が、前記燃焼端部領域(BE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(160)で測定され、
少なくとも1つの実際の供給端部領域温度の値を受信し、前記供給端部領域温度の値の各々が、前記供給端部領域(FE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(170)で測定される、
ように構成されており、
前記平均温度(T
A-A)と前記示差温度(T
D-A)とが、それぞれ、
前記少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値の各々の前記所定の位置(160)と、前記少なくとも1つの供給端部領域温度の値の各々の前記所定の位置(170)とに基づき、前記重み関数(w
BE-A,w
FE-A,w
BE-D,w
FE-D)を算定することによって算定される、
、制御システム(1)。
【請求項9】
前記重み関数(w
FE-A,w
BE-A,w
FE-D,w
BE-D)が静的関数または動的関数である、請求項8記載の制御システム(1)。
【請求項10】
前記平均温度ユニット(10)と前記示差温度ユニット(20)との各々が、
少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値を受信し、前記燃焼端部領域温度の値の各々が、前記燃焼端部領域(BE)における前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(160)で測定され、
前記少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値の平均を形成することにより、前記実際の燃焼端部領域温度(T
BE-A)を算定し、
前記少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値が測定される前記所定の位置(160)の平均を形成することにより、燃焼端部位置を算定し、
少なくとも2つの実際の供給端部領域温度の値を受信し、前記供給端部領域温度の値の各々が、前記供給端部領域(FE)の前記回転軸線(110)に沿った所定の位置(170)で測定され、
前記少なくとも2つの供給端部領域温度の値の平均を形成することにより、前記実際の供給端部領域温度(T
FE-A)を算定し、
前記少なくとも2つの供給端部領域温度の値が測定される前記所定の位置(170)の平均を形成することにより、供給端部位置を算定する、
ように構成されている、請求項8から9までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項11】
前記平均温度ユニット(10)が、
前記燃焼端部位置と前記供給端部位置との平均を形成することにより、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った平均位置を算定する
ようにさらに構成されており、
前記平均温度コントローラ(30)によって受信される前記平均設定値温度(T
A-SP)が、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った前記平均位置に応じて設定され、
前記示差温度ユニット(20)が、
前記燃焼端部位置と前記供給端部位置との間の差を形成することにより、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った位置の差を算定する
ようにさらに構成されており、
前記示差温度コントローラ(40)によって受信される前記示差設定値温度(T
D-SP)が、前記ロータリーキルン(100)内の前記回転軸線(110)に沿った前記位置の差に応じて設定される、
請求項10記載の制御システム(1)。
【請求項12】
受信された前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と受信された前記供給端部領域温度(T
FE-A)との各々が、前記燃焼端部領域(BE)内の少なくとも1つの所定の位置(160)と、前記供給端部領域(FE)内の少なくとも1つの所定の位置(170)とのそれぞれにおいて測定され、
前記平均温度ユニット(10)および前記示差温度ユニット(20)が、
前記回転軸線(110)に沿った温度プロファイル関数を算定し、前記回転軸線(110)に沿った前記所定の位置(160,170)で測定された前記測定温度間の差を最小にするように、前記温度プロファイル関数を適用することにより、前記回転軸線(110)に沿った位置の関数として温度を記述し、
適用された前記温度プロファイル関数に基づき、前記燃焼端部領域温度(T
BE-A)と前記供給端部領域温度(T
FE-A)とをそれぞれ算定する、
ようにさらに構成されている、請求項8記載の制御システム(1)。
【請求項13】
前記燃料投入ユニットが、前記平均温度制御信号(S
T-A)に基づき、前記バーナーへの燃料投入を制御するように構成されている、請求項8から12までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項14】
前記燃料投入ユニットが燃料投入バルブ(140)である、請求項8から13までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項15】
前記燃料投入ユニットが燃料投入コントローラ(50)であり、前記燃料投入コントローラ(50)が、
前記バーナー(120)において測定された燃料投入信号(S
FUEL)を受信し、
前記平均温度制御信号(S
T-A)および前記燃料投入信号(S
FUEL)に基づき、前記バーナー(120)への燃料投入を制御する、
ように構成されている、請求項8から12までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項16】
前記ガス流ユニットが、前記ロータリーキルン(100)を通る前記ガス流を制御するように構成されている、請求項8から15までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項17】
前記ガス流ユニットがファン(150)である、請求項8から16までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項18】
前記ガス流ユニットが酸素コントローラ(60)であり、前記酸素コントローラ(60)が、
前記供給端部領域(FE)において測定される酸素レベル信号(S
OXYGEN)を受信し、
前記示差温度制御信号(S
T-D)および前記酸素レベル信号(S
OXYGEN)に基づいて酸素レベルを制御することにより、前記ガス流を制御する、
ように構成されている、請求項8から15までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項19】
各コントローラ(30,40,50,60)が、PIDコントローラ、多項式コントローラ、状態フィードバックコントローラ、ファジー理論コントローラ、またはモデル予測コントローラのいずれかである、請求項8から18までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項20】
前記材料投入手段(130)が、石灰石、生石灰泥、または鉄鉱石ペレットのいずれかを受け取るように配置されている、請求項8から19までのいずれか1項記載の制御システム(1)。
【請求項21】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行される際に、前記コンピュータに請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項22】
コンピュータによって実行される際に、前記コンピュータに請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリーキルン(回転窯)内の回転軸線に沿って温度勾配および平均温度を制御する方法に関する。さらに、開示は、ロータリーキルン内の回転軸線に沿って温度勾配および平均温度を制御するための制御システムにも関する。さらにまた、開示は、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータによって実行される際に、方法をコンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータプログラムにも関する。開示はまた、コンピュータによって実行される際に、方法をコンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体にも関する。
【0002】
背景技術
ロータリーキルンは、連続したプロセスの中で材料の温度を高温まで上昇させる(か焼させる)ために使用される加熱処理装置である。キルンは水平方向に対してわずかに傾けられた筒状容器であり、その軸線を中心としてゆっくりと回転される。処理される材料は筒の上端部に供給される。キルンが回転すると、材料は下端部に向かって徐々に下に移動し、所定の量の攪拌および混合を受ける。高温ガスは、ときには処理材料と同じ方向(並流)でキルンに沿って通過するが、通常は逆方向(反流)に通過する。高温ガスは、外部の炉で生成される場合もあるし、またはキルン内の炎によって生成されることもある。このような炎が、バーナーパイプ(または「発火パイプ」)から放射され、当該バーナーパイプは、大型のブンゼンバーナーのように動作する。このための燃料は、ガス、オイル、粉砕された石油コークス、微粉炭、トール油およびパーム油などのバイオオイル、または木質ペレットであってよい。ロータリーキルンを使用して生成される材料には、セメント、石灰、耐火物、メタカオリン、二酸化チタン、アルミナ、バーミキュライト、および鉄鉱石ペレットが含まれる。
【0003】
ロータリーキルンは、硫酸塩法に基づく化学パルプ産業の化学物質回収サイクルで使用されうる。一実施例では、主に沈殿した炭酸カルシウムで構成されたスラリーを脱水したものが、酸化カルシウムへとか焼される。この加熱は、通常は直接の燃焼によって実施される。
【0004】
ロータリーキルン内にリングが形成されることを避けるため、かつ材料の均一な品質を維持するために、キルン内の温度プロファイルが安定していることが重要である。通常、温度はキルンの端部で測定される。端部の温度を一定に保つことにより、キルン全体の温度プロファイルを一定にすることができる。
【0005】
キルン全体の一定の温度プロファイルを達成するために、ロータリーキルンを通るガス流およびバーナーへの燃料の投入量をアクチュエータによって制御しなければならない。ガス流を増大させることにより、燃焼端部領域から供給端部領域に移動される熱量が増大する。さらに、ガス流を減少させることにより、燃焼端部領域から供給端部領域に移動される熱量が減少する。しかし、最小レベルを上回るガス流を維持して、キルンが充分な燃焼空気を燃焼端部領域内に受け取るようにしなければならない。このことは、ガスのO2含有量によってチェックすることができる。さらに、バーナーへの燃料の投入量が、キルン全体の温度プロファイルに影響する。
【0006】
ロータリーキルン全体の温度プロファイルを最適にするための多くの試みがなされてきた。これらの試みの幾つかは以下の特許出願に示されている。
【0007】
欧州特許出願公開第2169483号明細書は、産業プロセスを制御するための制御システムに関する。ファジー理論インジケータ(z)をモデルベースのプロセスコントローラと組み合わせることにより、測定されたプロセス変数(y)が場合によっては互いに相反する実際のプラントの条件において、産業上のプロセスを制御するための、プロセス状態のロバストなインジケータ(x)を提供することが可能になる。
【0008】
米国特許第3437325号明細書は、ロータリーキルンの制御装置に関する。この制御装置は、それぞれキルンの動作に関連する所定の熱損失と熱入力とに応じて、第1の制御信号を形成する第1の加熱規定手段と第2の制御信号を形成する第2の加熱規定手段とを備えている。当該制御手段は、入熱源および駆動モータの動作を制御するための第1の制御信号と第2の制御信号との間の所定の関係に応答して、キルンを所望の通りに動作させる。
【0009】
国際公開第0132581号公報は、キルンプラントのコントローラに関する。熱力学コントローラは、キルンのひさしの温度および1つもしくは複数の流出ガス濃度を含む複数の変数を測定し、ひさしの温度を所望の範囲内に維持するようにキルンへの燃料の投入量を制御するとともに、測定されたガスの濃度を所定の範囲内に維持するようにキルンの主要な羽根車を制御する。
【0010】
国際公開第2011000430号公報は、ロータリーキルン内で石灰を含む混合物(CaCO3)を燃焼させ、これを焼石灰(CaO)に変化させるためのプロセスを制御する方法およびデバイスに関する。当該方法は、キャビティの長手軸線に沿った複数の測定ポイントで壁の温度の測定データを収集することと、壁の温度の測定データに少なくとも基づいてキャビティの長手軸線に沿った実際の温度勾配を予測することと、を含んでいる。さらに、当該方法には、キルンのキャビティに沿った温度を記述する熱モデルにより、キャビティに沿って予測された温度勾配とキルン内の温度を制御する所定の制御ストラテジとに基づき、キャビティに沿った所望の温度勾配を算定し、それにより、キルンの内壁に石灰を堆積させるエリアを制御するステップが含まれる。
【0011】
これらの特許出願の各々は、温度制御のかなり複雑な方法を記載している。このため、実施および維持がより柔軟かつ容易である温度制御を提供する必要がある。
【0012】
発明の概要
開示は、制御システムによってロータリーキルン内を通るガス流を制御することおよびバーナーへの燃料投入を制御することにより、バーナーを備えた燃焼端部領域から材料投入手段を備えた供給端部領域まで、ロータリーキルン内の回転軸線に沿って温度勾配および平均温度を制御する方法に関する。方法は、
‐燃焼端部領域で測定される実際の燃焼端部領域温度を受信するステップと、
‐供給端部領域で測定される実際の供給端部領域温度を受信するステップと、
‐燃焼端部領域温度と供給端部領域温度との平均を形成することにより、実際の平均温度を算定するステップと、
‐燃焼端部領域温度と供給端部領域温度との差を形成することにより、実際の示差温度を算定するステップと、
‐平均温度制御信号を出力することによって平均温度を平均設定値温度に向けて制御して、バーナーへの燃料投入を制御するステップと、
‐示差温度制御信号を出力することによって示差温度を示差設定値温度に向けて制御して、ロータリーキルンを通るガス流を制御するステップと、
を含む。
【0013】
方法の利点は、新たな温度パラメータ、すなわちバーナーへの燃料投入を制御するための平均温度と、ガス流を制御するための示差温度とを導入することにより、燃焼端部領域の温度による燃料投入の制御と、供給端部領域の温度によるガス流の制御との間の依存性を低減させることである。このため、2つの別々のSISOシステムによって燃料投入およびガス流を制御することが可能である。方法は、ロータリーキルン内の回転軸線に沿った温度勾配の制御を向上させ、これにより、製品の品質および処理の操業性が向上する。
【0014】
一実施例では、平均温度を算定するステップは、燃焼端部領域温度が燃焼端部平均重み関数によって重み付けされ、供給端部領域温度が供給端部平均重み関数によって重み付けされることをさらに含み、示差温度を算定するステップは、燃焼端部領域温度が燃焼端部示差重み関数によって重み付けされ、供給端部領域温度が供給端部示差重み関数によって重み付けされることをさらに含む。平均温度を制御するために、平均重み関数を燃焼端部領域温度および供給端部領域温度に導入することにより、方法は、燃料投入と、ガス流と、燃焼端部領域温度と、供給端部領域温度との間の依存性のさらなる低減のために最適化することができる。示差温度を制御するために、示差重み関数を燃焼端部領域温度および供給端部領域温度に導入することにより、方法は、燃料投入と、ガス流と、燃焼端部領域温度と、供給端部領域温度との間の依存性の低減ために最適化することができる。
【0015】
別の実施例によれば、重み関数が静的関数または動的関数である。これにより、燃料投入と、ガス流と、燃焼端部領域温度と、供給端部領域温度との間の依存性を低減させることができる。
【0016】
さらに別の実施例では、実際の燃焼端部領域温度を受信するステップが、
‐少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値を受信することをさらに含み、燃焼端部領域温度の値の各々が、燃焼端部領域における回転軸線に沿った所定の位置で測定され、
実際の供給端部領域温度を受信するステップが、
‐少なくとも1つの実際の供給端部領域温度の値を受信することをさらに含み、供給端部領域温度の値の各々が、供給端部領域における回転軸線に沿った所定の位置で測定され、
平均温度を算定するステップと示差温度を算定するステップとの各々が、
‐少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値の各々の所定の位置と、少なくとも1つの供給端部領域温度の値の各々の所定の位置とに基づき、重み関数を算定することをさらに含む。場所の依存性を低減させることにより、ロータリーキルンの回転軸線に沿って、燃焼端部領域温度と供給端部領域温とがそれぞれ測定される。このため、位置ベースの制御により、ロータリーキルンに沿った温度の推定の正確性が向上する。このことは、ロータリーキルン内の回転軸線に沿った温度勾配の制御の向上に繋がる。
【0017】
さらなる一実施例によれば、実際の燃焼端部領域温度を受信するステップが、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値を受信するステップであって、燃焼端部領域温度の値の各々が、燃焼端部領域における回転軸線に沿った所定の位置で測定される、ステップと、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の燃焼端部領域温度を算定するステップと、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値が測定される所定の位置の平均を形成することにより、燃焼端部位置を算定するステップと、
をさらに含み、
実際の供給端部領域温度を受信するステップが、
‐少なくとも2つの実際の供給端部領域温度の値を受信するステップであって、供給端部領域温度の値の各々が、供給端部領域の回転軸線に沿った所定の位置で測定される、ステップと、
‐少なくとも2つの供給端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の供給端部領域温度を算定するステップと、
‐少なくとも2つの供給端部領域温度の値が測定される所定の位置の平均を形成することにより、供給端部位置を算定するステップと、
をさらに含む。
【0018】
別の一実施例では、平均温度を算定するステップが、
‐燃焼端部位置と供給端部位置との平均を形成することにより、ロータリーキルン内の回転軸線に沿った平均位置を算定することをさらに含み、
示差温度を算定するステップが、
‐燃焼端部位置と供給端部位置との間の差を形成することにより、ロータリーキルン内の回転軸線に沿った位置の差を算定することをさらに含み、
平均温度を制御するステップが、平均設定値温度がロータリーキルン内の回転軸線に沿った平均位置に応じて設定されることをさらに含み、
示差温度を制御するステップが、示差設定値温度がロータリーキルン内の回転軸線に沿った位置の差に応じて設定されることをさらに含む。
【0019】
さらなる一実施例によれば、受信された燃焼端部領域温度と受信された供給端部領域温度との各々が、燃焼端部領域内の少なくとも1つの所定の位置と、供給端部領域内の少なくとも1つの所定の位置とのそれぞれにおいて測定され、
方法が、実際の平均温度を算定するステップおよび温度勾配を算定するステップの前に、
‐回転軸線に沿った温度プロファイル関数を算定するステップであって、回転軸線に沿った所定の位置で測定された測定温度間の差を最小にするように温度プロファイル関数を適用することにより、回転軸線に沿った位置の関数として温度を記述する、ステップと、
‐適用された温度プロファイル関数に基づき、燃焼端部領域温度と供給端部領域温度とをそれぞれ算定するステップと、
をさらに含む。
【0020】
さらなる一実施例では、方法が、
‐バーナーにおいて測定された燃料投入信号を受信するステップと、
‐平均温度制御信号および燃料投入信号に基づき、バーナーへの燃料投入を制御するステップと、
をさらに含む。
【0021】
別の一実施例によれば、方法が、
‐供給端部領域において測定される酸素レベル信号を受信するステップと、
‐示差温度制御信号および酸素レベル信号に基づいて酸素レベルを制御することにより、ガス流を制御するステップと、
をさらに含む。これにより、示差温度による酸素の制御の特定の実施例が開示される。
【0022】
さらに、開示は、バーナーを備えた燃焼端部領域から材料投入手段を備えた供給端部領域まで、ロータリーキルンの回転軸線に沿って温度勾配および平均温度を制御するための制御システムに関する。バーナーへの燃料投入は、燃料投入ユニットによって制御されている。ロータリーキルンを通るガス流は、ガス流ユニットによって制御されている。制御システムは、
燃焼端部領域で測定される実際の燃焼端部領域温度を受信し、
供給端部領域で測定される実際の供給端部領域温度を受信し、
燃焼端部領域温度と供給端部領域温度との平均を形成することにより、実際の平均温度を算定する、
ように構成された、平均温度ユニットと、
平均温度制御信号を燃料投入ユニットに出力することによって平均温度を平均設定値温度に向けて制御する
ように構成された、平均温度コントローラと、
燃焼端部領域で測定される実際の燃焼端部領域温度を受信し、
供給端部領域で測定される実際の供給端部領域温度を受信し、
燃焼端部領域温度と供給端部領域温度との差を形成することにより、実際の示差温度を算定する、
ように構成された、示差温度ユニットと、
示差温度制御信号をガス流ユニットに出力することによって示差温度を示差設定値温度に向けて制御する
ように構成された、示差温度コントローラと、
を備えている。
【0023】
さらに、開示は、コンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行される際に、コンピュータに上述の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータプログラムに関する。
【0024】
開示はまた、コンピュータによって実行される際に、コンピュータに上述の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体にも関する。
【0025】
本開示を、添付図面を参照してさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ロータリーキルン、および当該ロータリーキルンに接続された、本開示に係る温度勾配および平均温度を制御するための制御システムを示す図である。
【
図2】ロータリーキルンに接続された、本開示の実施形態に係る重み関数を含む制御システムを示す図である。
【
図3】一実施形態に係るロータリーキルンおよび制御システムを示す図である。
【
図4】ロータリーキルン内の回転軸線に沿った温度勾配および平均温度の制御方法を示す図である。
【0027】
詳細な説明
図1は、バーナー120を備えた燃焼端部領域BEと、材料投入手段130を備えた供給端部領域FEとを有するロータリーキルン100を示している。「燃焼端部領域」BEという用語は、バーナー120を備えた、ロータリーキルンの回転軸線110に沿ったロータリーキルン100の半部をいう。「供給端部領域」FEという用語は、材料投入手段130を備えた、ロータリーキルン100の回転軸線110に沿ったロータリーキルン100の半部をいう。燃焼端部領域BEと供給端部領域FEとは、ロータリーキルン100の半部に別々に対応している。このため、燃焼端部領域BEと供給端部領域FEとは、併せて、回転軸線110に沿ったロータリーキルン100の長さ全体をカバーする。
【0028】
ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った温度勾配および平均温度を制御するための制御システム1が、ロータリーキルン100に接続されている。バーナー120への燃料投入は、燃料投入ユニットによって制御されている。燃料は、ガス、オイル、粉砕された石油コークス、微粉炭、トール油およびパーム油などのバイオオイル、または木質ペレットであってよい。ロータリーキルン100を通るガス流はガス流ユニットによって制御されている。このガスには煙道ガスが含まれている。
【0029】
制御システム1は、平均温度ユニット10を備えている。平均温度ユニット10は、燃焼端部領域BEで測定される実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを受信するように構成されている。さらに、平均温度ユニット10は、供給端部領域FEで測定される実際の供給端部領域温度TFE-Aを受信するように構成されている。さらにまた、平均温度ユニット10は、燃焼端部領域温度TBE-Aと供給端部領域温度TFE-Aとの平均を形成することにより、実際の平均温度TA-Aを算定するように構成されている。さらに、制御システム1は、平均温度コントローラ30を備えている。平均温度コントローラ30は、燃料投入ユニットへ平均温度制御信号ST-Aを出力することにより、平均温度TA-Aを平均設定値温度TA-SPに向けて制御するように構成されている。
【0030】
さらにまた、制御システム1は示差温度ユニット20を備えている。示差温度ユニット20は、燃焼端部領域BEで測定される実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを受信するように構成されている。さらに、示差温度ユニット20は、供給端部領域FEで測定される実際の供給端部領域温度TFE-Aを受信するように構成されている。さらにまた、示差温度ユニット20は、燃焼端部領域温度TBE-Aと供給端部領域温度TFE-Aとの差を形成することにより、実際の示差温度TD-Aを算定するように構成されている。さらに、制御システム1は示差温度コントローラ40を備えている。示差温度コントローラ40は、示差温度制御信号ST-Dをガス流ユニットに出力することにより、示差温度TD-Aを示差設定値温度TD-SPに向けて制御するように構成されている。
【0031】
燃焼端部領域温度TBE-Aは、1つの燃焼端部領域温度測定位置160、またはロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った複数の燃焼端部領域温度測定位置160によって算定されうる。複数の燃焼端部領域温度測定位置の事例では、温度測定位置は、燃焼端部領域の任意の場所に配置されていてよい。しかし、ロータリーキルン100に沿って温度を算定する可能性を増大させるために、温度測定位置がロータリーキルン100内の回転軸線110に対して平行な方向で互いに離間していると有利である。供給端部領域温度TFE-Aは、1つの供給端部領域温度測定位置170、または複数の供給端部領域温度測定位置170によって算定されうる。複数の供給端部領域測定位置の事例では、温度測定位置は、供給端部領域の任意の場所に配置されていてよい。しかし、ロータリーキルン100に沿って温度を算定する可能性を増大させるために、温度測定位置がロータリーキルン100内の回転軸線110に対して平行な方向で互いに離間していると有利である。
【0032】
図2は、ロータリーキルンに接続された、本開示の実施形態に係る重み関数を含む制御システム1を示す図である。平均温度コントローラ30は、燃焼端部平均重み関数w
BE-Aによって燃焼端部領域温度T
BE-Aに重み付けし、かつ供給端部平均重み関数w
FE-Aによって供給端部領域温度T
FE-Aに重み付けするように構成されている。示差温度コントローラ40は、燃焼端部示差重み関数w
BE-Dによって燃焼端部領域温度T
BE-Aに重み付けし、かつ供給端部示差重み関数w
FE-Dによって供給端部領域温度T
FE-Aに重み付けするように構成されている。
【0033】
一実施例では、重み関数wFE-A,wBE-A,wFE-D,wBE-Dは静的関数である。静的関数は、静的な重み因子であってよい。本実施例では、出力、すなわち関数の値は、入力信号のみに依存する。
【0034】
別の実施例では、重み関数wFE-A,wBE-A,wFE-D,wBE-Dは動的システムである。動的システムはローパスフィルタを含みうる。本実施例では、出力、すなわち関数の値は、現在の入力および以前の入力に依存する。すなわち、ローパスフィルタである。
【0035】
一実施例では、平均温度ユニット10と示差温度ユニット20との各々は、
少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値を受信し、燃焼端部領域温度の値の各々が、燃焼端部領域BEにおける回転軸線110に沿った所定の位置160で測定され、
少なくとも1つの実際の供給端部領域温度の値を受信し、供給端部領域温度の値の各々が、供給端部領域FEにおける回転軸線110に沿った所定の位置170で測定される、
ように構成されており、
平均温度TA-Aと示差温度TD-Aとが、それぞれ、少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値の各々の所定の位置160と、少なくとも1つの供給端部領域温度の値の各々の所定の位置170とに基づき、重み関数wBE-A,wFE-A,wBE-D,wFE-Dを算定することによって算定される。
【0036】
さらなる実施例では、平均温度ユニット10と示差温度ユニット20との各々は、
少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値を受信し、燃焼端部領域温度の値の各々が、燃焼端部領域BEにおける回転軸線110に沿った所定の位置160で測定され、
少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを算定し、
少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値が測定される所定の位置160の平均を形成することにより、燃焼端部位置を算定し、
少なくとも2つの実際の供給端部領域温度の値を受信し、供給端部領域温度の値の各々が、供給端部領域FEにおける回転軸線110に沿った所定の位置170で測定され、
少なくとも2つの供給端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の供給端部領域温度TFE-Aを算定し、
少なくとも2つの供給端部領域温度の値が測定される所定の位置170の平均を形成することにより、供給端部位置を算定する、
ように構成されている。
【0037】
さらにまた別の実施例では、平均温度ユニット10は、
燃焼端部位置と供給端部位置との平均を形成することにより、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った平均位置を算定する
ようにさらに構成されており、平均温度コントローラ30によって受信される平均設定値温度TA-SPが、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った平均位置に応じて設定され、
示差温度ユニット20は、
燃焼端部位置と供給端部位置との間の差を形成することにより、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った位置の差を算定する
ようにさらに構成されており、示差温度コントローラ40によって受信される示差設定値温度TD-SPが、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った位置の差に応じて設定される。
【0038】
別の実施例では、受信された燃焼端部領域温度TBE-Aと受信された供給端部領域温度TFE-Aとの各々が、燃焼端部領域BE内の少なくとも1つの所定の位置160と、供給端部領域FE内の少なくとも1つの所定の位置170とのそれぞれにおいて測定され、
平均温度ユニット10および示差温度ユニット20が、
回転軸線110に沿った温度プロファイル関数を算定し、回転軸線110に沿った所定の位置160,170で測定された測定温度間の差を最小にするように、温度プロファイル関数を適用することにより、回転軸線110に沿った位置の関数として温度を記述し、
適用された温度プロファイル関数に基づき、燃焼端部領域温度TBE-Aと供給端部領域温度TFE-Aとをそれぞれ算定する、
ようにさらに構成されている。
【0039】
燃料投入ユニットは、平均温度制御信号S
T-Aに基づき、バーナー120への燃料投入を制御するように構成されている。一実施例では、燃料投入ユニットは、
図1に示すように、燃料投入バルブ140である。しかし、燃料投入ユニットは、燃料投入の供給のために適切である任意の他の手段であってよい。別の実施例では、燃料投入ユニットは、
図3に示すように、燃料投入コントローラ50である。燃料投入コントローラ50は、バーナー120において測定された燃料投入信号S
FUELを受信するように構成されている。さらに、燃料投入コントローラ50は、平均温度制御信号S
T-Aおよび燃料投入信号S
FUELに基づき、バーナー120への燃料投入を制御するように構成されている。
【0040】
ガス流ユニットは、ロータリーキルン100を通るガス流を制御するように構成されている。一実施例では、ガス流ユニットは、
図1に示すようにファン150である。しかし、ガス流ユニットは、ロータリーキルン100にガス流を通すための任意の他の手段であってよい。さらに別の実施例では、ガス流ユニットは、酸素コントローラ60である。酸素コントローラ60は、供給端部領域FEにおいて測定される酸素レベル信号S
OXYGENを受信するように構成されている。さらに、酸素コントローラ60は、示差温度制御信号S
T-Dおよび酸素レベル信号S
OXYGENに基づいて酸素レベルを制御することにより、ガス流を制御するように構成されている。
【0041】
平均温度コントローラ30は、PIDコントローラ、多項式コントローラ、状態フィードバックコントローラ、ファジー理論コントローラ、またはモデル予測コントローラのいずれかであってよい。示差温度コントローラ40は、PIDコントローラ、多項式コントローラ、状態フィードバックコントローラ、ファジー理論コントローラ、またはモデル予測コントローラのいずれかであってよい。さらに、任意の他のタイプのコントローラが使用されてもよい。
【0042】
一実施例では、燃料投入コントローラ50は、PIDコントローラ、多項式コントローラ、状態フィードバックコントローラ、ファジー理論コントローラ、またはモデル予測コントローラのいずれかであってよい。一実施例では、酸素コントローラ60は、PIDコントローラ、多項式コントローラ、状態フィードバックコントローラ、ファジー理論コントローラ、またはモデル予測コントローラのいずれかであってよい。さらに、任意の他のタイプのコントローラが使用されてもよい。
【0043】
材料投入手段130は、生石灰泥、石灰石、または鉄鉱石ペレットのいずれかの材料を受け取るように配置されている。しかし、セメント、耐火物、メタカオリン、二酸化チタン、アルミナ、またはバーミキュライトなどのロータリーキルン100に適切な任意の他の材料が使用されてもよい。
【0044】
図4は、制御システム1によってロータリーキルン100内を通るガス流を制御することおよびバーナー120への燃料投入を制御することにより、バーナー120を備えた燃焼端部領域BEから材料投入手段130を備えた供給端部領域FEまで、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿って温度勾配および平均温度を制御する方法を示している。詳細には、本方法は、
‐燃焼端部領域BEで測定される実際の燃焼端部領域温度T
BE-Aを受信するステップS1と、
‐供給端部領域FEで測定される実際の供給端部領域温度T
FE-Aを受信するステップS2と、
‐燃焼端部領域温度T
BE-Aと供給端部領域温度T
FE-Aとの平均を形成することにより、実際の平均温度T
A-Aを算定するステップS3と、
‐燃焼端部領域温度T
BE-Aと供給端部領域温度T
FE-Aとの差を形成することにより、実際の示差温度T
D-Aを算定するステップS4と、
‐平均温度制御信号S
T-Aを出力することによって平均温度T
A-Aを平均設定値温度T
A-SPに向けて制御して、バーナー120への燃料投入を制御するステップS5と、
‐示差温度制御信号S
T-Dを出力することによって示差温度T
D-Aを示差設定値温度T
D-SPに向けて制御して、ロータリーキルン100を通るガス流を制御するステップS6と、
を含んでいる。
【0045】
一実施例では、平均温度TA-Aを算定するステップは、燃焼端部領域温度TBE-Aが燃焼端部平均重み関数wBE-Aによって重み付けされ、供給端部領域温度TFE-Aが供給端部平均重み関数wFE-Aによって重み付けされることをさらに含み、示差温度TD-Aを算定するステップは、燃焼端部領域温度TBE-Aが燃焼端部示差重み関数wBE-Dによって重み付けされ、供給端部領域温度TFE-Aが供給端部示差重み関数wFE-Dによって重み付けされることをさらに含む。一実施例では、重み関数wFE-A,wBE-A,wFE-D,wBE-Dは、静的関数または動的システムであってよい。
【0046】
実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを受信するステップは、少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値を受信することをさらに含み、燃焼端部領域温度の値の各々は、燃焼端部領域BEにおける回転軸線110に沿った所定の位置160で測定されうる。実際の供給端部領域温度TFE-Aを受信するステップは、少なくとも1つの実際の供給端部領域温度の値を受信することをさらに含み、供給端部領域温度の値の各々は、供給端部領域FEにおける回転軸線110に沿った所定の位置170で測定されうる。平均温度TA-Aを算定するステップと示差温度TD-Aを算定するステップとの各々は、少なくとも1つの燃焼端部領域温度の値の各々の所定の位置160と、少なくとも1つの供給端部領域温度の値の各々の所定の位置170とに基づき、重み関数wBE-A,wFE-A,wBE-D,wFE-Dを算定することをさらに含んでいる。
【0047】
実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを受信するステップは、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値を受信するステップであって、燃焼端部領域温度の値の各々が、燃焼端部領域BEにおける回転軸線110に沿った所定の位置160で測定される、ステップと、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の燃焼端部領域温度TBE-Aを算定するステップと、
‐少なくとも2つの燃焼端部領域温度の値が測定される所定の位置160の平均を形成することにより、燃焼端部位置を算定するステップと、
をさらに含みうる。実際の供給端部領域温度TFE-Aを受信するステップは、
‐少なくとも2つの実際の供給端部領域温度の値を受信するステップであって、供給端部領域温度の値の各々が、供給端部領域FEにおける回転軸線110に沿った所定の位置170で測定される、ステップと、
‐少なくとも2つの供給端部領域温度の値の平均を形成することにより、実際の供給端部領域温度TFE-Aを算定するステップと、
‐少なくとも2つの供給端部領域温度の値が測定される所定の位置170の平均を形成することにより、供給端部位置を算定するステップと、
をさらに含みうる。
【0048】
平均温度TA-Aを算定するステップは、
‐燃焼端部位置と供給端部位置との平均を形成することにより、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った平均位置を算定することをさらに含むことができ、
示差温度TD-Aを算定するステップは、
‐燃焼端部位置と供給端部位置との間の差を形成することにより、ロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った位置の差を算定すること
をさらに含み、
平均温度TA-Aを制御するステップは、平均設定値温度TA-SPがロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った平均位置に応じて設定されることをさらに含み、
示差温度TD-Aを制御するステップは、示差設定値温度TD-SPがロータリーキルン100内の回転軸線110に沿った位置の差に応じて設定されることをさらに含む。
【0049】
一実施形態では、受信された燃焼端部領域温度TBE-Aと受信された供給端部領域温度TFE-Aとの各々が、燃焼端部領域BE内の少なくとも1つの所定の位置160と、供給端部領域FE内の少なくとも1つの所定の位置170とのそれぞれにおいて測定される。この事例では、本方法は、実際の平均温度TA-Aを算定するステップおよび温度勾配TG-Aを算定するステップの前に、
‐回転軸線110に沿った温度プロファイル関数を算定するステップであって、回転軸線110に沿った所定の位置160,170で測定された測定温度間の差を最小にするように、温度プロファイル関数を適用することにより、回転軸線110に沿った位置の関数として温度を記述する、ステップと、
‐適用された温度プロファイル関数に基づき、燃焼端部領域温度TBE-Aと供給端部領域温度TFE-Aとをそれぞれ算定するステップと、
をさらに含みうる。
【0050】
さらにまた、本方法は、
‐バーナー120において測定された燃料投入信号SFUELを受信するステップと、
‐平均温度制御信号ST-Aおよび燃料投入信号SFUELに基づき、バーナー120への燃料投入を制御するステップと、
を含みうる。
【0051】
さらに、本方法は、
‐供給端部領域FEにおいて測定される酸素レベル信号SOXYGENを受信するステップと、
‐示差温度制御信号ST-Dおよび酸素レベル信号SOXYGENに基づいて酸素レベルを制御することにより、ガス流を制御するステップと、
をさらに含みうる。
【0052】
さらに、本開示は、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータによって実行される際に、本明細書に記載の方法をコンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータプログラムに関する。
【0053】
さらにまた、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行される際に、本明細書に記載の方法をコンピュータに実行させるための命令を含む。
【符号の説明】
【0054】
1 制御システム
10 平均温度ユニット
20 示差温度ユニット
30 平均温度コントローラ
40 示差温度コントローラ
50 燃料投入コントローラ
60 酸素コントローラ
100 ロータリーキルン
110 ロータリーキルンの回転軸線
120 バーナー
130 材料投入手段
140 燃料投入バルブ
150 ファン
BE 燃焼端部領域
FE 供給端部領域
160 燃焼端部領域温度測定位置
170 供給端部領域温度測定位置
TBE-A 実際の燃焼端部領域温度
TFE-A 実際の供給端部領域温度
TA-A 実際の平均温度
TA-SP 平均設定値温度
TD-A 実際の示差温度
TD-SP 示差設定値温度
ST-A 平均温度制御信号
ST-D 示差温度制御信号
SFUEL 燃料投入信号
SOXYGEN 酸素レベル信号