(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240830BHJP
C08G 18/58 20060101ALI20240830BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20240830BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08G18/00 030
C08G18/58
C08G18/16
C08G59/68
(21)【出願番号】P 2020563635
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019062208
(87)【国際公開番号】W WO2019219608
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-05
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ,クリストフ
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-081133(JP,A)
【文献】特開昭60-020922(JP,A)
【文献】特開昭60-069122(JP,A)
【文献】特開昭60-069121(JP,A)
【文献】特開2011-184616(JP,A)
【文献】特開2017-039842(JP,A)
【文献】特開昭53-072099(JP,A)
【文献】特開昭60-069120(JP,A)
【文献】特開昭54-013595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 59/00- 59/72
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂を硬化するための
(a)三塩化ホウ素-アミン錯体、および
(b)ハロゲン化四級ホスホニウム
を含んでなり、
成分(a)対成分(b)の重量比が
、20:1から5:1である、
促進剤組成物。
【請求項2】
成分(a)が三塩化ホウ素-ジメチルオクチルアミン錯体、三塩化ホウ素-トリメチルアミン錯体、三塩化ホウ素-ベンジルジメチルアミン錯体、またはそれらの混合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(b)が臭化または塩化の四級ホスホニウムである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(b)が、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウムまたはそれらの混合物である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂を硬化するための
(a)三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体、および
(b)ハロゲン化四級アンモニウムまたは
ハロゲン化四級ホスホニウム
を含んでなる促進剤組成物であって、
成分(a)対成分(b)の重量比が
、20:1から5:1であり、
成分(a)が三塩化ホウ素-ジメチルオクチルアミン錯体、三塩化ホウ素-トリメチルアミン錯体、三塩化ホウ素-ベンジルジメチルアミン錯体、またはそれらの混合物である、
促進剤組成物。
【請求項6】
成分(b)が臭化または塩化の四級アンモニウムまたは
四級ホスホニウムである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分(b)が塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウムまたはそれらの混合物である請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂の硬化のための促進剤組成物(accelerator composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
多官能性イソシアネートと標準的な単-または多官能性エポキシ樹脂に基づく熱硬化性樹脂の硬化は、通常、大変遅くて工業的応用には使用できない。
【0003】
イソシアネートとエポキシ樹脂の硬化を促進するために幾つかの促進剤または触媒が開発された。例は特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;および特許文献5に記載されている。
【0004】
しかし既知の促進剤系を使用しても、約90℃から120の中程度の硬化温度での多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂の離型時間(demold time)は、15分から1時間の範囲で比較的遅いままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,131,600号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0129787(A2)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0129799(A2)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0129800(A2)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0130454(A2)号明細書
【発明の概要】
【0006】
発明の目的
既知の促進剤系では遅すぎて、約90℃から120の中程度の硬化温度で数分の望ましい範囲で迅速に離型し、そして低い後硬化温度を有する工業的応用に使用するためのイソシアネートーエポキシ樹脂を作成することはできない。したがって本開示の目的は、急激に粘度を上げずに前硬化を促進する、すなわち型は充填されるが後硬化は変えないことを可能にする改善された促進剤組成物を開発することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を使用することにより得た3種の促進された系に関する粘度増大(build up)曲線を示す。
【
図2】示差走査熱量計を使用して120℃で20分の高温硬化後の3種の促進された系に関する動的硬化(dynamic cure)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示
本明細書で別段の定めがない限り、本開示と関連して使用される技術用語は、当業者により通常理解されている意味を有するものである。さらに文脈から別の解釈が必要とされない限り、単数形は複数を含み、そして複数形は単数を含むものとする。
【0009】
本明細書で言及する全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示
が関係する技術分野の当業者の技術水準を示す。本出願の任意の部分で引用される全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個別の特許または刊行物が個別具体的に引用により編入されているように、そしてそれらが本開示と矛盾しない程度と同じ程度までそれら全部を引用により明白に本明細書に編入する。
【0010】
本明細書に開示するすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして必要以上の実験を行わずに作成でき、そして実施できる。本開示の組成物および方法は好適な態様という意味で記載したが、当業者には本開示の概念、精神、および範囲から逸脱せずに本明細書に記載する組成物および/または方法に、そして方法の工程または工程の順序に変更を適用できることが明白である。そのような当業者には明白なすべての類似する置き換えおよび修飾は、本開示の精神、範囲および概念の中にあると見なされる。
【0011】
本開示に従い使用されるように、以下の用語は別段の定めがない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0012】
用語“a”または“an”の使用は、用語「含んでなる(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」または「含む(containing)」(またはそのような用語の派生形)と関連して使用する場合、「1つ」を意味するものだが、これはまた「1もしくは複数」、「少なくとも1つ」および「1または1より多く」という意味とも合致する。
【0013】
用語「または」の使用は、もっぱら代替物を明らかに示し、そして代替物が相互に排他的である場合のみを除き、「および/または」を意味するために使用する。
【0014】
本開示を通して用語「約」は、値が定量する装置、メカニズムまたは方法の誤差の固有変動性、あるいは測定される対象(1もしくは複数)間に存在する固有の変動性を含むことを示す。例えば限定するわけではないが、用語「約」を使用する場合、それが指す表示した値は、プラスマイナス10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセントまたは1パーセントまで、あるいはそれらの間の1もしくは複数の画分で変動してよい。
【0015】
「少なくとも1つ」の使用は、1ならびに限定するわけではないが1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,100等を含む1より多くの任意の量を含むと理解されるものである。用語「少なくとも1つ」は、それが指す用語に依存して最高100または1000またはそれより多くに拡張することができる。さらに100/1000の量は、より低い、またはより高い限界も満足な結果を生じる可能性があるので、限定と考えるものではない。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(comprising)」(およびその任意の形、例えば"comprise"および"comprises")、「有する(having)」(およびその任意の形、例えば"have"および"has")、「含む(including)」(およびその任意の形、例えば"includes”および“include”)または「含む(containing)」(およびその任意の形、例えば“contains”および“contain”)は、包括的、すなわち制限がなく(open-ended)、そして追加の非言及要素または方法工程を排除しない。
【0017】
本明細書で使用する句「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、用語に先行する列挙した項目の全ての並べ替えおよび組み合わせを指す。例えば「A,B,Cまたはそれらの組み合わせ」は:A,B,C,AB,AC,BC,またはA
BCの少なくとも1つを含むことを意図し、そして特定の文脈で順序が重要ならばBA,CA,CB,CBA,BCA,ACB,BACまたはCABの少なくとも1つを含むことを意図する。この例に続いて明確に含まれるのは、1もしくは複数の項目または用語の反復を含む組み合わせ、例えばBB,AAA,CC,AABB,AACC,ABCCCC,CBBAAA,CABBB等である。当業者は文脈から明らかにそうでない場合を除き、一般に任意の組み合わせの中の項目および用語の数に制限はないと理解するだろう。同じ考え方で、用語「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、句「から選択される」または「からなる群から選択される」と一緒に使用される場合、その句に先行する列挙した項目の全ての並び替えおよび組み合わせを指す。
【0018】
「1つの態様において」、「態様では」、「1つの態様によれば」等の句は、一般にその句に続く特定の機能、構造または特徴が本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味し、そして本開示の1より多くの態様に含まれ得ることを意味する。重要なことは、そのような句は非限定的であり、そして同じ態様を必ずしも指していないが、もちろん1もしくは複数の先行する、および/または後述する態様を指すことができる。例えば添付の請求の範囲では、任意の請求する態様を任意の組み合わせで使用することができる。
【0019】
本開示は:
(a)三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体、および
(b)ハロゲン化四級アンモニウムまたはホスホニウム
を含んでなる多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂を硬化するための促進剤組成物に関する。
【0020】
また本開示は:
多官能性イソシアネート;
エポキシ樹脂;および
(a)三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体、および
(b)ハロゲン化四級アンモニウムまたはホスホニウム
を含んでなる促進剤組成物、
を合わせることによる硬化イソシアネート-エポキシ樹脂生成物の作成法に関する。
【0021】
成分(a)の三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体は、イソシアネート-エポキシ樹脂系の温度潜在性硬化促進剤(temperature latent cure accelerator)であり、約90から120℃の温度で活性化されて中程度の前硬化時間を導き(遅いイソシアヌレートの形成)、そしてそのような系の後硬化温度を下げる大変良い触媒である(迅速なオキサゾリドン形成)。他方で、成分(b)のハロゲン化四級アンモニウムまたはホスホニウムは、100℃未満の温度でイソシアネート-エポキシ樹脂系の大変迅速な硬化促進剤(イソシアヌレートの迅速形成)であるが、そのような系の後硬化温度を下げるためには悪い触媒である(遅いオキサゾリドン形成)。
【0022】
驚くことに今、本開示の促進剤組成物は、約90℃から120℃の温度での多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂の前硬化時間を、後硬化時間に悪影響を及ぼさずに今ではわずか数分の範囲にする有意な相乗的効果を示すことが判明した。
【0023】
最も好ましくは、成分(a)が三塩化ホウ素-ジメチルオクチルアミン錯体、三塩化ホウ素-トリメチルアミン錯体、三塩化ホウ素-ベンジルジメチルアミン錯体、またはそれらの混合物である。
【0024】
最も好ましくは、成分(b)が塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化
テトラブチルホスホニウムまたはそれらの混合物である。
【0025】
本開示の好適な態様では、成分(a)対成分(b)の重量比が、約50:1から1:1の範囲である。
【0026】
最も好ましくは、成分(a)対成分(b)の重量比が、約20:1から5:1である。
【0027】
また本開示は、多官能性イソシアネートとエポキシ樹脂の硬化のための本開示による促進剤の使用に関する。
【0028】
標準的なエポキシ樹脂との硬化に適する任意の多官能性イソシアネートを使用することができる。例は、脂肪族ポリイソシアネート、例えばヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート;脂環式ポリイソシアネート、例えばシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;芳香族ポリイソシアネート、例えばp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-または-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-または-4,4’-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-または-1,4-ジイソシアネート、ポリフェニレン ポリメチレン ポリイソシアネート、;およびそれらの混合物である。またカルボジイミド基またはウレトンイミド(uretonimide)基を含むジフェニルメタン ジイソシアネート、あるいはアロファネート基、ウレタン基、ビウレット基、および/またはウレチジオン基を含む修飾ポリイソシアネートを使用することも可能である。過剰な上記ポリイソシアネートとポリオールとの反応により得られるイソシアネート系プレポリマーも使用できる。
【0029】
好ましくは、多官能性イソシアネートはジフェニルメタン-2,4-または-4,4’-ジイソシアネート;ポリフェニレン ポリメチレン ポリイソシアネート;カルボジイミド基またはウレトンイミド基を含むジフェニルメタン ジイソシアネート;アロファネート基、ウレタン基、ビウレット基、および/またはウレチジオン基を含む修飾ポリイソシアネート;過剰な上記ポリイソシアネートとポリオールとの反応により得られるイソシアネート系プレポリマー;およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本開示はまた、本開示による使用により得られる硬化したイソシアネート-エポキシ樹脂生成物に関する。
【0031】
本開示の促進剤または硬化組成物は、任意の適切なエポキシ樹脂に使用することができる。エポキシ樹脂はモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物であることができる。さらにエポキシ樹脂は脂肪族、環式脂肪族、芳香族、環式、複素環式またはそれらの混合物であることができる。またエポキシ樹脂は飽和または不飽和、置換または非置換、またはそれらの混合物でよい。本開示の促進剤または硬化組成物で硬化するために有用なエポキシ樹脂のリストは、Lee,H.and Neville,K.“Handbook of Epoxy Resins”,McGraw-Hill Book Company,New York,1967,Chapter2,pages257-307に見い出すことができる。
【0032】
有用なエポキシ樹脂の幾つかの非限定的例は、エピクロロヒドリンとポリグリコールの反応から調製されるエポキシド、例えばトリメチルプロパン エポキシド;ジグリシジル-1,2-シクロヘキサン ジカルボキシレート、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル;レゾルシノール ジグリシジルエーテル;パラ-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ハロゲン含有エポキシ樹脂
、例えばテトラブロモビスフェノール-A-のジグリシジルエーテル;エポキシド化フェノールノボラック;およびそれらの混合物である。
【0033】
詳細は以下の実施例に見ることができる。
【実施例】
【0034】
ジフェニルメタン-2,4-および-4,4’-ジイソシアネートと、それらのポリオールとのプレポリマーと、の混合物に基づく多官能性イソシアネート(ハンツマン社またはその代理店から入手可能なSUPRASEC(登録商標)2644イソシアネート)を、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルに基づく標準エポキシ樹脂(ハンツマン社またはその代理店から入手可能なARALDITE(登録商標)GY250エポキシ樹脂)と一緒に、3.6のイソシアネート基 対 1エポキシ基の化学量論で(100重量部のSUPRASEC(登録商標)2644イソシアネート、25.0重量部のARALDITE(登録商標)GY250 エポキシ樹脂)調査し、示差走査熱量計(DSC)を使用して硬化挙動を測定し、ゲルノーム ゲル-タイマー(Gelnorm Gel-Timer)でゲル-時間を測定し、そしてブルックフィールド粘度計で硬化中の粘度増大を測定した。三塩化ホウ素-ジメチルオクチルアミン錯体(ハンツマン社またはその代理店から入手可能なAccelerator DY9577)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(“BETEC”)(TCI-ケミカルズから入手可能)および両化合物の混合物は促進剤種として調査した。
【0035】
本明細書で使用する“phr”は、100重量部のイソシアネートあたりの重量部を意味する。
【0036】
異なる3種の促進剤系を評価した:
比較1: 1phr DY9577
比較2: 0.2phr BETEC
実施例1: 1phr DY9577 + 0.2phr BETEC
【0037】
本開示による実施例1の促進剤組成物は、比較1(DY9577のみの促進系)に比べて、比較2(BETECのみの促進系)の大変迅速なゲル化を表すことなく予期せぬ相乗的な促進効果を前硬化に及ぼすことを示す(表1、
図1を参照にされたい)。
【0038】
表1は、DSC、ゲルノーム ゲルタイマーおよびブルックフィールド粘度計により得られた促進剤のスクリーニングを示す(系:100phr SUPRASEC(登録商標)2644イソシアネート/25.0phr ARALDITE(登録商標)GY250エポキシ樹脂)。
【表1】
【0039】
図1はブルックフィールド粘度計を使用して得た3種の促進剤系に関する粘度増大曲線を示し、ここで点線の曲線は0.2phr BETECを含む促進剤系を示し(比較2)、破線曲線は1phr DY9577を含む促進剤系を示し(比較1)、そして実線曲線は0.2phr BETECおよび1phr DY9577を含む本開示の促進剤系を示す(実施例1)。
【0040】
本開示の促進剤組成物のゲルノーム ゲル-タイマーにより得られたゲル時間、ならびにブルックフィールド粘度計により得られた粘度増大時間(100 mPa*sに対する時間)は、単一の促進剤種のみで触媒された系の間である。両測定の結果を考慮すると、促進剤組成物は添加剤のように作用するだけでなく、予期せぬ相乗効果的様式でも作用すると結論できる。
【0041】
さらに後硬化時間は変化しないままである(表1、
図2を参照にされたい)。
【0042】
図2は、DSCを使用して120℃で20分間等温硬化した後の3種の促進剤系の動的硬化を示し、ここで点線曲線は0.2phr BETECを含む促進剤系を示し(比較2)、破線曲線は1phr DY9577を含む促進剤系を示し(比較1)、そして実線曲線は0.2phr BETECおよび1phr DY9577を含む本開示の促進剤系を示す(実施例1)。
【0043】
DSCを使用して120℃で20分間等温硬化した後の動的硬化(5K/分)では、実施例1の後硬化が比較1(DY9577促進剤系)と大変似ていることが明らかである。実施例1および比較1に関するDSC曲線は、168-175℃付近に同様の最大ピーク温度を有するという大変類似した傾向を示す。他方BETEC触媒系は、182℃での最大ピーク温度、ならびに265℃に最大ピーク温度を持つ有意により高温範囲へシフトした第二ピークを示し、よりずっと長い後硬化時間を示唆している。
【0044】
表2は、ゲルノーム ゲル-タイマーおよびブルックフィールド粘度計により得られた異なるハロゲン化四級アンモニウム/ホスホニウムの促進剤のスクリーニングを示す(系:100phr SUPRASEC(登録商標)2644イソシアネート/25.0phr ARALDITE(登録商標)GY250エポキシ樹脂)。
【表2】
【0045】
表2は、本開示に開示する組成物、すなわち(a)の三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体と成分(b)のハロゲン化四級アンモニウムまたはホスホニウムを含む成分を使用することの予期せぬ相乗効果をさらに示す。本開示の促進剤組成物のゲル時間ならびに粘度増大時間(100 mPa*sまでの時間)は、単一の促進剤種のみで触媒される系の間であ
る。
【0046】
実験は、成分(a)の潜在性により、120℃未満の低温でイソシアネート-エポキシ樹脂系の迅速な前硬化時間(迅速な離型時間)を有することは大変難しいことを示す。成分(b)のみの使用では早すぎる前硬化をもたらし、樹脂トランスファー成形(RTM)、湿式圧縮成形(WCM)、または真空注入のような注入法に使用するには適さないものとなり、しかもオキサゾリドン形成の悪い促進効果により、後硬化温度が成分(a)に比べよりずっと高い。
【0047】
驚くことに今、成分(b)のハロゲン化四級アンモニウムまたはホスホニウムを、成分(a)の三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体により促進されるイソシアネート-エポキシ樹脂系に加えた時、同量の成分(b)が単独で使用される時の迅速なゲル化時間を有することなく前硬化が促進でき、しかも後硬化時間は変化しないままであることが示された。そのようなこれら2成分の混合物の相乗効果は、全く予期できず、驚くことである。
【0048】
前記開示の主題は例示であり、そして限定的ではないと考えられ、そして添付の請求の範囲がすべてのそのような修飾、強化および他の態様を網羅するものであり、これらは本開示の範囲に入る。すなわち法により許される最大の範囲にするために、本発明の範囲は、以下の請求の範囲およびそれらの均等物の最も広い可能な解釈により決定され、そして前述の詳細な説明により制限または限定されるものではない。