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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】発泡装置および発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/90 20220101AFI20240830BHJP
   B01F 27/1125 20220101ALI20240830BHJP
   B01F 27/1144 20220101ALI20240830BHJP
   B01F 27/92 20220101ALI20240830BHJP
   B29C 44/34 20060101ALI20240830BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240830BHJP
   B29B 7/12 20060101ALI20240830BHJP
   C08J 9/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B01F27/90
B01F27/1125
B01F27/1144
B01F27/92
B29C44/34
B29C44/00 G
B29B7/12
C08J9/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020571176
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003897
(87)【国際公開番号】W WO2020162387
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019019917
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】村上 恭亮
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-072770(JP,A)
【文献】特開平02-273531(JP,A)
【文献】中国実用新案第208194216(CN,U)
【文献】米国特許第05762417(US,A)
【文献】特開平01-301210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/1125、27/1144、27/90、27/92
B29C 44/34
B29C 44/00
B29B 7/12
C08J 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一段発泡粒子を混合する混合装置を備え、当該一段発泡粒子を発泡し二段発泡粒子を得る発泡装置であって、
前記混合装置は、
前記一段発泡粒子を収容する容器と、
前記一段発泡粒子を攪拌する複数の撹拌翼と、
前記撹拌翼を回転させる回転軸と、を備え、
前記撹拌翼に対して、少なくとも第1および第2の羽根を有し、
前記第1および第2の羽根は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度を有し、
上面視において、前記第1および第2の羽根は互いに重複しない、混合装置であって、以下の構成(1)~(3)を備える:
(1)前記第1の羽根の前記水平面に対する傾斜角度が30~60°の鋭角であり、前記第2の羽根の前記水平面に対する傾斜角度が120~150°の鈍角である、
(2)前記撹拌翼は、水平方向に延在しており、所定の間隔を開けて、前記回転軸に多段に配置されており、前記多段の撹拌翼は、螺旋形状を形成するように前記回転軸に設けられており、上面視におけるn段目の撹拌翼とn-1段目の撹拌翼とのなす角度αは、10°~45°である、
(3)第1および第2の羽根の長さの比率が6:4~8:2である
発泡装置。
【請求項2】
同一の前記撹拌翼に対して、前記第1および第2の羽根を少なくとも有する、請求項1に記載の発泡装置。
【請求項3】
前記第1の羽根が設けられている前記撹拌翼と前記第2の羽根が設けられている前記撹拌翼とは、互いに異なる、請求項1に記載の発泡装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の発泡装置を用いて、発泡粒子を製造する工程を有する、発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置、発泡装置および発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被混合物を収容する容器を備え、容器内に設けられた撹拌翼により被混合物を混合する混合装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、気液の撹拌混合用の撹拌翼が開示されている。特許文献1に開示された撹拌翼は、上下一対の翼の対向面の間に間隔を形成するように、回転軸に放射状に上下複数段に取り付けた構成となっている。そして、上下一対の翼は、その間隔が翼の回転方向に向かって狭くなるか、あるいは広くなるように形成されている。
【0004】
また、特許文献2には、被混合物として熱可塑性合成樹脂粒子を撹拌翼により混合しつつ、当該樹脂粒子を加熱発泡する予備発泡装置が開示されている。特許文献2に開示された予備発泡装置は、撹拌翼の先端部に掻き取り板を備えている。この掻き取り板は、撹拌翼に対して略垂直方向に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-226633号公報
【文献】特開平1-301210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された撹拌翼を、被混合物(例えば粒子)を混合する混合装置に適用した場合、容器内において、被混合物が上層と下層との間で相互移動しにくいという技術的課題があることを本発明者は見出した。すなわち、撹拌翼による撹拌を行っても、上層の被混合物は、下層へ移動しにくく、上層に留まったままとなる。また、下層の被混合物は、上層へ移動しにくく、下層に留まったままとなる。このため、特許文献1に開示された撹拌翼では、被混合物を上層と下層との間で相互移動させ、上層と下層との間で均一に混合させるという点で改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された撹拌翼を、特に特許文献2に開示された予備発泡装置に適用した場合、樹脂粒子が上層と下層との間で均一に混合されにくいため、樹脂粒子が均一に加熱されないという技術上の課題もあることがわかった。そのため、樹脂粒子の発泡倍率のバラツキが生じやすくなる。
【0008】
本発明の一態様は、被混合物を上層と下層との間で相互移動させ、上層と下層との間で均一に混合させることが可能な混合装置、および発泡装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る混合装置は、被混合物を収容する容器と、前記被混合物を攪拌する複数の撹拌翼と、前記撹拌翼を回転させる回転軸と、を備え、前記撹拌翼に対して、少なくとも第1および第2の羽根を有し、前記第1および第2の羽根は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度を有し、上面視において、前記第1および第2の羽根は互いに重複しないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、被混合物を上層と下層との間で相互移動させ、上層と下層との間で均一に混合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る予備発泡装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る予備発泡装置に備えられた撹拌翼の構成を示し、201は側面図であり、202は201におけるA-A線断面図であり、203は201におけるB-B線断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る予備発泡装置に備えられた、第1および第2の撹拌羽根の作用機構を説明するための図であり、301は回転時の第1および第2の撹拌羽根それぞれの作用を説明するための側面図であり、302は、回転時の第1および第2の撹拌羽根それぞれの回転領域を示す上面図であり、303は、撹拌翼の回転時の発泡粒子の流れを模式的に示した図である。
図4】本発明の実施形態2に係る予備発泡装置に備えられた撹拌翼の構成を示し、401は上面図であり、402は側面図であり、403は1つの撹拌翼について回転軸と反対側から見た構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態3に係るに係る予備発泡装置の構成を模式的に示し、501は断面図であり、502は内部構成を示す上面図である。
図6】本発明の実施形態4に係る予備発泡装置に備えられた2種類の撹拌翼の構成を示し、601は上面図であり、602は側面図であり、603は、前記2種類の撹拌翼のうち一方の撹拌翼の詳細な構成を示す側面図であり、604は、当該一方の撹拌翼について回転軸と反対側から見た構成を示す側面図であり、605は、前記2種類の撹拌翼のうち他方の撹拌翼の詳細な構成を示す側面図であり、606は、当該他方の撹拌翼について回転軸と反対側から見た構成を示す側面図である。
図7】実施例、参考例、および比較例について、使用する予備発泡装置の前提的構成を示す図であり、701は断面図であり、702は内部構成を示す上面図である。
図8】実施例、参考例、および比較例における発泡粒子の流動性および撹拌混合性の評価結果を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る混合装置の対象である被混合物は、撹拌翼により混合可能な物質であれば、特に限定されないが、固体が好ましい。特に好ましくは、被混合物は、粒子状の固体である。本実施形態に係る混合装置は、被混合物の混合に使用される撹拌翼を特定の構造とすることにより、被混合物を上層と下層との間で相互移動させ、上層と下層との間で均一に混合させることが可能となっている。以下では、被混合物として発泡粒子を使用した発泡装置、特に予備発泡装置を例にして説明する。後述する予備発泡装置は、本実施形態に係る混合装置を備えた構成である。なお、本実施形態に係る混合装置は、後述する予備発泡装置に適用されたものに限定されないことはいうまでもない。
【0013】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る予備発泡装置10(混合装置)の概略構成を模式的に示す図である。図1に示されるように、本実施形態に係る予備発泡装置10は、発泡容器1(被混合物を収容する容器)と、回転軸20と、撹拌翼30と、モータ4と、計量タンク5と、排出扉6と、蒸気供給ライン7と、排気ライン8と、蒸気ドレン排出ライン9と、を備えている。
【0014】
発泡容器1は、蒸気室Sと、当該蒸気室Sの上側に設けられた予備発泡室Tとに区画されている。蒸気室Sには、蒸気供給ライン7および蒸気ドレン排出ライン9が接続されている。また、予備発泡室Tには、計量タンク5および排気ライン8が接続されている。計量タンク5には、発泡粒子が一定量貯蔵されている。
【0015】
また、予備発泡室T内には、回転軸20、撹拌翼30、およびモータ4が設けられている。撹拌翼30は、予備発泡室T内の発泡粒子を撹拌するための部材である。回転軸20は、撹拌翼30を回転させるための軸であり、モータ4の駆動により回転する。また、排出扉6は、予備発泡室Tに設けられている。
【0016】
撹拌翼30は、回転軸20に対して水平方向に延在している。そして、回転軸20が伸びる方向において、所定の間隔を開けて、多段に配置されている。これにより、発泡粒子を効率的に撹拌することができる。
【0017】
計量タンク5内の発泡粒子(一段発泡粒子)は、例えば、圧縮空気の注入により内部に空気が含有された状態となっており、例えば空気による内圧が1気圧よりも大きくなっている。予備発泡装置10では、発泡粒子は、計量タンク5から発泡容器1の予備発泡室Tへ導入され、撹拌翼30により撹拌される。また、発泡容器1の蒸気室Sには、蒸気供給ライン7から蒸気が供給される。そして、蒸気室Sに供給された蒸気は、予備発泡室Tへ流入する。このように発泡容器1は、蒸気供給ライン7の蒸気が底部から予備発泡室Tへ供給されるようになっている。予備発泡室T内の発泡粒子は、撹拌翼30により撹拌されつつ、底部から供給される蒸気により加熱される。そして、加熱膨張して、所定の発泡倍率を有する二段発泡粒子が得られる。得られた二段発泡粒子は、排出扉6から外部へ取り出される。
【0018】
また、予備発泡室Tの底部から供給された蒸気は、二段発泡が完了した後、排気ライン8を介して発泡容器1外部へ排出される。また、二段発泡中に発生した蒸気ドレンは、蒸気ドレン排出ライン9を介して発泡容器1外部へ排出される。
【0019】
なお、図1には示されていないが、予備発泡装置10は、撹拌翼30による撹拌中に発生する発泡粒子のブロッキング(発泡粒子同士の融着)を防止するため、発泡容器1の予備発泡室T内にバッフル(邪魔板)を備えていてもよい。このバッフルは、発泡粒子のブロッキングの防止し得る形状であれば、任意の形状であってもよい。
【0020】
ここで、上述のように、予備発泡室T内で発泡粒子を撹拌翼30により撹拌しながら、底部から供給される蒸気により加熱する発泡方法では、発泡容器1内の二段発泡粒子の発泡倍率にバラツキが生じ易くなる。このように発泡倍率のバラツキが生じる要因として、発泡粒子が予備発泡室T内で均一に加熱されないことが挙げられる。
【0021】
そこで、本願発明者は、この発泡粒子の加熱均一化という課題に対して、予備発泡室T内での撹拌翼30による発泡粒子の撹拌混合性に着目して、鋭意検討した。その結果、予備発泡室T内における発泡粒子の上下方向および水平方向の両方の流動性を向上し得る撹拌翼30の形状を見出した。本実施形態に係る予備発泡装置10は、撹拌翼30の形状に特徴がある。
【0022】
図2は、撹拌翼30の構成を示し、図2の201は側面図であり、図2の202は図2の201におけるA-A線断面図であり、図2の203は図2の201におけるB-B線断面図である。
【0023】
図2の201~203に示されるように、回転軸20には、撹拌翼30を取り付けるための取付部21が設けられている。また、撹拌翼30は、回転軸20に対して対称に配された2つの翼部30aおよび30bを備えている。
【0024】
取付部21は、例えば、翼部30aおよび30bの回転軸20側端部と嵌合する嵌合凹部を有していてもよい。翼部30aおよび30bの回転軸20側端部と取付部21の上記嵌合凹部とを嵌合させることにより、撹拌翼30は取付部21に取り付けられる。また、例えば、翼部30aおよび30bは、溶接などによって、直接回転軸20に取り付けられていてもよい。
【0025】
ここで、撹拌翼30は、発泡容器1の内壁および底面に離間するように配置されている。すなわち、回転軸20に対して垂直な方向において、撹拌翼30の長さLは、発泡容器1の内径(直径)よりも小さくなっている。撹拌翼30が発泡容器1の内壁または底面に接触している構成では、発泡容器1の内壁または底面との接触による摩擦によって、撹拌翼30がスムーズに回転せず、撹拌性能に悪影響があるためである。
【0026】
本実施形態に係る予備発泡装置10は、同一の撹拌翼30に対して、長さrの第1の撹拌羽根32(第1の羽根)および長さrの第2の撹拌羽根33(第2の羽根)を少なくとも有することを特徴としている。図2の201に示されるように、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33が、長さrの翼部30aを構成しており、第1の撹拌羽根32は、第2の撹拌羽根33よりも内側(回転軸20側)に配置されている。
【0027】
そして、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度を有する。第1の撹拌羽根32の水平面に対する傾斜角度θと第2の撹拌羽根33の水平面に対する傾斜角度θとは異なる。図2の201~203に示された構成では、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は、回転軸20と反対側(発泡容器1の内壁側)の端部から見て、互いに交差する位置関係にある。
【0028】
また、第1の撹拌羽根32の水平面に対する傾斜角度θは、鋭角である。第2の撹拌羽根33の水平面に対する傾斜角度θは、鈍角である。このため、第1の撹拌羽根32は、撹拌翼30の回転方向へ向かって下方へ傾斜する構成となっている。また、第2の撹拌羽根33は、撹拌翼30の回転方向へ向かって上方へ傾斜する構成となっている。
【0029】
図3は、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33の作用機構を説明するための図である。図3の301は回転時の第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33それぞれの作用を説明するための側面図である。また、図3の302は、回転時の第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33それぞれの回転領域を示す上面図である。また、図3の303は、撹拌翼30の回転時の発泡粒子の流れを模式的に示した図である。
【0030】
上述したように、第1の撹拌羽根32は、傾斜角度θが鋭角であり、回転方向へ向かって下方に傾斜している。このため、図3の301に示されるように、撹拌翼30の回転動作中、第1の撹拌羽根32は、発予備発泡室T内の発泡粒子をかき上げるように作用する。
【0031】
一方、第2の撹拌羽根33は、傾斜角度θが鈍角であり、回転方向へ向かって上方に傾斜している。このため、図3の301に示されるように、第2の撹拌羽根33は、撹拌翼30の回転動作中、予備発泡室T内の発泡粒子をかき下げるように作用する。
【0032】
また、図3の302に示されるように、回転軸20の方向から見た上面視において、第1の撹拌羽根32の回転領域Aおよび第2の撹拌羽根33の回転領域Bは、互いに重複しない。このことから、回転軸20の方向から見た上面視において、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は互いに重複しない位置関係となっていることがいえる。なお、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33のセットは、複数の撹拌翼30それぞれに設けられている。回転軸20の方向から見た上面視において、複数の第1の撹拌羽根32同士は、回転領域A内に収められた位置関係であればよい。すなわち、回転軸20の方向から見た上面視において、複数の第1の撹拌羽根32同士は、重複していてもよいし、重複していなくてもよい。同様に、回転軸20の方向から見た上面視において、複数の第2の撹拌羽根33同士は、回転領域B内に収められた位置関係であればよく、重複していてもよいし、重複していなくてもよい。
【0033】
ここで、予備発泡装置10では、図3の302に示される内側の第1の撹拌羽根32の回転領域Aでは、発泡粒子が上方へ移動する。一方、図3の302に示される外側の第2の撹拌羽根33の回転領域Bでは、発泡粒子が下方へ移動する。したがって、図3の303に示されるように、撹拌翼30の回転動作中、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33の上述した作用により、予備発泡室T内の発泡粒子に流れFが生じる。当該流れFは、回転軸20近傍の内側では上昇する一方、回転軸20から遠い外側では下降する流れである。その結果、予備発泡装置10では、予備発泡室T内の発泡粒子が上層と下層との間で相互移動するので、撹拌混合性が向上する。
【0034】
したがって、本実形態に係る予備発泡装置10によれば、撹拌翼30の撹拌により、予備発泡室T内における発泡粒子の上下方向および水平方向の両方の流動性を向上する。その結果、発泡粒子が均一に加熱されるため、発泡倍率のバラツキが小さい二段発泡粒子を得ることができる。また、撹拌翼30の構造によって発泡倍率のバラツキを低減しているので、予備発泡装置10にかかる費用が安価である。
【0035】
傾斜角度θおよびθは、互いに異なっていればよく、上述した流れFを生じさせるために被混合物の種類に応じて適宜設定することができる。特に、被混合物が発泡粒子等の粒子である場合、傾斜角度θおよびθの一方の角度が鈍角であり、他方の角度が鋭角であることが好ましく、例えば図2の201~203に示された構成が挙げられる。
【0036】
また、傾斜角度θおよびθの何れを鈍角または鋭角とするかは、撹拌翼30の回転方向等に応じて適宜設定可能である。例えば、撹拌翼30の回転方向が図2の201および202に示された回転方向を逆である場合、第1の撹拌羽根32の傾斜角度θを鈍角とし、第2の撹拌羽根33の傾斜角度θを鋭角とすることもできる。
【0037】
また、傾斜角度θおよびθは、傾斜角度θ+傾斜角度θ=180°であることが好ましい。このように傾斜角度θおよびθが設定されている場合、回転軸20と反対側の端部から見ると、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は線対称な位置関係となっている。それゆえ、撹拌翼30の回転動作中、予備発泡室T内の発泡粒子は、上方および下方に均等に移動することなる。このため、より安定して、予備発泡室T内の発泡粒子を上層と下層との間で相互移動させることができる。
【0038】
また、撹拌翼30の回転動作中に発泡粒子を上方および下方に均等に移動させるためには、第1の撹拌羽根32の回転領域Aの面積は、第2の撹拌羽根33の回転領域Bの面積と同じであることが好ましい。これにより、発泡粒子がかき上げられる領域は、発泡粒子がかき下げられる領域と略同じになるので、発泡粒子が上方および下方に均等に移動する。
【0039】
それゆえ、第1の撹拌羽根32の長さrおよび第2の撹拌羽根33の長さrは、回転領域Aの面積が回転領域Bの面積と同じになるように設定されていることが好ましい。より具体的には、回転軸20に対し垂直な方向において、長さrおよびrの比率r:rは、好ましくは5:5~9:1であり、より好ましくは6:4~8:2であり、特に好ましくは7:3である。
【0040】
傾斜角度θは、回転により発泡粒子をかき上げる作用が生じ得る角度であれば、任意の角度でよい。傾斜角度θは、好ましくは10~80°であり、より好ましくは30~60°であり、特に好ましくは40~50°である。
【0041】
また、傾斜角度θは、回転により発泡粒子をかき下げる作用が生じ得る角度であれば、任意の角度でよい。傾斜角度θは、好ましくは100~170°であり、より好ましくは120~150°であり、特に好ましくは130~140°である。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図4は、本実施形態に係る予備発泡装置に備えられた撹拌翼30の構成を示し、図4の401は上面図であり、図4の402は側面図であり、図4の403は1つの撹拌翼30について回転軸20と反対側から見た構成を示す図である。
【0043】
図4の401~403に示されるように、本実施形態に係る予備発泡装置は、多段の撹拌翼30が螺旋形状を形成するように、回転軸20に設けられている点が前記実施形態1と異なる。図4の401に示されるように、2段目の撹拌翼30は、1段目の撹拌翼30から回転方向と反対方向に角度αだけ回転した位置関係となっている。一般化すると、上面視において、n段目の撹拌翼30は、n-1段目の撹拌翼30から回転方向と反対方向に角度αだけ回転した位置関係となっている。このような位置関係になっていることにより、多段の撹拌翼30は、回転軸20の方向に伸びる螺旋形状を構成することになる。
【0044】
なお、本実施形態では、n段目の撹拌翼30は、n-1段目の撹拌翼30から回転方向に角度αだけ回転した位置関係となっていてもよい。この場合、多段の撹拌翼30は、図4と逆方向の螺旋形状を構成することになる。
【0045】
このように本実施形態では、撹拌翼30は、水平方向に延在しており、所定の間隔を開けて、回転軸20に多段に配置されている。そして、多段の撹拌翼30は、螺旋形状を形成するように回転軸20に設けられている。このような構成であっても、予備発泡室内の発泡粒子を上層と下層との間で相互移動させることができる。特に、本実施形態に係る予備発泡装置では、撹拌翼30を螺旋状に配置することにより発泡粒子の混合攪拌性能が向上する。
【0046】
また、上面視におけるn段目の撹拌翼30とn-1段目の撹拌翼30とのなす角度αは、撹拌翼の段数(n)に応じて適宜設定可能である。180°÷段数(n)で求められる角度αは、好ましくは10°~60°であり、より好ましくは10°~45°であり、特に好ましくは10°~30°である。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5は、本実施形態に係る予備発泡装置の構成を模式的に示し、図5の501は断面図であり、図5の502は内部構成を示す上面図である。
【0048】
図5の501および502に示されるように、本実施形態に係る予備発泡装置は、多段の撹拌翼30の配置が前記実施形態1および2と異なる。図5の501および502に示されるように、平面視において、n段目の撹拌翼30とn-1段目の撹拌翼30とは、互いに直交する位置関係となっている。
【0049】
このように配置された多段の撹拌翼30であっても、予備発泡室内の発泡粒子を上層と下層との間で相互移動させることができる。
【0050】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図6は、本実施形態に係る予備発泡装置に備えられた2種類の撹拌翼30Aおよび30Bの構成を示し、図6の601は上面図であり、図6の602は側面図である。また、図6の603は、撹拌翼30Bの詳細な構成を示す側面図であり、図6の604は、撹拌翼30Bについて回転軸20と反対側から見た構成を示す側面図である。また、図6の605は、撹拌翼30Aの詳細な構成を示す側面図であり、図6の606は、撹拌翼30Aについて回転軸20と反対側から見た構成を示す側面図である。
【0051】
実施形態1~3に係る予備発泡装置は、同一の撹拌翼30に対して第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33が設けられていた。しかし、本発明の実施形態に係る予備発泡装置は、実施形態1~3に限定されず、次の(a)および(b)を満たす構成であればよい。(a)第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は1つ以上の撹拌翼30に対して設けられる。(b)回転軸20の方向から見た上面視において、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は互いに重複しない。前記(a)について換言すれば、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は、1以上の撹拌翼からなる同一組(換言すれば、単位グループ)に対して設けられていればよい。さらに換言すれば、第2の撹拌羽根33は、第1の撹拌羽根32が設けられた撹拌翼と同一または別の撹拌翼に設けられていればよい。図6の601~606に示されるように、本実施形態に係る予備発泡装置は、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33が同一の撹拌翼に対して設けられていない点が前記実施形態1と異なる。すなわち、本実施形態に係る予備発泡装置では、第1の撹拌羽根32が設けられた撹拌翼30Aと第2の撹拌羽根33が設けられた撹拌翼30Bとは、異なっている。
【0052】
撹拌翼30Aおよび30Bはそれぞれ、本体軸部31を備えている。この本体軸部31は、回転軸20の取付部21に取り付けられる。第1の撹拌羽根32は、撹拌翼30Aの本体軸部31に設けられている一方、第2の撹拌羽根33は、撹拌翼30Bの本体軸部31に設けられている。撹拌翼30Aに取り付けられた第1の撹拌羽根32は、撹拌翼30Bに取り付けられた第2の撹拌羽根33よりも回転軸20に近くなるように配置されている。より具体的には、回転軸20の方向から見た上面視において、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33の位置関係は、次の(i)および(ii)を満たす。(i)前記上面視において、第1の撹拌羽根32の回転領域と第2の撹拌羽根33の回転領域とが重複しない。(ii)前記上面視において、第2の撹拌羽根33の回転領域である環状軌跡内に、第1の撹拌羽根32の回転領域が収まる。
【0053】
また、図6の604および606に示されるように、第2の撹拌羽根33の水平面に対する傾斜角度θは、鈍角である。さらに、図6の606に示されるように、第1の撹拌羽根32の水平面に対する傾斜角度θは、鋭角である。このため、第1の撹拌羽根32は、撹拌翼30の回転方向へ向かって下方へ傾斜する構成となっている。また、第2の撹拌羽根33は、撹拌翼30の回転方向へ向かって上方へ傾斜する構成となっている。
【0054】
また、図6の601および602に示されるように、撹拌翼30Aおよび30Bは、所定の間隔を開けて、互い違いになるように多段に配置されている。換言すると、撹拌翼30Aおよび30Bからなる撹拌翼の組が多段に配置されている。そして、前記撹拌翼の組では、撹拌翼30Aは撹拌翼30Bよりも下側に配置されている。
【0055】
また、2段目の撹拌翼30Bは、1段目の撹拌翼30Aから回転方向と反対側に角度αだけ回転した位置関係となっている。一般化すると、上面視において、n段目の撹拌翼30Bは、n-1段目の撹拌翼30Aから回転方向と反対方向に角度αだけ回転した位置関係となっている。このような位置関係になっていることにより、多段の撹拌翼30Aおよび30Bは、回転軸20の方向に伸びる螺旋形状を構成することになる。
【0056】
なお、本実施形態では、n段目の撹拌翼30Bは、n-1段目の撹拌翼30Aから回転方向に角度αだけ回転した位置関係となっていてもよい。この場合、多段の撹拌翼30Aおよび30Bは、図6の602と逆方向の螺旋形状を構成することになる。
【0057】
このように、本実施形態に係る予備発泡装置では、隣接する2つの撹拌翼30Aおよび30Bからなる同一組に対して、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33が取り付けられている。第2の撹拌羽根33は、第1の撹拌羽根32が設けられた撹拌翼30Aとは別の撹拌翼30Bに設けられている。本実施形態に係る予備発泡装置では、1以上の撹拌翼からなる組(すなわち、2つの撹拌翼30Aおよび30Bからなる組)は複数設けられており、互いの組は同一である。そして、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度θおよびθを有する。また、撹拌翼30Aおよび30Bは、所定の間隔を開けて、互い違いになるように多段に配置されている。すなわち、2つの撹拌翼30Aおよび30Bからなる組は、多段に配置されている。
【0058】
このような構成であっても、予備発泡室内の発泡粒子を上層と下層との間で相互移動させることができる。特に、本実施形態に係る予備発泡装置では、撹拌翼30Aおよび30Bを螺旋状に配置することにより発泡粒子の混合攪拌性能が向上する。
【0059】
また、上面視におけるn段目の撹拌翼30Bとn-1段目の撹拌翼30Aとのなす角度αは、撹拌翼の段数(n)に応じて適宜設定可能である。180°÷段数(n)で求められる角度αは、好ましくは10°~60°であり、より好ましくは10°~45°であり、特に好ましくは10°~30°である。
【0060】
(発泡容器1に投入される発泡粒子について)
発泡容器1に投入される発泡粒子は、二段発泡が必要な発泡粒子であれば、特に限定されない。例えば、当該発泡粒子として、熱可塑性樹脂発泡粒子が挙げられる。
【0061】
本実施形態にて使用される熱可塑性樹脂発泡粒子の基材樹脂は、一般的な公知の発泡性の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびこれらの混合物等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、またはポリエステル系樹脂である。ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族系ポリエステル樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフラレート)(PBAT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。また、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)からなる群から選択される少なくとも1種である。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好適に使用される。すなわち、発泡容器1に投入される発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であることが好ましい。
【0062】
以下、熱可塑性樹脂粒子の基材樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用した実施形態について説明する。なお、本実施形態に使用され得る熱可塑性樹脂粒子の基材樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に限定されない。
【0063】
前記ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン単位を50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含む樹脂のことである。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン等のポリエチレン類;プロピレンホモポリマー;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体等のα-オレフィン-プロピレンランダム共重合体、並びに、α-オレフィン-プロピレンブロック共重合体等のポリプロピレン類;プロピレンホモポリマー、ポリブテン等のその他のポリオレフィンホモポリマー類;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0064】
これらの内でも、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、およびプロピレン-1-ブテンランダム共重合体が、発泡粒子とするときに良好な発泡性を示すため、好適に使用される。
【0065】
また、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の基材樹脂には、ポリオレフィン系樹脂以外に、該ポリオレフィン系樹脂の特性が失われない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等が混合されていてもよい。
【0066】
また、ポリオレフィン系樹脂は、通常、発泡粒子を製造し易いように、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、且つ円柱形状、楕円形状、球形状、立方体形状、直方体形状等の樹脂粒子に予め加工しておくことが好ましい。なお、樹脂粒子はペレットとも称する。
【0067】
ポリオレフィン系樹脂粒子は、一粒の重量が0.1~30mgであることが好ましく、0.3~10mgであることがより好ましい。
【0068】
ポリオレフィン系樹脂に添加剤を加える場合には、前記ポリオレフィン系樹脂粒子の製造前に、ブレンダー等を用いてポリオレフィン系樹脂と添加剤とを混合することが好ましい。添加剤の具体例としては、セル造核剤(単に造核剤とも称する)が挙げられる。また、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤を使用する場合には、造核剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、硫酸バリウム等のような無機造核剤が一般に使用される。セル造核剤の添加量は、使用するポリオレフィン系樹脂の種類、セル造核剤の種類によって異なるので一概には規定できないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、概ね0.001重量部以上、2重量部以下であることが好ましい。
【0069】
また、空気、窒素、二酸化炭素、水等の無機発泡剤を使用する場合には、前記無機造核剤および/または親水性物質を使用することが好ましい。水系分散物の分散媒として水を使用する場合には、ポリオレフィン系樹脂中に水が含浸し、含浸した水が他の発泡剤と共にあるいは単独で発泡剤として作用する。
【0070】
前記親水性物質は、ポリオレフィン系樹脂に含浸される水分量を多くするように作用する。親水性物質の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の無機物質;あるいは、グリセリン、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物;ポリエチレングリコール、またはポリエチレンオキシド等のポリエーテル、ポリエーテルのポリプロピレン等への付加物、およびこれらのポリマーアロイ;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン-(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の重合体;等の有機物が挙げられる。これら親水性物質は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0071】
親水性物質の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0 .005重量部以上、2重量部以下であることが好ましく、0.005重量 部以上、1重量部以下であることがより好ましい。親水性物質の種類および量を調整することにより、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均気泡径を調整することができる。
【0072】
さらに、ポリオレフィン系樹脂粒子の製造時には、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダートアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、ポリオレフィン系樹脂の特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0073】
また、発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性の炭化水素系発泡剤、および空気、窒素、二酸化炭素、水等の無機ガスを用いることが可能である。無機ガスを用いる場合は、比較的高い発泡倍率の発泡粒子が得られやすいことから、二酸化炭素が好ましい。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0074】
水系分散媒としては水を使用することが好ましい。メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も、水系分散剤として使用することができる。
【0075】
水系分散媒においては、ポリオレフィン系樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤の具体例としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、酸化チタン、塩基性 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が挙げられる。これらの中でも、第三リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが、少ない使用量でも耐圧容器内のポリオレフィン系樹脂粒子を含んでなる水系分散物を安定的に分散させることができるため、より好ましい。
【0076】
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の具体例としては、例えば、N-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型;硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型;および、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型;等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。また、分散助剤として、マレイン酸共重合体塩;ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤;および、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩;等の多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
【0077】
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらには、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種もしくは2種類以上の混合物を用いることが好ましい。また、アルキルスルホン酸塩を使用することがより好ましく、疎水基として炭素数10~18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、ポリオレフィン系樹脂の発泡粒子に付着する分散剤を低減することができるため、特に好ましい。
【0078】
そして、本発明の実施形態においては、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンから選ばれる1種以上と、分散助剤としてn-パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが特に好ましい。
【0079】
分散剤および分散助剤の使用量は、その種類、または用いるポリオレフィン系樹脂の種類および使用量に応じて異なる。通常、分散剤は、水系分散媒100重量部に対して、0.1重量部以上、5重量部以下で配合することが好ましく、0.2重量部以上、3重量部以下で配合することがより好ましい。分散助剤は、水系分散媒100重量部に対して、0.001重量部以上、0.3重量部以下で配合することが好ましく、0.001重量部以上、0.1重量部以下で配合することがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好にするため、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上、100重量部以下で使用することが好ましい。前記構成であれば、ポリオレフィン系樹脂粒子を耐圧容器内で水系分散媒中に安定に分散させることができる。
【0080】
(発泡粒子の製造方法)
本実施形態に係る発泡粒子の製造方法は、上述した実施形態1~4に係る発泡装置を用いて、発泡粒子を製造する工程を有する。例えば図1並びに図2の201および202を参照して説明すると、本実施形態に係る発泡粒子の製造方法は、発泡容器1の予備発泡室Tに発泡粒子を投入する投入工程と、前記発泡粒子を、複数の撹拌翼30により撹拌しつつ、予備発泡室Tへ蒸気を供給して加熱することにより、前記発泡粒子を二段発泡する二段発泡工程と、を含み、撹拌翼30は、少なくとも第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33(第1および第2の羽根)を有し、第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度θおよびθを有する構造になっている。
【0081】
本実施形態に係る発泡粒子の製造方法によれば、撹拌翼30の撹拌により、予備発泡室T内における発泡粒子の上下方向および水平方向の両方の流動性を向上し、発泡粒子が均一に加熱される。このため、発泡倍率のバラツキが小さい二段発泡粒子を得ることができる。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0083】
(まとめ)
本発明の態様1に係る混合装置(予備発泡装置10)は、被混合物を収容する容器(発泡容器1)と、前記被混合物を攪拌する複数の撹拌翼30、30A、30Bと、前記撹拌翼30、30A、30Bを回転させる回転軸20と、を備え、前記撹拌翼(1つの撹拌翼30、または2つの撹拌翼30Aおよび30B)に対して、少なくとも第1および第2の羽根(第1の撹拌羽根32および第2の撹拌羽根33)を有し、前記第1および第2の羽根は、水平面に対して傾斜しているとともに、互いに異なる傾斜角度θおよびθを有し、上面視において、前記第1および第2の羽根は互いに重複しない構成である。
【0084】
本発明の態様2に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様1において、同一の前記撹拌翼30に対して、前記第1および第2の羽根を少なくとも有する構成である。すなわち、前記第1および第2の羽根は、同一の前記撹拌翼30に設けられている構成である。
【0085】
本発明の態様3に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様1において、前記第1の羽根(第1の撹拌羽根32)が設けられている前記撹拌翼30Aと前記第2の羽根(第2の撹拌羽根33)が設けられている前記撹拌翼30Bとは、互いに異なる構成である。すなわち、前記第1の羽根(第1の撹拌羽根32)および第2の羽根(第2の撹拌羽根33)は、それぞれ異なる前記撹拌翼30A・30Bに設けられている構成である。
【0086】
本発明の態様4に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様1~3の何れかにおいて、前記第1の羽根(第1の撹拌羽根32)の前記水平面に対する傾斜角度θが鋭角であり、前記第2の羽根(第2の撹拌羽根33)の前記水平面に対する傾斜角度θが鈍角である構成である。
【0087】
本発明の態様5に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様1~4の何れかにおいて、前記撹拌翼30は、水平方向に延在しており、所定の間隔を開けて、前記回転軸20に多段に配置されている構成である。当該混合装置は、特に前記態様3においては、前記第1の羽根が設けられている前記撹拌翼30Aと前記第2の羽根が設けられている前記撹拌翼30Bとは、前記回転軸20の長手方向に、互い違いに多段に配置されている構成であることが好ましい。
【0088】
本発明の態様6に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様5において、前記多段の撹拌翼30、30A、30Bは、螺旋形状を形成するように前記回転軸20に設けられている構成である。
【0089】
本発明の態様7に係る混合装置(予備発泡装置10)は、態様1~6の何れかにおいて、前記回転軸に対し垂直な方向において、前記第1および第2の羽根の長さrおよびrの比率r:rは、5:5~9:1である構成である。
【0090】
本発明の態様8に係る発泡装置(予備発泡装置10)は、前記被混合物は、発泡粒子であり、態様1~7の何れかの混合装置を備えた構成である。
【0091】
本発明の態様9に係る発泡粒子の製造方法は、態様8の発泡装置を用いて、発泡粒子(例えば二段発泡粒子)を製造する工程を有する。
【実施例
【0092】
以下、実施例、参考例、および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されて解釈されるべきではない。
【0093】
図7は、実施例、参考例、および比較例について、使用する予備発泡装置の前提的構成を示す図であり、図7の701は断面図であり、図7の702は内部構成を示す上面図である。図7の701および702に示されるように、実施例、参考例、および比較例の予備発泡装置は、多段の撹拌翼Gが螺旋形状を形成するように回転軸20に設けられている構成が前提となっている。また、発泡容器1の内径φは、290mmである。さらに、撹拌翼Gは、発泡容器1の内壁と離間しており、長さLが282mmである。また、角度αは、30°である。さらに、撹拌翼Gの水平面に対する傾斜角度は45°である。
【0094】
図7の701および702に示された予備発泡装置を使用して、発泡粒子の撹拌混合性を評価した。より具体的には、まず、発泡容器1に白色の発泡粒子および黒色の発泡粒子を上下2層になるように仕込んだ。そして、撹拌回転数75rpmで撹拌翼Gを回転したときの発泡粒子の流動性および撹拌混合性を、2色の発泡粒子の挙動および混色性として可視化して評価した。
【0095】
(実施例)
図7の701および702に示される構成において、撹拌翼Gに図2の201~203に示される撹拌翼30を適用した予備発泡装置を使用して、発泡粒子の流動性および撹拌混合性を評価した。第1の撹拌羽根32の長さrおよび第2の撹拌羽根33の長さrの比率r:rは、7:3であった。また、第1の撹拌羽根32の傾斜角度θは45°であり、第2の撹拌羽根33の傾斜角度θは135°であった。
【0096】
(参考例)
図7の701および702に示される構成において、撹拌翼Gの長さLを250mmに短くした予備発泡装置を使用して、発泡粒子の流動性および撹拌混合性を評価した。
【0097】
(比較例)
図7の701および702に示される予備発泡装置を使用して、発泡粒子の流動性および撹拌混合性を評価した。
【0098】
図8は、実施例、参考例、および比較例における発泡粒子の流動性および撹拌混合性の評価結果を示すイメージ図である。
【0099】
まず、比較例と参考例との比較結果について説明する。図8に示されるように、長さLが短い撹拌翼Gを使用した参考例の方が、長さLが長い撹拌翼Gを使用した比較例よりも早く白色の発泡粒子が上方に出現し混合されていた。このことから、参考例の方が比較例よりも撹拌混合性が良好であることがわかった。
【0100】
また、撹拌翼Gの回転中の側面観察の結果、参考例では、発泡粒子の上側から下側への流動は、参考例では観察されたのに対して、比較例では観察されなかった。比較例では、回転方向への発泡粒子の流動が観察された。
【0101】
このような結果となった理由として、撹拌中の発泡容器1の壁部における発泡粒子の上下方向の流動が、長さLが長い撹拌翼Gにより阻害されることが考えられる。
【0102】
上述の通り、撹拌翼Gの長さLが短い場合、発泡粒子が発泡容器1の中央で上昇する一方、発泡容器1の側壁側では下降する流れが生じて上下混合される。しかし、撹拌翼Gの長さLが長い場合、発泡容器1の側壁側での発泡粒子が下降する流れが阻害される。このため、発泡粒子の撹拌混合性を良好する点では、撹拌翼Gの長さが短い方が有利であると考えられる。
【0103】
一方で、実際の予備発泡装置を用いた二段発泡粒子の生産においては、二段発泡粒子を予備発泡装置外部へ排出する排出工程が必要である。当該排出工程では、撹拌翼Gを回転させながら掃除用エアとともに発泡容器1内の粒子を外部へ排出する。このため、撹拌翼Gの長さLが短い場合、排出工程にて発泡容器1内の粒子が側壁に残る可能性がある。
【0104】
それゆえ、長さLが短い撹拌翼Gを使用した場合、上層と下層との相互移動による発泡粒子の混合性が確保される一方、効率的に粒子を装置外に排出できないおそれがある。また、長さLが長い撹拌翼Gを使用した場合、発泡粒子の混合性は良好ではないが、効率的に粒子を装置外に排出できる。
【0105】
そこで、本願発明者は、上層と下層との相互移動による発泡粒子の混合性が確保されつつ、長さLが長い撹拌翼を考案し、図2の201~203に示される撹拌翼30の構造を開発した。図8に示されるように、撹拌翼Gに撹拌翼30を適用した実施例の方が、長さLが長い撹拌翼Gを使用した比較例よりも格段に早く白色の発泡粒子が上方に出現し混合されていた。このことから、実施例の方が比較例よりも撹拌混合性が良好であることがわかった。さらに、実施例は、長さLが短い撹拌翼Gを使用した参考例と比較しても同等以上の撹拌混合性があることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、被混合物の混合が必要な技術分野、特に樹脂の発泡に撹拌技術を使用する技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 発泡容器(被混合物を収容する容器)
10 予備発泡装置(混合装置)
20 回転軸
30、30A、30B 撹拌翼
32 第1の撹拌羽根(第1の羽根)
33 第2の撹拌羽根(第2の羽根)
θ、θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8