(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】スタンド装置
(51)【国際特許分類】
B62H 1/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B62H1/02 E
(21)【出願番号】P 2021013644
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】山東 雅弥
(72)【発明者】
【氏名】野崎 浩司
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-003333(JP,A)
【文献】実公昭55-016788(JP,Y2)
【文献】登録実用新案第3150111(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、
前記二輪車側に設けられた被ロック部と、
前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、
前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、
前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除され、
前記ストッパは、前記スタンドが収納位置に位置する状態で、前記操作部を上方に変位させることで、前記第1位置から前記第2位置に変位するように、前記スタンドに支持されている、スタンド装置。
【請求項2】
二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、
前記二輪車側に設けられた被ロック部と、
前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、
前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、
前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除され、
前記ストッパは、前記スタンドに対して前記スタンドの長手方向に沿った中心軸周りに回転可能に支持され、
前記操作部は、前記ストッパを前記中心軸周りに回転させる操作を受ける、スタンド装置。
【請求項3】
二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、
前記二輪車側に設けられた被ロック部と、
前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、
前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、
前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除され、
前記スタンドは、前記二輪車に変位可能に支持された長尺状のスタンド本体部と、前記スタンド本体部の長手方向中間部から突出する支持部とを含み、
前記スタンドを前記収納位置及び前記車体支持位置の少なくとも一方に付勢するスタンド付勢部材が前記支持部に連結されており、
前記支持部は、前記ストッパの変位を規制する、スタンド装置。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか1つに記載のスタンド装置であって、
前記ロック部及び前記被ロック部の少なくとも一方に、前記スタンドが前記車体支持位置から前記収納位置に変位する際に、前記ストッパを前記第1位置から前記第2位置に案内させるガイド面が形成されている、スタンド装置。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか1つに記載のスタンド装置であって、
前記ストッパは、第1分割部材と第2分割部材とを含む、スタンド装置。
【請求項6】
請求項1から
請求項5のいずれか1つに記載のスタンド装置であって、
前記ストッパを前記第1位置に向けて付勢するストッパ付勢部材をさらに備えるスタンド装置。
【請求項7】
二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、
前記二輪車側に設けられた被ロック部と、
前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、
前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、
前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除され、
前記スタンドを変位可能に支持するスタンドブラケットが締結具を介して前記二輪車に固定され、
前記被ロック部が前記締結具を介して前記二輪車に固定されている、スタンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、スタンド装置及びスタンド用ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スタンドに先端部が滑らかな駒形に形成された錠片を支持し、スタンドが収納された状態で、錠片の先端部をスタンドブラケット側のストッパに掛け止めるようにしたスタンド係止装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レース場などの特殊環境下においては、スタンドが展開することを防ぐことが要請される場合がある。このような特殊環境下でもスタンドの展開を防ぐ構造が望まれる。
【0005】
本開示は、二輪車のスタンドの展開を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
スタンド装置は、二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、前記二輪車側に設けられた被ロック部と、前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、を備え、前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除されるものである。
【0007】
このスタンド装置によると、操作部によってストッパを第1位置から第2位置に変位操作するまでは、ロック部が被ロック部に係止した状態に保たれる。このため、スタンドの展開を防ぐことができる。また、操作部に対する明確な操作がある場合に限り、スタンドが変位する構成となるため、操作部への明確な操作意思がない場合に、不所望にスタンドを車体支持位置に変位させることを抑制できる。
【0008】
また、スタンド用ストッパ装置は、二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドを前記収納位置に保つためのスタンド用ストッパ装置であって、前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパを備え、前記ストッパは、前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記二輪車側に設けられた被ロック部に係止し、前記第2位置で前記被ロック部に対する係止を解除するロック部と、前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付ける操作部とを含み、前記ストッパは、前記操作部に対する前記スタンドの変位方向とは異なる方向の変位操作を受付けることで、前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位して、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックを解除するものである。
【0009】
このストッパ装置によると、操作部によってストッパを第1位置から第2位置に変位操作するまでは、ロック部が被ロック部に係止した状態に保たれる。このため、スタンドの展開を防ぐことができる。また、操作部に対する明確な操作がある場合に限り、スタンドが変位する構成となるため、操作部への明確な操作意思がない場合に、不所望にスタンドを車体支持位置に変位させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
二輪車のスタンドの展開が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るスタンド装置を備える自動二輪車の全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係るスタンド装置及びスタンド用ストッパ装置について説明する。スタンド装置は、二輪車に設けられる。二輪車は、2つの車輪を有する車両である。2つの車輪は、車両の走行方向に並ぶように設けられるため、左右方向に倒れ得る。スタンド装置は、当該二輪車が倒れないように支える装置である。以下の実施形態では、二輪車が自動二輪車である例が説明される。
【0013】
図1はスタンド装置30を備える自動二輪車10の全体構成を示す側面図である。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪18及び後輪24が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、ユーザが運転者として自動二輪車10に乗った状態で、当該ユーザを基準とする左右が自動二輪車10の左右である。幅方向という場合、左右の車幅方向である。
【0014】
自動二輪車10では、車体フレーム11の前側に前輪18が回転可能に設けられる。車体フレーム11の後側に後輪24が回転可能に設けられる。車体フレーム11には、動力ユニットとしてエンジン20が搭載されている。エンジン20の駆動によって後輪24が回転駆動される。動力ユニットは、電動モータ等であってもよい。
【0015】
車体フレーム11における前後方向中間部の上側にシート21が設けられている。シート21に対して前側に燃料タンク22が設けられている。車体フレーム11の前側にハンドル17が設けられている。このため、シート21に跨った運転者が前方を向いた状態でハンドル17を操作することができる。
【0016】
ハンドル17が操作されることによって、前輪18の向きが変更される。ここでは、車体フレーム11の前部にヘッドパイプ12が設けられている。ヘッドパイプ12には、ステアリングシャフト13が回転可能に挿通されている。ステアリングシャフト13には、アッパーブラケット14とアンダーブラケット15とが支持されている。アッパーブラケット14とアンダーブラケット15とによって、フロントフォーク16が下方に向けて延在するように支持されている。フロントフォーク16の下端部に前輪18が回転可能に支持されている。
【0017】
ハンドル17が、アッパーブラケット14及びアンダーブラケット15の少なくとも一方に支持されている。ハンドル17が操作されると、ステアリングシャフト13、アッパーブラケット14、アンダーブラケット15及びフロントフォーク16がヘッドパイプ12の軸周りに回転する。この回転と共に、前輪18もヘッドパイプ12の軸周りに回転して、前輪18の向きが変る。
【0018】
後輪24は、車体フレーム11の後部から後方に向けて延びるスイングアーム23によって回転可能に支持される。
【0019】
スタンド装置30は、自動二輪車10の下部に設けられる。本実施形態では、スタンド装置30は、自動二輪車10の一側、ここでは、左側の下部に設けられる。このため、自動二輪車10は、前輪18及び後輪24が地面に接する部分を中心として一側(左側)に傾いた状態(通常はわずかに傾いた状態)で、スタンド装置30によって支えられる。
【0020】
スタンド装置30が設けられる箇所は、自動二輪車10を支えることができる箇所であればよく、特に限定されない。
図1では、エンジン20の一側下部にスタンド装置30が設けられる例が示される。エンジン20のうちの下側後部に、ステップ26及びシフトペダル27が設けられる。ステップ26は、運転者が運転中に足を載せる部分である。シフトペダル27は、ステップ26よりも前側に設けられている。運転者がステップ26を上下に変位操作することで、エンジン20から後輪24に動力を伝達するトランスミッションのギヤチェンジがなされる。スタンド装置30のスタンド40が収納された状態で、上記ステップ26及びシフトペダル27の下方で、スタンド40がエンジン20の後方に向けて延びる姿勢となる。よって、運転者は、シート21に跨ったまま、ステップ26に載せていた足を下方に移動させて、スタンド装置30に対する操作を行うことができる。もちろん、運転者は、自動二輪車10から降りて、スタンド装置30に対する操作を行ってもよい。
【0021】
図2はスタンド装置30を示す側面図である。
図3はスタンド装置30を示す部分側面図である。
図2は自動二輪車10の左外側から見た図であり、
図3は自動二輪車10の幅方向内側(中央側)から見た図である。
図4は
図3のIV-IV線における断面図である。
【0022】
スタンド装置30は、スタンド40と、ストッパ50と、被ロック部80とを備える。スタンド40は、自動二輪車10に対して収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されている。スタンド40が収納位置に変位した状態(
図1及び
図2において実線で示されるスタンド40参照)で、自動二輪車10が走行する。スタンド40が車体支持位置に変位した状態(
図1及び
図2において2点鎖線で示されるスタンド40参照)で、スタンド40が自動二輪車10をその一側から支持する。これにより、自動二輪車10が立った状態に保たれる。ストッパ50は、被ロック部80に係止した状態で、スタンド40を収納位置に保つ部材である。また、ストッパ50に対して変位操作を加えることで、被ロック部80に対するストッパ50の係止が解除され、スタンド40が車体支持位置に変位することができるようになる。
【0023】
各部構成についてより具体的に説明する。
【0024】
スタンド40は、自動二輪車10に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持される。車体支持位置は、スタンド40が自動二輪車10による支持箇所から下方又は斜め下方に延びる姿勢である。車体支持位置において、スタンド40の先端部が前輪18及び後輪24のうち地面に接地する箇所から一側方外側に位置する状態となる。これにより、自動二輪車10が、前輪18及び後輪24の二箇所の接地箇所に加えて、スタンド40の先端部の接地箇所でも支持されることになり、立った状態に支持される。収納位置は、スタンド40の先端部が、上記車体支持位置におけるスタンド40の先端部の位置よりも上方に配置される位置である。収納位置は、自動二輪車10の走行中において、地面に対する接触を避ける位置であると捉えられてもよい。
【0025】
より具体的には、スタンド40は、細長い形状に形成されたスタンド本体部41を含む。スタンド本体部41の基端部は、自動二輪車10に回転可能に支持されている。スタンド本体部41が基端部を中心として回転することによって、車体支持位置においてスタンド本体部41の先端部が地面に近づき、収納位置においてスタンド本体部41の先端部が地面から離れる。
【0026】
ここでは、スタンド40は、スタンドブラケット70を介して自動二輪車10に固定される。スタンドブラケット70は、例えば、金属板によって形成される。スタンドブラケット70の一部(
図2では上部)にはネジ挿通孔71hが形成される。締結具の一例であるネジS1がネジ挿通孔71hに挿通されて、エンジン20に形成されたネジ孔に締付けられることで、スタンドブラケット70がエンジン20に固定される。この状態で、スタンドブラケット70の他の一部(
図2では下部)がエンジン20から下方にはみ出ていてもよい。なお、スタンドブラケット70を自動二輪車10に固定するためのネジ挿通孔71h及びネジS1の数及び位置は任意である。
図1では、前後に離れた二箇所にネジ挿通孔71h及びネジS1が設けられる例が示される。なお、締結具は、ボルトを含むネジの他、リベットであってもよい。
【0027】
スタンドブラケット70の下部のうちの前寄りの部分が他の部分から下方に突出して、スタンド支持部72に形成される。スタンド支持部72のうち後ろ寄りの部分にネジ挿通孔73hが形成されている。スタンド本体部41の基端部は、扁平な形状に形成されており、その偏平形状部分にネジ挿通孔41hが形成される。なお、スタンド本体部41のうち長手方向中間部及び先端側の部分は、丸棒状に形成されてもよい。また、スタンド本体部41の先端部は、当該スタンド40が車体支持位置に変位した状態で、地面に対して平行な方向に扁平な部分に形成されていてもよい。
【0028】
そして、スタンド本体部41の基端部がスタンド支持部72に重ね合わされた状態で、締結具の一例であるネジS2がネジ挿通孔41h及びネジ挿通孔73hに挿通される。ネジS2の先端部が、スタンド本体部41の基端部とは反対側で、スタンドブラケット70から突出してナットNに螺合締結する。これにより、スタンド本体部41がネジS2の中心軸周りに回転可能に支持される。スタンド本体部41の先端部が下方に向う状態、より具体的には、スタンド本体部41の先端部がネジS2の真下よりも前方に位置する斜め姿勢となった状態が、車体支持位置である。また、スタンド本体部41の先端部が後方に向う状態が収納位置である。
【0029】
スタンド40の回転範囲は、例えば、次の構成によって、車体支持位置と収納位置との間で規制されてもよい。すなわち、スタンド支持部72のうちの前寄り部分はさらに下方に突出して規制片72aに形成される。スタンドブラケット70の下部のうちスタンド支持部72よりも前側部分がスタンド支持部72よりも小さい突出寸法で突出する規制突出部72bに形成される。
【0030】
スタンド本体部41の基端寄りの部分のうちネジ固定部分からスタンドブラケット70の下方に延び出る部分は、スタンドブラケット70側に突出する突出部42を含む。突出部42は、例えば、スタンド40を部分的に曲げることによって形成されてもよい。
【0031】
そして、スタンド本体部41が上記車体支持位置に回転すると、突出部42が規制片72aのうち後側縁に接触し、それよりも前方向への回転が規制される。また、スタンド本体部41が上記収納位置に回転すると、突出部42が規制突出部72bの下側縁に接触し、それよりも上方向への回転が規制される。つまり、突出部42が規制片72aと規制突出部72bとの間で動ける範囲で、スタンド40がネジS2の中心軸周りに回転することができる。
【0032】
このスタンド40は、スタンド付勢部材48によって、収納位置及び車体支持位置の少なくとも一方に付勢されている。より具体的には、スタンド40は、上記スタンド本体部41と、支持部44とを含む。支持部44は、スタンド本体部41の長手方向中間部から突出する形状に形成される。ここでは、支持部44は、スタンド本体部41に対して直交する方向に突出している。なお、支持部44の突出方向は任意である。スタンド本体部41が収納位置にある状態で、支持部44は、スタンドブラケット70よりも後方に位置に設けられてもよい。
【0033】
また、自動二輪車10側には、付勢部支持部74が設けられている。ここでは、付勢部支持部74は、スタンドブラケット70から突出するように形成されている。より具体的には、付勢部支持部74は、スタンドブラケット70のうち自動二輪車10の幅方向中央を向く面に、自動二輪車10の幅方向中央に向けて突出するように形成されている。
【0034】
スタンド付勢部材48は、細長く、かつ、弾性的に伸縮変形可能な部材である。スタンド付勢部材48は、例えば、コイルばねである。スタンド付勢部材48は、その他、ゴム等であってもよい。スタンド付勢部材48の一端部が上記付勢部支持部74に連結され、スタンド付勢部材48の他端部が上記支持部44に連結されている。連結は、例えば、スタンド付勢部材48の端部をJ字状に形成し、そのJ字状部分を、付勢部支持部74又は支持部44に引っ掛けることによってなされてもよい。付勢部支持部74と支持部44との間で、スタンド付勢部材48は弾性的に伸長された状態とされている。付勢部支持部74の位置は、スタンド本体部41を回転可能に支持するネジS2の中心軸とは別の位置であればよい。付勢部支持部74の位置が、車体支持位置におけるスタンド本体部41の中心軸の延長線に対して収納位置とは反対側に設定されていてもよい。この場合、スタンド付勢部材48は、車体支持位置に位置するスタンド本体部41を、収納位置から遠ざかる方向に付勢して、車体支持位置に維持することができる。また、スタンド本体部41が収納位置から車体支持位置に変位する途中で、スタンド付勢部材48とスタンド本体部41とが同一直線上に揃う状態を超えると、スタンド付勢部材48の付勢力によってスタンド本体部41を車体支持位置に向けて移動させることができる。また、付勢部支持部74の位置が、収納位置におけるスタンド本体部41の中心軸の延長線に対して車体支持位置とは反対側に設定されていてもよい。この場合、スタンド付勢部材48は、収納位置に位置するスタンド本体部41を、車体支持位置から遠ざかる方向に付勢することができる。また、スタンド本体部41が車体支持位置から収納位置に変位する途中で、スタンド付勢部材48とスタンド本体部41とが同一直線上に揃う状態を超えると、スタンド付勢部材48の付勢力によってスタンド本体部41を収納位置に向けて移動させることができる。なお、スタンド付勢部材48は、1本のみ設けられてもよいし、複数本設けられてもよい。
【0035】
ストッパ50が第1位置と第2位置との間で変位可能にスタンド40に支持される。被ロック部80は、自動二輪車10側に設けられる。ストッパ50は、ロック部56と、操作部58とを含む。スタンド40が収納位置に変位した状態において、ストッパ50が第1位置に位置することで、ロック部56が被ロック部80に係止した状態となる。これにより、スタンド40が収納位置から車体支持位置に変位することが抑制される。また、この状態で、操作部58に対する変位操作を受付けることで、ストッパ50が第1位置から第2位置に変位することができる。ストッパ50が第2位置に向けて変位することで、ロック部56が被ロック部80に対する係止を解除する。これにより、スタンド40は、収納位置から車体支持位置に変位することができるようになる。
【0036】
より具体的には、ストッパ50は、ストッパ本体部51と、ロック部56と、操作部58とを含む。
【0037】
ストッパ本体部51は、スタンド40に変位可能に支持される部分である。ここでは、ストッパ本体部51は、スタンド本体部41を貫通状態で配置可能な筒形状に形成される。ストッパ本体部51の内周面は、スタンド本体部41の外周面に応じた形状、例えば、円周面形状に形成されてもよい。スタンド本体部41の外周面形状は、内周形状に応じた形状、即ち、円周面形状に形成されてもよい。ここでは、ストッパ本体部51は、円筒状に形成される。
【0038】
スタンド本体部41がストッパ本体部51を貫通し、スタンド本体部41の長手方向中間部にストッパ本体部51が支持される。スタンド本体部41におけるストッパ本体部51の支持位置は、スタンド本体部41が収納位置にある状態で、前後方向においてスタンドブラケット70よりも後方である。この状態で、ストッパ本体部51は、スタンド本体部41の中心軸周りに回転して、第1位置と第2位置との間で変位することができる。第1位置及び第2位置は、被ロック部80に対するロック部56の位置に応じて決る。
【0039】
ロック部56は、ストッパ本体部51の外周りの一部から外方に突出する。より具体的には、ロック部56は、ストッパ本体部51のうちスタンド本体部41の基端寄りの部分から外周側に突出するように形成される。ロック部56のうちストッパ本体部51から遠い側の端部には、スタンド本体部41の基端側に向けて突出するロック端部57が形成される。ロック端部57は、スタンド本体部41からその径方向外側に離れた位置に配置される。そして、ロック端部57のうちスタンド本体部41側の下向き面57fが、被ロック部80と接触することで、ロック部56が被ロック部80にロックした状態となり、スタンド40が収納位置から車体支持位置に向けて変位することが規制される。
【0040】
ここで、上記第1位置は、スタンド40が収納位置に変位した状態において、ロック部56が被ロック部80に係止する位置である。また、上記第2位置は、スタンド40が収納位置に変位した状態において、ロック部56が被ロック部80に対する係止を解除する位置である。本実施形態においては、被ロック部80は、収納位置に位置するスタンド40に対して上側に設けられる。より具体的には、被ロック部80は、収納位置に位置するスタンド40の中心軸の上方に設けられる。そして、ロック部56が被ロック部80に対して上方から接触することで、ロック部56が被ロック部80にロックされる。このため、本実施形態における第1位置は、ロック部56がスタンド本体部41の周りにおいてスタンド本体部41の中心軸の上方に位置して、上記被ロック部80に対して上方から対向する位置である。また、本実施形態における第2位置は、ロック部56がスタンド本体部41の周りにおいてスタンド本体部41の中心軸の真上からずれ、上記被ロック部80に対してもスタンド本体部41の周方向に沿ってずれる位置である。本実施形態では、第2位置では、ロック部56は、被ロック部80に対して車幅方向内側(中央側)にずれた位置に配置される。
【0041】
操作部58は、ストッパ50に対する第1位置から第2位置への変位操作を受付ける部分である。ここでは、操作部58は、ストッパ本体部51の外周部の一部から外方に突出する。より具体的には、操作部58は、ストッパ50が第1位置に変位した状態で、ストッパ本体部51のうち車幅方向外側を向く部分から車幅方向外側に向って突出している。ロック部56と操作部58とはスタンド本体部41の中心軸を中心として90度以上離れた位置に設けられてもよい。
【0042】
操作部58が車幅方向外側に向って突出しているため、スタンド40が収納位置に位置する状態で、操作部58を上方に変位させると、操作部58は、ストッパをスタンド本体部41の中心軸周りに回転させる力を受けることができる。これにより、ストッパ50がスタンド本体部41の中心軸周りに回転し、第1位置から第2位置に変位する。このため、ストッパ50に対する変位操作が容易となる。例えば、足先でスタンド本体部41の先端部を押下げつつ、足の前後方向中央部又はかかと寄りの部分で操作部58を押上げるといった操作も容易に行われ得る。
【0043】
操作部58は、扁平な形状に形成されている。操作部58は、前方に向うのに連れて下方に向うように傾いていてもよい。この場合、前方に向うのに連れて下方に向う形状である足の甲を、操作部58の下面に沿って配置し易くなり、当該足の甲による操作部58の押上げ作業が容易に行われ得る。例えば、かかとでスタンド本体部41の先端部を押下げつつ、つま先の甲を操作部58の下面に押し当てて操作部58を押上げる操作が容易に行われ得る。また、操作部58は、車幅方向に外側に向うのに従って下方に向うように傾いていてもよい。この場合、操作部58をスタンド本体部41の中心軸周りに回転させても、操作部58をスタンド本体部41の外側に突出させる量を大きく保つことができ、操作部58に対する押上げ作業が容易に行われ得る。ストッパは、その他の形状、例えば、棒状形状に形成されていてもよい。
【0044】
スタンド40の変位方向は、その基端部のネジS2の中心軸を中心とする弧に沿った方向である。これに対して、操作部58が操作力を受付ける方向及びストッパ50の変位方向は、スタンド本体部41の中心軸を中心とする弧に沿った方向であり、スタンド40の変位方向とは異なっている。このため、スタンド40を押下げようとする方向の力によっては、ストッパ50が第1位置から第2位置に変位し難く、被ロック部80に対するロック部56の意図しない解除が抑制される。
【0045】
ストッパ50は、支持部44によって第1位置と第2位置との間で変位可能に規制されてもよい。
【0046】
すなわち、ストッパ本体部51の軸方向中間部に、その周方向に沿った部分溝51gが形成される。部分溝51gは、ストッパ本体部51の内周側と外周側とに貫通している。スタンド本体部41から突出する支持部44は当該部分溝51gを通ってストッパ本体部51の外周側に突出することができる。支持部44の基端部が部分溝51g内に配置されることで、スタンド本体部41の軸方向に対するストッパ本体部51の位置決めがなされる。
【0047】
ストッパ50が第1位置に変位した状態で支持部44の基端部が部分溝51gの一端部に当接し得る。ストッパ50が第2位置に変位した状態で支持部44の基端部が部分溝51g内の他端部寄りに位置することができる。本実施形態では、支持部44はスタンド本体部41の長手方向中間部から車幅方向内側に向けて突出している。ストッパ50が第1位置に変位した状態で、部分溝51gは、ストッパ本体部51の車幅方向内側に向う部分から上方に向う細長い溝形状に形成されている。この状態では、支持部44は、部分溝51gのうち下側の端部に接触し得る。このため、第1位置から第2位置に向う方向とは反対側への回転(ロック部56を車幅方向外側に移動させる方向への回転、操作部58を下側に移動させる方向への回転)が規制される。第1位置に位置する状態において、操作部58を押上げると、支持部44が部分溝51g内を移動して部分溝51gの他端部に向けて移動することができる。これにより、ストッパ50が第1位置から第2位置に変位することができる。ストッパ50が第2位置に位置する状態で、支持部44が部分溝51gの延在方向中間部に位置してもよいし、他端部に接してもよい。このように、支持部44が部分溝51g内を移動することによって、ストッパ50の変位を規制することができる。
【0048】
ストッパ50の変位を規制する構成は上記例に限られず、移動方向及び移動範囲を規制する各種構成が採用され得る。例えば、スタンド本体部41に、ストッパ本体部51を両側から挟む鍔部が形成されることで、スタンド本体部41の中心軸方向におけるストッパ50の位置決めがなされてもよい。この場合に、ストッパ本体部51及び鍔部に、ストッパ本体部51が所定範囲回転することで互いに当接し合う突部が形成されてもよい。
【0049】
スタンド装置30は、ストッパ50を第1位置に向けて付勢するストッパ付勢部材60をさらに備える。本実施形態では、ストッパ付勢部材60は、Oリング等の環状弾性部材である。ストッパ50に当該ストッパ付勢部材60を連結可能な付勢用固定突部59が突設される。付勢用固定突部59は、ストッパ本体部51の外周方向において、支持部44とは反対側に離れた位置に突設される。そして、ストッパ付勢部材60が上記支持部44とストッパ付勢部材60と引っ掛けられ、それらの弾性的に伸長した状態とされる。このため、ストッパ付勢部材60は、支持部44に対してストッパ付勢部材60を近づける方向に付勢する。これにより、ストッパ50が第2位置から第1位置に向けて付勢される。ストッパ付勢部材60は、環状弾性部材でなくてもよく、例えば、コイルばね、板ばね等であってもよい。
【0050】
ストッパ50は、第1分割部材50Aと、第2分割部材50Bとを含む構成であってもよい。例えば、第1分割部材50Aは、上記ストッパ本体部51を2分割した2つの分割部材のうちの一方と、上記ロック部56とを含む部分である。第2分割部材50Bは、ストッパ本体部51を2分割した2つの分割部材のうちの他方と、上記操作部58とを含む部分である。この場合において、ストッパ本体部51は、中心軸を含む面で2分割されていてもよい。
【0051】
第1分割部材50Aと第2分割部材50Bとは、間にスタンド本体部41を配置した状態で、合体される。合体は、ネジ、リベット等の締結具によってなされてもよい。本実施形態では、第1分割部材50Aの外周部のうち合体面の隣にネジ挿通孔を有するネジ止部50Apが突設される。また、第2分割部材50Bの外周部のうち合体面の隣であって上記ネジ止部50Apと対向する部分にネジ孔を有するネジ止部50Bpが突設される。そして、間にストッパ本体部51を配置した状態で、第1分割部材50Aと第2分割部材50Bが突合わされる。この状態で、ネジS3がネジ止部50Apのネジ挿通孔に挿通されると共に、ネジ止部50Bpのネジ孔に螺合締結される。これにより、第1分割部材50Aと第2分割部材50Bとが合体して、スタンド40に支持される。
【0052】
ストッパ50が複数の部材の合体によって構成される必要は無く、単一の部材によって構成されていてもよい。
【0053】
被ロック部80は、自動二輪車10に対して後付された部分であってもよい。本実施形態では、ベース部82と、被ロック端部84とを含む。ベース部82は、板状に形成されており、スタンドブラケット70の外向き面に重ね合せ可能に構成されている。ベース部82にネジS1を挿通可能なネジ挿通孔82hが形成される。ベース部82の外周部にスタンドブラケット70の縁に接触可能な回り止片82aが突設される。ベース部82のネジ挿通孔82hを、スタンドブラケット70のネジ挿通孔71hに一致させるようにして、ベース部82がスタンドブラケット70に重ね合わされる。この状態で、スタンドブラケット70を固定するための締結具の一例であるネジS1がネジ挿通孔82h、71hに挿通されて、自動二輪車10側のネジ孔、ここでは、エンジン20のネジ孔に螺合締結される。これにより、被ロック部80が自動二輪車10に対して固定される。この状態で、回り止片82aがスタンドブラケット70の縁に接触することで、被ロック部80の回転止がなされる。このため、被ロック部80の締結固定箇所が一箇所であったとしても、被ロック部80の回転止がなされる。
【0054】
スタンド40が収納位置に変位しかつストッパ50が第1位置に変位している状態において、ベース部82からロック端部57の下側に向けて被ロック端部84が延出する。スタンド40が収納位置に変位した状態で、前後方向におけるベース部82とストッパ本体部51との間で、被ロック端部84とロック端部57とが上下で対向し合うことができる。より具体的には、被ロック端部84の上向き面84fがロック端部57の下向き面57fに対して下側から対向することができる。これにより、被ロック端部84がロック端部57を下から支えて当該ロック端部57が下方に移動しないように規制する。被ロック端部84に対して車幅方向内側の部分は、他の自動二輪車10の構成部品が存在しない空き空間とされている。これにより、ロック端部57は、被ロック端部84に対して車幅方向内側に向けて移動することができる。
【0055】
また、ロック部56及び被ロック部80の少なくとも一方に、スタンド40が車体支持位置から収納位置に変位する際に、ストッパ50を第1位置から第2位置に案内するガイド面57g、84gが形成される。本実施形態では、スタンド40が車体支持位置から収納位置に変位する際、ロック端部57の上部が被ロック端部84の下部に接触し合う。このため、ロック端部57の上部にガイド面57gが形成される。また、被ロック端部84の下部にガイド面84gが形成される。
【0056】
ガイド面57gは、スタンド40が車体支持位置から収納位置に変位する際に、被ロック端部84に接触することによって、ロック端部57を第2位置側に逃すようにガイドする形状に形成されている。本実施形態では、ガイド面57gは、車幅方向外側に向うのに連れて下に向う形状に形成されている。
【0057】
ガイド面84gは、スタンド40が車体支持位置から収納位置に変位する際に、ロック端部57に接触することによって、ロック端部57を第2位置側に逃すようにガイドする形状に形成されている。本実施形態では、ガイド面84gは、車幅方向外側に向うのに連れて下に向う形状に形成されている。
【0058】
ガイド面57gとガイド面84gとが接触し合うことによって、ロック端部57を第1位置側に逃す方向に移動させるため、ガイド面57gとガイド面84gとの傾きは同じ方向である。ガイド面57gとガイド面84gとの両方又は一方が省略されてもよい。
【0059】
本実施形態では、ガイド面57gは、前方に向うに連れて下方に向う形状に形成されているが、これは必須ではない。また、ガイド面84gは、後方に向うに連れて上方に向う形状に形成されているが、これも必須ではない。
【0060】
スタンド用ストッパ装置は、上記ストッパ50を備える装置と把握されてもよい。スタンド用ストッパ装置は、ストッパ50に加え、上記ストッパ付勢部材60及び被ロック部80のうちの少なくとも1つを備える装置として把握されてもよい。
【0061】
このスタンド装置30の動作について説明する。
【0062】
図2から
図4に示すように、スタンド40が収納位置に変位した状態では、ストッパ50が第1位置に変位している。なお、スタンド付勢部材48によってスタンド40は収納位置に向けて付勢されている。また、ストッパ50は、ストッパ付勢部材60の付勢力F1によって第1位置に向けて付勢されている。この状態では、ロック端部57の下向き面57fが被ロック端部84の上向き面84fに向い合って接した状態となることで、ロック部56が被ロック部80に係止した状態となっている。このため、スタンド40自体に車体支持位置に向う力が加わったとしても、スタンド40の変位は抑止される。また、仮にスタンド付勢部材48の不具合によってスタンド付勢部材48による付勢力が無くなったとしても、スタンド40の変位は抑止される。この観点から、スタンド付勢部材48の不具合に備えてスタンド付勢部材48を複数本用いず、1つだけ用いた構成とすることができる。これにより、スタンド装置30の軽量化が可能となる。
【0063】
この状態で、
図4及び
図5に示すように、操作部58が、ストッパ50を第1位置から第2位置へ変位させる変位操作F2を受付ける。すると、矢符A1に示すように、ストッパ50が第1位置から第2位置に向けて変位する。ここでは、ロック部56を車幅方向内側に移動させるように、ストッパ50がスタンド本体部41の中心軸周りに回転する。すると、ロック端部57が被ロック部80から外れた位置に配置され、被ロック部80に対するロック部56の係止が解除される。この状態で、スタンド40を押下げることによって、矢符A2に示すように、スタンド40が収納位置から車体支持位置に変位することができる。スタンド40が収納位置から車体支持位置に向う途中位置を超えるまでは、スタンド付勢部材48の付勢力に抗してスタンド40が押下げられる。スタンド40が前記途中位置を超えると、スタンド付勢部材48がスタンド40を車体支持位置に向けて付勢するので、当該スタンド付勢部材48の付勢力によってスタンド40が車体支持位置に変位することができる。
【0064】
上記操作部58に対する変位操作は、スタンド本体部41の中心軸周りの変位操作であり、上記スタンド40が車体支持位置に向かう変位操作方向とは異なっている。このため、操作部58を変位させるためには、スタンド40を変位させるための操作とは明らかにことなった方向への力を加えることになる。このため、スタンド40が不用意に車体支持位置に変位することが抑制さえる。
【0065】
上記とは逆にスタンド40の先端部を押上げることによって、スタンド40が車体支持位置から収納位置に変位することができる。この際、スタンド40が車体支持位置から収納位置に向う途中位置を超えるまでは、スタンド付勢部材48の付勢力に抗してスタンド40を押下げる。スタンド40が前記途中位置を超えると、スタンド付勢部材48がスタンド40を収納位置に向けて付勢するので、スタンド40は、操作力を加えなくても、スタンド付勢部材48の付勢力によってスタンド40が収納位置に向うことができる。
【0066】
スタンド40が収納位置に達する前に、ロック端部57が被ロック端部84に下側から接触する。この際、
図6に示すように、スタンド40を押上げる操作力及びスタンド付勢部材48による付勢力のうちの少なくとも一方の力F3によって、ロック端部57のガイド面57gが被ロック端部84のガイド面84gに押し当てられる。上記力F3は、ロック端部57を被ロック端部84から外れる方向(車幅方向内側)に移動させる力F4に変換され、もって、ストッパ50が矢符A3に示すように、第1位置から第2位置に向けて案内される。これにより、ロック端部57が被ロック端部84を超えて上側に位置することができるように、スタンド40が収納位置に変位することができる。スタンド40が収納位置に達すると、ストッパ付勢部材60の付勢力によって、ストッパ50は第1位置に戻ることができる。これにより、ロック端部57が被ロック端部84に対して向い合い、被ロック部80に対してロック部56が係止した状態となる。
【0067】
このように構成されたスタンド装置30及びスタンド用ストッパ装置によると、操作部58によってストッパ50を第1位置から第2位置に変位操作するまでは、ロック部56が被ロック部80に係止した状態に保たれる。このため、スタンド40の展開を防ぐことができる。また、スタンド40を押下げようとする操作とは異なる、操作部58に対する明確な操作がある場合に限り、スタンド40が変位する構成となるため、操作部58への明確な操作位置が無い場合に、不所望にスタンド40が車体支持位置に変位することが抑制される。
【0068】
また、操作部58を上方に変位させることで、ストッパ50が第1位置から第2位置に変位する。このため、スタンド40を押下げる力とは逆方向の力を操作部58に加えることによって、ストッパ50を第2位置に変位させて、ロック部56の係止を解除できる。このため、操作部58に対する明確な操作がある場合に限り、スタンド40が変位する構成となるため、不所望にスタンド40が車体支持位置に変位することがより確実に抑制される。
【0069】
また、ストッパ50は、スタンド40に、その中心軸周りに回転可能に支持され、操作部58は、ストッパ50を前記中心軸周りに回転させる操作を受ける。このため、スタンド40を押下げるように変位操作しつつ、ストッパ50の周りでストッパ50を回転させる変位操作を容易に行える。
【0070】
また、ストッパ50の変位は、スタンド付勢部材48を支持する支持部44によって規制されている。このため、簡易な構成によって、ストッパ50の変位を規制することができる。
【0071】
また、スタンド40が収納位置に向う際に、ロック部56と被ロック部80とが接触し合うと、ガイド面57g、84gによって、ストッパ50が第1位置から第2位置に向けて案内される。このため、スタンド40が収納位置に向う際には、操作部58による操作を加えなくても、ロック部56が被ロック部80を超えて被ロック部80に容易に係止することができる。
【0072】
また、ストッパ50は、第1分割部材50Aと第2分割部材50Bとを含む構成とされている。このため、ストッパ50を、スタンド40に対して容易に後付できる。例えば、スタンド本体部41の先端部に扁平部分が形成される場合、スタンド本体部41の長手方向中間部の支持部44を利用してストッパ50の変位方向の規制を行う構成においても、ストッパ50を分割構成することによって、ストッパ50をスタンド40に容易に後付できる。
【0073】
また、ストッパ付勢部材60によってストッパ50を第1位置に保つことができる。また、スタンド40を収納位置に変位させると、ストッパ付勢部材60によってストッパ50が第1位置に保たれるため、ストッパ50を第1位置に変位させる操作は不要である。このため、ストッパ50を収納位置に変位させる際に、力を加える範囲を少なくできる。
【0074】
また、被ロック部80は、スタンドブラケット70を固定するための締結具であるネジS1を介して自動二輪車10に固定される。このため、スタンドブラケット70を固定するための締結具と被ロック部80を固定する固定部材とを共通化することができ、部品点数を削減できる。また、被ロック部80を後から追加固定する作業も容易となる。
【0075】
本実施形態に係るスタンド装置30は、自動二輪車10の一側で当該自動二輪車10を支えるサイドスタンドタイプの例が説明された。しかしながら、本実施形態で説明されたストッパに係る構成は、自動二輪車10の幅方向中心に対して両側で支えるセンタースタンドタイプのスタンド装置に対しても適用可能である。
【0076】
本実施形態では、ストッパ50がスタンド本体部41の中心軸周りに回転して第1位置と第2位置との間で変位する例が説明された。ストッパの変位は当該例に限られない。例えば、ストッパがスタンドの中心軸に沿って移動して第1位置と第2位置とで変位する構成であってもよい。
【0077】
本実施形態では、被ロック部80は、スタンドブラケット70を締結固定するための締結具の一例であるネジS1を利用して自動二輪車10に固定される例が説明された。被ロック部80は、専用の固定具を利用して自動二輪車10に固定されてもよい。また、自動二輪車10の既存部品、例えば、スタンドブラケット70に被ロック部80が一体形成されてもよい。また、自動二輪車10の構成部品に被ロック部とするのに適した既存形状部分(例えば、部品固定用のブラケット、ネジ等)が存在するのであれば、当該既存形状部分が被ロック部として用いられてもよい。
【0078】
本明細書及び図面に下記の各態様が開示される。
【0079】
第1の態様は、二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドと、前記二輪車側に設けられた被ロック部と、前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパと、を備え、前記ストッパは、前記被ロック部に係止可能なロック部と、前記ストッパに対する変位操作を受付ける操作部とを含み、前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記ロック部が前記被ロック部に係止し、前記第2位置で前記ロック部が前記被ロック部に対する係止を解除し、前記操作部が前記スタンドの変位方向とは異なる方向における前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付けて、前記ストッパが前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位することで、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックが解除される、スタンド装置である。
【0080】
このスタンド装置によると、操作部によってストッパを第1位置から第2位置に変位操作するまでは、ロック部が被ロック部に係止した状態に保たれる。このため、スタンドの展開を防ぐことができる。また、操作部に対する明確な操作がある場合に限り、スタンドが変位する構成となるため、操作部への明確な操作意思がない場合に、不所望にスタンドを車体支持位置に変位させることを抑制できる。
【0081】
第2の態様は、第1の態様に係るスタンド装置であって、前記ストッパは、前記スタンドが収納位置に位置する状態で、前記操作部を上方に変位させることで、前記第1位置から前記第2位置に変位するように、前記スタンドに支持されているものである。これにより、スタンドを押下げる力と逆方向の力を操作部に加えることによって、ストッパを第2位置に変位させて、ロック部の係止を解除できる。このため、操作部に対する明確な操作がある場合に限り、スタンドが変位する構成となるため、操作者の明確な操作意思がない場合に、不所望にスタンドを車体支持位置に変位させることを抑制できる。
【0082】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るスタンド装置であって、前記ストッパは、前記スタンドに対して前記スタンドの長手方向に沿った中心軸周りに回転可能に支持され、前記操作部は、前記ストッパを前記中心軸周りに回転させる操作を受けるものである。これにより、スタンドを変位操作する際に、ストッパに対する変位操作を容易に行える。
【0083】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るスタンド装置であって、前記スタンドは、前記二輪車に変位可能に支持された長尺状のスタンド本体部と、前記スタンド本体部の長手方向中間部から突出する支持部とを含み、前記スタンドを前記収納位置及び前記車体支持位置の少なくとも一方に付勢するスタンド付勢部材が前記支持部に連結されており、前記支持部は、前記ストッパの変位を規制するものである。これにより、スタンド付勢部材を支持する支持部によって、ストッパの変位を規制することができる。
【0084】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るスタンド装置であって、前記ロック部及び前記被ロック部の少なくとも一方に、前記スタンドが前記車体支持位置から前記収納位置に変位する際に、前記ストッパを前記第1位置から前記第2位置に案内させるガイド面が形成されているものである。これにより、ガイド面がロック部または被ロック部に設けられることよって、両者が接触した後ストッパが前記第1位置から前記第2位置に案内される。これにより、ロック部が被ロック部を越えて、被ロック部に容易に係止することができる。
【0085】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るスタンド装置であって、前記ストッパは、第1分割部材と第2分割部材とを含むものである。これにより、前記第1分割部材と第2分割部材とが合体した状態で前記スタンドを囲むようにして、ストッパがスタンドに取付けられる。
【0086】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係るスタンド装置であって、前記ストッパを前記第1位置に向けて付勢するストッパ付勢部材をさらに備える。この場合、ストッパ付勢部材によってストッパを第1位置に保つことができる。また、スダンドを車体支持位置から収納位置へ変位させると、ストッパが自動的に第1位置に変位して、ロック部が被ロック部に係止した状態とすることができる。これにより、力を加える対象を少なくしつつ、スタンドを容易に収納位置に保つことができる。
【0087】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係るスタンド装置であって、前記スタンドを変位可能に支持するスタンドブラケットが締結具を介して前記二輪車に固定され、前記被ロック部が前記締結具を介して前記二輪車に固定されているものである。この場合、スタンドブラケットを固定するための締結具と被ロック部を固定する固定部材を共通化することができ、部品点数を削減できる。
【0088】
第9の態様は、二輪車に収納位置と車体支持位置との間で変位可能に支持されたスタンドを前記収納位置に保つためのスタンド用ストッパ装置であって、前記スタンドに第1位置と第2位置との間で変位可能に支持されたストッパを備え、前記ストッパは、前記スタンドが前記収納位置に変位した状態において、前記第1位置で前記二輪車側に設けられた被ロック部に係止し、前記第2位置で前記被ロック部に対する係止を解除するロック部と、前記第1位置から前記第2位置への変位操作を受付ける操作部とを含み、前記ストッパは、前記操作部に対する前記スタンドの変位方向とは異なる方向の変位操作を受付けることで、前記スタンドの変位方向とは異なる方向へ変位して、前記被ロック部に対する前記ロック部のロックを解除する、スタンド用ストッパ装置である。
【0089】
このストッパ装置によると、操作部によってストッパを第1位置から第2位置に変位操作するまでは、ロック部が被ロック部に係止した状態に保たれる。このため、スタンドの展開を防ぐことができる。また、操作部に対する明確な操作がある場合に限り、スタンドが変位する構成となるため、操作部への明確な操作意思がない場合に、不所望にスタンドを車体支持位置に変位させることを抑制できる。
【0090】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0091】
10 自動二輪車
30 スタンド装置
40 スタンド
41 スタンド本体部
44 支持部
48 スタンド付勢部材
50 ストッパ
50A 第1分割部材
50B 第2分割部材
56 ロック部
57g ガイド面
58 操作部
60 ストッパ付勢部材
70 スタンドブラケット
71h ネジ挿通孔
80 被ロック部
82h ネジ挿通孔
84g ガイド面
S1 ネジ