(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
F16F15/02 C
(21)【出願番号】P 2021094926
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-08-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】矢島 翔也
(72)【発明者】
【氏名】武知 桃李
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153182(JP,A)
【文献】特開2006-077793(JP,A)
【文献】特開2003-004095(JP,A)
【文献】特開2004-076765(JP,A)
【文献】特開2014-211225(JP,A)
【文献】特開平08-193640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0271182(US,A1)
【文献】特開2004-028114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材に固定される軸部材と、該軸部材の外周側にゴム製の連結部を介して連結された外筒と、複数の金属板を積層して形成され、該複数の金属板の中央の内部軸方向に前記外筒が挿入される外筒挿入孔が貫通形成されたマス部材と、を備え、
前記外筒を前記外筒挿入孔に圧入して、前記複数の金属板を、前記外筒の外周面にしまり嵌めによって固定すると共に、互いに一体に結合し、
前記マス部材の外筒挿入孔の内周面を、前記外筒挿入孔の軸方向の一端から他端まで拡径テーパ状に形成する一方、
前記外筒の外径を、前記外筒挿入孔の拡径テーパ状の内周面の内径よりも大きく形成したことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
振動部材に固定される軸部材と、該軸部材の外周側にゴム製の連結部を介して連結された外筒と、複数の金属板を積層して形成され、前記外筒の外周側に配置されるマス部材と、を備え、
前記複数の金属板からなるマス部材の外周全体と前記外筒の全体を、ゴム部材によって一体に加硫接着により結合したことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のダイナミックダンパーであって、
前記マス部材は、外形が円形状あるいは多角形状に形成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパー、特に、軸部材とその外周側にゴム製の弾性体で連結された外筒と、積層された複数の金属板で形成されたマス部材で構成されたダイナミックダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイナミックダンパーとしては、以下の特許文献1及び特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたダイナミックダンパーは、内筒金具と、その外周側に離間して同軸状に配置された外筒金具と、内筒金具と外筒金具を弾性的に連結し内筒金具に加えられる振動入力を受けて剪断変形する一対のゴム弾性体連結部と、前記外筒金具の外周に挿嵌された肉厚円筒形の質量金具(マス金具)と、を有している。
【0004】
特許文献2に記載のダイナミックダンパー1は、
図11に示すように、一端側に車体などの振動部材への組付プレート2を取り付け、他端側にマス部材支持プレート3を加硫接着したゴム製の弾性体4と、マス部材支持プレート3に支持され、4枚の金属板5aを積み重ねて結合してなる矩形状のマス部材5と、マス部材5をマス部材支持プレート3に2つのリベット6a、6aを用いて取り付けるマス部材取付手段6と、前記弾性体4からマス部材支持プレート3が剥離したときに、該マス部材支持プレート3が組付プレート2から分離するのを防止する脱落防止手段7と、を有している。
【0005】
前記マス部材5は、幅方向の両端部に各金属板5aを上下方向から2つのリベット挿入孔5b、5bが貫通形成されている一方、脱落防止手段7は、金属板をプレス成形によって成形された各第1折曲部7aにリベット挿通孔が貫通形成されている。
【0006】
前記マス部材取付手段6は、前記マス部材5のリベット挿入孔5b、5bと脱落防止手段7のリベット挿通孔に前記2つのリベット6a、6aの軸部を挿入して、該各リベット6a、6aの上下端をかしめることによって、マス部材5の4枚の金属板5bを積層状態で共締め結合されると共に、脱落防止手段7が支持プレート3に共締め固定されるようになっている。
【0007】
また、マス部材5の積層された4枚の金属板5aは、リベット6a、6aの他に、ボルト、ナットによって共締め結合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-第117990号公報(
図1、
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のダイナミックダンパーにあっては、質量金具(マス金具)が厚肉な円筒状一体に形成されて、これは一般に鍛造や鋳造、鋼棒などで成形されるため、形状の自由度が制約されてしまうばかりか、必要な質量を限られたスペースに収容することが困難になる。また、鍛造や鋳造は専用の成形機が必要になると共に、製造時間も長くなることから、製造コストの高騰が余儀なくされている。
【0010】
一方、特許文献2に記載のダイナミックダンパーにあっては、マス部材5の4枚の金属板5aを、単にリベット6a、6aのかしめや、ボルト、ナットの締結によって一体的に結合するようになっている。このため、車体などの振動部材からの長期にわたる振動伝達によってリベット6a、6aのかしめ力やボルト、ナットの緩みなどが発生して、各金属板5a間の結合力が低下するおそれがある。
【0011】
この結果、ダイナミックダンパーとしての振動抑制機能が低下すると共に、各金属板5aでの振動異音などを招くおそれがある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みて案出されたもので、マス部材の形状の自由度が高く、またマス部材によるダイナミックダンパーとしての長期にわたる優れた振動抑制機能を発揮しつつ振動異音の発生を抑制すると共に、耐久性の向上を図り得るダイナミックダンパーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願請求項1に係る発明は、振動部材に固定される軸部材と、該軸部材の外周側にゴム製の連結部を介して連結された外筒と、複数の金属板を積層して形成され、該複数の金属板の中央の内部軸方向に前記外筒が挿入される外筒挿入孔が貫通形成されたマス部材と、を備え、
前記外筒を前記外筒挿入孔に圧入して、前記複数の金属板を、前記外筒の外周面にしまり嵌めによって固定すると共に、互いに一体に結合し、
前記マス部材の外筒挿入孔の内周面を、前記外筒挿入孔の軸方向の一端から他端まで拡径テーパ状に形成する一方、
前記外筒の外径を、前記外筒挿入孔の拡径テーパ状の内周面の内径よりも大きく形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マス部材を金属板で形成することよって、マス部材の形状の自由度が高くなると共に、安価で短時間での製造が可能になる。
【0015】
また、マス部材によるダイナミックダンパーとしての優れた振動抑制機能を発揮しつつ振動異音の発生を長期に亘り抑制できると共に、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】自動車のバックドアに本発明に係る第1実施形態のダイナミックダンパーが取り付けられた状態を示す縦断面図である。
【
図2】本実施形態のダイナミックダンパーを示す縦断面図である。
【
図3】本実施形態のダイナミックダンパーの分解斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るダイナミックダンパーの縦断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係るダイナミックダンパーの縦断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係るダイナミックダンパーの分解斜視図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係るダイナミックダンパーの縦断面図である。
【
図8】本発明第6実施形態に係るダイナミックダンパーの斜視図である。
【
図9】本発明第7実施形態に係るダイナミックダンパーの斜視図である。
【
図10】本発明第8実施形態に係るダイナミックダンパーの斜視図である。
【
図11】従来のダイナミックダンパーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るダイナミックダンパーを自動車のバックドアに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は自動車のバックドアに本発明に係る第1実施形態のダイナミックダンパーが取り付けられた状態を示す縦断面図、
図2は本実施形態のダイナミックダンパーを示す縦断面図、
図3は本実施形態のダイナミックダンパーの分解斜視図である。
【0019】
振動部材であるバックドアは、図外のドア本体を構成するドアインナパネルと及びドアアウタパネルとを有し、この上部に有する開口部にドアガラスが嵌め込まれている。ドアインナパネルとドアアウタパネルとの間には、
図1に示すように、外周部が例えばドアアウタパネルに接合された中間パネル10が設けられており、この中間パネル10の所定部位にダイナミックダンパー11が取り付けられている。
【0020】
ダイナミックダンパー11は、
図1~
図3に示すように、内側に配置された軸部材12と、該軸部材12の外周側に配置された外筒13と、軸部材12の外周面と外筒13の内周面との間を加硫接着によって連結する円盤状のゴム製の連結部14と、前記外筒13の外周に固定されるマス部材(質量体)15と、を有している。
【0021】
前記軸部材12は、鉄系金属材で中実円柱状に形成された軸本体12aと、該軸本体12aの軸方向の一端側(
図2中、下端)に有する段差面12bから下方へ延出した軸端部12cと、を有している。前記軸本体12aは、横断面円形状に形成されていると共に、外周面が平坦状に形成されている。前記軸端部12は、軸本体12aに段差面12bを介して一体に設けられ、外径が軸本体12aよりも僅かに小さく形成されていると共に、外周に雄ねじ12dが形成されている。
【0022】
中間パネル10は、
図1に示すように、所定の位置に軸端部12cが挿入されるボルト挿入孔10aが貫通形成されている。このボルト挿入孔10aは、軸端部12cが挿入された際に、軸方向の一端孔縁に段差面12bが当接する一方、軸方向の他端孔縁に、雄ねじ12dに螺着する後述のナット16のフランジ16aが当接して、両端の各孔縁を段差面12bとフランジ16aで挟み込むようになっている。
【0023】
したがって、ダイナミックダンパー11は、
図1に示すように、中間パネル10のボルト挿入孔10aに挿入された軸端部12cの雄ねじ12dと、該雄ねじ12dに螺着したナット16によって中間パネル10に取り付け固定されている。
【0024】
前記外筒13は、同じく鉄系金属材で大径かつストレートな円筒状に形成され、軸方向の長さHが軸部材12の軸本体12aの長さよりも僅かに短く形成されている。
【0025】
前記連結部14は、天然ゴムやEPDM(エチレン・プロピレンゴム)などの加硫ゴム材料によって円盤状に形成されて、軸本体12aと外筒13の軸方向のほぼ中央位置に配置されている。つまり、連結部14は、内周部14aが軸本体12aの外周面の軸方向のほぼ中央位置に加硫接着されている一方、外周部14bが外筒13の内周面の軸方向のほぼ中央位置に加硫接着されている。この連結部14は、軸部材12に加えられた振動入力に対して、マス部材15の振動に伴う弾性変形による共振作用によって振動を低減するようになっている。
【0026】
マス部材15は、
図1~
図3に示すように、複数(本実施形態では4枚)の金属板15aを積み重ねられて積層状に形成されている。各金属板15aは、それぞれが比較的肉厚な鋼材をプレス成形によって加工され、外形が正方形状に形成されている。したがって、マス部材15は、全体が立方体状に形成されている。
【0027】
このマス部材15は、
図2に示すように、全体の上下方向の高さH1が外筒13の軸方向長さHよりも僅かに小さく形成されている。また、各金属板15a(マス部材15)は、ほぼ中央位置に外筒13が圧入される外筒挿入孔15bが
図2及び
図3中、上下方向に貫通形成されている。この各外筒挿入孔15bは、
図3に示すように、各内周面の内径d1が上下方向でほぼ均一に形成されていると共に、この内径d1の最大許容寸法が外筒13の外径dの最小許容寸法よりも予め小さく形成されている。そして、各外筒挿入孔15bには、各内周面に対して外筒13の外周面13aがいわゆるしまり嵌めによって圧入されている。すなわち、
図3の矢印で示すように、外筒13が、外筒挿入孔15bに対して下方から機械的に圧入されている。
【0028】
したがって、各金属板15aは、各外筒挿入孔15bの各内周面と外筒13の外周面13aとの間の強い摩擦力によって、互いに上下面が密着つつ外筒13の外周面13aに一体的に結合されている。
【0029】
なお、外筒13の外径dと外筒挿入孔15bの内径d1との間の締め代は、ダイナミックダンパー11の仕様や大きさなどに応じて任意に設定される。
〔本実施形態におけるダイナミックダンパーの作用効果〕
本実施形態によれば、マス部材15を構成する各金属板15aの外筒挿入孔15bの内周面に、外筒13の外周面13aを圧入してしまり嵌めによって固定することにより、各金属板15aを一体的に強固に結合することが可能になる。
【0030】
したがって、マス部材15の各金属板15aは、バックドアの長期にわたる振動によっても互いに軸方向から剥がれて離間することがなくなる。
【0031】
また、外筒13のフラットな内周面に連結部14を加硫接着することによって、各金属板15a間の隙間から油などが染み出すことが防止でき、より安定した強固な接着力が得られる。
【0032】
このため、マス部材15は、ダイナミックダンパー機能(振動抑制機能)を長期にわたり十分に発揮できると共に、振動異音の発生を抑制できる。したがって、ダイナミックダンパー11は、耐久性の向上が図れる。
【0033】
また、マス部材15は、4枚(複数)の金属板15aによって形成されていることから、前記特許文献1に記載した一体物にマス部材と比較して形状の自由度が高くなると共に、材料コストの低減化が図れる。すなわち、マス部材を鍛造や鋼棒などで成形された一体物とした場合は、形状の自由度が小さくなるため、制約されたスペースに収容することが困難になり、質量が制限されるおそれがある。
【0034】
また、一体物を成形するには鍛造装置や鋳造装置を用いることから金型を用いた専用の型成形機が必要になり、製造時間が掛かると共に、製造コストが高くなるおそれがある。しかし、本実施形態のように、複数の金属板15aを利用する場合には、プレス成形で成形できるので、専用の型成形機が不要になり、成形時間も短くなる。したがって、製造作業能率の向上と製造コストの低減化が図れる。
〔第2実施形態〕
図4は本発明に係るダイナミックダンパー11の第2実施形態を示し、ダイナミックダンパー11の基本構成は第1実施形態と同じであるが、外筒13の軸方向の一端部13bの長さを長くして外方向に折曲形成したものである。
【0035】
すなわち、外筒13は、4枚の金属板15aで構成されたマス部材15の外筒挿入孔15bにしまり嵌めによって圧入固定されていることは第1実施形態と同じである。さらに本実施形態では、
図4に示すように、外筒13の軸方向の図中上側の一端部13bを上方に延出させて、マス部材15の外筒挿入孔15bの軸方向一端から外方へ突出形成した。また、この突出した一端部13bを、プレス成形などによって外方向へ折り曲げて、このフランジ部13b’を形成し、このフランジ部13b’によって外筒挿入孔15bの軸方向一端の孔縁部15cを支持するように構成した。
【0036】
したがって、この第2実施形態によれば、マス部材15の外筒挿入孔15bの軸方向一端の孔縁部15cをフランジ部13b’によって支持したことから、各外筒挿入孔15bに対する外筒13の圧入効果と相俟って各金属板15aの一体化が促進されてさらに強固な結合状態が得られる。
〔第3実施形態〕
図5は本発明に係るダイナミックダンパー11の第3実施形態を示し、ダイナミックダンパー11の基本構成は第1、第2実施形態と同じであるが、外筒13の軸方向の一端部13bの他に他端部13cの長さも長くして外方向へ折曲形成したものである。
【0037】
すなわち、外筒13は、4枚の金属板15aで構成されたマス部材15の外筒挿入孔15bにしまり嵌めによって圧入固定されていることは第1実施形態と同じである。さらに本実施形態では、
図5に示すように、外筒13の軸方向の図中上側の一端部13bと他端部13cを軸方向の上方と下方に延出させて、マス部材15の外筒挿入孔15bの軸方向一端及び他端から外方へ突出形成した。そして、この突出した一端部13bと他端部13cを、プレス成形などによって外側方向へそれぞれ折り曲げて、この各フランジ部13b’、13c’を形成し、この各フランジ部13b’、13c’によって各外筒挿入孔15bの軸方向一端及び他端の各孔縁部15c、15dを上下方向から挟持状態に支持して、4枚の金属板15a全体を上下方向から圧着保持するように構成した。
【0038】
したがって、この第3実施形態によれば、マス部材15の外筒挿入孔15bの軸方向両端の孔縁部15c、15dを一対のフランジ部13b’、13c’によって上下から挟み込むように支持したから、前記各外筒挿入孔15bに対する外筒13の圧入効果と相俟ってさらに各金属板15aの一体化が促進されて一層強固な結合状態が得られる。
〔第4実施形態〕
図6は本発明に係るダイナミックダンパー11の第4実施形態を示し、ダイナミックダンパー11の基本構成は第1実施形態と同じであるが、マス部材15の各外筒挿入孔15bの内周面を段差テーパ状に形成したものである。
【0039】
すなわち、各金属板15aは、それぞれの内周面の内径が図中、最上段の金属板15aの外筒挿入孔15bから最下段の金属板15aの外筒挿入孔15bまでの各内周面の内径d1~d4が順次段差状に形成されている。つまり、最上端の外筒挿入孔15bから最縮径状の内径d1、中小径状の内径d2、中大径状の内径d3、最拡径状の内径d4に順次段差状に形成されている。これによって、外筒挿入孔15bの全体の内周面が、外筒挿入孔15bの軸方向の一端(最上端)から他端(最下端)まで拡径テーパ状に形成されている。この内径d1~d4の異なる各外筒挿入孔15bは、例えばプレス成形によって穿設されている。
【0040】
一方、外筒13は、均一な外径dが外筒挿入孔15bの拡径テーパ状の内周面の内径よりも大きく形成されている。つまり、最下段の金属板15aの外筒挿入孔15bの内径d4よりも僅かに大きく形成されて圧入代を確保している。
【0041】
したがって、この第4実施形態によれば、外筒挿入孔15bの内周面を最上端から最下端側にわたって拡径テーパ状に形成したことから、
図6の矢印に示すように、外筒13を、最下端側の外筒挿入孔15bから内部に圧入した際に、テーパを利用して圧入できるので圧入作業が容易になる。これによって、外筒13の圧入作業能率の向上が図れる。
【0042】
なお、本実施形態では、各外筒挿入孔15bは、各金属板15aの一つひとつの内径d1~d4を段差状に形成して全体を拡径テーパ状に形成されているが、4枚の金属板15aを予め重ね合わせた状態で、エンドミルなどの機械加工などによって各外筒挿入孔15b全体を所定角度の傾斜テーパ状に形成することも可能である。
〔第5実施形態〕
図7は本発明の第5実施形態であって、ダイナミックダンパー11は、外筒23の構造と、この外筒23とマス部材15を一緒に加硫ゴム(ゴム部材20)によって覆って一体的に結合した。
【0043】
すなわち、ダイナミックダンパー11は、バックドアの中間パネル10にナット16を介して固定される軸部材12と、該軸部材12の外周側に配置された外筒23と、軸部材12の外周面と外筒23の内周面との間を加硫接着によって連結する円盤状のゴム製の連結部14と、前記外筒23の外周に挿入配置され、3枚の金属板15aを積層して形成されたマス部材(質量体)15と、を有している。
【0044】
外筒23は、薄肉な金属板材をプレス成形で円筒状に形成された本体23aと、該本体23aの
図7中、下端縁から径方向外側へほぼ水平に折り曲げられた円環状のフランジ片23bと、を有している。
【0045】
マス部材15は、各金属板15aの外筒挿入孔15bの内径が外筒23の本体23aの外径よりも十分に大きく形成されて、外筒23のフランジ片23bの上面に所定隙間をもって配置されている。また、上下に隣接する金属板15aは、それぞれの間に形成された隙間内に後述するゴム部材20の一部の加硫ゴム20aが充填されて互いに加硫接着されている。
【0046】
そして、マス部材15の外周全体と外筒23は、これらの全体がゴム部材20によって被覆状態に加硫接着されて一体的に結合されている。つまり、各金属板15aは、例えば成形金型内で各外筒挿入孔15bを介して外筒23の本体23aの外周に所定隙間を介して挿入配置されていると共に、フランジ片23bに所定隙間を介して配置され、この状態で、ゴム部材20が各隙間内に充填されて外筒23と一体的に結合されている。
【0047】
したがって、本実施形態のダイナミックダンパー11によれば、各金属板15aが、ゴム部材20の加硫接着によって一体的に結合されると共に、外筒13と一緒にゴム部材20で覆って結合させたことから、各金属板15aの結合強度がさらに高くなると共に、外筒13との結合力も高くなる。このため、ダイナミックダンパー11は、振動抑制機能がさらに効果的に発揮されると共に、耐久性の向上が図れる。
【0048】
しかも、前述のように、マス部材15(各金属板15a)と外筒13を加硫接着によって一体化したことによって、マス部材15と外筒13との結合強度も高くなって、ダンパーとしての機能をさらに効果的に発揮させることができる。
〔第6~第8実施形態〕
図8~
図10は本発明の第6~第8実施形態を示し、複数の金属板15aによって形成されるマス部材15の外形などを変更したものである。なお、外筒13を複数の金属板15aに外筒挿入孔を介して圧入してしまり嵌めにより結合する構成は第1実施形態と同じである。
【0049】
図8は第6実施形態を示し、マス部材15を構成する4枚の金属板15aの外形をそれぞれ円形状に形成して、マス部材15全体の外形を比較的肉厚な円盤状に形成したものである。
【0050】
マス部材15を肉厚な円盤状に形成したことによって、ダイナミックダンパー11の適用対象の自由度が向上すると共に、適用対象の固有振動数に合わせることが可能になる。この結果、ダイナミックダンパーとしての適用範囲の拡大や共振抑制効果が拡大する。
【0051】
図9は第7実施形態を示し、マス部材15を比較的肉厚な2枚の金属板15aで形成すると共に、それぞれの外形をほぼ台形状に形成して、マス部材15全体の外形を台形板状に形成したものである。
【0052】
この第7実施形態もマス部材15の外形を変更することによって、ダイナミックダンパー11の適用対象を拡大することが可能になると共に、第6実施形態と同じ作用効果が得られる。
【0053】
図10は第8実施形態を示し、マス部材15を、第1実施形態と同じく4枚の金属板15aで形成すると共に、それぞれの外形を長方形状に形成して、マス部材15全体の形状を直方体に形成したものである。したがって、この第8実施形態も第6、第7実施形態と同じ作用効果が得られる。
【0054】
なお、第6~第8実施形態は、複数の金属板15aを外筒13の圧入によって結合するといった基本構成が第1実施形態と同じであるから、第1実施形態を同様な作用効果が得られる。
【0055】
本発明は、例えばマス部材15の外形としては、前記各実施形態に限定されるものではなく、複数の金属板15aを利用して5角形、6角形などの多角形や、楕円形、円錐形など多様な形状に設定できる。また、マス部材15は、金属板15aの枚数を増減させて質量を任意に変更することが可能になる。このように、マス部材15の外形や質量を自由に変更させることができることから、適用対象の固有振動数に合わせることが可能になり、ダイナミックダンパー11としての適用範囲を拡大することができる。
【0056】
また、本実施形態では、マス部材15の形状の自由度が高いため、限られた空間や、いびつな空間の中にも設置することが可能になる。
【0057】
また、軸部材12としては、前記各実施形態に記載されたように中実な軸以外に、例えば外筒と同じく円筒状(内筒)に形成することも可能であり、この場合、ダイナミックダンパーの振動部材への取り付け方法も内筒の内部にボルトを挿入して、このボルトにナットを締結して、例えばいずれかの車体パネルにダイナミックダンパーを取り付けることも可能である。
【0058】
また、ダイナミックダンパーの適用対象としては、自動車に限定されるものではなく、例えば、船舶などにも適用可能である。
【0059】
以上説明した実施形態に基づくダイナミックダンパーとしては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0060】
すなわち、本発明に係るダイナミックダンパーの好ましい態様としては、振動部材に固定される軸部材と、該軸部材の外周側にゴム製の連結部を介して連結された外筒と、複数の金属板を積層して形成され、該複数の金属板の中央の内部軸方向に前記外筒が挿入される外筒挿入孔が貫通形成されたマス部材と、を備え、
前記外筒を前記外筒挿入孔に挿入して、前記複数の金属板を、前記外筒の外周面に固定すると共に、互いに一体に結合した。
【0061】
さらに好ましくは、前記外筒を前記外筒挿入孔に圧入して、前記複数の金属板を、前記外筒の外周面に固定すると共に、互いに一体に結合した。
【0062】
この発明の態様によれば、マス部材を構成する各金属板の外筒挿入孔に、外筒を、例えばしまり嵌めなどによって圧入固定することによって、前記各金属板を一体的に強固に結合することが可能になる。この結果、振動部材の長期にわたる振動によっても各金属板同士が剥がれることなく、マス部材のダンパー機能(振動抑制機能)と耐久性を十分に維持することが可能になる。
【0063】
また、マス部材は、複数の金属板によって形成されていることから、一般的な一体物に比較して形状の自由度が高くなると共に、材料コストの低減化が図れる。
【0064】
さらに好ましくは、前記外筒の軸方向の少なくとも一端部を軸方向へ延出して、延出された前記一端部を前記マス部材の外筒挿入孔の軸方向一端から外方へ突出形成すると共に、前記突出した一端部を外側方向へフランジ状に折り曲げて、該フランジ部によって前記マス部材の外筒挿入孔の軸方向一端の孔縁部を支持した。
【0065】
この発明の態様によれば、マス部材の外筒挿入孔の軸方向一端の孔縁部をフランジ部によって支持したことから、前記外筒挿入孔に対する外筒の挿入、圧入効果と相俟って各金属板の一体化が促進されてさらに強固な結合状態が維持される。
【0066】
さらに好ましくは、前記外筒の軸方向の両端部を軸方向へ延出して、延出された前記両端部を前記マス部材の外筒挿入孔の軸方向両端から外方へ突出形成すると共に、前記突出した両端部を外側方向へフランジ状にそれぞれ折り曲げて、該一対のフランジ部よって前記マス部材の外筒挿入孔の軸方向両端の孔縁部を支持した。
【0067】
この発明の態様によれば、マス部材の外筒挿入孔の軸方向両端の孔縁部を一対のフランジ部によって上下から挟み込むように支持できることから、前記外筒挿入孔に対する外筒の挿入、圧入効果と相俟ってさらに各金属板の一体化が促進されて一層強固な結合状態が維持される。
【0068】
さらに好ましくは、前記マス部材の外筒挿入孔の内周面を、前記外筒挿入孔の軸方向の一端から他端まで拡径テーパ状に形成する一方、
前記外筒の外径を、前記外筒挿入孔の拡径テーパ状の内周面の内径よりも大きく形成した。
【0069】
この発明の態様によれば、外筒挿入孔の内周面を一端から他端側にわたって拡径テーパ状に形成したことから、外筒を外筒挿入孔の一端側から挿入あるいは圧入し易くなり、挿入、圧入作業が容易になる。
【0070】
別の好ましい態様としては、振動部材に固定される軸部材と、該軸部材の外周側にゴム製の連結部を介して連結された外筒と、複数の金属板を積層して形成され、前記外筒の外周側に配置されるマス部材と、を備え、
前記複数の金属板からなるマス部材の外周全体と前記外筒の全体を、ゴム部材によって一体に加硫接着により結合した。
【0071】
この発明の態様によれば、各金属板全体を、ゴム部材の加硫接着によって一体的に覆って結合させたことから、各金属材の結合強度が高くなって振動によるダイナミックダンパーの機能(振動抑制機能)が十分に発揮されると共に、耐久性の向上が図れる。
【0072】
しかも、マス部材と外筒を同じく加硫接着によって一体化したことによって、マス部材と外筒との結合強度も高くなって、ダンパーとしての機能をさらに効果的に発揮させることができる。
【0073】
さらに好ましくは、前記各金属板の間をゴム材によって加硫接着した。
【0074】
この発明の態様によれば、各金属板間の結合強度がさらに高くなる。
【0075】
さらに好ましくは、前記マス部材を、外形が円形状あるいは多角形状に形成した。
【0076】
この発明の態様によれば、金属板を利用したマス部材の形状の自由度が向上することから、適用対象の固有振動数に合わせることが可能になり、ダイナミックダンパーとしての適用範囲を拡大することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…バックドアの中間パネル、11…ダイナミックダンパー、12…軸部材、12a…本体、12c…軸端部、12d…雄ねじ、13…外筒、13a…外周面13a…一端部、13b’…フランジ部、13c…他端部、13c’…フランジ部、14…連結部、15…マス部材、15a…金属板、15b…外筒挿入孔、23…外筒、23a…本体、23b…フランジ片。