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  • 特許-昇降設備およびその格納方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】昇降設備およびその格納方法
(51)【国際特許分類】
   E21F 13/02 20060101AFI20240830BHJP
   E21D 11/40 20060101ALI20240830BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20240830BHJP
   E06C 5/20 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E21F13/02
E21D11/40 Z
E21F17/00
E06C5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021136037
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030742
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 哲人
(72)【発明者】
【氏名】秦野 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭吾
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3019008(JP,U)
【文献】特開2016-124483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201195(US,A1)
【文献】特開2001-173019(JP,A)
【文献】特開2008-038364(JP,A)
【文献】特開2000-291397(JP,A)
【文献】実開昭58-100146(JP,U)
【文献】特表2009-510294(JP,A)
【文献】実開昭59-042743(JP,U)
【文献】実開昭53-093022(JP,U)
【文献】実開昭56-027150(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 13/02
E21D 11/40
E21F 17/00
E06C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル内の軌道上を走行するシールド機の後続台車に備えられた昇降設備であって、
梯子または階段からなり、一端が前記シールドトンネルの内壁面に備えられた通路上に支持される昇降部と、
前記昇降部の両側から挟持しているガイドローラと、
前記ガイドローラが固定されている作業床と、からなり、
前記昇降部は、前記ガイドローラを支点として回転自在およびスライド自在であり、かつ前記作業床に格納可能であり、
前記作業床には、前記昇降部が該作業床に格納された状態で、該作業床と前記通路との間の昇降を制限する扉部が設けられていることを特徴とする昇降設備。
【請求項2】
前記作業床には、前記昇降部が前記通路上に支持された状態または前記作業床に格納された状態を感知するセンサが備えられ、
前記後続台車または該後続台車の運転席には、前記センサが感知した情報から前記昇降部が前記通路上に支持された状態の場合に、該後続台車の走行が制御される制御部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の昇降設備。
【請求項3】
前記後続台車の運転席に、前記昇降部の状態を知らせる表示部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の昇降設備。
【請求項4】
前記後続台車の走行中に前記通路上に支持させるために前記昇降部をスライドおよび/ または回転させると、前記制御部の指令によって該後続台車が停止することを特徴とする請求項または請求項に記載の昇降設備。
【請求項5】
請求項1乃至請求項に記載の昇降設備の格納方法であって、
前記通路上に支持された昇降部の一端を持ち上げ、前記作業床に向けて回転およびスライドさせながら該作業床に該昇降部を格納することを特徴とする昇降設備の昇降部の格納方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの施工時に使用する昇降設備およびその格納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シールドトンネルに用いられる梯子や階段等の昇降設備として、既施工のシールドトンネルの内壁面に掛け渡した軌条用のレール敷設用の鋼材からトンネル底部に昇降するための階段装置が開示されている。
一般に、シールドトンネルの掘進時には、シールド機の前進に伴い、複数の後続台車が追随する。後続台車には、掘進に必要な制御盤、裏込め注入プラント等の諸設備が搭載され、シールド機に直接牽引される場合や、独立して自走するものもある。近年のシールドトンネルの大断面化により後続台車も大型化し、トンネル壁面に固定された歩行用通路と後続台車間の人の往来に昇降設備が必要になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-291397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の昇降設備では、昇降設備が掛け渡された鋼材とトンネル底部との間に相対的な動きのズレが生じないが、前記の後続台車と歩行用通路間の昇降設備の場合、シールド機の掘進に連動して後続台車も前進するため、昇降設備が歩行用通路に支持されたままの状態であれば、後続台車の移動に伴って昇降設備が転倒して破損したり、昇降設備に人が巻き込まれる等の危険を伴う。然るに、後続台車の移動前点検が必要になるが、点検忘れ、怠り等、ヒューマンエラーによる人災リスクも考えられる。
本発明は、前記の問題を解決することを目的とするものであり、簡易な構成で、確実に、後続台車の移動時に昇降設備の破損や昇降設備の人への接触を防止する格納式昇降設備およびその格納方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の格納式昇降設備は、シールドトンネル内の軌道上を走行するシールド機の後続台車に備えられた昇降設備であって、梯子または階段からなり、一端が前記シールドトンネルの内壁面に備えられた通路上に支持される昇降部と、前記昇降部の両側から挟持しているガイドローラと、前記ガイドローラが固定されている作業床と、からなり、前記昇降部は、前記ガイドローラを支点として回転自在およびスライド自在であり、かつ前記作業床に格納可能なことを特徴としている。
係る構成によれば、昇降部が作業床に設置されたガイドローラを支点として回転自在およびスライド自在であるため、人が昇降部の通路側の一端を持ち上げ、他端方向にスライドさせることで、作業床に格納可能である。これにより、後続台車移動時に簡易かつ確実に昇降部を通路から離間させることができるため、後続台車の移動に伴って昇降部が通路に引きずられて破損したり、昇降設備に人が巻き込まれる等の危険を回避できる。
【0006】
また、前記作業床には、前記昇降部が該作業床に格納された状態で、該作業床と前記通路との間の昇降を制限する扉部が設けられていることが好ましい。
作業床に昇降部による人の昇降を制限できる扉部が設けられていれば、後続台車内で行う作業中に昇降部を通じた人の出入りを制限でき、後続台車移動中に作業床から通路への飛び降り、通路から作業床への飛び乗り等の危険作業も制限できる。
【0007】
また、前記作業床には、前記昇降部が前記通路上に支持された状態または前記作業床に格納された状態を感知するセンサが備えられ、前記後続台車または該後続台車の運転席には、前記センサが感知した情報から前記昇降部が前記通路上に支持された状態の場合に、該後続台車の走行が制御される制御部と、をさらに含んでいることが好ましい。
作業床に備えられたセンサによって、昇降部が通路上に支持された状態、または作業床に格納された状態のいずれかの状態を感知でき、その感知した情報に基づいて、後続台車またはその運転席に備えられた制御部によって、後続台車の走行を制御できるため、後続台車の移動前点検忘れ、怠り等、ヒューマンエラーによる人災リスクも回避できる。
【0008】
また、前記後続台車の運転席に、前記昇降部の状態を知らせる表示部が設けられていても良い。
センサによって感知した昇降部の状態を後続台車の運転席に表示できるので、昇降部が通路上に支持された状態で後続台車を走行させるリスクを抑制できる。
【0009】
また、前記後続台車の走行中に前記通路上に支持させるために前記昇降部をスライドおよび/または回転させると、前記制御部の指令によって該後続台車が停止しても良い。
後続台車の走行中に、昇降部を動かすことによるセンサが感知した情報に基づき制御部の指令で自動的に後続台車を緊急停止することができ、未然に不安全行動を予防できる。
【0010】
さらに、前記課題を解決するための本発明の昇降設備の格納方法は、前記昇降設備の格納方法であって、前記通路上に支持された昇降部の一端を持ち上げ、前記作業床に向けて回転およびスライドさせながら該作業床に該昇降部を格納することを特徴としている。
昇降部が作業床に設置されたガイドローラを支点として回転自在およびスライド自在であるため、作業床に格納可能である。これにより、後続台車移動時に簡易かつ確実に昇降部を通路から離間させることができるため、後続台車の移動に伴って昇降設備が通路に引きずられて破損したり、昇降設備に人が巻き込まれる等の危険を回避できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の昇降設備およびその格納方法によれば、簡易な構成で、確実に、後続台車の移動時に昇降設備の破損や昇降設備の人への接触を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態である昇降設備を含むシールドトンネル内の後続台車の断面図である。
図2】本発明の実施形態である昇降設備の側面図である。
図3】本発明の実施形態である昇降設備の(a)平面図(図2のA-A矢視)、(b)正面図(図2のB-B矢視)である。
図4】本発明の実施形態である扉部を閉じた状態の正面図(図2のB-B矢視)である。
図5】本本発明の実施形態である昇降設備のガイドローラおよびセンサの(a)側面図(図4のC部)、(a)正面図(図5(a)のD-D矢視)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
図1に、本発明の実施形態である昇降設備を含むシールドトンネル内の後続台車の断面図を示す。
図1より、本実施形態における昇降設備4は、地盤Gに構築されたシールドトンネルS内であって、シールド機(図示せず)に追随し、独立して自走する後続台車1に付随している。後続台車1は、複数の鋼材を格子状に組み立てて形成された骨組み部11と、その下方に垂下するように設け垂れた脚部12,12,12・・・と、その下端に備えられた走行部13,13,13・・・と、骨組み部11の上面に敷設された床部(図示せず)、さらに骨組み部11の周囲を囲むように立設している台車手摺部14とからなる。後続台車1は、走行部13,13,13・・・がシールドトンネルSの下方内面に左右対向して設けられた軌道2上を走行することで移動する。
シールドトンネルSには、その側方内面に沿って通路3が設けられ、施工関係者等の人員(以下、「作業員等」と略記する。)の安全通路として使用される。
【0014】
<昇降設備全体>
図2に、本発明の実施形態である昇降設備の側面図を示す。また図3に、本発明の実施形態である昇降設備の(a)平面図(図2のA-A矢視)、(b)正面図(図2のB-B矢視)をそれぞれ示す。
図2,3より、通路3は、シールドトンネルSの内周面に沿って、所定の間隔で設置されたブラケット31,31,31・・・と、ブラケット31,31,31・・・の上面を塞ぐように、足場板32,32・・・が敷き詰められている。シールドトンネルSの内空側であるブラケット31上面の端部には、通路手摺33が立設している。作業員等Mは通路手摺33とシールドトンネルSの壁面に挟まれた空間を通路として安全にシールドトンネルS内を通行することができる。
【0015】
本実施形態の昇降設備4は主に、後続台車1の骨組み部11に立設された架台部15上に設けられた作業床41と、足場板32上に載置、支持され、作業床41と足場板32との間を昇降するための梯子である昇降部44とからなる。作業床41は、複数の鋼材で格子状に形成された床面の骨格を成す梁材411と、梁材411の上面に敷き詰められた床材412と、梁材411の周囲を囲むように立設された手摺材413によって形成されている。また、作業床41には、昇降部44をその両側から挟持するガイドローラ43,43が固定され、昇降部44は、ガイドローラ43,43を支点として回転自在およびスライド自在であり、かつ作業床41に格納可能であることを特徴としている。すなわち、昇降部44下方の一端が、通路3の足場板32上に載置、支持され、昇降可能な状態(昇降可能時44a)から、作業員等Mが昇降部44を手前に持ち上げながら、上方にスライドさせ(移動作業時44b)、ガイドローラ43,43を支点として、昇降部44の上方の方に重心が移動すると、昇降部44の先端が下がり、水平になった後、昇降部44下方の一端を上方に向かって床材412をスライドすることで、昇降部44を作用床41上に格納する(格納時44c)。
なお、手摺材413の支柱には、後述する扉部42が取り付けられている。
【0016】
<扉部>
図4に、本発明の実施形態である扉部を閉じた状態の正面図(図2のB-B矢視)を示す。
同図より、手摺材413の昇降部44による昇降側の妻部には、扉部42が取り付けられている。扉部42は対向する左右の扉本体421,421と、一方の扉本体421の支柱に設けられている錠材422とからなる。扉本体421,421は手摺材413,413の支柱に回転可能に取り付けられ、観音開き式で開閉できる。同図は、昇降部44の格納時44cであり、扉本体421,421が閉じられ、錠材422を他方の扉本体421の支柱に掛けることで、扉本体421,421を閉じた状態でロックできる。
【0017】
<ガイドローラおよびセンサ>
図5に、本本発明の実施形態である昇降設備のガイドローラおよびセンサの(a)側面図(図4のC部)、(a)正面図(図5(a)のD-D矢視)を示す。
同図より、昇降部44は格昇降可能時44aおよび納時44cであり、昇降部44の支持材441は外側に向けて溝部があり、その溝部にガイドローラ43が梁材411に対して回転可能に嵌め込まれている。また、対向する支持材441,441の下面にはストライカ46,46が固定されている。本実施形態では、ストライカ46,46は、梁材411に固定されている対向する一対のセンサ45,45が検知する対象である。センサ45は、非接触式のセンサ―であり、昇降部44が格納されると(格納時44c)、ストライカ46を検知して、後続台車1の移動を制限するインターロックが解除される。
【0018】
<その他の構成>
昇降部44の使用時(昇降可能時44a)には、後続台車1内(他の後続台車内を含む)や立坑外に設けられた後続台車1の運転席に設けられた制御部47(図示せず)によって、電気的に後続台車1の移動操作ができないように制御できるインターロックを装備している。また、後続台車1の運転席には、センサ45が感知した情報を表示できる表示部48が設けられている。これにより、昇降部44が昇降可能であるか(昇降可能時44a)、移動作業中であるか(移動作業時44b)、格納状態であるか(格納時44c)、リアルタイムで把握できる。さらに、後続台車1の走行中に昇降部44を動かすと(スライドや回転)、制御部47の指令によって後続台車1が停止する緊急停止機能を備えている。
【0019】
以上より、昇降設備およびその格納方法によれば、昇降部44が作業床41に設置されたガイドローラ43を支点として回転自在およびスライド自在であるため、人が昇降部44の通路3側の一端を持ち上げ、他端方向にスライドさせることで、作業床41に格納可能である。これにより、後続台車1移動時に簡易かつ確実に昇降部44を通路3から離間させることができるため、後続台車1の移動に伴って昇降部44が通路3に引きずられて破損したり、昇降設備4に人が巻き込まれる等の危険を回避できる。作業床41に昇降部44による人の昇降を制限できる扉部42が設けられていれば、後続台車1内で行う作業中に昇降部44を通じた人の出入りを制限でき、後続台車1移動中に作業床41から通路3への飛び降り、通路3から作業床41への飛び乗り等の危険作業も制限できる。作業床41に備えられたセンサ45によって、昇降部44が通路3上に支持された状態、または作業床41に格納された状態のいずれかの状態を感知でき、その感知した情報に基づいて、後続台車1またはその運転席に備えられた制御部47によって、後続台車1の走行を制御できるため、後続台車1の移動前点検忘れ、怠り等、ヒューマンエラーによる人災リスクも回避できる。センサ45によって感知した昇降部44の状態を後続台車1の運転席に表示できるので、昇降部44が通路3上に支持された状態で後続台車1を走行させるリスクを抑制できる。後続台車1の走行中に、昇降部44を動かすことによるセンサ45が感知した情報に基づき制御部47の指令で自動的に後続台車1を緊急停止することができ、未然に不安全行動を予防できる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0021】
G 地盤
S シールドトンネル
M 作業員等
1 後続台車
11 骨組部
12 脚部
13 走行部
14 台車手摺部
15 架台部
2 軌道
3 通路
31 ブラケット
32 足場板
33 通路手摺
4 昇降設備
41 作業床
411 梁材
412 床材
413 手摺材
42 扉部
421 扉本体
422 錠材
43 ガイドローラ
44 昇降部
44a 昇降可能時
44b 移動作業時
44c 格納時
441 支持材
45 センサ
46 ストライカ
47 制御部
48 表示部
図1
図2
図3
図4
図5