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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20240830BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B05B11/00 102J
B65D47/34 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021178107
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067115
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-233648(JP,A)
【文献】特開2014-166612(JP,A)
【文献】特開2020-49475(JP,A)
【文献】特開2016-193405(JP,A)
【文献】特開2015-85289(JP,A)
【文献】特開2018-176114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 11/00-11/10
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部から延設されると共に、前記噴出器本体の外部に開口する開口部を有する接続筒部と、
前記開口部を塞ぐように前記接続筒部に装着された閉塞栓と、
前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記接続筒部内を通じて前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、
前記噴出孔に連通する連通孔及び前記接続筒部内に連通する供給孔が形成され、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内及び前記接続筒部内を通過した液体が、前記供給孔を通じて内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配設され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動すると共に、他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、
前記供給孔を通じて前記接続筒部の内圧を回収する回収機構と、を備え、
前記貯留プランジャは、前記連通孔を通じた前記貯留シリンダ内と前記噴出孔との連通を遮断し、且つ前記一方側に移動したときに、前記連通孔を通じて前記貯留シリンダ内と前記噴出孔とを連通し、
前記回収機構は、前記貯留シリンダの内周面と前記貯留プランジャの外周面との間を通じて、前記接続筒部内と前記容器体内とに連通すると共に、回収した前記接続筒部の内圧を前記容器体側に逃がすことを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記貯留プランジャの外周面には、前記軸方向の前記一方側に配置されると共に前記貯留シリンダの内周面に摺接する環状の第1リップ部と、前記軸方向の前記他方側に配置されると共に前記貯留シリンダの内周面に摺接する環状の第2リップ部が設けられ、
前記回収機構は、
前記貯留シリンダの内周面と前記貯留プランジャの外周面との間であって、且つ前記第1リップ部と前記第2リップ部との間に画成された環状空間と、
前記縦供給筒部に設けられ、前記環状空間内と前記容器体内とを連通する回収通路と、
前記貯留シリンダの内周面と前記第2リップ部との間に設けられ、前記環状空間内と前記接続筒部内とを、前記供給孔を通じて連通する回収部と、を備えている、トリガー式液体噴出器。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記回収部は、前記貯留シリンダの内周面に形成され、前記第2リップ部が配置される回収凹部を備えている、トリガー式液体噴出器。
【請求項4】
請求項3に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記回収凹部には、前記貯留プランジャ側に向けて突出すると共に、前記第2リップ部の一部を前記貯留シリンダの内側に向けて押し上げる凸リブが形成されている、トリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー部の操作によって容器体内から液体を吸い上げ、噴出孔を通じて液体を噴出するトリガー式液体噴出器が知られている。
この種のトリガー式液体噴出器として、例えば下記特許文献1に示されるように、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備えたトリガー式液体噴出器が知られている。
【0003】
噴出器本体は、容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、縦供給筒部から前方に向けて延びた接続筒部と、前方付勢状態で後方に移動可能に配設され、後方への移動によって縦供給筒部内及び接続筒部内を通じて液体を噴出孔側に射出させるトリガー部と、トリガー部の後方への移動によって縦供給筒部内及び接続筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、貯留シリンダ内に移動可能に配置され、貯留シリンダ内への液体の供給に伴って後方に向けて移動すると共に、付勢部材によって前方に向けて付勢される貯留プランジャと、を主に備えている。
【0004】
上述のトリガー式液体噴出器では、トリガー部を操作することで、貯留シリンダ内に液体を貯留しながら、液体を噴出孔から外部に噴出させることが可能とされている。さらにトリガー部を操作しない場合であっても、貯留プランジャを利用して液体を噴出させることが可能とされている。これにより、液体の連続噴射を行うことが可能とされている。
なお、接続筒部は、例えば成形性を考慮して開口部を有するように形成されている場合が多く、開口部に閉塞栓を装着することで開口部を閉塞(シール)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-159841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貯留シリンダを具備するトリガー式液体噴出器では、貯留プランジャの後方移動によって貯留シリンダ内に液体を貯留した後、付勢部材によって貯留プランジャを前方に移動させることで貯留シリンダ内の液体を押し出す構成とされている。そのため、貯留シリンダ内及び接続筒部内においては、圧力が高まり易い。特に貯留プランジャは、付勢部材による付勢によって前方に向けて復元移動した際、貯留シリンダ内と噴出孔とを連通する連通孔を遮断する。そのため、接続筒部内に高い圧力が残留し易く、接続筒部の開口部を閉塞している閉塞栓に対して高い圧力(残留圧力)が作用し易かった。
これにより、閉塞栓に対して開口部から抜ける方向に圧力が作用してしまい、閉塞栓が意図せずに位置ずれする、或いは開口部から外れてしまう等の不都合が生じる可能性があった。そのため、シール性の低下を招き、液漏れ等の不都合を招いてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、接続筒部内での意図しない残留圧力を低減することができ、閉塞栓による適切なシール性を維持することができるトリガー式液体噴出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部から延設されると共に、前記噴出器本体の外部に開口する開口部を有する接続筒部と、前記開口部を塞ぐように前記接続筒部に装着された閉塞栓と、前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記接続筒部内を通じて前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、前記噴出孔に連通する連通孔及び前記接続筒部内に連通する供給孔が形成され、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内及び前記接続筒部内を通過した液体が、前記供給孔を通じて内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配設され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動すると共に、他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、前記供給孔を通じて前記接続筒部の内圧を回収する回収機構と、を備え、前記貯留プランジャは、前記連通孔を通じた前記貯留シリンダ内と前記噴出孔との連通を遮断し、且つ前記一方側に移動したときに、前記連通孔を通じて前記貯留シリンダ内と前記噴出孔とを連通し、前記回収機構は、前記貯留シリンダの内周面と前記貯留プランジャの外周面との間を通じて、前記接続筒部内と前記容器体内とに連通すると共に、回収した前記接続筒部の内圧を前記容器体側に逃がすことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、トリガー部を操作して後方に移動させることで、液体を縦供給筒部内から接続筒部内を通じて噴出孔側に向けて流通させることができる。これにより、接続筒部内から供給孔を通じて貯留シリンダ内に液体を供給して、貯留シリンダ内を加圧することができる。従って、貯留プランジャを軸方向の他方側に向けた付勢力に抗して軸方向の一方側に向けて押圧することができる。
そのため、連通孔を開放することができ、連通孔を通じて貯留シリンダ内と噴出孔とを連通させることができる。従って、ノズル部材の噴出孔を通じて液体を外部に向けて噴出させることができると共に、貯留プランジャを一方側に向けて移動させることができる。そのため、トリガー部を引く操作を行う毎に貯留プランジャを移動させて、貯留シリンダ内に液体を溜めながら(充填しながら)、液体を噴出することができる。
なお、貯留シリンダ内への液体の充填後、トリガー部の操作を停止すると、縦供給筒部内及び接続筒部内を通じた貯留シリンダ内への液体の供給が停止するが、貯留プランジャが軸方向の他方側に向けて復元移動しはじめる。これにより、貯留シリンダ内に充填した液体を、貯留シリンダ内から連通孔を通じて噴出孔側に向けて押し出すことができ、噴出孔から噴出させることができる。従って、液体の連続噴出を行うことが可能となる。
【0010】
さらに貯留プランジャが復元移動によって元の位置に復帰することで連通孔を閉塞するので、液体が噴出孔に達することを抑制することができる。従って、液体が噴出孔から漏出することを防ぐことができる。
ところで、連通孔が閉塞されることで、接続筒部内の内圧が高まったとしても、貯留シリンダの内周面と貯留プランジャの外周面との間を通じて接続筒部内と容器体内とに連通する回収機構を利用して、接続筒部の内圧を回収して容器体に逃がすことができる。つまり、接続筒部内の液体の一部を回収して容器体に逃がす(戻す)ことができる。従って、接続筒部内に残る残留圧力(内圧)を低減することができ、接続筒部の開口部を閉塞(シール)している閉塞栓に作用する応力を低減することができる。これにより、閉塞栓が意図せずに位置ずれ等することを抑制することができる。従って、開口部の適切なシール性を維持して、液漏れ等の発生を防止することができ、連続噴射に適したトリガー式液体噴出器とすることができる。
【0011】
(2)前記貯留プランジャの外周面には、前記軸方向の前記一方側に配置されると共に前記貯留シリンダの内周面に摺接する環状の第1リップ部と、前記軸方向の前記他方側に配置されると共に前記貯留シリンダの内周面に摺接する環状の第2リップ部が設けられ、前記回収機構は、前記貯留シリンダの内周面と前記貯留プランジャの外周面との間であって、且つ前記第1リップ部と前記第2リップ部との間に画成された環状空間と、前記縦供給筒部に設けられ、前記環状空間内と前記容器体内とを連通する回収通路と、前記貯留シリンダの内周面と前記第2リップ部との間に設けられ、前記環状空間内と前記接続筒部内とを、前記供給孔を通じて連通する回収部と、を備えても良い。
【0012】
この場合には、接続筒部内の内圧が高まったとしても、接続筒部内の液体の一部を、供給孔及び回収部を通じて環状空間内に回収することができると共に、回収通路を通じて環状空間内に回収した液体を容器体内に戻すことができる。このように、回収機構は、回収部、環状空間及び回収通路を利用して、接続筒部内の液体の一部を容器体内に戻すことができるので、接続筒部内に残る残留圧力をより適切に低減することができる。
【0013】
(3)前記回収部は、前記貯留シリンダの内周面に形成され、前記第2リップ部が配置される回収凹部を備えても良い。
【0014】
この場合には、貯留プランジャが軸方向の他方側に向けて復元移動して元の位置に復帰する過程で、貯留シリンダの内周面に摺接する第2リップ部が回収凹部内に配置される。これにより、第2リップ部を、貯留シリンダの内周面に対するシール力よりも弱いシール力で回収凹部に接触させることができる。従って、接続筒部内の液体の一部を、第2リップ部と回収凹部との間を通じて、環状空間側に徐々に逃がし易い。これにより、接続筒部内に残る残留圧力を徐々に低減することが可能となる。特に、貯留シリンダの内周面に環状の回収凹部を形成するだけで回収部を簡便に形成することができるので、構成の簡略化を図り易い。
【0015】
(4)前記回収凹部には、前記貯留プランジャ側に向けて突出すると共に、前記第2リップ部の一部を前記貯留シリンダの内側に向けて押し上げる凸リブが形成されても良い。
【0016】
この場合には、第2リップ部の一部が凸リブによって押し上げられるので、凸リブの周辺に例えば僅かな隙間を形成することができる。これにより、隙間を優先的に利用することができ、接続筒部内に残る残留圧力をより安定且つスムーズに徐々に低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、接続筒部内での意図しない残留圧力を低減することができ、閉塞栓による適切なシール性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示す貯留プランジャにおける前側リップ部の周辺を拡大した拡大断面図である。
図3図2に示す貯留プランジャが後方に移動した状態を示す断面図である。
図4図2に示すA-A線に沿った縦断面図である。
図5】本発明に係る変形例を示す図であって、前側リップ部の周辺を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器が容器体に取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔4が形成され、噴出器本体2に装着されたノズル部材3と、噴出器本体2及びノズル部材3を覆うカバー体5と、を備えている。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0021】
(噴出器本体)
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、接続筒部20と、装着キャップ30と、貯留シリンダ40と、貯留プランジャ50と、付勢部材60と、射出筒部70と、トリガー機構80と、ボール弁90と、貯留弁91と、回収機構160と、を主に備えている。
【0022】
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線O1とし、この軸線O1に沿って容器体A側を下側、その反対側を上側といい、軸線O1に沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、軸線O1に交差する一方向を前後方向といい、上下方向及び前後方向の双方向に直交する方向を左右方向という。さらに上下方向から見て、軸線O1に交差する方向を径方向という。
【0023】
さらに本実施形態では、貯留シリンダ40の中心軸線を軸線O2とする。本実施形態において軸線O2は、前後方向に延びている。従って、本実施形態において前後方向は、貯留シリンダ40の中心軸線に沿う軸方向に相当する。
なお、本実施形態において後方は、貯留シリンダ40の中心軸線に沿う軸方向のうちの一方側に相当し、前方は貯留シリンダ40の中心軸線に沿う軸方向のうちの他方側に相当する。ただし、軸線O2に沿う軸方向は、前後方向と一致していなくても良い。さらに前後方向から見て、軸線O2に交差する方向をシリンダ径方向といい、軸線O2回りに周回する方向をシリンダ周方向という。
【0024】
縦供給筒部10は、上下方向に延在し、容器体A内の液体を吸い上げる機能を有する。縦供給筒部10は、装着キャップ30によって、容器体Aに装着されている。縦供給筒部10は、有頂筒状の外筒12と、外筒12内に嵌合された内筒13と、を備えている。なお、縦供給筒部10の軸線O1は、容器体Aの容器軸より後方に位置している。
【0025】
外筒12は、大径部12aと、大径部12aの上方に配置され、且つ大径部12aよりも縮径した小径部12bと、大径部12aの上端部と小径部12bの下端部とを連結した環状連結部12cと、を備えている。小径部12bは、有頂円筒状に形成され、軸線O1と同軸に配設されている。小径部12bの頂壁部12dは、貯留シリンダ40と一体に形成されている。
【0026】
内筒13は、大径部13aと、大径部13aの上方に配置され、且つ大径部13aよりも縮径した小径部13bと、大径部13aの上端部と小径部13bの下側部分とを連結した環状連結部13cと、を備えている。
大径部13aは、外筒12の大径部12a内に配設されている。大径部13aのうち、外筒12の大径部12aから下方に突出した部分には、径方向の外側に向けて突出した環状の鍔部13dが形成されている。鍔部13dは、パッキン14を介して容器体Aの口部A1における上端開口縁上に配置され、容器体Aの口部A1に例えば螺着によって装着される装着キャップ30によって、口部A1の上端開口縁との間に上下方向に挟まれている。これにより、噴出器本体2の全体は、装着キャップ30を介して容器体Aの口部に装着されている。
【0027】
小径部13bは、円筒状に形成され、軸線O1と同軸に配設されている。小径部13bは、上下方向の両方に開口していると共に、外筒12の小径部12b内に配設されている。小径部13bの上端開口縁は、外筒12の頂壁部12dよりも僅かに下方に離れている。小径部13bの下側部分の内側には、上下方向に延びるパイプ15の上端部が嵌合されている。なお、パイプ15の下端開口部は、容器体Aの図示しない底部に位置している。
【0028】
上述のように構成された外筒12と内筒13との間には、回収通路17が設けられている。回収通路17は、上下方向に延びると共に上下方向の両方に開口している。
具体的には、回収通路17は、内筒13の小径部13bの外周面に形成された上下方向に延びる縦溝とされ、軸線O1よりも後方に位置している。回収通路17は、小径部13bにおける上下方向の全長に亘って形成され、下端部が大径部13a内に開口している。これにより、回収通路17は、容器体A内に連通している。
なお、回収通路17は、後述する回収機構160を構成する一部である。
【0029】
縦供給筒部10の上端部には、前方に向けて延びる接続筒部20が設けられている。
接続筒部20は、噴出器本体2の前方に開口した開口部21を有する筒状に形成され、縦供給筒部10内に連通している。接続筒部20の開口部21には、閉塞栓100が装着され、開口部21を閉塞(シール)している。
【0030】
接続筒部20の下方、且つ、装着キャップ30の上方には、シリンダ用筒部110が設けられている。シリンダ用筒部110は、縦供給筒部10から前方に向けて突出すると共に、前方に向けて開口している。なお、シリンダ用筒部110の一部は、縦供給筒部10における外筒12と一体に形成されている。
シリンダ用筒部110内には、主シリンダ82が嵌合されている。主シリンダ82は、前方に開口すると共に後方が閉塞された有底筒状に形成されている。主シリンダ82内は、縦供給筒部10内に連通している。
【0031】
貯留シリンダ40は、縦供給筒部10及び接続筒部20の上方に配置されている。貯留シリンダ40の内部(後述する貯留空間40a)には、トリガー部81の後方への揺動によって、縦供給筒部10内及び接続筒部20内を通過した液体が供給される。
貯留シリンダ40は、前後方向に延びていると共に、縦供給筒部10を前後方向に跨ぐように配置されている。図示の例では、貯留シリンダ40は、接続筒部20及びシリンダ用筒部110に対して略平行に配置されている。さらに貯留シリンダ40の下端部は、縦供給筒部10の上端部及び接続筒部20の上端部と一体に形成されている。
【0032】
貯留シリンダ40は、前壁部120と、前壁部120から後方に向けて延びたシリンダ筒121と、を備え、全体として後方に開口し、且つ前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
前壁部120には、該前壁部120を前後方向に貫通する連通孔122が形成されている。連通孔122は、例えば円形状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。連通孔122は、貯留シリンダ40内における貯留空間40aと、噴出孔4に連通する射出筒部70の内部とに開口している。
【0033】
シリンダ筒121は、前壁部120から後方に向けて延びる前筒部123と、前筒部123よりも外径及び内径が大きく、前筒部123よりも後方に位置する後筒部124と、前筒部123及び後筒部124を前後方向に連結する段部125と、を備えている。
段部125は、前方から後方に向かうに従い拡径している。なお、前筒部123と段部125との接続部分に、外筒12の頂壁部12dが接続されている。後筒部124は、縦供給筒部10よりも後方に位置している。
【0034】
さらに貯留シリンダ40には、供給孔126と、連絡溝127と、回収孔128と、が形成されている。
供給孔126は、前筒部123における下側部分のうち、閉塞栓100よりも後方に位置する部分に開口している。これにより、貯留シリンダ40内に、縦供給筒部10内及び接続筒部20内を通過した液体を、供給孔126を通じて供給することが可能とされている。
【0035】
連絡溝127は、前筒部123の後部における内周面に形成されている。なお、連絡溝127は、シリンダ周方向に間隔をあけて複数配置されている。
回収孔128は、前筒部123と段部125との接続部分、及び外筒12の頂壁部12dを一体に上下方向に貫通している。回収孔128は、縦供給筒部10に設けられた回収通路17の上端部に向けて開口している。これにより、回収孔128は、回収通路17を通して容器体A内に連通している。
なお、複数の連絡溝127のうち下側に位置する連絡溝127は、回収孔128に開口している。
【0036】
貯留プランジャ50は、貯留シリンダ40内に軸線O2に沿う前後方向に移動可能に配置されている。これにより、貯留プランジャ50は、貯留シリンダ40内を前後方向に密に摺動する。
貯留プランジャ50は、貯留シリンダ40内への液体の供給に伴って後方に向けて移動する。貯留プランジャ50は、連通孔122及び接続筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断し、且つ後方に移動したときに、連通孔122及び接続筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を許容する。
【0037】
つまり、貯留プランジャ50は、最前方位置において、連通孔122及び接続筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4(射出筒部70内)との連通を遮断し、最前方位置から後方に移動したときに、連通孔122及び接続筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4(射出筒部70内)との連通を許容する。
【0038】
貯留プランジャ50は、貯留シリンダ40内を前後方向に摺動する摺動部材130と、摺動部材130内に嵌合された受け部材140と、を備えている。摺動部材130及び受け部材140は、前後方向に延びる筒状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。
【0039】
摺動部材130は、前後方向に延びるプランジャ筒131と、プランジャ筒131の前端開口を閉塞する閉塞壁132と、を有する有頂筒状に形成されている。
プランジャ筒131の外周面には、後方側に配置(軸線O2に沿う軸方向の一方側に配置)されると共に貯留シリンダ40の内周面に摺接する環状の後側リップ部(第1リップ部)133と、前方側に配置(軸線O2に沿う軸方向の他方側に配置)されると共に貯留シリンダ40の内周面に摺接する環状の前側リップ部(第2リップ部)134とが形成されている。
【0040】
図2及び図3に示すように、前側リップ部134は、シリンダ筒121における前筒部123の内周面上を前後方向に密に摺動する。これにより、前側リップ部134と前筒部123の内周面との間に、シール性が確保されている。
図1に示すように、後側リップ部133は、シリンダ筒121における後筒部124の内周面上を前後方向に密に摺動する。これにより、後側リップ部133と後筒部124の内周面との間に、シール性が確保されている。
【0041】
貯留シリンダ40内のうち、前側リップ部134よりも前方に位置する空間が、供給孔126及び連通孔122に連通する貯留空間40aとして機能する。貯留空間40aは、縦供給筒部10内及び接続筒部20内を通過し、且つ供給孔126を通過した液体が貯留される。貯留空間40aは、液体の供給によって貯留プランジャ50が後方に向けて移動することで拡張する。なお、貯留空間40aは、連通孔122を通じて射出筒部70内にも連通可能とされている。
【0042】
図2に示すように、閉塞壁132は、貯留シリンダ40の前壁部120の後面に対して押し付け可能とされている。閉塞壁132の前面には、前方に突出する突出部132aが形成されている。突出部132aは、軸線O2と同軸に配設されていると共に、例えば円錐台状に形成され、後方から前方に向かうに従って外径が小さくなっている。なお、突出部132aの外周面が、連通孔122内に当接することで、連通孔122を閉塞可能とされている。
【0043】
図1に示すように、受け部材140は、後方に開口し、且つ前方が閉塞された有頂筒状に形成され、プランジャ筒131の内側に配置されている。受け部材140の後側部分は、プランジャ筒131の後端開口部よりも後方に突出することで後筒部124内に進出している。
受け部材140のうち、プランジャ筒131よりも後方に位置する部分の外周面には、シリンダ径方向の外側に向けて突出した環状の受け座部141が形成されている。なお、受け座部141は、プランジャ筒131の後端開口縁に当接或いは近接している。
【0044】
付勢部材60は、貯留プランジャ50を前方に向けて付勢している。付勢部材60は、受け部材140をシリンダ径方向の外側から囲んだ状態で、貯留シリンダ40の後端部に装着された支持部材61と受け座部141との間に、前後方向に圧縮された状態で配置されている。付勢部材60は、トリガー部81を操作する前の初期状態において、貯留プランジャ50を前方に向けて付勢している。これにより、貯留プランジャ50は、最前方位置に位置している。
なお、付勢部材60は、軸線O2と同軸に配設された金属製のコイルばねとされている。ただし、例えば付勢部材60として樹脂製のばねを用いても良いし、その他の弾性を有する部材を用いても構わない。
【0045】
上述のように構成された貯留シリンダ40及び貯留プランジャ50において、貯留プランジャ50が後方に移動するまでの間、貯留空間40a内で液体を加圧することが可能となる。その後、貯留空間40aの液圧が所定値に達すると、貯留プランジャ50が付勢部材60に抗して後方に移動する。これにより、図3に示すように、連通孔122を開放することができ、貯留空間40aの液体を、連通孔122を通じて噴出孔4側に供給することが可能とされている。従って、貯留プランジャ50を蓄圧弁として機能させることができる。
【0046】
図1に示すように、射出筒部70は、貯留シリンダ40から前方に向けて延びている。射出筒部70は、貯留シリンダ40内(貯留空間40a)及び接続筒部20内を通じて縦供給筒部10の内部に連通している。これにより、射出筒部70は、縦供給筒部10内、接続筒部20内及び貯留シリンダ40内(貯留空間40a)を通過した液体を噴出孔4に導くことが可能とされている。
【0047】
トリガー機構80は、トリガー部81と、主シリンダ82と、主ピストン83と、コイルばね84とを備えている。トリガー機構80は、トリガー部81の後方への揺動によって、液体を縦供給筒部10内から接続筒部20内を通じて噴出孔4側に向けて流通させることが可能とされている。
【0048】
トリガー部81は、縦供給筒部10の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されている。トリガー部81は、上下方向に延びるように形成されていると共に、射出筒部70の下方に配置されている。トリガー部81は、上端部がノズル部材3に前後方向に揺動可能に軸支され、下端部が主シリンダ82の前方に配置される。
【0049】
なお図示の例では、トリガー部81と、主シリンダ82との間の前後方向の隙間には、ストッパTが着脱可能に設けられている。ストッパTは、トリガー部81及び主シリンダ82のそれぞれに当接することで、トリガー部81の後方への揺動を規制する。ただし、ストッパTは必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0050】
主ピストン83は、主シリンダ82の内部に前後方向に移動可能に配置されている。主ピストン83は、トリガー部81の揺動に連動して前後方向に移動可能とされている。これにより、主シリンダ82の内部は、主ピストン83の前後方向の移動に伴って加圧及び減圧される。なお、主ピストン83は、後方に開口すると共に前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
【0051】
主ピストン83は、トリガー部81と共にコイルばね84の付勢力によって前方に付勢されている。主ピストン83は、トリガー部81の後方への揺動に伴って後方に移動して主シリンダ82内に押し込まれる。なお、主ピストン83は、トリガー部81が最前方揺動位置にあるときに、これに対応して最前方位置に位置している。
【0052】
コイルばね84は、例えば金属製とされている。コイルばね84は、主ピストン83及び主シリンダ82と同軸に配設され、主ピストン83を介してトリガー部81を前方に付勢している。コイルばね84は、主ピストン83の底壁と主シリンダ82の頂壁との間に配置されている。ただし、コイルばね84の材質は金属製に限定されるものではなく、例えば樹脂ばね等を採用してもよい。
【0053】
ボール弁90及び貯留弁91は、縦供給筒部10内に設けられている。
ボール弁90は、主シリンダ82内の加圧時に、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ82内との連通を遮断すると共に、主シリンダ82内の減圧時に上方に向けて変位することで、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ82内との連通を許容する逆止弁とされている。
【0054】
ボール弁90の上方には、貯留弁91が配置されている。貯留弁91は、縦供給筒部10内から接続筒部20内を通じた貯留シリンダ40内への液体の供給を許容すると共に、貯留シリンダ40内から接続筒部20内を通じた縦供給筒部10内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。
【0055】
カバー体5は、縦供給筒部10のうちの下端部を除く全体、射出筒部70の全体、及び貯留シリンダ40の全体を、少なくとも左右方向の両側及び上方から覆うように形成されている。
【0056】
(ノズル部材)
ノズル部材3は、主に射出筒部70を利用して噴出器本体2に組付けられている。
ノズル部材3は、射出筒部70に前方から外嵌された装着筒部150と、装着筒部150における前端部の内側に位置するノズル軸部151と、ノズル軸部151に装着されたノズルキャップ152と、を備えている。ノズルキャップ152には、前方に開口し、液体を前方に向けて噴出する噴出孔4が形成されている。
【0057】
(回収機構)
上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1は、図1図3に示すように、供給孔126を通じて接続筒部20の内圧を回収する回収機構160を備えている。
回収機構160は、貯留シリンダ40の内周面と貯留プランジャ50の外周面との間を通じて、接続筒部20内と容器体A内とに連通すると共に、回収した接続筒部20の内圧を容器体A側に逃がすことが可能とされている。
詳しく説明する。
【0058】
回収機構160は、貯留シリンダ40の内周面と貯留プランジャ50の外周面との間に形成された環状空間165と、縦供給筒部10に形成された回収通路17と、貯留シリンダ40の内周面と貯留プランジャ50の外周面との間に設けられ、環状空間165内と接続筒部20内とを、供給孔126を通じて連通する回収部161とを備え、接続筒部20に残存した残留圧力(内圧)を容器体A内に逃がすことが可能とされている。
【0059】
先に述べたように、貯留プランジャ50の外周面には、前後方向に間隔をあけて前側リップ部134及び後側リップ部133が形成されている。これにより、貯留シリンダ40の内周面と貯留プランジャ50の外周面との間であって、且つ前側リップ部134と後側リップ部133との間に位置する部分には、環状空間165が画成されている。
【0060】
後側リップ部133は、シリンダ筒121における後筒部124の内周面上を前後方向に密に摺動するため、縦供給筒部10に設けられた回収通路17よりも後方に配置されている。そのため、回収通路17は、上記環状空間165内に連通している。これにより、環状空間165内は、回収通路17を通じて容器体A内に連通している。
なお、貯留プランジャ50の前後移動に関係なく、環状空間165内と回収通路17内とは常に連通している。
【0061】
回収部161は、貯留プランジャ50が前方側(軸線O2に沿う軸方向の他方側)に移動して最前方位置に達する過程で環状空間165内と接続筒部20内とを連通するように貯留シリンダ40に形成されている。
具体的には、回収部161は、貯留シリンダ40における前筒部123の内周面に形成され、前側リップ部134が配置される回収凹部162を有している。回収凹部162は、前筒部123の内周面からシリンダ径方向の外側に向けて窪むように形成されていると共に、貯留プランジャ50が最前方位置に位置したときに、前側リップ部134が配置されるように形成されている。
さらに、本実施形態では、回収凹部162は、前筒部123の全周に亘ってシリンダ周方向に延びる環状に形成されている。図示の例では、回収凹部162は、前後方向に一定の深さで窪むように形成されている。
【0062】
ただし、回収凹部162としては、環状に形成されている場合に限定されるものではなく、例えばシリンダ周方向に延びる周溝のように形成しても構わない。さらには、周溝状の回収凹部162を、シリンダ周方向に間隔をあけて配置(間欠配置)されるように複数形成しても構わない。
【0063】
回収凹部162は、貯留プランジャ50が最前方位置に達したときに、前側リップ部134の外縁部が回収凹部162における前後方向の中央位置で接触するように、前側リップ部134に対する位置決めがされている。
【0064】
前側リップ部134は、回収凹部162内に位置したときに、回収凹部162の深さ分、シリンダ径方向の外側に向けて拡径するように弾性変形する。そのため、図2及び図3に示すように、前側リップ部134は、貯留シリンダ40の内周面に対するシール力(接触力)よりも弱いシール力で回収凹部162に接触する。例えば、前側リップ部134は、自身の外径が回収凹部162の内径と同径となるような(すなわち、締め代が零となるような)シール力で接触する。
これにより、残留圧力によって接続筒部20内の圧力が高まったときに、前側リップ部134と回収凹部162との間を通じて、接続筒部20側から環状空間165側に圧力を逃がすことが可能とされている。
【0065】
さらに、供給孔126を通じて接続筒部20内側から貯留シリンダ40の貯留空間40a内に液体が供給されたときに、貯留空間40a内の加圧に伴って貯留プランジャ50を後方移動させ易い。つまり、前側リップ部134と回収凹部162との間の締め代が零となっているために、貯留プランジャ50の後方への動きだしをスムーズに行うことができ、貯留プランジャ50の後方移動を容易に行うことができる。
【0066】
ただし、前側リップ部134と回収凹部162との間の締め代が零である場合に限定されるものではなく、例え前側リップ部134と回収凹部162との間に僅かな隙間が形成されていても構わない。
【0067】
さらに本実施形態では、図2及び図4に示すように、回収凹部162には、シリンダ径方向の内側に向けて(貯留プランジャ50側に向けて)突出する凸リブ163が形成されている。
凸リブ163は、前後方向に延びる横リブ状に形成され、シリンダ径方向の内側に向けて突設されている。図示の例では、凸リブ163は、貯留シリンダ40の内周面と同等の高さとなる突出量で形成されている。ただし、凸リブ163の突出量は、この場合に限定されるものではなく、例えば貯留シリンダ40の内周面よりもシリンダ径方向の内側に突出しない程度の高さで形成されても構わない。
【0068】
なお、凸リブ163は、シリンダ周方向に間隔をあけて複数形成されている。ただし、凸リブ163の数は複数に限定されるものではなく、1つだけ形成されていても構わない。さらに先に述べたように、周溝状の回収凹部162を、シリンダ周方向に間隔をあけて複数配置した場合には、シリンダ周方向に隣り合う回収凹部162同士の間に位置する部分を、凸リブ163として機能させても構わない。
【0069】
上述のように構成された凸リブ163は、前側リップ部134の一部をシリンダ径方向の内側に向けて押し上げる。これにより、凸リブ163を挟んだシリンダ周方向の両側に、前後方向に開口して、接続筒部20内と環状空間165内とを連通させる僅かな隙間R(図4参照)を積極的に形成することが可能とされている。
なお、上記隙間Rが形成されている場合であっても、トリガー部81の操作によって貯留空間40a内に液体が供給されて該貯留空間40内が加圧されたときに、隙間Rを通じて逃げる圧力よりも、前側リップ部134に作用する圧力の方が十分に大きい。従って、先に述べたように、貯留プランジャ50の後方への動きだしをスムーズに行わせて、貯留プランジャ50の後方移動を容易に行うことができる。
【0070】
(トリガー式液体噴出器の作用)
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。なお、図1に示すトリガー部81の複数回の操作によって、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填され、縦供給筒部10内に液体を吸い上げることができる状態になっているものとする。
【0071】
ストッパTを取り外した後、トリガー部81をコイルばね84の付勢力に抗して、後方に引くように操作すると、主ピストン83が最前方位置から後方に移動し、主シリンダ82内が加圧される。これにより、主シリンダ82内の液体が、縦供給筒部10に供給される。縦供給筒部10に供給された液体は、ボール弁90を下方に押し付けると共に、貯留弁91を押し上げる。
【0072】
これにより、縦供給筒部10内の液体を、接続筒部20内及び供給孔126を通じて貯留シリンダ40の貯留空間40aに供給することができ、貯留空間40aを加圧することができる。そのため、貯留空間40aの加圧に伴って、貯留プランジャ50を付勢部材60の付勢力に抗して最前方位置から後方に向けて移動させることができ、液体を貯留空間40aに溜める(充填する)ことができる。
また、貯留プランジャ50が後方に移動することで、連通孔122を開放することができる(図3参照)。従って、圧力が高まった貯留空間40aの液体を、連通孔122及び射出筒部70内を通じて噴出孔4に導くことができる。これにより、噴出孔4から前方に向けて液体を噴出させることができると共に、貯留プランジャ50を後方に移動させることができる。
【0073】
従って、トリガー部81を後方に引く操作を行う毎に、液体を噴出孔4から噴出させながら、貯留プランジャ50を後方に移動させて、貯留空間40a内に液体を溜めることができる。
【0074】
その後、トリガー部81を解放すると、コイルばね84の弾性復元力(付勢力)によって主ピストン83が主シリンダ82内を前方に向けて復元移動するので、これに伴ってトリガー部81も前方に復元移動する。そのため、主シリンダ82内を減圧させて、容器体A内の圧力よりも低い圧力にすることができるので、貯留弁91が閉弁したままの状態で、ボール弁90を上昇させることができる。従って、容器体A内の液体を、縦供給筒部10内に吸い上げ、主シリンダ82内に導入することができる。
これにより、次回の噴出に備えることができる。
【0075】
なお、トリガー部81の後方に向けた操作を停止すると、縦供給筒部10内及び接続筒部20内を通じた貯留空間40aへの液体の供給は停止するものの、付勢部材60の付勢力によって貯留プランジャ50が最前方位置に向けて前方移動しはじめる。なお、この際、貯留空間40aから縦供給筒部10内への液体の流出は、貯留弁91によって規制される。
【0076】
これにより、貯留空間40aに溜まった液体を、連通孔122及び射出筒部70内を通じて噴出孔4に導き、噴出孔4を通じて前方に向けて液体を引き続き噴出させることができる。
このように、トリガー部81を後方に引く操作を行ったときだけでなく、トリガー部81を操作しない場合であっても液体を噴出させることができ、液体の連続噴出を行うことができる。
【0077】
なお、貯留プランジャ50が最後方位置に位置した状態で、仮にトリガー部81を後方に引く操作を行った場合には、貯留空間40aに液体が過剰に供給されて、液漏れや各部の破損が発生することが考えられる。
しかしながら本実施形態では、貯留プランジャ50がある程度後方に移動すると、前側リップ部134が連絡溝127に到達し、貯留空間40aが、連絡溝127、回収孔128及び回収通路17を通じて容器体A内に連通する。つまり回収通路17は、貯留プランジャ50が後方に移動したときに、貯留空間40aと容器体A内とを連通する。
従って、貯留空間40aの液体の一部を容器体A内に戻すことができ、貯留空間40aに液体が過剰に供給されることを抑制できる。これにより、貯留空間40aの圧力が過度に高くなるのを抑制することができ、液漏れや各部の破損が発生することを抑制することができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、トリガー部81を後方に引く操作を行ったときだけでなく、トリガー部81を操作しない場合であっても液体を噴出させることができ、液体の連続噴出を行うことができる。
なお、トリガー部81は、上端部(支点)がノズル部材3に揺動可能に軸支され、トリガー部81の中間部(作用点)に主ピストン83が係止されているので、例えばトリガー部81の下端部(力点)を操作することで、いわゆるてこの原理を利用して、主ピストン83を効率良く移動させることができる。そのため、トリガー部81の操作性を向上することができる。
【0079】
さらに本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、貯留プランジャ50が前方に向けた復元移動によって元の位置(最前方位置)復帰することで連通孔122を閉塞するので、液体が噴出孔4に達することを抑制することができる。従って、液体が噴出孔4から漏出することを防ぐことができる。
このとき連通孔122が閉塞されることで、接続筒部20内の内圧が高まったとしても、回収機構160を利用して、接続筒部20内の内圧を回収して容器体Aに逃がすことができる。
【0080】
具体的には、貯留プランジャ50が最前方位置に復帰すると、図2に示すように、前側リップ部134が回収凹部162に達して、回収凹部162内に配置される。これにより、前側リップ部134と回収凹部162との間を通じて、接続筒部20内の液体の一部を環状空間165側に徐々に逃がすことができる。
さらに環状空間165内は、縦供給筒部10に設けられた回収通路17を通じて容器体A内に連通しているので、環状空間165内に逃がした液体の一部を容器体A内に戻すことができる。
【0081】
このように、接続筒部20内の液体の一部を、回収部161(回収凹部162)、環状空間165及び回収通路17を通じて容器体A内に回収することができるので、これに伴って接続筒部20内に残る残留圧力を低減することができる。特に、前側リップ部134の一部を、図4に示すように凸リブ163を利用して押し上げることができ、凸リブ163の周辺に僅かな隙間Rを形成することができる。これにより、隙間Rを優先的に利用することができ、残留圧力をより安定且つスムーズに、徐々に低減することができる。
【0082】
従って、接続筒部20の開口部21を閉塞(シール)している閉塞栓100に作用する応力を低減することができ、閉塞栓100が意図せずに位置ずれ等することを抑制することができる。従って、開口部21の適切なシール性を維持して、液漏れ等の発生を防止することができ、連続噴射に適したトリガー式液体噴出器1とすることができる。
さらに、貯留シリンダ40の内周面に環状の回収凹部162を形成するだけで回収部161を簡便に形成することができるので、構成の簡略化を図り易い。
【0083】
さらに、接続筒部20内の残留圧力を低減できるので、貯留弁91に対する圧力についても低減することができる。接続筒部20内の圧力が高い場合には、貯留弁91を閉弁させるような圧力が作用してしまうので、貯留弁91が開弁し難い傾向となってしまう。しかしながら、回収機構160によって接続筒部20内の残留圧力を低減できるので、貯留弁91に作用する圧力を低減させて、開弁し難い状態を解消することができる。
【0084】
なお、本実施形態のトリガー式液体噴出器1では、トリガー部81の操作によって、主ピストン83を最前方位置から最後方位置に移動させて主シリンダ82内を加圧したときに、主シリンダ82内と容器体A内とを連通する既存の内圧回収機構を具備している。
この点、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、回収機構160を具備しているため、主シリンダ82内と容器体A内との間を、回収機構160を通じて連通させることが可能である。そのため、内圧回収機構を設けない場合であっても、主シリンダ82内の内圧を、回収機構160を利用して回収し、容器体A内に逃がすことができる。
【0085】
従って、回収機構160に、内圧回収機構としての機能を兼用させることができるので、内圧回収機構をあえて設けなくても構わない。この場合には、さらなる構成の簡略化を図ることができると共に、以下の作用効果を奏功することができる。
すなわち、主シリンダ82のシリンダ径を小さくすることができ、トリガー部81の引き圧を低減することができる。さらに、容器体Aに回収する液体の回収量を増やすことができ、その分、外部に噴出する噴出量を増加させることができる。さらに、主シリンダ82内の内圧を回収できるため、例えば、内圧が高まることによって主シリンダ82と主ピストン83との間を通じてコイルばね84に液体が接する(接液)等といった不都合を防止することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0087】
例えば上記実施形態では、貯留シリンダ40の内周面に形成した回収凹部162を利用して回収部161を構成したが、この場合に限定されるものではない。少なくとも環状空間165内と接続筒部20内とを、供給孔126を通じて連通させ、接続筒部20内の残留圧力を環状空間165内に逃がすことができれば、回収部161をどのように構成しても構わない。さらに、凸リブ163は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0088】
さらに上記実施形態では、図2に示すように、貯留プランジャ50が最前方位置に達したときに、前側リップ部134が回収凹部162内に配置されるように、回収凹部162を形成したが、この場合に限定されるものではない。回収凹部162は、貯留プランジャ50が前方側に移動して最前方位置に達する過程で、前側リップ部134が配置されるように形成されていれば良い。
例えば図5に示すように、貯留プランジャ50が最前方位置に達したときに、前側リップ部134よりも後方に位置するように回収凹部162を形成しても構わない。この場合であっても、貯留プランジャ50が前方に移動して、液体の連続噴射の終わりの段階で前側リップ部134を回収凹部162内に配置させることができる。従って、上記実施形態と同様に、接続筒部20の内圧を回収して容器体Aに逃がすことができる。その後、前側リップ部134は、貯留プランジャ50が最前方位置にむけてさらに移動することに伴って、回収凹部162を超えて前方側に移動する。
従って、この場合であっても、接続筒部20の内圧を回収することに関し、上記実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【符号の説明】
【0089】
A…容器体
1…トリガー式液体噴出器
2…噴出器本体
3…ノズル部材
4…噴出孔
10…縦供給筒部
17…回収通路
20…接続筒部
21…接続筒部の開口部
40…貯留シリンダ
50…貯留プランジャ
80…トリガー機構
81…トリガー部
100…閉塞栓
122…連通孔
126…供給孔
133…後側リップ部(第1リップ部)
134…前側リップ部(第2リップ部)
160…回収機構
161…回収部
162…回収凹部
163…凸リブ
165…環状空間
図1
図2
図3
図4
図5