(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】歩行型作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/08 20060101AFI20240830BHJP
B60K 23/02 20060101ALI20240830BHJP
G05G 1/06 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A01B33/08 A
B60K23/02 A
B60K23/02 B
B60K23/02 S
G05G1/06
(21)【出願番号】P 2021182637
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】亀田 大地
(72)【発明者】
【氏名】前田 伸治
(72)【発明者】
【氏名】渡 剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄作
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-263271(JP,A)
【文献】特開2008-222220(JP,A)
【文献】特開2007-137353(JP,A)
【文献】特開2020-018244(JP,A)
【文献】特開2001-063641(JP,A)
【文献】米国特許第04433530(US,A)
【文献】特開2007-030682(JP,A)
【文献】特開平09-277846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00 - 33/16
B60K 23/02
G05G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪体を備えた機体主部と、
前記機体主部から後方に延出された操縦ハンドルと、
前記操縦ハンドルに支持されたクラッチレバーと、が備えられ、
前記クラッチレバーに、機体前後方向に沿う左右の縦杆部と、左右の前記縦杆部の後端部に連なる機体横向きの横杆部と、が備えられ、
前記クラッチレバーは、前記横杆部が左右に分割可能に構成され、
左右の前記縦杆部と、前記横杆部と、が軟質樹脂製の筒状グリップで覆われている歩行型作業機。
【請求項2】
前記筒状グリップは、前記横杆部を覆う箇所で左右に分割されている請求項1記載の歩行型作業機。
【請求項3】
左右に分割された前記横杆部のうち、左右の前記縦杆部に連なる位置とは反対側の端部が、前記筒状グリップの同方向端部から露出し、前記横杆部の端部同士が、連結部材で連結されている請求項2記載の歩行型作業機。
【請求項4】
前記連結部材は、左右の前記横杆部に外嵌する筒状に形成され、かつ、前記横杆部に外嵌された前記筒状グリップの外周面とほぼ面一に連なる外周面を有するように、前記筒状グリップと同様な断面形状に形成されている請求項3記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記横杆部と前記筒状グリップとの間に、前記横杆部と前記筒状グリップとの径方向での隙間に充填されるスペーサが設けられている請求項1~4のいずれか一項記載の歩行型作業機。
【請求項6】
前記クラッチレバーが、左の前記縦杆部と、右の前記縦杆部と、左右の前記縦杆部に連なる前記横杆部と、に三分割され、
前記筒状グリップが、左右の前記縦杆部の夫々を覆う縦杆カバー部と、前記横杆部を覆う横杆カバー部と、に三分割されている請求項1記載の歩行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体主部から後方に延出された操縦ハンドルと、操縦ハンドルに支持されたクラッチレバーと、が備えられた歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の歩行型作業機では、平面視もしくは前後方向視でほぼ門形に形成されたクラッチレバーを、パイプ材を扁平状に圧潰した潰しパイプを用いて作製したものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-126305号公報(段落「0032」、「
図2」、「
図6」参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、潰しパイプを用いて構成した門形のクラッチレバーは、操縦ハンドルの後端部に備える横向きハンドル杆と一緒に握ってクラッチ入り状態とし、各種作業を行えるようにしている。このように丸パイプではなく、潰しパイプを用いると、横向きハンドル杆と一緒に握り易くなる。したがって、クラッチレバーから手を離すとクラッチ切り状態となるデッドマン仕様のように、長時間にわたって握り続ける際に有利である。
しかし、この構造のものでは塗装された金属面を直接に把持するため、あまり握り心地の良いものではない。そこで、樹脂製のグリップ等で被覆することが考えられるが、屈折箇所が複数箇所にあるため、軟質樹脂製の筒状グリップにクラッチレバーを挿入しようとしても、その挿入作業がかなり困難で生産性の低下を免れない。筒状グリップを半割状にして挿入し易くすると、クラッチレバーに接着することが必須となり、日照や雨水に晒される条件下では、長期の使用のうちに剥がれやすくなる傾向がある。
このため従来では、前述したようにクラッチレバーの金属面に塗装を施したものが用いられていた。
【0005】
本発明は、歩行型作業機に備えた門形形状のクラッチレバーに、軟質樹脂製の筒状グリップを装着しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による歩行型作業機は、
駆動輪体を備えた機体主部と、
前記機体主部から後方に延出された操縦ハンドルと、
前記操縦ハンドルに支持されたクラッチレバーと、が備えられ、
前記クラッチレバーに、機体前後方向に沿う左右の縦杆部と、左右の前記縦杆部の後端部に連なる機体横向きの横杆部と、が備えられ、
前記クラッチレバーは、前記横杆部が左右に分割可能に構成され、
左右の前記縦杆部と、前記横杆部と、が軟質樹脂製の筒状グリップで覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、クラッチレバーにおける縦杆部の後端部に連なる機体横向きの横杆部が、左右に分割可能に構成されている。したがって、横杆部を左右に分割し、軟質樹脂製の筒状グリップの一端側を左側の横杆部に挿入し、軟質樹脂製の筒状グリップの他端側を右側の横杆部に挿入することができる。
このように、軟質樹脂製の筒状グリップの一端を、左側の横杆部と左側の縦杆部との交点となる一箇所の屈曲点を越えるように挿入し、軟質樹脂製の筒状グリップの他端を、右側の横杆部と右側の縦杆部との交点となる一箇所の屈曲点を越えるように挿入することで、結局、筒状グリップが乗り越えるべき屈曲点は、右及び左の一箇所ずつであって、一つの筒状グリップが右及び左の二箇所の屈曲点を乗り越えるように挿入させる必要はない。
したがって、クラッチレバーに対する軟質樹脂製の筒状グリップの装着を比較的簡単に行うことができ、歩行型作業機における軟質樹脂製の筒状グリップが装着されたクラッチレバーの組み立てを比較的容易に行い易いという利点がある。
【0008】
本発明において前記筒状グリップは、前記横杆部を覆う箇所で左右に分割されていると好適である。
【0009】
本発明によれば、筒状グリップ自体も左右に分割されているので、挿入長さも短くなり、扱い易くなって、より一層、クラッチレバーの組み立てを容易に行い易くなる。
【0010】
本発明において、左右に分割された前記横杆部のうち、左右の前記縦杆部に連なる位置とは反対側の端部が、前記筒状グリップの同方向端部から露出し、前記横杆部の端部同士が、連結部材で連結されていると好適である。
【0011】
本発明によれば、クラッチレバーのうち、最も把持される頻度が高い箇所を筒状グリップで確実に被覆して、あまり把持される可能性の少ない箇所における筒状グリップでの被覆を省略できるようにして、より一層、クラッチレバーの組み立てを容易に行い易くできる。
つまり、クラッチレバーは、左右の縦杆部と横杆部との交点の近く位置で、縦杆部、もしくは横杆部が把持される可能性が高く、左右に分割された横杆部のうち、左右の縦杆部に連なる位置とは反対側の端部付近は、比較的把持される頻度が少ない。
したがって、比較的把持される頻度が少ない箇所であるところの、横杆部のうち、左右の縦杆部に連なる位置とは反対側の端部付近では、グリップでの被覆を省いて、連結部材による連結を行い易くすることにより、さらにクラッチレバーの組み立て作業を容易に行い易くなる。
【0012】
本発明において、前記連結部材は、左右の前記横杆部に外嵌する筒状に形成され、かつ、前記横杆部に外嵌された前記筒状グリップの外周面とほぼ面一に連なる外周面を有するように、前記筒状グリップと同様な断面形状に形成されていると好適である。
【0013】
本発明によれば、横杆部に外嵌する筒状の連結部材が、横杆部に外嵌された筒状グリップの外周面とほぼ面一に連なる外周面を有していることより、筒状グリップの不存在箇所を意識せずに使い易い。
【0014】
本発明において前記横杆部と前記筒状グリップとの間に、前記横杆部と前記筒状グリップとの径方向での隙間に充填されるスペーサが設けられていると好適である。
【0015】
本発明によれば、横杆部に筒状グリップを外嵌させる際に、横杆部の断面径とあまり差のない内径の筒状グリップを採用して挿入作業を行うと、かなり難易度が増すが、横杆部の断面径よりもある程度余裕のある大きさの内径を有した筒状グリップを用いれば、横杆部に対する筒状グリップの外嵌作業を比較的容易に行い易い。
そして、その横杆部に対する筒状グリップの外嵌作業後に、横杆部と筒状グリップとの径方向での隙間にスペーサを充填させれば、横杆部に対する筒状グリップの装着を、所期通りに容易に行い易くなる。
【0016】
本発明において前記クラッチレバーが、左の前記縦杆部と、右の前記縦杆部と、左右の前記縦杆部に連なる前記横杆部と、に三分割され、
前記筒状グリップが、左右の前記縦杆部の夫々を覆う縦杆カバー部と、前記横杆部を覆う横杆カバー部と、に三分割されていると好適である。
【0017】
本発明によれば、縦杆部や横杆部が、大きな屈曲箇所を含まない直線に近い形状に形成され易く、筒状グリップも、左右の縦杆カバー部と、横杆カバー部と、に三分割されていて、大きな屈曲部を越える必要のない状態での筒状グリップの外嵌作業を行い易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図6】別実施形態におけるクラッチレバーと筒状グリップとを示す説明図である。
【
図7】別実施形態におけるクラッチレバーと筒状グリップとを示す説明図である。
【
図8】別実施形態におけるクラッチレバーと筒状グリップとを示す説明図である。
【
図9】別実施形態におけるクラッチレバーと筒状グリップとを示す説明図である。
【
図10】別実施形態におけるクラッチレバーと筒状グリップとを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、歩行型作業機の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2及び
図3における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2及び
図3における矢印L参照)が「左」である。
図1に示す矢印FRは、車輪の前進回転方向を示している。
【0020】
〔全体構成〕
図1に示すように、歩行型作業機の一例である歩行型作業機の走行機体(機体に相当する)には、機体フレーム1の一部を構成するエンジンフレーム10上に、駆動源となるエンジン11が搭載されている。エンジン11の上方に燃料タンク12が搭載されている。エンジンフレーム10の後方に、エンジンフレーム10とともに機体フレーム1(機体主部に相当する)を構成するミッションケース2が一体に連結されている。エンジンフレーム10の前端部にバンパー13が連設されている。
エンジン11とミッションケース2はベルト伝動機構(図外)を介して動力伝達可能に連動連結されている。
【0021】
エンジン11の動力が入力されるミッションケース2は、下方に延出された前部ケース2Aと、斜め後方下方に延出された後部ケース2Bとを備えて二股状に形成されている。
前部ケース2Aの下部に車軸20を介して駆動輪体としてのタイヤ車輪21が支持され、後部ケース2Bに駆動軸22を介して、作業装置としてのロータリ耕耘装置23が支持されている。
ミッションケース2の内部には、伝達されたエンジン11の動力を変速して、走行駆動系の車軸20、及び作業駆動系の駆動軸22へ伝達するギヤ変速装置(図示せず)が内装されている。
【0022】
ミッションケース2の上部から斜め後方上方に向けて主変速レバー15が延出されている。この主変速レバー15を操作することにより、ミッションケース2内のギヤ変速装置の変速操作を行って、タイヤ車輪21の変速及び正逆転、並びにロータリ耕耘装置23の正逆転操作を行うことができる。
【0023】
機体フレーム1を兼ねる前記ミッションケース2の後部にハンドルポスト取付部材25が設けられている。このハンドルポスト取付部材25から機体後方に向けて、操縦操作用の操縦ハンドル16が延出されている。
操縦ハンドル16は、前後方向に沿う左右一対の側部ハンドル杆16a,16aと、その左右の側部ハンドル杆16a,16aの後端部に連なるように接続された横向きハンドル杆16bと、を備えている。
操縦ハンドル16における右側の側部ハンドル杆16aに、作業装置入り切り用レバー17及び停止スイッチ18が配設されている。さらに操縦ハンドル16の後端部近く位置に、上下揺動可能に手元操作レバー3(クラッチレバーに相当する)が配設されている。
【0024】
作業装置入り切り用レバー17は、ミッションケース2内に設けられたロータリ耕耘装置23の駆動系に設けたクラッチ(図示せず)を断接操作するためのものである。この作業装置入り切り用レバー17を切り状態とすることで、ロータリ耕耘装置23の駆動を停止して、走行用のタイヤ車輪21のみを駆動することもできる。停止スイッチ18はエンジン11の停止操作用としてエンジン11の制御系に配線されている。
【0025】
燃料タンク12からの燃料供給管12aが接続されたキャブレター14が設けられている。このキャブレター14の下方に燃料コック14aが設けられている。燃料コック14aのレバー14bを操作することにより、燃料コック14a内における流路の開閉を行い、燃料タンク12からの燃料の供給を操作している。また、燃料コック14aにより、燃料タンク12内の残留燃料を機外へ取り出すことができる。
この燃料コック14aは、
図2に示されるように、平面視でエンジンフレーム10よりも横外方に突出した状態に位置し、左右方向でタイヤ車輪21に近い位置にある。そして、
図1に示されるように、側面視ではタイヤ車輪21の外周縁に近い位置にあるとともに、前進走行時におけるタイヤ車輪21の回転方向での上手側に相当する箇所に設けられている。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、タイヤ車輪21の外周まわりには、タイヤ車輪21に付着した泥土を掻き落とすためのスクレーパー4が設けられている。
このスクレーパー4は、板金製の板状体で横長に形成された横張部材40と、ロータリ耕耘装置23の機体前方側において、ミッションケース2とタイヤ車輪21との間に設けられた縦板部材41の上部と、の組み合わせで構成されている。
【0027】
〔手元操作レバーについて〕
手元操作レバー3は、次のように構成されている。
図1に示すように、手元操作レバー3は、操縦ハンドル16の後部に装備されている。すなわち、操縦ハンドル16のうちの、左右一対の側部ハンドル杆16a,16aの下部に設けた左右方向に沿う揺動軸心P1周りで、前後揺動可能に枢支されている。
図1及び
図2に示すように、上記の手元操作レバー3は、左右両側で前後方向に沿う縦杆部30と、その左右の縦杆部30,30の前記揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように接続された横杆部31と、を備えて、全体として平面視もしくは前後方向視でほぼ門形に形成されている。
【0028】
そして手元操作レバー3は、
図1に示すように、縦杆部30が側部ハンドル杆16aの上面に沿って側部ハンドル杆16aに最も近づくクラッチ入り位置a1に存在する状態と、横杆部31が、横向きハンドル杆16bの上面から上方に離れたクラッチ切り位置a2に存在する状態と、に揺動軸心P1周りで起伏揺動する。
【0029】
手元操作レバー3の縦杆部30は、エンジン11からミッションケース2への動力伝達系に設けたベルト伝動機構の、図示しないクラッチ操作アームと連係されている。このクラッチ操作アームによってベルト伝動機構の張り状態が変更されて、クラッチ入り状態とクラッチ切り状態とに切り換え操作可能に構成されている。
したがって、手元操作レバー3がクラッチ入り位置a1にある状態では、クラッチ操作アームをクラッチ入り状態に維持し、手元操作レバー3がクラッチ切り位置a2に操作されると、クラッチ操作アームをクラッチ切り状態に切り換えて、エンジン11からミッションケース2への動力伝達を断つように操作される。これによって、手元操作レバー3が、主クラッチを入り切り操作する主クラッチレバーとしての役割を果たす。
【0030】
手元操作レバー3は、図示しない付勢機構によって、常にクラッチ切り位置a2に付勢されている。
この手元操作レバー3の横杆部31がクラッチ入り位置a1に位置する状態では、操縦ハンドル16の横向きハンドル杆16bとともに横杆部31を把持した状態で、機体を走行させながらの作業が可能である。
そして、この状態において、手元操作レバー3から、もしくは操縦ハンドル16から手を離せば、手元操作レバー3の横杆部31が横向きハンドル杆16bから離れて、クラッチ切り位置a2となる側へ起立揺動する。つまり、手元操作レバー3が、手を離すと自動的にクラッチ切り状態となるデッドマン式に構成されている。
【0031】
〔手元操作レバーの構造〕
手元操作レバー3は、上述したように、左右両側の側部ハンドル杆16a,16aに対して、左右方向に沿う揺動軸心P1回りで前後揺動可能に枢支された縦杆部30と、その左右の縦杆部30,30の前記揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように接続された横杆部31とを備えている。
そして、横杆部31は、
図3及び
図5に示すように、左右方向でのほぼ中央位置で左右に分割されている。この横杆部31における分割箇所、つまり、左右の縦杆部30,30に繋がる側とは反対側の端部は、連結部材32で連結されている。この連結状態で、左右の縦杆部30,30、左右の横杆部31,31、及び連結部材32の全体が、前述した平面視もしくは前後方向視でほぼ門形となっている。
【0032】
手元操作レバー3を構成する縦杆部30,30と横杆部31,31とは、
図4に示す仮想平面F1上において互いにほぼ直交している。便宜上、
図3に示す屈曲部位のほぼ中央に位置する屈曲点箇所C1,C1を基準にして、前記揺動軸心P1から前記屈曲点箇所C1に至る範囲の部位を縦杆部30と称し、屈曲点箇所C1,C1同士の間に位置する部位を横杆部31,31と称する。
横杆部31,31における前記屈曲点箇所C1,C1から遠い側の端部同士が、
図3に示すように連結部材32で連結されている。
【0033】
手元操作レバー3は、前記屈曲点箇所C1,C1を含む範囲で、縦杆部30,30と横杆部31,31とに、軟質樹脂製の筒状グリップ33が外嵌する状態で装着されている。
筒状グリップ33が装着される範囲は、縦杆部30のうちの前記屈曲点箇所C1,C1から前記揺動軸心P1側へ向けて延出された部位と、前記横杆部31,31のうちで、前記屈曲点箇所C1,C1から連結部材32の端部と対向する箇所に至る部位である。
【0034】
縦杆部30,30と横杆部31,31とは、
図4に示されるように、仮想平面F1に沿う方向の径d1が長く、仮想平面F1に交差する方向の径d2が短い長円形状の断面となるようにした潰しパイプによって構成されている。
【0035】
連結部材32は、横杆部31,31の端部に外嵌するように構成されており、内周面が横杆部31,31の端部の外周面に嵌合し得るようにほぼ相似形に形成されている。
この連結部材32と横杆部31,31の端部とは、
図3及び
図5に示すように、4本の連結ボルト34で連結されている。
この実施形態では4本の連結ボルトで連結しているが、連結ボルト34の本数は適宜変更できる。
【0036】
軟質樹脂製の筒状グリップ33は、横杆部31,31の端部の外周面、に対して、少し余裕のある大きさの内周面を有した筒状に形成されている。このように筒状グリップ33の内周面の周長を、横杆部31,31の端部の外周面の周長に対して少し余裕のある大きさとしているのは、筒状グリップ33を横杆部31,31、及び縦杆部30,30に外嵌させ易くするためである。
このように筒状グリップ33の内周面の周長を、横杆部31,31の端部の外周面の周長に対して、少し余裕のある大きさとしたことにより、筒状グリップ33の内周面と、横杆部31,31の端部の外周面との間に、僅かではあるが、径方向で隙間を生じさせている。この隙間に対して、
図3乃至
図5に示すように、スペーサ35を挿入することにより、横杆部31,31の端部の外周面と筒状グリップ33の内周面との径方向での隙間を埋めることができる。
【0037】
スペーサ35を、横杆部31,31の端部の外周面と筒状グリップ33の内周面との間に挿入する際には、次のようにしている。
すなわち、軟質樹脂製の筒状グリップ33が、ある程度の弾性変形が可能である性質を利用して、横杆部31,31の端部から、隙間にスペーサ35を圧入するように挿入する。その後、筒状グリップ33の端部を一時的にめくり上げることによって筒状グリップ33の内周面と横杆部31,31の外周面との間隔が部分的に拡げられる。その拡げられた隙間に滑り止めテープ(図示せず)を介在させ、筒状グリップ33をスペーサ35や横杆部31,31の端部の外周面に接着してもよい。
【0038】
スペーサ35は、
図3乃至
図5に示すように、硬質樹脂製の薄板材であり、左側の横杆部31と筒状グリップ33との嵌合箇所から、右側の横杆部31と筒状グリップ33との嵌合箇所にわたって、横杆部31の長さ方向に長く形成されている。このスペーサ35の長さ方向の中間位置には、連結部材32の内部に位置する範囲で連結ボルト34の挿通孔が形成されており、
図4,5に示すように、スペーサ35の板厚方向に連結ボルト34を差し込むことで、スペーサ35の位置も固定される。
スペーサ35の具体形状は、
図3に破線で示されているように、スペーサ35の板面方向の幅で、中央部の連結部材32の内部に位置する範囲が比較的狭く、両端側における横杆部31と筒状グリップ33との嵌合箇所に対応する部分の幅が比較的広くなっている。
この実施形態では一枚のスペーサ35を挿入した状態を示しているが、複数枚のスペーサ35を重ねて前記隙間に挿入しても良い。
【0039】
上記のスペーサ35を、筒状グリップ33に差し込んだ状態で、連結部材32の外周面と、筒状グリップ33の外周面とが、ほぼ面一に連なるように、連結部材32と筒状グリップ33の断面形状が形成されている。
【0040】
〔別実施形態〕
以下に、別実施形態を示す。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0041】
(1)上述した実施形態において、手元操作レバー3は次のように構成されていた。つまり、左の縦杆部30のうちの揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように左の横杆部31が接続され、右の縦杆部30のうちの揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように右の横杆部31が接続され、左右の横杆部31,31の端部同士が連結部材32で連結され、左の縦杆部30と左の横杆部31とにわたる状態で左の筒状グリップ33が外嵌され、右の縦杆部30と右の横杆部31とにわたる状態で右の筒状グリップ33が外嵌されていた。
しかしながら、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、
図6に示されるように構成されたものであっても良い。この構造では、左の縦杆部30が直線状に形成され、右の縦杆部30と横杆部31とが、連続した一本のL字状の部材で構成されている。左の直線状の縦杆部30に外嵌する直線的な筒状グリップ33と、右の縦杆部30と横杆部31とにわたるL字状の筒状グリップ33を備えている。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0042】
(2)
図7に示されるように構成されたものであっても良い。この構造では、左の縦杆部30と右の縦杆部30とが、共に直線状に形成され、左右の縦杆部30,30の端部同士にわたって、連続した一本の直線状の横杆部31を備えている。
軟質樹脂製の筒状グリップ33は、左右の縦杆部30,30に個別に外嵌する直線的な縦杆カバー部33a,33aと、直線状の横杆部31に外嵌する直線状の横杆カバー部33bとを備えている。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0043】
(3)
図8に示されるように構成されたものであっても良い。この構造では、連続した一本の直線状の横杆部31を備え、左右の縦杆部30,30のそれぞれには、横杆部31の端部に対して滑らかに連なる湾曲部分30aを備え、横杆部31と左右の縦杆部30,30とが分割可能に構成されている。軟質樹脂製の筒状グリップ33は、横杆部31に外嵌する直線状の横杆カバー部33bと、湾曲部分30aを含めて左右の縦杆部30,30に外嵌する縦杆カバー部33aを備えている。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0044】
(4)
図9に示されるように、左の縦杆部30のうちの揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように左の横杆部31が接続され、右の縦杆部30のうちの揺動軸心P1から遠い側の端部に連なるように右の横杆部31が接続され、筒状グリップ33は、一本の連続した軟質樹脂製のもので構成されている。
この構造では、筒状グリップ33の一端側を左の横杆部31に対して外嵌させ、筒状グリップ33の他端側を右の横杆部31に対して外嵌させるようにして、横杆部31,31に対する筒状グリップ33の外嵌作業を、筒状グリップ33の一方の端部側からのみ行う場合に比べて軽減できるようにしている。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0045】
(5)
図10に示されるように構成されたものであっても良い。この構造では、手元操作レバー3が、横杆部31の左右方向での中間箇所で左右に分割可能に構成されているとともに、操縦ハンドル16の側部ハンドル杆16aに対する連結用の基部取り付け部分36と縦杆部30との接続箇所でも分割可能に構成されている。
左右の横杆部31,31同士は、突き合わせ端部に備えた凸部31aと穴部31bとの嵌合によって接続可能に構成されている。基部取り付け部分36と縦杆部30との接続箇所でも、両者の突き合わせ端部に同様な嵌合構造を設けるなどして接続可能に構成されている。
筒状グリップ33は、
図9に記載したものと同様に、左右の縦杆部30,30と、横杆部31と、の全体にわたる一本の連続した軟質樹脂製のもので構成されている。手元操作レバー3への装着の際にも、
図9に記載したものと同様に、一端側を左の横杆部31に、他端側を右の横杆部31に対して嵌合させるようにすればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0046】
(6)図示はしないが、
図3及び
図4に示すように、手元操作レバー3が横杆部31の左右方向での中間箇所で左右に分割可能に構成されている構造で、筒状グリップ33も、
図3及び
図4に示すように、左右方向での中間箇所で左右に分割された構造のものにおいて、さらに、側部ハンドル杆16aに対する連結用の基部取り付け部分36と縦杆部30との接続箇所でも分割可能に構成されているものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0047】
(7)上述した実施形態においては、手元操作レバー3として、主クラッチを操作するクラッチレバーを例示したが、必ずしも、主クラッチを操作するクラッチレバーのみに限らず、例えば、主クラッチと駐車ブレーキ等の別の機器も連携して操作するものであっても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の歩行型作業機は、歩行型の作業機や、田植機や、野菜移植機の他、動力伝達系のクラッチと、その操作を行う操作レバーを備える各種の作業機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 機体主部
3 クラッチレバー
16 操縦ハンドル
16a 側部ハンドル杆
16b 横向きハンドル杆
21 駆動輪体
30 縦杆部
31 横杆部
32 連結部材
33 筒状グリップ
33a 縦杆カバー部
33b 横杆カバー部
35 スペーサ