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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240830BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021513243
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050227
(87)【国際公開番号】W WO2020055756
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】62/729,189
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518229401
【氏名又は名称】ミラティ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エングストローム,ラーズ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アランダ,ルース・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ジェームズ・ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】ハリン,ジル
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528488(JP,A)
【文献】国際公開第2017/201161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法において使用するための薬学的組成物であって、
前記方法が、前記対象に、セツキシマブと、式:
【化1】
のKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩との、治療有効量の組み合わせを投与することを含み、
前記薬学的組成物が、前記セツキシマブ、および/または、前記式:
【化2】
のKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含み、並びに
前記がんが、KRas G12C変異に関連する肺癌、結腸直腸癌、扁平上皮癌、大腸腺癌または直腸腺癌である、
薬学的組成物。
【請求項2】
前記セツキシマブおよび前記KRAS G12C阻害剤が、同じ日に投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記セツキシマブおよび前記KRAS G12C阻害剤が、異なる日に投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記KRas G12C阻害剤が、最大耐量で投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記セツキシマブおよび前記KRAS G12C阻害剤が各々、最大耐量で投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記セツキシマブと前記KRAS G12C阻害剤との治療有効量の組み合わせが、前記KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、前記対象における増加した全生存期間、増加した無増悪生存期間、腫瘍成長退縮の増加、腫瘍成長阻害の増加、または増加した安定した疾患の期間をもたらす、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
セツキシマブと式:
【化3】
のKRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩との治療有効量の組み合わせ、並びに薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
がん細胞中のKRas G12C活性に起因するがん細胞の増殖を阻害するための方法において使用するための薬学的組成物であって、
前記方法が、KRas G12C活性の阻害が所望される前記細胞を、有効量の、セツキシマブ、および式:
【化4】
のKRas G12C阻害剤、その薬学的組成物もしくは薬学的に許容される塩と接触させることを含み、
前記薬学的組成物が、前記セツキシマブ、および/または、前記式:
【化5】
の前記KRas G12C阻害剤、その薬学的組成物もしくは薬学的に許容される塩を含み、
前記セツキシマブが、前記KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を相乗的に増加させ、並びに
前記がん細胞が、KRas G12C変異に関連する肺癌、結腸直腸癌、扁平上皮癌、大腸腺癌または直腸腺癌の細胞である、
薬学的組成物。
【請求項9】
前記セツキシマブが、前記KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を相乗的に増加させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
式:
【化6】
のKRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法において使用するための薬学的組成物であって、
前記方法が、式:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を用いたKRas G12C治療を受けている対象に、単独で、または薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくは希釈剤と組み合わせて、治療有効量のセツキシマブを投与することを含み、
前記薬学的組成物が前記セツキシマブを含み、
前記セツキシマブが、前記KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を相乗的に増加させ、並びに
前記がん細胞が、KRas G12C変異に関連する肺癌、結腸直腸癌、扁平上皮癌、大腸腺癌または直腸腺癌の細胞である、薬学的組成物。
【請求項11】
前記KRas G12C阻害剤の前記治療有効量が、約0.01~100mg/kg/日である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記KRas G12C阻害剤の前記治療有効量が、約0.1~50mg/kg/日である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記セツキシマブの前記治療有効量が、約0.01~100mg/kg/日である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記セツキシマブの前記治療有効量が、約0.1~50mg/kg/日である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記KRas G12Cに関連するがんが、非小細胞肺癌である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
対象においてがんを治療するための、請求項15に記載の薬学的組成物を含む、キットであって、
前記がんが、KRas G12C変異に関連する肺癌、結腸直腸癌、扁平上皮癌、大腸腺癌または直腸腺癌である、キット
【請求項17】
a)セツキシマブを含む薬学的組成物、および
b)式:
【化8】
のKRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物
を含む、対象においてがんを治療するためのキットであって、
前記がんが、KRas G12C変異に関連する肺癌、結腸直腸癌、扁平上皮癌、大腸腺癌または直腸腺癌である、キット
【請求項18】
前記薬学的組成物の投与のための説明書を含む挿入物をさらに含む、請求項16または17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療するために有用な組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、汎ErbBファミリー阻害剤とKRas G12C阻害剤との治療上有効な組み合わせ、阻害剤を含む薬学的組成物、組成物を含むキット、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Kirstenラット肉腫2ウイルスがん遺伝子ホモログ(「KRas」)は、低分子GTPaseであり、がん遺伝子のRasファミリーのメンバーである。KRasは、複数のチロシンキナーゼから受信した上流の細胞シグナルを下流エフェクターに伝達して、細胞増殖を含む多種多様なプロセスを調節するために、不活性(GDP結合)状態と活性(GTP結合)状態との間を循環している分子スイッチとしての機能を果たす(例えばAlamgeer et al.,(2013)Current Opin Pharmcol.13:394-401を参照のこと)。
【0003】
悪性度における活性型KRasの役割は、30年以上前に観察された(例えば、Santos et al.,(1984)Science 223:661-664を参照のこと)。KRasの異常な発現は、全てのがんの20%までを占め、GTP結合を安定化し、KRasおよび下流シグナル伝達の恒常的活性化をもたらすの発癌性KRas変異は、肺腺癌の25~30%で報告された。(例えば、Samatar and Poulikakos(2014)Nat Rev Drug Disc 13(12):928-942 doi:10.1038/nrd428を参照のこと)。KRasの一次アミノ酸配列のコドン12および13におけるミスセンス変異をもたらす単一ヌクレオチド置換は、肺腺癌におけるこれらのKRasドライバー変異の約40%を構成し、G12Cトランスバージョンは、最もよく見られる活性化変異である(例えば、2012年9月26日にオンラインで公開されたDogan et al.,(2012)Clin Cancer Res.18(22):6169-6177、doi:10.1158/1078-0432.CCR-11-3265を参照のこと)。
【0004】
悪性度におけるKRasの周知の役割および様々な腫瘍型におけるKRasのこれらの頻繁な変異の発見により、KRasは、製薬業界のがん治療での非常に魅力的な標的となった。がんを治療するためのKRas阻害剤を開発しようとする30年間の大規模な発見努力にも関わらず、いかなるKRas阻害剤も規制当局の認可を取得するのに十分な安全性および/または有効性を実証しなかった(例えば、McCormick(2015)Clin Cancer Res.21(8):1797-1801を参照のこと)。
【0005】
グアニンヌクレオチド交換因子などのエフェクターを妨害するもの(例えば、Sun et al.,(2012)Agnew Chem Int Ed Engl.51(25):6140-6143 doi:10.1002/anie201201358を参照のこと)、ならびにKRas G12Cを標的とするもの(例えば、Ostrem et al.,(2013)Nature 503:548-551を参照のこと)を含む、KRas活性を阻害する化合物が、依然として、非常に望ましく、かつ調査されている。明らかに、KRasの阻害剤、特に、KRas G12Cを含む活性化KRas変異体の阻害剤を開発するという関心および試みが尚も継続している。
【0006】
本明細書に開示されるKRas G12C阻害剤は、KRas G12C酵素活性の強力な阻害剤であり、KRas G12C変異を有する細胞株のインビトロ増殖を阻害する単剤活性を示すが、任意の所与のKRas G12C阻害剤の相対的効力およびまたは観察された最大効果は、KRAS変異細胞株の間で異なり得る。効力の範囲および観察された最大効果の理由(複数可)は、完全には理解されていないが、ある特定の細胞株は、異なる固有の耐性を有するように思われる。したがって、インビトロおよびインビボでのKRas G12C阻害剤の効力、有効性、治療指数、および/または臨床的利益を最大化するための代替アプローチを開発する必要がある。
【0007】
一態様では、本発明の組み合わせ療法は、KRas G12C阻害剤の効力を相乗的に増加させ、本明細書に開示されるKRas G12C阻害剤の改善された有効性をもたらす。別の態様では、本発明の組み合わせ療法は、単剤として本明細書に開示されるKRas G12C阻害剤を用いた治療と比較して、患者に対して改善された臨床的利益を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Alamgeer et al.,(2013)Current Opin Pharmcol.13:394-401
【文献】Santos et al.,(1984)Science 223:661-664
【文献】Samatar and Poulikakos(2014)Nat Rev Drug Disc 13(12):928-942
【文献】Dogan et al.,(2012)Clin Cancer Res.18(22):6169-6177
【文献】McCormick(2015)Clin Cancer Res.21(8):1797-1801
【文献】Sun et al.,(2012)Agnew Chem Int Ed Engl.51(25):6140-6143
【文献】Ostrem et al.,(2013)Nature 503:548-551
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤と、式(I)のKRAS G12C阻害剤
【化1】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
Xが、4~12員の飽和または部分飽和の単環式環、架橋環、またはスピロ環であり、飽和または部分飽和の単環式環が、1つ以上のRで任意に置換されており、
Yが、結合、O、S、またはNRであり、
が、
【化2】
または
【化3】
であり、
が、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、アルキルアミニルアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、-Z-NR10、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり、Z、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルの各々が、1つ以上のRで任意に置換されていてもよく、
Zが、C1-C4アルキレンであり、
各Rが、独立して、C1-C3アルキル、オキソ、またはハロアルキルであり、
Lが、結合、-C(O)-、またはC1-C3アルキレンであり、
が、水素、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキルおよびヘテロアリールの各々が、1個以上のRまたはRで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
が、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールの各々が、1つ以上のRで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C6アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、シアノ、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはQ-ハロアルキルであり、QがOまたはSであり、
が、オキソ、C1-C3アルキル、C2-C4アルキニル、ヘテロアルキル、シアノ、-C(O)OR、-C(O)N(R、-N(Rであり、C1-C3アルキルが、シアノ、ハロゲン、-OR、-N(R、またはヘテロアリールで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、水素、オキソ、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ハロゲン、C1-C6アルキル、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミニル、ジアルキルアミドアルキル、またはジアルキルアミニルアルキルであり、C1-C6アルキルが、シクロアルキルで任意に置換されていてもよく、
各R10が、独立して、水素、アシル、C1-C3アルキル、ヘテロアルキル、またはヒドロキシアルキルであり、
11が、ハロアルキルであり、
が、不在、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、C1-C3アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、-C(O)N(R、またはヒドロキシアルキルであり、
各Rが、独立して、水素、重水素、シアノ、C1-C3アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、-ZNR11、-C(O)N(R、-NHC(O)C1-C3アルキル、-CHNHC(O)C1-C3アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、ヘテロシクリル部分が、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、およびC1-C3アルキルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリール部分が、1つ以上のRで任意に置換されており、
mが、ゼロであるか、または1~2の整数であり、
pが、1または2であり、
【化4】
が三重結合である場合、Rが存在せず、Rが存在し、pが、1であるか、
または
【化5】
が二重結合である場合、Rが存在し、Rが存在し、pが、2であるか、またはR、R、およびそれらが結合している炭素原子が、1つ以上のRで任意に置換されている5~8員の部分飽和シクロアルキルを形成する)と、の組み合わせを投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0010】
本明細書で提供される方法で使用するために、式I-Aを有する式IのKRas G12C阻害剤化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R、R、R、R、R10、R11、L、およびmが、式Iで定義された通りであり、ピペラジニル環が、Rで任意に置換されており、Rが式Iで定義された通りである)もまた、含まれる。
【0011】
本明細書で提供される方法で使用するために、式I-Bを有する式IのKRas G12C阻害剤化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R、R、R、L、およびmが、式Iで定義された通りであり、Rが、1つ以上のRで任意に置換されているヘテロシクリルアルキルであり、式中、Rが、式Iで定義された通りであり、ピペラジニル環が、Rで任意に置換されており、式中、Rが、式Iで定義された通りである)もまた、含まれる。
【0012】
本発明の別の態様では、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤と式I、式I-A、もしくは式1-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩との組み合わせ、および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物が、本方法で使用するために提供される。
【0013】
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせを投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。一実施形態では、がんは、KRas G12Cに関連するがんである。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、KRas G12C阻害剤化合物および汎ErbBファミリー阻害剤は、提供された組成物および方法における唯一の活性剤である。
【0015】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、不可逆的な阻害剤である。提供された組成物および方法に好適な不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤の例には、アファチニブ、ダコミチニブ、カネルチニブ、ポジオチニブ、AV412、PF6274484、およびHKI357が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、可逆的な阻害剤である。提供された組成物および方法に好適な可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤の例には、エルロチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、バルリチニブ、TAK-285(N-[2-[4-[3-クロロ-4-[3-(トリフルオロメチル)フェノキシ]フェニルアミノ]-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル]エチル]-3-ヒドロキシ-3-メチルブチルアミド)、AEE788(6-[4-(4-エチルピペラジン-1-イルメチル)フェニル]-N-[1(R)-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン)、タルロキソチニブ3-[N-[4-(3-ブロモ-4-クロロフェニルアミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル]カルバモイル]-N,N-ジメチル-N-(1-メチル-4-ニトロ-1H-イミダゾール-5-イルメチル)-2(E)-プロペン-1-アミニウムブロミド)、BMS 599626/AC-480(N-[4-[1-(3-フルオロベンジル)-1H-インダゾール-5-イルアミノ]-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル]カルバミン酸モルホリン-3(S)-イルメチルエステル塩酸塩)、およびGW 583340 HCl(N-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニル]-6-[2-[2-(メチルスルホニル)エチルアミノメチル]チアゾール-4-イル]キナゾリン-4-アミン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、EGFR阻害剤とHER2阻害剤との組み合わせであり、EGFR阻害剤とHER2阻害剤は、AG 1478(N-(3-クロロフェニル)-6-メトキシ)-7-[11C]メトキシキナゾリン-4-アミン)、AG 555(2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(3-フェニルプロピル)-2(E)-プロペンアミド)、AG 556((E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(4-フェニルブチル)アクリルアミド、AG 825(3-[3-(ベンゾチアゾール-2-イルスルファニルメチル)-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル]-2-シアノ-2-プロペンアミド)、CP 724714(2-メトキシ-N-[3-[4-[3-メチル-4-(6-メチルピリジン-3-イルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル]-2(E)-プロペニル]アセトアミド、BIBU 1361(N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-6-[4-(ジエチルアミノメチル)ピペリジン-1-イル]ピリミジン[5,4-d]ピリミジン-4-アミン)、BIBU 1382、JNJ 28871063((E)-4-アミノ-6-[4-(ベンジルオキシ)-3-クロロフェニルアミノ]ピリミジン-5-カルバルデヒドO-[2-(4-モルホリニル)エチル]オキシム)、PD 153035(4-(3-ブロモフェニル)-6,7-ジメトキシ)、およびPD 158780(N-(3-ブロモフェニル)-N-メチル-ピリド[3,4-d]ピリミジン4,6-ジアミン)のうちの2つの組み合わせである。
【0018】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER2抗体、または抗EGFR抗体と抗HER2抗体との組み合わせである。EGFRおよび/またはHER2を標的とするモノクローナル抗体、抗体コンジュゲート、および二重特異性抗体を含む抗体は、周知であり、多くの抗体が、研究およびヒトの臨床使用のために市販されている。
【0019】
提供される組成物および方法に適した抗EGFR抗体の例には、ネシツムマブ、パニツムマブ、およびセツキシマブが含まれる。提供される組成物および方法に適した抗HER2抗体の例には、ペルツズマブ、トラスツズマブ、およびトラスツズマブエムタンシンが含まれる。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法であって、がん細胞を、治療有効量の、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせと接触させることを含み、汎ErbBファミリー阻害剤が、KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を相乗的に増加させる、方法を提供する。一実施形態では、接触は、インビトロで行われる。一実施形態では、接触は、インビボで行われる。
【0021】
がんの治療を必要とする対象においてがんを治療するための方法であって、(a)がんがKRas G12C変異に関連する(例えば、KRas G12Cに関連するがんである)ことを判定することと(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して判定されるように)、(b)患者に、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせを投与することと、を含み、汎ErbBファミリー阻害剤が、KRas G12C阻害剤に対するKRas G12Cに関連するがんの感受性を相乗的に増加させる、方法も、本明細書で提供される。
【0022】
汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、を含む、キットも、本明細書で提供される。汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、を含む、キットも、KRas G12Cがんの治療で使用するために提供される。
【0023】
関連する態様では、本発明は、ある用量の汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的組成物と、を含む、キットを、対象においてがん細胞の増殖を阻害するのに有効な量で提供する。キットには、場合によっては、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与のための説明書を含む挿入物が含まれる。挿入物は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩または薬学的組成物と組み合わせて、汎ErbBファミリー阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を使用するための1組みの説明書をユーザに提供し得る。
【0024】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本発明の組成物または方法で治療する前に、患者は、化学療法、標的抗癌剤、放射線療法、および手術のうちの1つ以上で治療され、および任意に、前治療は失敗し、ならびに/または患者に手術が施され、および任意に、手術が失敗し、ならびに/または患者がプラチナベースの化学療法剤で治療されており、および任意に、患者がプラチナベースの化学療法剤での治療に反応しないと以前に判定されており、ならびに/または患者がキナーゼ阻害剤で治療されており、および任意に、キナーゼ阻害剤による前治療が失敗し、ならびに/または患者が1つ以上の他の治療薬(複数可)で治療された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、KRas G12Cがんを治療するための組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせを投与することを含む、方法、各々、治療有効量の阻害剤を別々に含む薬学的組成物、組成物を含むキット、およびその使用方法に関する。
【0026】
汎ErbBファミリー阻害剤と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩との組み合わせは、KRas G12Cを発現するがん細胞に対する式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩の効力を相乗的に増加させ、それにより式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物およびその薬学的に許容される塩の有効性および治療指数を増加させる。
【0027】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において参照される全ての特許、特許出願、および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書で使用する場合、「KRas G12C」は、アミノ酸位置12でのグリシンからシステインへのアミノ酸置換を含む変異型の哺乳動物KRasタンパク質を指す。ヒトKRasのアミノ酸コドンおよび残基位置の割り当ては、ユニプロットKB/スイスプロットP01116:バリアントp.Gly12Cysにより同定されたアミノ酸配列に基づく。
【0029】
本明細書で使用する場合、「KRas G12C阻害剤」は、本明細書に記載の式(I)、式I-A、および式I-Bで表される本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を指す。これらの化合物は、KRas G12Cの酵素活性の全てまたは一部を負に調節するかまたは阻害することができる。本発明のKRas G12C阻害剤は、KRas G12Cと相互作用し、位置12のシステイン残基のスルフヒドリル側鎖と共有結合付加体を形成することによりこれに非可逆的に結合し、KRas G12Cの酵素活性を阻害する。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。
【0030】
本明細書で使用する場合、「KRas G12Cに関連する疾患または障害」は、KRas G12C変異に関連するか、またはそれにより媒介されるか、またはそれを有する疾患または障害を指す。KRas G12Cに関連する疾患または障害の非限定的な例は、KRas G12Cに関連するがんである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ErbBファミリー」または「ErbBファミリーメンバー」は、EGFR、ErbB2(HER2)、ErbB3(HER3)、およびErbB4(HER4)を含む哺乳動物膜貫通タンパク質チロシンキナーゼファミリーのメンバーを指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「汎ErbBファミリー阻害剤」は、ErbBファミリーの少なくとも1つのメンバーの活性の全てまたは一部を負に調節または阻害することができる、薬剤、例えば、化合物または抗体を指す。1つ以上のErbBファミリーメンバーの調節または阻害は、1つ以上のErbBファミリーメンバーのキナーゼ酵素活性を調節もしくは阻害することによって、またはErbBファミリーメンバーのホモ二量体化もしくはヘテロ二量体化を遮断することによって起こり得る。本明細書の方法のいくつかの実施形態では、「汎ErbB阻害剤」という用語は、単一の汎ErbB阻害剤の使用を指す。本明細書の方法のいくつかの実施形態では、「汎ErbB阻害剤」という用語は、2つの汎ErbB阻害剤の使用を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は互換的に使用され、任意の動物を指し、マウス、ラット、その他のげっ歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、牛、ヒツジ、ウマ、霊長類、およびヒトなどの哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、治療および/または予防される疾患または障害の少なくとも1つの症状を経験および/または呈している。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C変異を有すると特定または診断されている(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを用いて判定して)。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C変異に対して陽性である腫瘍を有する(例えば、規制当局に認可されたアッセイまたはキットを用いて判定して)。対象は、KRas G12C変異に対し陽性である腫瘍(複数可)を有する対象であり得る(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して陽性であると特定される)。対象は、腫瘍がKRas G12C変異を有する対象であり得る(例えば、腫瘍は、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたキットまたはアッセイを用いてそのように特定されている)。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C遺伝子に関連するがんを有すると疑われている。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C変異を有する腫瘍があることを示す臨床記録を有している(および場合により、臨床記録は、対象が、本明細書で提供される組成物のいずれかで処置されるべきであることを示している)。
【0034】
本明細書で使用される「小児患者」という用語は、診断または治療の時点で16歳未満の患者を指す。「小児」という用語は、新生児(出生から生後1カ月まで)、乳幼児(1カ月から2歳まで)、子供(2歳から12歳まで)、および青年(12歳から21歳(22歳の誕生日まで))を含む、様々な亜集団にさらに分けることができる。Berhman RE,Kliegman R,Arvin AM,Nelson WE.Nelson Textbook of Pediatrics,15th Ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,1996、Rudolph AM,et al.Rudolph’s Pediatrics,21st Ed.New York:McGraw-Hill,2002、およびAvery MD,First LR.Pediatric Medicine,2nd Ed.Baltimore:Williams & Wilkins;1994。
【0035】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、患者(例えば、KRas G12Cに関連するがんを有すると疑われる患者、KRas G12Cに関連するがんの1つ以上の症状を有している患者、および/またはKRas G12Cに関連するがんを発症する危険性が高い患者)由来の試料(例えば、生物学的試料、または生検試料(例えば、パラフィン包埋生検試料)を使用して、患者がKRas G12C変異を有しているかどうかを判定するために使用されるアッセイには、例えば、次世代シークエンシング、免疫組織化学的検査、蛍光顕微鏡法、break apart FISH分析、サザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、FACS分析、ノーザンブロッティング、およびPCR系増幅(例えば、RT-PCR、定量的リアルタイムRT-PCR、対立遺伝子特異的ジェノタイピング(genotyping)、またはddPCR)が含まれ得る。当技術分野で周知の通り、このアッセイは通常、例えば、少なくとも1種の標識核酸プローブまたは少なくとも1種の標識抗体またはその抗原結合断片を用いて実施される。
【0036】
「規制当局」という用語は、医薬品の医療への使用を国により承認するための国の機関である。例えば、規制当局の非限定的な例は、米国食品医薬局(FDA)である。
【0037】
「アミノ」という用語は、-NHを指す。
【0038】
「アシル」という用語は、-C(O)CHを指す。
【0039】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、1、2、または3個の置換基で任意に置換されている、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖脂肪族基を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「ハロアルキル」という用語は、1個以上の水素がハロゲンにより置換されているアルキル鎖を指す。ハロアルキルの例は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、およびフルオロメチルである。
【0041】
「ハロアルキルオキシ」という用語は、-O-ハロアルキルを指す。
【0042】
「アルキレン」基は、上記で定義のアルキル基で、2つの他の化学基の間に位置し、それらを連結するように機能するアルキル基である。アルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「アルコキシ」という用語は、-OC1-C6アルキルを指す。
【0044】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語には、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、さらなる例として、3~6個の炭素を有する飽和および部分不飽和環状炭化水素基が含まれ、シクロアルキル基は、さらに任意に置換されている。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書で定義されたアルキル基で、鎖中の1個以上の炭素原子がO、S、およびNからなる群から選択されるヘテロ原子により置換されているアルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、-アルキル-OHを指す。
【0047】
「ジヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書で定義のアルキル基で、2個の炭素原子が各々、ヒドロキシル基で置換されているアルキル基を指す。
【0048】
「アルキルアミニル」という用語は、-NR-アルキルを指し、Rは、水素である。一実施形態では、Rは、水素である。
【0049】
「ジアルキルアミニル」という用語は、-N(Rを指し、各Rは、C1-C3アルキルである。
【0050】
「アルキルアミニルアルキル」という用語は、-アルキル-NR-アルキルを指し、Rは、水素である。一実施形態では、Rは、水素である。
【0051】
「ジアルキルアミニルアルキル」という用語は、-アルキル-N(Rを指し、各Rは、C1-C4アルキルであり、-アルキル-N(Rのアルキルは、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルで任意に置換されていてもよい。
【0052】
「アリール」基は、任意に置換されている1~3個の芳香環を含むC-C14芳香族部分である。一実施形態では、アリール基は、C-C10アリール基である。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、およびジヒドロベンゾフラニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合したアリール基を含み、これらのいずれも、独立して、任意に置換されてもまたは非置換であってもよい。アラルキル基の一例は、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルが含まれるが、これらに限定されない、(C-C)アルキル(C-C10)アリールである。置換アラルキルの一例は、アルキル基がヒドロキシアルキルで置換されているものである。
【0054】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」基は、約3~約12個の原子、例えば、4~8個の原子を有する環構造であり、1個以上の原子がN、O、およびSからなる群から選択され、環原子の残りは炭素である。ヘテロシクリルは、単環式、二環式、スピロ環または架橋環系であってよい。ヘテロ環基は、1つ以上の位置で炭素または窒素上でRで任意に置換されており、Rは、式Iで定義される通りである。ヘテロ環基はまた、独立して、窒素上で、アルキル、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニルで任意に置換されているか、または硫黄上で、オキソもしくは低級アルキルで任意に置換されている。ヘテロ環基の例には、エポキシ、アゼチジニル、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、ジチアニル、トリチアニル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、デカヒドロキノリニル、ピペリドニル、4-ピペリジノニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシド、モルホリニル、オキサゼパニル、アザビシクロヘキサン、アザビシクロヘプタン、およびオキサアザビシクロヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。この用語の範囲から特に排除されるのは、隣接する環状Oおよび/またはS原子を有する化合物である。
【0055】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、アルキルリンカーを介して分子の残りの部分に連結された本明細書で定義のヘテロシクリル基を指し、ヘテロシクリルアルキルのアルキルリンカーは、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルで任意に置換されていてもよい。
【0056】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、5~14個の環原子、好ましくは5、6、9、または10個の環原子を有し、環状アレイ中に共有された6個、10個、または14個のπ電子を有し、および炭素原子に加えて、N、O、およびSからなる群から選択される環当たり1~3個のヘテロ原子を有する基を指す。ヘテロアリール基の例には、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、およびキサンテニルが挙げられる。
【0057】
「ヘテロアリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合したヘテロアリール基を含み、ラジカルはアルキル基上にあり、これらのいずれも、独立して、任意に置換されているか、または非置換である。ヘテロアリールアルキル基の例には、C1-C6アルキル基に結合した5、6、9、または10個の環原子を有するヘテロアリール基が含まれる。ヘテロアラルキル基の例には、ピリジルメチル、ピリジルエチル、ピロリルメチル、ピロリルエチル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル、チアゾリルメチル、チアゾリルエチル、ベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾイミダゾリルエチル キナゾリニルメチル、キノリニルメチル、キノリニルエチル、ベンゾフラニルメチル、インドリニルエチル、イソキノリニルメチル、イソイノジルメチル、シンノリニルメチル、およびベンゾチオフェニルエチルが挙げられる。この用語の範囲から特に排除されるのは、隣接する環状Oおよび/またはS原子を有する化合物である。
【0058】
本明細書で使用する場合、化合物の「有効量」は、所望の標的、すなわち、ErbBファミリーメンバーまたはKRas G12Cの活性を負に調節するまたは阻害するのに十分な量である。このような量は、例えば、単回用量として投与され得るか、または投与計画に従って投与され得、それにより、この量は効果的である。
【0059】
本明細書で使用する場合、化合物の「治療有効量」は、症状を緩和する、または症状を何らかの様式で減らす、または病態の進行を停止するまたは止める、またはErbBファミリーメンバー(複数可)もしくはKRas G12Cの活性を負に調節するまたは阻害するのに十分な量である。このような量は、例えば、単回用量として投与され得るか、または投与計画に従って投与され得、それにより、この量は効果的である。
【0060】
本明細書で使用する場合、2つの化合物の「組み合わせの治療有効量」は、組み合わせ中の各化合物の治療有効量と比較して、組み合わせの活性を相乗的に増加させる量、すなわち単なる相加効果ではない量である。あるいは、インビボで、治療有効量の、汎ErbB阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した全生存(「OS」)期間をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbB阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した無増悪生存(「PFS」)期間をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbB阻害剤またはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した腫瘍退縮をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbB阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した腫瘍成長阻害をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbB阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における安定した疾患の持続期間の改善をもたらす。このような量は、例えば、単回用量として投与され得るか、または投与計画に従って投与され得、それにより、この量は効果的である。
【0061】
本明細書で使用する場合、治療は、病態、障害、または疾患の症状または病態を緩和するかあるいは有利に変化させる任意の様式を指す。治療はまた、本明細書の組成物の任意の薬学的使用を包含する。
【0062】
本明細書で使用する場合、特定の薬学的組成物の投与による特定の障害の症状の緩和は、永久的であっても一時的であっても、持続的であっても一過性であっても、組成物の投与に起因し得るまたはその投与に関連し得る、何らかの軽減を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、数値的に定義されたパラメータ(例えば、KRAS阻害剤または汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩の用量、または本明細書に記載の組み合わせ療法による治療時間の長さ)を修正するために使用される場合の「約」という用語は、パラメータが、そのパラメータに記載されている数値よりも10%も上下に変動する可能性があることを意味する。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。パラメータのリストの初めに使用される「約」は、各パラメータを修正することを意味する。例えば、約0.5mg、0.75mg、または1.0mgは、約0.5mg、約0.75mg、または約1.0mgを意味する。同様に、約5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、および25%以上は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、または約25%以上を意味する。
【0064】
阻害剤化合物
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてがん、例えば、KRas G12Cに関連するがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせを投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。
【0065】
1.ErbBファミリー
上皮成長因子受容体(EGFR)は、ErbB受容体ファミリーの膜貫通型タンパク質チロシンキナーゼである。上皮成長因子(EGF)に結合すると、EGFR受容体は、別のEGFR分子とホモ二量体化することができるか、またはErbB2(HER2)、ErbB3(HER3)、もしくはErbB4(HER4)などの別のファミリーメンバーとヘテロ二量体化することができる。ErbB受容体のホモ二量体化および/またはヘテロ二量体化は、細胞内ドメインの重要なチロシン残基のリン酸化をもたらし、細胞の増殖および生存に関与する多数の細胞内シグナル伝達経路の刺激をもたらす。
【0066】
EGFR遺伝子の過剰発現は、膀胱、脳、頭頸部、膵臓、肺、乳房、卵巣、結腸、前立腺、および腎臓を含む様々ながんで特定されている。過剰発現に加えて、EGFR活性化変異が、非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍のサブセットで検出されている。これらの変異は、EGFRキナーゼドメインの一部をコードするEGFRエクソン18~21内で発生する傾向がある。これらの突然変異の約90%は、エクソン19の欠失またはエクソン21のL858R点突然変異である(Ladanyi and Pao(2008)Mod Path.May;21 Suppl 2:S16-22.doi:10.1038/modpathol.3801018)。これらの変異は、EGFRのキナーゼ活性を増加させ、下流の生存促進シグナル伝達経路の過剰活性化をもたらす。
【0067】
EGFRの過剰発現および/または活性化突然変異の頻度は、EGFRを抗癌療法の望ましい標的にし、多くのEGFR阻害剤が開発され、臨床的に利用可能である。
【0068】
第1世代のエルロチニブおよびゲフィチニブは、EGFRキナーゼドメインのATP結合部位に競合的に結合することによってEGFR活性を阻害するが、EGFR遺伝子の追加の変異、例えばT790M変異は、エルロチニブおよびゲフィチニブなどの薬物があまり結合していない変異EGFRタンパク質を生成する。これらの変異は、薬物に対する耐性と、そのような変異を有するがん患者の再発に関連しており、T790M変異体を標的とする第2世代のEGFR阻害剤の開発につながる。
【0069】
さらに、経路関連酵素MEKの阻害は、ErbBファミリーメンバー、特にEGFRの発現増加をもたらし、ErbBファミリー阻害剤に対する適応および獲得耐性をもたらし得る(Sun et al.,(2014)Cell Reports 7:86-93)。
【0070】
2.汎ErbBファミリー阻害剤
本発明の方法で使用される汎ErbBファミリー阻害剤は、可逆的または不可逆的なErbBファミリー阻害剤であり得る。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、1つを超えるErbBファミリーメンバーの活性を阻害する。
【0071】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、不可逆的な阻害剤である。不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤は、それぞれ、システイン797およびシステイン773のスルフヒドリル基と共有結合を形成することによってEGFRおよびHER2の活性を阻害し、細胞内触媒ドメインへのATPの結合をブロックする。したがって、これらの阻害剤は、例えば、EGFRエクソン19の欠失/挿入、ならびにL858RおよびT790M耐性変異を有する細胞株に対して活性である。
【0072】
本方法で使用するための例示的な不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤には、アファチニブ((E)-N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)-7-((テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エンアミド);ダコミチニブ((2E)-N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル}-4-(1-ピペリジニル)-2-ブテンアミド);カネルチニブ(N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)-7-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-6-イル)アクリルアミド);ポジオチニブ(1-(4-((4-((3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン);AV 412(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチン-1-イル]-6-キナゾリニル]-2-プロペンアミド);PF 6274484(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル]-2-プロペンアミド)、およびHKI 357((2E)-N-[[4-[[(3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)、ならびにその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が含まれる。一実施形態では、不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブである。一実施形態では、不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤は、ダコミチニブである。
【0073】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、可逆的な阻害剤である。例示的な可逆的な汎EGFRファミリー阻害剤には、エルロチニブ([6,7-ビス-(2-メトキシ-エトキシ)-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニル-フェニル)-アミン))、ゲフィチニブ(4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、サピチニブ(2-(4-((4-((3-クロロ-2-フルオロフェニル))アミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)-N-メチルアセトアミド);バリチニブ((R)-N4-(3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)フェニル)-N6-(4-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)キナゾリン-4,6-ジアミン);TAK-285(N-(2-(4-((3-クロロ-4-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)アミノ)-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル)エチル)-3-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミド);AEE788((S)-6-(4-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-N-(1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン);タルロキソチニブ3-[N-[4-(3-ブロモ-4-クロロフェニルアミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル]カルバモイル]-N,N-ジメチル-N-(1-メチル-4-ニトロ-1H-イミダゾール-5-イルメチル)-2(E)-プロペン-1-アミニウムブロミド);BMS 599626((3S)-3-モルホリニルメチル-[4-[[1-[(3-フルオロフェニル)メチル]-1H-インダゾール-5-イル]アミノ]-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル]-カルバメート二塩酸塩);およびGW 583340 HCl(N-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6-[2-[[[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-4-チアゾリル]-4-キナゾリンアミン二塩酸塩)、ならびにその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が含まれる。一実施形態では、可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤は、サピチニブである。一実施形態では、可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤は、タルロキソチニブである。
【0074】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、EGFR阻害剤とHER2阻害剤との組み合わせであり、EGFR阻害剤とHER2阻害剤は、AG 1478 HCl(N-(3-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシ-4-キナゾリナニン塩酸塩);AG 494(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-フェニル-2-プロペンアミド;AG 555(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(3-フェニルプロピル)-2-プロペンアミド;AG 556(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(4-フェニルブチル)-2-プロペンアミド;AG 825(E)-3-[3-[2-ベンゾチアゾリチオ)メチル]-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル]-2-シアノ-2-プロペンアミド;CP 724714(2-メトキシ-N-[(2E)-3-[4-[[3-メチル-4-[(6-メチル-3-ピリジニル)オキシ]フェニル]アミノ]-6-キナゾリニル]-2-プロペン-1-イル]アセトアミド;BIBU 1361 diHCl(N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-6-[4-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-4-アミン二塩酸塩);BIBU 1382(N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N-(1-メチル-4-ピペリジニル)ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン二塩酸塩);JNJ 28871063 HCl(5E-4-アミノ-6-(4-ベンジルオキシ-3-クロロフェニルアミノ)ピリミジン-5-カルボキサルデヒドN-(2-モルホリン-4-イルエチル)オキシム塩酸塩);PD 153035(4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシ塩酸塩);PD 158780(N-(3-ブロモフェニル)-N-メチル-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン)のうちの2つの組み合わせ、およびその薬学的に許容される塩または薬学的組成物である。
【0075】
野生型および変異ErbBファミリーメンバーを標的とする可逆的および不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤を製造するための方法は、当業者に周知であり、汎ErbBファミリー阻害剤は、研究またはヒトの使用の両方に好適な形態で、多種多様な商業的供給業者から入手することができる。加えて、本明細書に開示される組成物および方法で使用するのに適した可逆的および不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤、ならびにそのような阻害剤を調製するための方法は、米国特許出願公開第US20180050993号、同第US20180016268号、同第US20180008607号、同第US20170362204号、同第US20170362203号、同第US20170355683号、同第US20170342055号、同第US20170267671号、同第US20170183330号、同第US20170174697号、同第20170008856号、同第US20160375148号、同第US20160332994号、同第US20160257682号、同第US20160244469号、同第US20160137610号、同第US20160102076号、同第US20160016948号、同第US20150284340号、同第US20150274678号、同第US20150250778号、同第US20150246047号、同第US20150126508号、同第US20150025055号、同第US20140221403号、同第US20140178412号、同第US20140161722号、同第US20140155606号、同第US20140038981号、同第US20140038940号、同第US20140005391号、同第US20130296348号、同第US20130209461号、同第US20130137709号、同第US20120316135L号、同第US20120094999号、同第US20110295004号、同第US20110033453号、同第US20100196365号、同第US20100143295号、同第US20100120678号、同第US20100034689号、同第US20090209758号、同第US20090111772号、同第US20090029968号、同第US20080194578号、同第US20080139590号、同第US2000125448号、同第US20080051395号、同第US20070232607号、同第US20060235046号、および同第US20040023957号に開示されている。
【0076】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER2抗体、または抗EGFR抗体と抗HER2抗体との組み合わせ、またはその薬学的組成物である。EGFRおよび/またはHER-2を標的とするモノクローナル抗体、抗体薬物コンジュゲート、および二重特異性抗体を含む抗体は、周知であり、多くの抗体が、研究およびヒトの臨床使用のために市販されている。
【0077】
ヒトの臨床使用が承認されている例示的な抗EGFRモノクローナル抗体には、ネシツムマブ(Eli Lilly)、パニツムマブ(Amgen)、およびセツキシマブ(ImClone)が含まれるが、これらに限定されない。本方法で使用するのに適した他の抗EGFR抗体には、EP384、H11、11.6、225および199.12(Thermo Fisher)、GT133(GeneTex)、ならびに米国特許出願公開第US20080274114号、同第US20100166755号、同第US20100117110号、同第US20120034211号、同第US20120308576号、同第US20130273033号、同第US20130344093号、同第US20140286969号、同第US20150337042号、同第US20170218073号、同第US20170267765号、同第US20180036405号、同第US20180066066号、同第US20180094062号、同第US20180155433号、同第US20180306049号、同第US20180362443号、同第US20190040143号、同第US20190151328号、同第US20190194347号、同第US20190194350号、同第US20190209704号、同第US20190216924号、および同第US20190263930号に開示されたものが含まれる。
【0078】
一実施形態では、抗EGFRモノクローナル抗体は、セツキシマブである。
【0079】
ヒトの臨床使用が承認されている例示的な抗HER-2モノクローナル抗体には、ペルツズマブ(Roche)、トラスツズマブ(Roche)、およびトラスツズマブエムタンシン(Roche)が含まれるが、これらに限定されない。本方法で使用するのに適した他の抗Her2抗体、抗体薬物コンジュゲート、および二重特異性抗体には、米国特許出願公開第US20030228663号、同第US20060018899号、同第US20090187007号、同第US20090285837号、同第US20110159014号、同第US20110177095号、同第US20110313137号、同第US20120309942号、同第US20150166664号、同第US20150352225号、同第US20160051695号、同第US20160096893号、同第US20180022816号、同第US20180022820号、同第US20180057608号、同第US20180118837号、同第US20180258173号、同第US20190177428号、および同第US20190248918号に開示されたものが含まれる。
【0080】
2.KRas G12C阻害剤
一実施形態では、本方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式(I)の化合物
【化8】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
Xが、4~12員の飽和または部分飽和の単環式環、架橋環、またはスピロ環であり、飽和または部分飽和の単環式環が、1つ以上のRで任意に置換されており、
Yが、結合、O、S、またはNRであり、
が、
【化9】
または
【化10】
であり、
が、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、アルキルアミニルアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、-Z-NR10、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり、Z、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルの各々が、1つ以上のRで任意に置換されていてもよく、
Zが、C1-C4アルキレンであり、
各Rが、独立して、C1-C3アルキル、オキソ、またはハロアルキルであり、
Lが、結合、-C(O)-、またはC1-C3アルキレンであり、
が、水素、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキルおよびヘテロアリールの各々が、1個以上のRまたはRで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
が、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールの各々が、1つ以上のRで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C6アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、シアノ、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはQ-ハロアルキルであり、QがOまたはSであり、
が、オキソ、C1-C3アルキル、C2-C4アルキニル、ヘテロアルキル、シアノ、-C(O)OR、-C(O)N(R、-N(Rであり、C1-C3アルキルが、シアノ、ハロゲン、-OR、-N(R、またはヘテロアリールで任意に置換されていてもよく、
各Rが、独立して、水素、オキソ、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ハロゲン、C1-C6アルキル、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミニル、ジアルキルアミドアルキル、またはジアルキルアミニルアルキルであり、C1-C6アルキルが、シクロアルキルで任意に置換されていてもよく、
各R10が、独立して、水素、アシル、C1-C3アルキル、ヘテロアルキル、またはヒドロキシアルキルであり、
11が、ハロアルキルであり、
が、不在、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、C1-C3アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、-C(O)N(R、またはヒドロキシアルキルであり、
各Rが、独立して、水素、重水素、シアノ、C1-C3アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、-ZNR11、-C(O)N(R、-NHC(O)C1-C3アルキル、-CHNHC(O)C1-C3アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、ヘテロシクリル部分が、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、およびC1-C3アルキルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリール部分が、1つ以上のRで任意に置換されており、
mが、ゼロであるか、または1~2の整数であり、
pが、1または2であり、
【化11】
が三重結合である場合、Rが存在せず、Rが存在し、pが、1であるか、
または
【化12】
が二重結合である場合、Rが存在し、Rが存在し、pが、2であるか、またはR、R、およびそれらが結合している炭素原子が、1つ以上のRで任意に置換されている5~8員の部分飽和シクロアルキルを形成する)である。
【0081】
一実施形態では、本明細書の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式I-Aを有する化合物
【化13】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R、R、R、R、R10、L、およびmが、式Iで定義された通りであり、R11が、水素、メチル、またはヒドロキシアルキルであり、ピペリジニル環が、Rで任意に置換されており、式中、Rが式Iで定義された通りである)を含む。
【0082】
一実施形態では、本明細書の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式I-Bを有する化合物
【化14】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R、R、R、R、R11、L、およびmは、式Iで定義された通りである)を含む。
【0083】
本明細書に開示される方法において有用な式(I)、式I-A、および式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の非限定的な例は、以下の構造を含む実施例番号1~678、
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【化15-4】
【化15-5】
【化15-6】
【化15-7】
【化15-8】
【化15-9】
【化15-10】
【化15-11】
【化15-12】
【化15-13】
【化15-14】
【化15-15】
【化15-16】
【化15-17】
【化15-18】
【化15-19】
【化15-20】
【化15-21】
【化15-22】
【化15-23】
【化15-24】
【化15-25】
【化15-26】
【化15-27】
【化15-28】
【化15-29】
【化15-30】
【化15-31】
【化15-32】
【化15-33】
【化15-34】
【化15-35】
【化15-36】
【化15-37】
【化15-38】
【化15-39】
【化15-40】
【化15-41】
【化15-42】
【化15-43】
【化15-44】
ならびにそれらの薬学的に許容される塩、からなる群から選択される。
【0084】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化16】
ならびにそれらの薬学的に許容される塩、から選択される。
【0085】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化17】
(実施例234と称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0086】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化18】
(実施例359と称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0087】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化19】
(実施例478と称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0088】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化20】
(実施例507と称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0089】
本発明の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、1個以上のキラル中心を有し得、立体異性体混合物、同一の構成でそれらの原子の空間的配置が異なる異性体として合成され得る。化合物は、混合物として使用され得るか、または市販の試薬を使用して、および当業者によく知られた立体異性体およびエナンチオマーの従来の単離方法、例えば、CHIRALPAK(登録商標)(Sigma-Aldrich)またはCHIRALCEL(登録商標)(Diacel Corp)キラルクロマトグラフHPLCカラムを使用して、製造業者の説明書に従って、個々の成分/異性体が分離され得る。あるいは、本発明の化合物は、個々の異性体またはエナンチオマーを調製するための光学的に純粋なキラル試薬および中間体を使用して合成され得る。特に明記しない限り、全てのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ体は、本発明の範囲内にある。特に明記しない限り、特許請求の範囲を含む本明細書が本発明の化合物に言及する際はいつでも、「化合物」という用語は、全てのキラル(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびラセミ体を包含するものと理解されるべきである。
【0090】
一実施形態では、本方法で使用される式I、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物は、上記の化合物のトリフルオロ酢酸塩を含む。
【0091】
本明細書に開示されるKRas G12C阻害剤を製造するための方法が、既知である。例えば、共同所有され、公開された国際PCT出願第WO2017201161号および同第WO2019099524号は、式I、式I-A、または式I-Bの化合物およびその薬学的に許容される塩を調製するための一般的な反応スキームを記載し、本明細書に開示される各KRas G12C阻害剤の調製のための詳細な合成経路も提供する。
【0092】
汎ErbB阻害剤および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物に製剤化され得る。
【0093】
薬学的組成物
別の態様では、本発明は、本発明による汎ErbBファミリー阻害剤およびKRas G12C阻害剤ならびに本明細書に開示される方法で使用され得る薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。汎ErbBファミリー阻害剤およびKRas G12C阻害剤は、独立して、当該技術分野で周知の任意の方法により製剤化され得、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、気管内、または直腸内を含むが、これらに限定されない任意の経路により投与するために調製され得る。ある特定の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤およびKRas G12C阻害剤は、病院環境において静脈内投与される。一実施形態では、投与は、経口経路によるものであり得る。
【0094】
担体の特性は、投与経路に依存するであろう。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、細胞、細胞培養、組織、または生物などの生体系に適合可能であり、活性成分(複数可)の生物活性の有効性に干渉しない非毒性材料を指す。したがって、組成物は、阻害剤に加えて、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野で周知の他の材料を含み得る。薬学的に許容される製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,ed.A.Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990に記載されている。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語の薬学的に許容される塩は、上記で特定した化合物の所望の生物活性を保持し、最小限の望ましくない毒性作用を示すか、または望ましくない毒性作用を示さない塩を指す。かかる塩の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)により形成される酸付加塩、ならびに酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、およびポリガラクツロ酸などの有機酸により形成される酸が挙げられるが、これらに限定されない。化合物はまた、当業者に既知である薬学的に許容される四級塩としても投与され得、これには特に式-NR+Z-の四級アンモニウム塩が含まれ、Rは、水素、アルキル、またはベンジルであり、Zは対イオンで、これには、クロリド、ブロミド、ヨージド、-O-アルキル、トルエンスルホネート、メチルスルホネート、スルホネート、ホスフェート、またはカルボキシレート(例えば、ベンゾエート、スクシネート、アセテート、グリコレート、マレエート、マレート、シトレート、タルトレート、アスコルベート、ベンゾエート、シンナモエート、マンデロエート、ベンジロエート、およびジフェニルアセテート)が含まれる。
【0096】
活性化合物は、治療される患者に深刻な毒性作用を引き起こすことなく治療有効量を患者に送達するのに十分な量で、薬学的に許容される担体または希釈剤中に含まれる。一実施形態では、全ての上記条件について、活性化合物の用量は、1日当たり約0.01~300mg/kg、例えば、1日当たり、0.1~100mg/kgの範囲であり、さらなる例としては、1日当たり、レシピエントのキログラム体重当たり0.5~約25mgの範囲である。典型的な局所投与量は、好適な担体中の0.01~3重量/重量%の範囲である。薬学的に許容される誘導体の有効投与量範囲は、送達される親化合物の重量を基準にして計算され得る。誘導体がそれ自体で活性を示す場合は、有効投与量は誘導体の重量を使用して上記のように推定され得、または当業者に既知である他の手段で推定され得る。
【0097】
汎ErbBファミリー阻害剤およびKRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物は、本明細書に記載の使用方法で使用され得る。
【0098】
同時投与
汎ErbBファミリー阻害剤およびKRas G12C阻害剤は、別々の剤形または個別の剤形に製剤化することができ、次々に同時投与することができる。別の選択肢は、投与経路が同じ(例えば、経口)である場合、2つの活性化合物は、同時投与用の単一の形態に製剤化することができるが、両方の同時投与方法は、同じ治療的治療またはレジメンの一部であるということである。
【0099】
本方法で使用するための汎ErbBファミリー阻害剤および/またはKRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物は、同時、個別、または連続使用のためのものであり得る。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の投与前に投与される。別の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の投与後に投与される。別の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の投与とほぼ同時に投与される。
【0100】
異なる時間および異なる経路による各阻害剤の別々の投与は、場合によっては有利であり得る。したがって、組み合わせ、すなわち、式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩および汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩の成分は、必ずしも本質的に同じ時間でまたは任意の順序で投与される必要はない。
【0101】
腫瘍薬物は、通常、許容できない副作用を引き起こさない最高用量の薬物である、最大耐量(「MTD」)で投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、ならびに汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は各々、それらのそれぞれのMTDで投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDで投与され、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDより少ない量で投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDより少ない量で投与され、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDで投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、ならびに汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は各々、それらのそれぞれのMTDより少ない量で投与される。その投与はまた、一方の化合物のピーク薬物動態効果が他方のピーク薬物動態効果と一致するようにタイミングを合わせることができる。
【0102】
一実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が、1日当たり(すなわち、約24時間間隔で)投与される(すなわち、1日1回)。一実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が、1日当たり投与される(すなわち、1日2回)。別の実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が、1日当たり投与される(すなわち、1日3回)。
【0103】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、1日1回投与される。別の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、1日2回投与される。別の実施形態では、本発明の汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、1日3回投与される。
【0104】
一実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、ならびに汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の単回投与は各々、1日1回投与される。
【0105】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、不可逆的な阻害剤である。本明細書の方法で使用するための例示的な不可逆的な汎ErbBファミリー阻害剤には、アファチニブ((E)-N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)-7-((テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エンアミド);ダコミチニブ((2E)-N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル}-4-(1-ピペリジニル)-2-ブテンアミド);カネルチニブ(N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)-7-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-6-イル)アクリルアミド);ポジオチニブ(1-(4-((4-((3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン);AV 412(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチン-1-イル]-6-キナゾリニル]-2-プロペンアミド);PF 6274484(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル]-2-プロペンアミド)、およびHKI 357((2E)-N-[[4-[[(3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が含まれる。
【0106】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、可逆的な阻害剤である。例示的な可逆的な汎EGFRファミリー阻害剤には、エルロチニブ([6,7-ビス-(2-メトキシ-エトキシ)-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニル-フェニル)-アミン))、ゲフィチニブ(4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、サピチニブ(2-(4-((4-((3-クロロ-2-フルオロフェニル))アミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル)オキシ)ピペリジン-1-イル)-N-メチルアセトアミド);バリチニブ((R)-N4-(3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)フェニル)-N6-(4-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)キナゾリン-4,6-ジアミン);TAK-285(N-(2-(4-((3-クロロ-4-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェニル)アミノ)-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル)エチル)-3-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミド);AEE788((S)-6-(4-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-N-(1-フェニルエチル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン);タルロキソチニブ([(E)-4-[[4-(3-ブロモ-4-クロロアニリノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル]アミノ]-4-オキソブト-2-エニル]-ジメチル-[(3-メチル-5-ニトロイミダゾール-4-イル)メチル]アザニウム);BMS 599626((3S)-3-モルホリニルメチル-[4-[[1-[(3-フルオロフェニル)メチル]-1H-インダゾール-5-イル]アミノ]-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル]-カルバメート二塩酸塩);およびGW 583340 HCl(N-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6-[2-[[[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-4-チアゾリル]-4-キナゾリンアミン二塩酸塩)、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物が含まれる。
【0107】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER2抗体、または抗EGFR抗体と抗HER2抗体との組み合わせ、またはその薬学的組成物である。一実施形態では、抗EGFR抗体は、ネシツムマブ、パニツムマブ、またはセツキシマブである。一実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。一実施形態では、本明細書の方法での使用に適した抗HER2抗体は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、またはトラスツズマブエムタンシンである。
【0108】
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、EGFR阻害剤およびHER2阻害剤であり、EGFR阻害剤およびHER2阻害剤は、独立して、AG 1478 HCl(N-(3-クロロフェニル)-6,7-ジメトキシ-4-キナゾリナニン塩酸塩);AG 494(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-フェニル-2-プロペンアミド;AG 555(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(3-フェニルプロピル)-2-プロペンアミド;AG 556(E)-2-シアノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-N-(4-フェニルブチル)-2-プロペンアミド;AG 825(E)-3-[3-[2-ベンゾチアゾリチオ)メチル]-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル]-2-シアノ-2-プロペンアミド;CP 724714(2-メトキシ-N-[(2E)-3-[4-[[3-メチル-4-[(6-メチル-3-ピリジニル)オキシ]フェニル]アミノ]-6-キナゾリニル]-2-プロペン-1-イル]アセトアミド;BIBU 1361 diHCl(N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-6-[4-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-4-アミン二塩酸塩);BIBU 1382(N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N-(1-メチル-4-ピペリジニル)ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン二塩酸塩);JNJ 28871063 HCl(5E-4-アミノ-6-(4-ベンジルオキシ-3-クロロフェニルアミノ)ピリミジン-5-カルボキサルデヒドN-(2-モルホリン-4-イルエチル)オキシム塩酸塩);PD 153035(4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシ塩酸塩);PD 158780(N-(3-ブロモフェニル)-N-メチル-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン)、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物からなる群から選択される2つの薬剤から選択される。
【0109】
組み合わせ療法
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてがんを治療する方法であって、対象に、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせを投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。一実施形態では、がんは、KRas G12Cに関連するがんである。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0110】
さらに別の態様では、本発明は、KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法であって、がん細胞を、有効量の、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせと接触させることを含み、汎ErbBファミリー阻害剤が、KRas G12C阻害剤に対するがん細胞の感受性を相乗的に増加させる、方法を提供する。一実施形態では、接触は、インビトロで行われる。一実施形態では、接触は、インビボで行われる。
【0111】
一実施形態では、組み合わせ療法は、式を有する化合物
【化21】
またはその薬学的に許容される塩と、汎ErbBファミリー阻害剤との組み合わせを含む。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ダコミチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ポジオチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、エルロチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ゲフィチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、サピチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、タルロキソチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体であり、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。
【0112】
一実施形態では、組み合わせ療法は、式を有する化合物
【化22】
またはその薬学的に許容される塩と、汎ErbBファミリー阻害剤との組み合わせを含む。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ダコミチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ポジオチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、エルロチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ゲフィチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、サピチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、タルロキソチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体であり、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。
【0113】
一実施形態では、組み合わせ療法は、式を有する化合物
【化23】
またはその薬学的に許容される塩と、汎ErbBファミリー阻害剤との組み合わせを含む。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ダコミチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ポジオチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、エルロチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ゲフィチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、サピチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、タルロキソチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体であり、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。
【0114】
一実施形態では、組み合わせ療法は、式を有する化合物
【化24】
またはその薬学的に許容される塩と、汎ErbBファミリー阻害剤との組み合わせを含む。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ダコミチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ポジオチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、エルロチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、ゲフィチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、サピチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、タルロキソチニブである。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、抗EGFR抗体であり、抗EGFR抗体は、セツキシマブである。
【0115】
本明細書で使用する場合、「接触させること」という用語は、インビトロ系またはインビボ系中で、示した部分を一緒にすることを指す。例えば、がん細胞を「接触させること」は、KRas G12Cを有するヒトなどの個体または対象への本明細書で提供される組み合わせの投与、ならびに、例えば、KRas G12Cを含む細胞調製物または精製された調製物を含む試料中に本明細書で提供される組み合わせを導入することを含む。
【0116】
本明細書に記載の方法は、KRas G12Cの活性を負に調節することにより、細胞内の増強されたKRas G12C活性に起因する望ましくない細胞増殖を阻害するように設計される。KRas G12Cの共有結合修飾の程度は、公開された国際PCT出願第WO2017201161号および第WO2019099524号に記載の方法を含む、周知の方法を使用してインビトロでモニタリングされ得る。加えて、細胞中の組み合わせの阻害活性は、例えば、リン酸化ERKの量のKRas G12C活性の阻害を測定し、治療の有効性を評価することによってモニタリングされ得、したがって、投薬量は、主治医により調節され得る。
【0117】
本明細書で提供される組成物および方法は、KRas G12Cに関連するがんの治療を必要とする対象においてKRas G12Cに関連するがんを治療するために使用され得、対象に、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせの治療有効量を投与することを含み、汎ErbBファミリー阻害剤は、KRas G12C阻害剤に対するKRas G12Cに関連するがんの感受性を相乗的に増加させる。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0118】
一実施形態では、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤または薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物そのまたは薬学的に許容される塩または薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した全生存(「OS」)期間をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した無増悪生存(「PFS」)期間をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における増加した腫瘍成長阻害をもたらす。一実施形態では、治療有効量の、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、対象における安定した疾患の持続期間の改善をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、およびタルロキソチニブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。当該組み合わせ療法のうちのいずれかの一実施形態では、その組み合わせは、KRas G12Cに関連するがんを治療するために有用である。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0119】
別の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、疾患の進行がKRas G12C単剤療法で観察された時点で、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と組み合わせて投与され、組み合わせ療法は、患者におけるOS、PFS、腫瘍退縮、腫瘍成長阻害、または安定した疾患の持続期間を増加させることによって患者において増強した臨床的利益または生存時間をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678から選択される化合物(WO2019099524において番号付けされるように)またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、およびタルロキソチニブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。当該組み合わせ療法のうちのいずれかの一実施形態では、その組み合わせは、KRas G12Cに関連するがんを治療するために有用である。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0120】
本明細書の方法のうちのいずれかの一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤およびKRAS G12C阻害剤は、同じ日に投与される。
【0121】
本明細書の方法のうちのいずれかの一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤およびKRAS G12C阻害剤は、異なる日に投与される。
【0122】
本明細書で提供される組成物および方法は、例えば、肺癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、皮膚癌、子宮頸癌、精巣癌などの腫瘍を含む多種多様ながんの治療に使用され得る。より具体的には、本発明の組成物および方法により治療され得るがんとしては、星細胞腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、肝細胞癌、喉頭癌、肺癌、口腔癌、卵巣癌、前立腺癌、および甲状腺癌ならびに肉腫などの腫瘍型が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、これらの化合物は、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;消化管:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;胆管:胆嚢癌、乳頭部癌、胆管癌;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨大細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形膠芽腫、乏突起細胞腫、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌腫)、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ-ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液学的:血液(骨髄性白血病(急性および慢性)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽腫を治療するために使用することができる。ある種の実施形態では、がんは非小細胞肺癌である。
【0123】
がんの治療を必要とする対象においてがんを治療するための方法であって、(a)がんがKRas G12C変異に関連する(例えば、KRas G12Cに関連するがんである)ことを判定することと(例えば、規制当局に認可された、例えばFDAに認可されたアッセイまたはキットを使用して判定されるように)、(b)患者に、汎ErbBファミリー阻害剤と、式(I)、式I-A、式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせの治療有効量を投与することと、を含み、汎ErbBファミリー阻害剤が、KRas G12C阻害剤に対するKRas G12Cに関連するがんの感受性を相乗的に増加させる、方法も、本明細書で提供される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、およびタルロキソチニブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。当該組み合わせ療法のうちのいずれかの一実施形態では、その組み合わせは、KRas G12Cに関連するがんを治療するために有用である。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0124】
別の実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、疾患の進行がKRas G12C単剤療法で観察された時点で、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と組み合わせて投与され、組み合わせ療法は、患者におけるOS、PFS、腫瘍退縮、腫瘍成長阻害、または安定した疾患の持続期間を増加させることによって患者において増強した臨床的利益または生存時間をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブ、ダコミチニブ、ポジオチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、およびタルロキソチニブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびポジオチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびエルロチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。当該組み合わせ療法のうちのいずれかの一実施形態では、その組み合わせは、KRas G12Cに関連するがんを治療するために有用である。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0125】
一実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、ある期間中にカプセルとして投与される。一実施形態では、式Iの化合物の錠剤またはカプセル製剤は、約10mg~約100mg(例えば、約10mg~約95mg、約10mg~約90mg、約10mg~約85mg、約10mg~約80mg、約10mg~約75mg、約10mg~約70mg、約10mg~約65mg、約10mg~約60mg、約10mg~約55mg、約10mg~約50mg、約10mg~約45mg、約10mg~約40mg、約10mg~約35mg、約10mg~約30mg、約10mg~約25mg、約10mg~約20mg、約10mg~約15mg、約15mg~約100mg、約15mg~約95mg、約15mg~約90mg、約15mg~約85mg、約15mg~約80mg、約15mg~約75mg、約15mg~約70mg、約15mg~約65mg、約15mg~約60mg、約15mg~約55mg、約15mg~約50mg、約15mg~約45mg、約15mg~約40mg、約15mg~約35mg、約15mg~約30mg、約15mg~約25mg、約15mg~約20mg、約20mg~約100mg、約20mg~約95mg、約20mg~約90mg、約20mg~約85mg、約20mg~約80mg、約20mg~約75mg、約20mg~約70mg、約20mg~約65mg、約20mg~約60mg、約20mg~約55mg、約20mg~約50mg、約20mg~約45mg、約20mg~約40mg、約20mg~約35mg、約20mg~約30mg、約20mg~約25mg、約25mg~約100mg、約25mg~約95mg、約25mg~約90mg、約25mg~約85mg、約25mg~約80mg、約25mg~約75mg、約25mg~約70mg、約25mg~約65mg、約25mg~約60mg、約25mg~約55mg、約25mg~約50mg、約25mg~約45mg、約25mg~約40mg、約25mg~約35mg、約25mg~約30mg、約30mg~約100mg、約30mg~約95mg、約30mg~約90mg、約30mg~約85mg、約30mg~約80mg、約30mg~約75mg、約30mg~約70mg、約30mg~約65mg、約30mg~約60mg、約30mg~約55mg、約30mg~約50mg、約30mg~約45mg、約30mg~約40mg、約30mg~約35mg、約35mg~約100mg、約35mg~約95mg、約35mg~約90mg、約35mg~約85mg、約35mg~約80mg、約35mg~約75mg、約35mg~約70mg、約35mg~約65mg、約35mg~約60mg、約35mg~約55mg、約35mg~約50mg、約35mg~約45mg、約35mg~約40mg、約40mg~約100mg、約40mg~約95mg、約40mg~約90mg、約40mg~約85mg、約40mg~約80mg、約40mg~約75mg、約40mg~約70mg、約40mg~約65mg、約40mg~約60mg、約40mg~約55mg、約40mg~約50mg、約40mg~約45mg、約45mg~約100mg、約45mg~約95mg、約45mg~約90mg、約45mg~約85mg、約45mg~約80mg、約45mg~約75mg、約45mg~約70mg、約45mg~約65mg、約45mg~約60mg、約45mg~約55mg、約45mg~約50mg、約50mg~約100mg、約50mg~約95mg、約50mg~約90mg、約50mg~約85mg、約50mg~約80mg、約50mg~約75mg、約50mg~約70mg、約50mg~約65mg、約50mg~約60mg、約50mg~約55mg、約55mg~約100mg、約55mg~約95mg、約55mg~約90mg、約55mg~約85mg、約55mg~約80mg、約55mg~約75mg、約55mg~約70mg、約55mg~約65mg、約55mg~約60mg、約60mg~約100mg、約60mg~約95mg、約60mg~約90mg、約60mg~約85mg、約60mg~約80mg、約60mg~約75mg、約60mg~約70mg、約60mg~約65mg、約65mg~約100mg、約65mg~約95mg、約65mg~約90mg、約65mg~約85mg、約65mg~約80mg、約65mg~約75mg、約65mg~約70mg、約70mg~約100mg、約70mg~約95mg、約70mg~約90mg、約70mg~約85mg、約70mg~約80mg、約70mg~約75mg、約75mg~約100mg、約75mg~約95mg、約75mg~約90mg、約75mg~約85mg、約75mg~約80mg、約80mg~約100mg、約80mg~約95mg、約80mg~約90mg、約80mg~約85mg、約85mg~約100mg、約85mg~約95mg、約85mg~約90mg、約90mg~約100mg、約90mg~約95mg、約95mg~約100mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg)の式Iの化合物(例えば、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、化合物番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)を含む。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、毎日1日1回(QD)経口投与される。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、毎日1日2回(BID)経口投与される。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、約20mg~約500mg(例えば、約20mg~約480mg、約20mg~約460mg、約20mg~約440mg、約20mg~約420mg、約20mg~約400mg、約20mg~約380mg、約20mg~約360mg、約20mg~約340mg、約20mg~約320mg、約20mg~約300mg、約20mg~約280mg、約20mg~約260mg、約20mg~約240mg、約20mg~約220mg、約20mg~約200mg、約20mg~約180mg、約20mg~約160mg、約20mg~約140mg、約20mg~約120mg、約20mg~約100mg、約20mg~約80mg、約20mg~約60mg、約20mg~約40mg、約40mg~約500mg、約40mg~約480mg、約40mg~約460mg、約40mg~約440mg、約40mg~約420mg、約40mg~約400mg、約40mg~約380mg、約40mg~約360mg、約40mg~約340mg、約40mg~約320mg、約40mg~約300mg、約40mg~約280mg、約40mg~約260mg、約40mg~約240mg、約40mg~約220mg、約40mg~約200mg、約40mg~約180mg、約40mg~約160mg、約40mg~約140mg、約40mg~約120mg、約40mg~約100mg、約40mg~約80mg、約40mg~約60mg、約60mg~約500mg、約60mg~約480mg、約60mg~約460mg、約60mg~約440mg、約60mg~約420mg、約60mg~約400mg、約60mg~約380mg、約60mg~約360mg、約60mg~約340mg、約60mg~約320mg、約60mg~約300mg、約60mg~約280mg、約60mg~約260mg、約60mg~約240mg、約60mg~約220mg、約60mg~約200mg、約60mg~約180mg、約60mg~約160mg、約60mg~約140mg、約60mg~約120mg、約60mg~約100mg、約60mg~約80mg、約80mg~約500mg、約80mg~約480mg、約80mg~約460mg、約80mg~約440mg、約80mg~約420mg、約80mg~約400mg、約80mg~約380mg、約80mg~約360mg、約80mg~約340mg、約80mg~約320mg、約80mg~約300mg、約80mg~約280mg、約80mg~約260mg、約80mg~約240mg、約80mg~約220mg、約80mg~約200mg、約80mg~約180mg、約80mg~約160mg、約80mg~約140mg、約80mg~約120mg、約80mg~約100mg、約100mg~約500mg、約100mg~約480mg、約100mg~約460mg、約100mg~約440mg、約100mg~約420mg、約100mg~約400mg、約100mg~約380mg、約100mg~約360mg、約100mg~約340mg、約100mg~約320mg、約100mg~約300mg、約100mg~約280mg、約100mg~約260mg、約100mg~約240mg、約100mg~約220mg、約100mg~約200mg、約100mg~約180mg、約100mg~約160mg、約100mg~約140mg、約100mg~約120mg、約120mg~約500mg、約120mg~約480mg、約120mg~約460mg、約120mg~約440mg、約120mg~約420mg、約120mg~約400mg、約120mg~約380mg、約120mg~約360mg、約120mg~約340mg、約120mg~約320mg、約120mg~約300mg、約120mg~約280mg、約120mg~約260mg、約120mg~約240mg、約120mg~約220mg、約120mg~約200mg、約120mg~約180mg、約120mg~約160mg、約120mg~約140mg、約140mg~約500mg、約140mg~約480mg、約140mg~約460mg、約140mg~約440mg、約140mg~約420mg、約140mg~約400mg、約140mg~約380mg、約140mg~約360mg、約140mg~約340mg、約140mg~約320mg、約140mg~約300mg、約140mg~約280mg、約140mg~約260mg、約140mg~約240mg、約140mg~約220mg、約140mg~約200mg、約140mg~約180mg、約140mg~約160mg、約160mg~約500mg、約160mg~約480mg、約160mg~約460mg、約160mg~約440mg、約160mg~約420mg、約160mg~約400mg、約160mg~約380mg、約160mg~約360mg、約160mg~約340mg、約160mg~約320mg、約160mg~約300mg、約160mg~約280mg、約160mg~約260mg、約160mg~約240mg、約160mg~約220mg、約160mg~約200mg、約160mg~約180mg、約180mg~約500mg、約180mg~約480mg、約180mg~約460mg、約180mg~約440mg、約180mg~約420mg、約180mg~約400mg、約180mg~約380mg、約180mg~約360mg、約180mg~約340mg、約180mg~約320mg、約180mg~約300mg、約180mg~約280mg、約180mg~約260mg、約180mg~約240mg、約180mg~約220mg、約180mg~約200mg、約200mg~約500mg、約200mg~約480mg、約200mg~約460mg、約200mg~約440mg、約200mg~約420mg、約200mg~約400mg、約200mg~約380mg、約200mg~約360mg、約200mg~約340mg、約200mg~約320mg、約200mg~約300mg、約200mg~約280mg、約200mg~約260
mg、約200mg~約240mg、約200mg~約220mg、約220mg~約500mg、約220mg~約480mg、約220mg~約460mg、約220mg~約440mg、約220mg~約420mg、約220mg~約400mg、約220mg~約380mg、約220mg~約360mg、約220mg~約340mg、約220mg~約320mg、約220mg~約300mg、約220mg~約280mg、約220mg~約260mg、約220mg~約240mg、約240mg~約500mg、約240mg~約480mg、約240mg~約460mg、約240mg~約440mg、約240mg~約420mg、約240mg~約400mg、約240mg~約380mg、約240mg~約360mg、約240mg~約340mg、約240mg~約320mg、約240mg~約300mg、約240mg~約280mg、約240mg~約260mg、約260mg~約500mg、約260mg~約480mg、約260mg~約460mg、約260mg~約440mg、約260mg~約420mg、約260mg~約400mg、約260mg~約380mg、約260mg~約360mg、約260mg~約340mg、約260mg~約320mg、約260mg~約300mg、約260mg~約280mg、約280mg~約500mg、約280mg~約480mg、約280mg~約460mg、約280mg~約440mg、約280mg~約420mg、約280mg~約400mg、約280mg~約380mg、約280mg~約360mg、約280mg~約340mg、約280mg~約320mg、約280mg~約300mg、約300mg~約500mg、約300mg~約480mg、約300mg~約460mg、約300mg~約440mg、約300mg~約420mg、約300mg~約400mg、約300mg~約380mg、約300mg~約360mg、約300mg~約340mg、約300mg~約320mg、約320mg~約500mg、約320mg~約480mg、約320mg~約460mg、約320mg~約440mg、約320mg~約420mg、約320mg~約400mg、約320mg~約380mg、約320mg~約360mg、約320mg~約340mg、約340mg~約500mg、約340mg~約480mg、約340mg~約460mg、約340mg~約440mg、約340mg~約420mg、約340mg~約400mg、約340mg~約380mg、約340mg~約360mg、約360mg~約500mg、約360mg~約480mg、約360mg~約460mg、約360mg~約440mg、約360mg~約420mg、約360mg~約400mg、約360mg~約380mg、約380mg~約500mg、約380mg~約480mg、約380mg~約460mg、約380mg~約440mg、約380mg~約420mg、約380mg~約400mg、約400mg~約500mg、約400mg~約480mg、約400mg~約460mg、約400mg~約440mg、約400mg~約420mg、約420mg~約500mg、約420mg~約480mg、約420mg~約460mg、約420mg~約440mg、約440mg~約500mg、約440mg~約480mg、約440mg~約460mg、約460mg~約500mg、約460mg~約480mg、約480mg~約500mg、約25、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、または約500mg)の量で経口投与される。
【0126】
一実施形態では、組み合わせ療法は、毎日(ある期間中)1日1回または2回、例えば、約10mg~約400mg(例えば、約10mg~約380mg、約10mg~約360mg、約10mg~約340mg、約10mg~約320mg、約10mg~約300mg、約10mg~約280mg、約10mg~約260mg、約10mg~約240mg、約10mg~約220mg、約10mg~約200mg、約10mg~約180mg、約10mg~約160mg、約10mg~約140mg、約10mg~約120mg、約10mg~約100mg、約10mg~約80mg、約10mg~約60mg、約10mg~約40mg、約10mg~約20mg、約20mg~約400mg、約20mg~約380mg、約20mg~約360mg、約20mg~約340mg、約20mg~約320mg、約20mg~約300mg、約20mg~約280mg、約20mg~約260mg、約20mg~約240mg、約20mg~約220mg、約20mg~約200mg、約20mg~約180mg、約20mg~約160mg、約20mg~約140mg、約20mg~約120mg、約20mg~約100mg、約20mg~約80mg、約20mg~約60mg、約20mg~約40mg、約40mg~約400mg、約40mg~約380mg、約40mg~約360mg、約40mg~約340mg、約40mg~約320mg、約40mg~約300mg、約40mg~約280mg、約40mg~約260mg、約40mg~約240mg、約40mg~約220mg、約40mg~約200mg、約40mg~約180mg、約40mg~約160mg、約40mg~約140mg、約40mg~約120mg、約40mg~約100mg、約40mg~約80mg、約40mg~約60mg、約60mg~約400mg、約60mg~約380mg、約60mg~約360mg、約60mg~約340mg、約60mg~約320mg、約60mg~約300mg、約60mg~約280mg、約60mg~約260mg、約60mg~約240mg、約60mg~約220mg、約60mg~約200mg、約60mg~約180mg、約60mg~約160mg、約60mg~約140mg、約60mg~約120mg、約60mg~約100mg、約60mg~約80mg、約80mg~約400mg、約80mg~約380mg、約80mg~約360mg、約80mg~約340mg、約80mg~約320mg、約80mg~約300mg、約80mg~約280mg、約80mg~約260mg、約80mg~約240mg、約80mg~約220mg、約80mg~約200mg、約80mg~約180mg、約80mg~約160mg、約80mg~約140mg、約80mg~約120mg、約80mg~約100mg、約100mg~約400mg、約100mg~約380mg、約100mg~約360mg、約100mg~約340mg、約100mg~約320mg、約100mg~約300mg、約100mg~約280mg、約100mg~約260mg、約100mg~約240mg、約100mg~約220mg、約100mg~約200mg、約100mg~約180mg、約100mg~約160mg、約100mg~約140mg、約100mg~約120mg、約120mg~約400mg、約120mg~約380mg、約120mg~約360mg、約120mg~約340mg、約120mg~約320mg、約120mg~約300mg、約120mg~約280mg、約120mg~約260mg、約120mg~約240mg、約120mg~約220mg、約120mg~約200mg、約120mg~約180mg、約120mg~約160mg、約120mg~約140mg、約140mg~約400mg、約140mg~約380mg、約140mg~約360mg、約140mg~約340mg、約140mg~約320mg、約140mg~約300mg、約140mg~約280mg、約140mg~約260mg、約140mg~約240mg、約140mg~約220mg、約140mg~約200mg、約140mg~約180mg、約140mg~約160mg、約160mg~約400mg、約160mg~約380mg、約160mg~約360mg、約160mg~約360mg、約160mg~約340mg、約160mg~約320mg、約160mg~約300mg、約160mg~約280mg、約160mg~約260mg、約160mg~約240mg、約160mg~約220mg、約160mg~約200mg、約160mg~約180mg、約180mg~約400mg、約180mg~約380mg、約180mg~約360mg、約180mg~約340mg、約180mg~約320mg、約180mg~約300mg、約180mg~約280mg、約180mg~約260mg、約180mg~約240mg、約180mg~約220mg、約180mg~約200mg、約200mg~約400mg、約200mg~約380mg、約200mg~約360mg、約200mg~約340mg、約200mg~約320mg、約200mg~約300mg、約200mg~約280mg、約200mg~約260mg、約200mg~約240mg、約200mg~約220mg、約220mg~約400mg、約220mg~約380mg、約220mg~約360mg、約220mg~約340mg、約220mg~約320mg、約220mg~約300mg、約220mg~約280mg、約220mg~約260mg、約220mg~約240mg、約240mg~約400mg、約240mg~約380mg、約240mg~約360mg、約240mg~約340mg、約240mg~約320mg、約240mg~約300mg、約240mg~約280mg、約240mg~約260mg、約260mg~約400mg、約260mg~約380mg、約260mg~約360mg、約260mg~約340mg、約260mg~約320mg、約260mg~約300mg、約260mg~約280mg、約280mg~約400mg、約280mg~約380mg、約280mg~約360mg、約280mg~約340mg、約280mg~約320mg、約280mg~約300mg、約300mg~約400mg、約300mg~約380mg、約300mg~約360mg、約300mg~約340mg、約300mg~約320mg、約320mg~約400mg、約320mg~約380mg、約320mg~約360mg、約340mg~約360mg、約340mg~約400mg、約340mg~約380mg、約340mg~約360mg、約360mg~約400mg、約360mg~約380mg、約380mg~約400mg、約100mg、約200mg、約300mg、または約400mg)の量で式Iの化合物の経口投与、ならびに例えば、毎日(ある期間中)1日1回投与される汎ErbB阻害剤の経口投与を含む。一実施形態では、KRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、1日1回経口投与される。一実施形態では、KRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、1日2回経口投与される。
【0127】
当業者は、一般に許容される適切な既知の細胞および/または動物モデルを使用するインビボ試験およびインビトロ試験の両方により、試験化合物の所与の障害を処置または防止する能力が予測されることを理解するであろう。
【0128】
当業者は、健康な患者および/または所与の障害に罹患している患者におけるファースト・イン・ヒューマン試験、用量範囲探索試験および有効性試験を含むヒト臨床試験が、臨床分野および医療分野で周知の方法に従って完了され得ることをさらに理解するであろう。
【0129】
相乗効果
一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤の添加は、KRas G12Cを発現するがん細胞株に対して式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の活性を相乗的に増加させる。2つの化合物が相乗効果を示すかどうかを判定するための任意の方法を、組み合わせの相乗効果を判定するために使用することができる。
【0130】
2つの化合物が相乗的に作用するかどうか、つまり単なる相加効果を超えて作用するかどうかを判定するために、いくつかの数学的モデルが開発された。例えば、Loewe相加性(Loewe(1928)Physiol.27:47-187)、Bliss独立性(Bliss(1939)Ann.Appl.Biol.26:585-615)、最高単剤、ZIP(Yadav et al(2015)Comput Struct Biotech J 13:504-513)、ならびに他のモデル(Chou & Talalay(1984)Adv Enzyme Regul 22:27-55.#6382953、およびGreco et al.(1995)Pharmacol Rev 47(2):331-85.#7568331)は、製薬業界で周知のモデルであり、相乗効果が検出されたかどうか、およびそのような相乗効果の大きさを示す「相乗効果スコア」を計算するために使用することができる。これらの相乗効果スコアを組み合わせると、複合相乗効果スコアが生成され、これを、汎ErbB阻害剤と組み合わせた式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物を評価および特徴付けるために使用することができる。
【0131】
一般に、数学的モデルは、単剤値から得たデータを使用して、組み合わせの予測された相加効果を判定し、それを組み合わせの観察された効果と比較する。観察された効果が予測された効果よりも大きい場合、その組み合わせは、相乗的であると見なされる。例えば、Bliss独立モデルは、観察された組み合わせ応答(Y)を、薬物間相互作用の影響がないという仮定に基づいて得られた予測された組み合わせ応答(Y)と比較する。YがYより大きい場合、典型的には、組み合わせ効果が相乗作用を示す。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「相乗効果」は、例えば、本明細書に記載の臨床結果またはエンドポイントを含む有益なまたは所望な結果のうちのいずれか、式I、式I-A、もしくは式I-Bの化合物またはその薬学的に許容される塩(例えば、1~678(WO2019099524において番号付けされるように)、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)および汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、単独で投与されるときに観察された効果の合計よりも大きい、効果を生じる、KRAS阻害剤またはその薬学的に許容される塩と汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩との組み合わせを指す。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはそれらの薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、汎ErbBファミリー阻害剤は、アファチニブ、ダコミチニブ、ゲフィチニブ、サピチニブ、タルロキソチニブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアファチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびダコミチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびゲフィチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびタルロキソチニブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507および抗EGFR抗体セツキシマブを含む。当該組み合わせ療法のうちのいずれかの一実施形態では、その組み合わせは、KRas G12Cに関連するがんを治療するために有用である。一実施形態では、KRas G12Cに関連するがんは、肺癌である。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1日~2年(例えば、1日~22カ月、1日~20カ月、1日~18カ月、1日~16カ月、1日~14カ月、1日~12カ月、1日~10カ月、1日~9カ月、1日~8カ月、1日~7カ月、1日~6カ月、1日~5カ月、1日~4カ月、1日~3カ月、1日~2カ月、1日~1カ月、1週間~2年、1週間~22カ月、1週間~20カ月、1週間~18カ月、1週間~16カ月、1週間~14カ月、1週間~12カ月、1週間~10カ月、1週間~9カ月、1週間~8カ月、1週間~7カ月、1週間~6カ月、1週間~5カ月、1週間~4カ月、1週間~3カ月、1週間~2カ月、1週間~1カ月、2週間~2年、2週間~22カ月、2週間~20カ月、2週間~18カ月、2週間~16カ月、2週間~14カ月、2週間~12カ月、2週間~10カ月、2週間~9カ月、2週間~8カ月、2週間~7カ月、2週間~6カ月、2週間~5カ月、2週間~4カ月、2週間~3カ月、2週間~2カ月、2週間~1カ月、1カ月~2年、1カ月~22カ月、1カ月~20カ月、1カ月~18カ月、1カ月~16カ月、1カ月~14カ月、1カ月~12カ月、1カ月~10カ月、1カ月~9カ月、1カ月~8カ月、1カ月~7カ月、1カ月~6カ月、1カ月~6カ月、1カ月~5カ月、1カ月~4カ月、1カ月~3カ月、1カ月~2カ月、2カ月~2年、2カ月~22カ月、2カ月~20カ月、2カ月~18カ月、2カ月~16カ月、2カ月~14カ月、2カ月~12カ月、2カ月~10カ月、2カ月~9カ月、2カ月~8カ月、2カ月~7カ月、2カ月~6カ月、または2カ月~5カ月、2カ月~4カ月、3カ月~2年、3カ月~22カ月、3カ月~20カ月、3カ月~18カ月、3カ月~16カ月、3カ月~14カ月、3カ月~12カ月、3カ月~10カ月、3カ月~8カ月、3カ月~6カ月、4カ月~2年、4カ月~22カ月、4カ月~20カ月、4カ月~18カ月、4カ月~16カ月、4カ月~14カ月、4カ月~12カ月、4カ月~10カ月、4カ月~8カ月、4カ月~6カ月、6カ月~2年、6カ月~22カ月、6カ月~20カ月、6カ月~18カ月、6カ月~16カ月、6カ月~14カ月、6カ月~12カ月、6カ月~10カ月、または6カ月~8カ月)の期間中、組み合わせ療法による治療後の患者における1つ以上の固形腫瘍の体積の1%~99%(例えば、1%~98%、1%~95%、1%~90%、1~85%、1~80%、1%~75%、1%~70%、1%~65%、1%~60%、1%~55%、1%~50%、1%~45%、1%~40%、1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~5%、2%~99%、2%~90%、2%~85%、2%~80%、2%~75%、2%~70%、2%~65%、2%~60%、2%~55%、2%~50%、2%~45%、2%~40%、2%~35%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、2%~15%、2%~10%、2%~5%、4%~99%、4%~95%、4%~90%、4%~85%、4%~80%、4%~75%、4%~70%、4%~65%、4%~60%、4%~55%、4%~50%、4%~45%、4%~40%、4%~35%、4%~30%、4%~25%、4%~20%、4%~15%、4%~10%、6%~99%、6%~95%、6%~90%、6%~85%、6%~80%、6%~75%、6%~70%、6%~65%、6%~60%、6%~55%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、8%~99%、8%~95%、8%~90%、8%~85%、8%~80%、8%~75%、8%~70%、8%~65%、8%~60%、8%~55%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、10%~99%、10%~95%、10%~90%、10%~85%、10%~80%、10%~75%、10%~70%、10%~65%、10%~60%、10%~55%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、15%~99%、15%~95%、15%~90%、15%~85%、15%~80%、15%~75%、15%~70%、15%~65%、15%~60%、15%~55%、15%~50%、15%~55%、15%~50%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、20%~99%、20%~95%、20%~90%、20%~85%、20%~80%、20%~75%、20%~70%、20%~65%、20%~60%、20%~55%、20%~50%、20%~45%、20%~40%、20%~35%、20%~30%、20%~25%、25%~99%、25%~95%、25%~90%、25%~85%、25%~80%、25%~75%、25%~70%、25%~65%、25%~60%、25%~55%、25%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~99%、30%~95%、30%~90%、30%~85%、30%~80%、30%~75%、30%~70%、30%~65%、30%~60%、30%~55%、30%~50%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~99%、35%~95%、35%~90%、35%~85%、35%~80%、35%~75%、35%~70%、35%~65%、35%~60%、35%~55%、35%~50%、35%~45%、35%~40%、40%~99%、40%~95%、40%~90%、40%~85%、40%~80%、40%~75%、40%~70%、40%~65%、40%~60%、40%~55%、40%~60%、40%~55%、40%~50%、40%~45%、45%~99%、45%~95%、45%~95%、45%~90%、45%~85%、45%~80%、45%~75%、45%~70%、45%~65%、45%~60%、45%~55%、45%~50%、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~99%、55%~95%、55%~90%、55%~85%、55%~80%、55%~75%、55%~70%、55%~65%、55%~60%、60%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、70%~99%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~95%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~95%、85%~90%、90%~99%、90%~95%、または95%~100%)の減少をもたらし得る(例えば、治療前の患者における1つ以上の固形腫瘍のサイズと比較して)。
【0134】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本発明の組成物または方法で治療する前に、患者は、化学療法、標的抗癌剤、放射線療法、および手術のうちの1つ以上で治療され、および任意に、前治療は失敗し、ならびに/または患者に手術が施され、および任意に、手術が失敗し、ならびに/または患者がプラチナベースの化学療法剤で治療されており、および任意に、患者がプラチナベースの化学療法剤での治療に反応しないと以前に判定されており、ならびに/または患者がキナーゼ阻害剤で治療されており、および任意に、キナーゼ阻害剤による前治療が失敗し、ならびに/または患者が1つ以上の他の治療薬(複数可)で治療された。
【0135】
キット
本発明はまた、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩と、を含む、キットに関する。汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩と、を含む、キットも、KRas G12Cに関連するがんの治療で使用するために提供される。
【0136】
関連する態様では、本発明は、ある用量の汎ErbBファミリー阻害剤と、ある用量の式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物と、を含む、キットを、対象においてがん細胞、特にKRas G12Cを発現するがん細胞の増殖を阻害するのに有効な量で提供する。キットには、場合によっては、汎ErbBファミリー阻害剤および式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の投与のための説明書を含む挿入物が含まれる。挿入物は、式(I)、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物と組み合わせて、汎ErbBファミリー阻害剤を使用するための1組みの説明書をユーザに提供し得る。
【0137】
実施例A
汎ErbBファミリー阻害剤は、KRas G12Cを発現する細胞株に対してKRas G12C阻害剤の活性を相乗的に増加させる。
この実施例は、式I、式I-A、および式1-Bの例示的なKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物実施例番号1~678から選択される化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507、またはそれらの薬学的に許容される塩)と、汎ErbBファミリー阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物との組み合わせが、KRas G12Cを発現する腫瘍細胞株の成長を相乗的に阻害することを示す。
【0138】
汎ErbBファミリー阻害剤を本明細書に開示される例示的なKRas G12C阻害剤と組み合わせることが相乗活性をもたらすかどうかを判定するために、KRas G12C変異を有する9つの肺癌および1つの結腸直腸細胞株のパネルを集めた。コレクションには、NCI-H1373(ATCC CRL-5866)、NCI-H1792(ATCC CRL-5895)、NCI-H2030(ATCC CRL-5985)、NCI-H2122(ATCC CRL-5985)、HCC1171(KCLB 71171)、HCC44(DSMZ ACC-534)、LU99(RCB1900)、SW1573(ATCC CRL-2170)、SW837(ATCC CCL-235)、およびKYSE-410(ECACC 94072023)が含まれた。
【0139】
各細胞株の一対の組み合わせの相乗効果スコアを決定するためのアッセイは、3回行った。ベースライン発光を決定するための3枚の96ウェルプレートと別々の96ウェル対照プレートの追加の4つのウェルに、2000細胞/ウェルの特定の細胞株を、その細胞株に好適な増殖培地、例えば、10%FBSを添加したRPMI 1640培地と、増殖に必要な任意の細胞株特異的試薬の総量90μlに播種した。プレートを、5%CO雰囲気中、37℃で一晩インキュベートした。
【0140】
指定されたベースラインウェルの各々に、30μlのCell-Titer Glo試薬(CTG;Promega Corporation)を各ウェルに添加し、プレートを室温で振とうしながら20分間インキュベートした。ベースライン発光は、製造業者の説明書に従ってBMG ClarioStarマルチモードプレートリーダーを使用して定量化した。
【0141】
式(I)の例示的なKRas G12C阻害剤の8点単剤希釈および汎ErbBファミリー阻害剤の5点単剤希釈を含む、100%DMSO中の一連のワーキングストック1000X薬物希釈を調製した。KRas G12C阻害剤と汎ErbBファミリー阻害剤に使用された希釈は、個々の化合物ごとに異なったが、3~6倍/段階希釈の範囲であった。
【0142】
この実施例で試験された例示的なKRasG12C阻害剤は、以下を含む。
【表1】
【0143】
10X中間投与プレートは、式(I)の例示的なKRas G12C阻害剤または汎ErbB阻害剤の配列された単剤希釈物を含む無血清RPMI培地で調製された。加えて、式(I)、式I-A、または式I-Bの例示的なKRas G12C阻害剤と汎ErbBファミリー阻害剤とのマトリックス40の希釈の組み合わせを試験試料として調製した。
【0144】
上記の適切な細胞株を播種した3つの96ウェルプレートの対応する各ウェルに、10μlの各10X単剤と用量マトリックス40の組み合わせを添加し、プレートを37C、5%CO雰囲気で72時間インキュベートした。30μlアリコートのCell-Titer Glo試薬(CTG)を各試験ウェルに加え、プレートを室温で振とうしながら20分間インキュベートし、発光は、製造業者の説明書に従ってBMG ClarioStarマルチモードプレートリーダーを使用して定量化した。
【0145】
生データおよびメタデータファイルを入力ファイルとして使用して、各治療条件の効果率を計算し、2つの試験化合物が相乗効果を示すかどうかを判定するために設計された4つの独立した数学的参照モデル(Loewe相加性、Bliss独立性、最高単剤、およびZIP)を使用して分析した。
【0146】
各数学的モデルからのデータの出力は、相対的な相乗効果スコアの割り当てである。表3に報告されているデータは、Loewe相加性、Bliss独立性、最高単剤、およびZIPスコア(「複合相乗効果スコア」)の合計である。
【表2】
【0147】
27以上の複合スコアは、相乗効果のあるヒットとして解釈されたが、17~26の複合スコアは、潜在的な相乗効果を示す。これらの結果は、相乗効果がKRas G12C単剤での治療に対して感受性が低く、それによりKRas G12C阻害剤に対してKRas G12C細胞株の感受性を増加させる、表1に記載のKRas G12C変異を有する細胞株の大部分において、様々な汎ErbBファミリー阻害剤と式(I)の例示的なKRas G12C阻害剤化合物との組み合わせで観察されたことを示す。
【0148】
実施例B
KRasG12C阻害剤と汎ErbBファミリー阻害剤との組み合わせを調べるためインビボモデル
免疫不全ヌード/ヌードマウスの右後肢側部に、KRas G12C変異を有する細胞または患者由来の腫瘍試料を接種した。腫瘍体積が200~400mmのサイズに達したとき、マウスを、各々、5~12匹のマウスの4つの群に分けた。第1の群に、ビヒクルのみを投与した。第2の群に、細胞株および単剤活性に応じて、最大の生物学的効果または最大未満の生物学的効果をもたらす濃度でKRas G12C阻害剤の単剤用量を投与したが、これは完全な腫瘍退縮をもたらさない。第3の群に、細胞株および単剤活性に応じて、最大の生物学的効果または最大未満の生物学的効果をもたらす濃度で汎ErbB阻害剤の単剤用量を投与したが、これは完全な腫瘍退縮をもたらさない。第4の群に、単剤用量のKRas G12C阻害剤を単剤用量の汎ErbBファミリー阻害剤と組み合わせて投与した。治療期間は、細胞株ごとに異なるが、通常は21~35日であった。腫瘍体積は、2~3日ごとにキャリパーを使用して測定し、腫瘍体積は、式:0.5×(長さ×幅)で計算した。このモデルにおける組み合わせの腫瘍退縮の程度が大きいことは、KRas G12C阻害剤のみを用いた治療と比較して、組み合わせ療法が治療対象に臨床的に重要な利益をもたらす可能性が高いことを示す。
【0149】
例えば、1日目に、3セットの20匹のヌード/ヌードマウスに各々、5×10個のH2122細胞、KYSE-410細胞、またはLU6405細胞(PDXモデル)を、右後肢に接種した。腫瘍体積が、約300mmに達したとき(11日目)に、4つの群の各々の5匹のマウスに、ビヒクルのみ(10%カプチゾール)、100mg/kgのKRAS G12C阻害剤化合物478(50mMクエン酸緩衝液中10%カプチゾール(pH5.0)、12.5mg/kgの汎ErbBファミリー阻害剤アファチニブ(0.5%メチルセルロース/0.4%Tween-80)、または100mg/kgのKRas G12C阻害剤化合物478および12.5mg/kgのアファチニブを21日間毎日経口投与した。腫瘍体積は、以下に示す事前に指定された日に測定した。群当たり5匹のマウスの腫瘍体積を平均化し、表4a(H2122細胞株)、4b(KYSE-410細胞株)、および4c(LU6405細胞)に報告する。
【表3】
【表4】
【表5】
【0150】
表4aに示されるように、H2122担癌マウスへの単剤としての化合物478またはアファチニブの投与は、それぞれ、22日目(治療10日目)に85%および41%の腫瘍成長阻害を示した。汎ErbBファミリー阻害剤アファチニブと化合物478との組み合わせは、22日目に41%の腫瘍退縮をもたらした。
【0151】
表4bに示されるように、KYSE-410担癌マウスへの単剤としての化合物478の投与は、37日目(治療27日目)に64%の腫瘍成長阻害をもたらしたが、汎ErbBファミリー阻害剤アファチニブと化合物478との組み合わせは、単剤としての化合物478の投与と比較して、37日目に93%の腫瘍退縮をもたらした。
【0152】
表4cに示されるように、LU6405を移植したマウスへの単剤としての化合物478の投与は、34日目(治療24日目)に96%の腫瘍成長阻害をもたらしたが、汎ErbBファミリー阻害剤アファチニブと化合物478との組み合わせは、単剤としての化合物478の投与と比較して、37日目に67%の腫瘍退縮をもたらした。
【0153】
関連する実験では、1日目に、2セットの20匹のヌード/ヌードマウスに各々、5×10個のCR6256細胞またはCR2528細胞(PDXモデル)を、右後肢に接種した。腫瘍体積が、約200~300mmに達したとき(11日目)に、初めの2つの群の各々の5匹のマウスに、ビヒクルのみ(10%カプチゾール)または100mg/kgのKRAS G12C阻害剤化合物478(50mMクエン酸緩衝液中10%カプチゾール(pH5.0))を21日間毎日経口投与した。第3の群のマウスに、3日ごとに0.25mg/kgの汎ErbBファミリー阻害剤抗体セツキシマブ(PBS、pH7.2)を腹腔内投与するか、または100mg/kgのKRas G12C阻害剤化合物478を経口投与し、3日ごとに0.25mg/kgのセツキシマブを腹腔内投与した。腫瘍体積は、以下に示す事前に指定された日に測定した。群当たり5匹のマウスの腫瘍体積を平均化し、表5a(CR6256細胞株)および5b(CR2528細胞株)に報告する。
【表6】
【表7】
【0154】
表5aに示されるように、CR6258を移植したマウスへの単剤としての化合物478の投与は、37日目(治療27日目)に71%の腫瘍退縮をもたらしたが、汎ErbBファミリー阻害剤セツキシマブと化合物478との組み合わせは、完全奏功をもたらしたか、または単剤としての化合物478の投与と比較して、37日目に100%の腫瘍退縮をもたらした。
【0155】
表5bに示されるように、CR2528を移植したマウスへの単剤としての化合物478の投与は、34日目(治療24日目)に単剤抗腫瘍活性をもたらさなかったが、汎ErbBファミリー阻害剤セツキシマブと化合物478との組み合わせは、単剤としての化合物478の投与と比較して、37日目に31%の腫瘍退縮をもたらした。
【0156】
さらに別の実験では、1日目に、2セットの20匹のヌード/ヌードマウスに各々、5×10個のH2122細胞またはKYSE-410細胞を、右後肢に接種した。腫瘍体積が、約300mmに達したとき(11日目)に、4つの群の各々の5匹のマウスに、ビヒクルのみ(10%カプチゾール)または100mg/kgのKRAS G12C阻害剤化合物478(50mMクエン酸緩衝液中10%カプチゾール(pH5.0))を21日間毎日経口投与した。第3の群の5匹のマウスに、7日ごとに48mg/kgの汎ErbBファミリー阻害剤タルロキソチニブ(10mg/kgのベータ-シクロデキストリン)を腹腔内投与するか、または100mg/kgのKRas G12C阻害剤化合物478を経口投与し、7日ごとに48mg/kgのタルロキソチニブを腹腔内投与した。腫瘍体積は、以下に示す事前に指定された日に測定した。群当たり5匹のマウスの腫瘍体積を平均化し、表6a(KYSE-410細胞株)および6b(H2122細胞株)に報告する。
【表8】
【表9】
【0157】
表6aに示されるように、KYSE-410を移植したマウスへの単剤としての化合物478の投与は、61日目(治療50日目)に71%の腫瘍成長阻害をもたらしたが、汎ErbBファミリー阻害剤セツキシマブと化合物478との組み合わせは、単剤としての化合物478の投与と比較して、61日目に97%の腫瘍退縮をもたらした。
【0158】
表6bに示されるように、H2122を移植したマウスへの単剤としての化合物478の投与は、46日目(治療35日目)に3%の腫瘍退縮をもたらしたが、汎ErbBファミリー阻害剤セツキシマブと化合物478との組み合わせは、単剤としての化合物478の投与と比較して、37日目に79%の腫瘍退縮をもたらした。
【0159】
これらの結果は、組み合わせ療法の各々がいずれかの単剤単独と比較して、より多くの量の腫瘍成長阻害をもたらしたことを示しており、組み合わせの増強したインビボでの抗腫瘍効果を示す。
【0160】
本発明をその特定の実施形態と関連付けて説明してきたが、その実施形態はさらに修正が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原理に従った本発明の任意の変形、使用、または改変を包含することが意図され、本発明が属する技術内の既知のまたは日常的な実施の範囲に入り、上記に示されるおよび以下の添付の請求項の範囲に入る本質的な特徴に適用され得る本開示からの乖離を含むものと理解されよう。