(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】温調ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240830BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2021520748
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019303
(87)【国際公開番号】W WO2020235449
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-08-31
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019094915
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
(72)【発明者】
【氏名】幡野 修平
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】野崎 大進
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-44461(JP,A)
【文献】特開2001-77257(JP,A)
【文献】特開2015-112866(JP,A)
【文献】特開2010-272870(JP,A)
【文献】特開平5-322464(JP,A)
【文献】特開2003-287379(JP,A)
【文献】特開2005-123496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から熱媒体を導入する熱媒体導入口と、
前記熱媒体導入口からの前記熱媒体が通過する温調機構と、
前記温調機構から外部に前記熱媒体を排出する熱媒体排出口と、を有し、
前記温調機構は、金属多孔質体と、前記金属多孔質体を収容する収容体と、少なくとも1つの主面が前記温調機構の外側に露出され、該主面の内側が前記金属多孔質体に接することで前記金属多孔質体と外部との間で熱交換を行う熱交換板と、を備え、
前記収容体は、前記熱媒体導入口と前記金属多孔質体との間に熱媒体拡散領域が設けられ、
前記金属多孔質体が金属繊維を含んで構成された金属繊維シートであり、
前記金属繊維シートは、前記熱媒体導入口側に配置された第1の金属繊維シートと、前記熱媒体排出口側に配置された第2の金属繊維シートと、を備え、
前記第1の金属繊維シートと前記第2の金属繊維シートとの間には、隙間が形成されている、調温ユニット。
【請求項2】
外部から熱媒体を導入する熱媒体導入口と、
前記熱媒体導入口からの前記熱媒体が通過する温調機構と、
前記温調機構から外部に前記熱媒体を排出する熱媒体排出口と、を有し、
前記温調機構は、金属多孔質体と、前記金属多孔質体を収容する収容体と、少なくとも1つの主面が前記温調機構の外側に露出され、該主面の内側が前記金属多孔質体に接することで前記金属多孔質体と外部との間で熱交換を行う熱交換板と、を備え、
前記収容体は、前記熱媒体導入口と前記金属多孔質体との間に熱媒体拡散領域が設けられ、
前記金属多孔質体が金属繊維を含んで構成された金属繊維シートであり、
前記金属繊維シートには、前記熱媒体導入口と前記熱媒体排出口とを結ぶ直線を通る横断面において、一部が除去されて蛇行した形状の流路が形成されている、温調ユニット。
【請求項3】
外部から熱媒体を導入する熱媒体導入口と、
前記熱媒体導入口からの前記熱媒体が通過する温調機構と、
前記温調機構から外部に前記熱媒体を排出する熱媒体排出口と、を有し、
前記温調機構は、金属多孔質体と、前記金属多孔質体を収容する収容体と、少なくとも1つの主面が前記温調機構の外側に露出され、該主面の内側が前記金属多孔質体に接することで前記金属多孔質体と外部との間で熱交換を行う熱交換板と、を備え、
前記収容体は、前記熱媒体導入口と前記金属多孔質体との間に熱媒体拡散領域が設けられ、かつ前記熱媒体の流路の一部を遮蔽する構造物によって蛇行した流路を形成している、調温ユニット。
【請求項4】
前記熱媒体拡散領域は、前記熱媒体導入口から前記金属多孔質体の熱媒体導入面の両端部分に向かって連続的に傾斜して広がっていく形状である、請求項1から
3のいずれか1項記載の温調ユニット。
【請求項5】
前記金属多孔質体と前記熱媒体排出口との間には熱媒体バッファ領域が設けられ、
前記熱媒体バッファ領域は、前記
金属多孔質体の熱媒体排出面の両端部分から前記熱媒体排出口に向かって連続的に傾斜して狭まっていく形状である、請求項1から
4のいずれか1項記載の温調ユニット。
【請求項6】
前記金属繊維シートは、前記熱媒体の流速が大きくなる部分では前記熱媒体の経路が長くなる形状である、請求項
1又は
2記載の調温ユニット。
【請求項7】
前記金属繊維シートは、前記熱媒体の流速が大きくなる部分では金属繊維が密に配置されている、請求項
1、
2又は
6記載の調温ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機器の使用電力が増大すると、発熱量が増加して電気機器が高温となり、誤作動及び故障等の原因となる。
そこで、電気機器には、発生した熱を冷却及び放熱するための冷却部材を備えることが多い。
【0003】
このような冷却部材の従来技術の一例として、特許文献1には、冷却効果に優れ、小型化及び薄型化しやすく、局所的な冷却を可能とすることを目的として、金属繊維で構成されている金属繊維シートと、該金属繊維シートを冷却する冷却機構と、を有し、該冷却機構が、該金属繊維シートを収容する収容体と、該収容体内に冷媒を導入する冷媒導入手段と、を備える冷却部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の一例である特許文献1では、収容体内における冷媒の拡散性が低い場合には冷却ムラを生じるおそれがある。
又は、収容体内の温度を上昇させる場合にも同様のことがいえ、収容体内における熱媒の拡散性が低い場合には加熱ムラを生じるおそれがある。
すなわち、収容体内における熱媒体の拡散性が低い場合には、温度調整にムラを生じるおそれがあり、温度調整にムラを生じると均一な温度調整を行うことが困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い均一性で温度調整が可能な温調ユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明は、外部から熱媒体を導入する熱媒体導入口と、前記熱媒体導入口からの前記熱媒体が通過する温調機構と、前記温調機構から外部に前記熱媒体を排出する熱媒体排出口と、を有し、前記温調機構は、金属多孔質体と、前記金属多孔質体を収容する収容体と、を備え、前記収容体は、少なくとも1つの主面が前記温調機構の外側に露出され、該主面の内側が前記金属多孔質体に接することで前記金属多孔質体と外部との間で熱交換を行い、前記熱媒体導入口と前記金属多孔質体との間には熱媒体拡散領域が設けられている温調ユニットである。
【0008】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属多孔質体と前記熱媒体排出口との間には熱媒体バッファ領域が設けられていることが好ましい。
【0009】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属多孔質体が金属繊維を含んで構成された金属繊維シートであることが好ましい。
【0010】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記熱媒体拡散領域は、前記熱媒体導入口から前記金属多孔質体の熱媒体導入面の両端部分に向かって連続的に傾斜して広がっていく形状であり、前記熱媒体バッファ領域は、前記金属繊維シートの熱媒体排出面の両端部分から前記熱媒体排出口に向かって連続的に傾斜して狭まっていく形状であることが好ましい。
【0011】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属繊維シートは、前記熱媒体導入口側に配置された第1の金属繊維シートと、前記熱媒体排出口側に配置された第2の金属繊維シートと、を備え、前記第1の金属繊維シートと前記第2の金属繊維シートとの間には、隙間が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属繊維シートは、前記熱媒体の流速が大きくなる部分では前記熱媒体の経路が長くなる形状であることが好ましい。
【0013】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属繊維シートは、前記熱媒体の流速が大きくなる部分では金属繊維が密に配置されていることが好ましい。
【0014】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記金属繊維シートには、一部が除去されて蛇行した形状の流路が形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記収容体は、前記熱媒体の流速が小さくなる部分では、前記熱媒体の流路が狭くなっていることが好ましい。
【0016】
上記構成の本発明の温調ユニットでは、前記収容体は、前記熱媒体の流路の一部を遮蔽する構造物によって蛇行した流路を形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い均一性で温度調整が可能な温調ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る温調ユニットの上面及び上面のA-Aにおける断面を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図3】実施形態2に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図4】実施形態3に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図5】実施形態4に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図6】実施形態5に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図7】実施形態6に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図8】実施形態7に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図9】実施形態8に係る温調ユニットの横断面及び熱媒体排出口側からの側面を示す図である。
【
図10】実施形態9に係る温調ユニットとして、
図1に示す上面のA-Aにおける断面の第1~第5の変形例を示す図である。
【
図11】実施形態9に係る温調ユニットとして、熱媒体導入口及び熱媒体排出口を温調機構に対して鉛直方向から取り付けられた構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付すものとする。
【0020】
まず、以下の説明において用いる用語を定義する。
「金属繊維」とは、金属を主成分とする繊維をいい、例えば「銅繊維」とは、銅を主成分とする繊維をいう。
また、金属を主成分とする場合には、不可避的に含まれる不純物を含め、本発明の効果を妨げない限り、当該金属以外の成分を一定量含んでいてもよい。
また、「熱伝導率(W/(m・K))」は、レーザーフラッシュ法(例えば、アルバック理工株式会社製、レーザーフラッシュ熱定数測定装置「TC7000型」)により測定される値である。
また、「平均繊維径」とは、顕微鏡で撮像された金属繊維シートの複数の箇所における垂直断面に基づいて、金属繊維の長手方向に垂直な断面積を算出し、当該断面積と同一面積を有する真円の直径を算出することにより導かれた面積径の相加平均値をいう。
ここで、複数の箇所は、例えば、20箇所とすることができる。
また、「平均繊維長」とは、顕微鏡像において、ランダムに選択した複数本の繊維について、繊維の長手方向の長さを測定した値の相加平均値をいう。
なお、繊維が直線状でない場合には、繊維に沿った曲線の長さとする。
ここで、複数本は、例えば、20本とすることができる。
また、「占積率」とは、繊維シートの体積に対する繊維部分の占める割合をいい、繊維シートの坪量、厚さ及び繊維の真密度から以下の式により算出される。
ここで、繊維シートが複数の種類の繊維を含む場合には、各繊維の組成比率を反映した真密度値を採用することで占積率を算出することができる。
(占積率(%))=(繊維シートの坪量)/((繊維シートの厚さ)×(真密度))×100。
ここで、「シートの厚さ」とは、空気による端子落下方式の膜厚計(例えば、ミツトヨ社製「デジマチックインジケータID-C112X」)により、例えば、金属繊維シートの測定点を測定した場合の相加平均値をいう。
「均質性」とは、繊維で構成されるシートの電気特性、物理特性及び透気特性等のシートが有する特性のシート内におけるバラツキの少なさをいう。
均質性の指標として、例えば、1cm2当たりのJIS Z8101に規定する坪量の変動係数(CV(Coefficient of Variation)値)を採用することができる。
「空隙率」とは、繊維シートの体積に対して空隙が存在する部分の割合をいい、繊維シートの坪量、厚さ、及び繊維の真密度から以下の式により算出される。
繊維シートが複数の種類の繊維を含む場合には、各繊維の組成比率を反映した真密度値を採用することで占積率を算出することができる。
(空隙率(%))=(1-(繊維シートの坪量)/((繊維シートの厚さ)×(真密度)))×100。
本発明における熱媒体は、気体であってもよいし、液体等であってもよく、その性状について限定されるものではない。
すなわち、本発明における熱媒体は、空気のような気体であってもよいし、水又はアルコールのような液体であってもよいし、ハイドロフルオロカーボン又はハイドロフルオロエーテル等のフッ素系の化合物等であってもよい。
【0021】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る温調ユニット1の上面及び上面のA-Aにおける断面を示す図である。
図1に示す温調ユニット1は、熱媒体導入口2と、温調機構3と、熱媒体排出口4と、を有する。
【0022】
熱媒体導入口2は、温調機構3内に外部から熱媒体を導入するポートである。
熱媒体排出口4は、温調機構3内の熱媒体を外部に排出するポートである。
なお、熱媒体導入口2には、導入する熱媒体を拡散させるために、スタティックミキサーが設けられていることが好ましい。
熱媒体導入口2にスタティックミキサーが設けられていると、導入される熱媒体に乱流が生じ、熱の伝導量を大きくすることができる。
【0023】
温調機構3は、金属繊維を含んで構成された金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5と、一主面が温調機構3の外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7と、収容体5と熱交換板7との間をシールする密封部材8と、を備える。
熱媒体導入口2から導入された熱媒体は、温調機構3内を通過し、熱媒体排出口4から排出される。
【0024】
金属繊維シート6は、金属繊維単独で構成されていてもよいが、金属繊維以外の成分を含んで構成されていてもよい。
金属繊維の金属成分としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム及び貴金属等を例示することができるが、これらのうち、銅、ステンレス及びアルミニウムが好ましく、特に銅が好ましい。
銅繊維は、剛直性と塑性変形性とのバランスに優れているからである。
なお、貴金属としては、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及びオスミウムを例示することができる。
また、金属繊維シート6に含まれる金属繊維以外の成分としては、ポリエチレンテレフタラート(PET:Poly-Ethylene Terephthalate)、ポリビニルアルコール(PVA:Poly-Vinyl Alcohol)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC:Poly-Vinyl Chloride)、ポリアミド及びアクリル、並びに繊維状物に結着性及び担持性を付与する有機物を例示することができる。
特に、金属繊維シート6が、複数の金属繊維がランダムに交絡した不織布である場合、これらの有機物のいずれか一つ又は複数を含むことで、金属繊維シート6の作製時における形態維持性及び機能性を補助し、又は向上させることができる。
【0025】
金属繊維シート6において、隣接する複数の金属繊維間は、結着されていることが好ましい。
すなわち、金属繊維シート6において、複数の金属繊維は物理的に固定され、複数の金属繊維間に結着部を形成していることが好ましい。
金属繊維シート6は、複数の金属繊維が結着部で直接固定されていてもよいし、間接的に固定されていてもよいが、金属繊維シート6を構成している複数の金属繊維間の少なくとも一部には空隙が形成されていることが好ましい。
金属繊維シート6内にこのような空隙が形成されると、後述の熱媒体が金属繊維シート6内に導入されやすくなるからである。
また、この結着部において、複数の金属繊維間が焼結されていると、金属繊維シート6の熱伝導性及び均質性が安定するため好ましい。
複数の金属繊維間に形成される空隙は、金属繊維が交絡することにより形成されていてもよい。
なお、金属繊維シート6の空隙率は、5%以上99%以下とすることが好ましく、より好ましくは10%以上98%以下とする。
また、金属繊維シート6の熱伝導率は、5W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0026】
また、金属繊維シート6は、シート状の構造体であればよく、複数の金属繊維がランダムに交絡した不織布であってもよいし、規則性を有する織布又はメッシュ材であってもよい。
また、金属繊維シート6の表面は、平らであってもよく、又はコルゲート加工が施された凹凸状であってもよい。
【0027】
金属繊維シート6の坪量は、10g/m2以上1000g/m2以下とすることが好ましい。
金属繊維シート6の坪量を10g/m2以上とすると、冷却又は加熱効果を高めることができ、金属繊維シート6の坪量を1000g/m2以下とすると、金属繊維シート6を軽量化することができる。
【0028】
ところで、金属繊維シート6の金属繊維の平均繊維径が1μm未満であると、金属繊維の剛直性が低下し、金属繊維シート6の製造に際してダマが生じやすくなり、金属繊維シート6の熱伝導性及び均質性が安定しにくくなる。
他方で、金属繊維シート6の金属繊維の平均繊維径が30μmを超過すると、金属繊維の剛直性が過度に高くなるため、交絡しにくくなる。
そのため、金属繊維シート6の金属繊維の平均繊維径は、好ましくは1μm以上30μm以下とし、2μm以上20μm以下とすることが特に好ましい。
また、金属繊維シート6が、複数の金属繊維がランダムに交絡した不織布である場合、金属繊維シート6の金属繊維の平均繊維長は、金属繊維シート6の熱伝導性及び均質性を安定させるために、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0029】
また、金属繊維シート6の金属繊維のアスペクト比が33未満であると、金属繊維が交絡しにくくなる。
他方で、金属繊維シート6の金属繊維のアスペクト比が10000を超過すると、金属繊維シート6の均質性が低下する。
そのため、金属繊維のアスペクト比は、33以上10000以下であることが好ましい。
【0030】
また、金属繊維シート6の占積率が2%未満であると、熱媒体導入時の圧力損失が抑えられる一方で、繊維量が不足するため冷却又は加熱効果が低下する。
他方で、金属繊維シート6の占積率が65%を超えると、熱媒体導入時の圧力損失が増大する。
そのため、金属繊維シート6の占積率は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましく、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0031】
また、金属繊維シート6の均質性を高めるために、金属繊維シート6の1cm2あたりのJIS Z8101に規定する坪量の変動係数であるCV値は、10%以下であることが好ましい。
【0032】
金属繊維シート6の製造方法は、特定の方法に限定されるものではない。
金属繊維シート6がメッシュ材又は織布である場合の製造方法には、金属線を一本ずつ交差させる平織りを用いてもよいし、又は縦方向に配置した金属線と横方向に配置した金属線とを互いに2本以上ずつ乗り越えるように交差させた綾織りを用いてもよい。又は、畳織、平畳織若しくは綾畳織を用いてもよい。
又は、金属繊維シート6がメッシュ材である場合には、金属線を編むことなく交差させた状態で溶接してもよい。
金属繊維シート6が不織布である場合の製造方法としては、湿式抄造法で抄紙する方法を例示することができる。
湿式抄造法では、金属繊維等が水性媒体に分散しているスラリーを用いて、抄紙機にて湿式抄造を行う。
ここで、スラリーには、填料、分散剤、増粘剤、消泡剤、紙力増強剤、サイズ剤、凝集剤、着色剤及び定着剤等の添加剤が含まれていてもよい。
そして、湿式抄造法により得られた湿体シートに対しては、複数の金属繊維を互いに交絡させる繊維交絡処理工程を行ってもよい。
繊維交絡処理工程としては、湿体シートの一主面に高圧ジェット水流を噴射する方法を例示することができる。
この方法によれば、湿体シート全体にわたって金属繊維又は金属繊維を含む繊維を交絡させることができる。
この湿体シートは、繊維交絡処理工程後に、熱風乾燥によるドライヤー工程を経る。
このドライヤー工程は、減圧焼結炉を用いて不活性ガス雰囲気下において行われることが好ましい。
ドライヤー工程を経たシートは、常温まで冷却された後に巻き取られる。
【0033】
繊維交絡処理工程とドライヤー工程とを経て得られたシートには、複数の金属繊維を結着させる前にプレス工程を行うとよい。
プレス工程によれば、複数の金属繊維間に存在する過度に大きな空隙を減らすことができるため、均質性を高めることができる。
また、プレス工程の際の圧力の調整により、金属繊維シート6の厚さを調整することもできる。
【0034】
なお、上述したように、複数の金属繊維間の結着部は焼結工程により焼結されていることが好ましい。
焼結工程によれば、複数の金属繊維間の結着を確実に行うことができ、複数の金属繊維間が固定されて金属繊維シート6の坪量のCV値が安定し、金属繊維シート6の均質性及び熱伝導性が安定する。
【0035】
また、焼結工程を経た金属繊維シート6は、更にプレス工程を経ることが好ましい。
ここで、焼結工程後に更にプレス工程を経ると、金属繊維シート6の均質性が更に向上するとともに、金属繊維シート6を薄くすることができる。
そして、焼結工程後のプレス工程によれば、金属繊維シート6の厚さ方向のみならず面方向にも金属繊維が移動する。
これにより、焼結時には空隙であった箇所にも金属繊維が配置され、金属繊維シート6の均質性が向上し、金属繊維の塑性変形性によってこの状態が維持される。
【0036】
なお、金属繊維シート6が不織布である場合の製造方法としては、シートを圧縮成形する乾式法を用いてもよい。
乾式法では、カード法及びエアレイド法等により、金属繊維を主体とするウェブを作製し、このウェブを圧縮成形する。
圧縮成形の際には、バインダを複数の金属繊維に含浸させて複数の金属繊維間を結合させてもよい。
ここで、バインダとしては、アクリル系接着剤等の有機バインダ及びコロイダルシリカ等の無機バインダを例示することができる。
【0037】
収容体5は、金属繊維シート6を収容する、断熱された構造体である。
収容体5の材料としては、金属、セラミック及び樹脂を例示することができる。
ここで、金属材料としては、ステンレス、銅及びアルミニウムを例示することができる。
また、セラミック材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミニウムを例示することができる。
また、樹脂材料としては、ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂を例示することができる。
収容体5は、上記の材料によって形成された後に、ロックウール等を用いて断熱される。
【0038】
熱交換板7は、一主面に温度調整対象面を含み、この温度調整対象面の裏面において金属繊維シート6に接し、この温度調整対象面と金属繊維シート6との間の熱交換を行う部材である。
熱交換板7の材料としては熱伝導性が高い材料を用いることが好ましく、熱伝導性が高い材料としては、ステンレス、銅及びアルミニウムを例示することができる。
また、熱交換板7上に金属繊維シート6が接した状態で焼結工程を経ると、金属繊維シート6と熱交換板7とが結着するため好ましい。
金属繊維シート6と熱交換板7とが結着すると、金属繊維シート6と熱交換板7との間において熱が伝導しやすくなるからである。
焼結工程は、減圧焼結炉を用いて不活性ガス雰囲気下において行われることが好ましい。
【0039】
密封部材8は、収容体5と熱交換板7との間を接合する接合材により形成された部材である。
このような接合材としては、金属接合材又は有機接合材を用いることができる。
金属接合材としては、銀ロウ、リン銅ロウ、半田及び銅箔を例示することができる。
金属接合材は、熱伝導率50W/(m・K)以上とし、厚さは100μm以下とすることが好ましい。
有機接合材としては、熱硬化性の、エポキシ、ウレタン及びシリコーン等を例示することができる。
有機接合材は、熱伝導率が1W/(m・K)未満と低いため、熱伝導性の観点からは薄くすることが好ましく、その厚さは20μm以下とすることが好ましい。
密封部材8は、例えば、金属繊維シート6と熱交換板7とが結着した部材上に収容体5が載置された状態で、焼結又は熱硬化反応によって熱交換板7と収容体5を接合することが好ましい。
【0040】
図2は、本実施形態に係る温調ユニット1の横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図2において、熱媒体導入口2から温調機構3内に導入された熱媒体は、熱媒体拡散領域10において金属繊維シート6への侵入前に拡散され、金属繊維シート6内を経て熱媒体バッファ領域11に到達し、熱媒体バッファ領域11に到達した熱媒体は、熱媒体排出口4から外部に排出される。
【0041】
図2に示すように、温調ユニット1内の熱媒体導入口2と金属繊維シート6との間に熱媒体拡散領域10が設けられることで、熱媒体導入口2から導入された熱媒体を、金属繊維シート6内へ侵入する前に拡散させることができる。
また、温調ユニット1内の金属繊維シート6と熱媒体排出口4との間に熱媒体バッファ領域11が設けられることで、熱媒体の流れを良好なものとすることができる。
従って、温調ユニット1内の熱媒体導入口2と金属繊維シート6との間に熱媒体拡散領域10が設けられ、温調ユニット1内の金属繊維シート6と熱媒体排出口4との間に熱媒体バッファ領域11が設けられることで、温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0043】
<実施形態2>
本実施形態においては、収容体の形状によって熱媒体を効果的に拡散させることで温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0044】
図3は、本実施形態に係る温調ユニット1aの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図3に示す温調ユニット1aは、温調機構3に代えて温調機構3aを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3aは、収容体5に代えて収容体5aを備え、熱媒体拡散領域10に代えて熱媒体拡散領域10aを備え、熱媒体バッファ領域11に代えて熱媒体バッファ領域11aを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
【0045】
収容体5aは、熱媒体導入口2から金属繊維シート6の熱媒体導入面の両端部分に向かって連続的に斜めに広がっていく形状とすることで横断面が略台形状の熱媒体拡散領域10aを形成し、金属繊維シート6の熱媒体排出面の両端部分から熱媒体排出口4に向かって連続的に傾斜して狭まっていく形状とすることで横断面が略台形状の熱媒体バッファ領域11aを形成する。
熱媒体拡散領域10aにおいては、熱媒体が金属繊維シート6に向かって誘導され、熱媒体バッファ領域11aにおいては、熱媒体の流れが良好なものとなるため、熱媒体の拡散を効果的に行うことができる。
そのため、温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、より高い均一性で温度調整が可能となる。
【0046】
なお、本実施形態に係る温調ユニット1aは、上述の構成に限定されるものではなく、熱媒体導入口2と金属繊維シート6との間の一部が斜めに広がっていく形態、又は金属繊維シート6と熱媒体排出口4との間の一部が傾斜している形態も含む。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱媒体をより効果的に拡散させて温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0048】
<実施形態3>
本実施形態においては、金属繊維シートの配置によって熱媒体の流速を調整して温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0049】
図4は、本実施形態に係る温調ユニット1bの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図4に示す温調ユニット1bは、温調機構3に代えて温調機構3bを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3bは、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6b1及び金属繊維シート6b2を備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
【0050】
第1の金属繊維シートである金属繊維シート6b1は、収容体5内の熱媒体導入口2側に配置され、第2の金属繊維シートである金属繊維シート6b2は、収容体5内の熱媒体排出口4側に配置され、金属繊維シート6b1と金属繊維シート6b2との間には、中間領域12bが形成されている。
温調機構3bにおいては、金属繊維シート6b1と金属繊維シート6b2との間に隙間である中間領域12bが形成されることで、熱媒体の流速を均一にすることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0052】
<実施形態4>
本実施形態においては、金属繊維シートの形状によって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0053】
図5は、本実施形態に係る温調ユニット1cの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図5に示す温調ユニット1cは、温調機構3に代えて温調機構3cを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3cは、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6cを備え、熱媒体拡散領域10に代えて熱媒体拡散領域10cを備え、熱媒体バッファ領域11に代えて熱媒体バッファ領域11cを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
【0054】
金属繊維シート6cは、熱媒体導入口2と熱媒体排出口4とに挟まれた中央部分においては長く、熱媒体導入面及び熱媒体排出面の両端部分においては短くなる形状とされている。
金属繊維シート6cをこのような形状とすることで、熱媒体導入口2から導入された熱媒体は、中央部分においては金属繊維シート6c内の通過距離が長くなり、両端部分においては金属繊維シート6c内の通過距離が短くなるため、熱媒体が流速の大きい状態で導入される中央部分における熱媒体の流速が抑えられる。
そのため、中央部分と両端部分との熱媒体の流速の差が小さくなり、熱媒体の流速を均一にすることができる。
【0055】
なお、
図5に示す金属繊維シート6cは中央部分が両端部分よりも長くなる形状であるが、これは、熱媒体導入口2及び熱媒体排出口4が中央部分に設けられており、中央部分において熱媒体の流速が大きくなるからである。
導入される熱媒体の流速が他の部分よりも大きくなる部分において金属繊維シート内の熱媒体の経路が長くなる形状であれば、長くなる部分は中央部分に限定されるものではない。
例えば、熱媒体導入口2及び熱媒体排出口4が両端部分に設けられ、中央部分よりも両端部分において熱媒体の流速が大きくなる場合には、両端部分が中央部分よりも長くなる形状とする。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属繊維シートの形状により熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0057】
<実施形態5>
本実施形態においては、金属繊維シートの繊維密度を調整することによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0058】
図6は、本実施形態に係る温調ユニット1dの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図6に示す温調ユニット1dは、温調機構3に代えて温調機構3dを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3dは、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6dを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
【0059】
金属繊維シート6dは、金属繊維が密に配置された繊維密集領域6d1と、繊維密集領域6d1よりも金属繊維が疎に配置された繊維非密集領域6d2及び繊維非密集領域6d3と、を備える。
繊維密集領域6d1は、熱媒体導入口2と熱媒体排出口4とに挟まれた中央部分に配置され、両端部分の各々には繊維非密集領域6d2及び繊維非密集領域6d3が配置されている。
金属繊維シート6dをこのような構成とすることで、熱媒体導入口2から導入された熱媒体は、中央部分においては繊維密集領域6d1を通過し、両端部分においては繊維非密集領域6d2又は繊維非密集領域6d3を通過するため、導入時の流速の大きい中央部分においては両端部分よりも熱媒体の流速が抑えられる。
そのため、熱媒体の流速が大きくなる中央部分と熱媒体の流速が小さくなる両端部分との流速の差が抑えられ、熱媒体の流速を均一にすることができる。
【0060】
金属繊維シート6dは、複数の金属繊維シートを部分的に重ねてプレスすることで形成することができる。
金属繊維が密に配置される繊維密集領域6d1においては、繊維非密集領域6d2及び繊維非密集領域6d3よりも金属繊維シートの重なる枚数を多くしてプレスを行うことで、金属繊維シート6dを形成することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属繊維シートの繊維密度により熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0062】
<実施形態6>
本実施形態においては、金属繊維シートの一部を除去して熱媒体の流路を形成することによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0063】
図7は、本実施形態に係る温調ユニット1eの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図7に示す温調ユニット1eは、温調機構3に代えて温調機構3eを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3eは、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6eを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
【0064】
金属繊維シート6eは、金属繊維シート6の一部が連続的に除去されて設けられた熱媒体流路13eを備える。
熱媒体流路13eは、熱媒体導入口2から熱媒体排出口4に向かう方向の流路と、これに垂直な方向の流路とによって形成されている。
このような構成の金属繊維シート6eによっても、中央部分と両端部分との流速の差が抑えられ、熱媒体の流速を均一にすることができる。
なお、熱媒体流路13eは、一部が除去された金属繊維シート6eによって、蛇行した形状である。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、金属繊維シートの一部を除去して蛇行する熱媒体の流路を形成することによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0066】
<実施形態7>
本実施形態においては、温調機構の収容体の形状によって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0067】
図8は、本実施形態に係る温調ユニット1fの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図8に示す温調ユニット1fは、温調機構3に代えて温調機構3fを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3fは、収容体5に代えて収容体5fを備え、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6fを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
収容体5fは、収容体5に対して、構造物9f1及び構造物9f2が追加されている。
【0068】
収容体5fでは、熱媒体導入面及び熱媒体排出面の両端部分の各々に構造物9f1及び構造物9f2が設けられて両端部分における熱媒体の流路が狭くなることで、熱媒体の流速が大きくなる。
すなわち、図8中右側の図において、図中上下方向両端における図中横方向に関する流路の幅が、図中上下方向中央部における図中横方向に関する流路の幅よりも小さい状況となっている。この構成の下に、同図右側の図において、上下方向両端部分における熱媒体の流路が狭くなることで、熱媒体の流速が大きくなる。
このような構成の収容体5fによっても、中央部分と両端部分との流速の差が抑えられ、熱媒体の流速を均一にすることができる。
また、
図8に示す温調機構3fは、
図6に示す温調機構3dよりも熱媒体の圧力損失を抑えることができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、収容体の両側に構造物を配置することによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0070】
<実施形態8>
本実施形態においては、温調機構の収容体に実施形態7とは異なる構造物を設けることによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができ、高い均一性で温度調整が可能な形態を示す。
【0071】
図9は、本実施形態に係る温調ユニット1gの横断面及び熱媒体排出口4側からの側面を示す図である。
図9に示す温調ユニット1gは、温調機構3に代えて温調機構3gを備える点が
図2に示す温調ユニット1と異なる。
温調機構3gは、収容体5に代えて収容体5gを備え、金属繊維シート6に代えて金属繊維シート6gを備える点が
図2に示す温調機構3と異なる。
収容体5gは、収容体5に対して、構造物9g1及び構造物9g2が追加されている。
収容体5gは、熱媒体の流路の一部を遮蔽する構造物9g1及び構造物9g2によって蛇行した流路を形成している。
【0072】
図9に示す収容体5gでは、熱媒体導入面及び熱媒体排出面の両端部分のいずれかに、構造物9g1及び構造物9g2が複数設けられている。
なお、複数の構造物9g1は、熱媒体導入面及び熱媒体排出面の両端部分の一方に接して設けられており、複数の構造物9g2は、熱媒体導入面及び熱媒体排出面の両端部分の他方に接して設けられている。
すなわち、複数の構造物9g1と複数の構造物9g2とは、収容体5g内の互いに対向する面に設けられている。
なお、構造物9g1と構造物9g2とは、交互に配置されている。
このような構成の収容体5gによっても、中央部分と両端部分との流速の差が抑えられ、熱媒体の流速を均一にすることができる。
【0073】
なお、金属繊維シート6gは、金属繊維シート6の一部をくり抜き加工することで形成することができる。
金属繊維シート6のくり抜き加工は、くり抜き加工用の型を用いてもよいし、レーザーアブレーションを用いてもよい。
そして、金属繊維シート6gをはめた収容体5gに対して焼結工程を行い、その後複数の構造物9g1及び構造物9g2と金属繊維シート6gとの間をエポキシ等で接着することで隙間を埋めて、金属繊維シート6gの機械的強度を向上させることが好ましい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、収容体の両側に交互に構造物を配置して媒体流路を形成することによって、熱媒体の流速を均一にして温度調整対象面における冷却又は加熱のムラを防止することができる。
【0075】
<実施形態9>
上述の実施形態1~8においては、温調ユニットの横断面及び側面に主な特徴を有する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
図10(A)~(E)は、本実施形態に係る温調ユニットとして、
図1に示す温調ユニット上面のA-Aにおける断面の第1~第5の変形例を示す図である。
また、本実施形態において、収容体と熱交換板との間には、これらの間をシールする図示しない密封部材を備えるものとする。
【0077】
図10(A)に示す第1の変形例である温調ユニット1hは、熱媒体導入口2hと、温調機構3hと、熱媒体排出口4hと、を有する。
温調機構3hは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5hと、一主面が温調機構3hの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7と、を備える。
熱媒体導入口2hから導入された熱媒体は、温調機構3h内を通過し、熱媒体排出口4hから排出される。
【0078】
図10(A)に示す温調ユニット1hでは、
図1に示す温調ユニット1と比較して熱媒体導入口2h及び熱媒体排出口4hが熱交換板7側に拡張されており、導入時及び排出時に熱媒体の流れが妨げられず、更には、拡散領域及びバッファ領域の断面積が広くなっている。
また、収容体5hは、熱媒体導入口2h及び熱媒体排出口4hを搭載可能な形状である点が収容体5と異なる。
このような構成とすることにより、
図1に示す温調ユニット1よりも熱媒体を広い領域に拡散させることができ、熱媒体の温度の均一性が向上し、より高い均一性で温度調整が可能となる。
【0079】
図10(B)に示す第2の変形例である温調ユニット1iは、熱媒体導入口2iと、温調機構3iと、熱媒体排出口4iと、を有する。
温調機構3iは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5iと、一主面が温調機構3iの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7と、を備える。
熱媒体導入口2iから導入された熱媒体は、温調機構3i内を通過し、熱媒体排出口4iから排出される。
【0080】
図10(B)に示す温調ユニット1iでは、熱媒体導入口2iから金属繊維シート6までの間及び金属繊維シート6から熱媒体排出口4iまでの間において熱媒体の流れが妨げられない。
また、収容体5iは、熱媒体導入口2iから金属繊維シート6までの間及び金属繊維シート6から熱媒体排出口4iまでの間において熱媒体の流れが妨げられない形状である点が収容体5と異なる。
このような構成とすることにより、
図1に示す温調ユニット1よりも熱媒体の圧力損失を抑えることができる。
【0081】
図10(C)に示す第3の変形例である温調ユニット1jは、熱媒体導入口2jと、温調機構3jと、熱媒体排出口4jと、を有する。
温調機構3jは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5jと、一主面が温調機構3jの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7jと、を備える。
熱媒体導入口2jから導入された熱媒体は、温調機構3j内を通過し、熱媒体排出口4jから排出される。
【0082】
図10(C)に示す温調ユニット1jでは、熱媒体導入口2jから金属繊維シート6までの間及び金属繊維シート6から熱媒体排出口4jまでの間において熱媒体の流れが段階的に狭められている。
ここで、収容体5jは、
図10(A)に示す収容体5hと同様の形状である。
また、熱交換板7jは、熱媒体の流路が段階的に狭められる形状である点が熱交換板7と異なる。
このような構成とすることにより、
図1に示す温調ユニット1よりも熱媒体の流路導入を均一にすることができる。
【0083】
図10(D)に示す第4の変形例である温調ユニット1kは、熱媒体導入口2kと、温調機構3kと、熱媒体排出口4kと、を有する。
温調機構3kは、金属繊維シート6kと、金属繊維シート6kを収容する収容体5kと、一主面が温調機構3kの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6kに接して設けられることで金属繊維シート6kと外部との間の熱交換を行う熱交換板7と、を備える。
熱媒体導入口2kから導入された熱媒体は、温調機構3k内を通過し、熱媒体排出口4kから排出される。
【0084】
図10(D)に示す温調ユニット1kでは、熱媒体導入口2kから導入された熱媒体は、拡散領域において速やかに拡散される。
金属繊維シート6kは金属繊維シート6よりも厚く形成されている。
また、収容体5kは、熱媒体導入口2k及び熱媒体排出口4kを搭載可能であり、且つ金属繊維シート6kを収容可能な形状である点が収容体5と異なる。
このような構成とすることにより、
図1に示す温調ユニット1よりも熱媒体を拡散領域において速やかに拡散させることができる。
【0085】
図10(E)に示す第5の変形例である温調ユニット1lは、熱媒体導入口2lと、温調機構3lと、熱媒体排出口4lと、を有する。
温調機構3lは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5lと、一主面が温調機構3lの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7lと、を備える。
熱媒体導入口2lから導入された熱媒体は、温調機構3l内を通過し、熱媒体排出口4lから排出される。
【0086】
図10(E)に示す温調ユニット1lでは、熱媒体導入口2lから金属繊維シート6までの間及び金属繊維シート6から熱媒体排出口4lまでの間において熱媒体の流れが段階的に狭められている。
ここで、収容体5lは、熱媒体の流れが段階的に狭められる形状とした点が収容体5kと異なる。
また、熱交換板7lは、熱媒体の流路が段階的に狭められる形状であり、熱交換板7jと同様の断面形状である。
このような構成とすることにより、
図1に示す温調ユニット1よりも熱媒体を拡散領域において速やかに拡散させ、且つ熱媒体の流路導入を均一にすることができる。
【0087】
以上、
図10を参照して説明したように、本発明に係る温調ユニットは様々な断面形状を採りうる。
また、上述の構成では、熱媒体導入口及び熱媒体排出口は、温調機構に対して水平方向から取り付けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
図11(A),(B)は、本実施形態に係る温調ユニットとして、熱媒体導入口及び熱媒体排出口が温調機構に対して鉛直方向から取り付けられた構成を示す図である。
【0089】
図11(A)に示す温調ユニット1mは、熱媒体導入口2mと、温調機構3mと、熱媒体排出口4mと、を有する。
温調機構3mは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5mと、一主面が温調機構3mの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7mと、を備える。
熱媒体導入口2mから導入された熱媒体は、温調機構3m内を通過し、熱媒体排出口4mから排出される。
【0090】
図11(A)に示す温調ユニット1mでは、熱交換板7mを貫通した熱媒体導入口2m及び熱媒体排出口4mが温調機構3mに鉛直方向から取り付けられている。
収容体5mは、開口部が側面に設けられていない点が収容体5と異なる。
また、熱交換板7mは、熱媒体導入口2m及び熱媒体排出口4mを配置するための開口部が設けられている点が熱交換板7と異なる。
【0091】
図11(B)に示す温調ユニット1nは、熱媒体導入口2nと、温調機構3nと、熱媒体排出口4nと、を有する。
温調機構3nは、金属繊維シート6と、金属繊維シート6を収容する収容体5nと、一主面が温調機構3nの外側に露出され、該一主面の裏面が金属繊維シート6に接して設けられることで金属繊維シート6と外部との間の熱交換を行う熱交換板7と、を備える。
熱媒体導入口2nから導入された熱媒体は、温調機構3n内を通過し、熱媒体排出口4nから排出される。
【0092】
図11(B)に示す温調ユニット1nでは、熱媒体導入口2n及び熱媒体排出口4nが収容体5nの底面を貫通することで、温調機構3nに鉛直方向から取り付けられている。
収容体5nは、開口部が側面ではなく底面に設けられている点が収容体5と異なる。
【0093】
以上、
図11を参照して説明したように、本発明に係る温調ユニットでは熱媒体を鉛直方向から導入してもよい。
また、
図11(A)には熱媒体を温調機構の上から導入して上に排出する構成を示し、
図11(B)には熱媒体を温調機構の下から導入して下に排出する構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱媒体を温調機構の上から導入して下に排出する構成であってもよいし、熱媒体を温調機構の下から導入して上に排出する構成であってもよい。
【0094】
なお、上述の実施形態1~9に係る温調ユニットは金属繊維シートを備えているが、これに代えて、ポーラス金属を備えていてもよく、金属繊維シート及びポーラス金属を総括して金属多孔質体とする。
また、金属繊維シートには、金属繊維不織布、金属繊維織布及び金属メッシュが含まれる。
【0095】
なお、上述の実施形態1~9に係る温調ユニットは熱交換板に温度調整対象面を含むが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱交換板に代えて熱交換を行わない板状部材を備え、収容体側に温度調整対象面が含まれていてもよい。
又は、熱交換板に温度調整対象面を含み、且つ収容体に温度調整対象面が含まれていてもよく、この場合には温調ユニットの両面に温度調整対象面が形成される。
又は、本発明の温調ユニットは、板状部材を備えていなくてもよく、板状部材を備えていない場合には、収容体の1つ以上の主面が温調機構の外側に露出され、該主面の内側の面が金属多孔質体に接すると、収容体の該主面を含む部分が金属多孔質体と外部との間の熱交換を行うように機能することになる。
【0096】
また、上述の実施形態の各々を組み合わせた構成も本発明に含まれる。
例えば、実施形態2の構成と実施形態3の構成とを組み合わせてもよいし、実施形態2の構成と実施形態4の構成とを組み合わせてもよいし、実施形態2の構成と実施形態3の構成と実施形態4の構成とを組み合わせてもよい。
特に、実施形態9と他の実施形態の構成とを組み合わせるとよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1l,1m,1n 温調ユニット
2,2h,2i,2j,2k,2l,2m,2n 熱媒体導入口
3,3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,3j,3k,3l,3m,3n 温調機構
4,4h,4i,4j,4k,4l,4m,4n 熱媒体排出口
5,5a,5f,5g,5h,5i,5j,5k,5l,5m,5n 収容体
6,6b1,6b2,6c,6d,6e,6f,6g,6k 金属繊維シート
6d1 繊維密集領域
6d2,6d3 繊維非密集領域
7,7j,7l,7m 熱交換板
8 密封部材
9,9f1,9f2,9g1,9g2 構造物
10,10a,10c 拡散領域
11,11a,11c バッファ領域
12b 中間領域
13e 熱媒体流路