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特許7546560運転者支援システムを試験するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】運転者支援システムを試験するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240830BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240830BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240830BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20240830BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20240830BHJP
【FI】
G01M17/007 D
G08G1/00 C
G08G1/16 A
B60W50/10
B60W30/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021522417
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019078898
(87)【国際公開番号】W WO2020083996
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】A50922/2018
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エムレ・カプラン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ライトナー
(72)【発明者】
【氏名】アフメットカン・エルドアン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ナガー
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/167790(WO,A1)
【文献】特表2016-531044(JP,A)
【文献】特開2017-105453(JP,A)
【文献】特開2008-123197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0060467(US,A1)
【文献】国際公開第2017/210222(WO,A1)
【文献】特開2017-173309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0238166(US,A1)
【文献】特表2015-516623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 -17/10
B60W 10/00 -60/00
G08G 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための運転者支援システムを試験環境(6)において試験するためのテストケースを作成する方法(1)であって、以下の作業ステップ:
-少なくとも1つの交通シナリオを特徴付ける少なくとも1つのデータセットを特定する作業ステップ(S2a);
-少なくとも1つの特定された前記データセットにおいて、少なくとも1つのパラメータを識別する作業ステップ(S2b)であって、前記パラメータを用いて、前記交通シナリオそれぞれが境界条件に適応可能である作業ステップ(S2b)であって、少なくとも1つの前記パラメータの識別が、少なくとも1つの特定された前記データセットによって特徴付けられる少なくとも1つの前記交通シナリオの時間的に連続する場面における、分類された車両周囲の比較を用いて実施される、ステップ;
-交通シナリオ記述(12)を特定する作業ステップ(S2c)であって、前記交通シナリオ記述は、それぞれ特定の交通シナリオを特徴付けると共に、少なくとも1つのパラメータを有しており、前記パラメータを用いて、前記交通シナリオそれぞれは、境界条件に適応することが可能である作業ステップ(S2c);
-利用者の入力、及び/又は、所定の基準に基づいて、少なくとも1つの前記交通シナリオ記述(12)を選択する作業ステップ(S4);及び、
-少なくとも1つの選択された前記交通シナリオ記述(12)、及び、少なくとも1つの前記パラメータに関する少なくとも1つの所定の値に基づいてテストケースを作成する作業ステップ(S6)であって、前記テストケースは、少なくとも1つの選択された前記交通シナリオ記述(12)によって特徴付けられた交通シナリオの具体的な実現に対応しており、前記運転者支援システムに試験走行を行うことが可能である前記試験環境(6)を形成するために適しているものである、作業ステップ(S6)、
を有している方法(1)。
【請求項2】
さらに以下の作業ステップ:
-作成された前記テストケースを用いて、試験走行を実施する作業ステップ(S7)、
を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに以下の作業ステップ:
-1つ又は複数の特定された前記データセットに基づいて、少なくとも1つの前記交通シナリオ記述(12)を作成する作業ステップであって、前記交通シナリオ記述(12)は、特定の交通シナリオを特徴付け、少なくとも1つの識別された前記パラメータは、所定のフォーマットで格納される作業ステップ、
を有している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
さらに以下の作業ステップ:
-作成された前記交通シナリオ記述(12)を、交通シナリオデータバンク(2)に格納する作業ステップ(S3)であって、さらなる交通シナリオファイルも、前記交通シナリオデータバンク(2)に格納されている作業ステップ(S3)、
を有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
さらに、以下の作業ステップの内、少なくとも1つの作業ステップ:
-試験走行データバンクから所定の値を特定する作業ステップ;及び/又は、
-利用者入力から所定の値を特定する作業ステップ、
を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
車両のための運転者支援システムを、試験環境(6)において試験するための装置(100)であって、
-少なくとも1つの交通シナリオを特徴付ける少なくとも1つのデータセットを特定する手段;
-少なくとも1つの特定された前記データセットにおいて、少なくとも1つのパラメータを識別する手段であって、前記パラメータを用いて、前記交通シナリオそれぞれが境界条件に適応可能である手段において、少なくとも1つの前記パラメータの識別が、少なくとも1つの特定された前記データセットによって特徴付けられる少なくとも1つの前記交通シナリオの時間的に連続する場面における、分類された車両周囲の比較を用いて実施される、手段;
-交通シナリオ記述(12)の特定のための手段であって、前記交通シナリオ記述は、それぞれ特定の交通シナリオを特徴付けると共に、少なくとも1つのパラメータを有しており、前記パラメータを用いて、前記交通シナリオそれぞれは、境界条件に適応可能である手段;
-利用者の入力及び/又は所定の基準に基づいて、少なくとも1つの前記交通シナリオ記述(12)を選択するための手段;及び、
-少なくとも1つの選択された前記交通シナリオ記述(12)、及び、少なくとも1つの前記パラメータに関する少なくとも1つの所定の値に基づいて、テストケースを作成するための手段であって、前記テストケースは、少なくとも1つの選択された前記交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオの具体的な実現に対応していると共に、運転者支援システムに試験走行を行うことが可能である試験環境(6)を形成するために適しているものである、手段、
を有している装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための運転者支援システムを、試験環境において試験するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の車両には、特定の運転状況において運転者を支援する運転者支援システム(英語ではAdvanced Driver Assistance Systems、ADAS(先進運転支援システム))を装備することが増えている。当該支援は、半自律的介入(例えばアンチロックブレーキシステムによる、車軸に加えられるトルクの制御)を通じた、関連し得る情報の単なる表示(例えば車線変更アシスタントによる警告の出力)から、車両の制御への完全自律的介入(例えば車間距離制御を通じた適応速度制御。英語ではAdaptive Cruise Control、ACC(適応走行制御))にまで及んでいる。
【0003】
このような運転者支援システムの基盤を形成しているのは、一般的にはセンサデータ、例えば超音波センサ、レーダーセンサ又はカメラによって供給される信号であり、当該センサデータを用いて、現在の運転状況が決定され、当該運転状況に反応して、その時々の運転者支援システムの機能が実行され得る。特に、車両の制御に(自律的に)介入する運転者支援システムにおいては、現在の運転状況を、センサデータに基づいて、極めて高い信頼度で分類することが可能でなければならない。
【0004】
この際、一般的に、運転状況に割り当てられる特定の規則又は基準が作成され、当該規則又は基準を満たす場合には、既知の運転状況の存在が推測され得る。この際、規則又は基準を満たすことが、例えば運転者支援システムの活動のトリガとして作用する。例えば隣の車両が、運転者支援システムが装備された車両(自車)の前で、同じ車線に進入してくるという交通シナリオは、センサによって検出される隣の車両との走行方向に対して垂直な横方向間隔が減少し、隣の車両が、自車の目前に存在する場合に、最終的に少なくとも略ゼロの値をとることによって認識され得る。
【0005】
このような運転者支援システム、特に既知の交通シナリオにおける運転者支援システムの反応を試験するために、一般的には、既知の交通シナリオに関して分類されたセンサデータ(英語ではlabeled sensor data(ラベル付センサデータ))が供給され、試験される運転者支援システムに、これらの分類されたセンサデータが供給される。運転者支援システムを確実に試験するために、一般的には、場合によっては交通シナリオの単純な変型例も特徴付ける多数のセンサデータが必要とされる。
【0006】
これに関して、特許文献1からは、運転者支援システムを検証するためのシミュレーションシナリオの自動作成が知られている。この際、このようなシミュレーションシナリオの多くは、特に、受容されたシナリオの変型例によって作成可能であり、当該変型例は、受容された類似のシナリオ間の差異の分離によって作成されるデータ流に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/210222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、運転者支援システムの試験をさらに改善すること、特に容易にすること、及び/又は、より柔軟にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題は、独立請求項に記載された、車両のための運転者支援システムを、試験環境において試験するための方法及び装置によって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0010】
本発明の第1の態様は、車両のための運転者支援システムを試験環境において試験するための方法、特にコンピュータ支援による方法に関しており、当該方法は、以下の作業ステップを有している:(i)交通シナリオ記述を特定する作業ステップであって、当該交通シナリオ記述は、それぞれ特定の交通シナリオ、特にカットイン操舵又はカットアウト操舵を特徴付けると共に、少なくとも1つのパラメータを有しており、当該パラメータを用いて、各交通シナリオは、境界条件に適応することが可能であり、当該交通シナリオ記述は、好ましくは、特にそれぞれ、交通シナリオファイルに格納されており、当該交通シナリオファイルには、少なくとも1つのパラメータが、所定の、特に一般的なフォーマットで格納されている作業ステップ;(ii)利用者の入力、特に少なくとも1つのパラメータのステートメント、若しくは、少なくとも1つのパラメータに関する、利用者によって入力された少なくとも1つの値若しくは値域、及び/又は、所定の基準に基づいて、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択する作業ステップ;及び(iii)少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述、及び、少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの所定の、特に利用者によって入力された値、及び、好ましくはさらなる交通シナリオ記述に基づいてテストケースを作成する作業ステップであって、テストケースは、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオ、及び、好ましくは少なくとも1つのパラメータの少なくとも1つの所定の値に関するさらなる交通シナリオの具体的な実現に対応していると共に、運転者支援システムに試験走行を行うことが可能である試験環境を形成するために適している作業ステップ。
【0011】
本発明の意味における境界条件は、特に交通状況、天候、試験される運転者支援システムを備えた車両(以下において、試験車両)の初期速度、及び/又は、他の交通参加者、道路の形状若しくは延び具合、試験車両と1名若しくは複数名の他の交通参加者との間隔、試験車両の構成、及び/又は、例えばトレーラ等の荷積みのような他の交通参加者、及び/又は、そのようなもの、である。境界条件は、特に、運転者支援システムが装備された車両の運転者支援システムによる制御に影響を与える、考えられるあらゆる要素であり得る。
【0012】
本発明の意味におけるテストケース(英語ではTest Case)は、特にスクリプトであり、例えば交通参加者の行動の連続であり、当該スクリプトは、運転者支援システムの試験を可能にする。テストケースは、例えば運転者支援システムの試験のためのシミュレーションを実施する際にベースとなり得るスクリプトであってよい。
【0013】
本発明の意味における試験環境は、特に、交通シナリオの具体的な(仮想の)実現を生じさせるシミュレーションの内容である。言い換えると、試験環境は、例えば試験車両のシミュレーションされた環境であってよく、当該環境では、少なくとも他の交通参加者が、場合によっては試験車両自体も、決められたように移動し、特に所定の行動を実施する。
【0014】
本発明の意味における所定のフォーマットは、特に所定の(データ)構造である。所定のフォーマットは、例えば特定のパターン、例えば複数のパラメータの特定の配置若しくは順序、及び/又は、交通シナリオファイルにおける少なくとも1つのパラメータの特定のコーディングに対応し得る。例えば、複数のパラメータを、表に、特に2次元又は3次元、場合によっては多次元のマトリックスに保存することが考えられる。
【0015】
本発明の意味における交通シナリオ記述の特定とは、特に、例えば現実の、又は、シミュレーションされた実験を実施する際における検出である。しかしまた、交通シナリオ記述の特定は、例えばデータバンク及び/又はそのようなものからの読み込みであってもよい。
【0016】
本発明は、特に、それぞれ特定の交通シナリオを特徴付け、好ましくは所定の、特に一般的なフォーマットで存在している好ましくは複数の交通シナリオ記述から、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択し、当該交通シナリオ記述に基づいて、運転者支援システムの試験に適した試験環境を形成するために、少なくとも1つのテストケースを作成するというアプローチに基づいている。この際、交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオは、好ましくは、例えばカットイン操舵(進入操舵)又はカットアウト操舵(退出操舵)等の具体的な交通シナリオに対応している。しかしながら、交通シナリオ記述は、各交通シナリオを、好ましくは一般的な、包括的な形で説明しており、この際、交通シナリオ記述によって、これらの操舵の具体的な実施が規定されていることは無い。これに対して、テストケースは、好ましくは、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述によって特徴付けられている交通シナリオの具体的な実現に対応している。
【0017】
この際、少なくとも1つの交通シナリオ記述が、利用者入力に基づいて、例えば少なくとも1つのパラメータのステートメント、又は、交通シナリオの境界条件に適応する、特に規定する、1つ若しくは複数のパラメータに関して入力された値若しくは値域のステートメントを通じて選択され得るだけではなく、少なくとも1つのテストケースが、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述から作成され得る。この際、パラメータは、例えば交通シナリオにおける変数として用いられ得る。
【0018】
利用者は、例えば、試験車両、すなわち運転者支援システムが装備された車両が、一定の、利用者によって選択された速度で第1の車線上を直進し、隣接する第2の車線上の別の車両によって追い越され、この別の車両は、利用者によって選択された試験車両との間隔を置いて、第1の車線に進入する、と入力することができる。この入力に基づいて、以下において、利用者入力によって特徴付けられる具体的な交通シナリオを実現可能にする交通シナリオ記述を選択するために、データバンクが、データバンクに保存された、交通シナリオ記述を所定のフォーマットで含んでいる交通シナリオファイルと共に検索され得る。利用者によって入力されたパラメータ及び/又は境界条件は、例えば値が数学関数に代入されるように、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述に代入可能であり、これによって、少なくとも1つのテストケースが作成され、当該テストケースを用いて、シミュレーションが実施され、これによって運転者支援システムが試験され得る。
【0019】
利用者入力によって、少なくとも1つの交通シナリオ記述が、特に多数の交通シナリオ記述から選択可能であることによって、場合によっては複雑な、試験環境を形成するためのシナリオ又は操舵固有のデータセットの準備を省略することが可能である。従って、本発明によると、運転者支援システムの試験のための試験走行は、特に複雑にではなく、高速に、及び/又は、数多く実施され得る。特に、交通シナリオ記述が、所定の、好ましくは一般的なフォーマットで格納され得ることによって、幅広い交通シナリオへのアクセスが可能である。
【0020】
全体として、本発明は、運転者支援システムの試験をさらに改善すること、特に容易にすること、及び/又は、より柔軟にすること、を可能にする。
【0021】
以下において、本発明の好ましい実施形態と、そのさらなる発展形態とを記載する。これらはそれぞれ、明確に除外されない限り、任意で互いに、及び、本発明のさらに記載される態様と組み合わされ得る。
【0022】
好ましい実施形態において、当該方法はさらに、以下の作業ステップを有している:作成されたテストケースを用いて試験走行を実施する作業ステップ。これによって、運転者支援システムを、確実な方法で、特に個別に適応した交通シナリオに基づいて試験することが可能である。
【0023】
さらなる好ましい実施形態において、当該方法はさらに、以下の作業ステップを有している:(i)少なくとも1つの、特に現実の交通シナリオを特徴付ける少なくとも1つのデータセットを特定する作業ステップ;(ii)少なくとも1つの特定されたデータセットにおいて、少なくとも1つのパラメータを識別する作業ステップであって、当該パラメータを用いて、各交通シナリオが境界条件に、特に交通シナリオが関係する自車の初期速度に適応可能である作業ステップ。本発明の意味における自車は、特にその視点から、交通シナリオ、特に現実の交通シナリオが進行する車両である。
【0024】
少なくとも1つのデータセットにおける少なくとも1つのパラメータの識別は、特に確実に、以下において、利用者入力に基づいて、少なくとも1つの交通シナリオ記述を、多数の交通シナリオ記述から選択することを可能にする。従って、特に、少なくとも1つの交通シナリオが、識別されたパラメータに基づいて選択され得る。例えば、全ての交通シナリオ記述は、特定されたデータセットに対応する交通シナリオを特徴付け、従って、識別されたパラメータも有している。言い換えると、このような方法で、運転者支援システムの試験に関係する、考えられる交通シナリオの数を増大させることができる。
【0025】
この際、少なくとも1つのデータセットは、好ましくは、例えば自車の(現実の)車両周囲を検出するためのセンサ装置によって作成されるセンサデータ流に基づいて特定され、特にセンサデータ流から抽出される。この際、センサデータ流は、例えば自車の車両周囲が分類される、すなわち例えば他の交通参加者、交通標識、障害物及び/又はそのようなものといった物体が認識され、マーキングされる(英語ではlabeled(ラベル付けされる))ように加工され得る。加工されたセンサデータ流から、少なくとも1つのデータセットが作成され得る。言い換えると、少なくとも1つの特定されたデータセットは、好ましくは、準備されたセンサデータに基づいており、当該センサデータは、現実の車両周囲の検出の際に生成されたものであり、付加的なメタ情報、すなわち、生データから導出された、従ってセンサデータ流に含まれる純粋に物理的な情報を超えた情報を含んでいる。特に、これらのメタ情報は、少なくとも1つのパラメータの識別を可能にし、当該パラメータを用いて、各交通シナリオは、境界条件に適応し得る。
【0026】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つのパラメータの識別が、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられた少なくとも1つの交通シナリオの、時間的に連続する場面における分類された車両周囲の比較を用いて行われる。この際、本発明の意味における分類された車両周囲は、特に、純粋に物理的な情報を超えた、車両の車両周囲の説明である。この際、好ましくは準備されたデータセットによって特徴付けられている分類された車両周囲は、特にメタ情報を含むことが可能であり、当該メタ情報は、様々な時点における分類された車両周囲を比較可能にする。この際、好ましくは、分類された車両周囲は、メタ情報を含んでおり、当該メタ情報に基づいて、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられた少なくとも1つの交通シナリオの各場面において、認識され、マーキングされた(英語ではlabeled(ラベル付けされた))物体が識別可能であり、例えば、その位置、その速度、その構成及び/又はそのようなものは、連続する場面において、互いに比較可能である。これによって、少なくとも1つのパラメータが、特に確実に、及び/又は、自動化されて識別され得る。
【0027】
好ましくは、分類された車両周囲から、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられた少なくとも1つの交通シナリオの各場面において、車両周囲の要素の状態、すなわち例えば他の交通参加者等の、車両周囲において識別される物体が導出され、時間的に連続する場面において互いに比較され、特に互いから減算される。この際、本発明の意味における車両周囲の要素の状態は、特に少なくとも1つの物理量を含んでおり、当該物理量は、要素、特に自車に関連する要素を特徴付ける。例えば、要素の速度、要素の位置、要素の構成及び/又はそのようなもの、である。
【0028】
連続する場面において要素の状態が変化する場合、少なくとも1つのパラメータが、好ましくは、状態の変化を引き起こす物理量として識別される。これによって、少なくとも1つのパラメータが、特に容易に識別され得る。
【0029】
例えば、第1の場面において分類された車両周囲から、他の交通参加者の速度及び大きさを引き出し、続く第2の場面における当該交通参加者の速度又は大きさと比較することが可能である。一般的に、交通参加者の速度は、交通シナリオの過程の内で変化するものであり、従って、パラメータとして識別され得る。これに対して、交通参加者の大きさは、一般的に変化せず、従って、パラメータとしても識別されない。
【0030】
さらなる好ましい実施形態において、当該方法はさらに、以下の作業ステップを有している:1つ又は複数の特定されたデータセットに基づいて、少なくとも1つの交通シナリオ記述を作成する作業ステップであって、交通シナリオ記述は、特定の交通シナリオを特徴付け、少なくとも1つの識別されたパラメータは、所定のフォーマットで格納される。この際、少なくとも1つの識別されたパラメータの、特定のフォーマット、特に交通シナリオファイルでの格納は、好ましくは、標準化されたフォーマット又は標準化された交通シナリオ記述の作成に対応する。言い換えると、少なくとも1つの識別されたパラメータを特定のフォーマットで格納することによって、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられている、少なくとも1つの対応する交通シナリオの標準化された定義が保存される。これによって、センサデータ流から抽出された少なくとも1つのデータセットが、特に、一般的な形で、交通シナリオ記述として供給され、以下において、少なくとも1つのテストケースの作成のために選択され得る。
【0031】
好ましいさらなる実施形態において、当該方法はさらに、以下の作業ステップを有している:作成された交通シナリオ記述、特に交通シナリオファイルを、交通シナリオデータバンクに格納する作業ステップであって、さらなる交通シナリオファイルも、交通シナリオデータバンクに格納されている作業ステップ。この際、交通シナリオデータバンクは、好ましくはNоSQLデータバンクとして構成されており、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられた少なくとも1つの交通シナリオの標準化された定義を含んでいる。作成された交通シナリオ記述をデータバンクに格納することによって、テストケースの作成に、多数の交通シナリオ、特に現実の交通シナリオが用いられ得る。
【0032】
さらなる好ましい実施形態では、当該方法はさらに、以下の作業ステップの内の少なくとも1つの作業ステップを有している:(i)試験走行データバンクから所定の値を特定する作業ステップ;及び/又は、(ii)利用者入力から、特にユーザーインターフェースを通じて、所定の値を特定する作業ステップ。例えば、運転者支援システムの先行する試験等において有意義であると証明された少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの値又は値域が、試験走行データバンクから読み出され、少なくとも1つのテストケースを作成するために用いられ得る。代替的又は付加的に、利用者が、利用者入力に際して、特に少なくとも1つの交通シナリオ記述の選択のための入力に際して、少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの値又は値域を申告してもよい。これによって、テストケースが自動化され、高速に作成可能であり、及び/又は、利用者に、テストケースの作成及び運転者支援システムの試験に関する高い程度の制御が与えられ得る。
【0033】
本発明の第2の態様は、車両のための運転者支援システムを、試験環境において試験するための装置に関しており、当該装置は、交通シナリオ記述の特定のための手段を有しており、当該交通シナリオ記述は、好ましくはそれぞれ特定の交通シナリオを、特にカットイン操舵又はカットアウト操舵を特徴付けると共に、少なくとも1つのパラメータを有しており、当該パラメータを用いて、各交通シナリオは、境界条件に適応可能である。さらに、交通シナリオ記述を特定するための手段は、好ましくは、交通シナリオ記述を、特にそれぞれ、交通シナリオファイルに格納するように設定されており、交通シナリオファイル内には、少なくとも1つのパラメータが、所定の、特に一般的なフォーマットで格納されている。この際、交通シナリオ記述の特定のための手段は、特にインターフェースとして、又は、センサ装置として構成されていてよい。さらに、当該装置は、好ましくは、利用者の入力及び/又は所定の基準に基づいて、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択するための手段を有しており、少なくとも1つの交通シナリオ記述の選択のための手段は、特にデータ加工装置の第1のモジュールとして、例えば対応するソフトウェアとして構成されていてよい。さらに、当該装置は、好ましくは、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述、及び、少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの所定の値、及び、好ましくはさらなる交通シナリオ記述に基づいて、テストケースを作成するための手段を有しており、テストケースは、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオ、及び、好ましくは少なくとも1つのパラメータの少なくとも1つ所定の値に関するさらなる交通シナリオの具体的な実現に対応していると共に、運転者支援システムに試験走行を行うことが可能である試験環境を形成するために適している。テストケースを作成するための手段は、特にデータ加工装置の第2のモジュールとして、例えば対応するソフトウェアとして構成されていてよい。
【0034】
本発明の意味における手段は、ハードウェア技術及び/又はソフトウェア技術的に構成されていてよく、特に、好ましくはストレージシステム及び/若しくはバスシステムとデータ又は信号を伝達するように接続された、特にデジタルの、処理ユニット、特にマイクロプロセッサユニット(CPU)か、又は、このような処理ユニットのモジュール、及び/若しくは、1つ若しくは複数のプログラム、若しくは、プログラムモジュールを有し得る。このために、CPUは、ストレージシステムに格納されたプログラムとして実行される命令を実行し、データバスからの入力信号を検出し、及び/又は、出力信号をデータバスに与えるように構成されていてよい。ストレージシステムは、1つ又は複数の、特に異なるストレージ媒体、特に光学的、磁気的固体媒体、及び/又は、その他の不揮発性媒体を有し得る。プログラムは、ここに記載された方法を具現化する、又は、実施することが可能であるような性質を有していてよいので、CPUは、当該方法のステップを実行することが可能であり、従って、特にレシプロピストンエンジンを制御する、及び/又は、監視することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、当該装置は、交通シナリオデータバンクを有しており、当該交通シナリオデータバンク内には、交通シナリオ記述が、交通シナリオファイルの形で格納されているか、又は、格納され、当該交通シナリオ記述は、それぞれ少なくとも1つの、所定の、特に一般的なフォーマットで存在するパラメータを含んでおり、当該パラメータを用いて、各交通シナリオ記述によって特徴付けられた交通シナリオは、境界条件に適応可能である。
【0036】
さらなる好ましい実施形態では、当該装置は、入力装置も有しており、当該入力装置を用いて、利用者は、特に交通シナリオデータバンクに保存された交通シナリオ記述から、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択するために、入力を行うことができる。
【0037】
さらなる好ましい実施形態では、当該装置は、シミュレーション装置を有しており、当該シミュレーション装置は、作成されたテストケースを用いて試験走行を実施するように設定されている。このために、当該シミュレーション装置は、例えばMATLAB(登録商標)/Simulink、IPG CarMaker、PreScan、SUMO SCANer又はVirtual Test Drive(VTD)等のシミュレーション環境を有し得る。
【0038】
本発明の第1の態様と、その有利な構成とに関して記載された特徴及び利点は、少なくとも技術的に有意義である場合には、本発明の第2の態様とその有利な構成とに関しても有効であり、その逆もまた然りである。
【0039】
本発明のさらなる特徴、利点及び適用可能性は、図面に関連する以下の説明から明らかになる。これらの図面においては、一貫して、本発明の同一又は互いに対応する要素には、同一の参照符号が用いられる。以下の図面が、少なくとも部分的に、概略的に示されている:
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る装置の好ましい実施形態を示す図である。
図2】本発明に係る方法の好ましい実施形態を示す図である。
図3】交通シナリオ記述の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、車両のための運転者支援システムを、試験環境において試験するための本発明に係る装置100の好ましい実施形態を示している。装置100は、交通シナリオデータバンク2、及び、それぞれ特定の交通シナリオを特徴付ける、交通シナリオデータバンク2内に保存された交通シナリオ記述と、交通シナリオデータバンク2内に保存された交通シナリオ記述の内少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択するための入力装置3と、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述に基づいて、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオの具体的な実現に対応するテストケースを作成するためのデータ加工装置4と、作成されたテストケースを用いて、特にテストケースに基づいて形成された試験環境を用いて、試験走行を実施するためのシミュレーション装置5と、を有している。
【0042】
交通シナリオ記述は、好ましくは、それぞれ具体的な交通シナリオ、例えばカットイン操舵又はカットアウト操舵を、一般的な方法で特徴付ける。言い換えると、交通シナリオ記述は、好ましくはそれぞれ1つの交通シナリオ、特に少なくとも1つの具体的な、交通シナリオに関与する車両の、抽象的な形における走行操舵である。
【0043】
この際、交通シナリオ記述は、好ましくは、交通シナリオファイルの形で、交通シナリオデータバンク2に保存されている。この際、交通シナリオ記述の好ましい一般的な特徴に基づいて、交通シナリオファイルは、それぞれ特徴付けられた(具体的な)交通シナリオとは無関係に、所定の、特に一般的なフォーマットで保存されていてよい。これによって、例えば、各交通シナリオ記述によって特徴付けられた交通シナリオの識別及び/又はパラメータ化が可能になるか、又は、少なくとも容易になる。
【0044】
交通シナリオデータバンク2に保存される交通シナリオ記述は、この目的で、例えば少なくとも1つのパラメータ、例えば交通シナリオに含まれる交通参加者の速度及び/又は位置を有することが可能であり、当該パラメータを用いて、各交通シナリオは、境界条件に適応可能である。少なくとも1つのパラメータそれぞれは、好ましくは、交通シナリオファイルに含まれている。特に、交通シナリオファイルの所定のフォーマットは、少なくとも1つのパラメータが交通シナリオファイルに格納される際の少なくとも1つのパラメータの所定のフォーマットに対応し得る。言い換えると、交通シナリオファイルの所定のフォーマットは、少なくとも1つのパラメータが交通シナリオデータバンク2に保存される際の構造によって設定又は形成されていてよい。これによって、交通シナリオのパラメータ化が可能である。
【0045】
少なくとも1つの、交通シナリオファイルにそれぞれ含まれるパラメータを通じて、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択することも可能である。例えば、利用者は、入力装置3を通じて、少なくとも1つのパラメータを申告又は詳述することが可能であり、当該パラメータは、テストケースの作成の際に考慮されるべきものである。特に、利用者が、入力装置3を通じて、少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの値又は値域を入力することが考えられるので、データバンクにおいて、対応するパラメータを有し得る交通シナリオ記述、又は、対応するパラメータが入力された値若しくは値域をとり得る交通シナリオ記述を選択することができる。
【0046】
この目的で、入力装置3は、例えばグラフィカルユーザーインターフェースを有することが可能であり、グラフィカルユーザーインターフェースでは、利用者が、少なくとも1つの交通シナリオ記述を選択するためのステートメント、特に少なくとも1つのパラメータに関するステートメントを行うことが可能である。従って、入力装置3は、好ましくはユーザーインターフェースとして用いられる。
【0047】
データ加工装置4は、好ましくは、少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの所定の値を、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述に基づいてテストケースを作成するために考慮するように設定されており、少なくとも1つの所定の値は、例えば入力装置3によって供給され得る。少なくとも1つのパラメータに関する少なくとも1つの値を設定することによって、選択された、好ましくは一般的又は抽象的な交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオが具体化され得るので、テストケースは、好ましくは交通シナリオの具体的な実現に対応する。
【0048】
データ加工装置4によって作成されたテストケースに基づいて、シミュレーション装置5は、好ましくは、運転者支援システムに試験走行を行うことが可能である試験環境を形成することができる。例えば、シミュレーション装置5は、作成されたテストケースに基づいて、仮想の、特に動的な車両周囲をシミュレーションすることが可能であり、当該車両周囲において、運転者支援システムの反応が、テストケースによって具体化される交通シナリオにおいて試験される。それぞれ交通シナリオ記述によって特徴付けられている交通シナリオのパラメータ化によって、対応して、例えば様々な天候、様々な道路区分上、様々な車両速度、連結車の有無、及び/又は、そのようなもの等の様々な条件下で、運転者支援システムの試験が可能になる。
【0049】
図2は、車両のための運転者支援システムを、試験環境6において試験するための本発明に係る方法1の好ましい実施形態を示している。この際、方法ステップS1では、好ましくは、現実の車両周囲をセンサ装置を用いて検出する際に作成されるセンサデータ流7が加工される。センサデータ流7は、特に、少なくとも1つの交通シナリオそれぞれを特徴付けるパラメータ化可能なデータセットが作成され、交通シナリオ記述として、特に一般的な交通シナリオ記述として、データバンク2に格納可能であるように準備され得る。当該交通シナリオ記述は、以下において、運転者支援システムの試験のための試験環境6を形成可能にする少なくとも1つのテストケースの作成のための基盤として用いられる。
【0050】
好ましくは、センサデータ流7は、方法ステップS1において、例えばセンサデータ流7によって描出された車両周囲が分類されることによって、加工され、特に分析される。この際、例えば、車両周囲の要素は、センサデータ融合によって得られる車両周囲の、現実の(具体的な)交通シナリオの個々の場面に対応する個々のスナップショットにおいて認識され、マーキング(英語ではlabeled(ラベル付けされる))され得る。従って、好ましくは、車両周囲のセンサによる検出に基づく純粋に物理的な情報を超えた、いわゆるメタ情報が作成される。例えば、この枠内では、例えば他の交通参加者又は交通標識等の、車両周囲において認識された物体の物体リストが作成され得る。このようなセンサデータ流7の加工は、例えば所定の事象が認識かつマーキングされる、規則に基づくアプローチによって実行され得る。
【0051】
言い換えると、センサデータ流7に基づいて、好ましくは、例えばセンサ装置が装備された自車の周囲の物体を表す環境モデルが作成される。
【0052】
さらなる方法ステップS2aでは、このように加工されたセンサデータ流7に基づいて、特にこの際に作成された物体リスト等のメタ情報から、センサ装置によって検出される少なくとも1つの交通シナリオを特徴付ける少なくとも1つのデータセットが特定され得る。例えば、個々の交通シナリオに対応する準備された、例えば認識された所定の事象によって識別されるセンサデータは、センサデータ流7から選択的に抽出され得る。これは、シナリオ検索とも称され得る。
【0053】
さらなる方法ステップS2bにおいて、好ましくは少なくとも1つの特定されたデータセットに関して、少なくとも1つのパラメータが識別され、当該パラメータを用いて、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられる少なくとも1つの交通シナリオが、例えば天候、自車の速度、及び/又は、そのようなもの等の境界条件に適応可能である。言い換えると、少なくとも1つの特定されたデータセットによって特徴付けられた少なくとも1つの交通シナリオがパラメータ化され得る。
【0054】
少なくとも1つのパラメータの識別は、例えば、分類された車両周囲から、すなわち少なくとも1つのデータセットから、車両周囲の要素の状態、例えば他の交通参加者等の認識された物体の状態が特定され、少なくとも1つのデータセットによって特徴付けられる交通シナリオの連続する場面において、互いに比較されることによって得られる。この際、車両周囲の要素の状態は、例えば速度、位置、構成、及び/又は、そのようなもの等の物理量によって決定されていてよい。好ましくは、特に交通シナリオの時間的に連続する場面における要素の状態の変化、例えば速度又は位置の変化が生じる場合に、少なくとも1つのパラメータが識別される。
【0055】
交通シナリオ記述は、好ましくは、方法ステップS2aにおいて特定されたデータセットと、方法ステップS2bにおいて識別された少なくとも1つのパラメータとによって決定されているので、方法ステップS2a及びS2bは、交通シナリオ記述の特定としても理解され、方法ステップS2cにおいて統合され得る。しかしまた、代替的又は付加的に、このような交通シナリオ記述は、他の方法によって、例えばNCAP、DVP及び/又は事故データバンク等(図示せず)の、他のデータバンクからも特定され得る。
【0056】
さらなる方法ステップS3では、少なくとも1つのデータセットが、このようにパラメータ化された少なくとも1つの交通シナリオと共に、交通シナリオ記述として、特に一般的な交通シナリオ記述として、交通シナリオファイルに格納され、交通シナリオデータバンク2に保存される。この際、特に少なくとも1つの識別されたパラメータは、所定の、特に一般的なフォーマットにおいて、交通シナリオファイルに格納され得る。
【0057】
さらなる方法ステップS4では、例えば入力装置3を通じた利用者の入力によって、特定され、交通シナリオデータバンク2に保存された交通シナリオ記述の内の少なくとも1つの交通シナリオ記述が選択され得る。例えば、利用者は、交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオを境界条件に適応可能にする、少なくとも1つのパラメータを申告できる。
【0058】
利用者入力に関連する、又は、選択された、少なくとも1つの交通シナリオ記述は、データ加工装置に供給され、データ加工装置は、当該交通シナリオ記述と、少なくとも1つのパラメータに関する、少なくとも1つの、特に利用者入力によって設定された値とに基づいて、さらなる方法ステップS6において、少なくとも1つの選択された交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオの具体的な実現に対応する少なくとも1つのテストケースを作成する。少なくとも1つの作成されたテストケースは、運転者支援システムを試験するための試験環境を形成するために利用され得る。
【0059】
この際、利用者は、自身の入力によって、運転者支援システムの試験に影響を与え、特に構成することが可能である。これは例えば、利用者が、少なくとも1つの交通シナリオ記述によって特徴付けられる交通シナリオに関する境界条件を設定し、特に交通シナリオの進行、例えば交通状況の解消を規定することによる。このために、利用者は、例えば、少なくとも1つのテストケースの作成の基盤となる、対応するパラメータを選択することができる。特に、利用者がその入力によって、直接関連する交通シナリオ記述を選択し、例えば対応するパラメータの少なくとも1つの値又は値域の設定によって修正することが考えられる。
【0060】
このような修正された交通シナリオ記述は、さらなる方法ステップS5において、場合によっては作成されたテストケースと共に、交通シナリオデータバンクに格納可能であり、交通シナリオデータバンク内で、当該交通シナリオ記述は、後の時点において、テストケースの作成、特にテストケースの高速の作成のために選択され得る。
【0061】
さらなる方法ステップS7では、シミュレーション装置5を用いて、少なくとも1つの作成されたテストケースから、例えば仮想車両周囲等の、運転者支援システムを試験するための試験環境6が形成される。シミュレーション装置5は、この目的のために、例えばMATLAB(登録商標)/Simulink、IPG CarMaker、PreScan、SUMO SCANer又はVirtual Test Drive(VTD)等のシミュレーション環境を有し得る。この際、試験環境6は、用いられるシミュレーション環境とは無関係に形成され得る。なぜなら、交通シナリオ記述は、交通シナリオデータバンク2内に、交通シナリオファイルとして、所定の、特に一般的なフォーマットで格納されており、それに対応して、テストケースも、標準化されたフォーマットで、例えばOpenSCENARIOフォーマットで作成され得るからである。
【0062】
実施例は、例に過ぎず、保護範囲、適用及び構造を何ら制限すべきものではないことを指摘しておく。むしろ、当業者には、先行する記載によって、少なくとも1つの実施例の実施に関する手引きが与えられており、保護範囲が、請求項及びこれらの同等の特徴の組み合わせからもたらされるように、保護範囲を離れることなく、特に記載された構成要素の機能及び配置に関して、様々な変更を行うことが可能である。
【0063】
図3は、交通シナリオ記述12の一例を概略的に示している。好ましくは、図示された交通シナリオ記述12は、具体的な交通シナリオ、特に例えば図示された例ではカットイン操舵(進入操舵)等の走行操舵の一般的な記述に対応しており、カットイン操舵では、矢印が示すように、交通シナリオが関係する自車8が、第1の車線9aから、隣接する第2の車線9bに、先行する車両10の後方で進入する。対応する交通シナリオ記述12に基づいて、例えば運転者支援システム、例えば車間距離制御(Adaptive Cruise Control、ACC(適応走行制御))が、進入の際及び/又は進入後の反応を試験され得る。
【0064】
このような、交通シナリオを特徴付ける交通シナリオ記述12は、様々な方法で特定され得る。例えば、交通シナリオ記述は、NCAP、DVP及び/又は事故データバンクから取り込まれ得る。代替的又は付加的に、例えば対応するシミュレーションが実施されるか、又は、車両周囲を検出するためのセンサ装置が装備された自車8が試験走行を実施し、その際にセンサ装置によって生成されたセンサデータ流から、交通シナリオに対応するセクションがセンサデータとして抽出されることによって、交通シナリオを特徴付けるセンサデータが収集され得る。
【0065】
センサデータ流は、カットイン操舵に関して、例えば、車線9a、9bの変更の際に、先行車両10が、LIDARセンサ等のセンサ装置のセンサユニットの検出範囲11の中央において、突然検出されることを特徴としている。従って、この事象は、カットイン操舵に関するトリガとして理解され、好ましくはさらなる対応するトリガと共に、センサデータ流からのセンサデータの抽出に利用され得る。
【0066】
このように抽出されたセンサデータに基づいて、好ましくは、以下において、交通シナリオの境界条件を規定するパラメータが識別される。当該パラメータは、例えば、自車8及び先行車両10の速度、カットイン操舵の開始時及び/又は終了時における自車8と先行車両10との間隔、車両8、10によってそれぞれ利用される車線9a、9b及び/又はそのようなもの、である。このように識別されたパラメータは、好ましくは、カットイン操舵がどのように進行するかを規定する。
【0067】
この際、特に、パラメータによって決定されている、交通シナリオの進行の間、特に交通シナリオの開始時及び終了時に生じる両方の車両8、10の様々な状態が、互いに比較され、特に互いに減算されることによって、パラメータが識別され得る。
【0068】
このように識別されたパラメータは、好ましくは、少なくとも交通シナリオ記述12の一部として、交通シナリオファイルに格納され、当該交通シナリオファイルは、例えばNCAP、DVP及び/又は事故データバンクからのさらなる交通シナリオファイルと共に、交通シナリオデータバンクを形成する。好ましくは、この際、交通シナリオファイルにマーキング(タグ)が設けられ、タグは、交通シナリオに格納された交通シナリオ記述12が、カットイン操舵に対応していると目印を付ける。
【0069】
テストケースに基づいて、自車8(以下において、試験車両と表現する。なぜなら、試験されるべき運転者支援システムが装備されているからである)の運転者支援システムが試験され得る試験環境を形成することが可能であり、当該テストケースを作成するために、上述したように特定されたカットイン操舵の交通シナリオ記述12が、例えば利用者入力によって選択可能であり、利用者入力によって、対応するマーキングで目印を付けられた全ての交通シナリオ記述12が、呼び出される。選択された交通シナリオ記述12のパラメータに関する値は、例えば同様に、利用者入力によって、又は、パラメータデータバンクからの呼び出しによって設定され得る。選択された交通シナリオ記述12によって特徴付けられるカットイン操舵は、これに従って、好ましくは、パラメータによって決定された境界条件、及び/又は、さらなる、例えば利用者入力によって設定された基準によって決定された境界条件に適応させられる。
【0070】
例えば、試験車両8の速度、特に横方向速度に関して、現実のカットイン操舵の検出の際よりも小さい値を設定することが可能である。対応して、カットイン操舵のテストケースによって特徴付けられる実現は、よりゆっくりと進行するか、又は、よい長く継続する。このような方法で、カットイン操舵の1つ又は複数の実現を形成するために、他のパラメータに関しても、少なくとも1つの値又は値域を設定することが可能である。対応して、容易に、かつ、大きな負担を生じずに、複数の異なるテストケースを、1つの交通シナリオ記述12に基づいて作成することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 方法
S1-S7 方法ステップ
2 交通シナリオデータバンク
3 入力装置
4 データ加工装置
5 シミュレーション装置
6 試験環境
7 センサデータ流
8 自車又は試験車両
9a、9b 車線
10 他の車両
11 検出範囲
12 交通シナリオ記述
100 装置
図1
図2
図3