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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】整合回路、半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8234 20060101AFI20240830BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240830BHJP
   H03H 11/28 20060101ALI20240830BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L27/06 102A
H01L29/78 618B
H01L29/78 614
H01L27/04 C
H01L27/04 L
H01L27/088 E
H01L27/088 J
H03H11/28
H03H7/38 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021524492
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 IB2020054927
(87)【国際公開番号】W WO2020245696
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2019104235
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】國武 寛司
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 和晃
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-218989(JP,A)
【文献】特開2011-139049(JP,A)
【文献】特表2015-508621(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097804(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002196(WO,A1)
【文献】特表2013-502189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/786
H03H 11/28
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
インダクタと、
第1入力端子および第2入力端子と、
出力端子と、を有し、
前記第1入力端子は、前記トランジスタのソースおよびドレインと電気的に接続され、
前記トランジスタのゲートは、前記インダクタの第1端子および前記出力端子と電気的に接続され、
前記インダクタの第2端子は、前記第2入力端子と電気的に接続され、
前記トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記第2入力端子に入力される電位を変更することで、インピーダンス整合を行う、整合回路。
【請求項2】
トランジスタと、
インダクタと、
第1入力端子および第2入力端子と、
出力端子と、を有し、
前記第1入力端子は、前記トランジスタのソースおよびドレインと電気的に接続され、
前記トランジスタのゲートは、前記インダクタの第1端子および前記出力端子と電気的に接続され、
前記インダクタの第2端子は、前記第2入力端子と電気的に接続され、
前記第1入力端子には、交流信号が入力され、
前記第2入力端子には、所定の電位が入力され、
前記交流信号の周波数が変化すると、前記所定の電位が変更される、半導体装置。
【請求項3】
請求項において、
前記トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、整合回路に関する。特に、高周波回路に使用されることが多い、コンデンサとインダクタを用いた整合(インピーダンス整合、インピーダンスマッチング、ともいう)回路に関する。
【0002】
また、本発明の一形態は、半導体装置に関する。本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置のことであり、例えば、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等を指す。また、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般のことであり、例えば、集積回路、集積回路を備えたチップや、パッケージにチップを収納した電子部品、集積回路を備えた電子機器は、半導体装置の一例である。
【0003】
なお、本発明の一形態は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一形態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
スマートフォンやタブレット端末などに代表される持ち運びが容易な情報端末の普及が進んでいる。情報端末の普及に伴い、様々な通信規格が制定されている。例えば、第4世代(4G)と呼ばれているLTE-Advanced規格の運用が開始されている。
【0005】
近年、IoT(Internet of Things)などの情報技術の発展により、情報端末で扱われるデータ量は増大する傾向にある。携帯情報端末などの電子機器は、通信速度の向上が求められている。
【0006】
IoTなどの様々な情報技術に対応するため、4Gよりも速い通信速度、多くの同時接続、短い遅延時間を実現する第5世代(5G)の通信規格が検討されている。5Gでは、例えば日本国において、3.7GHz帯、4.5GHz帯、および28GHz帯の通信周波数が使用される。
【0007】
5Gに対応する半導体装置は、Siなど1種類の元素を主成分として用いる半導体や、GaとAsなど複数種類の元素を主成分として用いる化合物半導体を用いて作製される。さらに、金属酸化物の一種である酸化物半導体が注目されている。
【0008】
酸化物半導体では、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出されている(非特許文献1および非特許文献2参照)。非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
速い通信速度を実現するには、周波数の高い信号(高周波信号)を扱う電気回路(高周波回路、ともいう)が必要である。高周波回路においては、信号を送り出す回路の出力インピーダンスと、信号を受け取る回路の入力インピーダンスが合っていないと、反射波を生じてしまう等の問題が発生するため、出力インピーダンスと入力インピーダンスを合わせる整合回路が使用される。
【0011】
高周波回路において、コンデンサとインダクタを用いた整合回路にはL型、T型、π型等が知られているが、ある周波数に対して、コンデンサの容量およびインダクタのインダクタンスを選択すると、当該周波数以外の周波数に対しては、コンデンサの容量およびインダクタのインダクタンスのどちらか一方、または双方を変更する必要があり、コンデンサおよびインダクタのどちらか一方、または双方を取り換える必要があった。
【0012】
本発明の一形態は、トランジスタとインダクタを有し、複数の周波数に対応できる整合回路を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一形態は、トランジスタとインダクタのどちらか一方、または双方を取り換えることなく、複数の周波数に対応できる整合回路を提供することを課題の一つとする。
【0013】
なお、本発明の一形態は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一つの課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一形態は、トランジスタと、インダクタとを有する整合回路である。トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、トランジスタの、ソースに対するゲートの電圧を変更することで、インピーダンス整合を行う。
【0015】
また、本発明の一形態は、トランジスタと、インダクタと、第1および第2入力端子とを有する整合回路である。第1入力端子は、トランジスタのソースおよびドレインと電気的に接続され、トランジスタのゲートは、インダクタの第1端子と電気的に接続され、インダクタの第2端子は、第2入力端子と電気的に接続される。トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、第2入力端子に入力される電位を変更することで、インピーダンス整合を行う。
【0016】
また、本発明の一形態は、トランジスタと、インダクタと、第1および第2入力端子とを有する半導体装置である。第1入力端子は、トランジスタのソースおよびドレインと電気的に接続され、トランジスタのゲートは、インダクタの第1端子と電気的に接続され、インダクタの第2端子は、第2入力端子と電気的に接続される。第1入力端子には、交流信号が入力され、第2入力端子には、所定の電位が入力され、交流信号の周波数が変化すると、所定の電位が変更される。
【0017】
また、上記形態において、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一形態により、トランジスタとインダクタを有し、複数の周波数に対応できる整合回路を提供することができる。または、本発明の一形態により、トランジスタとインダクタのどちらか一方、または双方を取り換えることなく、複数の周波数に対応できる整合回路を提供することができる。
【0019】
なお、本発明の一形態は、必ずしも上記の課題の全てを解決する必要はなく、少なくとも一つの課題を解決できるものであればよい。また、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。これら以外の課題は、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から自ずと明らかになるものであり、明細書、特許請求の範囲、図面などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1Aは、整合回路の構成例を示す回路図である。図1Bは、信号を出力する装置、整合回路、および信号を入力する装置の接続関係を示すブロック図である。図1Cは、整合回路に入力される信号および電位を説明する図である。
図2Aは、ソースに対するゲートの電圧と、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量との関係を示すイメージ図である。図2B図2Cは、整合回路の構成例を示す回路図である。
図3は、半導体装置の構成例を示す断面図である。
図4A図4B図4Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図5Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図5B図5Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図6Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図6B図6Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図7Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図7B図7Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図8Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図8B図8Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図9Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図9B図9Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図10Aは、トランジスタの構造例を示す上面図である。図10B図10Cは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図11A図11Bは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図12は、半導体装置の構成例を示す断面図である。
図13A図13Bは、トランジスタの構造例を示す断面図である。
図14Aは、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。図14Bは、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルを説明する図である。図14Cは、CAAC-IGZO膜の極微電子線回折パターンを説明する図である。
図15は、ファクトリーオートメーションのイメージ図である。
図16は、OSトランジスタの構造を示す斜視図である。
図17A図17Bは、OSトランジスタのVgs-Cgsd特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0024】
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0025】
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0026】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0027】
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0028】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0029】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。また、「電気的に接続」と表現される場合であっても、実際の回路において、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0030】
また、本明細書等において、「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆も同様である。
【0031】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流または電位の入力(または、出力)や、信号の受信(または、送信)が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0032】
一般に、「容量素子」は、2つの電極が絶縁体(誘電体)を介して向かい合う構成を有する。また、本明細書等において、「容量素子」は、2つの電極が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの以外に、2本の配線が絶縁体を介して向かい合う構成を有したもの、または、2本の配線が絶縁体を介して配置されたもの、である場合が含まれる。また、本明細書等において、「容量素子」を、「コンデンサ」、「キャパシタ」、または「容量」、と呼ぶ場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、「高周波信号」は、周波数の高い信号(交流信号)である。例えば、信号伝送において、伝送する交流信号の波長が、信号を出力する装置と信号を入力する装置との距離に対して無視できないサイズである場合、当該交流信号を高周波信号と呼ぶ場合がある。
【0034】
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
【0035】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ソースと、ドレインと、ゲートとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ソース(ソース端子、ソース領域、または、ソース電極)とドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、または、ドレイン電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0036】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを用いる場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等において、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0037】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型のトランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
【0038】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソース電流をいう場合がある。また、オフ電流と同じ意味で、リーク電流という場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0039】
また、本明細書等において、オン電流とは、トランジスタがオン状態(導通状態、ともいう)にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0040】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体、を含む)、酸化物半導体などに分類される。
【0041】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、およびスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼ぶことができる。すなわち、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタを、「酸化物半導体トランジスタ」、「OSトランジスタ」と呼ぶことができる。同様に、「酸化物半導体を用いたトランジスタ」も、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタである。
【0042】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と呼称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。金属酸化物の詳細については後述する。
【0043】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態に係わる整合回路について説明する。本発明の一形態に係わる整合回路は、半導体特性を利用することで機能しうる回路であり、半導体装置と呼ぶこともできる。
【0044】
<整合回路の構成例1>
図1Aは、本発明の一形態に係わる整合回路10の構成例を示す回路図である。図1Aに示す整合回路10は、L型と呼ばれる整合回路であり、トランジスタT11、インダクタL12、入力端子VDD_IN、入力端子SII_IN、および、出力端子SIO_OUTを有する。
【0045】
入力端子SII_INは、トランジスタT11のソースおよびドレインと電気的に接続され、トランジスタT11のゲートは、インダクタL12の第1端子、および出力端子SIO_OUTと電気的に接続され、インダクタL12の第2端子は、入力端子VDD_INと電気的に接続される。
【0046】
整合回路10において、入力端子VDD_INには電位VDDが入力され、入力端子SII_INには信号SIIが入力され、出力端子SIO_OUTから信号SIOが出力される。信号SIIは、例えば、電位Vrefを基準に、振幅SII_Aを有する交流信号とすることができる(図1C、参照)。
【0047】
整合回路10は、信号を出力する装置と、信号を入力する装置との間に設けられる。すなわち、整合回路10の入力端子SII_INは、信号を出力する装置20の出力端子と電気的に接続され、整合回路10の出力端子SIO_OUTは、信号を入力する装置30の入力端子と電気的に接続される。図1Bに、信号を出力する装置20、整合回路10、および、信号を入力する装置30の接続関係を、ブロック図を用いて示す。
【0048】
整合回路10は、特に、装置20の出力インピーダンスと装置30の入力インピーダンスが、整合していない場合に設けられる。装置20の出力インピーダンスと装置30の入力インピーダンスが整合していない場合に、装置20の出力端子と装置30の入力端子を電気的に接続すると、反射波を生じてしまう、交流信号を効率よく受け渡しできない等の問題が発生する場合があるためである。
【0049】
装置20および装置30は、信号を出力または入力できるものであれば、特に限定されない。例えば、装置20および装置30を、上述した、何らかの電気的作用を有するもの、とすることができる。より具体的には、例えば、装置20を、信号を出力するバッファ、装置30を、特性インピーダンスを有する配線、とすることができる。
【0050】
<入力信号の例>
図1Cは、信号SIIおよび電位VDDを説明する図である。図1Cでは、期間D13および期間D14に分けて、信号SIIおよび電位VDDを説明する。
【0051】
期間D13において、信号SIIは、電位Vrefを基準に、振幅SII_Aを有する交流信号であり、信号SIIの周期は周期T13である。期間D13において、電位VDDは一定の電位であり、電位VDDの電位Vrefとの電位差は、電位差VB1である。
【0052】
期間D14において、信号SIIは、電位Vrefを基準に、振幅SII_Aを有する交流信号であり、信号SIIの周期は周期T14である。期間D14において、電位VDDは一定の電位であり、電位VDDの電位Vrefとの電位差は、電位差VB2である。
【0053】
期間D13および期間D14において、電位Vrefおよび振幅SII_Aに変化はなく、周期T14は、周期T13より長い周期である。すなわち、期間D14における信号SIIは、期間D13における信号SIIよりも周波数の低い交流信号である。
【0054】
期間D13および期間D14において、電位VDDの電位Vrefとの電位差は、電位差VB1から電位差VB2に変化する。電位差VB2は、電位差VB1より大きい電位差である。または、電位差VB2を、電位差VB1より小さい電位差としてもよい。
【0055】
<トランジスタ>
トランジスタT11は、OSトランジスタである。OSトランジスタは、オフ電流が非常に小さい、高温環境下でもオフ電流が増加しにくい、薄膜トランジスタであるため積層して設けることができる、Siトランジスタ(単結晶シリコン基板に形成されたトランジスタ)と同様の製造装置を用いて作製することができるため低コストでの作製が可能、等の特徴を有する。
【0056】
OSトランジスタのチャネル形成領域に用いられる金属酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In-M-Zn酸化物(元素Mは、例えば、Al、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分、水素などの不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性)、または実質的にi型にすることができる。このような酸化物半導体は、高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。OSトランジスタの詳細については、実施の形態2および実施の形態3で説明する。
【0057】
例えば、トランジスタT11のチャネル形成領域に、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)、亜鉛のいずれか一つを有する金属酸化物を用いることができる。特に、インジウム、ガリウム、亜鉛からなる金属酸化物であることが好ましい。
【0058】
また、OSトランジスタは、ソースおよびドレインとゲートとの間に、ゲート絶縁膜を有し、ソースおよびドレインとゲートとの間に容量が形成される。ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量は、コンデンサとして用いることができる。また、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量は、ソースに対するゲートの電圧Vgsに応じて変化する特性を有する。以後、ソースに対するゲートの電圧Vgsを電圧Vgs、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量を容量Cgsdと呼ぶこととする。
【0059】
図2Aは、電圧Vgsと容量Cgsdとの関係を示すイメージ図である。図2Aに示すように、容量Cgsdは、電圧Vgsが低い領域ではほぼ一定の値であるが、電圧VgsがトランジスタT11のしきい値電圧Vth付近から高い領域では増加する。OSトランジスタにおける電圧Vgsと容量Cgsdとの関係は、シリコンを使用したMOS(Metal Oxide Semiconductor)型FET(電界効果トランジスタ、Field Effect Transistor)における電圧Vgsと容量Cgsdとの関係と似ているが、OSトランジスタにおいては、容量Cgsdの変化量が、シリコンを使用したMOS型FETより大きい特徴を有する。
【0060】
<整合回路の構成例2>
トランジスタT11は、バックゲートを有していてもよい。図2Bは、バックゲートを有するトランジスタT15を用いた、整合回路40の構成例を示す回路図である。整合回路40は整合回路10の変形例であり、説明の繰り返しを防ぐため、主に整合回路10と異なる点について説明する。
【0061】
整合回路40は、トランジスタT15、インダクタL12、配線BKL、入力端子VDD_IN、入力端子SII_IN、および、出力端子SIO_OUTを有する。トランジスタT15は、ソース、ドレイン、ゲートに加えてバックゲートを有し、トランジスタT15のバックゲートは、配線BKLと電気的に接続される。配線BKLは、トランジスタT15のバックゲートに所定の電位を印加するための配線として機能し、配線BKLに任意の電位を印加することによって、トランジスタT15のしきい値電圧を増減することができる。
【0062】
また、図2Cは、バックゲートを有するトランジスタT15を用いた、整合回路50の構成例を示す回路図である。整合回路50は整合回路10の変形例であり、説明の繰り返しを防ぐため、主に整合回路10と異なる点について説明する。
【0063】
整合回路50は、トランジスタT15、インダクタL12、入力端子VDD_IN、入力端子SII_IN、および、出力端子SIO_OUTを有する。トランジスタT15は、ソース、ドレイン、ゲートに加えてバックゲートを有し、トランジスタT15のバックゲートは、トランジスタT15のゲート、インダクタL12の第1端子、および出力端子SIO_OUTと電気的に接続される。
【0064】
整合回路50において、トランジスタT15のバックゲートを、トランジスタT15のゲートと電気的に接続することで、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量に加えて、ソースおよびドレインとバックゲートとの間に形成される容量を、コンデンサとして用いることができる。すなわち、トランジスタT15によって形成される容量を大きくすることができる。
【0065】
また、インダクタL12には、例えば、コイルを用いることができる。特に、空芯構造であり、Q値(Quality factor)が高い、高周波回路用のコイルが好ましい。また、インダクタL12に用いることができるコイルは、実施の形態2で説明する、半導体装置が有する配線等を用いて構成してもよい。
【0066】
<整合回路>
本実施の形態では、トランジスタとインダクタを用いた、L型の整合回路10について説明した。トランジスタのソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量は、ソースに対するゲートの電圧に応じて変化するため、整合回路10において、電位VDDと電位Vrefとの電位差を変更することで、整合回路10は複数の周波数に対応できる。
【0067】
すなわち、ある周波数(または、周期)の交流信号に対して、整合回路10を用いて装置20の出力インピーダンスと装置30の入力インピーダンスの整合がとれている場合に、該交流信号の周波数が変化しても、整合回路10における電位VDDと電位Vrefとの電位差を変更することで、インピーダンスの整合を維持することができる。または、ある周波数の交流信号に対して、整合回路10を用いて装置20の出力インピーダンスと装置30の入力インピーダンスの整合がとれている場合に、該交流信号の周波数が変化しても、整合回路10を構成する部品を取り換える必要がない。
【0068】
また、整合回路10にOSトランジスタを用いることで、OSトランジスタは電圧Vgsに対する容量Cgsdの変化量が大きいため、整合回路10は広い周波数範囲の交流信号に対応することができる。なお、本実施の形態では、L型の整合回路10について説明したが、T型やπ型等、他の種類の整合回路にも適用できる。
【0069】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した、整合回路10を構成するトランジスタの構造例について説明する。なお、本実施の形態で説明するOSトランジスタは、半導体基板に形成されたトランジスタの上方に積層して設けられた構造を有する。また、本実施の形態で説明するOSトランジスタの上方には、コンデンサ(本実施の形態では、容量素子、という)が積層して設けられており、本実施の形態では、半導体基板に形成されたトランジスタ、OSトランジスタ、および容量素子を合わせて、半導体装置と呼ぶこととする。
【0071】
すなわち、整合回路10を、上記実施の形態で説明した装置20、または装置30、またはその双方と、同じ半導体基板上に作製してもよい。また、その場合、上記実施の形態で説明した、入力端子または出力端子等の「端子」は、配線または電極等と区別できない場合がある。
【0072】
また、本実施の形態で説明するOSトランジスタは、ゲート(第1のゲート、トップゲート、フロントゲート、ともいう)に加えて、バックゲート(第2のゲート、ボトムゲート、ともいう)を有する。
【0073】
<半導体装置の構成例>
図3に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500、および容量素子600を有する。図4Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図4Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、図4Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0074】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、ソースに対するゲートの電圧Vgsと、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量Cgsdとの関係において、容量Cgsdの変化量が大きい特徴を有するため、上記実施の形態では、これを整合回路10に用いることにより、整合回路10は広い周波数範囲の交流信号に対応することができる。
【0075】
図3に示すように、本実施の形態で説明する半導体装置において、トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0076】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0077】
トランジスタ300は、図4Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0078】
例えば、基板311に単結晶シリコン基板を用い、トランジスタ300を、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタとすることができる。なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0079】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0080】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0081】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0082】
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層して用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0083】
なお、図3に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0084】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0085】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0086】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0087】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0088】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0089】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であればよい。
【0090】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0091】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0092】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0093】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図3において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0094】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0095】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0096】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、図3において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0097】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0098】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、図3において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0099】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0100】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、図3において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0101】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0102】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0103】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0104】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0105】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0106】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0107】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0108】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0109】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0110】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0111】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0112】
図4A図4Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0113】
また、図4A図4Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図4A図4Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図4A図4Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0114】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0115】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530を、4層以上の積層構造としてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図3図4A図4Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0116】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0117】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0118】
導電体560は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のVthを制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0119】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界とがつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0120】
また、本明細書等において、S-channel構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造及びプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0121】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
【0122】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、および絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0123】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0124】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0125】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0126】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0127】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などを含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0128】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0129】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0130】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0131】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0132】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0133】
なお、酸化物半導体として機能する金属酸化物の形成は、スパッタリング法で行なってもよいし、ALD(Atomic Layer Deposition)法で行なってもよい。酸化物半導体として機能する金属酸化物については、他の実施の形態で説明する。
【0134】
また、トランジスタ500には、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0135】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0136】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア密度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア密度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア密度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0137】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0138】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア密度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0139】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0140】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0141】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0142】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0143】
その他、酸化物530に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物530として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0144】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0145】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0146】
酸化物530として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物530として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe)、硫化タングステン(代表的にはWS)、セレン化タングステン(代表的にはWSe)、タングステンテルル(代表的にはWTe)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe)などが挙げられる。
【0147】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0148】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0149】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0150】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0151】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0152】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0153】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0154】
また、図4Aに示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0155】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア密度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0156】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0157】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0158】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0159】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0160】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0161】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0162】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0163】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、図4A図4Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0164】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0165】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0166】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0167】
また、加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0168】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0169】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0170】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0171】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0172】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0173】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0174】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
【0175】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0176】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0177】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0178】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0179】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0180】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0181】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0182】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0183】
図3では、導電体612、および導電体610は単層構造として示しているが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0184】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0185】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0186】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0187】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0188】
<トランジスタの構造例1>
図5A図5Bおよび図5Cを用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。図5Aはトランジスタ510Aの上面図である。図5Bは、図5Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図5Cは、図5Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図5Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0189】
図5A図5Bおよび図5Cでは、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)と、配線として機能する導電体503と、を示している。
【0190】
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、第2のゲート電極として機能する導電体505(導電体505a、および導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0191】
また、図5に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0192】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0193】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0194】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0195】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0196】
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0197】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0198】
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、および導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0199】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。すなわち、先に記載のトランジスタ500と同様に、surrounded channel(S-channel)構造である。
【0200】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0201】
第2のゲートとして機能する導電体505は、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505aおよび導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505aおよび導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、または3層以上の積層構造としてもよい。
【0202】
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つ、または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0203】
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0204】
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0205】
絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0206】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0207】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などを含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0208】
また、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体521を得ることができる。
【0209】
なお、図5には、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、2層以下、または4層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0210】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0211】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0212】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0213】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0214】
また、図5では単層構造を示したが、導電体542aと、導電体542bとして2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0215】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0216】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0217】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0218】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0219】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0220】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0221】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0222】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性の幅を広げることができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0223】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0224】
導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0225】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0226】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0227】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0228】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0229】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0230】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0231】
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0232】
例えば、導電体546として、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0233】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0234】
<トランジスタの構造例2>
図6A図6Bおよび図6Cを用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。図6Aはトランジスタ510Bの上面図である。図6Bは、図6Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図6Cは、図6Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図6Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0235】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0236】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0237】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0238】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0239】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0240】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0241】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0242】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0243】
<トランジスタの構造例3>
図7A図7Bおよび図7Cを用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。図7Aはトランジスタ510Cの上面図である。図7Bは、図7Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図7Cは、図7Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図7Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0244】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0245】
図7に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0246】
図7に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0247】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0248】
また、図7に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544は、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0249】
また、図7に示すトランジスタ510Cは、図5に示すトランジスタ510Aと異なり、導電体503を設けず、また、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530bおよび酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0250】
<トランジスタの構造例4>
図8A図8Bおよび図8Cを用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。図8Aはトランジスタ510Dの上面図である。図8Bは、図8Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図8Cは、図8Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図8Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0251】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0252】
図8A乃至図8Cでは、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0253】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0254】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0255】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0256】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0257】
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0258】
具体的には、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0259】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0260】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0261】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0262】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0263】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0264】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0265】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0266】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0267】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0268】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0269】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0270】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0271】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0272】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0273】
<トランジスタの構造例5>
図9A乃至図9Cを用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。図9Aはトランジスタ510Eの上面図である。図9Bは、図9Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図9Cは、図9Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図9Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0274】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0275】
図9A乃至図9Cでは、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0276】
図9に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0277】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0278】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0279】
特に、ホウ素、及びリンは、低温ポリシリコン等の製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0280】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0281】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、図9に示すトランジスタを形成することができる。
【0282】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0283】
図9に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0284】
<トランジスタの構造例6>
図10A乃至図10Cを用いてトランジスタ510Fの構造例を説明する。図10Aはトランジスタ510Fの上面図である。図10Bは、図10Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図10Cは、図10Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図10Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0285】
トランジスタ510Fはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0286】
トランジスタ510Aでは、絶縁体574の一部が絶縁体580に設けられた開口部内に設けられ、導電体560の側面を覆うように設けられている。一方で、トランジスタ510Fでは絶縁体580と絶縁体574の一部を除去して開口が形成されている。
【0287】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0288】
なお、酸化物530として酸化物半導体を用いる場合は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0289】
酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OS等の結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損等)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ510Fは、製造工程における高い温度(またはサーマルバジェット)に対して安定である。
【0290】
なお、酸化物530を、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの積層とする場合、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物530cは、酸化物530aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物530cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0291】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0292】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いてもよい。また、酸化物530cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物530cとして用いてもよい。
【0293】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造等が挙げられる。
【0294】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ510Fは高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物530cを積層構造とした場合、上述の酸化物530bと、酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物530cが有する構成元素が、絶縁体550側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物530cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体550側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体550は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物530cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0295】
酸化物530は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0296】
<トランジスタの構造例7>
図11A図11Bを用いてトランジスタ510Gの構造例を説明する。トランジスタ510Gはトランジスタ500の変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。なお、図11A図11Bに示す構成は、トランジスタ300等、本発明の一形態の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
【0297】
図11Aは、トランジスタ510Gのチャネル長方向の断面図であり、図11Bは、トランジスタ510Gのチャネル幅方向の断面図である。図11A図11Bに示すトランジスタ510Gは、絶縁体402及び絶縁体404を有する点が、図4A図4Bに示すトランジスタ500と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体551が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体551が設けられる点が、図4A図4Bに示すトランジスタ500と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、図4A図4Bに示すトランジスタ500と異なる。
【0298】
図11A図11Bに示すトランジスタ510Gは、絶縁体512上に絶縁体402が設けられる。また、絶縁体574上、及び絶縁体402上に絶縁体404が設けられる。
【0299】
図11A図11Bに示すトランジスタ510Gでは、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、及び絶縁体574がパターニングされており、絶縁体404がこれらを覆う構造になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体402の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体402によって外部から隔離される。
【0300】
絶縁体402及び絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一つ)又は水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体402及び絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ510Gの特性が低下することを抑制することができる。よって、本発明の一形態の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0301】
絶縁体551は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に接して設けられる。絶縁体551は、水素又は水分子の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。たとえば、絶縁体551として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体551として用いると好適である。絶縁体551として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水又は水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540a及び導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540a及び導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、本発明の一形態の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0302】
図12は、トランジスタ500及びトランジスタ300を、図11A図11Bに示す構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。導電体546の側面に、絶縁体551が設けられている。
【0303】
図13A図13Bは、図11A図11Bに示すトランジスタ510Gの変形例である。図13Aはトランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図13Bはトランジスタのチャネル幅方向の断面図である。図13A図13Bに示すトランジスタは、酸化物530cが酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造である点が、図11A図11Bに示すトランジスタと異なる。
【0304】
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面及び側面、導電体542a及び導電体542bの側面、絶縁体544の側面、及び絶縁体580の側面と接する。酸化物530c2は、絶縁体550と接する。
【0305】
酸化物530c1として、例えば、In-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2として、酸化物530cが1層構造である場合に酸化物530cに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
【0306】
酸化物530cを酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造とすることにより、酸化物530cを1層構造とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。よって、トランジスタを、例えば、パワーMOSトランジスタとすることができる。なお、図4A図4Bに示すトランジスタが有する酸化物530cも、酸化物530c1と酸化物530c2の2層構造とすることができる。
【0307】
図13A図13Bに示すトランジスタは、例えば、トランジスタ500、トランジスタ300、または、その双方に適用することができる。
【0308】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0309】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物(以下、酸化物半導体、ともいう)について説明する。
【0310】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウム、コバルトなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0311】
<結晶構造の分類>
まず、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、図14Aを用いて説明を行う。図14Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0312】
図14Aに示すように、酸化物半導体は、大きく分けて「Amorphous(無定形)」と、「Crystalline(結晶性)」と、「Crystal(結晶)」と、に分類される。また、「Amorphous」の中には、completely amorphousが含まれる。また、「Crystalline」の中には、CAAC(c-axis-aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(cloud-aligned composite)が含まれる。なお、「Crystalline」の分類には、single crystal、poly crystal、及びcompletely amorphousは除かれる。また、「Crystal」の中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
【0313】
なお、図14Aに示す太枠内の構造は、「Amorphous(無定形)」と、「Crystal(結晶)」との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定な「Amorphous(無定形)」や、「Crystal(結晶)」とは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0314】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)スペクトルを用いて評価することができる。ここで、「Crystalline」に分類されるCAAC-IGZO膜のGIXD(Grazing-Incidence XRD)測定で得られるXRDスペクトルを図14Bに示す。なお、GIXD法は、薄膜法またはSeemann-Bohlin法ともいう。以降、図14Bに示すGIXD測定で得られるXRDスペクトルを、単にXRDスペクトルと記す。なお、図14Bに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、図14Bに示すCAAC-IGZO膜の厚さは、500nmである。
【0315】
図14Bでは、横軸は2θ[deg.]であり、縦軸は強度(Intensity)[a.u.]である。図14Bに示すように、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、明確な結晶性を示すピークが検出される。具体的には、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、2θ=31°近傍に、c軸配向を示すピークが検出される。なお、図14Bに示すように、2θ=31°近傍のピークは、ピーク強度が検出された角度を軸に左右非対称である。
【0316】
また、膜または基板の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターン、ともいう)にて評価することができる。CAAC-IGZO膜の回折パターンを、図14Cに示す。図14Cは、電子線を基板に対して平行に入射するNBEDによって観察される回折パターンである。なお、図14Cに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われる。
【0317】
図14Cに示すように、CAAC-IGZO膜の回折パターンでは、c軸配向を示す複数のスポットが観察される。
【0318】
<<酸化物半導体の構造>>
なお、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、図14Aとは異なる分類となる場合がある。例えば、酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、上述のCAAC-OS、及びnc-OSがある。また、非単結晶酸化物半導体には、多結晶酸化物半導体、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、非晶質酸化物半導体、などが含まれる。
【0319】
ここで、上述のCAAC-OS、nc-OS、及びa-like OSの詳細について、説明を行う。
【0320】
[CAAC-OS]
CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。
【0321】
なお、上記複数の結晶領域のそれぞれは、1つまたは複数の微小な結晶(最大径が10nm未満である結晶)で構成される。結晶領域が1つの微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の最大径は10nm未満となる。また、結晶領域が多数の微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の大きさは、数十nm程度となる場合がある。
【0322】
また、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズ、チタンなどから選ばれた一種、または複数種)において、CAAC-OSは、インジウム(In)、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛(Zn)、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造、ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。よって、(M,Zn)層にはインジウムが含まれる場合がある。また、In層には元素Mが含まれる場合がある。なお、In層にはZnが含まれる場合もある。当該層状構造は、例えば、高分解能TEM像において、格子像として観察される。
【0323】
CAAC-OS膜に対し、例えば、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、c軸配向を示すピークが2θ=31°またはその近傍に検出される。なお、c軸配向を示すピークの位置(2θの値)は、CAAC-OSを構成する金属元素の種類、組成などにより変動する場合がある。
【0324】
また、例えば、CAAC-OS膜の電子線回折パターンにおいて、複数の輝点(スポット)が観測される。なお、あるスポットと別のスポットとは、試料を透過した入射電子線のスポット(ダイレクトスポット、ともいう)を対称中心として、点対称の位置に観測される。
【0325】
上記特定の方向から結晶領域を観察した場合、当該結晶領域内の格子配列は、六方格子を基本とするが、単位格子は正六角形とは限らず、非正六角形である場合がある。また、上記歪みにおいて、五角形、七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属原子が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0326】
なお、明確な結晶粒界が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、電界効果移動度の低下などを引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0327】
CAAC-OSは、結晶性が高く、明確な結晶粒界が確認されない酸化物半導体である。よって、CAAC-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(またはサーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0328】
[nc-OS]
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。別言すると、nc-OSは、微小な結晶を有する。なお、当該微小な結晶の大きさは、例えば、1nm以上10nm以下、特に1nm以上3nm以下であることから、当該微小な結晶をナノ結晶ともいう。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、結晶性を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、ナノ結晶よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折、ともいう)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、ナノ結晶の大きさと近いかナノ結晶より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折、ともいう)を行うと、ダイレクトスポットを中心とするリング状の領域内に複数のスポットが観測される電子線回折パターンが取得される場合がある。
【0329】
[a-like OS]
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。また、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、膜中の水素濃度が高い。
【0330】
<<酸化物半導体の構成>>
次に、上述のCAC-OSの詳細について、説明を行う。なお、CAC-OSは材料構成に関する。
【0331】
[CAC-OS]
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0332】
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状、ともいう)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
【0333】
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
【0334】
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
【0335】
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0336】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0337】
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
【0338】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0339】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0340】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0341】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。例えば、酸化物半導体のキャリア濃度は1×1017cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013cm-3以下、より好ましくは1×1011cm-3以下、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上である。なお、酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。なお、キャリア濃度の低い酸化物半導体を、高純度真性又は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ場合がある。
【0342】
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0343】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0344】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0345】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0346】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0347】
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0348】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中の窒素濃度を、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下にする。
【0349】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満にする。
【0350】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0351】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0352】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した、整合回路10を組み込むことができる電子部品または電子機器の一例について説明する。
【0353】
例えば、図15に、ファクトリーオートメーションのイメージ図を示す。図15において、工場884はインターネット回線(Internet)を介してクラウド883と接続される。また、クラウド883は、インターネット回線を介してホーム881およびオフィス882と接続される。インターネット回線は有線通信方式であってもよいし、無線通信方式であってもよい。例えば、無線通信方式の場合は、第4世代移動通信システム(4G)や第5世代移動通信システム(5G)を用いてもよい。また、工場884は、インターネット回線を介して工場885および工場886と接続してもよい。
【0354】
工場884はマスタデバイス(制御機器)831を有する。マスタデバイス831は、クラウド(サーバー)883と接続し、情報の授受を行う機能を有する。また、マスタデバイス831は、IoT末端機器(エンドポイントマイコン、ともいう)841に含まれる複数の産業用ロボット842と、M2M(Machine to Machine)インターフェイス832を介して接続される。M2Mインターフェイス832としては、例えば、有線通信方式の一種である産業イーサネット(「イーサネット」は、登録商標)や、無線通信方式の一種であるローカル5Gなどを用いてもよい。
【0355】
工場の管理者は、ホーム881またはオフィス882から、クラウド883を介して工場884に接続し、稼働状況などを知ることができる。また、誤品・欠品チェック、置き場所指示、タクトタイムの計測などを行うことができる。
【0356】
近年「スマート工場」と銘打って、世界的にIoTの工場への導入が進められている。スマート工場の事例では、エンドポイントマイコンによる単なる検査、監査だけでなく、故障検知や異常予測なども行う事例が報告されている。
【0357】
上述した、ファクトリーオートメーションの例において、第4世代移動通信システム(4G)、第5世代移動通信システム(5G)、産業イーサネット、ローカル5G等の通信機器を構成する電子部品、ホーム881およびオフィス882で用いられるPC(Personal Computer)、マスタデバイス831等に用いられるCPU(Central Processing Unit)、マザーボード、PCI Express(PCIeと表記する場合がある;「PCI Express」および「PCIe」は、登録商標)などの高速シリアルインターフェイス、等に、本発明の一形態に係る整合回路10を組み込むことができる。
【0358】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例
【0359】
本実施例では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタを試作し、電圧Vgsと容量Cgsdとの関係を測定した。また、シリコンを使用したMOS型FETにおいて、電圧Vgsと容量Cgsdとの関係をシミュレーションし、OSトランジスタにおける電圧Vgsと容量Cgsdとの関係(以後、Vgs-Cgsd特性、という)と比較した。
【0360】
試作したOSトランジスタのチャネル長は60nmであり、チャネル幅も60nmである。シミュレーションを行ったMOS型FETのチャネル長は60nmであり、チャネル幅は80nmである。
【0361】
図16は、試作したOSトランジスタの構造を示す斜視図である。当該トランジスタは、上記実施の形態で示したトランジスタ500と同様の構造を有し、トップゲート電極(TGE)、トップゲート電極側のゲート絶縁層(TGI)、バックゲート電極(BGE)、バックゲート電極側のゲート絶縁層(BGI)、ソースまたはドレインとして機能する電極(S/D)、および酸化物などを有する。当該トランジスタは、チャネル形成領域にCAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物を含むトランジスタである。
【0362】
図17Aに、OSトランジスタのVgs-Cgsd特性と、シリコンを使用したMOS型FETのVgs-Cgsd特性を、並べて示す。図17Aの横軸は、ソースに対するゲートの電圧Vgsであり、縦軸は、ソースおよびドレインとゲートとの間に形成される容量Cgsdである。また、図17Bには、図17AにおけるOSトランジスタのVgs-Cgsd特性と、MOS型FETのVgs-Cgsd特性を、チャネル長およびチャネル幅を1μmあたりに規格化したものを示す。
【0363】
図17Aおよび図17Bより、OSトランジスタの容量Cgsdは、電圧Vgsが低い領域では、シリコンを使用したMOS型FETの容量Cgsdと大きな差はないが、電圧VgsがOSトランジスタのしきい値電圧Vth付近より高い領域では、差が大きくなることがわかる。電圧Vgsが高い領域では、OSトランジスタの容量Cgsdは、シリコンを使用したMOS型FETの容量Cgsdと比較して、最大で30倍以上となった。OSトランジスタの容量Cgsdは、シリコンを使用したMOS型FETの容量Cgsdより、変化量が大きいことがわかる。
【0364】
なお、本実施例は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0365】
L12:インダクタ、T11:トランジスタ、T15:トランジスタ、VDD_IN:入力端子、SII_IN:入力端子、SIO_OUT:出力端子、10:整合回路、20:装置、30:装置、40:整合回路、50:整合回路、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、402:絶縁体、404:絶縁体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、505a:導電体、505b:導電体、510:絶縁体、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、510F:トランジスタ、510G:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、530c1:酸化物、530c2:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、551:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、650:絶縁体、831:マスタデバイス、832:M2Mインターフェイス、841:IoT末端機器、842:産業用ロボット、881:ホーム、882:オフィス、883:クラウド、884:工場、885:工場、886:工場
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図3
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