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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】シール装置、電気機械、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/16 20060101AFI20240830BHJP
   F16J 15/54 20060101ALI20240830BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20240830BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20240830BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16J15/16 B
F16J15/54
H02K5/10 A
H02K5/173 A
F16C33/78 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021527237
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019077695
(87)【国際公開番号】W WO2020104110
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】102018219779.2
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヴャチェスラフ ブルシュキフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアハルト ホーリング
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-110149(JP,A)
【文献】実開平03-107521(JP,U)
【文献】特開2000-220662(JP,A)
【文献】特開2006-174589(JP,A)
【文献】特開昭55-152963(JP,A)
【文献】特開2007-139045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0369821(US,A1)
【文献】特開平09-182353(JP,A)
【文献】特開昭62-091698(JP,A)
【文献】特開2005-124391(JP,A)
【文献】特開2015-207534(JP,A)
【文献】特開2020-078226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0128995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/56
H02K 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なシャフト(1)のためのシール装置(3)であって、シャフトシール(4)と、シャフトアース(6)と、前記シャフトシール(4)および前記シャフトアース(6)を保持するホルダ(9)と、を備え、
前記ホルダ(9)は、前記シャフトシール(4)と前記シャフトアース(6)との間に、前記シャフトシール(4)からの粒子および前記シャフトアース(6)からの粒子を排出する、少なくとも1つの開口部(10)を備えることを特徴とする、シール装置(3)。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置(3)であって、前記開口部(10)は、前記シール装置(3)意図された設置位置に配置された場合において、前記シャフトアース(6)のブラシの下に存在するように配置されている、シール装置(3)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシール装置(3)であって、前記ホルダ(9)は、ハウジング(2)のハウジング部分によって構成されている、シール装置(3)。
【請求項4】
請求項3に記載のシール装置(3)であって、前記シャフト(1)が回転可能に前記ハウジング(2)において支承されるように、ベアリング(8)が前記ハウジング部分(2)に備えられている、シール装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のシール装置(3)であって、前記ハウジング部分(9)は、前記シャフトをリング状に囲む前記ハウジング(2)の局所的な拡径部によって構成され、円周上に分布された複数の開口部(10)を備える、シール装置(3)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のシール装置(3)であって、1つまたは複数の前記開口部(10)は、粒子のためのリザーバ(7)につながる、シール装置(3)。
【請求項7】
請求項に記載のシール装置(3)であって、前記シャフトシール(4)を通る漏れを前記シャフト(1)から除去するキャッチ装置(5)を更に備え、前記キャッチ装置(5)は、前記シャフト(1)に配置されたショルダ(5A)と、前記ショルダ(5A)を径方向に囲むキャッチ構造(5B)と、から構成されている、シール装置(3)。
【請求項8】
請求項に記載のシール装置(3)であって、前記ショルダ(5A)は、シャフトショルダ(5A)によって構成されている、または前記シャフト(1)上に固定されて前記シャフト(1)を径方向に囲む構成部分によって構成されている、シール装置(3)。
【請求項9】
請求項またはに記載のシール装置(3)であって、前記キャッチ構造(5B)は、シートメタルまたはプラスチックから構成されている、シール装置(3)。
【請求項10】
請求項7~の何れか一項に記載のシール装置(3)であって、前記シャフトシール(4)、前記シャフトアース(6)、および前記キャッチ装置(5)は、軸方向に前後して配置されている、シール装置(3)。
【請求項11】
請求項10に記載のシール装置(3)であって、前記シャフトアース(6)は、軸方向に前記シャフトシール(4)と前記キャッチ装置(5)との間に配置されている、シール装置(3)。
【請求項12】
請求項10に記載のシール装置(3)であって、前記キャッチ装置(5)は、軸方向に前記シャフトシール(4)と前記シャフトアース(6)との間に配置されている、シール装置(3)。
【請求項13】
請求項の何れか一項に記載のシール装置(3)であって、前記シャフトアース(6)は、前記キャッチ装置(5)の前記キャッチ構造(5B)の上に配置されている、シール装置(3)。
【請求項14】
電気機械であって、回転可能に駆動可能なロータシャフト(1)と、前記ロータシャフト(1)をシールするシール装置(3)と、を備え、前記シール装置(3)は、請求項1~13の何れか一項にしたがって構成されていることを特徴とする、電気機械。
【請求項15】
自動車を電気的に駆動する駆動装置であって、前記駆動装置に駆動力を供給する電気機械を備え、前記電気機械は請求項14にしたがって構成されていることを特徴とする、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方では回転可能なシャフトのためのシール装置に関し、およびシール装置を備える電気機械、ならびに電気機械を備える自動車を電気的に駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトのためのシール装置、例えばラジアルシャフトシール又はラビリンスシールは、それ自体既に知られている。これによって、例えば潤滑剤のような気体または液体の流体がシャフトの領域において外部に出ることが防止される。
【0003】
ドイツ特許出願公開第10 2016 207 672 A1号から、シャフトのためのシールシステムが知られている。このシールシステムでは、実際のシャフトシールに加えて、シャフト接地リングも設けられている。このシールシステムの一実施形態は、2つのシャフトシールを備える。2つのシャフトシール間に、シャフト接地リングが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2016 207 672 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術を発展させることである。
【0006】
この課題は、主請求項の特徴によって解決される。好適な実施形態は、従属請求項において理解することができる。
【0007】
したがって、回転可能なシャフトのためのシール装置が提案される。シール装置は、シャフトシールと、シャフトアースと、シャフトシールおよびシャフトアースのためのホルダと、を備える。さらに、回転可能に駆動可能なロータシャフトと、ロータシャフトをシールし、それによって電気機械の内部空間をシールするこのようなシール装置と、を備える電気機械が提案される。さらに、自動車を電気的に駆動する駆動装置が提案される。駆動装置は、この駆動装置に駆動力を供給するこのような電気機械を備える。このような電気機械は、電気エネルギーを機械的な回転運動に変換し、またはその逆に変換する。このような電気機械は、必要に応じて、発電機またはモータとして作動可能である。電気機械は、特に、同期機械または非同期機械である。
【0008】
提案されるシール装置は、回転可能なシャフトをシールするように機能する。このために、シール装置はシャフトシールを備える。さらに、シール装置はシャフトアースを備える。また、シール装置は、シャフトシールとシャフトアースを保持/支持するホルダを備える。ホルダは、シャフトシールとシャフトアースとの間の領域に少なくとも1つの開口部を備える。この開口部は、一方で、シャフトシールからの粒子を排出するように機能する。またこの開口部は、他方で、シャフトアースからの粒子を排出するように機能する。すなわち、少なくとも1つの開口部は、これを達成するように構造的に設計されている。このために、開口部は、特に径方向において、シャフトシールおよびシャフトアースから離れて導かれている。
【0009】
したがって、開口部を介して、特に摩耗物またはシールを通る漏れなどであるシャフトシールからの粒子のみが排出されるのではなく、例えばシャフトアースのブラシの摩耗物であるシャフトアースからの粒子も排出される。さらに、シャフトシールからの粒子がシャフトアースに到達し、そこでシャフトアースの作用に悪影響を与える可能性が低減される。この可能性は、特にシャフトアースの効果を低減させる、またはその摩耗または漏れを増加させる場合がある。逆に、シャフトアースからの粒子がシャフトシールに到達し、そこでシャフトシールの摩耗を増加させる可能性も低減される。
【0010】
このようなシャフトアースとは、特に、シャフトと基準電位との間に回転可能な電気的な接続を確立する構成要素を意味すると理解される。このような基準電位は、例えば、接地電位または電気的グランドである。このようなシャフトアースは、電気的な整流には使用されない。好適には、シャフトアースは、シャフトを、シャフトを回転可能に支承するハウジングと、またはハウジング部分と、電気的に接続する。シャフトアースは、特に、シャフトとの摺動接触を確立する少なくとも1つの固体ブラシまたは柔軟なブラシを備える。シャフトアースは、特にシャフト接地リングとして構成されている。
【0011】
シャフトシールとは、特に、流体をシャフトの領域に保持することを意図した構成要素を意味すると理解される。このようなシャフトシールは、例えば、ラジアルシャフトシールリング又はラビリンスシールとして、既知である。
【0012】
好適には、少なくとも1つの開口部は、シール装置の意図された設置位置において、シャフトシールおよび/またはシャフトアースのブラシの下に存在するように配置される。これによって、シャフトシールおよび/またはシャフトアースからの粒子は、シール装置の意図された作動中に、重力によって開口部内に落下し、さらに容易に排出される。
【0013】
好適には、ホルダは、ハウジングのハウジング部分によって構成されている。これは、特に、シャフトを回転可能に支承するハウジング部分である。ハウジング部分は、別個の構成部分であってよく、または残余のハウジングの一体構成部分であってもよい。ハウジング部分は、特に、ハウジングを特定の構造に成形することによって構成されている。ハウジング部分は、シャフトアースおよびシャフトシールを保持する1つまたは複数の拡径部を備えることができる。少なくとも1つの開口部を、1つまたは複数の拡径部における凹部によって構成することができる。したがって、ホルダを、構造的に単純に構成することができる。
【0014】
好適には、ハウジング部分は、シャフトをリング状に囲むハウジングのこのような局所的な拡径部によって構成されている。この場合、ハウジング部分は、拡径部の円周上に分布された複数の開口部を備える。例えば、拡径部の円周に沿って分布された3つの開口部を設けることがでる。好適には、これらの開口部のうちの1つの開口部は、意図された設置位置において、シャフトシールおよび/またはシャフトアースのブラシの下に存在する。これによっても、ホルダを、構造的に単純に構成することができる。
【0015】
ハウジング部分はリブを備えることができる。リブは、少なくとも1つの開口部を、または、そのような開口部が複数存在する場合にはすべての開口部を、連続的に径方向に囲む。したがって、粒子がさらに径方向に広がることが防止することができる。このリブは、開口部を介して排出される粒子のためのリザーバの一部を構成することができる。
【0016】
好適には、シャフトが回転可能にハウジングにおいて支承されるように、ベアリングもハウジング部分に備えられている。これによって、コンパクトな構造を達成することができる。
【0017】
好適には、開口部は、粒子のためのリザーバに直接つながる。したがって、それによって排出された粒子は、迂回することなく、リザーバに到達する。したがって、例えばパイプまたはチャネルなどである、粒子のためのリザーバへのラインの詰まりが排除される。
【0018】
好適には、シール装置はさらに、シャフトシールを通る漏れをシャフトから非接触で除去するキャッチ装置を備える。すなわち、開口部が介在するシャフトシールおよびシャフトアースに加えて、キャッチ装置が設けられている。このキャッチ装置は、非接触で作動する。したがって、シャフトから漏れをぬぐい取るために、シャフトに当接し、それによって摩擦作用を行う追加のシールリップ、ブラシ、または他の部品が必要とされない。このようなキャッチ装置は、ほとんど摩耗せずに作動し、摩擦損失も最小限で済む。これによって、シール装置から離れた環境は、可及的に漏れがない状態に保たれる。
【0019】
これに関連して、シャフトシールを通る漏れとは、特に、シャフトシールが原則としては保持することを意図しているが、様々な理由で意図せずにシャフトシールを越えてしまう流体の体積流を意味すると理解される。このような漏れは、例えば、シャフトシールとシャフトとの間に十分な大きさの間隙が生じ、流体がそこをシャフトに沿って貫流可能であるときに生じる。このような流体は、特に液状である可能性がある。このような流体は、特に、潤滑剤である可能性がある。しかしながら、シール装置の意図された用途に応じて、例えば冷却剤のような、異なる流体でもある可能性がある。
【0020】
キャッチ装置は、特に、漏れに作用する遠心力を発生させることによって作動する。これは、シャフトが回転するときに生じる。キャッチ装置のためにシャフトの直径を局所的に拡大させる(拡径部)と、漏れは、シャフトの回転によって径方向外側に移動される。これは、漏れが、その際に生じる遠心力によってシャフトから分離され、残るキャッチ装置によってキャッチされ、排出されるように構成される。これに対して代替的または追加的に、キャッチ装置において負圧を発生させることによって、漏れをシャフトから非接触で吸い取ることも可能である。
【0021】
キャッチ装置自体が、キャッチされて排出された粒子または漏れを収集する上述のリザーバを構成することができる。または、キャッチ装置は、リザーバにつながることができる。または、キャッチ装置が、少なくとも、リザーバに漏れを転送するラインにつながることができる。
【0022】
好適には、キャッチ装置は、シャフトに配置されたショルダと、このショルダを径方向に囲むキャッチ構造と、から構成されている。このようなショルダは、一方ではシャフトの局所的な拡径部を構成し、他方では漏れのためのティアオフエッジを構成する。したがって、シャフトの回転速度が比較的低い場合でさえ、シャフトから漏れが分離されて飛ばされる。この場合、ショルダは、シャフトから漏れを分離するために設けられている。一方キャッチ構造は、ショルダによって分離された漏れを実際にキャッチし、排出するために設けられている。ティアオフエッジは、漏れがそれから特に良好に分離されるように、適切な形状を備えることができる。特に、ティアオフエッジは、鋭利なエッジであってよく、または細長い隆起状(すなわち、隆起部を有する)であってもよい。
【0023】
シャフトに配置されたショルダは、シャフトショルダによって構成することができる、または、シャフト上に固定されてシャフトを径方向に囲む構成部分によって構成することができる。このようなシャフトショルダは、シャフト自体によって、すなわち、例えば金属を切削する旋盤加工の過程において、シャフト自体を対応して成形することによって構成される。シャフトを径方向に囲むこのような構成部分は、例えば、シャフト上に押圧されるか、さもなければシャフトに固定された、別個のリングであってもよい。つまり、この構成部分は、ティアオフエッジを備えるシャフト上の拡径部を構成する。したがって、漏れをシャフトから分離するために設けられるキャッチ装置の部分を、単純かつ費用対効果に優れて構成することができる。
【0024】
好適には、ショルダを径方向に囲むキャッチ構造は、上述のハウジング部分によって、またはハウジングによって、構成されている。キャッチ構造は、例えば、ハウジングの鋳造中に構成される、ハウジング部分またはハウジング内の特別な鋳造構造とすることができる。しかしながら、キャッチ構造を他の方法でハウジングに組み込むこともできる。これに対して代替的に、キャッチ構造を、例えば、ねじ留め、溶接、プレス、または接着されるように、ハウジング部分またはハウジングに固定されるように構成することもできる。この場合、一方のハウジング部分またはハウジングと、他方のキャッチ構造とは、異なる部分から構成される。好適には、キャッチ構造は、シートメタルまたはプラスチックから構成されている。これにより、キャッチ構造を、特に単純かつ費用対効果に優れて製造できる。
【0025】
好適には、キャッチ構造は、径方向内側の領域において屈曲部を備える。そのため、キャッチ構造の径方向内側の端部は、ポット形状に構成され、シャフトショルダに向けられる。このようにして、上方に飛ばされた漏れが、キャッチ構造に沿ってシャフトの方向に戻ってシャフト上に滴下することを防止する。滴下に代わって、漏れのこの部分は、シャフトの周りで、キャッチ構造のポット形状に沿って導かれる。
【0026】
好適には、シャフトシール、シャフトアース、およびキャッチ装置は、軸方向に前後して配置されている。この場合、軸方向とは、シャフトの回転軸線に沿った方向を意味すると理解される。この場合、シャフトアースは、軸方向にシャフトシールとキャッチ装置との間に配置することができる。これによって、キャッチ装置は、シャフトアースの摩耗物を同様にキャッチすることができる。これに対して代替的に、キャッチ装置を、軸方向にシャフトシールとシャフトアースとの間に配置することができる。したがって、シャフトアースが、シャフトシールとキャッチ装置の反対側にあるため、漏れに接触しない、またはほとんど接触しない。この場合、開口部の位置は、シャフトシールとシャフトアースとの間で軸方向の適切な位置を選択することができる。
【0027】
シャフトアースは、キャッチ構造の上に配置することができる。この場合、シャフトアースは、つまりキャッチ構造によって支持される。したがって、シャフトは、キャッチ構造の領域において基準電位と電気的に接続される。したがって、キャッチ構造自体を、シャフトと基準電位との間の電気的な接続の一部とすることができる。したがって、キャッチ構造およびシャフトアースが、一緒に組み立て可能なユニットを構成することができる。
【0028】
シャフトショルダのティアオフエッジは、軸方向にシャフトシールとシャフトアースとの間に配置することができる。したがって、シャフトシールの漏れがシャフトアースに到達することが防止される。これは、シャフトアースがキャッチ構造上に配置されている場合にも適用することができる。
【0029】
提案される電気機械は、回転可能に駆動可能なロータシャフトを備える。ロータシャフトは、特に、電気機械のロータと接続されており、ロータとロータシャフトの一体設計をも含む。ロータは、およびそれと共にロータシャフトも、特に、ハウジングに固定された電気機械のステータを用いて回転可能である。電気機械は、ロータシャフトをシールするシール装置を備える。電気機械のシール装置は、提案されるシール装置によって構成されている。したがって、電気機械の内部(内部空間)への発生する可能性のある漏れを、容易にロータシャフトによって排出し、キャッチすることができる。
【0030】
好適には、電気機械は、ロータシャフトと接続されたロータが回転可能に配置されている内部空間を備える。この場合、ロータシャフトは、シール装置において内部空間から外へと向く。シール装置は、電気機械の内部空間を、すなわちロータシャフトにおいて外部に対してシールする。この場合、キャッチ装置(存在する場合には)、シャフトアース、およびシール装置の提案される開口部は、特に、電気機械の内部空間内でシャフトシールに隣接して配置されている。したがって、流体が外部から電気機械の内部空間に到達し、そこで制御されずに広がることが防止される。したがって、同時に、シャフトは基準電位と電気的に接続されている。
【0031】
提案される駆動装置は、自動車を電気的に駆動するように機能する。したがって、駆動装置は、自動車に駆動力を供給する電気機械を備える。駆動装置を、特に、駆動モジュールとして構成し、例えば、自動車の駆動軸上に配置されるように構成することができる。駆動装置の電気機械は、提案される電気機械によって構成され、したがって提案されるシール装置を備える。
【0032】
以下において、本発明は、本発明の更なる好適な実施形態および特徴が理解できる図面を参照して、より詳細に説明される。この場合、図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】シール装置の領域における電気機械の長手方向断面の部分図である。
図2】シール装置の領域における電気機械の長手方向断面の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面において、同一、または少なくとも機能的に同一の構成部分または要素には、同一の参照符号が付されている。
【0035】
図1は、電気機械の軸方向の端部の領域における電気機械の長手方向断面の一部を示す。この領域において、回転軸線Lを中心に回転可能な電気機械のロータシャフト1は、電気機械のハウジング2を貫通する。シール装置3は、シャフト1の領域において電気機械の内部空間をシールするために設けられている。シール装置3は、この場合例示的にラジアルシャフトシールリングであるシャフトシール4と、それから軸方向に離間された、この場合例示的にシャフト接地リングであるシャフトアース6と、を備える。電気機械の内部空間は、図1においてシャフトシール4の左側に存在する。
【0036】
シャフトシール4およびシャフトアース6は、シール装置3のホルダ9によって所定位置に保持される。この場合、ホルダ9は、ハウジング2のハウジング部分として構成されている。このホルダ9は少なくとも1つの開口部10を備える。開口部10は、回転軸線Lに対して軸方向にシャフトシール4とシャフトアース6との間に配置されている。この開口部10は、シャフトシール4およびシャフトアース6から径方向に離れて導かれる。開口部10は、一方でシャフトアース6からの粒子を、他方でシャフトシール4からの粒子を排出するように機能する。これは、図1において、開口部10において下方に向かう矢印によって示されている。
【0037】
シャフトシール4は、流体、特に潤滑剤が、電気機械の内部空間に入るのを防止することを目的とする。実際には、これが電気機械で発生するすべての作動条件下で機能するわけではない。漏れがシャフトシール4を通り、ホルダ9に沿って軸方向にシャフトアース6の方向に内部空間へ流入することが起こり得る。この漏れは、開口部10に到達する。開口部10は、漏れを下方へと直接にリザーバ7へ排出する。したがって、開口部10は、シール装置3のこの意図された設置位置において、シャフトシール4の下に存在するように配置されている。さらに、開口部10は、シャフトアース6のブラシの下に配置されているの。そのため、そこからの摩耗物も、同様に開口部10を通って直接に下方へとリザーバ7へ排出される。
【0038】
図1によれば、シール装置3は、任意選択のキャッチ装置5も備える。すなわち、漏れがシャフトシール4を通り、シャフト1に沿って電気機械の内部空間に流入することも起こり得る。この場合、この漏れは、通常開口部10に到達しない。キャッチ装置5によって、漏れが内部空間でさらに広がることが防止される。したがって、キャッチ装置5は、漏れキャッチ装置と称することもできる。キャッチ装置5は、図示の実施形態において、シャフト1のシャフトショルダ5Aと、ハウジング2に固定されたキャッチ構造5Bと、から構成される。キャッチ構造5Bは、ショルダ5Aを径方向に囲んでいるが、それに当接してはいない。したがって、キャッチ構造5Bは、非接触で作動する。図示のキャッチ構造5Bは、例えば、シートメタルまたはプラスチックから構成される。ショルダ5Aは、シャフトシール4を通過して電気機械の内部空間に到達する漏れのためのティアオフエッジを構成する。
【0039】
シャフト1が回転軸線Lを中心に回転し、シャフトシール4で漏れが生じると、これがショルダ5Aに到達する。そこでは、漏れが、ショルダ5Aに沿って径方向外側に、ショルダ5Aのティアオフエッジにまで導かれる。ティアオフエッジは、この位置で漏れに作用する遠心力と連動して、ショルダ5Aから漏れを分離させ、飛ばす。飛ばされた漏れは、キャッチ構造5Bによってキャッチされ、リザーバ7に導かれる。リザーバ7は、図示の実施例ではハウジング部分によって構成されている。ハウジング部分は、ホルダ9も構成する。これに対して代替的に、キャッチ構造5B自体によってリザーバ7を構成することができる。
【0040】
径方向内側の領域(すなわち、シャフト1に隣接する領域)において、キャッチ構造5Bは湾曲部を備える。そのため、キャッチ構造5Bの径方向内側の端部は、ポット形状であり、ショルダ5Aに対してシャフト1と平行に延びる。したがって、上方に飛ばされ、そこでキャッチ構造5Bによってキャッチされた漏れは、シャフト1上に戻って滴下することなく、キャッチ構造5Bおよびポット形状に沿ってリザーバ7まで下方に流れる。図1において見ることができるように、キャッチ構造5Bは、さもなければ、プレート形状に構成することができる。
【0041】
シャフトアース6は、シャフト1を、基準電位としてハウジング2と恒久的に電気的に接続するように機能する。このようにして、シャフト1をハウジング2内で支承するベアリング8は、電位差によってベアリング8に生じ得る破損から保護される。
【0042】
シャフトアース6は、シャフト1の回転軸線Lに対して軸方向にキャッチ装置5とシャフトシール4との間に配置されている。これらの要素4、5、6は、相互に直に隣接している。しかしながら、これとは異なり、キャッチ装置5を、軸方向にシャフトアース6とシャフトシール4との間に配置することもできる。この場合、開口部10は、軸方向にシャフトシール4とシャフトアース6との間で適切な位置に、常に存在する。
【0043】
ベアリング8は、軸方向にシャフトシール4に隣接して、電気機械の内部空間の外側に存在し、シャフト1を回転可能にハウジング2に支承する。この場合、ベアリング8は、例示的に深溝ボールベアリングとして構成されている。ベアリング8は、ハウジング部分として構成されたホルダ9にも配置されている。
【0044】
ベアリング8は、シャフト1の第1直径d1に配置されている。シャフトシール4およびシャフトアース6は、シャフト1の別の第2直径d2に配置されている。ショルダ5Aは、シャフト1の別の第3直径d3を構成する。ここで、d1<d2<d3が適用される。
【0045】
図2は、例示的に、シャフトシール4およびシャフトアース6を保持するハウジング部分として設計された図1のホルダ9を三次元の図で示す。この場合、ホルダ9は、ハウジング2のリング状の局所的な拡径部によって構成される。拡径部は、シャフトシール4およびシャフトアース6を直接に支持する。この拡径部は、回転軸線Lで示されるシャフト1を囲む。シャフト1は、図2で見ることのできる、ホルダ9の内部の円形の開口部を貫通する。複数の径方向の開口部10は、拡径部の円周上に分布されて配置されている。これらは、それぞれ、シャフトシール4からの粒子を排出し(この場合、特に漏れの形態で)、またシャフトアース6からの粒子を排出する(この場合、特に摩耗物の形態で)ように機能する。
【0046】
さらに、ホルダ9は、回転軸線Lの周りに連続的に配置されたリブ11(図1も参照)を備える。したがって、この中には、径方向の開口部は設けられていない。リブ11は、開口部10を通って排出される粒子が、さらに径方向に広がることを防止する。これらは、リブ11の下部領域に集まる。したがって、リブ11は、リザーバ7の下縁を構成する。
【0047】
リブ7は、キャッチ構造5Bを固定する固定点を備える。図2において、これらの固定点は、例示的にねじ穴として構成されている。この例では、シートメタルまたはプラスチックから構成された板状のキャッチ構造5Bは、ここにねじ止め可能である。しかしながら、キャッチ構造5Bをそれに固定する他の可能性も存在する。例えばキャッチ構造5Bを、溶接、リベット留め、またはクリップ留めすることができる。
【0048】
代替的な実施形態において、シャフトアース6を、キャッチ構造5Bの上に配置し、そこでシャフト1をハウジング2と電気的に接続させることができる。この場合、電気的な接続は、したがってシャフトアース6およびキャッチ構造5Bを介して行われる。
【符号の説明】
【0049】
1 ロータシャフト、シャフト
2 ハウジング
3 シール装置
4 シャフトシール
5 キャッチ装置
5A シャフトショルダ
5B キャッチ構造
6 シャフトアース
7 リザーバ
8 ベアリング
9 ホルダ
10 開口部
11 リブ
d1 シャフト直径
d2 シャフト直径
d3 シャフト直径
L 回転軸線
図1
図2