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特許7546565加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出するための方法およびガス供給網
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  • 特許-加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出するための方法およびガス供給網 図1
  • 特許-加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出するための方法およびガス供給網 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出するための方法およびガス供給網
(51)【国際特許分類】
   F17D 5/02 20060101AFI20240830BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F17D5/02
G01M3/26 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021531371
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2019060292
(87)【国際公開番号】W WO2020136477
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】62/785,253
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2019/5839
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】521234870
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・エアパワー・ナームロゼ・ベンノートシャープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・グエンス
(72)【発明者】
【氏名】エブラヒム・ルアーローディ
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05272646(US,A)
【文献】特開2003-294503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356151(US,A1)
【文献】特開昭61-223400(JP,A)
【文献】特表2007-522587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 5/02
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧下または真空下のガス供給網(1)内の障害(12)を検出して数値化するための方法であって、前記ガス供給網(1)は、
圧縮ガスまたは真空の1つまたは複数の発生源(6)と、
1つまたは複数の消費者(7)、圧縮ガスの消費場所または真空用途と、
前記圧縮ガスまたは真空を前記発生源(6)から前記消費者(7)、消費場所または用途に輸送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)の供給網(4)と、
前記ガス供給網(1)において異なる時間および位置で前記圧縮ガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数の第1のセンサ(9a、9b)と、を備え、
前記ガス供給網(1)には、1つまたは複数の発生源(6)、消費者(7)、または消費場所の状態またはステータスを記録することができる1つまたは複数の第2のセンサ(9c)がさらに設けられ得、前記方法は、以下の段階、すなわち
予定開始段階(14)であって、その間に前記第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)が使用のために校正される予定開始段階(14)と、
第1第1のセンサ(9a、9b)および第2第1のセンサ(9a、9b)からの測定値間の物理的モデルまたは数学的関係を物理法則に基づいて推定アルゴリズムを用いて決定するベースラインまたはゼロ段階(15)と、
前記第1第1のセンサ(9a、9b)および前記第2第1のセンサ(9a、9b)の前記測定値間の前記物理的モデルまたは数学的関係が、一定の時間間隔で推定アルゴリズムを用いて再構築されて、ガス供給網(1)障害を予測する運転段階(16)と、を備え、
前記運転段階(16)は、以下のステップ、すなわち
第1群および第2群の第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)を読み出すステップと、
前記物理的モデルまたは数学的関係を前記第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)から読み取られた前記測定値に基づいて再推定、決定または計算するステップと、
システム内の障害(12)の存在を、前記ベースラインまたはゼロ段階(15)および前記運転段階(16)の間に決定される前記物理的モデルまたは数学的関係のパラメータ間の差および/または差の導関数に基づいて決定または計算するステップと、
障害(12)が検出された場合、警報を発生させる、および/またはある程度の障害を発生させる、および/または対応する障害を発生させるステップと、を備え、
前述の物理的モデルまたは数学的関係は、パラメータまたは定数のマトリクスの形式をとり、これらのパラメータまたは定数の変更は前記運転段階(16)の間に監視されていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1群の第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)は、前記ガス供給網(1)内の異なる位置に異なる圧力センサ(9b)および/または差圧センサ(9b)と、場合により前記発生源(6)、消費者(7)または消費場所の状態を決定することができる複数の第2のセンサ(9c)と、を備え、前記第2群の第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)は、少なくとも1つの流量センサ(9a)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)は、インサイチュ自己校正を用いて校正されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のセンサ(9a、9b)は、1つまたは複数の前記圧縮ガスの以下の物理的パラメータ、すなわち圧力、差圧、温度、流速、湿度を測定することができることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ある瞬間、前記運転段階(16)が一時的に中断または停止された後、前記運転段階(16)が再始動される前に異なる第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)の前記測定値間の前記物理的モデルまたは数学的関係を再定義するために前記ベースラインまたはゼロ段階(15)が再開されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記運転段階(16)のステップは、連続的に所定の時間間隔で繰り返されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
加圧下または真空下のガス供給網であって、前記ガス供給網(1)には、少なくとも
圧縮ガスまたは真空の1つまたは複数の発生源(6)と、
1つまたは複数の消費者(7)、圧縮ガスの消費場所または真空用途と、
前記圧縮ガスまたは真空を前記発生源(6)から前記消費者(7)、消費場所または用途に輸送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)の供給網(4)と、
前記ガス供給網(1)において異なる時間および位置で前記圧縮ガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数の第1のセンサ(9a、9b)と、が設けられ、
前記ガス供給網(1)には、
場合により、1つまたは複数の発生源(6)、消費者(7)および/または消費場所の状態またはステータス(例えば、オン/オフ)を示す1つまたは複数の第2のセンサ(9c)と、
前記第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)からのデータ収集のためのデータ取得制御ユニット(10)と、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実行するための演算ユニット(11)と、がさらに設けられていることを特徴とする、ガス供給網。
【請求項8】
前記第1および第2のセンサ(9a、9b、9c)の少なくとも一部は、発生源(6)および/または消費者(7)とともに1つのモジュールに統合されることを特徴とする、請求項7に記載のガス供給網。
【請求項9】
前記ガス供給網(1)には、障害(12)、障害の程度、障害コスト、および場合により位置を表示するまたは合図で知らせるモニタ(13)がさらに設けられていることを特徴とする、請求項7または8に記載のガス供給網。
【請求項10】
消費者(7)の状態または状況を記録することができる前記第2のセンサ(9c)は、前記消費者(7)自体の一部であることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のガス供給網。
【請求項11】
前記演算ユニット(11)は、クラウドベースの演算ユニット(11)であり、前記クラウドベースの演算ユニット(11)は、前記ガス供給網(1)にワイヤレス接続で、またはワイヤレス接続なしで接続されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のガス供給網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出するための方法に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、ガス供給網内に生じる障害を数値化することができるように意図される。本明細書の「ガス」とは、例えば空気を意味するが、必ずしもそうではない。「ガス」は、窒素または天然ガスでもあり得る。本明細書の「障害」とは、ガス供給網内の一部または全部の閉塞またはパイプラインの抵抗の増加を意味する。
【背景技術】
【0003】
加圧下のガス供給網を監視または制御するための方法はすでに知られており、それによってこれらの方法は、問題のガスの圧縮性によって流入する流れは必ずしも流出する流れと同じではない、長い一直線のパイプラインのために提起されている。
【0004】
本方法は、1つまたは複数の圧縮機プラントがガスを加圧下で消費者の複雑な供給網に供給する、加圧下の複雑なガス供給網にふさわしくない非常に長いパイプライン、一直線のパイプラインなどの複数の想定に基づいている。最終消費者は、個々の最終消費者であり得、またはいわゆる消費場所または一群の個々の最終消費者を含み得る。
【0005】
しかしながら、上記方法は、ガス供給網内の漏れの検出に関するのみである。
【0006】
このような周知の方法の不都合な点は、方法が発生源と消費者との間のパイプラインの供給網内の障害を検出することができないことである。さらには、ガス供給網自体が、軽視すべきでない障害の発生源である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はこの課題に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
加圧下または真空下のガス供給網内の障害を検出して数値化するための方法であって、前記ガス供給網は、
圧縮ガスまたは真空の1つまたは複数の発生源と、
1つまたは複数の消費者、圧縮ガスの消費場所または真空用途と、
前記圧縮ガスまたは真空を前記発生源から前記消費者、消費場所または用途に輸送するためのパイプラインまたはパイプラインの供給網と、
前記ガス供給網において異なる時間および位置で前記ガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数のセンサと、を備え、
前記ガス供給網には、発生源、消費者、および/または消費場所の状態またはステータス(例えば、オン/オフ)を示す追加のセンサがさらに設けられ得、前記方法は、以下の段階、すなわち
予定開始段階であって、その間に前述のセンサが使用される予定開始段階と、
第1セットのセンサおよび第2セットのセンサからの測定値間の初期物理的モデルまたは数学的関係を物理法則に基づいて推定アルゴリズムを用いて決定するベースラインまたはゼロ段階と、
前記第1セットのセンサおよび前記第2セットのセンサの前記測定値間の前記物理的モデルまたは数学的関係が、一定の時間間隔で推定アルゴリズムを用いて再構築されて、ガス供給網障害を予測する運転段階と、を備え、
前記運転段階は、以下のステップ、すなわち
第1群および第2群のセンサを読み出すステップと、
前記物理的モデルまたは数学的関係を前記センサから読み取られた前記測定値に基づいて再推定、決定または計算するステップと、
システム内の障害の存在を、前記ベースラインまたはゼロ段階および前記運転段階の間に決定される前記物理的モデルまたは数学的関係のパラメータ間の差および/または差の導関数に基づいて決定または計算するステップと、
障害が検出された場合、警報を発生させる、および/またはある程度の障害を発生させる、および/または対応する障害コストを発生させるステップと、を備えるという事実によって特徴付けられている、方法を提供する。
【0009】
差の「導関数」とは、差から導出され得る任意の数学量、例えば、合計、累積合計、(加重)平均、最小平方和を意味する。
【0010】
「一定の時間間隔で」とは、連続的またはほぼ連続的であることも意味する。すなわち、一定の時間間隔は互いの後に素早く続く。
【0011】
有利な点は、このような方法がガス供給網自体内の障害を検知、検出および数値化することを可能にすることである。
【0012】
言い換えると、本方法を用いて検出される障害は、発生源または圧縮ガスの消費者内、すなわち圧縮機ユニットおよび空気圧工具内の障害に限定されず、ガス供給網自体のパイプライン内の障害でもあり得る。
【0013】
ベースライン段階および運転段階のいずれの間も、数学的関係はこれらのセンサ間で既知の物理法則に基づいて種々のセンサの測定値を用いて構築される。
【0014】
ここで、推定アルゴリズムが使用される。
【0015】
これは、ベースラインまたはゼロ段階において、ガス供給網内に重大な障害が初めは存在しないという想定に基づいている。言い換えると、これは、ガス供給網の平常状態またはいわゆる「ベースライン」またはゼロに基づいている。数学的モデルは、ガス供給網内に漏れが存在せず、ガス供給網のトポロジーが変化しないという想定にも基づいている。
【0016】
このようにして、センサによって測定された異なるパラメータ間の関係を表す物理的モデルまたは数学的モデルが作り出され得る。
【0017】
このモデルは、それからベースラインパラメータと新たに決定または計算された物理学または数学的モデルのパラメータとを比較することによって、センサの今後の測定値の異常を直ちに検出するために使用され得る。
【0018】
このようにして、障害は非常に素早く検出され、障害を検出した場合には、直ちに行動をとることができ、障害を修復することができる。
【0019】
好適には、上記物理的モデルまたは数学的関係は、パラメータまたは定数のマトリクスの形式をとるべきであり、これらのパラメータまたは定数の変更は運転段階の間に追跡されている。
【0020】
このマトリクスは、供給網の「抵抗」またはその反対の「伝導性」の尺度である、というよりもガスがガス供給網内で経験する「抵抗」または「伝導性」の尺度である。
【0021】
マトリクスの変化は抵抗の変化を示す。マトリクスのパラメータを新しいセンサデータに基づいて再計算することによってマトリクスの変化を追跡することで、抵抗の変化を検出することができ、障害を検出することができる。
【0022】
好適には、ある瞬間、運転段階が一時的に中断または停止された後、運転段階が再始動される前に異なるセンサの測定値間の物理的モデルまたは数学的関係を再定義するためにベースラインまたはゼロ段階が再開される。
【0023】
ここで、プロセス、すなわち発生源、パイプライン、消費者および/または消費場所を備えるガス供給網が停止されるのではなく、方法のみが停止されることに留意されたい。言い換えると、運転段階が一時的に中断または停止された場合でも、発生源は消費者または消費場所にガスまたは真空を供給する。
【0024】
運転段階の中断およびベースライン段階の再開は、物理的モデルまたは数学的関係が更新されるという有利な点を有する。
【0025】
これは、ガス供給網またはシステムの時間とともに変化する挙動を考慮することを可能にし、その結果、変化、障害修復またはガス供給網への追加を考慮することができる。
【0026】
本発明は、加圧下または真空下のガス供給網であって、前記ガス供給網には、少なくとも
圧縮ガスまたは真空の1つまたは複数の発生源と、
1つまたは複数の消費者、圧縮ガスの消費場所または真空用途と、
前記圧縮ガスまたは真空を前記発生源から前記消費者、消費場所または用途に輸送するためのパイプラインまたはパイプラインの供給網と、
前記ガス供給網において異なる時間および位置で前記ガスの1つまたは複数の物理的パラメータを決定する複数のセンサと、が設けられ、
前記ガス供給網(1)には、
場合により、1つまたは複数の発生源、消費者および/または消費場所の状態またはステータス(例えば、オン/オフ)を示す1つまたは複数のセンサと、
前記センサからのデータ収集のためのデータ取得制御ユニットと、
本発明による方法を実行するための演算ユニットと、がさらに設けられていることを特徴とする、ガス供給網にも関係がある。
【0027】
このような配置は、本発明による方法を適用するために使用され得る。
【0028】
本発明の特徴をよりよく実証するため、本発明による方法およびガス供給網の複数の好ましい変形例が、限定的な特徴のない例として添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による配置を図式的に示す。
図2】本発明による方法の概略フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1のガス供給網1は、主に発生源側2と、消費者側3と、発生源側2と消費者側3との間のパイプライン5の供給網4と、を備える。
【0031】
この場合のガス供給網1は、加圧下のガス供給網1、すなわち大気圧よりも高い圧力がある。ガスは、空気、酸素または窒素または任意の他の非毒性および/または有害ガスまたはガスの混合物であり得る。
【0032】
発生源側2は、複数の、この場合では3つの圧縮機6を備え、圧縮機6は圧縮空気を発生させる。消費者側3は、複数の、この場合でも3つの圧縮空気の消費者7を備える。
【0033】
圧縮機6は、圧縮空気乾燥機を含むことも可能である。
【0034】
圧縮機6はガス供給網の下流にあってもよいことは除外されない。これは、「昇圧圧縮機」と呼ばれる。
【0035】
圧縮空気は、パイプライン5の供給網4を通って圧縮機6から消費者7に送られる。
【0036】
この供給網4は、パイプライン5の非常に複雑な供給網である場合が多い。
【0037】
図1は、非常に概略的かつ簡略化した方法でこの供給網4を示す。また、ガス供給網1内の関連した遮断弁およびバイパス弁は、図1の簡潔さを維持するために明示的に示されていない。
【0038】
ほとんどの実際の状況では、パイプライン5の供給網4は消費者7を互いに直列および並列に、および圧縮機6と接続する多数のパイプライン5からなる。供給網4の一部が環状構造を採用する、または備えることは除外されない。
【0039】
これは、ガス供給網1が、追加の消費者7または圧縮機6によって時間とともにしばしば拡張され、それにより、既存のパイプライン5間に新しいパイプライン5を敷かなければならず、それがパイプライン5のもつれにつながるためである。
【0040】
この場合、ガス供給網1はまた必ずしもそうではないが、圧力容器8が装備されており、全ての圧縮機6はこの圧力容器8の前にある。
【0041】
1つまたは複数の圧力容器8がガス供給網1の下流にあり得ることは除外されない。
【0042】
また、フィルタ、分離器、噴霧器および/または調整器などの構成要素17もガス供給網内に設けられ得る。これらの構成要素17は、様々な組み合わせで見つけられ得、圧力容器8の近くおよび個々の消費者7に近接して配置され得る。
【0043】
示す例では、これらの構成要素17は、圧力容器8の後ろかつ個々の消費者7に近接して設けられている。
【0044】
供給網4は複数のセンサ9a、9b、9c、9dをさらに含み、複数のセンサ9a、9b、9c、9dは供給網4内の異なる位置に配置される。
【0045】
この場合、1つの流量センサ9aは、前述の圧力容器8のすぐ後ろに置かれ、全ての圧縮機6によって供給される全流量qを測定する。圧縮機6の個々の流量がそれら自体で測定されることも可能である。
【0046】
また、図は4つの圧力センサ9bを示し、4つの圧力センサ9bは供給網4内の異なる位置で圧力を測定する。
【0047】
圧力容器8内の圧力を測定する圧力センサ9bは、大量の濃縮された容積(large, concentrated volumes)のための「マスイン-マスアウト(mass in - mass out)」の原則を修正することも推奨される。
【0048】
4つより多いかまたは少ない圧力センサ9bも設けることができることは明らかである。また、流量センサ9aの数は本発明を限定するものではない。
【0049】
流量センサ9aまたは圧力センサ9bに加えて、追加のまたは代替的にセンサ9a、9bがガスの1つまたは複数の以下の物理的パラメータ、すなわち差圧、ガス速度、温度または湿度を決定するために使用され得る。
【0050】
ガスの物理的パラメータを測定する前述のセンサ9aおよび9bに加えて、圧縮機6、消費者7または消費場所の近くに配置される複数のセンサ9cまたは「状態センサ9c」もある。好適には、これらのセンサ9cは、消費者7自体の一部であり、スマート消費者(smart consumers)と呼ばれる。
【0051】
後で説明するように、圧縮機6、消費者7または消費場所の状態またはステータス(例えば、オン/オフ)を、状態センサ9cを用いて考慮することによって、これらの推定アルゴリズムがより信頼できるようになるように推定アルゴリズムの交差感度を減少させることができる。
【0052】
少なくともいくつかのセンサ9a、9b、9cは発生源6および/または消費者7とともに1つのモジュールに統合されることも可能である。これは「スマート接続空気圧デバイス」と呼ばれる。
【0053】
消費者7の、または消費場所におけるガスの圧力または流量を測定するセンサ9a、9bを用いることも可能である。消費者7の、または消費場所におけるガスの温度を測定するセンサを用いることも可能である。
【0054】
追加のまたは代替的なセンサ9a、9bからなる群の1つである前述の差圧センサは、好ましくはフィルタ、分離器、噴霧器および/または調整器構成要素17の上に置かれる。差圧センサ9dの数は図1に示すものと異なっていてもよいことは言うまでもない。
【0055】
追加のまたは代替的なセンサ9a、9bからなる群の1つである前述の湿度および温度センサは、好ましくは圧縮機6および消費者7の入口および/または出口に搭載される。
【0056】
示す例では、前述の追加のまたは代替的なセンサ9a、9bは、全てガス供給網1に含まれているわけではないが、センサ9a、9bは、全てガス供給網1に含まれていることも可能であることは言うまでもない。もちろん、より広範で複雑なガス供給網1では、質量流量率の代わりに体積流量のみが測定される供給網1と同様にこのようなセンサ9a、9bが使用され得る。
【0057】
本発明によれば、ガス供給網1には、前述のセンサ9a、9bおよび9cからのデータを収集するデータ取得制御ユニット10がさらに設けられている。
【0058】
言い換えると、センサ9a、9b、9cは、ガスの物理的パラメータおよび圧縮機6、消費者7および/または消費場所の状況を決定または測定し、これらのデータをデータ取得制御ユニット10に送信する。
【0059】
本発明によれば、ガス供給網1には、センサ9a、9b、9cからのデータを処理するための演算ユニット11がさらに設けられ、演算ユニット11は後で説明するように、ガス供給網1内の障害12を検出して数値化するための方法を実行することができる。
【0060】
前述の演算ユニット11は、ガス供給網1の物理的部分である物理的モジュールであり得る。演算ユニット11が物理的モジュールでなく、ガス供給網1にワイヤレスで接続されてもされなくてもよい、いわゆるクラウドベースの演算ユニット11であることは除外できない。これは、演算ユニット11または演算ユニット11のソフトウェアが「クラウド」内に配置されることを意味する。
【0061】
この場合、ガス供給網1には、方法を用いて検出される障害12を表示する、または合図で知らせるためにモニタ13がさらに設けられている。
【0062】
本発明によるガス供給網1の運転および方法は非常に簡潔であり、以下の通りである。
【0063】
図2は、図1のガス供給網1内の障害12を検出して数値化するための方法を図式的に説明する。
【0064】
第1の段階14、開始段階14では、センサ9a、9bおよび9cは、使用前に必要であれば校正される。他のセンサがある場合には、他のセンサも使用前に校正され得ることは言うまでもない。
【0065】
これは、センサ9a、9b、9cがガス供給網1に置かれるときに一度起こる。もちろん、センサ9a、9b、9cは時間とともに再校正されてもよいことは可能である。
【0066】
好適には、センサ9a、9b、9cは、インサイチュ自己校正(in-situ self-calibration)を用いて校正される。これは、ガス供給網1内のセンサ9a、9b、9cが、すなわちセンサ9a、9b、9cが搭載された後、校正されることを意味する。「インサービス(In service)」または「インサイチュ(in-situ)」とは供給網1から取り外さずに校正することを意味する。
【0067】
センサ9a、9b、9cの配置後に校正を行うか、一定期間後に校正を繰り返すだけなので、このようにして、センサ9a、9b、9cの配置および/または汚染の可能性がセンサの測定値に影響を与えないことを確認することができる。
【0068】
その後、第2の段階15またはゼロ段階としても知られる、ベースライン段階15が始まる。
【0069】
この段階では、物理的モデルまたは数学的関係が、第1群のセンサ9a、9b、9cおよび第2群のセンサ9a、9b、9cの測定値間で物理法則に基づいて推定アルゴリズムを用いて決定される。圧縮機6、消費者7または消費場所の任意の追加の状態センサ9c(例えば、オン/オフ)を考慮することによって、推定アルゴリズムの交差感度が減少され得、これらの推定アルゴリズムをより信頼できるものにする。
【0070】
既知の物理法則に基づいて、モデルが第1群のセンサ9a、9bと第2群のセンサ9a、9bとの間で作られ得る。
【0071】
この第1群のセンサ9a、9bは、好ましくはガスの同じ物理的パラメータ、例えば圧力pおよび/または圧力差Δpをガス供給網1内の異なる位置で全て測定する。第2群のセンサ9a、9bは、好ましくはガスの同じ物理的パラメータ、例えば流速qを全て測定する。
【0072】
第1群のセンサ9a、9bは、この場合、ガス供給網1内の異なる位置に異なる圧力センサ9bおよび/または差圧センサ9bを備え、第2群のセンサ9a、9bは、この場合、1つ、好ましくは少なくとも1つの流量センサ9aを備える。しかしながら、センサ9a、9bの2つの群に共通のセンサがない限り、これは厳密には必要ではなく、やり方はそのままである。唯一の条件は、センサ9a、9bの2つの群の断面が空でなければならないということである。
【0073】
例えば、モデルはマトリクスなどの数学的関係からなり、数学的関係には依然として多くのパラメータまたは定数がある。マトリクスは、ガス供給網1の抵抗またはその反対の伝導性の尺度である。
【0074】
これらのパラメータまたは定数は、関連するセンサ9a、9b、9cを読み出して推定アルゴリズムを用いることによって決定され得る。
【0075】
これは、一種のベースライン状態、または障害12のないガス供給網1の平常状態に基づいている。
【0076】
データ取得制御ユニット10は、センサ9a、9b、9cを読み取り、これらのデータを前述のパラメータまたは定数を決定するために必要な計算が実行される、演算ユニット11に送信する。
【0077】
一度パラメータまたは定数が決定されると、物理的モデルがセンサ 9a、9bの2つの群の間の数学的関係の形式で決定される。
【0078】
次に、第3の段階16または運転段階16が始まり、運転段階16では、第1群のセンサ9a、9bおよび第2群のセンサ9a、9bの測定値間の物理的モデルまたは数学的関係が、ガス供給網1内の障害12を予測するために推定アルゴリズムを用いて再び設定される。
【0079】
この段階16では、以下のステップ、すなわち
第1群および第2群のセンサ9a、9b、9cを読み出すステップと、
物理的モデルまたは数学的関係をセンサ9a、9b、9cから読み取られた測定値に基づいて再推定、決定または計算するステップと、
システム内の障害12の存在を、ベースライン段階15および運転段階16の間に決定される物理的モデルまたは数学的関係のパラメータ間の差から決定または計算するステップと、
障害が検出された場合、警報を発生させ、必要に応じて障害の程度および/または障害のコストを発生させるステップと、が実行される。
【0080】
ガス供給網1内の障害12を決定するために、最後から2番目のステップで、前述の差が特定のしきい値を超えているかどうかが調べられる。これは、結果としてガス供給網1内の障害12を示す。
【0081】
このしきい値は、事前に設定することも、経験的に選択することもできる。
【0082】
障害12が検出されると、警報が発生する。この場合、これは警報を表示するモニタ13の助けを借りて行われる。
【0083】
ガス供給網1のユーザは、この警報に気づき適切なステップを取ることができる。
【0084】
運転段階16のこれらのステップは、好ましくは連続的におよび一定の時間間隔で定期的に繰り返される。
【0085】
これは、ガス供給網1の運転期間全体の間、障害12を、ガス供給網1の稼働中または稼働直後にたった一度だけでなく検出および追跡することができることを意味する。
【0086】
前述の時間間隔は、ガス供給網1に応じて選択および設定され得る。
【0087】
本発明の好ましい変形例では、ある瞬間、運転段階16が一時的に中断または停止され、その後、運転段階16が再開される前に異なるセンサの測定値間の物理的モデルまたは数学的関係を再定義するためにベースラインまたはゼロ段階15が再構築される。「ある瞬間」は、本明細書では、例えば、週に1回、月に1回、または年に1回など、事前に設定された瞬間、またはユーザが選択できる瞬間として解釈されるべきである。
【0088】
ベースライン段階15が再び推定される期間は、運転段階の間に物理的モデルまたは数学的関係が再び構築される期間と比較してはるかに長い。言い換えると、ベースライン段階15の間の更新時間ステップは、供給網1の変動に対応するため、運転段階16の間の更新時間ステップよりもはるかに長い。
【0089】
物理的モデルは、システムの考え得る時間とともに変化する挙動を考慮するために更新される。
【0090】
これらには、例えば、関連する部品またはバルブを交換することによって修復される供給網4内の障害物12、またはガス供給網1の前述の「ベースライン」状態を変更する供給網4の変更または拡張が含まれる。
【0091】
図1の例では、加圧下のガス供給網1に関するが、真空下のガス供給網1もあり得る。
【0092】
その場合、発生源側2は、真空の複数の発生源、すなわち真空ポンプまたは類似のものを備える。
【0093】
この場合、消費者7または消費場所は、真空を必要とする用途に交換される。
【0094】
さらには、方法は上で開示したものと同じである。
【0095】
本発明は、例として実施形態に限られたものではなく、図に示されるが、本発明で請求されるような方法およびガス供給網は、本発明の範囲を超えることなく、異なる変形例で実施することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 ガス供給網
2 発生源側
3 消費者側
4 供給網
5 パイプライン
6 発生源(圧縮機)
7 消費者
8 圧力容器
9a センサ
9b センサ
9c 状態センサ
9d 差圧センサ
10 データ取得制御ユニット
11 演算ユニット
12 障害
13 モニタ
14 開始段階(第1の段階)
15 ベースラインまたはゼロ段階(第2の段階)
16 運転段階(運転段階)
17 構成要素
図1
図2