(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】複合積層体の安定化のための複合ロッド
(51)【国際特許分類】
B29C 70/10 20060101AFI20240830BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20240830BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B29C70/10
B32B3/14
B29C70/42
(21)【出願番号】P 2021547182
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020018657
(87)【国際公開番号】W WO2020168346
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-16
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノレット,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ハナン,ジェームズ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269034(JP,A)
【文献】実公平07-002194(JP,Y2)
【文献】特開平05-059630(JP,A)
【文献】特表2017-528611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造の無接着剤の構造要素であって、
前記複合構造の少なくとも一部に沿って延びるように構成され、二つ以上のプリフォーム層を含む複合ビームを含み、
各プリフォーム層が、
長手方向に配列され、単一の層内で互いに対して整列した複数の細長いロッドと、
第1のロッドを隣接するロッドに接続するカップリングと、を含み、
各ロッドが、少なくとも一つの隣接するロッドに隣接し前記少なくとも一つの隣接するロッドから間隔をあけて配置され、
各ロッドが、固化マトリックス樹脂内に固定された一方向の実質的にまっすぐな複数の平行化構造繊維を含んでおり、
各プリフォーム層が、一つ以上の他のプリフォーム層に積み重ねられ、
複数の積み重ねられたプリフォーム層が、前記複合ビームの横幅及び厚さを規定し、
前記カップリングが、一対の隣接する側壁、並びに、第1のクロスビーム、各側壁に中間点で接続された第2のクロスビーム、及び第3のクロスビームを有するセル構造として構成される、
構造要素。
【請求項2】
前記カップリングが無接着剤カップリングである、請求項1に記載の構造要素。
【請求項3】
前記カップリングが機械的一体化である、請求項1に記載の構造要素。
【請求項4】
前記カップリングが前記第1のロッドの長さに沿って延びる、請求項1に記載の構造要素。
【請求項5】
前記カップリングが、前記ロッドの長さに沿って分散された複数のセルを含む、請求項1に記載の構造要素。
【請求項6】
前記セルが、前記ロッドに平行に整列した側壁を含む、請求項5に記載の構造要素。
【請求項7】
前記セルが、前記側壁を横切る一対の
前記クロスビームを含む、請求項6に記載の構造要素。
【請求項8】
第1のクロスビームが前記ロッドの上部に延び、第1のクロスビームが前記ロッドの下部に延びる、請求項7に記載の構造要素。
【請求項9】
前記セルのすべてのセグメントが前記ロッドに係合する、請求項5に記載の構造要素。
【請求項10】
少なくとも一つのロッドが前記カップリング内で摺動可能である、請求項1に記載の構造要素。
【請求項11】
前記側壁と前記クロスビームは、長さと厚さにより定義され、前記側壁が前記クロスビームよりも大きい長さを有し、前記クロスビームが前記側壁よりも大きい厚さを有する、請求項6に記載の構造要素。
【請求項12】
ロッドが、ガラス製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、炭素製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、グラファイト製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、玄武岩製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、並びにセラミック製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービングのうちの一つ以上から作られる、請求項1に記載の構造要素。
【請求項13】
隣接するロッドが
少なくとも各ロッドの長さ
の一部に沿って接触している、請求項1に記載の構造要素。
【請求項14】
隣接するロッドが各ロッドの長さに沿って間隔をあける、請求項1に記載の構造要素。
【請求項15】
横方向に隣接するセルの前記側壁が、互いに間隔をあけ、それらの間に間隙を画定する、請求項
1に記載の構造要素。
【請求項16】
前記カップリングの前記第1のクロスビーム及び前記第3のクロスビームが前記ロッドの上に配置される、請求項
1に記載の構造要素。
【請求項17】
前記カップリングの前記第2のクロスビームが前記ロッドの下に配置される、請求項
1に記載の構造要素。
【請求項18】
前記一対の隣接する側壁が、前記ロッドの上に配置された前記第1のクロスビームに連結された第1の端部と、前記ロッドの下に配置された前記第2のクロスビームに連結された第2の端部とを有する、請求項
1に記載の構造要素。
【請求項19】
前記カップリングの前記第1のクロスビームが、互いに隣接する第1のセル及び第2のセルの共通の境界を画定する、請求項
1に記載の構造要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35USC119の下、2019年2月15日に出願された米国仮出願第62/806,169号の優先権を主張し、当該仮出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示の主題は、強化複合構造を製造するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示の主題は、乗物(陸上又は海上)、建築/建設資材、及び風力ブレード部品などの複合構造を作製する際に使用する複数の剛性強度要素又はロッドの構造プリフォーム層を対象とする。
【背景技術】
【0003】
真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)のための様々な方法及びシステムが、風力タービンブレードなどの重要な構造要素、地上物流車両及び輸送システムなどの高負荷構造、並びに建造物、道路、橋などのインフラストラクチャ部品の製造に使用されるような、大型の厚い複合積層体を含む複合製品を形成するために知られている。これらの構造は、多くの場合、一方向繊維(硬化有機ポリマー、セラミック、又は金属マトリックスにおいて安定化された、ガラス、炭素、アラミド、又は他の高度に整列した合成フィラメント)を含む一軸材料及び多軸材料の両方を利用する高負荷複合積層体を含む。これらの積層体の長期強度(静的条件及び周期的負荷条件下)は、軸方向フィラメントの整列の品質によって決まる。
【0004】
しかしながら、硬化プロセス中に変形(例えば、しわ、反り)が形成されることが多く、これは部分の構造的完全性を損ない、部品の性能を脅かす。さらに、従来の複合作製プロセスは、多くの場合、Iビーム、スパーキャップ、剪断ウェブなどの構造ブレード部品の剛性、強度、疲労寿命を、理想レベル又は最大レベルよりも低く制限する。同様に、粘着付与剤を使用するだけでは、しわの防止にほとんど効果がないことが証明されているが、より高濃度の強化材料を使用すると積層体性能の問題が生じる。また、「ガラス繊維スクリーン」が安定化材料として使用されているが、これは正味の重量の増加及び積層体性能の低下を招き、また平面構成を有していない。
【0005】
従来の方法又はデバイスの欠点のいくつかを以下に挙げる。
・材料の組立て(不織ベールへのロッドの結合)のための高価な資本設備。
・完成品におけるロッド間の間隙における間隔のあけ方が制御困難/制御不可能であり、これは剪断変形に悪影響を与える。材料は金型に適合するように剪断しなければならず、剪断変形によりロッドが衝突してて結び付くと、材料が金型から持ち上がる。
・ロッドの張力及びそれに続く不織ベールへの積層を制御する工業プロセスにより、完成品の長さ方向の整列が連続的に変化する。横方向の湾曲により、剪断ロックアップ(ロッドの衝突)なしで金型に適合する材料の能力が大幅に低下し得る。
・不織ベールにロッドを結び付けるために使用される接着剤により、注入された複合材料の層間剪断が減少する。
・不織ベールにロッドを結び付けるために使用される接着剤は、腐敗しやすく、製品の保存期間が6カ月以下になり得る。
【0006】
したがって、依然として、強度及び安定性を高めるための強化材を、例えば風力タービンブレードのような複合構造を製造する効率的かつ経済的な方法及びシステムと共に提供することに対して需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の主題の目的及び利点は、以下の説明に示され、以下の説明から明らかになると共に、本開示の主題の実践によって理解される。本開示の主題のさらなる利点が、明細書及び特許請求の範囲において、並びに添付図面から特に指摘される方法及びシステムによって、実現され達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様によれば、複合構造の構造要素を形成するためのシステムであって、複合構造が、複合構造の少なくとも一部に沿って延びるように構成され、二つ以上のプリフォーム層を含む複合ビームを含む、システムが提供される。各プリフォーム層は、長手方向に配列され、単一の層内で互いに対して整列した複数の細長いロッドと、第1のロッドを隣接するロッドに接続するカップリングと、を含み、各ロッドが、少なくとも一つの隣接するロッドに隣接し少なくとも一つの隣接するロッドから間隔をあけて配置され、各ロッドが、固化マトリックス樹脂内に固定された一方向の実質的にまっすぐな複数の平行化構造繊維を含んで、硬く完成幾何形状を画定するようになっており、各プリフォーム層が、一つ以上の他のプリフォーム層に積み重ねられ、複数の積み重ねられたプリフォーム層が、複合ビームの横幅及び厚さを規定する。
【0009】
一部の実施形態において、カップリングは無接着剤カップリング、例えば機械的一体化である。カップリングは、第1のロッドの全長に沿って延びるか、又はその一部を選択することができる。
【0010】
一部の実施形態において、カップリングは、ロッドの長さに沿って分散された複数のセルを含む。セルはロッドに平行に整列した側壁を含むことができ、セルは側壁を横切る一対のクロスビームを含み、第1のクロスビームがロッドの上部に延び、第2のクロスビームがロッドの下部に延びる。一部の実施形態において、セルのすべてのセグメントがロッドに係合する。
【0011】
一部の実施形態において、少なくとも一つのロッドがカップリング内で摺動可能である。
【0012】
一部の実施形態において、側壁はクロスビームよりも大きい長さを有し、クロスビームは側壁よりも大きい厚さを有する。
【0013】
一部の実施形態において、ロッドは、ガラス製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、炭素製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、グラファイト製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、玄武岩製の布、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービング、並びにセラミック布製の、メッシュ、繊維、糸及び/又はロービングのうちの一つ以上から作られる。
【0014】
一部の実施形態において、隣接するロッドは、各ロッドの全長に沿って接触しているか、又はその選択位置のみで接触する。
【0015】
一部の実施形態において、隣接するロッドは各ロッドの長さに沿って間隔をあける。
【0016】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が例示的であり、特許請求される本開示の主題のさらなる説明を提供することを意図していることが理解される。
【0017】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の主題の方法及びシステムを図示しさらなる理解をもたらすために含まれる。図面は、説明と共に、本開示の主題の原理を説明するのに役立つ。
【0018】
本明細書に記載されている主題の様々な態様、特徴、及び実施形態の詳細な説明が、以下に簡単に説明される添付図面を参照して提供される。図面は例示的であり、必ずしも縮尺通りではなく、明確にするために、いくつかの構成要素及び特徴が誇張されている。図面は、本主題の様々な態様及び特徴を示し、本主題の一つ以上の実施形態又は例を全体的又は部分的に示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】下地シートに連結された、複合積層体の安定化のための複合ロッドの例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】
図1に示す例示的な実施形態の拡大図である。
【
図3】本開示の主題による、編まれた縦一方向ガラス繊維製品の例示的な実施形態を示す図である。
【
図4】本開示の主題による、完成構造部品を作成するために積み重ね、注入することのできる、前駆となる布に編み込まれた予備硬化ロッドの例示的な実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で、添付図面に例を示す、本開示の主題の例示的な実施形態に詳細に言及する。本開示の主題の方法及び対応するステップについて、システムの詳細な説明と併せて説明する。
【0021】
本開示は、軽量不織の幅広い品物にロッドを結合することによって組み立てられる、大量(すなわち、樹脂に対する繊維の含有率、例えば、通常>65%)の予備硬化繊維強化ポリマー支持要素(又は「ロッド」)の使用を含む製造プロセスに関する。これにより得られる材料は、一定の幅をなすように組み立てることができ、任意の長さで巻かれ、所望の形状及び長さで供給され得る層として機能することができる。複数の層を積み重ね、樹脂を注入して、高強度ビームを作成することができる。各層の長さを変化させることにより、例えば、最新の風力タービンブレード設計のためのスパーキャップとして適切なテーパビームを積層することができる。このようなロッド及び支持層の例示的な構造は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,540,491号に見られる。
【0022】
組立プロセスは、円柱使用と、それに続く軽量不織(例えば、ポリエステル)ベールへの多数の(所定の)予備硬化ロッド要素の取付けとを含む。このプロセスは、予備硬化ロッドが不織層に結び付けられる材料形態を作成する。材料は、各ロッド間に所定の空間/間隙を有するように設計されるが、従来の方法では、製造中にその空間を維持することは非常に困難である。注入用の金型に適合するための湾曲、ねじれ、及び横方向変位に対応するように生じ得る剪断変形の量は、ロッド間で使用可能な間隔/間隙に制限される。実際には、均一な張力及び均一な間隙を有するポリエステル不織布にロッドを付着させることは、従来の技術では不可能である。結果として、剪断変形が大幅に制限されてスパーキャップの一般的な設計が不可能になり、材料の厳しい仕様を満たすためのスクラップ率が、許容できないレベルまで費用を上げる。
【0023】
加えて、ポリエステルベールにロッドを付着させるために接着剤を採用する従来の技術は、スパーキャップ成形プロセスで注入エポキシ樹脂から作成された複合材料の層間剪断特性を低下させるゴム系接着剤の種類から選択される。また、接着剤は6カ月未満の保存期間で腐敗し、その後、ロッドは不織ベールに付着しなくなり、材料が使用不能になる。
【0024】
本開示は、ロッドのスプール可能な軸方向強化層への組込みによって、これらの基本的な課題を解決する。本開示の態様によれば、ロッドは軽量織編用糸(例えば、ポリエステル、ガラス、アラミド、炭素など)の編み構造に捕捉され、ロッドは非常に正確な編み目の下で層状に拘束及び保持され、各ロッドを効果的に整列してロックする。編み目はロッドを囲むが、ロッドに付着しないため、ロッドは隣接するロッドに対して摺動することができ、従来の製品と比較してはるかに大きい剪断変形が可能になる。
【0025】
本開示の態様によれば、予め製造された複合材料ロッド(又は、六角形、楕円形、円形などを含む他の角柱直線形状)を利用するシステム及び技術が提供され、この複合材料ロッドでは、高度に整列した連続的な一軸繊維を含む完全硬化有機ポリマーマトリックスにおいて安定化されたフィラメントが、平面配置に組み立てられて材料のシートを形成する。隣接するロッド間の間隔又は間隙は、所定の範囲、例えば、200ミクロン未満及び/又は約2度未満の角度で維持することができる。ロッド200のアセンブリは、任意の所望の幅及び長さで形成することができる。
【0026】
図1、
図2は、機械的カップリング300を介してキャリアシート100上に組み立てられたロッド200を示す。本開示の態様によれば、
図4に示すように、ロッド200(各々が樹脂204を介して結合された複数の整列した繊維/フィラメント202を含む)を布300と接合し(例えば、織る又は他の方法で編む)、所望の厚さの構造を形成するように積み重ねることができる。このアセンブリは、キャリアシートを必要とせずに形成することができる。キャリアシートが存在しない場合、連結されたロッドの積重ねアセンブリは、積重ねプリフォーム層と個々のロッド200との間の液体結合樹脂の浸透を容易にして流れを可能にするように露出したままであってよい。
【0027】
ロッド200は、柔軟性のある布300、例えば、デニール編みポリエステル糸又はアクリル、ナイロン、若しくはアラミドなどの他の材料と連結することができる。また、ロッド200は、各ロッドが隣接するロッドに対して相対運動(例えば、軸方向変位)が可能であるように、緩く連結される。
【0028】
一部の実施形態において、ロッド200は平面構成を有して構成することができ、すなわち、ロッド200は均一な直径/高さを有する。ロッドは、このように機械的カップリング300によって提供される厳密に制御された間隔と組み合わせて均一な構成(例えば、直径、長さ)を有することができ、組み立てられたプリフォーム製品のロッド間の空間/間隙は一定である。
【0029】
一部の実施形態において、ロッド200を、各ロッドが隣接するロッドに接触している状態で当接するように位置決めすることができる。採用されるロッド200の特定の配置に関係なく、ロッド間の相対的な間隔又は間隙は均一であり、プリフォーム構造のあらゆる操作を通じて維持される。同様に、ロッドの向き(すなわち、一方向構成)は均一であり、プリフォーム構造のあらゆる操作を通じて維持される。隣接するロッドに接合されると、単一のロッドの意図しない外れが避けられる。
【0030】
ロッド200は、機械的カップリング300、例えば編み部(knitting)を介して互いに組み立てられ、整列され、連結される。編み部は、ロッド200の長さに沿って分散された複数の「セル」を含むことができる。
図3Aに示すように、各セルは、同一方向に沿って延びるようにロッドに整列された側壁302a、302bを含むことができる。複数のクロスビーム304a、304b、304cが、例えば図示のように90度の角度で、側壁間を横切ることができる。本明細書に開示のセル連結技術は、部品間に安定した一体化を提供するが、(織り技術の場合と同様に)切ったときにほどけないという点で、代替(例えば、ジグザグ織りパターン)技術よりも優れている。
【0031】
セルは、第1の(又は上部)クロスビーム304a、第2の(又は中間)クロスビーム304b、及び第3の(又は下部)のクロスビーム304cと、一対の側壁302とを含むことができる。側壁302は、機械的カップリング、例えば編み部を介してクロスビーム304に接合される。これらの連結位置には接着剤がなくてよい。
図3、
図3Aに示す実施形態において、隣接するセルの側壁302間に間隙又は空間を設けることができる。これに対して、クロスビーム304は、(垂直に)隣接するセルのクロスビーム304間に間隙又は空間がないように構成することができる。言い換えると、垂直に隣接するセルは、
図3Aのクロスビーム304aがセル305の上部クロスビームであると共にセル306の下部クロスビームであるように、共通のクロスビームを共有することができる。
【0032】
個々のセルを画定する隣接する側壁302a、302bは、共通の(例えば、概ね平行な)方法で配向することができ、最終組立製品まで変形中を通じて側壁が整列したままであるようにその向きを維持する。同様に、個々のセルを画定する隣接するクロスビーム304a、304b、304cは、共通の(例えば、概ね平行な)方法で配向することができ、最終組立製品まで変形中を通じてクロスビームが整列したままであるようにその配向を維持することができる。加えて、隣接するセルの側壁302は、複数のセルに沿って延びる側壁302が、最終組立製品まで変形中を通じて直線状であって歪み又は変位がないままであるように、整列したままであってよい。同様に、隣接するセルのクロスビーム304は、複数のセルにわたって延びるクロスビーム304が、最終組立製品まで変形中を通じて直線状であって歪み又は変位がないままであるように、整列したままであってよい。
【0033】
一部の実施形態において、横方向に隣接するセルの側壁302は互いに向かって収束することができる。例えば、
図3Aに示すように、セル305の側壁302bは、隣接するセル307の対応する側壁302aに収束するように、クロスビーム304bから延びることができる。これにより、横方向に隣接するセル(305、307)間に概ね台形の間隙又は空間が生じることによって、個々の強度要素又はロッド200の間隔をあけることができる。セル構造は、本明細書に記載のように、比較的緩いロッド200の一体化を形成する。隣接するセル間のこれらの空間は、ロッド200の曲げ及びねじれ/湾曲運動能力を高めるのに役立ち、また個々のロッド200間及び(最終製品が複数の層を含む実施形態において)積み重ねた又は層状のプリフォーム層間の結合樹脂の浸透を容易にする。
【0034】
第1のクロスビーム304aは、ロッド200の上部に延びることができ、第2のクロスビーム304bはロッド200の下部に延びることができ、第3のクロスビーム304cはロッド200の上部に延びることができる。したがって、クロスビーム304は、ロッド200に対してそれらの位置が交互になって、隣接する各クロスビームがロッド200に対して異なる位置又は交互の位置(例えば、上又は下のいずれか)に位置決めされるようにすることができる。したがって、織りパターンとは対照的に、本明細書に開示のセル連結構造は、機械的カップリング300がロッド200の上及び/又は下に波打つ又は振動することを必要としない。代わりに、機械的カップリングは単一の平面にとどまり、ロッド200に対して固定関係で位置決めされ(例えば、クロスビーム304bはロッド200の下にとどまり、クロスビーム304a、304cはロッド200の上にとどまる)、かつ各ロッドがセル内で長手方向に動く、例えば摺動することを可能にする。
【0035】
機械的カップリング302a、302b及び304a、304b、340cのすべてのセグメントがロッドに係合し、かつロッドがカップリング内で摺動することができる十分な自由を可能にすることができる。一部の実施形態において、機械的カップリング材は、均質な構成を有して形成される。他の実施形態において、セルは非均質構成を有して形成されてよく、例えば、側壁302はクロスビーム304よりも大きい長さを有することができ、クロスビーム304は側壁302よりも大きな厚さを有して形成されてよい。
【0036】
編み部300を介してロッド200を接合することは、基礎となるキャリアシートに縫い付けることとは異なり、部分の縁部(例えば、側部)が編み部材300によって完全に取り囲まれて捕捉され、これにより、縁部の縫い目がほどけることによってロッド200が落ちることを防ぐという点で有利である。
【0037】
加えて、本明細書に開示のプリフォーム層は、プリフォームが連続ウェブで提供される別の隣接するプリフォーム層からプリフォームを分離することができる、例えば、切り取ることができるセルの境界又は位置を示す指定を含むことができる。このような指定によっても、積重ね形成の組立て中に積重ね形成内のプリフォーム層の位置決めを容易にすることができる。
【0038】
本開示は、積み重ね、注入して完成構造部品を作成することができる、有限の幅及び任意の長さの前駆体に編み込まれた予備硬化ロッド(例えば、ガラス、炭素等の合成繊維とポリマー樹脂とを組み合わせて、硬く高度に整列した複合要素を作成する)を提供する。この完成構造部品は、ほぼ完璧な繊維の整列を有し、繊維の歪み、波、又はしわのない高い軸剛性を示す。加えて、整列したロッドの積重ねを結合する未硬化樹脂が少量しかないので、完成構造部品にポリマー樹脂を注入し、迅速に硬化させることができる。少量の樹脂は、熱歪み、マトリックス割れなどを防ぐ少量の発熱を生じさせる。これにより、サイクル時間が向上し、生産能力が大幅に向上する。
【0039】
本開示の態様によれば、ロッドのアセンブリを、「SCRIMP」プロセス(内容全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,902,215号に開示されている)の一部としてのドライプリフォームレイアップの部品として統合することができる。このような設定では、ロッド200は、樹脂が通る又は周りを流れる多孔質媒体を提供し、また、プリフォームに安定性を提供してプリフォームがしわになる又は変形する傾向を軽減する。加えて、これらの材料を、厚い積重ねで賢明に使用することができる(費用を最小限に抑えるが、積層体の安定性の効果を最適化するように点在させる)。一部の実施形態において、ロッド200のアセンブリを、例えば、ブレードの耐荷重部分に、例えば、ブレードのスパーキャップ又は根本部分に採用することができ、本開示の使用により、スパーキャップのしわの形成の結果としてのスクラップを低減又は排除し、スパーキャップのより迅速な加熱及び硬化を可能にする。
【0040】
機械的カップリング300(例えば、編糸)の張力の制御は、編まれている縦ロッド200の均一な張力を維持するように監視及び調整することができる。構成に接着剤が使用されていないので、材料は腐敗しにくく、スプール材料の保存期間は無限である。一部の実施形態において、カップリング300は、隣接するセル間に延びる連続部材であってよい。これにより、カップリング300の一端に加わる力、例えば張力を、その特定のカップリングの一部によって形成されるすべてのセルに分散させることができる。したがって、本開示は、スクラップ率/不良品発生率が略ゼロで、風力タービンブレードのより一般化されたスパーキャップ設計で使用可能な材料形態を有する、組み立てられた強化材を作製するために採用することができる確実な工業プロセスを提供する。
【0041】
例示的な実施形態:スパーキャップ
本開示の主題に関する一つの例示的な適用は、注入された一方向スパーキャップに材料を部品としてとして配置又は挟み込むことのできる設定である。本実施形態において、主に一方向非捲縮布(non-crimp fabric)(例えば、軸方向に整列した繊維の割合が88%超)を金型に敷き、安定化マトリックス(例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のポリマー)を注入する。通常、得られる構造又はスパーキャップは、複数のプライ(ply)(多くの場合、60以上の個々のプライ)から構成され、エポキシ樹脂が注入される。本明細書で言及するプリフォーム構造は、所定数の従来の非捲縮布間の構造(すなわち、シート100、ロッド200、カップリング300)を「挟み込む」ことによって適用することができる。各プライの縁部は、上部プライ/下部プライに対して重なっていても、ずれていてもよく、あるいは、各プライの縁部を垂直に整列させてもよい。プライの数は、異なる大きさ、形状、及び/又は重量を有する様々な複合製品を形成するように調整することができ、組み立てられた製品の費用及び性能要件に基づいて決定される。その結果、安定した変形耐性を有し、かつ迅速な加工及び硬化を提供する構造部品が得られる。本開示のさらなる利点は、この技術が、動作強度の大幅な低下をもたらし得る、非平面繊維波又はしわが製品に形成されるリスクを排除することである。
【0042】
例示的な実施形態:外板部品間の挟み込み層
別の例示的な実施形態において、プリフォーム構造を、風力タービンブレードの外板部品に、特に根元に最も近いブレードの領域に、ブレードの円筒形の根元から最大弦幅までの移行部を通る翼長方向で挟み込むことができる。この領域の外板の厚さは(先端部分と比較して)大きく、この領域の表面の複合曲線との連結により、ブレードのこれらの高負荷領域において非平面波又はしわを生じさせることが多い。本実施形態において、プリフォーム構造のプライは、様々な所定の回転角度で(固定軸、例えば、翼長方向を向くピッチ軸に対して)適用することができる。非捲縮布の各プライの縁部は、通常、直線状に整列及び配列されているが、本開示の利点は、プライの「剪断能力(shearability)」が非直線状の輪郭を可能にする柔軟性を提供することである。向きは回転軸に沿って決定され、この回転軸は、面外力を最小化するが、積層体に安定性を提供し、局所化された非平面波及びしわの形成を防ぐ。これにより、ブレードの相対的な強度が向上すると共に、積層体の欠陥の形成による部分間の変動のリスクが排除される。本実施形態にプリフォーム構造を組み入れることは、個々の補強ロッド200を構成する角柱ビームの大きさ及び/又は厚さに相関する。例えば、より薄い(プライのz方向に対して)ロッドが、この例示的な実施形態で使用される。
【0043】
したがって、本明細書に開示された高度な編みプロセスを通じて、多様な整列した予備硬化一方向繊維強化ポリマー要素を捕捉することによって、材料層を効果的に作成することができ、この材料層は、安定し(整列が保持され)、横方向に多孔質で(すなわち、そのような層の積重ねの厚さを通る結合樹脂の流れを可能にする)、編糸を通る一方向材料の滑りによって、ねじれ及び剪断を含む複雑な表面に適合するように剪断可能である。
【0044】
UD(一方向)ガラス繊維織物用に開発された機器を使用する複合製品の製造を、高速で低リスクの製造のためのプロセスで「縦」端部として本明細書に開示の予備硬化要素を受け入れるように、修正及び改良することができる。これにより、低速でスクラップ材料の割合が高く、ブレードの性能を最適化するために望まれる最も一般化されたスパーの形状に適合するために必要な柔軟性のある材料システムを作成しない現在の解決策と比較して、加工費が最小限に抑えられる。
【0045】
以下で特許請求される特定の実施形態に加えて、本開示の主題は、以下で特許請求される従属特徴と上記で開示された特徴との他の可能な組合せを有する他の実施形態にも向けられる。そのため、従属請求項で提示され上記で開示された特定の特徴は、本開示の主題が他の可能な組合せを有する他の実施形態も特に対象とするものとして認識されるべきであるように、本開示の主題の範囲内で他の方法で互いに組み合わせることができる。したがって、本開示の主題の特定の実施形態についての上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。上記の説明は網羅的なものではなく、本開示の主題を開示された実施形態に限定することを意図するものではない。
【0046】
当業者には、本開示の主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本開示の主題の方法及びシステムに様々な修正及び変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、本開示の主題は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある修正及び変更を含むことが意図されている。