(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】水性懸濁液中の無溶媒混合プロセスによって産生される機能的にコーティングされたAPI粒子の保存
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20240830BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240830BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240830BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240830BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240830BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240830BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240830BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/44
A61K47/04
A61K47/42
A61K47/26
A61K31/192
A61K31/167
(21)【出願番号】P 2021549372
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 GB2020050422
(87)【国際公開番号】W WO2020169991
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-20
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519135460
【氏名又は名称】キャタレント・ユーケー・スウィンドン・ザイディス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロザリーン・マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ホワイトハウス
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533162(JP,A)
【文献】特表2008-526827(JP,A)
【文献】米国特許第05558880(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
API粒子をコーティングする1つ以上の変形された構成要素を含む第1のコーティングであって、前記1つ以上の変形された構成要素はカルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を15~30質量%含む、第1のコーティング;及び
前記第1のコーティング
に部分的に埋め込まれた及び/又は埋め込まれた疎水性ヒュームドシリカを含む第2のコーティング;
を含む、コーティングされたAPI粒子であって、前記コーティングされたAPI粒子は0.5~10質量%の疎水性ヒュームドシリカを含
み、前記疎水性ヒュームドシリカはシリカを含まないAPIと比較してより遅いAPIの溶解特性を提供する、コーティングされたAPI粒子と、
マトリックス形成剤と、
構造形成剤と、
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記第1のコーティングが、前記API粒子の味をマスクするように構成される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記マトリックス形成剤が、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記マトリックス形成剤が、ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記マトリックス形成剤が、ゼラチンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記構造形成剤が、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記構造形成剤が、マンニトールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
薬学的組成物
を調製する方法であって、
前記薬学的組成物が、
API粒子、
1つ以上の変形された構成要素を含む第1のコーティングであって、前記1つ以上の変形された構成要素はカルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を15~30質量%含む、第1のコーティング、及び
前記第1のコーティングに部分的に埋め込まれた及び/又は埋め込まれた疎水性ヒュームドシリカを含む第2のコーティング、を含む、コーティングされたAPI粒子であって、前記コーティングされたAPI粒子は0.5~10質量%の疎水性ヒュームドシリカを含
み、前記疎水性ヒュームドシリカはシリカを含まないAPIと比較してより遅いAPIの溶解特性を提供する、コーティングされたAPI粒子と、
マトリックス形成剤と、
構造形成剤と、を含み、
前記薬学的組成物が、前記コーティングされたAPI粒子を、前記マトリックス形成剤及び前記構造形成剤と溶媒とを含むマトリックス溶液/懸濁液中に混合して薬学的懸濁液を形成し、前記コーティングされたAPI粒子を含む前記薬学的懸濁液を成形型に投与することによって調製される、
方法。
【請求項9】
前記第1のコーティングが、前記API粒子の味をマスクするように構成される、請求項8に記載の
方法。
【請求項10】
前記マトリックス形成剤が、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む、請求項8または9に記載の
方法。
【請求項11】
前記マトリックス形成剤が、ポリペプチドを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項12】
前記マトリックス形成剤が、ゼラチンを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項13】
前記構造形成剤が、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項14】
前記構造形成剤が、マンニトールを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項15】
薬学的組成物を調製する方法であって、
API粒子を第1のコーティング材料の粒子と組み合わせることであって、前記第1のコーティング材料が、1つ以上の変形可能な構成要素を含む、前記組み合わせることと、
API粒子と前記第1のコーティング材料の前記粒子との前記組み合わせにエネルギーを適用して、前記API粒子の表面上に前記第1のコーティング材料の前記粒子の離散層を含むAPI粒子の規則混合物を形成することと、
前記1つ以上の変形可能な構成要素を変形させてコーティングされたAPI粒子を形成するために、API粒子及び前記第1のコーティング材料の粒子の前記規則混合物にエネルギーを適用することであって、前記コーティングされたAPI粒子は、前記API粒子の各々を囲む前記第1のコーティング材料の連続フィルムを含む、前記適用することと、
前記コーティングされたAPI粒子を
シリカを含む第2のコーティング材料の粒子と組み合わせることと、
前記第2のコーティング材料の粒子を有する前記コーティングされたAPI粒子にエネルギーを適用して、前記第1のコーティング材料に前記第2のコーティング材料を少なくとも部分的に埋め込み
又は埋め込み、第2のコーティングを含むコーティングされたAPI粒子を形成すること
であって、前記シリカは、シリカを含まないAPIと比較してより遅いAPIの溶解特性を提供する、前記適用することと、
前記第2のコーティングを含む前記コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記第1のコーティング材料が、前記API粒子の味をマスクするように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液を予め形成された成形型に投与することを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のコーティング材料の前記1つ以上の変形可能な構成要素が、蝋を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記蝋が、カルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス溶液/懸濁液が、マトリックス形成剤及び構造形成剤を含む、請求項15~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記マトリックス形成剤が、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む、請求項2
0に記載の方法。
【請求項22】
前記マトリックス形成剤が、ポリペプチドを含む、請求項2
0または2
1に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックス形成剤が、ゼラチンを含む、請求項2
0~2
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記構造形成剤が、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む、請求項2
0に記載の方法。
【請求項25】
前記構造形成剤が、マンニトールを含む、請求項2
0または2
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月22日に出願された米国仮出願第62/809,287号の優先権を主張し、この全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
これは、薬学的懸濁液中で機能的にコーティングされた活性薬学的成分(API)を保存することに関し、より具体的には、無溶媒混合プロセスによって産生され、経口投与時にAPIの放出を遅らせるように製剤化された機能的にコーティングされたAPIのコーティングを保存することに関する。
【背景技術】
【0003】
薬学的組成物は、典型的には、活性薬学的成分(API)ならびに1つ以上の不活性成分の両方を含む。APIは、生物学的に活性であり、患者の症状、疾患、障害、及び/または病気に直接影響を及ぼすように設計されている。一方、薬学的組成物の不活性成分(複数可)は、薬学的に不活性であり、長期安定化の改善、固体製剤の充填もしくは希釈、薬物吸収の促進、液体製剤の粘度の調整、溶解性の向上、及び/または薬学的組成物の製造の支援を含むが、これらに限定されない、様々な目的に使用され得る。
【0004】
加えて、いくつかの不活性成分を使用して、APIの味をマスクすることができる。多くのAPIは、口腔内に溶解させる場合、苦味、灼熱感、及び痺れなどの不快な感覚受容性を示すことが知られている。例えば、いくつかの経口投与薬学的組成物は、水なしでの投与を可能にするように口内に分散するように設計されている。これらのタイプの経口投与薬学的組成物は、小児患者、老人患者、動物患者、及び/または嚥下困難を有し得る他のタイプの患者を標的とし得る。これらのタイプの経口投与薬学的組成物の場合、不活性成分を使用して、APIの味をマスクするための「機能的コーティング」を形成することができる。
【0005】
不活性成分を使用して、APIを湿潤コーティングまたは乾燥コーティングすることによってAPIの味をマスクし、APIを囲む機能的コーティングを産生して、それが口腔内におけるAPIの放出を防止するようにしてもよい。湿潤粒子コーティングでは、不活性成分(ポリマー及び添加剤)を溶媒または水に溶解または分散させて、懸濁液または溶液を形成する。この懸濁液または溶液をAPI粒子の表面上に噴霧し、溶媒または水が蒸発するとコーティングフィルムを形成してもよい。湿潤粒子コーティングのための技術の例としては、マイクロカプセル化、流体床コーティング、溶媒蒸発、噴霧乾燥、パンコーティング等が挙げられる。乾燥粒子コーティング(無溶媒コーティングとも呼ばれる)において、API粒子は、不活性成分(ポリマー及び添加剤)の微粒子で機械的にコーティングされて、粒子複合材を形成する。乾燥粒子コーティングの例としては、ホットメルトコーティング、超臨界コーティング、インパクションコーティング、静電コーティング等が挙げられる。味マスキング不活性成分でコーティングされたAPI粒子は、嚥下困難を有するか、またはそうでなければ否定的な患者経験及び低コンプライアンスをもたらすであろう味に対する感受性を有する患者に、特に、口内で溶解または崩壊する薬学的組成物に対して、より快適な経験を提供することができる。
【0006】
例えば、乾燥した無溶媒混合方法は、APIを不活性成分(複数可)と混合するために高エネルギー振動または音響共鳴を使用し得る。さらに、APIを機能的コーティングでコーティングすることは、薬学的組成物の分散中に患者の口内におけるAPIの放出を一時的に遅らせる場合があるが、それでも、コーティングなしで放出されるAPIの少なくとも90%が、吸収のための適切な量の時間内に機能的コーティングされたAPIから放出されるのを可能にする。味マスキング不活性成分中にAPIをコーティングすることにより、機能的にコーティングされたAPIの溶解速度を制御することができ、APIの大部分が、機能的にコーティングされたAPIが患者の胃に入った後まで放出されないようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製造プロセス中に機能的にコーティングされたAPIの機能的コーティングを保存するために製剤化される薬学的組成物、及び薬学的組成物を調製するための方法が提供される。機能的にコーティングされたAPI粒子をしばしば溶液または懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成する。薬学的懸濁液は、投与可能な薬学的製品(すなわち、薬学的組成物)を形成するための正確な投与を可能にする。典型的には、機能的にコーティングされたAPI粒子を懸濁液に組み込むのに必要な剪断力は、機能的コーティングを浸食させる可能性がある。このコーティングの浸食は、機能的コーティングの特性を破壊または損傷し得る。したがって、浸食されたコーティングを有する機能的にコーティングされたAPIは、患者に経口投与されたときに、増加した溶解速度及び低下した味マスキング特性を経験し得る。
【0008】
しかしながら、本明細書に提供される薬学的組成物、及び薬学的組成物を調製するための方法は、薬学的懸濁液中の機能的にコーティングされたAPIのコーティングを疎水性ヒュームドシリカで保存することを含む。具体的には、疎水性ヒュームドシリカは、機能的にコーティングされたAPI粒子を囲む、及び/またはその中に埋め込まれた保護層を提供することができる。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPI粒子を産生するための無溶媒プロセスは、第1のコーティングを含むAPIを産生し得る。いくつかの実施形態によれば、疎水性ヒュームドシリカを、無溶媒混合プロセス中に添加して、機能的にコーティングされたAPI粒子を囲む、及び/またはその中に部分的もしくは完全に埋め込まれた第2の保護コーティングを産生することができる。
【0009】
さらに、第2の保護コーティングは、機能的にコーティングされたAPIとマトリックス溶液/懸濁液との間の相互作用を制限し得、その結果、機能的にコーティングされたAPIの、マトリックスの性能特性に対する影響が最小限に抑えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、薬学的組成物は、API粒子、API粒子をコーティングする1つ以上の変形された構成要素を含む第1のコーティング、第1のコーティングの上のシリカを含む第2のコーティング、マトリックス形成剤、及び構造形成剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、第1のコーティングは、API粒子の味をマスクするように構成される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、10~30重量%の第1のコーティング及び0.5~10重量%の第2のコーティングを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、3~15重量%もしくは4~10重量%の構造形成剤、及び/または3~15重量%もしくは4~10重量%のマトリックス形成剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、第1のコーティングの1つ以上の変形された構成要素は、蝋を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、蝋は、カルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ポリペプチドを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ゼラチンを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトールを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、薬学的組成物は、API粒子、1つ以上の変形された構成要素を含む第1のコーティング、及びシリカを含む第2のコーティング、マトリックス形成剤、及び構造形成剤を含むコーティングされたAPI粒子を含み、薬学的組成物は、コーティングされたAPI粒子を、マトリックス形成剤及び構造形成剤と、溶媒とを含むマトリックス溶液/懸濁液中に混合して薬学的懸濁液を形成し、コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液を成形型に投与することによって調製される。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、第1のコーティングは、API粒子の味をマスクするように構成される。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、第1のコーティング材料の1つ以上の変形された構成要素は、蝋を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、蝋は、カルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ポリペプチドを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ゼラチンを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトールを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を調製する方法が提供され、本方法は、API粒子を第1のコーティング材料の粒子と組み合わせることであって、第1のコーティング材料が、1つ以上の変形可能な構成要素を含む、組み合わせることと、API粒子と第1のコーティング材料の粒子との組み合わせにエネルギーを適用して、API粒子の表面上の第1のコーティング材料の粒子の離散層を含むAPI粒子の規則混合物を形成することと、API粒子と第1のコーティング材料の粒子との規則混合物にエネルギーを適用して、1つ以上の変形可能な構成要素を変形させて、コーティングされたAPI粒子を形成することであって、コーティングされたAPI粒子が、API粒子の各々を囲む第1のコーティング材料の連続フィルムを含む、適用することと、コーティングされたAPI粒子を第2のコーティング材料の粒子と組み合わせて、第2のコーティングを含むコーティングされたAPI粒子を形成することと、第2のコーティングを含むコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成することと、を含む。本方法のいくつかの実施形態では、第1のコーティング材料は、API粒子の味をマスクするように構成される。本方法のいくつかの実施形態では、本方法は、懸濁液を予め形成された成形型に投与することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、第1のコーティング材料の1つ以上の変形可能な構成要素は、蝋を含む。本方法のいくつかの実施形態では、蝋は、カルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、または合成蝋のうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、第2のコーティング材料は、シリカを含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液は、マトリックス形成剤及び構造形成剤を含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、水溶性材料、水分散性材料、ポリペプチド、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びアカシアのうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ポリペプチドを含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ゼラチンを含む。本方法のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、及びシクロデキストリンのうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、構造形成剤は、マンニトールを含む。
【0013】
ここで、本発明は、単なる例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】いくつかの実施形態による、変形可能なコーティング材料の粒子で機能的にコーティングされたAPI粒子を示す。
【
図1B】いくつかの実施形態による、変形可能なコーティング材料の連続フィルム層(すなわち、第1の機能的コーティング)でコーティングされたAPI粒子を示す。
【
図1C】いくつかの実施形態による、連続フィルム層(すなわち、第2の保護コーティング)の表面を囲む、及び/またはそこに部分的に埋め込まれた、及び/または埋め込まれた第2のコーティング材料の粒子とともに、変形可能なコーティング材料の連続フィルム層(すなわち、第1の機能的コーティング)で機能的にコーティングされたAPI粒子を示す。
【
図2】コーティングされていないAPI粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図3】いくつかの実施形態による、機能的にコーティングされたAPI粒子のSEM画像を示す。
【
図4】いくつかの実施形態による、疎水性ヒュームドシリカの第2の保護コーティングを含む、機能的にコーティングされたAPI粒子のSEM画像を示す。
【
図5】いくつかの実施形態による、疎水性ヒュームドシリカの第2の保護コーティングを含む、機能的にコーティングされたAPI粒子を産生する方法を示すフローチャートである。
【
図6】いくつかの実施形態による、異なる濃度のシリカの第2の保護コーティングを含む、機能的にコーティングされたAPIのd10粒径の評価を提供するグラフである。
【
図7】いくつかの実施形態による、異なる濃度のシリカの第2の保護コーティングを含む、機能的にコーティングされたAPIのd50粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図8】いくつかの実施形態による、異なる濃度のシリカの第2の保護コーティングを含む、機能的にコーティングされたAPIのd90粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図9】いくつかの実施形態による、様々なレベルの疎水性ヒュームドシリカを有するカルナウバ蝋でコーティングされたイブプロフェンの低体積溶解のグラフを示す。
【
図10】いくつかの実施形態による、様々なレベルの疎水性ヒュームドシリカを含むサゾール(合成)蝋でコーティングされたイブプロフェンの低体積溶解のグラフを示す。
【
図11】いくつかの実施形態による、様々なレベルの疎水性ヒュームドシリカを有するカルナウバ蝋でコーティングされたパラセタモルの低体積溶解のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
乾燥した無溶媒混合プロセスによって産生され、マトリックス溶液/懸濁液中に混合されて、薬学的懸濁液を形成する、機能的にコーティングされたAPI粒子を保存するために製剤化された薬学的組成物、及び薬学的組成物を調製するための方法の例示的な実施形態を本明細書に記載する。具体的には、本明細書に提供される薬学的組成物、及び薬学的組成物を調製するための方法は、コーティングプロセス中に疎水性ヒュームドシリカを添加して、機能的にコーティングされたAPI粒子の機能性(または「第1のコーティング」)を囲む、及び/またはその中に部分的もしくは完全に埋め込まれた保護層を提供することを含んでもよい。この疎水性ヒュームドシリカ層(または「第2の層」)の追加は、機能的にコーティングされたAPI粒子の第1のコーティング層に保護層を提供することができ、機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液と混合するために必要な剪断力からの第1のコーティング層の浸食を最小限に抑えることができる。
【0016】
一般に、API粒子をコーティングするための無溶媒混合プロセスは、コーティング材料をAPI粒子と混合して、機能的にコーティングされたAPI粒子を産生することを含む。次いで、機能的にコーティングされたAPI粒子に、機械的及び/または熱的に応力印加して変形可能なコーティング材料を変形させ、API粒子を囲む連続フィルムを作成する。次いで、機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に配置して、薬学的懸濁液を形成する。機能的にコーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液を、ブリスターパックなどの予め形成された成形型に投与し、さらに処理して、分配可能な薬学的組成物(例えば、凍結乾燥剤、ウエハ、錠剤等)を産生することができる。いくつかの実施形態では、分配可能な薬学的組成物は、口内分散性産生物であり得る。理想的には、最小量(もしあれば)の最終の分配可能な薬学的組成物のAPIが、経口投与の最初の数分以内に溶解する。このAPI放出の遅延または大幅な低減は、口内分散性産生物が患者の口内にあるときに、APIの味をマスクすることを可能にする。代わりに、APIは、薬学的組成物が胃腸管に入ると、放出することができる。
【0017】
しかしながら、機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液と混合すると、マトリックス溶液/懸濁液中に粒子を混合するために必要な剪断力は、API粒子の機能的コーティングを浸食する可能性がある。コーティングの浸食は、機能的コーティングの特性を破壊または損傷する可能性がある。例えば、機能的コーティングの浸食は、機能的コーティングの任意の味マスキング特性を破壊または損傷し得、APIが口腔内で溶解を受けることを可能にする。
【0018】
したがって、疎水性ヒュームドシリカは、下流処理を補助するために機能的にコーティングされたAPIのフロー助剤として使用されるだけでなく、機能的にコーティングされたAPI粒子を囲む、及び/またはその中に部分的もしくは完全に埋め込まれた疎水性バリア層を提供するために使用され得ることも発見されている。具体的には、疎水性ヒュームドシリカによって形成された疎水性バリア層は、薬学的懸濁液の調製及び機能的にコーティングされたAPI粒子の他の下流処理の間、機能的にコーティングされたAPI粒子の1つ以上の下層コーティングを保護することができる。したがって、本明細書に記載されるいくつかの実施形態によるAPI粒子は、第1の機能的コーティング及び第2の保護コーティングを有してもよい。
【0019】
しかしながら、本明細書に提供されるいくつかの薬学的組成物、及び薬学的組成物を調製する方法は、第1のコーティング及び第2のコーティングより多くを含んでもよい。例えば、いくつかの薬学的組成物及びそれを調製する方法は、3、4、5、6つ、またはそれ以上のコーティングを含んでもよい。したがって、本明細書で使用される場合、「第1のコーティング」及び「第2のコーティング」という用語は、狭義に解釈されるべきではない。本明細書で使用される場合、「第1のコーティング」という用語は、API粒子の機能的コーティングを指し、「第2のコーティング」は、シリカを含む保護コーティングを指す。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIは、「第1のコーティング」と「第2のコーティング」との間の1つ以上のコーティング層を有し得る。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIは、APIと「第1のコーティング」との間に1つ以上のコーティング層を有し得る。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIは、「第2のコーティング」の上に1つ以上のコーティング層を有し得る。
【0020】
本明細書に提供される薬学的組成物を調製する組成物及び方法は、乾燥無溶媒プロセスを使用して産生される機能的にコーティングされたAPI粒子に適用され得る。例えば、いくつかの実施形態によるプロセスは、小児患者、老人患者、動物患者、及び/または嚥下困難を有し得るか、もしくは味覚に感受性であり得る他のタイプの患者に投与され得る、味の乏しいAPIを含む薬学的組成物を産生するように特に設計され得る。特に、多くのAPIは、これらの患者にとって問題となり得る望ましくない味及び/またはしびれ効果を有する。したがって、本明細書に記載される実施形態によるいくつかの混合プロセスは、API粒子を味マスキングコーティングでコーティング/カプセル化することを含む。かかるコーティングは、経口投与時のAPIの放出が、最初の数分間に遅延されるか、または大幅に低減されるように、口内分散性薬学的組成物の溶解速度を制御することができるが、十分な量のAPIは、経口投与から30分以内に放出される。(例えば、十分な量のAPIは、コーティングなしで放出されるAPI量の90%であってもよい)。米国特許第9,107,851号(’851特許)は、薬学的成分をコーティングするための例示的な乾燥無溶媒プロセスを対象としており、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
しかしながら、コーティング/カプセル化プロセスの他の変形も使用され得る。例えば、糖コーティング、フィルムコーティング、マイクロカプセル化の他の変形、圧縮コーティング、乾燥コーティングの他の変形、溶融コーティング、浸漬コーティング、ロータリーダイコーティング、静電コーティング、及び/または他の好適なタイプのコーティングは、本明細書に提供される機能的にコーティングされたAPIの存在に対して製剤化される薬学的組成物を調製するための他の処理ステップと組み合わせて使用することができる。
【0022】
図1A、1B、及び1Cは、いくつかの実施形態による、機能的にコーティングされたAPI粒子の異なる相を示す。いくつかの実施形態では、API粒子は、機能的にコーティングされたAPI粒子を産生するために1つ以上のコーティング材料と組み合わせることができる。この機能的コーティングは、水溶性材料、水膨張性材料及び/または水不溶性材料(以下に詳細に記載される)を含む材料を含み得る。
【0023】
例えば、
図1Aは、コーティング材料104の粒子によって囲まれたAPI粒子102を示す。
図1Aの機能的にコーティングされたAPI粒子を達成するために、組み合わされたAPI(すなわち、API粒子102)及び1つ以上のコーティング材料(複数可)(すなわち、コーティング材料粒子104)を機械的及び/または熱エネルギーに曝露して、API粒子102の表面を層状化するコーティング材料粒子104の離散層を含むAPI粒子102の規則混合物を産生してもよい。
図1AのAPI粒子102は、コーティング材料(複数可)の離散粒子の単層で示されている。しかしながら、API粒子102は、コーティング粒子の2つ以上の離散層を有してもよい。さらに、
図2は、コーティングされていないAPI粒子のSEM画像を示す。
【0024】
図1Bは、連続した変形フィルム層104によって囲まれたAPI粒子102を示す。具体的には、
図1Bは、コーティング材料粒子104のすべてが変形可能であってもよく、機械的応力及び/または高温に供されると変形し得ることを示す。したがって、すべてのコーティング材料は変形可能な特性を含むため、
図1Bのコーティング材料104は、機械的及び/または熱エネルギーに曝露された後の比較的滑らかで連続的なコーティング層である。いくつかの実施形態では、API粒子102は、2つ以上の比較的滑らかで連続的なコーティング層を有し得る。本明細書で使用される場合、「連続フィルム」は、API粒子を囲む単一の連続層を含むように、個々のコーティング材料粒子の1つ以上の変形可能な構成要素を溶融/軟化させる、または他の方法で分解することにより形成されるAPI粒子を囲む層であってもよい。
図3はまた、いくつかの実施形態による、機能的にコーティングされたAPI粒子を示すSEM画像を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、コーティング材料のうちの1つ以上は変形可能ではないが、変形可能なコーティング層に埋め込まれてもよい。したがって、連続フィルムは、変形されたコーティング材料内に埋め込まれた非変形材料の固体粒子を含み得る。
図1Cは、連続フィルム104が、連続フィルム104の変形されたコーティング材料を囲む、及び/またはその内部に部分的に埋め込まれた、及び/または埋め込まれた1つ以上の非変形材料の固体非変形粒子108を含み得ることを示す。
図1Bまたは1Cのこの連続フィルム104は、コーティング(例えば、APIの味をマスクするコーティング)及び遅延したAPI放出を確実にすることができる。いくつかの実施形態では、API粒子102は、非変形コーティング材料粒子によって囲まれた、及び/またはそれとともに部分的に埋め込まれた、及び/または埋め込まれた2つ以上の連続コーティング層を有し得る。
図3はまた、いくつかの実施形態による、機能的にコーティングされたAPI粒子を示すSEM画像を提供する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「変形可能な」、「変形可能な構成要素」、「コーティング材料の変形可能な構成要素」という用語、及び他の関連用語は、機械的応力及び/または高温に供されたときに分解され得る、水溶性、水膨張性、及び/または水不溶性材料の1つ以上の構成要素を指す。
【0027】
機能的にコーティングされたAPI粒子のAPI粒子102は、多数のAPIのうちのいずれかであってもよい。
図2は、いくつかの実施形態による、コーティングされていないAPI粒子のSEM画像を示す。本明細書で使用される場合、「活性薬学的成分」または「API」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防に使用され得る医薬品を指す。任意のAPIが、本開示の目的のために使用され得る。好適なAPIとしては、限定されないが、鎮痛剤及び抗炎症剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗細菌剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗下痢薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗偏頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤及び免疫抑制剤、抗プロタゾール剤、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤及び神経弛緩剤、β遮断剤、心臓向精神薬、コルチコステロイド、咳止め剤、細胞毒性剤、デコンジェスタント、利尿剤、酵素、抗パーキンソン剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、脂質調節剤、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症薬、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド及び組換え薬、性ホルモン及び避妊薬、殺精子剤、及び刺激剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらのAPIの具体例のリストは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,709,669号に見出され得る。存在する場合、APIは、臨床研究によって確立される必要な生理学的効果を示すために必要な量で薬学的製剤中に存在する。当業者は、本開示に従って作製された剤形に含めるためのAPIの適切な量を容易に決定することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、30.0~90.0%w/wのAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、40.0~85.0%w/w、50.0~80.0%w/w、または70.0~80.0%w/wのAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、40.0%w/w超、50.0%w/w超、60.0%w/w超、65%w/w超、70.0%w/w超、75.0%w/w超、80.0%w/w超、または85.0%w/w超のAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPI組成物または薬学的組成物は、90.0%w/w未満、85.0%w/w未満、80.0%w/w未満、75.0%w/w未満、70.0%w/w未満、60.0%w/w未満、50.0%w/w未満、または40.0%w/w未満のAPIを含み得る。
【0029】
API粒子102を囲む機能的コーティング104は、水溶性材料、水膨張性材料、及び/または水不溶性材料を含む材料を含み得る。いくつかの実施形態では、この第1の機能的コーティングは、API粒子を直接コーティングしてもよく、または既に1つ以上のコーティングを含むAPI粒子をコーティングしてもよい。
【0030】
第1のコーティング材料の水膨張性材料は、約0.5μm~約20μmまたは約1μm~約10μmの中央粒径を含む粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、水膨張性材料は、規則正しい混合及びコーティングを可能にするために、APIのおよそ10倍小さくてもよい。水膨張性材料は、水膨張性粒子の直径が少なくとも約120~600%増加するように、水の吸収時に膨張することができる。コーティング材料または薬学的組成物は、0~8%w/wまたは0.1~0.9%w/wの水膨張性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、0.5~6.0%w/w、1.0~4.0%w/w、1.5~3.5%w/w、または2.0~3.0%w/wの水膨張性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、8.0%w/w未満、6.0%w/w未満、4.0%w/w未満、2.0%w/w未満、1.0%w/w未満、または0.5%w/w未満の水膨張性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0w/w%超、5.0%w/w超、または6.0%w/w超の水膨張性材料を含み得る。コーティング材料の水膨張性材料は、機械的応力及び/または高温下で変形可能であり得る(以下に詳細に記載される)。水膨張性材料は、クロスポビドン、クロスカルメロース、デンプングリコール酸ナトリウム、または錠剤化のために作製された添加剤またはブレンドとして製薬業界で使用される任意の他の好適な崩壊剤のうちのいずれか1つ以上であってもよい。
【0031】
コーティング材料の水溶性材料は、約0.5μm~約20μmまたは約1μm~約10μmの中央粒径を含む粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、水溶性材料は、規則正しい混合及びコーティングを可能にするために、APIのおよそ10倍小さくてもよい。水溶性材料は、中性pH及び20℃で、水中に少なくとも約50mg/mLの水溶性を有し得る。さらに、水溶性材料は、約3~60μg/m2sの固有溶解速度を有し得る。コーティング材料の水溶性材料は、機械的エネルギー及び/または熱エネルギー下で変形可能であり得る。コーティング材料または薬学的組成物は、0~35%w/wの水溶性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、0.5~25%w/w、1.0~15%w/w、1.5~10%w/w、または2.0~3.0%w/wの水溶性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、35%w/w未満、30%w/w未満、25%w/w未満、20%w/w未満、15%w/w未満、10%w/w未満、5.0%w/w未満、4.5%w/w未満、4.0%w/w未満、3.5%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、1.0%w/w未満、または0.5%w/w未満の水溶性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、1.5%w/w超、2.0%w/w超、2.5%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、8.0%w/w超、10%w/w超、15%w/w超、20%w/w超、25重量/%w/w超、または30%w/w超の水溶性材料を含み得る。水溶性材料は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース、ポリ-(エチレンオキシド)、及び任意の他の好適な微小化可能材料またはポリオールのうちの1つ以上であり得る。
【0032】
コーティング材料の水不溶性材料はまた、APIのそれよりも小さい平均粒径を含む粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、水不溶性材料は、規則正しい混合及びコーティングを可能にするために、APIのそれよりもおよそ10倍小さくてもよい。例えば、水不溶性材料(複数可)は、約1~20μm、約1~12μm、約2~10μm、約5~12μm、または約5~6μmの平均粒径を含み得る。コーティング材料の水不溶性材料は、機械的応力及び/または高温下で変形可能であり得る。コーティング材料または薬学的組成物は、5~70%w/w、10~60%w/w、10~50%w/w、10~40%w/w、10~35%w/w、または15~30%w/wの水不溶性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、5%w/w超、10%w/w超、15%w/w超、20%w/w超、25%w/w超、30%w/w超、35%w/w超、または40%w/w超の水不溶性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料または薬学的組成物は、70%w/w未満、60%w/w未満、50%w/w未満、45%w/w未満、40%w/w未満、35%w/w未満、または30%w/w未満の水不溶性材料を含み得る。好適な水不溶性材料の例としては、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルナウバ蝋、ヒマシ蝋、キャンデリラ蝋、ポリアミド蝋、及び/または合成蝋が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、機械的及び/または熱エネルギーを使用して、1つ以上の水溶性材料、水膨張性材料、及び/または水不溶性材料を変形させることができる。例えば、PharmaRAM II音響ミキサーを使用して、機械的応力を機能的にコーティングされたAPI粒子に印加することができる。機能的にコーティングされたAPI粒子は、この音響混合プロセス中に最大100倍の重力(100G加速度)に曝され得る。これらの高い力は、熱の形態でエネルギーを生成する粒子-粒子衝突を引き起こし、これを使用して、API上の1つ以上の水溶性材料、水膨張性材料、及び/または水不溶性材料を変形させることができる。
【0034】
機能的にコーティングされたAPI粒子が調製されると、それらをマトリックス溶液/懸濁液中に混合して、投与用の薬学的懸濁液を調製することができる。機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合することは、機能的にコーティングされたAPI粒子の機能的コーティングを浸食する可能性がある。いくつかの実施形態では、この浸食を最小限に抑えるために、疎水性ヒュームドシリカを使用して、機能的にコーティングされたAPI粒子を囲む、及び/またはその中に部分的に埋め込まれた、及び/または埋め込まれた第2のコーティング層を形成することができる。
【0035】
しかしながら、後に疎水性ヒュームドシリカとともにマトリックス溶液/懸濁液中に混合される、機能的にコーティングされたAPI粒子(すなわち、上記のように、少なくとも第1のコーティングを含むAPI粒子)をコーティングすることは、自然には直感的ではない。上記のように、本明細書に記載の実施形態による口内分散性薬学的組成物を作成するために、機能的にコーティングされたAPI粒子を、マトリックス形成剤、構造形成剤、及び溶媒(多くの場合、水)を含むマトリックス溶液/懸濁液中に混合する。しかしながら、疎水性材料は、マトリックス溶液/懸濁液中に混合することに自然に耐性がある。したがって、疎水性ヒュームドシリカは、機能的にコーティングされたAPI粒子とマトリックス溶液/懸濁液との間の界面張力を増加させ、機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液に組み込むことの困難性を高め、薬学的懸濁液の相分離を引き起こす可能性があると想定され得る。
【0036】
興味深いことに、疎水性ヒュームドシリカを使用して、機能的にコーティングされたAPI粒子をコーティングし、マトリックス溶液/懸濁液への機能的にコーティングされたAPI粒子の組込みを実質的に妨げることなく、第1の機能的コーティングを保存することを含むことが決定されている。上記のように、マトリックス溶液/懸濁液中の疎水性材料、例えば、上記のマトリックス溶液/懸濁液中の疎水性ヒュームドシリカで覆われた機能的にコーティングされたAPI粒子は、特徴的に、疎水性材料とマトリックス溶液/懸濁液との間の比較的高い表面張力を示す。したがって、疎水性の機能的にコーティングされたAPI粒子とマトリックス溶液/懸濁液との間の表面張力も比較的高いと考えられる。
【0037】
しかしながら、以下で考察されるように、マトリックス溶液/懸濁液は、ゼラチンなどのマトリックス形成剤を含み得る。ゼラチンを含むいくつかのマトリックス形成剤は、穏やかな界面活性剤であり、2つの材料間の表面張力を低下させることができることを意味する。したがって、界面活性剤様の挙動を示すマトリックス形成剤は、機能的にコーティングされたAPI粒子とマトリックス溶液/懸濁液との間の表面張力を低減することができ、その結果、機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液に組み込むことを可能にし、同時に、機能的にコーティングされたAPI粒子の第1の機能的コーティングに対する疎水性ヒュームドシリカコーティング層の保護特性を維持すると考えられる。疎水性ヒュームドシリカを含むこの第2のコーティング層は、機能的にコーティングされたAPI粒子の基礎となる第1のコーティングに疎水性バリアを提供して、機能的にコーティングされたAPI粒子を懸濁液中に混合するために必要な剪断力から基礎となる第1のコーティングを保護することができる。機能的にコーティングされたAPI粒子を、疎水性ヒュームドシリカを含む疎水性バリアでコーティングすることにより、基礎となる(第1の)コーティングを浸食から保護することができる。さらに、記載の方法に従って疎水性ヒュームドシリカを使用することは、マトリックス溶液/懸濁液がコーティングを通ってAPI粒子に浸透するのを防ぐことができる。
【0038】
通常の処理条件下では、疎水性ヒュームドシリカコーティング層がなければ、機能的にコーティングされたAPI粒子のコーティングは、マトリックス溶液/懸濁液中に機能的にコーティングされたAPI粒子を混合するのに必要な剪断力下で経時的に浸食され得る。しかしながら、機能的にコーティングされたAPI粒子が最初に懸濁液中に混合されてから2時間以上の「処理ウィンドウ」が存在し得、ここで、コーティングはそのままであり、その機能性は損なわれないままであり得る。この「処理ウィンドウ」の正確な時間は、機能的にコーティングされたAPI粒子の様々な構成要素の組成、マトリックス溶液/懸濁液の組成、機能的にコーティングされたAPI粒子のコーティングを調製するために使用される材料の量、及び/またはAPIの物理化学的特性に依存し得る。しかしながら、機能的にコーティングされたAPI粒子がヒュームドシリカを含む第2のコーティングを有する場合、この「処理ウィンドウ」を延長することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物またはコーティングされたAPIは、0.5~35%w/wの疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物またはコーティングされたAPIは、0.5~20%w/w、0.5~10%w/w、または0.5~5重量%w/wの疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物またはコーティングされたAPIは、0.5%w/w超、1.0%w/w超、1.5%w/w超、2.0%w/w超、2.5%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、10%w/w超、15%w/w超、20%w/w超、25%w/w超、または30%w/w超の疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物またはコーティングされたAPIは、35%w/w未満、25%w/w未満、15%w/w未満、10%w/w未満、5.0%w/w未満、4.0%w/w未満、3.5%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、または1.0%w/w未満の疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。疎水性ヒュームドシリカは、アエロジルR972シリカ(Degussa)、CAB-O-SIL EH-5シリカ(Cabot)、OX-50シリカ(Degussa)、COSM055(Catalyst&Chemical Ind.Co.Ltd(日本))、TS5シリカ(Cabot)、及び/または他の好適なタイプのシリカのうちのいずれかであり得る。
【0040】
図4は、API402、第1の機能的コーティング404、及び第2の保護的シリカコーティング410を含む、機能的にコーティングされたAPI粒子のSEM画像を提供する。図に示されるように、第2の保護シリカコーティングは、機能的にコーティングされたAPIの第1の機能的コーティング404に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。
【0041】
シリカを機能的にコーティングされたAPI粒子に添加して機能的にコーティングされたAPI粒子を調製すると、機械的及び/または熱エネルギーを粒子に適用して、保護シリカコーティングを含む機能的にコーティングされたAPI粒子を形成することができる。次いで、第2の保護シリカコーティングを含む機能的にコーティングされたAPI粒子を調製し、薬学的懸濁液を作成するために添加し、口内分散性薬学的組成物を形成するように投与してもよい。
【0042】
薬学的組成物を調製するいくつかの方法は、成形型を使用して物品(すなわち、丸薬または錠剤)を形成すること、及び成形品を保管のために気密容器に移すことを含む。しかしながら、ブリスターパックを使用すると、この転送ステップを減少させ、時間、金銭、及び関連するリスク(すなわち、損傷、損失、汚染等)を節約することができる。したがって、本明細書に提供されるいくつかの実施形態による方法は、薬学的懸濁液をブリスターパックに投与すること、懸濁液を凍結乾燥させて溶媒を除去すること、及び保護のために薬学的組成物をブリスターパック内に密封することを含むことができる。この薬学的懸濁液及び投与プロセスは、GB1548022、US4371516、US4305502、GB211423、及びUS4758598に詳細に網羅されており、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
機能的にコーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に配置して、薬学的懸濁液を形成することができ、それを予め形成されたブリスターパック中に投与し、凍結させ、凍結乾燥させて経口崩壊錠剤(すなわち、薬学的組成物)を産生することができる。
【0044】
マトリックス溶液/懸濁液は、マトリックス形成剤、構造形成剤、粘度調整剤、及び/または溶媒を含んでもよい。例えば、マトリックス形成剤は、機能的にコーティングされたAPIに対して薬理学的に許容されるか、または不活性である任意の水溶性または水分散性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ゼラチンなどのポリペプチドであってもよい。ゼラチンは(水中で加熱することによって)少なくとも部分的に加水分解され得る。他の好適なマトリックス形成剤材料としては、加水分解されたデキストラン、デキストリン、及びアルギン酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及び/またはアカシアなどの多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、約0.1~10%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、1.0~8.0%w/wまたは2.0~5.0%w/wを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、または8.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、10%w/w未満、8.0%w/w未満、6.0%w/w未満、5.0%w/w未満、4.0%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、または1.0%w/w未満を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、約3~15%w/w、約4~10%w/w、または約4~7%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、6.0%w/w超、7.0%w/w超、8.0%w/w超、9.0%w/w超、10.0%w/w超、11.0%w/w超、12.0%w/w超、13.0%w/w超、または14.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、15%w/w未満、14.0%w/w未満、13.0%w/w未満、12.0%w/w未満、10.0%w/w未満、9.0%w/w未満、8%w/w未満、7%w/w未満、6%w/w未満、5%w/w未満、または4.0%w/w未満を含んでもよい。
【0045】
マトリックス溶液/懸濁液の構造形成剤、または増量剤は、糖を含んでもよい。例えば、好適な構造形成剤としては、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、グリシン、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。構造形成剤は、結晶化して凍結乾燥剤形に構造的堅牢性をもたらすため、凍結乾燥において増量剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、約0.1~10%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、1.0~8.0%w/wまたは2.0~5.0%w/wを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、4.5%w/w超、5.0%w/w超、または8.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、10%w/w未満、8.0%w/w未満、6.0%w/w未満、5.0%w/w未満、4.0%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、または1.0%w/w未満を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、約3~15%w/w、約4~10%w/w、または約4~7%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、6.0%w/w超、7.0%w/w超、8.0%w/w超、9.0%w/w超、10.0%w/w超、11.0%w/w超、12.0%w/w超、13.0%w/w超、または14.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、15%w/w未満、14.0%w/w未満、13.0%w/w未満、12.0%w/w未満、10.0%w/w未満、9.0%w/w未満、8%w/w未満、7%w/w未満、6%w/w未満、5%w/w未満、または4.0%w/w未満を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液及び薬学的懸濁液は、粘度調整剤を含んでもよい。例えば、本明細書に提供される実施形態による粘度調整剤は、キサンタンガム、アルギニン、グアーガム、もしくは蝗豆ガムなどの植物性ガム、コラーゲンもしくはゼラチンなどのタンパク質、寒天、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、もしくはカラギーナンなどの糖、クズウコン、コーンスターチ、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ、もしくはタピオカなどのデンプン、及び/または他の好適な粘度調整剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0~0.2%w/wまたは0.01~0.1%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0.01%w/w超、0.03%w/w超、0.05%w/w超、0.07%w/w超、0.1%w/w超、0.12%w/w超、0.15%w/w超、または0.17%w/w超であり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0.2%w/w未満、0.18%w/w未満、0.15%w/w未満、0.12%w/w未満、0.1%w/w未満、0.08%w/w未満、0.06%w/w未満、または0.03%w/w未満であり得る。
【0047】
マトリックス溶液/懸濁液及び薬学的懸濁液の溶媒は水であってもよいが、マトリックス溶液/懸濁液は共溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、エタノール、アルコール、イソプロパノール、他の低級アルカノール、水(例えば、精製水)、またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、好適な溶媒及び/または共溶媒は、tert-ブチルアルコールなどのアルコールであってもよい。いくつかの実施形態では、薬学的製剤の残りのバランスは、溶媒(すなわち、Q.S.100%)である。
【0048】
マトリックス溶液/懸濁液及び薬学的懸濁液はまた、追加の薬学的に許容される薬剤または賦形剤を含有してもよい。かかる追加の薬学的に許容される薬剤または賦形剤としては、糖、塩化ナトリウム及びケイ酸アルミニウムなどの無機塩、修飾デンプン、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、香味剤、pH調整剤、甘味料、味マスキング剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な着色剤としては、赤色、黒色、及び黄色の酸化鉄、ならびにFD&C青色2号及びFD&C赤色40号などのFD&C染料と、それらの組み合わせを挙げることができる。好適な香味剤としては、ミント、ラズベリー、リコリス、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キャラメル、バニラ、チェリー及びグレープのフレーバー、ならびにこれらの組み合わせを挙げることができる。好適なpH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸、マレイン酸、水酸化ナトリウム(例えば、3%w/wの水酸化ナトリウム溶液)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチン、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン含有化合物、吸着剤またはマイクロカプセル化活性剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。当業者は、必要に応じて、これらの様々な追加の賦形剤の好適な量を容易に決定することができる。
【0049】
図5は、本明細書に記載の薬学的組成物を調製するための混合プロセスのいくつかの実施形態によるフローチャートを提供する。ステップ502では、API粒子を1つ以上のコーティング材料(複数可)と組み合わせ、その組み合わせを機械的及び/または熱エネルギーに曝露して、1つ以上のコーティング材料(複数可)の離散層を含むAPI粒子(すなわち、第1のコーティング層を含むAPI粒子)の規則混合物を産生する。例えば、
図1Aは、コーティング材料粒子の離散層を含むAPI粒子を示す。
【0050】
ステップ504では、機械的及び/または熱エネルギーを、第1のコーティングを含む機能的にコーティングされたAPI粒子に適用して、コーティング材料の1つ以上の変形可能な構成要素をAPI粒子の表面に変形させることができる。このプロセスステップは、API粒子(すなわち、機能的にコーティングされたAPI粒子)を囲む連続フィルムを含むAPI粒子を形成することができる。これを
図1B、
図1C、及び/または
図3に示す。
【0051】
ステップ506では、機能的にコーティングされたAPI粒子を疎水性ヒュームドシリカと組み合わせて、少なくとも第1の機能的コーティング及び第2の保護シリカコーティングを含む機能的にコーティングされたAPI粒子を形成する。いくつかの実施形態では、機械的及び/または熱エネルギーを、機能的にコーティングされたAPI粒子及び疎水性ヒュームドシリカの組み合わせに適用して、疎水性ヒュームドシリカを機能的にコーティングされたAPI粒子のコーティングに付着させる、及び/またはその中に部分的に埋め込む、及び/または埋め込むことができる。例えば、
図4は、第1のコーティング404及び埋め込まれたシリカコーティング408を含むAPI粒子402のSEM画像を示す。
【0052】
ステップ508では、第2の疎水性ヒュームドシリカコーティングを有する第1のコーティングを含むAPI粒子を、予め形成された成形型に投与するための懸濁液に混合する。いくつかの実施形態では、懸濁液をブリスターパックに投与し、凍結乾燥させて溶媒を除去し、保護のためにブリスターパック内で密封してもよい。この懸濁液及び投与プロセスは、GB1548022、US4371516、US4305502、GB211423、及びUS4758598に詳細に網羅されており、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
疎水性ヒュームドシリカを含む保護層の有効性は、経時的に薬学的懸濁液中の機能的にコーティングされたAPI粒子の粒径を測定することによって決定することができる。疎水性ヒュームドシリカがコーティングの保存に効果的である場合、機能的にコーティングされたAPI粒子の粒径は、経時的に一定のままであるか、またはごくわずかに減少し得る。効果的でない場合、機能的にコーティングされたAPI粒子の粒径は、経時的により実質的に減少し得る。機能的にコーティングされた粒子の粒径は、レーザー回折、Malvern Mastersizerなどの粒子分析器、または微粒子を分析するための任意の他の好適な手段を使用して測定することができる。
【0054】
疎水性ヒュームドシリカを含む保護層の有効性は、機能的にコーティングされたAPI粒子に対して溶解試験を行うことによっても測定することができる。疎水性ヒュームドシリカがコーティングの保存に効果的である場合、機能的にコーティングされたAPI粒子の経時的な放出量(例えば、放出のパーセント)は、溶解試験においてより遅くなるであろう。効果的でない場合、機能的にコーティングされたAPI粒子の放出量は、経時的に大きくなるであろう。機能的にコーティングされた粒子の放出量は、溶解試験、Pion MicroDISS Profilerなどの分光光度分析器、または溶解試験を行うための任意の他の好適な手段を使用して測定することができる。
【実施例】
【0055】
実施例1:疎水性ヒュームドシリカを使用して、本明細書に記載の実施形態による機能的にコーティングされたAPI粒子をコーティングした。具体的には、使用された疎水性ヒュームドシリカは、アエロジルR972(「アエロジル」)であった。2つの異なる濃度(1.5%w/w及び1.0%w/w)のアエロジルR972を試験した。機能的にコーティングされたAPI粒子のサイズを、6時間の保持期間にわたって評価し、その間、低剪断混合に供した。
【0056】
図6、7、及び8は、それぞれ、6時間の期間にわたるd10粒径、d50粒径、及びd90粒径の評価を提供する。一般的に言えば、そのd10に関して表される粒径は、所与の量の試料中の粒子の10%が、所与の粒径未満であることを意味する。したがって、そのd50に関して表される粒径は、所与の量の試料中の粒子の50%が、所与の粒径未満であることを意味し、そのd90に関して表される粒径は、所与の量の試料中の粒子の90%が、所与の粒径未満であることを意味する。
【0057】
図6に示されるように、より高い濃度のシリカ(1.5%w/w)は、より低い濃度のシリカ(1.0%w/w)よりも、元の粒径を維持すること、したがってコーティングを維持することにおいてより効果的であった。具体的には、6時間の間に、1.5%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元のサイズのおよそ30%を失ったが、1.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元の粒径のおよそ80%を失った。
【0058】
図7はまた、より高い濃度のシリカ(1.5%w/wアエロジル)が、より低い濃度のシリカ(1.0%w/wアエロジル)よりも、元の機能的にコーティングされたAPI粒径を維持すること、したがって機能的コーティングを保存することにおいてより効果的であったことを示す。具体的には、6時間の間に、1.5%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元のサイズのほぼ20%を失ったが、1.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元の機能的にコーティングされたAPI粒径のおよそ45%を失った。
【0059】
図8はまた、より高い濃度のシリカ(1.5%w/wアエロジル)は、より低い濃度のシリカ(1.0%w/wアエロジル)よりも、元の機能的にコーティングされたAPI粒径を維持すること、したがって機能的にコーティングされたAPI粒子の機能的コーティングを保存することにおいてより効果的であったことを示す。具体的には、6時間の間に、1.5%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元のサイズのほぼ15%を失ったが、1.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、元の粒径のおよそ35%を失った。
【0060】
さらに、機能的にコーティングされたAPI粒子の粒径が減少すると、5μm~20μmの粒径を含む別個の粒子集団が現れ、時間とともに増加した。これらの粒子は、コーティングの浸食の前に、剪断力によって変形した連続コーティング材料内に埋め込まれた非変形コーティング材料粒子であると考えられる。したがって、コーティングが浸食され、機能的にコーティングされたAPI粒子の粒径が減少するにつれて、これらのより小さい粒子の集団サイズは、それらを囲む変形されたコーティング材料が浸食されるにつれて増加し、これらの非変形粒子が機能的にコーティングされたAPI粒子から放出される。
【0061】
全体的に、これらの試験は、機能的にコーティングされたAPI粒子を1.5%w/wアエロジルでコーティングすることが、シリカなしに存在する2時間の「処理ウィンドウ」の代わりに、「処理ウィンドウ」をおよそ4時間に増加させる可能性があることを示唆している。1.5%w/wのアエロジルを含む第2の外側コーティングを含む、懸濁液中での処理の最初の4時間以内に、機能的にコーティングされたAPI粒子は、コーティングの浸食を(あるとしても)ほとんど示さない。
【0062】
実施例2:疎水性ヒュームドシリカを使用して、本明細書に記載の実施形態による機能的にコーティングされたAPI粒子をコーティングした。具体的には、使用された疎水性ヒュームドシリカは、アエロジルR972(「アエロジル」)であった。5つの異なる濃度のアエロジルR972を、0.0%w/w、1.5%w/w、2.5%w/w、5.0%w/w、及び10.0%w/wで試験した。機能的にコーティングされたAPI粒子の放出量を、溶解試験(すなわち、pH7.2のリン酸緩衝液中の0.01% SDSの溶解媒質、37℃の媒質温度、及び10mL(イブプロフェン)または20mL(パラセタモル)の媒質体積)を使用して評価した。
【0063】
図9、10、及び11は、機能的にコーティングされたAPI粒子に対して、5分または30分のいずれかの期間にわたって行われた放出量の評価を提供する。一般的に言えば、放出率%に関して表される低体積溶解結果は、添加した材料の重量の「x」パーセントが溶液中に溶解したことを意味する。
【0064】
図9は、カルナウバ蝋及び様々な量の疎水性シリカでコーティングされたイブプロフェンの放出データを示す。図に示されているように、より高い濃度のシリカ(最大10.0%w/w)は、より低い濃度のシリカよりも、溶解試験でより遅い放出速度を提供すること、したがってコーティングを維持することにおいてより効果的であった。具体的には、5分間の試験期間中、10.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子(すなわち、カルナウバ蝋でコーティングされたイブプロフェン)は、5分後に1.5%の放出を示したが、0.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、24.9%の放出を示した。中間レベルのアエロジル(すなわち、1.5%w/w、2.5%w/w、及び5.0%w/w)を含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、それぞれ、12.1放出%、7.4放出%、及び2.3放出%の5分後の溶解結果を示した。
【0065】
図10は、サゾール(合成)蝋及び様々なレベルの疎水性シリカでコーティングされたイブプロフェンの放出データを提供する。
図10はまた、より高い濃度のシリカ(最大10.0%w/w)は、より低い濃度のシリカよりも、溶解試験でより遅い放出速度を提供すること、したがってコーティングを維持することにおいてより効果的であったことを示す。具体的には、5分間の試験期間中、10.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子(すなわち、合成蝋でコーティングされたイブプロフェン)は、5分後に2.8%の放出を示したが、0.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、8.5%の放出を示す。中間レベルのアエロジル(すなわち、1.5%w/w、2.5%w/w、及び5.0%w/w)を含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、それぞれ、4.3放出%、3.6放出%、及び2.4放出%の5分後の溶解結果を示した。
【0066】
図11は、カルナウバ蝋及び様々なレベルの疎水性シリカでコーティングされたパラセタモルの放出データを提供する。
図9及び10に示されているように、より高い濃度のシリカ(最大10.0%w/w)は、より低い濃度のシリカよりも、溶解試験でより遅い放出速度を提供すること、したがってコーティングを維持することにおいてより効果的であった。具体的には、30分間の試験期間中、10.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子(すなわち、カルナウバ蝋でコーティングされたパラセタモル)は、30分後に3.2%の放出を示したが、0.0%w/wのアエロジルを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、46.0%の放出を示した。中間レベルのアエロジル(すなわち、1.5%w/w、2.5%w/w、及び5.0%w/w)を含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、それぞれ、17.1放出%、6.5放出%、及び4.2放出%の30分後の溶解結果を示した。
【0067】
全体的に、これらの試験は、機能的にコーティングされたAPI粒子をアエロジル(最大10%w/w)でコーティングすることは、様々なAPI及びコーティング材料のコーティングの堅牢性を増加させることができることを示唆する。溶解試験中、アエロジル粒子の第2の外側保護コーティングを含む機能的にコーティングされたAPI粒子は、アエロジルの第2の外側コーティングを含まない機能的にコーティングされたAPI粒子よりも少ないコーティング分解を示した。さらに、機能的にコーティングされたAPI粒子の堅牢性は、アエロジル(最大10%w/w)のレベルの増加に伴って増加することが見出された。
【0068】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記、ならびに他の技術的及び科学的用語または用語法は、特許請求の範囲の主題が関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語は、明確に及び/またはすぐに参照するために本明細書で定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当該技術分野で一般に理解されているものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。
【0069】
本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた変形を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」の説明を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語は、関連する列挙した項目のうちの1つ以上の任意の及びすべての可能な組み合わせを指し、包含することも理解されるべきである。「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」、及び/または「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/または単位の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、単位、及び/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことをさらに理解されたい。
【0071】
本出願は、テキスト及び図面におけるいくつかの数値範囲を開示する。開示された数値範囲は、本開示が開示された数値範囲全体にわたって実施され得るため、明細書に正確な範囲制限が逐語的に記載されていないにもかかわらず、エンドポイントを含む、開示された数値範囲内の任意の範囲または値を本質的に支持する。
【0072】
前述の説明は、説明の目的のために、特定の実施形態に関して説明されてきた。しかしながら、上記の例示的な考察は、網羅的であることを意図するものではなく、または本発明を開示された正確な形態に限定するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、技法の原理及びそれらの実用的な応用を最もよく説明するために選択され、説明された。それにより、当業者であれば、企図される特定の使用に適した様々な修正を用いて、本技法及び様々な実施形態を最適に利用することが可能となる。
【0073】
本開示及び実施例は、添付の図面を参照して完全に説明されているが、様々な変更及び修正が当業者に明らかになることに留意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定義される本開示及び実施例の範囲内に含まれるものと理解されるべきである。