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特許7546582治療に使用する細胞組成物を生成するためのガンマ・デルタT細胞のホーミング及び保持の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】治療に使用する細胞組成物を生成するためのガンマ・デルタT細胞のホーミング及び保持の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240830BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/02
A61K35/17
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/06
A61P29/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021549565
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 IL2020050206
(87)【国際公開番号】W WO2020170260
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】62/809,671
(32)【優先日】2019-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501127637
【氏名又は名称】ガミダ セル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレド トニー
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539929(JP,A)
【文献】特表2013-515497(JP,A)
【文献】EBioMedicine,2018年12月07日,Vol.39,pp.44-58
【文献】Microbes and Infection,2005年,Vol.7,pp.510-517
【文献】Experimental Hematology,2012年,Vol.40,pp.342-355
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0783
C12N 5/02
A61K 35/17
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 31/04
A61P 31/12
A61P 37/06
A61P 29/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する方法であって、
(a)ガンマ・デルタT細胞が富化された選択細胞集団を得ることと、
(b)前記選択細胞集団にガンマ・デルタT細胞増殖の条件をエクスビボで提供することと、
(c)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強するための十分な期間に亘って0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを供給することと
を含み、
それによって前記選択細胞集団でのガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する方法。
【請求項2】
ガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強する方法であって、
(a)ガンマ・デルタT細胞が富化された選択細胞集団を得ることと、
(b)前記選択細胞集団にガンマ・デルタT細胞増殖の条件をエクスビボで提供することと、
(c)ガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強するための十分な期間に亘って0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを供給することと
を含み、
それによって前記選択細胞集団でのガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強する方法。
【請求項3】
前記ガンマ・デルタT細胞増殖の条件は栄養素とサイトカインを供給することを含み、前記サイトカインは、IL-2、IL-15及びIL-21から成る群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択細胞集団は、アルファ・ベータT細胞枯渇によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択細胞集団はナチュラルキラー(NK)細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、NK細胞増殖の条件を提供することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞の選択によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択細胞集団はNK細胞を欠いている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ガンマ・デルタT細胞集団は、筋肉、皮膚、骨、リンパ器官、膵臓、肝臓、胆嚢、腎臓、消化管器官、呼吸器官、生殖器官、尿路器官、血液関連器官、胸腺、脾臓、神経系器官から成る群より選択される器官に由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガンマ・デルタT細胞集団は、造血細胞、臍帯血細胞、動員末梢血細胞及び骨髄細胞から成る群より選択されるソースに由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガンマ・デルタT細胞集団はアフェレーシス試料に由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)の期間は1~3週間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の期間は1~7日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ニコチンアミドを5mMまたは7mMの濃度で供給する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍抗原、ウイルス抗原及び細菌抗原から成る群より選択される細胞マーカーに従ってガンマ・デルタT細胞集団を選択することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団を含む治療用細胞組成物であって、前記増殖させた細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件下及び0.5~50mMの範囲の量のニコチンアミドを用いてエクスビボ培養を行ったものであり、前記増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団は、0.5~50mMのニコチンアミドを用いずに増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、
(i)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び
(ii)CD62L発現の増強
の少なくとも一を有することによって選択されたものである、治療用細胞組成物。
【請求項17】
ヒト対象の、癌、細菌感染症、ウイルス感染症、自己免疫病態及び炎症病態から成る群より選択される病態の治療用の医薬の製造における増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団の使用であって、前記ガンマ・デルタT細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件と0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを用い、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能及び/又はCD62L発現を増強するための十分な期間に亘って選択ガンマ・デルタT細胞集団を培養して前記細胞集団をエクスビボで増殖させたものであり、前記増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団は、同一の条件下及び0.1mM以下のニコチンアミドを用いて増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、
(i)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び
(ii)CD62L発現の増強
の少なくとも一を有することによって選択されたものであり、
前記治療は、治療を必要とする前記対象に対する前記増殖させたガンマ・デルタT細胞集団の注入を含む免疫療法である、使用。
【請求項18】
前記対象に対する前記細胞の注入が補助療法を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記補助療法は、抗ウイルス療法、抗炎症療法、抗生物質療法、殺菌療法、化学療法、外科手術、免疫療法、免疫化学療法、放射線療法、骨髄移植及び造血幹細胞移植から成る群より選択される療法と組み合わされる、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記免疫療法は養子免疫療法であり、前記ガンマ・デルタT細胞は前記対象に対して自己細胞または異種細胞である、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
対象の癌の治療用の医薬の製造における増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団の使用であって、前記増殖させた選択T細胞集団は、
ガンマ・デルタT細胞増殖の条件と0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを用い、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能及び/又はCD62L発現を増強するための十分な期間に亘って選択ガンマ・デルタT細胞集団を培養して前記細胞集団をエクスビボで増殖させ
0.5~50nMのニコチンアミドを用いずに増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、
(i)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び
(ii)CD62L発現の増強
の少なくとも一を有することによって選択されたものである、使用。
【請求項22】
前記ガンマ・デルタT細胞は前記対象に対して同種異系である、請求項17~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記ガンマ・デルタT細胞は前記対象に対して自家性である、請求項17~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記対象は、前記増殖ガンマ・デルタT細胞の注入の前、注入と同時又は注入の後に、1.0mM超のニコチンアミドを用いた培養で増殖させた臍帯血造血幹細胞による治療を受ける、請求項17に記載の使用。
【請求項25】
前記増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団が、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって培養されたものである、請求項17~24のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年2月24日出願の米国仮特許出願第62/809,671号の優先権の利益を主張するものであり、本特許出願の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、その幾つかの実施形態において、ガンマ・デルタT細胞集団を培養するための方法、培養したガンマ・デルタT細胞集団の治療的使用、及び培養したガンマ・デルタT細胞を含むキットに関する。より詳細には、本発明は、培養したガンマ・デルタT細胞を単独で、或いは移植用の他の細胞と組み合わせて使用することに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
ガンマ・デルタ(γδ)T細胞は、組織恒常性、感染症、自己免疫疾患、炎症、移植及び腫瘍監視中の多数の免疫応答に関与する自然リンパ球の保存集団である。ガンマ・デルタT細胞は、適応免疫系又は自然免疫系、又はその両方の特質を共有することができ、ストレス関連抗原を認識する胸腺及び末梢組織サブセット(Vδ1細胞)、ホスホ抗原によって活性化される循環サブセット(Vδ2細胞)、及び主に肝臓で見られ、ウイルス感染症や白血病で一般的なサブセット(Vδ3細胞)を含む。
【0004】
ガンマ・デルタT細胞は活性化されると強力な非MHC制限細胞毒性活性を発揮し、様々な種類の細胞、特に感染(ウイルス、寄生虫、真菌等の感染)細胞や癌細胞等の病原性細胞の死滅において特に効率的である。ガンマ・デルタT細胞は造血幹細胞移植患者の長期生存に関与しており、腫瘍試料におけるガンマ・デルタT細胞の存在は著しく好ましい癌の予後特徴として確認されている。ガンマ・デルタT細胞は、変化した脂質経路を感知し、腫瘍抗原特徴に関係なく悪性細胞を検出及び排除することができ、また化学療法抵抗性が高いため、併用免疫化学療法に特に適している。
【0005】
ヒト末梢血及び組織に存在するT細胞においてガンマ・デルタT細胞が占める割合はごく一部であり(1~5%)、臍帯リンパ球における割合は更に低い(<1%)。従って、ガンマ・デルタT細胞集団を治療へ応用するには、それを増殖させるための手段が必要となる。臨床用途(例えば、癌免疫療法)のためにガンマ・デルタT細胞を富化する2種の主なアプローチとしては、刺激性ホスホ抗原又はアミノビスホスホネートを低用量の組換えIL-2と共に投与することによる内因性ガンマ・デルタ集団のインビボ増殖、及び患者へのインビトロ増殖ガンマ・デルタT細胞(自己又は異種細胞)のエクスビボ養子細胞移植(例えば、米国特許出願公開第2017/0196910号(Leeks et al)を参照)が挙げられる。IL-2の望ましくない副作用や短い血清半減期、更にはインビボIL-2投与の臨床試験での結果が不本意であったため、現在ではガンマ・デルタT細胞のエクスビボ増殖が好ましい方法である。幾つかの研究によって、IL-15がガンマ・デルタT細胞の増殖、生存及び細胞毒性を促進するのに有効となり得ることも示されている。
【0006】
ガンマ・デルタT細胞の機能を強化することは効果的なT細胞療法にとって重要である。ガンマ・デルタT細胞は特に、非特異的HMB-PP等の小さな化合物、癌に蓄積するアミノビスホスホネート、及びアネキシンA2等の細胞ストレスタンパク質によって活性化される。IL-2に加えて、ガンマ鎖ファミリーの一部のサイトカイン(特に、IL-7、IL-15及びIL-21)もガンマ・デルタT細胞の増殖、生存及び細胞毒性を高めることができる(Van Acker et al, Cytokine and Growth Factor Rev 2018 41:54-64)。ガンマ・デルタT細胞は、移植後の組織でのガンマ・デルタT細胞のホーミング、接着、シグナル伝達、遊走、浸潤及び保持において機能するインテグリン(例えば、ベータ1、ベータ2、ベータ7インテグリン、ビトロネクチン受容体)も保有している(Seigers, Front in Immunol, 2018)。ガンマ・デルタT細胞は、L-セレクチン(CD62L)とE-及びP-セレクチンリガンドを発現すると共に、炎症に応答して様々な組織型(皮膚、腸、肝臓、脳、骨髄、リンパ節等)でのホーミングや保持を媒介する他のホーミング分子も発現する(Sackstein et al, Lab Invest 2017 97:669-97)。
【0007】
移植用ガンマ・デルタT細胞をエクスビボ培養するための方法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2005/0196385号(Romagne and Laplace)及び米国特許出願公開第2009/0130074号(Moser and Kuchen)では、合成又は天然ガンマ・デルタT細胞アクチベーター小分子を用いたガンマ・デルタT細胞の増殖と活性化が教示されている。米国特許出願公開第2017/0107490号(Maeurer)及び米国特許出願公開第2018/0312808号(Hayday et al)では、IL-2、IL-15及びIL-21の様々な組み合わせで培養してガンマ・デルタT細胞をエクスビボ増殖させることが教示されている。ガンマ・デルタT細胞増殖の幾つかのモデルとしては、ガンマ・デルタT細胞における抗原提示機能の誘導又はエンジニアリング(例えば、米国特許出願公開第2008/0075732号(Moser and Kuchen)を参照)、腫瘍認識部位の発現のエンジニアリング(例えば、米国特許出願公開第2016/0175358号(Jakobovits et al)を参照)、CAR(キメラ抗原受容体)を発現する多能性幹細胞からのガンマ・デルタT細胞の選択(例えば、米国特許出願公開第2016/0009813号(Themeli et al)、米国特許出願公開第2018/0353588号(Boyd et al)、特許出願公開第2018/0125889号(Leek et al)、米国特許出願公開第2018/0200299号(Cooper et al)、米国特許出願公開第2018/0250337号(Lamb et al))、HSCに指示を出してガンマ・デルタT細胞に分化させること(例えば、米国特許出願公開第2016/0213715号(Messina and Tie)、及び腫瘍を標的とするためのガンマ・デルタT細胞におけるCXCR6発現のエンジニアリング(米国特許出願公開第2018/0256645号(Kobold et al))が挙げられる。
【0008】
増殖ガンマ・デルタT細胞集団の治療的使用は、完了、有効、補充又は認可の状態の15を超える臨床試験(clinical trials.govウェブサイト参照)の対象となっている。これら臨床試験は、各種の感染性及び癌性病態を治療するための様々なプロトコルによって増殖させたガンマ・デルタT細胞の適用を調査するものである。増殖ガンマ・デルタT細胞集団は一般に細胞毒性機能を維持することが分かっている。しかし、ガンマ・デルタT細胞増殖を設計したり、安全であり且つ患部組織を標的とするのに十分有効な大規模の増殖ガンマ・デルタT細胞集団を提供する治療プロトコルを設計したりすることの難しさが、これまでの結果において強調されている。
【0009】
更なる関連刊行物としては、Nicol et al (BJ of Cancer, 2011 105:778-106)、Kobayashi et al (AntiCancer Res 2010 30:575-580)、Berglund et al (Stem Cell Int 2018 ID8529104)、Tan et al (J Immunol Sci 2018 2:6-12)、Fisher et al (Frontiers in Immunol 2018 9:1409)、米国特許出願公開第20018/0207568号(Belmant)、及び米国特許出願公開第2009/0304688号(Fournie et al)が挙げられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一様相によれば、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する方法であって、
(a)ガンマ・デルタT細胞が富化された選択細胞集団を得ることと、
(b)選択細胞集団にガンマ・デルタT細胞増殖の条件をエクスビボで提供することと、
(c)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強するための十分な期間に亘って0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを供給することとを含み、それによって選択細胞集団でのガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する方法が提供される。
【0011】
本発明の一様相によれば、ガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強する方法であって、
(a)ガンマ・デルタT細胞が富化された選択細胞集団を得ることと、
(b)選択細胞集団にガンマ・デルタT細胞増殖の条件をエクスビボで提供することと、
(c)ガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強するための十分な期間に亘って0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを供給することとを含み、それによって選択細胞集団でのガンマ・デルタT細胞のCD62L発現を増強する方法が提供される。
【0012】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件は、栄養素とサイトカインを供給することを含む。
【0013】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、サイトカインはIL-2、IL-15及びIL-21から成る群より選択される。
【0014】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ニコチンアミドは、ニコチンアミド、ニコチンアミド類似体、ニコチンアミド代謝産物、ニコチンアミド類似体代謝産物及びこれらの誘導体から成る群より選択される。
【0015】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、選択細胞集団は、アルファ・ベータT細胞枯渇によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である。
【0016】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、選択細胞集団はナチュラルキラー(NK)細胞を含む。
【0017】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、この方法はNK細胞増殖の条件を提供することを更に含む。
【0018】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件及びニコチンアミドの提供によって、選択細胞集団におけるNK細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能及び/又はCD62L発現を増強する。
【0019】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、選択細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞の選択によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である。
【0020】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、選択細胞集団はNK細胞を欠いている。
【0021】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞集団は、筋肉、皮膚、骨、リンパ器官、膵臓、肝臓、胆嚢、腎臓、消化管器官、呼吸器官、生殖器官、尿路器官、血液関連器官、胸腺、脾臓、神経系器官から成る群より選択される器官に由来する。
【0022】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞集団は、造血細胞、臍帯血細胞、動員末梢血細胞及び骨髄細胞から成る群より選択されるソースに由来する。
【0023】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞集団は骨髄又は末梢血に由来する。
【0024】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞集団は新生児臍帯血に由来する。
【0025】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、細胞集団は単核細胞画分に由来する。
【0026】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞集団はアフェレーシス試料に由来する。
【0027】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、この方法の工程(c)の期間は1~3週間である。
【0028】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、この方法の工程(c)の期間は1~7日間である。
【0029】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ニコチンアミドの濃度は0.5~20mMの範囲である。
【0030】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ニコチンアミドを5mMの濃度で供給する。
【0031】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、この方法は、腫瘍抗原、ウイルス抗原及び細菌抗原から成る群より選択される細胞マーカーに従ってガンマ・デルタT細胞集団を選択することを更に含む。
【0032】
本発明の一様相によれば、増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団を含む治療用細胞組成物であって、細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件下及び0.5~50mMの範囲の量のニコチンアミドを用いてエクスビボ培養を行ったものであり、増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団は、同一の条件下及び0.1mM以下のニコチンアミドを用いて増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、
(i)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び
(ii)CD62L発現の増強の少なくとも一によって特徴付けられる、治療用細胞組成物が提供される。
【0033】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、治療用細胞組成物は、本明細書に詳述の本発明の方法に従って培養したガンマ・デルタT細胞を含む。
【0034】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、治療用細胞組成物はNK細胞を更に含む。
【0035】
本発明の一様相によれば、対象に細胞を移植する方法であって、
(a)ガンマ・デルタT細胞増殖の条件と0.5~50mMの範囲のニコチンアミドによって、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能及び/又はCD62L発現を増強するための十分な期間に亘って選択ガンマ・デルタT細胞集団を培養してこの細胞集団をエクスビボで増殖させることと、
(b)増殖ガンマ・デルタT細胞をそれを必要とする対象に注入することとを含み、
増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団は、0.5~50nMのニコチンアミドを用いずに増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、
(i)ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び
(ii)CD62L発現の増強の少なくとも一によって特徴付けられる、方法が提供される。
【0036】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、細胞を移植する方法の工程(a)は、本明細書に詳述の本発明のガンマ・デルタT細胞増殖の方法に従って行う。
【0037】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、対象はヒト対象である。
【0038】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞は対象に対して同種異系である。
【0039】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、ガンマ・デルタT細胞は対象に対して自家性である。
【0040】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、対象は、癌、細菌感染症、ウイルス感染症、自己免疫病態及び炎症病態から成る群より選択される病態に罹患している。
【0041】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、対象における細胞の移植は補助療法を含む。
【0042】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、補助療法は、抗ウイルス療法、抗炎症療法、抗生物質療法、殺菌療法、化学療法、外科手術、免疫療法、免疫化学療法、放射線療法、骨髄移植及び造血幹細胞移植から成る群より選択される療法と組み合わせる。
【0043】
本明細書に記載の好ましい実施形態における更なる特徴によれば、対象は、増殖ガンマ・デルタT細胞の移植の前、移植と同時又は移植の後に、1.0mM超のニコチンアミドを用いた培養で増殖させた臍帯血造血幹細胞による治療を受ける。
【0044】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、アルファ・ベータ枯渇末梢血細胞試料におけるガンマ・デルタT細胞の富化を示すヒストグラムである。アルファ・ベータ枯渇血液細胞を5mMのニコチンアミド(NAM)の存在下又は非存在下で12~13日間培養し、CD3+細胞を選択し、FACSによってCD3+/ガンマ・デルタ+細胞とCD3+/アルファ・ベータ+細胞を分析した。ここで、NAM培養物と対照培養物の両方のT細胞画分においてガンマ・デルタT細胞が90%超である。
図2図2は、ニコチンアミドによるガンマ・デルタT細胞におけるCD62L(L-セレクチン)発現の増強を示すヒストグラムである。5mMのニコチンアミド(NAM)を用いて12~13日間培養したアルファ・ベータ枯渇血液細胞から精製したガンマ・デルタT細胞をCD62Lで染色し、FACSによって分析した。ここで、ニコチンアミドで処理した培養物においてCD62L発現がほぼ3倍増加する。
図3図3は、ニコチンアミドを用いた培養によるガンマ・デルタT細胞の機能性の増強を示すヒストグラムである。5mMのニコチンアミド(NAM)の存在下又は非存在下で増殖させたアルファ・ベータ枯渇血液細胞から精製したガンマ・デルタT細胞をCFSEで標識して照射NSG免疫不全マウスに注射した。様々な器官由来のCFSE染色細胞の画分を4日後にFACSによって評価した。分析した全ての組織におけるガンマ・デルタ細胞のインビボホーミング及び組織保持に対するNAMの顕著な効果が注目される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、その幾つかの実施形態において、ガンマ・デルタT細胞集団を培養するための方法、培養したガンマ・デルタT細胞集団の治療的使用、及び培養したガンマ・デルタT細胞を含むキットに関する。より詳細には、本発明は、培養したガンマ・デルタT細胞を単独で又は移植用の他の細胞と組み合わせて使用することに関するが、これに限定されない。
【0048】
ナイアシンのアミド型であるニコチンアミド(NAM)(ナイアシンアミド、ビタミンB3)は塩基交換基質であり、モノ及びポリADPリボシルトランスフェラーゼ活性を備えたNAD(+)依存性酵素の強力な阻害剤である。微量栄養素として、ニコチンアミドは、エクスビボ培養における哺乳動物細胞の生存率と増殖を保証するためにマイクロモル量で必要であり、通常は細胞培地の処方に他のビタミンと共に含まれている。他のリンパ球画分と同様に、ガンマ・デルタT細胞は通常、様々な濃度範囲のニコチンアミドを含む培地(約8μMのニコチンアミド(MEMα、RPMI)~約33μM(DMEM))でエクスビボ培養してガンマ・デルタT細胞増殖を強く促進する(例えば、米国特許出願公開第2016/0175358号(Jakobovits et al)を参照)。
【0049】
高濃度のニコチンアミドは、CD34+及びCD133+造血幹細胞及び前駆細胞の増殖と機能性を高めるのに有効であり(例えば、米国特許第7,955,852号及び第8,846,393号を参照)、CD56+ナチュラルキラー細胞の増殖と機能性を高めるのに有効である(例えば、Frei et al, Blood 2011 118:4035を参照)ことが分かっているが、活性化シグナルへの応答性を阻害し、T細胞でのアポトーシスの誘導(例えば、Liu et al J Immunol 2001 167:4942-4947を参照)及び好中球でのアポトーシスの誘導(Fernandes et al, Am J Physiol Lung Cell Mol Phys 2011 300: L354-361)も報告されている。
【0050】
驚くべきことに、本発明者らは本明細書で更に詳述するように、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件下でエクスビボ培養した富化ヒトガンマ・デルタT細胞集団にミリモル濃度のニコチンアミドを添加することによって機能性が増強する(例えば、SCIDマウス宿主に注入した場合にガンマ・デルタT細胞のホーミングと組織保持が高まる)ことを示した。
【0051】
ガンマ・デルタT細胞は、組織恒常性、感染症及び自己免疫疾患、炎症、移植及び腫瘍監視中に免疫応答に関与し、感染細胞及び腫瘍細胞に対して自発的な非MHC制限細胞毒性活性を示し、インビボでウイルス感染及び癌発生に対する耐性を媒介するため、ガンマ・デルタT細胞の機能性を効果的に高める方法は、応答を強くして有害作用を抑えながら腫瘍の治療や感染細胞の排除を行うのに有用となり得る。
【0052】
従って、培養したガンマ・デルタT細胞の機能を効果的に増強し、注入後にインビボでの宿主組織へのガンマ・デルタT細胞のホーミングと保持の可能性を効果的に高めるためのプロトコルを開発することによって、固形腫瘍、悪性腫瘍、ウイルス障害及び自己免疫障害等の治療にガンマ・デルタT細胞を用いた養子免疫治療等の治療の成功度合を改善できるであろう。
【0053】
従って、本発明の実施形態の一様相によれば、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する方法であって、ガンマ・デルタT細胞が富化された選択細胞集団を得ることと、選択細胞集団にガンマ・デルタT細胞増殖の条件をエクスビボで提供することと、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を高めるのに十分な期間に亘って0.5~50mMの範囲のニコチンアミドを供給し、それによって選択細胞集団でのガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強することとを含む方法が提供される。
【0054】
本明細書で使用される「ガンマ・デルタT細胞」という用語は、本明細書において「γδT細胞」、「ガンマデルタT細胞」、更には「gdT-細胞」又は「gdT細胞」と称することもある。
【0055】
ガンマ・デルタT細胞は、γ(ガンマ)鎖とδ(デルタ)鎖で構成されるヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)の発現によって定められる。これによって、αβTCRを発現する、古典的でよく知られているCD4+ヘルパーT細胞やCD8+細胞毒性T細胞とは区別される。γδT細胞の(胸腺)選択の機序はまだ殆ど分かっていない。
【0056】
ガンマ・デルタT細胞は、同じTCR鎖を共有するオリゴクローナル亜集団の組織特異的な局在を示すことが多い。例えば、ヒト末梢血ガンマ・デルタT細胞は主にVガンマ9/Vデルタ2+であり、マウス皮膚ガンマ・デルタT細胞、いわゆる樹状上皮T細胞(DECT細胞)は主にVガンマ5/Vデルタ1+である。一般に、ガンマ・デルタT細胞は上皮組織と粘膜組織で豊富にあり、そこでは病原性攻撃に対する防御の第一線として機能すると考えられている。
【0057】
本明細書において「ガンマ・デルタT細胞活性化」とは、活性化されているT細胞を代表するガンマ・デルタT細胞に関連する任意の測定可能な生物学的現象を意味する。そのような生物学的現象の非限定的な例としては、サイトカイン産生の増加、細胞表面タンパク質の定性的又は定量的組成の変化、T細胞増殖の増加、及び/又はT細胞エフェクター機能(例えば、標的細胞を死滅させること、又は別のエフェクター細胞が標的細胞を死滅させるのを支援すること)の増加が挙げられる。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本発明の方法は、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する。
【0059】
本明細書で使用される「機能」又は「ガンマ・デルタT細胞機能」という用語は、ガンマ・デルタT細胞に起因する全ての生物学的機能を意味する。ガンマ・デルタT細胞機能の非限定的な例としては、例えば、細胞毒性、アポトーシスの誘導、細胞運動性、定方向遊走、サイトカイン及び他の細胞シグナル応答、サイトカイン/ケモカインの産生及び分泌、インビトロでの活性化及び阻害性細胞表面分子の発現、移植された宿主における細胞ホーミング及びインビボ保持、及びインビボでの疾患又は疾患プロセスの変化が挙げられる。幾つかの実施形態では、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体(moiety)への曝露によって増強されるガンマ・デルタT細胞機能としては、CD62L表面マーカーの発現の増強、遊走応答の増強、及びガンマ・デルタT細胞の細胞毒性活性の増強の少なくとも一、更には、注入されたガンマ・デルタT細胞のホーミングとインビボ保持の増強が挙げられる。特定の実施形態では、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体への曝露によって増強されるガンマ・デルタT細胞機能としては、ガンマ・デルタT細胞のCD62L表面マーカーの発現の増強、及び注入されたガンマ・デルタT細胞のホーミングとインビボ保持の増強の少なくとも一が挙げられる。特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞のCD62L表面マーカーの発現と、注入されたガンマ・デルタT細胞のホーミング及びインビボ保持との両方が、ガンマ・デルタT細胞をニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体に曝露することによって増強される。
【0060】
移植における細胞のホーミング及び保持に重要な、CD62L、CXCR-4、CD49e等の接着分子や遊走分子に関するアッセイは当技術分野でよく知られている。細胞におけるCD62L発現は、例えば、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅、ハイブリダイゼーション等によってアッセイすることができる。一実施形態では、ガンマ・デルタT細胞を蛍光標識特異的抗ヒトCD62Lモノクローナル抗体[例えば、CD62L PE、カタログ番号304806、BioLegend社(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)]に曝露し、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって細胞を選別して様々なガンマ・デルタT細胞集団でCD62L発現を検出する。
【0061】
細胞遊走に関するアッセイは当技術分野でよく知られている。細胞の遊走は、例えば、遊出アッセイ又はギャップ閉鎖アッセイによってアッセイすることができる。2チャンバー技法等の遊出アッセイでは、バリア(例えば、フィルター)によって細胞を刺激から分離し、起点からの細胞の喪失、バリアを横切る細胞の蓄積、又はその両方を特定の間隔でカウントして細胞の移動を検出する。ギャップ閉鎖アッセイでは、細胞を目に見えるギャップ(刻み付き寒天プレート、円周囲等)の周辺に配置し、刺激を与えながらインキュベートする。刺激に応答した細胞運動による細胞間の隙間の閉鎖は、サイトメトリー、免疫検出、顕微鏡法/形態計測等を用いて視覚化する。一実施形態では、異なる細胞集団の遊走能は、「Transwell」(商標)遊出アッセイによって確認する。
【0062】
注入又は移植した細胞のホーミングとインビボ保持に関するアッセイは当技術分野でよく知られている。本明細書で使用される「ホーミング」という用語は、注入又は移植した細胞が宿主の標的器官に到達して生存する能力を意味する。例えば、ガンマ・デルタT細胞の標的器官はリンパ組織とすることができ、肝細胞の標的器官は肝実質とすることができ、肺胞細胞の標的器官は肺実質等とすることができる。本明細書で使用される「インビボ保持」という用語は、注入又は移植した細胞が集合し、必要に応じて増殖して標的器官で生存し続ける能力を意味する。移植したガンマ・デルタT細胞のホーミングとインビボ保持をアッセイするための動物モデルとしては、免疫不全の小型哺乳動物(例えば、SCIDマウス及びIL2Rγnullマウス等)が挙げられるが、これらに限定されない。SCID-Huマウスモデルには、ヒト胎児胸腺と肝臓組織又は胎児BM組織を移植したC.B-17scid/scid(SCID)マウスを採用して、移植したヒトガンマ・デルタT細胞の保持と治療潜在能を評価するための適切なモデルを得る。移植した細胞のホーミングとインビボ保持はヒト宿主対象でも評価することができる。一実施形態では、ホーミングとインビボ保持のアッセイは、例えば、本発明に従って有効濃度のニコチンアミドを用いて培養した約15×10個、約15×10個、約15×10個、約15×10個又はそれ以上のヒトガンマ・デルタT細胞富化細胞を注入し、注入から所定時間後(例えば、注入から約5時間、約10時間、約12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月後又はそれ以上後)に屠殺した照射NOD/SCIDマウスで行う。マウスを屠殺した際に、脾臓、骨髄、末梢血及び他の器官の試料について、ヒトガンマ・デルタT細胞の存在をFACSによって評価する。
【0063】
更に「ホーミング及び/又は保持の潜在能」という語句は、宿主生物(例えば、対象)に注入(最も一般的には静脈内注入として血液循環に注入)した際に、細胞(例えば、ガンマ・デルタT細胞)が循環器系を出て宿主の器官や組織に集合する能力を意味する。特に、本明細書で使用される「保持」という用語は、注入された細胞が「ホーミング」及び宿主の組織又は器官での集合に続いてその組織又は器官に留まる能力を意味する。本明細書で使用される「ホーミング及び/又は保持の潜在能を増強する」という語句は、標的組織又は器官へのホーミング及び/又は保持の改善、接着の改善、拒絶の抑制等に起因し得る細胞移植の効率、品質又は迅速性の改善を意味する。
【0064】
細胞毒性(「細胞死滅」)に関するアッセイは当技術分野でよく知られている。リダイレクト死滅アッセイ(redirected killing assays)での使用に適した標的細胞の例としては、癌細胞株、原発性癌細胞、固形腫瘍細胞、白血病細胞又はウイルス感染細胞が挙げられる。特に、K562、BL-2、colo250及び原発性白血病細胞を使用することができるが、他の多くの細胞型のいずれかを使用することができ、当技術分野ではよく知られている(例えば、Sivori et al. (1997) J. Exp. Med. 186: 1129-1136; Vitale et al. (1998) J. Exp. Med. 187: 2065-2072; Pessino et al. (1998) J. Exp. Med. 188: 953-960; Neri et al. (2001) Clin. Diag. Lab. Immun. 8:1131-1135を参照)。細胞死滅は、細胞生存率アッセイ(例えば、色素排除、クロム遊離、CFSE)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)、及び直接観察法によって評価する。
【0065】
細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能は、細胞機能性のマーカー(例えば、CD62L、セレクチンリガンド等の接着分子)の測定によってエクスビボで確認するか、又はSCID-Huマウスモデルへのインビボ注入と移植によって確認することができる。SCID-Huマウスモデルには、ヒト胎児胸腺と肝臓組織又は胎児BM組織を移植したC.B-17scid/scid(SCID)マウスを採用して、移植可能な推定ヒトリンパ球及び他の細胞を評価するための適切なモデルを得る。SCIDマウスはヒト胎児組織で再構成されているため、このモデルはヒト細胞のホーミングと保持を可能にし、ヒト起源の微小環境で機能する。通常、マウスが照射された後、リンパ球細胞が移植片に送達され、FACSや再配置臓器の免疫組織化学等の様々な方法でホーミング/保持を測定する(例えば、以下の材料及び実験方法を参照)。
【0066】
本明細書で使用される「エクスビボ」という用語は、細胞を生体から除去し、生体外(例えば、試験管内)で増殖するプロセスを意味する。
【0067】
本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、実験室で維持された1種以上の細胞株(例えば、NTera2神経細胞、胚性細胞株等)に由来する細胞を生体外部で処置するプロセスを意味する。そのような細胞株は不死化細胞であることが多い。
【0068】
本明細書で使用される「細胞集団」という語句は、本発明の方法に従った増殖又は移植に適した細胞集団を含むことができる、同種又は異種の単離された細胞集団を意味する。好ましい実施形態では、本発明のこの様相の細胞集団の少なくとも一部は、ガンマ・デルタT細胞であり、細胞表面にγ(ガンマ)鎖とδ(デルタ)鎖を含むヘテロ二量体TCRを発現する。
【0069】
幾つかの様相では、本開示はガンマ・デルタT細胞集団のエクスビボ増殖のための方法を提供する。本開示のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団はエクスビボで増殖することができる。本開示のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、APCによって活性化せずに、又はAPC及びアミノホスフェートと共培養せずに増殖することができる。
【0070】
本発明の方法の幾つかの実施形態によれば、ガンマ・デルタT細胞にガンマ・デルタT細胞増殖の条件を提供する。
【0071】
特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件は栄養素とサイトカインの供給を含む。
【0072】
ガンマ・デルタT細胞を支持することができる適切な培地としては、HEM、DMEM、RPMI、F-12等が挙げられる。必要に応じて、培地は細胞代謝に必要な栄養補助剤、例えば、グルタミン及び他のアミノ酸、ビタミン、ミネラル、及びトランスフェリン等の有用なタンパク質等を含むことができる。培地には血清を添加してもよく、添加しなくてもよい。また、培地は、酵母、細菌及び真菌による汚染を防ぐための抗生物質、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等を含むこともできる。細胞を培養する場合、条件を生理学的条件に近くする必要がある(好ましくは、pHは約6~約8、温度は約30℃~約40℃)。幾つかの実施形態では、必要に応じて、少なくとも1種の増殖誘導成長因子、サイトカイン及び/又はケモカイン(例えば、IL-2、IL、IL-4、IL-7、IL-15、IL-12、IL-21、IL-23又はIL-33)及びこれらの組み合わせを培地に補充することができる。特定の実施形態では、IL-2及び/又はIL-15を培地に補充する。増殖誘導成長因子に加えて、他の成長因子を培地に添加することができる。幾つかの例示的な実施形態では、サイトカイン(IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、IL-12、IL-21、IL-23又はIL-33)、成長因子(インスリン及びトランスフェリン、インスリン様成長因子)、アルブミン、脂質(コレステロール、脂質溶液、脂質前駆体)、ビタミン、銅、鉄、セレン、タンパク質加水分解物、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、及び剪断保護剤(プルロニックF-68)を含む、Ex-Vivo10、Ex-Vivo15、Ex-Vivo20、AIMV培地、Optimizer CTS等の無血清培地でガンマ・デルタT細胞を刺激及び増殖する。
【0073】
サイトカイン及び他の成長因子は、典型的には0.5~100ng/mL、又は1.0~80ng/mL、より典型的には5~750ng/mL、更に典型的には5.0~50ng/mLの範囲の濃度で供給する(これら濃度の最大10倍までが企図され得る)が、例えば、Perpo Tech,Inc.(米国、ニュージャージー州、ロッキーヒル)から市販されている。一実施形態では、細胞増殖を可能にする条件はサイトカイン(インターロイキン2又はインターロイキン15)を供給することを含む。特定の実施形態では、20ng/mLのIL-15及び/又はIL-2と共にガンマ・デルタT細胞を培養する。
【0074】
更に、この点に関して、新規サイトカインが継続的に発見されており、その一部を本発明のガンマ・デルタT細胞増殖方法で用いることができることは理解されよう。細胞をヒト対象に導入(又は再導入)する用途の場合、リンパ球培養用のAIM V(登録商標)無血清培地又はMARROWMAX(登録商標)骨髄培地等の無血清製剤を使用するのが好ましいことが多い。このような培地製剤や栄養補助剤は、Invitrogen社(GIBCO社)(カリフォルニア州、カールスバッド)等の商業的供給元から入手可能である。培養物にアミノ酸、抗生物質、及び/又はサイトカインを補充して最適な生存率、増殖、機能性及び/又は生存を向上させることができる。
【0075】
このような無血清培地に更に添加剤を補充して、ガンマ・デルタT細胞の生物学的機能性を維持しながら、浮遊培養(例えば、WAVEバイオリアクター)での高細胞密度ガンマ・デルタT細胞増殖をサポートすることができる。
【0076】
本発明の一様相によれば、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団に細胞増殖の条件をエクスビボで提供し、ガンマ・デルタT細胞をニコチンアミド部分構造体と共にエクスビボで培養することによって、ガンマ・デルタT細胞のエクスビボ培養を行うことができ、それによって、ガンマ・デルタT細胞集団のエクスビボ増殖、及び/又はホーミング及び/又は保持の潜在能のエクスビボ増強を行うことができる。
【0077】
本明細書で使用する「培養する」には、ガンマ・デルタT細胞の維持に必要な化学的及び物理的条件(例えば、温度、ガス)及び必要に応じて成長因子の提供が含まれる。一実施形態では、ガンマ・デルタT細胞の培養には、ガンマ・デルタT細胞にガンマ・デルタT細胞増殖(例えば、急増)用の条件を提供することが含まれる。ガンマ・デルタT細胞増殖をサポートすることができる化学的条件の例としては、緩衝液、栄養素、血清、ビタミン及び抗生物質、更には成長(即ち、培養)培地で通常供給するサイトカイン及び他の成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、細胞成長の条件は、栄養素、血清及びサイトカインを含む。一実施形態では、ガンマ・デルタT培地は、MEMα(イスラエル国、Bet HaEmek、BI社)等の最小必須培地(MEM)及び血清を含む。特定の実施形態では、培地は10%ヒトAB血清(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)を含むMEMαである。本発明での使用に適した他の培地としては、グラスゴー培地(カリフォルニア州、カールスバッド、Gibco社)、RPMI培地(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)又はDMEM(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)が挙げられるが、これらに限定されない。培地の多くは、ビタミン補助剤としてニコチンアミドを含んでいる(例えば、MEMα(8.19μMのニコチンアミド)、RPMI(8.19μMのニコチンアミド)、DMEM(32.78μMのニコチンアミド)及びグラスゴー培地(16.39μMのニコチンアミド))が、本発明の方法は、培地処方に含まれる任意のニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分構造体を補充する外因的添加ニコチンアミド、又は培地成分濃度の全体的な調整によって生じるものに関することに留意されたい。
【0078】
一実施形態によれば、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15及び/又はIL-2)及びニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分構造体と共に培養する。本明細書で使用される「ニコチンアミド部分構造体」という用語は、ニコチンアミドを意味すると共に、ニコチンアミド、その誘導体、類似体及び代謝産物、例えば、NAD、NADH及びNADPH等に由来する生成物を意味し、これらは、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持を効果的且つ優先的に増強することができる。ニコチンアミドの誘導体、類似体及び代謝産物のスクリーニング及びその培養におけるホーミング及び/又は保持に対する効果についての評価は、本明細書に記載のように維持したガンマ・デルタT細胞培養物に添加して行うか、細胞接着アッセイ、ローリングアッセイ及び運動性アッセイ等の機能アッセイに添加して行うか、又は当技術分野で周知のハイスループットアッセイ用に設計されたホーミング及び/又は維持マーカー用の自動スクリーニングプロトコルで行うことができる。
【0079】
本明細書で使用される「ニコチンアミド類似体」という語句は、上述のアッセイや類似のアッセイにおいてニコチンアミドと同様に作用することが知られている任意の分子を意味する。ニコチンアミド類似体の代表例としては、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオール類似体)、ニコチン酸及びα-アミノ-3-インドールプロピオン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
「ニコチンアミド誘導体」という語句は、ニコチンアミド自体又はニコチンアミド類似体の任意の構造的誘導体を更に意味する。このような誘導体の例としては、置換ベンズアミド、置換ニコチンアミド及びニコチンチオアミド及びN置換ニコチンアミド及びニコチンチオアミド、3-アセチルピリジン及びニコチン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の一実施形態では、ニコチンアミド部分構造体はニコチンアミドである。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態での使用に適したニコチンアミド又はニコチンアミド部分構造体の濃度は通常、約0.5mM~約50mM、約1.0mM~約25mM、約1.0mM~約25mM、約2.5mM~約10mM、約5.0mM~約10mM、約0.5mM~約20mMの範囲である。ニコチンアミドの例示的な有効濃度は、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持に対するこのような濃度のニコチンアミドの効果に基づいて、約0.5~約15mM、1.0~10.0mM、通常は2.5又は5.0mMとすることができる。本発明の幾つかの実施形態によれば、ニコチンアミドを供給する際の濃度範囲(mM)は、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.5、約1.75、約2.0、約2.25、約2.5、約2.75、約3.0、約3.25、約3.5、約3.75、約4.0、約4.25、約4.5、約4.75、約5.0、約5.25、約5.5、約5.75、約6.0、約6.25、約6.5、約6.75、約7.0、約7.25、約7.5、約7.75、約8.0、約8.25、約8.5、約8.75、約9.0、約9.25、約9.5、約9.75、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0、約15.0、約16.0、約17.0、約18.0、約20.0mM、約23.0mM、約25.0mM、約30.0mM、約35.0mM、約40.0mM、約45.0mM又は約50.0mMである。全ての有効な中間濃度が企図される。特定の実施形態では、増殖を可能にする条件は0.5~50mM、1.0~10.0mMのニコチンアミドを含む。更に他の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持を増強する条件は5.0mMのニコチンアミドを含む。
【0082】
ニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分構造体の適切な濃度は、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持、又はCD62L発現の任意のアッセイに従って決定することができる。ニコチンアミドの適切な濃度は、同じガンマ・デルタT細胞源(例えば、臍帯血、骨髄又は末梢血調製物)を用いて同じアッセイ及び同様の培養条件下(ニコチンアミドへの曝露期間、ニコチンアミドへの曝露時間、増殖用条件)で試験した、ニコチンアミドが0.1mM未満、0.2mM未満又は0.4mM未満の「対照」培養と比較した場合に、培養でのその使用によってガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の機能を「増強」させる、即ち最終的な増大をもたらす濃度である。
【0083】
本発明の方法に係るガンマ・デルタT細胞の増殖及び増強のための条件は、ガンマ・デルタT細胞との混合細胞集団に存在する他種の細胞の培養にも有益となり得ることに留意されたい。従って、幾つかの実施形態では、本明細書に開示の方法に従ってガンマ・デルタT細胞増殖の条件とニコチンアミドを提供することによって、他のリンパ球細胞(例えば、NK細胞)のホーミング及び/又は保持の潜在能の増強にもつながり、ニコチンアミドを追加せずに培養及び/又は増殖した同様の細胞集団に比べて治療有効性が潜在的により高い増殖細胞集団が得られる。
【0084】
特定の実施形態では、本発明の方法はVガンマ1+、Vガンマ2+、Vガンマ3+、ガンマ・デルタT細胞集団等の様々なガンマ・デルタT細胞集団の機能性を拡大及び増強することができる。場合によっては、ガンマ・デルタT細胞集団のエクスビボでの培養は、36日未満、35日未満、34日未満、33日未満、32日未満、31日未満、30日未満、29日未満、28日未満、27日未満、26日未満、25日未満、24日未満、23日未満、22日未満、21日未満、20日未満、19日未満、18日未満、17日未満、16日未満、15日未満、14日未満、13日未満、12日未満、11日未満、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満で行うことができる。場合によっては、ガンマ・デルタT細胞集団の培養は、1~8週間、1~5週間、1~4週間、1~3週間、1~2週間、1~14日間、2~13日間、1~10日間、2~8日間、1~7日間、3~12日間、及び5~14日間行う。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞富化細胞をニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体に短期間(数分、数時間、1日間等)に亘ってエクスビボ曝露することも想定される。
【0085】
一部の研究において、栄養素、血清、サイトカイン及びニコチンアミドを用いた培養によるガンマ・デルタT細胞のエクスビボ増殖では培地の補充や培養期間中のエンジニアリングは必要ないが、他の研究では、ガンマ・デルタT細胞培養中の様々な間隔での培地の補充(「栄養補給」)が推奨されている。本発明の特定の実施形態では、培養期間中、ガンマ・デルタT細胞画分に「栄養補給」を行う。従って、特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞集団の培養は、エクスビボ培養の開始から8~10日後にガンマ・デルタT細胞富化細胞に新しい栄養素、血清、サイトカイン及びニコチンアミドを補充することを含む。幾つかの実施形態では、エクスビボ培養の開始から8~9日後、エクスビボ培養の開始から9~10日後、又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の培養開始から8~10日後に補充を行う。幾つかの実施形態では、補充(又は「栄養補給」)は、培養の培地の約30~80%、約40~70%又は約45~55%を除去し、除去した培地と同じ組成を有し、同じレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-2及び/又はIL-15)及びニコチンアミドを有する新しい培地(その量は除去した培地の量と同様(例えば、同等))で置換することを含む。幾つかの実施形態では、補充(又は「栄養補給」)は、培養の培地の約50%を除去し、除去した培地を、同じ組成を有し、同じレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-2及び/又はIL-15)及びニコチンアミドを有する新しい培地(その量は除去した培地の量と同様(例えば、同等))で置換することを含む。他の実施形態では、栄養補給後の培地量は、ガンマ・デルタT細胞富化細胞の培養開始(「播種」)時の元の培地量の約2倍に達する。
【0086】
ガンマ・デルタ細胞集団は様々な方法と装置を用いて培養することができる。培養装置の選択は通常、培養の規模と目的に基づく。細胞培養のスケールアップでは専用の装置を使用するのが好ましい。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞富化画分の培養は、フラスコ中、100~4000×10個(細胞)/フラスコの細胞密度で行う。特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞富化画分の培養(例えば、エクスビボ培養の開始及び/又は「栄養補給」)は、フラスコ中、200~300×10個(細胞)/フラスコの細胞密度で行う。特定の実施形態では、フラスコは、G-Rex培養装置(G-Rex 100M又は閉鎖系G-Rex MCS(ミネソタ州、セントポール、WolfWilson社))等のガス透過性膜を含むフラスコである。
【0087】
ガンマ・デルタT細胞富化細胞の培養は、支持細胞又は支持細胞層の存在下又は非存在下で行うことができる。支持細胞層のないエクスビボ培養は、培養細胞の臨床応用に非常に有利である。従って、一実施形態によれば、ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の培養は支持細胞層又は支持細胞を用いずに行う。
【0088】
幾つかの様相では、ガンマ・デルタT細胞を活性化剤と接触させて様々なガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を増殖させるための方法を提供する。場合によっては、活性化剤は、モノクローナル抗体等のガンマ・デルタT細胞の細胞表面受容体の特定のエピトープに結合する。活性化剤は、デルタ1、デルタ2、又はデルタ3細胞集団等の1種以上のガンマ・デルタT細胞の増殖を特異的に活性化することができる。幾つかの実施形態では、活性化剤はデルタ1細胞集団の増殖を特異的に活性化する。他の場合には、活性化剤はデルタ2細胞集団の増殖を特異的に活性化する。活性化剤はガンマ・デルタT細胞の増殖を速い増殖速度で刺激することがある。
【0089】
幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞集団は様々な割合のデルタ1、デルタ2及びデルタ3T細胞を含む。ガンマ・デルタT細胞集団は、例えば、90%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、80%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、70%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、60%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、50%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、40%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、30%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、20%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、10%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、又は5%未満のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞を含むことができる。或いは、ガンマ・デルタT細胞集団は、5%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、10%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、20%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、30%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、40%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、50%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、60%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、70%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、80%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞、又は90%超のデルタ1T細胞、又はデルタ2T細胞、又はデルタ3T細胞を含むことができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞は1種以上の抗原との接触に応答して急速に増殖することができる。Vガンマ9Vデルタ2+ガンマ・デルタT細胞等の一部のガンマ・デルタT細胞は、組織培養中にプレニルピロホスフェート、アルキルアミン、及び代謝産物又は微生物抽出物等の一部の抗原との接触に応答してエクスビボで急速に増殖する。更に、Vガンマ2Vデルタ2+ガンマ・デルタT細胞等の一部の野生型ガンマ・デルタT細胞は、ある種のワクチン接種に応答してヒトの体内(インビボ)で急速に増殖する。刺激されたガンマ・デルタT細胞は、複合試料からのガンマ・デルタT細胞の単離を促進することができる多くの抗原提示分子、共刺激分子及び接着分子を示すことができる。複合試料内のガンマ・デルタT細胞は、少なくとも1種の抗原を用いて1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間又は別の適切な期間に亘ってインビトロで刺激することができる。適切な抗原でガンマ・デルタT細胞を刺激すると、ガンマ・デルタT細胞集団をエクスビボで増殖させることができる。
【0091】
複合試料からのガンマ・デルタT細胞の増殖を刺激するのに使用できる抗原の非限定的な例としては、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)等のプレニルピロホスフェート、アルキルアミン、ヒト微生物病原体の代謝産物、共生細菌の代謝産物、-メチル-3-ブテニル-1-ピロホスフェート(2M3B1PP)、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-ブト-2-エニルピロホスフェート(HMB-PP)、エチルピロホスフェート(EPP)、ファルネシルピロホスフェート(FPP)、ジメチルアリルホスフェート(DMAP)、ジメチルアリルピロホスフェート(DMAPP)、エチル-アデノシントリホスフェート(EPPPA)、ゲラニルピロホスフェート(GPP)、ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)、イソペンテニル-アデノシントリホスフェート(IPPPA)、モノエチルホスフェート(MEP)、モノエチルピロホスフェート(MEPP)、3-ホルミル-1-ブチル-ピロホスフェート(TUBAg1)、X-ピロホスフェート(TUBAg2)、3-ホルミル-1-ブチル-ウリジントリホスフェート(TUBAg3)、3-ホルミル-1-ブチル-デオキシチミジントリホスフェート(TUBAg4)、モノエチルアルキルアミン、アリルピロホスフェート、クロトイルピロホスフェート、ジメチルアリル-ガンマ-ウリジントリホスフェート、クロトイル-ガンマ-ウリジントリホスフェート、アリル-ガンマ-ウリジントリホスフェート、エチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、イソ-アミルアミン及び窒素含有ビスホスホネートが挙げられる。
【0092】
本明細書に記載の活性化剤と共刺激剤を用いてガンマ・デルタT細胞の活性化及び/又は増殖を行って、特定のガンマ・デルタT細胞増殖及び持続集団を誘発することができる。幾つかの実施形態では、様々な培養物由来のガンマ・デルタT細胞の活性化及び増殖によって、別個のクローナル又は混合ポリクローナル集団サブセットを得ることができる。幾つかの実施形態では、様々なアゴニスト剤を使用して、特定のガンマ・デルタ活性化シグナルを提供する剤を同定することができる。一様相では、特定のガンマ・デルタ活性化シグナルを提供する剤は、ガンマ・デルタTCRに対する様々なモノクローナル抗体(MAb)とすることができる。一様相では、MAbはガンマTCR及び/又はデルタTCRの定常領域又は可変領域の様々なエピトープに結合することができる。一様相では、MAbはガンマ・デルタTCRパンMAbを含むことができる。一様相では、ガンマ・デルタTCRパンMAbは、デルタ1及びデルタ2細胞集団を含む両方の様々なガンマ及びデルタTCRによって共有されるドメインを認識することができる。一様相では、抗体は5A6.E9(Thermo scientific社)、B1(Biolegend社)、IMMU510及び/又は11F12(Beckman Coulter社)とすることができる。一様相では、ガンマ鎖の可変領域に固有の特定のドメインにMAbを向けることができ(7A5 Mab、Vガンマ9 TCR(Thermo Scientific社#TCR1720)等に向けられる)、又はVデルタ1可変領域上のドメイン(Mab TS8.2(Thermo Scientific社#TCR1730;MAb TC1、MAb R9.12(Beckman Coulter社))、又はVデルタ2鎖(MAb 15D(Thermo Scientific社#TCR1732))に向けることができる。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタTCRの様々なドメインに対する抗体(パン抗体及びサブセット集団上の特定の可変領域エピトープを認識する抗体)を組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞活性化因子としては、MICA等のガンマ・デルタTCR結合剤、NKG2Dに対するアゴニスト抗体、MICAの(Fc標識)融合タンパク質、ULBP1、ULBP3(ミネソタ州、ミネアポリス、R&D systems社)、ULBP2、又はULBP6(中国、北京、Sino Biological社)を挙げることができる。幾つかの実施形態では、細胞アネルギー及びアポトーシスを誘導することなく特定のガンマ・デルタT細胞増殖を誘発するのを支援するコンパニオン共刺激剤を組み合わせて使用することができ、例えば、NKG2D、CD161、CD70、JAML、DNAXアクセサリー分子-1(DNAM-1)ICOS、CD27、CD137、CD30、HVEM、SLAM、CD122、DAP、CD28-等のガンマ・デルタ細胞で発現する受容体へのリガンド、又はCD2及びCD3分子の固有のエピトープに特異的な抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
エクスビボでガンマ・デルタT細胞集団の増殖を促進するのに使用できる試薬の非限定的な例としては、抗CD3又は抗CD2抗体、抗CD27抗体、抗CD30抗体、抗CD70抗体、抗OX40抗体、IL-2、IL-15、IL-12、IL-9、IL-33、IL-18、又はIL-21、CD70(CD27リガンド)、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカバリンA(ConA)、ポークウィード(PWM)、タンパク質ピーナッツ凝集素(PNA)、大豆凝集素(SBA)、レンズマメ凝集素(LCA)、エンドウ凝集素(PSA)、ヘリックスポマティア凝集素(HPA)、Vicia gramineaレクチン(VGA)、又はT細胞増殖を刺激することができる他の適切なマイトジェンが挙げられる。
【0094】
幾つかの様相では、本開示は対象から単離されたガンマ・デルタT細胞を培養するための方法を提供する。ガンマ・デルタT細胞は対象の複合試料から単離することができる。複合試料は、末梢血試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検試料、組織、リンパ液、又は外部環境に直接接触している対象の上皮部位由来のものとすることができ、又は幹前駆細胞に由来するものとすることができる。特定の実施形態では、試料は、筋肉、皮膚、骨、リンパ器官、膵臓、肝臓、胆嚢、腎臓、消化管器官、呼吸器官、生殖器官、尿路器官、血液関連器官、胸腺、脾臓及び神経系器官から成る群より選択される器官に由来する。特定の実施形態では、ガンマ・デルタ細胞又はガンマ・デルタ細胞集団は、造血細胞、臍帯細胞、末梢血細胞(動員又は非動員)及び骨髄細胞から成る群より選択されるソースに由来する。更に他の実施形態では、ガンマ・デルタ細胞又は集団は、骨髄又は末梢血試料、新生児臍帯血、又は単核細胞画分から単離する。
【0095】
例えば、フローサイトメトリー技術を用いて1種以上の細胞表面マーカーを発現するガンマ・デルタT細胞を選別することによって、ガンマ・デルタT細胞を対象の複合試料から直接単離することができる。野生型ガンマ・デルタT細胞は、ガンマ・デルタT細胞に関連し得る多数の抗原認識分子、抗原提示分子、共刺激分子及び接着分子を示す。1種以上の細胞表面マーカー、例えば、特定のガンマ・デルタTCR、抗原認識分子、抗原提示分子、リガンド、接着分子又は共刺激分子を用いて複合試料から野生型ガンマ・デルタT細胞を単離することができる。ガンマ・デルタT細胞に関連する様々な分子、又はガンマ・デルタT細胞によって発現される様々な分子を用いて複合試料からガンマ・デルタT細胞を単離することができる。幾つかの実施形態では、本開示は、Vデルタ1+、Vデルタ2+、Vデルタ3+細胞又はこれらの任意の組み合わせの混合集団を単離するための方法を提供する。
【0096】
例えば、Ficoll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare社)システム等のアフェレーシス機、又は他の適切なデバイス/システムを用いて末梢血単核細胞を対象から採取することができる。ガンマ・デルタT細胞又は所望のガンマ・デルタT細胞亜集団は、例えば、フローサイトメトリー技術を用いて採取した試料から精製することができる。臍帯血細胞は対象の出生時に臍帯血から得ることもできる。特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、アフェレーシス試料からのものか、或いはアフェレーシス試料に由来する。
【0097】
採取したガンマ・デルタT細胞で発現する細胞表面マーカーの陽性選択及び/又は陰性選択を用いて、ガンマ・デルタT細胞又は類似の細胞表面マーカーを発現するガンマ・デルタT細胞集団を末梢血試料、臍帯血試料、腫瘍、腫瘍生検試料、組織、リンパ液から、又は対象の上皮試料から直接単離することができる。例えば、ガンマ・デルタT細胞は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD44、Kit、TCRアルファ、TCRベータ、TCRデルタ、NKG2D、CD70、CD27、CD30、CD16、CD337(NKp30)、CD336(NKp46)、OX40、CD46、CCR7及び他の適切な細胞表面マーカーの陽性発現又は陰性発現に基づいて複合試料から単離することができる。特定の実施形態では、選択した細胞集団は、TCRアルファ・ベータT細胞枯渇(陰性選択)によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である。そのようなガンマ・デルタT細胞富化細胞集団は、かなりの割合の他の細胞型(NK細胞等)を含み得ることが理解されよう。
【0098】
更に他の実施形態では、選択した細胞集団は、TCRガンマ・デルタT細胞の陽性選択によってガンマ・デルタT細胞が富化されたリンパ球細胞集団である。そのようなガンマ・デルタT細胞富化細胞集団では非ガンマ・デルタT細胞が少ないことが理解されよう。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞を陽性選択で富化した細胞集団はNK細胞を欠いている。
【0099】
エクスビボ培養の複合試料からガンマ・デルタT細胞を分離することができる。特定の実施形態では、富化ガンマ・デルタT細胞集団は、その特定の活性化及び増殖前に生成することができる。幾つかの実施形態では、単球、T細胞、B細胞及びNK細胞等の更なる細胞集団が富化ガンマ・デルタT細胞集団に含まれており、場合によっては、ガンマ・デルタT細胞と共に活性化及び増殖することができる。幾つかの様相では、ガンマ・デルタT細胞の活性化と増殖は天然APCや改変APCの非存在下で行う。幾つかの様相では、腫瘍試料からのガンマ・デルタT細胞の単離と増殖は、ガンマ・デルタTCRに特異的な抗体等の固定化ガンマ・デルタT細胞マイトジェン、及びレクチン等の他のガンマ・デルタTCR活性化剤を用いて行うことができる。
【0100】
特定の実施形態では、ガンマ・デルタT細胞富化細胞は、ガンマ・デルタT細胞富化細胞培養の開始から14~16日後に培養物から収集する。細胞の収集は手作業で行うことができ、付着した細胞をリリースする(例えば、培養容器の表面を「削る」)ことによって行うか、又は培養容器から細胞を効率的に洗い流して細胞を自動的に回収するように設計された細胞収集装置によって行う。特定の実施形態では、細胞収集装置(例えば、収集装置G-Rex MCS(ミネソタ州、セントポール、WolfWilson社))によって増殖した細胞画分を培養容器から収集する。
【0101】
幾つかの実施形態では、増殖したガンマ・デルタT細胞富化細胞を培養物から収集して、培養容器から細胞の大部分又はほぼ全てを除去する。他の実施形態では、収集は2以上の工程で行うことができ、未収集の細胞を後に収集するまで培養物に保持させることができる。2部分の収集は、最初の部分と2番目の部分の収集の間に数時間、数日間、又はそれ以上の間隔を開けて行うことができる。
【0102】
移植用の増殖したガンマ・デルタT細胞富化細胞を調製するために、収集した細胞を培地で洗浄し、重要なパラメータを評価し、体積を調整して臨床的に妥当な期間に亘って注入に適した濃度にする必要がある。
【0103】
収集後、増殖したガンマ・デルタT細胞富化細胞集団は、手作業で培地を含まないように洗浄することができ、又は好ましくは臨床応用のために、閉鎖系を用いた自動装置によって洗浄することができる。洗浄した細胞を注入溶液(例えば、注入溶液の一例は8%w/v HSAと6.8%w/vデキストラン-40を含む)で再構成することができる。幾つかの実施形態では、再構成を閉鎖系で行う。幾つかの実施形態では、本発明の方法及び組成物と共に使用する上での適合性に関して注入溶液をスクリーニングする。適切な注入溶液を選択するための例示的な判断基準として、細菌、酵母又はカビの増殖がないこと、エンドトキシン含有量が0.5Eu/mL未満であること、及び透明で異物のない外観であることを示す安全性試験が挙げられる。
【0104】
ガンマ・デルタT細胞及びガンマ・デルタT細胞富化集団をエクスビボで培養するための上述の方法によって、特に、ガンマ・デルタT細胞及びガンマ・デルタT細胞富化細胞の培養集団を得ることができる。
【0105】
従って、更に本発明の一様相によれば、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体が0.1mM未満である以外は同一の培養条件下で培養したガンマ・デルタT細胞及び/又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の集団と比較して、CD62L発現の増強、遊走応答の増強、ホーミングとインビボ保持の増強、及び細胞毒性活性の増加の少なくとも一によって特徴付けられるガンマ・デルタT細胞集団が提供される。幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞及び/又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の集団は、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分構造体が0.1mM未満である以外は同一の培養条件下で培養したガンマ・デルタT細胞富化細胞の集団と比較して、CD62L発現の増強、遊走応答の増強、ホーミング及び/又はインビボ保持の増強、及び細胞毒性活性の増加の内の少なくともいずれか2特性、少なくともいずれか3特性、少なくともいずれか4特性、又は5特性全てによって特徴付けられる。
【0106】
実施例1において、本発明者らは、本発明の方法に従って調製したガンマ・デルタT細胞集団が、細胞接着及び「ローリング」に重要な細胞表面マーカーCD62L(L-セレクチン)の発現を増加させたことを示した。実施例2において、本発明者らは、本発明の方法に従って調製したガンマ・デルタT細胞富化集団が、標的器官(例えば、脾臓、骨髄)における局在化やインビボ保持によって実証されたように、インビボ機能的潜在能を高めたことを示した。従って、本発明の幾つかの実施形態の特定の様相では、移植した際のCD62L発現の増強とホーミング及び/又はインビボ保持の増強の少なくとも一によって特徴付けられるガンマ・デルタT細胞富化細胞集団が提供される。
【0107】
幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞を遺伝子改変することができる。ガンマ・デルタT細胞の遺伝子改変は、アルファ・ベータTCR、ガンマ・デルタTCR、抗体をコードするCAR、その抗原結合断片、又はリンパ球活性化ドメイン等の腫瘍認識部分を発現する構築物を、単離されたガンマ・デルタT細胞のゲノム、サイトカイン(例えば、IL-15、IL-12、IL-2、IL-7、IL-21、IL-18、IL-19、IL-33、IL-4、IL-9、IL-23、IL1ベータ)に安定的に組み込んで、エクスビボ及びインビボでT細胞の増殖、生存及び機能を増強することを含むことができる。単離したガンマ・デルタT細胞の遺伝子改変は、単離したガンマ・デルタT細胞のゲノム内の1種以上の内在性遺伝子(MHC遺伝子座等)からの遺伝子発現を欠失又は破壊することを含むこともできる。
【0108】
遺伝子治療:長期的な遺伝子治療を成功させるには、導入遺伝子が遺伝子改変細胞のゲノム内に高頻度で安定的に組み込まれることが必須要件である。ウイルスベース(例えば、レトロウイルス)ベクターは、導入遺伝子を宿主ゲノムに組み込むために活発な細胞分裂を必要とする。従って、一部の未刺激の新しい細胞集団へ遺伝子導入することは非常に非効率的である。エクスビボで選択したガンマ・デルタT細胞集団を保存及び処理し、そのホーミングと保持の潜在能を増強する能力は、遺伝子改変細胞移植利用の成功の可能性を高めるであろう。
【0109】
養子免疫治療:エクスビボで増殖し、規定されたリンパ系亜集団が研究されており、様々な悪性腫瘍、免疫不全、ウイルス性疾患及び遺伝性疾患の養子免疫治療に使用されている[Freedman Nature Medicine 2: 46, (1996); Heslop Nature Medicine 2: 551, (1996); Protti Cancer Res 56: 1210, (1996)]。
【0110】
この治療は、必要な免疫応答を増強するか、又は不十分な機能を置き換える。このアプローチは、Rosenberg et al.[Rosenberg J Natl Cancer Inst. 85: 622, 1993]によって、多数の自家性及び同種異系エクスビボ増殖非特異的キラーT細胞と、それに続いてエクスビボ増殖特異的腫瘍浸潤性リンパ球を用いて臨床的に開拓された。
【0111】
本明細書に詳述のように、ガンマ・デルタT細胞は治療用途として非常に望ましい。従って、本発明の実施形態の一様相によれば、増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団を含む治療用細胞組成物であって、細胞集団は、ガンマ・デルタT細胞増殖の条件下及び0.5~50mMの範囲の量のニコチンアミドを用いてエクスビボで培養を行ったものであり、増殖させた選択ガンマ・デルタT細胞集団は、同一の条件下及び0.1mM以下のニコチンアミドを用いて増殖させた同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、ガンマ・デルタT細胞ホーミング及び/又は保持の潜在能の増強、及び細胞表面マーカーCD62L(L-セレクチン)の発現の増強の少なくとも一によって特徴付けられる、治療用細胞組成物が提供される。特定の実施形態では、治療用細胞組成物は本発明の方法に従って培養したガンマ・デルタT細胞を含む。
【0112】
幾つかの実施形態では、治療用細胞組成物は、増殖したガンマ・デルタT細胞富化集団と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物である。上で詳述したように、ガンマ・デルタT細胞富化細胞のエクスビボ培養は、ガンマ・デルタT細胞の移植又は注入において有利に用いることができる。従って、本発明の他の様相によれば、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞富化細胞又は集団をレシピエントへ移植又は注入する方法が提供される。本発明のこの様相に係る方法は、(a)本発明の方法に係るガンマ・デルタT細胞増殖の条件とニコチンアミドを用い、選択ガンマ・デルタT細胞集団を培養して前記細胞集団をエクスビボで増殖させ(前記増殖した選択ガンマ・デルタT細胞集団は、0.5~50nMのニコチンアミドを用いずに増殖させた、同様の選択ガンマ・デルタT細胞集団と比較して、ガンマ・デルタT細胞のホーミング及び/又は保持の潜在能が増強されている)、(b)増殖したガンマ・デルタT細胞をそれを必要とする対象に注入することによって行う。
【0113】
本発明は、本発明の方法に従って調製した増殖ガンマ・デルタT細胞又は集団と薬学的に許容し得る担体とを含む医薬組成物も想定している。本発明の方法に従って調製した増殖ガンマ・デルタT細胞又は集団、及び本明細書に記載の増殖ガンマ・デルタT細胞集団を含む医薬組成物は予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。治療用途において、この組成物は、既に疾患又は病態に罹患している対象に、その疾患又は病態の症状を治癒又は少なくとも一部停止させるのに十分な量を投与することができる。ガンマ・デルタT細胞又は集団を投与して病態の発症、罹患又は悪化の可能性を減らすこともできる。増殖ガンマ・デルタT細胞集団、又は本発明の方法に従って増殖したガンマ・デルタT細胞を含む組成物の治療的使用における有効量は、疾患又は病態の重症度及び経過、以前の治療、対象の健康状態、重量及び/又は薬物への反応、及び/又は治療する医師の判断に基づいて変わり得る。
【0114】
増殖ガンマ・デルタT細胞集団又は本開示のそのような細胞集団を含む組成物を用いて病態の治療を必要とする対象を治療することができる。病態の例としては、癌、感染症、自己免疫疾患及び敗血症が挙げられる。対象は、ヒト、チンパンジー等の非ヒト霊長類、及び他の類人猿やサル種、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜、ウサギ、イヌ、ネコ等の飼育動物、ラット、マウス、モルモット等の齧歯動物を含む実験動物とすることができる。特定の実施形態では、治療される対象はヒト対象である。対象の年齢は問わない。対象は、例えば、高齢者、成人、青年、青年期前の若者、小児、幼児、乳児とすることができる。
【0115】
増殖ガンマ・デルタT細胞集団、又は本発明の方法に従って増殖させたガンマ・デルタT細胞集団を含む組成物を用いて対象の病態(例えば、病気)を治療する方法は、本発明の増殖ガンマ・デルタT細胞又は増殖ガンマ・デルタT細胞集団の治療有効量を対象に投与することを含むことができる。本開示のガンマ・デルタT細胞は、様々なレジメン(例えば、タイミング、濃度、投与量、治療間の間隔、及び/又は処方)で投与することができる。そのようなガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の投与を受けている又は受ける予定の対象は、本開示のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を投与する前に、例えば、化学療法、放射線照射、又はその両方の組み合わせでプレコンディショニングすることもできる。治療の一部として、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を第1のレジメンで対象に投与することができ、対象をモニターして、第1のレジメンでの治療が所与のレベルの治療効果を満たすかどうか決定することができる。場合によっては、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団、又は他のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を第2のレジメンで対象に投与することができる。対象を治療するための方法の一例では、少なくとも1種のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を、所与の病態(例えば、癌)を有するか又は有すると疑われる対象に投与し、必要に応じて第1のレジメンで投与する。続いて、例えば、医療提供者(例えば、治療する医師又は看護師)によって対象をモニターし、例えば、対象の病態の治療における増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の有効性を確認又は測定することができ、或いは、対象におけるガンマ・デルタT細胞集団のインビボ増殖、ホーミング及び/又は保持を確認することもできる。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の他のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を第2のレジメンで対象に投与するが、第2のレジメンは第1のレジメンと同じであってもよく、第1のレジメンとは異なっていてもよい。幾つかのケースでは、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の投与が有効であること(例えば、1回の投与で病態を治療するのに十分となり得る)が見出され、十分である。増殖ガンマ・デルタT細胞集団は、その同種異系及び普遍的なドナー特性に起因して、異なるMHCハプロタイプを有する様々な対象に投与することができる。ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、対象に投与する前に凍結又は凍結保存することができる。
【0116】
幾つかの実施形態において、そのようなガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の投与を受けている又は受ける予定の対象は、本開示のガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の投与と同時に、化学療法、放射線照射又はその両方の組み合わせ等の別の癌治療によって治療することもできる。他の実施形態では、そのようなガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、化学療法、放射線照射、外科手術又はこれらの組み合わせ等の別の癌治療の前に投与することができる。
【0117】
増殖ガンマ・デルタT細胞集団は、同一又は異なる腫瘍認識部分、又は同一及び異なる腫瘍認識部分の組み合わせを発現する2種以上の細胞を含むことができる。
【0118】
一実施形態では、増殖ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団は、固形腫瘍、転移性癌又は悪性腫瘍等の癌を抑制又は排除するか、又はその発生又は再発を防止するのに有効な量を投与する。「固形腫瘍を抑制又は排除するか、又はその発生又は再発を防止するのに有効な量」又は「過剰増殖性障害を抑制又は排除するか、又はその発生又は再発を防止するのに有効な量」とは、患者の検査データ、生存データ、腫瘍マーカーレベルの上昇又は抑制、遺伝的プロファイル又は環境因子への曝露に基づく感受性の低下によって測定される、腫瘍の病状又は過剰増殖性障害の治療後の患者の転帰又は生存を改善する治療用組成物の量を意味する。「腫瘍増殖の阻害」とは、腫瘍細胞のサイズ又は生存率又は数を低下させることを意味する。「癌」、「悪性腫瘍」、「固形腫瘍」又は「過剰増殖性障害」は同義語として使用し、無制御で異常な細胞増殖、患部細胞が局所的に伝播するか又は血流及びリンパ系を介して体の他の部分に伝播する(即ち、転移する)能力、及び多くの特有な構造的特徴及び/又は分子的特徴のいずれかによって特徴付けられる多くの疾患のいずれかを意味する。「癌性」又は「悪性細胞」又は「固形腫瘍細胞」は、特定の構造特性を有し、分化がなく、浸潤及び転移が可能である細胞として理解される。「癌」とは、哺乳動物で見られる全種類の癌又は腫瘍又は悪性腫瘍(癌腫及び肉腫を含む)を意味する。例としては、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、脳癌、頭頸部癌、髄芽腫、骨癌、肝臓癌、結腸癌、泌尿生殖器癌、膀胱癌、泌尿器癌、腎臓癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、黒色腫、中皮腫、肉腫が挙げられる(DeVita, et al., (eds.), 2001, Cancer Principles and Practice of Oncology, 6th. Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.を参照、この参考文献の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。
【0119】
「癌関連」とは、対象細胞における悪性腫瘍の発症に対する、核酸とその発現、又はその欠如との関係、又はタンパク質とそのレベル又は活性、又はその欠如との関係を意味する。例えば、癌は、正常で健康な細胞では発現しないか又はより低レベルで発現する特定の遺伝子の発現と関連する場合がある。逆に、癌関連遺伝子は、悪性細胞(又は形質転換中の細胞)で発現しない遺伝子、又は正常で健康な細胞で発現するより低いレベルで悪性細胞で発現する遺伝子とすることができる。
【0120】
「過剰増殖性疾患」とは、細胞が正常な組織増殖よりも急速に増殖する任意の疾患又は障害を意味する。従って、過剰増殖細胞は正常細胞よりも急速に増殖している細胞である。
【0121】
「進行癌」とは、原発腫瘍部位に局在しなくなった癌、又は対癌米国合同委員会(AJCC)によるとステージIII又はIVの癌を意味する。
【0122】
「耐容性が良い」とは、治療の結果として生じ、治療の決定に影響を及ぼし得る健康状態に悪化がないことを意味する。
【0123】
「転移性」とは、免疫不全マウスの乳房脂肪パッド及び/又は循環器への注射時に免疫不全マウスの肺、肝臓、骨又は脳に二次腫瘍病変を確立し得る腫瘍細胞、例えば、ヒト固形腫瘍又は泌尿生殖器悪性腫瘍を意味する。
【0124】
「固形腫瘍」としては、肉腫、黒色腫、癌腫又は他の固形腫瘍癌が挙げられるが、これらに限定されない。「肉腫」とは、胚性結合組織のような物質で構成され、一般に線維状又は均質な物質に埋め込まれた密集細胞で構成される腫瘍を意味する。肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、メラノ肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメチ肉腫、脂質肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ボトリオイド肉腫、緑色肉腫、絨毛癌、胚性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球肉腫、ジェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血球肉腫、悪性間葉肉腫、骨膜肉腫、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫及び毛細血管拡張性肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
「黒色腫」とは、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味する。黒色腫としては、例えば、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子由来黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫及び表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0126】
「癌腫」とは、周囲の組織に浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞で構成された悪性の新しい増殖を意味する。癌腫の例としては、例えば、腺房癌腫、房状癌腫、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌腫、腺腫性癌腫、副腎皮質癌腫、肺胞癌腫、肺胞細胞癌腫、基底細胞癌腫、基底細胞性癌腫、類基底癌腫、基底扁平細胞癌腫、気管支肺胞上皮癌腫、細気管支癌腫、気管支原性癌腫、大脳様癌腫、胆管細胞癌腫、絨毛性癌腫、膠質癌腫、面皰癌腫、体癌腫、篩状癌腫、鎧状癌腫、皮膚癌腫、円柱状癌腫、円柱状細胞癌腫、腺管癌腫、硬性癌腫、胚性癌腫、脳様癌腫、類表皮癌腫、上皮アデノイド癌腫、外方増殖性癌腫、潰瘍癌腫、線維質癌腫、膠様癌腫、ゼラチン状癌腫、巨細胞癌腫、巨大細胞癌腫、腺癌腫、顆粒膜細胞癌腫、毛母癌腫、ヘマトイド癌腫、肝細胞腺癌腫、ハースル細胞癌腫、硝子質癌腫、副腎様癌腫、乳児胚性癌腫、粘膜内癌腫、表皮内癌腫、上皮内癌腫、クロムペッヘル癌腫、クルチツキー細胞癌腫、大細胞癌腫、レンズ核癌腫、レンズ状癌腫、脂肪癌腫、リンパ上皮癌腫、髄質癌腫、髄様癌腫、黒色性癌腫、軟性癌腫、粘液性癌腫、粘液腺癌腫、粘液細胞癌腫、粘液性類表皮癌、粘液癌腫、粘液性癌腫、粘液腫様癌腫、上咽頭癌腫、燕麦細胞癌腫、骨化性癌腫、類骨癌腫、乳頭癌腫、門脈周囲癌腫、前浸潤性癌腫、有棘細胞癌腫、粥状癌腫、腎臓の腎細胞癌腫、予備細胞癌腫、肉腫様癌腫、シュナイダー癌腫、スキルス癌腫、陰嚢癌腫、印環細胞癌腫、単純癌腫、小細胞癌腫、ソラノイド癌腫、球状細胞癌腫、紡錘細胞癌腫、海綿状癌腫、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌腫、ストリング癌腫、毛細管拡張性癌腫、毛細血管拡張症様癌腫、移行上皮癌腫、結節癌腫、結節性癌腫、疣状癌腫及び絨毛状癌腫が挙げられる。
【0127】
「白血病」とは造血器官の進行性の悪性疾患を意味し、血液と骨髄での白血球とその前駆体の歪んだ増殖及び発症によって一般に特徴付けられる。白血病は、(1)この疾患の期間及び性質(急性又は慢性)、(2)関与した細胞の型、即ち、ミエロイド(骨髄性)、リンパ様(リンパ向性)、又は単球、及び(3)血中白血性又は無白血性(亜白血性)である異常細胞の数の増加又は非増加に基づいて一般に臨床的に分別される。白血病としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、リューコサイテミア性白血病、好塩基球性白血病、芽球白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胚性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血芽球性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ向性白血病、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞白血病、マスト細胞白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病、及び未分化細胞白血病が挙げられる。本発明の方法、組成物又はガンマ・デルタT細胞富化細胞集団で治療又は予防することができる更なる癌としては、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞型肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、泌尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質性癌、及び前立腺癌が挙げられる。
【0128】
本発明のこの様相の他の特定の実施形態では、前記対象への造血移植、造血前駆細胞移植又は造血幹細胞移植と同時、その後又はその前に上述の方法を行う。
【0129】
特定の実施形態では、エクスビボ増殖造血幹細胞による治療前、治療と同時、又は治療後に本発明の増殖ガンマ・デルタT細胞を対象に移植する(例えば、注入する)。
【0130】
幾つかの特定の実施形態では、それを必要とする対象は、1.0mM超のニコチンアミドと共に培養して増殖した造血幹細胞の過去、現在又は将来のレシピエントである。ミリモル濃度のニコチンアミドと共に増殖したそのような造血幹細胞集団(例えば、NiCord(商標)、イスラエル国、エルサレム、Gamida-Cell社)の調製及びこの細胞集団によって患者を治療するためのプロトコルは、国際公開第2018/211487号及び第2018/211509号、及び米国特許第7,955,852号、第8,187,876号及び第8,846,393号に詳細に記載されている。特定の実施形態では、それを必要とする対象は、NiCord(商標)による治療後の患者である。更に他の特定の実施形態では、それを必要とする対象は、NiCord(商標)による治療を近々予定しているか、又はNiCord(商標)によって現在治療を受けている患者である。更に他の実施形態では、それを必要とする対象は、NiCord(商標)による治療後に癌から寛解している。
【0131】
更に他の実施形態では、対象を増感剤又は増強剤(例えば、プロテアソーム阻害剤、IL-2、IL-15など)で同時に治療し、注入したガンマ・デルタT細胞富化細胞のインビボ機能を更に増強する。
【0132】
自己免疫患者におけるガンマ・デルタT細胞の数と機能の低下が観察されており、これは、様々な自己免疫疾患及び病態におけるガンマ・デルタT細胞療法の可能性を示している。従って、本発明の更に他の実施形態では、自己免疫疾患又は病態の治療を必要とする対象において自己免疫疾患又は病態を治療する方法が提供される。本発明のこの様相に係る方法は、本発明のガンマ・デルタT細胞集団の治療量を前記対象に投与することによって行う。
【0133】
本発明の方法及び/又は組成物によって治療することができる自己免疫疾患としては、心血管疾患、リウマチ性疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経疾患、筋肉疾患、腎疾患、生殖に関連する疾患、結合組織疾患及び全身性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
自己免疫性心血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群、抗第VIII因子自己免疫疾患、壊死性小型血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性及び半月体形成性糸球体腎炎、抗リン脂質症候群、抗体誘発性心不全、血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病における心臓自己免疫、及び抗ヘルパーTリンパ球自己免疫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
自己免疫性リウマチ性疾患の例としては、関節リウマチ及び強直性脊椎炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
自己免疫性腺疾患の例としては、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、自発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎及びI型自己免疫性多腺症候群が挙げられるが、これらに限定されない。疾患としては、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、自発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎及びI型自己免疫性多腺症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
自己免疫性胃腸疾患の例としては、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、大腸炎、回腸炎及びクローン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
自己免疫性皮膚疾患の例としては、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡及び落葉状天疱瘡等の自己免疫性水疱性皮膚疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
自己免疫性肝疾患の例としては、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、及び自己免疫性肝炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
自己免疫性神経疾患の例としては、多発性硬化症、アルツハイマー病、重症筋無力症、神経障害、運動神経障害、ギラン・バレー症候群及び自己免疫性神経障害、筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、傍腫瘍性神経疾患、小脳萎縮症、傍腫瘍性小脳萎縮症及びスティフ・マン症候群、非傍腫瘍性スティフ・マン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群及び自己免疫性多腺性内分泌障害、免疫不全神経障害、後天性神経性筋強直症、先天性多発性関節拘縮症、神経炎、視神経炎及び神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
自己免疫性筋疾患の例としては、筋炎、自己免疫性筋炎、原発性シェーグレン症候群及び平滑筋自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
自己免疫性腎疾患の例としては、腎炎及び自己免疫性間質性腎炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
生殖に関する自己免疫疾患の例としては、繰り返される胎児の喪失が挙げられるが、これに限定されない。
【0144】
自己免疫性結合組織疾患の例としては、耳疾患、自己免疫性耳疾患、及び内耳の自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
自己免疫性全身性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス及び全身性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
場合によっては、本発明の方法、本開示の増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を用いて感染症を治療することができる。本発明のこの様相に係る方法は、本発明の培養ガンマ・デルタT細胞富化細胞の治療量を対象に投与して行う。感染症は、例えば、病原性細菌又はウイルスに起因する場合がある。様々な病原性タンパク質、核酸、脂質又はそれらの断片は、罹患細胞によって発現される場合がある。抗原提示細胞は、例えば、ファゴサイトーシス又は受容体媒介エンドサイトーシスによってそのような病原性分子を内在化し、適切なMHC分子に結合した抗原の断片を表示することができる。本開示の増殖ガンマ・デルタT細胞は、病原性細菌又はウイルスの様々な抗原及び抗原断片を認識することができる。病原性細菌の非限定的な例は、a)Bordetella pertussis種等のBordetella属、b)Borrelia burgdorferi種等のBorrelia属、c)Brucella abortus、Brucella canis、Brucela meliterisis、及び/又はBrucella suis種等のBrucelia属、d)Campylobacter jejuni 種等のCampylobacter属、e)Chlamydia pneumonia、Chlamydia trachomatis、及び/又はChlamydophila psittaci種等のChlamydia及びChlamydophila属、f)Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani種等のClostridium属、g)Corynebacterium diphtheria種等のCorynebacterium属、h)Enterococcus faecalis、及び/又はEnterococcus faecium種等のEnterococcus属、i)Escherichia coli種等のEscherichia属、j)Francisella tularensis種等のFrancisella属、k)Haemophilus influenza種等のHaemophilus属、l)Helicobacter pylori種等のHelicobacter属、m)Legionella pneumophila種等のLegionella属、n)Leptospira interrogans種等のLeptospira属、o)Listeria monocytogenes種等のListeria属、p)Mycobacterium leprae、mycobacterium tuberculosis、及び/又はmycobacterium ulcerans種等のMycobacterium属、q)Mycoplasma pneumonia種等のMycoplasma属、r)Neisseria gonorrhoeae及び/又はNeisseria meningitidia種等のNeisseria属、s)Pseudomonas aeruginosa種等のPseudomonas属、t)Rickettsia rickettsii種等のRickettsia属、u)Salmonella typhi及び/又はSalmonella typhimurium種等のSalmonella属、v)Shigella sonnei種等のShigella属、w)Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、及び/又はStaphylococcus saprophyticus種等のStaphylococcus属、x)Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumonia、及び/又はStreptococcus pyogenes種等のStreptpcoccus属、y)Treponema pallidum種等のTreponema属、z)Vibrio cholera等のVibrio属、及び/又はaa)Yersinia pestis種等のYersinia属に見出すことができる。
【0147】
場合によっては、本発明の方法及び/又は組成物、又は本開示の増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を用いて感染症を治療することができ、感染症はウイルスに起因し得る。ウイルスの非限定的な例は以下のウイルスファミリーに見出され、例示的な種で示される。a)アデノウイルス種等のアデノウイルスファミリー、b)単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型種等のヘルペスウイルスファミリー、c)ヒトパピローマウイルス種等のパピローマウイルスファミリー、d)BKウイルス、JCウイルス種等のポリオーマウイルスファミリー、e)天然痘種等のポックスウイルスファミリー、f)B型肝炎ウイルス種等のヘパドナウイルスファミリー、g)ヒトボカウイルス、パルボウイルスB19種等のパルボウイルスファミリー、h)ヒトアストロウイルス種等のアストロウイルスファミリー、i)ノーウォークウイルス種等のカリシウイルスファミリー、j)C型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱病ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス種等のフラビウイルスファミリー、k)風疹ウイルス種等のトガウイルスファミリー、l)E型肝炎ウイルス種等のヘペウイルスファミリー、m)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)種等のレトロウイルスファミリー、n)インフルエンザウイルス種等のオルトミクソウイルスファミリー、o)ガナリトウイルス、フニンウイルス、ラッサウイルス、マチュポウイルス、及び/又はサビアウイルス種等のアレナウイルスファミリー、p)クリミア・コンゴ出血熱ウイルス種等のブニヤウイルスファミリー、q)エボラウイルス及び/又はマールブルグウイルス種等のフィロウイルスファミリー、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヘンドラウイルス及び/又はニパウイルス種等のパラミクソウイルスファミリー、r)狂犬病ウイルス種等のラブドウイルス属、s)ロタウイルス、オルビウイルス、コルティウイルス及び/又はバンナウイルス種等のレオウイルスファミリー。幾つかの例では、ウイルスはウイルスファミリーに割り当てられていない(D型肝炎等)。
【0148】
造血細胞の移植は、様々な遺伝性疾患又は悪性疾患の治療への選択肢となっている。しかし、造血細胞組成物はTリンパ球に富んでいることが多く、これが移植片対宿主病の一因となっている。血液悪性腫瘍に罹患している患者はガンマ・デルタT細胞の数と機能が不足していることが多いため、造血細胞移植と共に行うガンマ・デルタT細胞の外因性投与に関しては現在、長期生着の増強と移植片対宿主病の予防について検討されている。従って、本発明の更に他の実施形態では、移植片対宿主病の治療又は予防を必要とする対象において移植片対宿主病を治療又は予防する方法が提供される。従って、本発明の更に他の実施形態では、自己免疫性の疾患又は病態の治療を必要とする対象において自己免疫性の疾患又は病態を治療する方法が提供される。本発明のこの様相に係る方法は、本発明のガンマ・デルタT細胞集団又はこの細胞集団を含む組成物の治療量を前記対象に投与することによって行う。
【0149】
治療レジーム
本発明の幾つかの実施形態の幾つかの様相によれば、疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、自己免疫疾患、過剰増殖性障害又はウイルス感染症)の治療のための本発明のガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を含み、薬学的に許容し得る担体と共に処方された医薬組成物が提供される。一部の組成物は、本発明の複数の(例えば、2種以上の)ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組み合わせを含む。
【0150】
予防的用途では、疾患又は病態(即ち、過剰増殖性疾患又は固形腫瘍)に罹患しやすいか又はそのリスクがある患者に医薬組成物又は薬剤を投与するが、その投与量は、過剰増殖性疾患又は固形腫瘍の再発のリスクを排除又は低減するか、該疾患の重症度を軽減するか、又は該疾患の発生(例えば、該疾患、その合併症及び該疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状)を遅らせるのに十分な量とする。治療的用途では、そのような疾患が疑われるか又はすでに罹患している患者に組成物又は薬物を投与するが、その投与量は、該疾患の症状(生化学的、組織学的及び/又は行動的症状)(例えば、その合併症及び該疾患の発症中の中間病理学的表現型)を治癒するか、又は少なくとも部分的に抑止するために十分な量とする。治療的処置又は予防的処置を行うのに十分な量を治療有効用量又は予防有効用量と定義する。予防的レジームと治療的レジームの両方において、通常は十分な抗増殖応答が得られるまで幾つかの用量で薬剤を投与する。通常、抗増殖応答をモニターし、抗増殖応答が弱まり始めた場合には反復投与を行う。
【0151】
本明細書に記載の増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、疾患又は病態の発生(例えば、癌、感染症、免疫疾患、敗血症、又は骨髄移植に伴う疾患の発症等)の前、発生中又は発生後にその治療に必要な期間に亘って投与することができ、増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を含む医薬組成物を投与するタイミングは変わり得る。例えば、増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は予防薬として使用することができ、症状の発症中又は発症後できるだけ早く、又は症状の発症から任意の期間内に対象に投与することができる。癌の治療の場合、例えば、増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団の1回以上の用量を、癌の発症の数年後及び他の治療の前又は後に投与することができる。治療期間は対象毎に変わり得る。
【0152】
有効投与量
本明細書に記載の疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍又は過剰増殖性障害)の治療のためのガンマ・デルタT細胞集団の組成物の有効用量は多くの様々な因子(例えば、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物か、投与される他の薬物、及び治療が予防的であるか治療的であるか等)に応じて変わる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療することができる。治療用量を決めて安全性と有効性を最適化する必要がある。
【0153】
治療用ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を投与する場合、患者1人当たりのガンマ・デルタT細胞及び/又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の投与量は約1×10個~約1×10個の範囲である。ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を投与する場合、レシピエント重量1kg当たりのガンマ・デルタT細胞及び/又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の投与量は約1×10個~約1×10個の範囲、又はレシピエント重量1kg当たりのガンマ・デルタT細胞及び/又はガンマ・デルタT細胞富化細胞の投与量は約5×10個~約1×10個の範囲である。例示的な治療レジームでは、2週間に1回又は1ヶ月に1回又は3~6ヶ月に1回の投与を伴う。幾つかの方法では、2種以上のガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を同時に投与し、その場合、投与する各ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の投与量は示された範囲内である。ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を複数回投与する場合もある。単回の投与の間隔は週1回、月1回又は年1回とすることができる。患者のガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の血中レベルの測定で示される場合、間隔が不規則となることもある。或いは、ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を徐放性製剤として投与することもでき、その場合、必要な投与頻度は少なくなる。投与量と投与頻度は患者のガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の半減期に応じて変わる。投与量と投与頻度は処置が予防的であるか治療的であるかによって変わり得る。予防的用途では、比較的低用量を長期間に亘って比較的低頻度で投与する。今後一生涯に亘って治療を受け続ける患者もいる。治療用途では、疾患の進行が抑制又は終了するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的又は完全な寛解を示すまで、比較的短い間隔で比較的高投与量が必要とされる場合がある。その後、患者を予防的レジームで管理することができる。
【0154】
投与経路
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍又は過剰増殖性障害)の治療のための治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組成物は、静脈内、小胞内、髄腔内、非経口、局所、皮下、経口、鼻腔内、動脈内、頭蓋内、腹腔内又は筋肉内手段によって投与することができる。予防薬/アジュバントとして又は疾患の治療のために、治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団は、過剰増殖性障害又は固形腫瘍(例えば、泌尿生殖器悪性腫瘍)及び/又は治療的処置を標的とする。免疫原性剤の最も典型的な投与経路は皮下であるが、他の経路が同様に有効な場合もある。次に一般的な経路は筋肉内注射である。この種の注射は最も典型的には腕又は脚の筋肉で行う。幾つかの方法では、例えば、頭蓋内注射のように沈着物が蓄積した特定の組織に薬剤を直接注射する。ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の投与には静脈内注入による筋肉内注射が好ましい。幾つかの方法では、特定の治療用細胞集団を膀胱に直接注入する。
【0155】
処方
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、ウイルス感染症又は他の感染症、炎症性障害又は過剰増殖性障害)の治療のためのガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組成物である。
【0156】
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍又は過剰増殖性障害)の治療のための治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組成物は、活性治療剤(即ち、他の様々な薬学的に許容し得る成分)を含む医薬組成物として投与することが多い。例えば、Alfonso R Gennaro (ed), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (Formerly Remington's Pharmaceutical Sciences) 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 2003を参照(この文献の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。好ましい形態は意図される投与方法と治療用途に依存する。組成物は、所望の処方に応じて、動物又はヒト投与用の医薬組成物を製剤化するのに一般に使用される媒体として定義される、薬学的に許容し得る非毒性の担体又は希釈剤を含むこともできる。組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように希釈剤を選択する。そのような希釈剤の例は、10%熱不活性化ヒトAB血清又は10%自己血清を含むX-vivo20培地(メリーランド州、ウォーカーズビル、Cambrex Bio Science社)である。そのような希釈剤の更なる例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液及びハンクス液である。更に、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性で非治療的な非免疫原性安定剤等を含むこともできる。
【0157】
医薬組成物は、タンパク質等の大型でゆっくりと代謝される高分子、キトサン等の多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び共重合体(ラテックス官能化セファロース(商標)、アガロース、セルロース等)、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、及び脂質凝集体(油滴やリポソーム等)を含むこともできる。更に、このような担体は、免疫刺激剤(即ち、アジュバント)として機能することができる。
【0158】
非経口投与の場合、本発明の組成物の投与は、無菌液体(水、油、生理食塩水、グリセロール、又はエタノール等)であり得る医薬担体と共に生理学的に許容し得る希釈剤に物質を溶解又は懸濁させた注射液の投薬として行うことができる。更に、湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質等の補助物質が組成物中に存在してもよい。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、及び鉱油である。一般に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコールは、特に注射用溶液には好ましい液状担体である。治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団は、有効成分が徐放されるように処方することが可能なデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することができる。例示的な組成物は、治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団を5mg/mLで含み、50mMのL-ヒスチジン、150mMのNaClで構成された水性緩衝液にて処方されており、pHがHClで6.0に調整されている。
【0159】
通常、組成物は注射剤(液体溶液又は懸濁液のいずれか)として調製し、注射前の液状媒体への溶解又は懸濁に適した固体形態も調製することができる。上述のように、アジュバント効果を高めるため、リポソーム又は微粒子(ポリ乳酸、ポリグリコリド又は共重合体等)に調製物を乳化又はカプセル化させることもできる。Langer, Science, 249: 1527, 1990; Hanes, Advanced Drug Delivery Reviews, 28: 97-119, 1997(これらの参考文献の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。本発明の薬剤は、有効成分を徐放又は拍動放出させるように処方することが可能なデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することができる。他の投与方法に適した更なる製剤としては、経口製剤、鼻腔内製剤及び経肺製剤、坐剤、及び経皮用製剤が挙げられる。
【0160】
坐剤の場合、結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが挙げられ、そのような坐剤は、有効成分を0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲で含む混合物から形成することができる。経口製剤には、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウム等の賦形剤が含まれる。このような組成物は、溶液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は散剤の形態を採り、有効成分を10%~95%、好ましくは25%~70%含む。
【0161】
医薬組成物は通常、患者への投与に適した形態の治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組成物を含む。医薬組成物は通常、無菌で実質的に等張性であり、米国食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)規制に準拠して処方されている。
【0162】
毒性
好ましくは、本明細書に記載のガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の組成物の治療有効量によって、実質的な毒性を引き起こすことなく治療上の利益が得られるであろう。
【0163】
本明細書に記載の治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の毒性の確認は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)又はLD100(集団の100%が死に至る用量)を確認することによって行うことができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数である。このような細胞培養アッセイ及び動物試験から得たデータを用いて、ヒトにおける使用で毒性のない投与量範囲を策定することができる。本明細書に記載の治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団の投与量は、毒性を殆ど又は全く示さずに有効用量を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用いる剤形と用いる投与経路に応じて投与量はこの範囲内で変わり得る。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の病態を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl, et al., The Pharmacological Basis Of Therapeutics, Ch. 1, 1975を参照)(この文献の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。
【0164】
単位剤形
本明細書に開示の増殖ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形に処方することができる。場合によっては、単位剤形は追加のリンパ球(例えば、NK細胞又は造血幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない)を含む。単位剤形では、製剤を適切な量の1種以上の化合物を含む単位用量に分割する。単位剤形は、個別の量の製剤を含むパッケージの形態とすることができる。非限定的な例は、パッケージされた錠剤又はカプセル、及びバイアル又はアンプル中の散剤である。水性懸濁液組成物は単一用量の再密閉できない容器にパッケージすることができる。複数用量の再密閉可能な容器は、例えば、防腐剤と組み合わせて又は防腐剤と組み合わせずに使用することができる。幾つかの例では、細胞、組成物又は医薬組成物は防腐剤を含まない。非経口注射用の製剤は単位剤形、例えば、アンプル、又は防腐剤を含む複数用量容器で提供することができる。
【0165】
キット
本発明の組成物(例えば、治療用ガンマ・デルタT細胞富化細胞集団)と使用説明書を含むキットも本発明の範囲内にある。キットは、少なくとも1種の追加の試薬、又は本発明の1種以上の追加のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なる、抗原のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)を更に含むことができる。キットには通常、キットの内容の使用目的を示すラベルが含まれている。ラベルという用語は、キットに付属しているか、或いはキットに添付されている文書又は記録資料を包含する。
【0166】
凍結保存
幾つかの実施形態では、ガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を凍結保存培地に処方し、液体窒素冷凍庫(-195℃)又は超低温冷凍庫(-65℃、-80℃又は-120℃)等の極低温保存ユニットに入れて、少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年又は少なくとも5年の長期間に亘って保存することができる。凍結保存培地は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び/又は塩化ナトリウム(NaCl)、及び/又はブドウ糖、及び/又はデキストラン硫酸、及び/又はヒドロエチルデンプン(HES)と共に生理学的pH緩衝剤を含み、pHを約6.0~約6.5、約6.5~約7.0、約7.0~約7.5、約7.5~約8.0又は約6.5~約7.5に維持することができる。凍結保存したガンマ・デルタT細胞又はガンマ・デルタT細胞集団を解凍し、本明細書に記載の抗体、タンパク質、ペプチド、及び/又はサイトカインによる刺激によって更に処理することができる。
【0167】
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を意味する。
【0168】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。この用語は、「~で構成される」及び「本質的に~で構成される」という用語を包含する。
【0169】
「本質的に~で構成される」という語句は、組成物又は方法が追加の成分及び/又は工程を含み得ることを意味するが、これは、追加の成分及び/又は工程が、特許請求範囲の組成物又は方法の基本的且つ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0170】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0171】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0172】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
【0173】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、病態の進行を抑止する、実質的に阻害する、遅らせる又は逆転させること、病態の臨床的又は審美的症状を実質的に改善すること、又は病態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に防止することを包含する。
【0175】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0176】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【実施例
【0177】
ここで、上記の記載と共に本発明を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【0178】
一般に、本明細書で使用される命名法や本発明で利用される実験手順には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は文献で十分に説明されている。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989); "Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994); Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989); Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988); Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York; Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号及び第5,272,057号に記載の方法、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994); "Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition; "Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994); Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994); Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)、利用可能なイムノアッセイは特許及び科学文献に広く記載されている(例えば、米国特許第3,791,932号、第3,839,153号、第3,850,752号、第3,850,578号、第3,853,987号、第3,867,517号、第3,879,262号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、第4,098,876号、第4,879,219号、第5,011,771号及び第5,281,521号参照)、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984); "Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985); "Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984); "Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986); "Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986); "A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984) and "Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press; "PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990); Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)。これら文献の全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。他の一般的な参考文献は本明細書全体で提供される。それらに記載の手順は、当技術分野で良く知られていると考えられており、読者の便宜のために提供される。これらに含まれる全ての情報を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0179】
実験手順
ガンマ・デルタT細胞のエクスビボ培養
健康なドナー血液ユニット試料は、midiMACS(商標)カラムとTCRα/βキット(メリーランド州、ゲイザースバーグ、Miltenyi Biotec社)を用いてTCRアルファ・ベータ発現T細胞を枯渇させた。0mMのニコチンアミド(NAM)(対照)又は5mMのニコチンアミド(NAM)と50ng/mLのIL-2を補充した培地を含むVueLife(登録商標)バッグ(メリーランド州、ゲイザースバーグ、Saint-Gobain社)でアルファ・ベータT細胞枯渇集団を12~13日間培養した。
【0180】
T細胞受容体の特徴付け
培養中のCD3+細胞で発現するT細胞受容体(TCR)の特徴付けを行うため、CD3陽性細胞をCliniMACS(商標)CD3試薬(メリーランド州、ゲイザースバーグ、273-01、Miltenyi社)で精製した後、CD3+/γδ+細胞とCD3+/α/β+細胞の割合をFACS分析した。FACS染色及び分析は、細胞表面特異的抗体を使用する標準的な手順に従って行った。
【0181】
増殖ガンマ・デルタT細胞によるCD62L発現
NAM処理培養物と対照(-NAM)培養物から精製したガンマ・デルタT細胞をCD62L(L-セレクチン)で染色し、抗CD62L抗体を使用してFACSで分析した。
【0182】
増殖ガンマ・デルタT細胞の移植とインビボ機能性
上述のようにCD3+/ガンマ・デルタ+細胞を培養物から精製した後、CFSE(カリフォルニア州、カールスバッド、Invitrogen社、Thermo-Fisher社)で標識した。NSG SCIDマウスを350cGyで照射した。照射の翌日、NAM培養物及び対照(-NAM)培養物由来のCFSE標識CD3+/ガンマ・デルタ陽性細胞(5~6×10個/マウス)をマウスに静脈内注射した。
【0183】
細胞注入の4日後にマウスを屠殺し、器官を切除した。CFSE染色細胞の画分を器官細胞懸濁液のFACSによって評価した。
【0184】
実施例1
NAMを用いたヒトガンマ・デルタT細胞のエクスビボ培養はT細胞機能性を増強する
5mMのニコチンアミド(NAM)を用いて培養したアルファ・ベータ枯渇T細胞のFACS分析から、アルファ・ベータT細胞画分の枯渇によって90%超のガンマ・デルタT細胞を含む増殖CD3+細胞集団が得られることが分かった。ニコチンアミドを用いた細胞の培養は、培養T細胞集団のガンマ・デルタ陽性成分の増殖には影響を及ぼさないようである(図1)。
【0185】
CD62L(L-セレクチン)は重要なリンパ球接着分子であり、リンパ球がリンパ組織へホーミング及び侵入するための「ホーミング受容体」として作用すると共に、Tリンパ球共刺激シグナルとして作用する。図2は、5mMのNAMを用いて培養したガンマ・デルタT細胞におけるCD62L発現(FACSによって検出)がNAMを用いずに培養した同一の細胞と比較して顕著に増強していることを示す。
【0186】
実施例2
NAMを用いて培養したガンマ・デルタT細胞のインビボホーミングと保持の増強
注入されたリンパ球の有効な組織ホーミングと保持の頻度が低下すると、T細胞治療を成功させる上で深刻な障害となり、最適な結果を得るのに必要な細胞数が増加する。NAM培養ガンマ・デルタT細胞の機能性の増強は、照射scid NSGマウスへの注入後の組織におけるホーミングと保持の発生率の上昇に反映されている。
【0187】
図3は、NAM培養ガンマ・デルタT細胞の注入から4日後のインビボホーミングと保持に対するNAMの影響の大きさを示す。特に重要なのは、リンパ組織(脾臓、骨髄)へのガンマ・デルタT細胞の保持が大きく増強されていること、更にはNAMを用いた培養の結果として血液と肺組織に保持されたガンマ・デルタT細胞がほぼ3倍増加していることである。
【0188】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0189】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
【0190】
更に、本願の優先権書類全ての全内容を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
図1
図2
図3