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特許7546585ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物とを含み、脂肪細胞の増殖を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進する医薬組成物又は健康食品組成物とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物とを含み、脂肪細胞の増殖を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進する医薬組成物又は健康食品組成物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20240830BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 36/42 20060101ALI20240830BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20240830BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K31/706
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/08
A61P3/04
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K31/704
A61K36/42
A23L33/13
A23L33/105
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021551908
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2019078155
(87)【国際公開番号】W WO2020177153
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】201910156573.6
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521389642
【氏名又は名称】北京慧宝源生物技▲術▼股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521391313
【氏名又は名称】北京慧宝源企▲業▼管理有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】周・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼・百波
(72)【発明者】
【氏名】臧・新▲ゆ▼▲う▼
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0082373(US,A1)
【文献】国際公開第2014/146044(WO,A1)
【文献】Mogrosides extract from Siraitia grosvenori scavenges free radicals in vitro and lowers oxidative stress, serum glucose, and lipid levels in alloxan-induced diabetic mice,Nutrition Research,2008年,28,pp.278-284,doi:10.1016/j.nutres.2008.02.008
【文献】Effects of Mogrosides on High-Fat-Diet-Induced Obesity and Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Mice,Molecules,2018年,23, 1894,pp.1-11,doi:10.3390/molecules23081894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 3/00- 3/14
A61P 9/00- 9/14
A61P 43/00
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬活性成分又は健康管理活性成分として、ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物とのみを含み、
ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物のモル量比率は、1~100:0.1~1000であり、
ラカンカ抽出物は、30重量%以上のモグロシドVを含むことを特徴とする脂肪細胞の増殖を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進するための医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項2】
ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物のモル量比率は、1~5:1~30である請求項1に記載の医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項3】
ニコチンアミドモノヌクレオチドとラカンカ抽出物のモル量比率は、1~2:1~5である請求項2に記載の医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項4】
薬学上又は食品として容認される賦形剤を含有する請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項5】
血糖値の低下、膵島細胞の成長と修復の促進、高血糖対策及び/又は糖尿病対策の医薬製剤又は健康食品用途に調製される請求項1~4の何れか1項に記載の医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項6】
脂肪蓄積や体重の制御、高脂血症対策及び/又は心血管疾患対策の医薬製剤又は健康食品用途に調製される請求項1~4の何れか1項に記載の医薬組成物又は健康食品組成物。
【請求項7】
(1) ラカンカを、水で加熱して抽出し、濾過して、ラカンカ抽出物濾液を生成する工程と;
(2) D101型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(1)で得られるラカンカ抽出物濾液を精製し、35~45容量%エタノール溶出の溶出液を収集し、濃縮して、ラカンカ抽出物濃縮液を生成する工程と;
(3) ADS-7型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(2)で得られるラカンカ抽出物濃縮液を精製し、25~35容量%のエタノールで溶出する溶出液を収集し、濃縮乾燥する工程とにより30重量%以上のモグロシドVを含むラカンカ抽出物を抽出する工程と、
(4) ニコチンアミドモノヌクレオチドと、工程(3)で得られる30重量%以上のモグロシドVを含むラカンカ抽出物とを混合する工程とを含むことを特徴とする脂肪細胞の増殖を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進するための医薬組成物又は健康食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、脂肪細胞の成長を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進するニコチンアミドモノヌクレオチド及びモグロシドを含む組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
糖代謝異常は、膵島細胞の損傷やインスリン抵抗性を招来し、脂肪細胞の増殖や脂肪の蓄積を促進し、肥満、高脂血症、高血糖、血管硬化症等の心血管疾患を誘発する。従って、脂肪細胞の増殖、成長及び膵島細胞の損傷の有効制御は、肥満症、高脂血症、高血糖症が心血管疾患を誘発し、加えて寿命に対する重要な健康意義を有する。現在、肥満、高脂血症、高血糖等の抑制を目的とする化合物及び抽出物、それらに対応する医薬品及び健康食品が何千種類も発売されている。
【0003】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」と略称する)は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の最良の直接前駆体である。NMNは、グルコースによるインスリン分泌の促進が報告されているが、膵島細胞の成長及び膵島細胞の損傷に対する抵抗力を有効に促進する作用はない(下記非特許文献1)。下記特許文献1及び特許文献2は、ミトコンドリア病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満等、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の増加により恩恵を受ける疾患の治療を目的とするニコチンアミドリボシド類似物の調製に関するものである。また、NMNの高額な製造価格(市場価格2,000~20,000ドル/g)、現在確認される老化防止開始量(0.6~2g/人/日)、1人当たり年間数万~数百万円の使用価格等が、普及促進に直接影響すると考えられる。
【0004】
モグロシド(「MG」と略称する)は、近年主にショ糖の代替品として使用されている。特許文献3は、モグロシドII、モグロシドIII及びそれらの配合又は混合により、生体内外でα-グルコシダーゼ活性を抑制(阻害)し、II型糖尿病マウスでは空腹時血糖値及び食後血糖値を低下し、インスリン抵抗性指数を低下して、未熟な羅漢果の抽出物から得られるサポニンの経口血糖降下剤調製への利用法を開示する。特許文献4は、ラカンカの水抽出物及びモグロシドV(「MGV」と略称する)により、小胞体ストレス関連タンパク質及び脂肪合成関連遺伝子の発現を抑制して、肝トリグリセリド蓄積を有効に低減し、脂肪肝を治療する脂肪肝治療薬の調製へのラカンカ製剤の利用法を開示する。尤も、抗酸化作用による膵島細胞の保護効果を生ずるモグロシドの効果は、非常に弱く、脂肪細胞の増殖及び細胞内の脂肪蓄積を制御する明確な証拠は認められないとの見解も報告された(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願第106715455A号公報
【文献】中国特許出願第106536535A号公報
【文献】中国特許出願第105640971A号公報
【文献】中国特許出願第108201546A号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】学術雑誌「プロスワン(PLOS ONE)」スピンラー・アールら著、2013年1月号2.7号
【文献】学術雑誌「中国薬学(China Pharmacy)2012」チャン・シャン・ユアン(Chen Shan-Yuan)ら著、第23巻、第23号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドによる脂肪細胞増殖抑制作用と膵島細胞生存率促進作用の各効果には、現在技術上の論争があり、肥満、高脂血症、高血糖等を対象とする数千種類の化合物や抽出物の中から両者を確定的に検討することは困難であると考えられる。しかし、本発明者らは、長期の研究で蓄積された経験に基づき、血糖値の制御、膵島細胞の保護、脂肪細胞の増殖・脂肪蓄積の抑制等の点で、NMNとMGとの併用による予想外の驚愕的な相乗効果を発見した。また、本発明の組成物では、高価なNMNの大部分を安価なMGに置換して、同一又は類似の効果が得られるため、組成物の製造価格を大幅に削減し、容易に組成物を普及できることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が解決すべき技術的課題は、脂肪細胞の増殖を抑制しかつ/又は膵島細胞の生存率を促進する新規な医薬組成物又は健康食品組成物を提供することにある。本発明は、医薬組成物又は健康食品組成物の調製法、対応する医薬製剤又は健康食品及び用途も提供する。
【0009】
即ち、本発明の第1の概念は、ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドとを含む医薬組成物又は健康食品組成物を提供することにある。本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドを含む医薬組成物を提供し又はニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドを含む健康食品組成物を提供する。
【0010】
本明細書の医薬組成物は、薬物又は薬品を調製する医療活性を有する組成物をいう。健康食品組成物は、健康食品に調整する保健機能を有する組成物をいう。
【0011】
本発明の具体的な実施の形態では、医薬活性成分又は健康管理活性成分として、ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドのみを有する医薬組成物又は健康食品組成物が本発明の第1の概念であり、本発明の第1の概念に対応する医薬組成物又は健康食品組成物をニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドとで構成することが好ましい。
【0012】
本発明の第1の概念に対応する医薬組成物又は健康食品組成物のニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドとの好適なモル比は、1~100:0.1~1000、より好適には1~10:0.1~100、特に好適には1~5:1~30であり、最適には、1~2:1~5である。
【0013】
また、本発明の第1の概念の対象となる医薬組成物又は健康食品組成物のモグロシドは、本発明者らがモグロシド中の主たる作用が認められるモグロシドVであることが好ましい。尤も、モグロシドVの代わりに、モグロシドV含有量の多いラカンカ抽出物を実質的に使用する価格低減法を本発明者らが発案したので、本発明の第1の概念に相当する医薬組成物又は健康食品組成物のモグロシドVを含むラカンカ抽出物をモグロシドとして使用するとき、ラカンカ抽出物中のモグロシドVの好適な含有量は、30重量%以上、より好適には60重量%以上である。
【0014】
モグロシドVを含むラカンカ抽出物をモグロシドとして使用するとき、モグロシドの好適な抽出法は、下記工程を含む。
(1) 水で加熱してラカンカを抽出し、濾過する工程と;
(2) D101型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(1)から得られる濾液を精製し、35~45容量%エタノールで溶出した溶出液を収集し、濃縮する工程と;
(3) ADS-7型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(2)から得られる濃縮液を精製し、25~35容量%のエタノールで溶出した溶出液を収集し、濃縮乾燥する工程。
【0015】
ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドを混合する工程を含む本発明の第2の概念は、本発明の第1の概念である医薬組成物又は健康食品組成物の調製方法に対応する。
【0016】
モグロシドVを含むラカンカ抽出物をモグロシドに使用するとき、本発明の第2の概念である調製法では、ニコチンアミドモノヌクレオチドとモグロシドとを混合する工程前に、モグロシド抽出法を実施することが好ましい。
【0017】
本発明の第2の概念である調製法での好適なモグロシド抽出法は、下記工程を含む。
(1) 水で加熱してラカンカを抽出し、濾過する工程と、
(2) D101型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(1)から得られる濾液を精製し、35~45容量%エタノールで溶出した溶出液を収集し、濃縮する工程と、
(3) ADS-7型マクロ多孔質樹脂列濾過器を用いて、工程(2)から得られる濃縮液を精製し、25~35容量%エタノールで溶出した溶出液を収集し、濃縮乾燥する工程。
【0018】
本発明の第3の概念は、本発明の第1の概念の医薬組成物又は健康食品組成物と、薬学的又は食品的に容認される賦形剤とを含む医薬製剤又は健康食品を提供することにある。即ち、本発明は、本発明の第1の概念の医薬組成物と、薬学的に容認される賦形剤とを含む医薬製剤を提供し又は本発明の第1の概念の健康食品組成物と、食品として容認される賦形剤とを含む健康食品を提供する。
【0019】
本明細書の用語「薬学的に容認される補助材料」は、薬物活性成分に対し互換性のある薬学上容認される媒体、賦形剤、希釈剤等を含む。薬学的に容認される賦形剤を用いる医薬製剤の調製は、当業者には周知である。本発明の医薬製剤は、本発明の第1の概念の医薬組成物を有効成分とし、その医薬組成物と薬学的に容認される賦形剤(当業者には周知の媒体、賦形剤、希釈剤等)とを配合して生成される、例えば、錠剤、丸薬、莢膜(カプセル)(徐放性型又は遅延放出性型を含む)、粉体に製剤化した種々の好適な固体製剤及び液体製剤である。これらの製剤は、好適な経口投与型の懸濁剤、顆粒、糖蜜(シロップ)、乳剤、懸濁液、各種徐放性製剤等である。
【0020】
本明細書の用語「食品に容認される賦形剤」は、食品健康活性成分に適合しかつ食品に容認される媒体、賦形剤、希釈剤、香料、着色剤、風味増強剤等を含む。本発明の第1の概念の健康食品組成物は、それ自体食品や食品素材を構成し、例えば、他の食品の表面を被覆し又は他の食品に混合して、食品や食品素材に配合してもよい。
【0021】
本発明の第3の概念の医薬製剤又は健康食品の形態は、乳製品、飲料、小麦粉焼菓子(ビスケット)又は顆粒が好ましい。前三者は、通常特定の健康食品形態であり、後者は、通常特定の医薬品製剤形態である。
【0022】
本発明の第4の概念は、血糖値の低下、膵島細胞の成長と修復の促進、高血糖との闘病及び/又は糖尿病に対する闘病用医薬製剤又は健康食品を調製するため、本発明の第1の概念の医薬組成物又は健康食品組成物の適用法を提供する。従って、本発明の第5の概念は、本発明の第1の概念の医薬組成物又は健康食品組成物を必要とする患者に投与して、血糖値を低下し、膵島細胞の成長及び修復を促進し、高血糖及び/又は糖尿病を改善する治療法を提供する。
【0023】
本発明の第6の概念は、脂肪蓄積及び体重の制御、高脂血症対策及び/又は心血管疾患対策に対する医薬製剤又は健康食品の調製に対する本発明の第1の概念の医薬組成物又は健康食品組成物の適用法を提供する。従って、本発明の第7の概念は、本発明の第1の概念の医薬組成物又は健康食品組成物を必要とする患者に投与して、脂肪蓄積及び体重の制御、高脂血症及び/又は心血管疾患に対する治療法を提供する。
【0024】
本発明の具体的な実施の形態では、ヒトの血糖値や体重の制御に使用するニコチンアミドモノヌクレオチドに換算する用量は、通常100~300mg/日であり、既存のニコチンアミドモノヌクレオチドの単用量(500~2000mg/日)よりも遥かに少ない。
【0025】
NMNとMGとの混合組成物は、血糖制御、膵島細胞の保護、脂肪細胞の成長と脂肪蓄積を抑制する面で本発明の有効な相乗効果が認められ、高価なNMNの相当部分を安価なMGに置換して、同一又は類似の効果が得られるため、製造価格を大幅に低減し、組成物を容易に普及できると考えられる。
【0026】
本発明を容易に理解するため、本発明の具体的な実施の形態を以下詳細に説明する。例示に過ぎない実施の形態の説明は、本発明の範囲を限定する意図ではない点に特に注意すべきである。本明細書の実施の形態に基づく、本発明の多くの変更や更新は、当業者には自明であろう。
【0027】
本発明をより明確に説明するため引用する公開文献の全内容の全文を、本明細書に反復して記載して、参照のため本明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】アロキサン濃度に対するアロキサン損傷型細胞生存率を示す棒グラフ
図2】GX999濃度に対するアロキサン損傷膵島細胞生存率を示す棒グラフ
図3】GX999濃度に対するアロキサン併用評価指標値を示すグラフ
図4】GX008A濃度に対するアロキサン損傷膵島細胞生存率を示す棒グラフ
図5】GX008A‐アロキサン相乗効果に対する併用評価指標値を示すグラフ
図6】1mMのNMN:GX999+MG:GX008Aの併用によるアロキサン損傷膵島細胞生存率を示す棒グラフ
図7】併用GX008A+GX999併用‐アロキサン相乗効果に対する評価指標値を示すグラフ
図8】GX999の抑制効果に対する3T3-L1細胞生存率を示す棒グラフ
図9】GX008Aの抑制効果に対する3T3-L1細胞生存率を示す棒グラフ
図10】GX008A単独と、 GX008A+GX9993併用に対するT3L1細胞生存率を示す棒グラフ
図11】GX008A+GX999併用相乗効果に対する評価指標値を示すグラフ
図12】3T3-L1細胞分化群に対するGX999群、GX008A群及びGX999+GX008A併用群の分化誘導例を示す写真
図13】3T3-L1細胞分化群に対するGX999群、GX008A群及びGX999+GX008A併用群の脂肪内脂質滴下量を示す棒グラフ
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態を詳細に以下説明する。特筆しない限り、実施の形態に使用する技術的手段は、当業者には公知の従来の手段又は市販されかつ通常使用される機器や試薬であり、対応する機器や試薬の製造者の説明書等を参照できよう。
【0030】
調製実施例:モグロシド抽出物(60% MGV)の調製
高温蒸気で処理したラカンカ(MGV含量約1.2%)の生果実15kgを粉砕機で粉砕し、水80L(リットル)で加熱煮沸して濾過した後、濾液を放置し、放置した濾液に水60Lを加えて加熱煮沸して濾過し、両濾液を混合した。脱イオン水で平衡化したD101型マクロ多孔質(50nmより大きい孔)樹脂クロマトグラフィー列濾過器に混合濾液の一部を抽出(サンプリング)し、まず脱イオン水と20容量%エタノールで無色になるまで順次溶出し、次にクロマトグラフィー空隙(カラム)量6倍の40容量%エタノールで溶出し、溶出液を減圧下で濃縮して無アルコール濃縮液とした。その後、脱イオン水で平衡化したADS-7型マクロ多孔質樹脂クロマトグラフィー列濾過器に濃縮液を抽出し、まず空隙量8倍の脱イオン水で溶出し、次に空隙量5倍の30容量%エタノールで溶出し、エタノール溶出液を回収して濃縮し、乾燥して、本発明のモグロシド抽出物(「60%MGV」と略称する)を得た。前記調製工程を複数回反復すると、MGV組成は、範囲60.2~62.5%で安定し、60%以上の結果が得られた。
【0031】
実施例1.アロキサン誘発によるすい臓β-細胞に対するMG:GX008A及びNMN:GX999の保護効果とその併用効果
本実施例では、NMN:GX999又はMG:GX008Aの各単用と、NMN:GX999及びMG:GX008Aの併用により、アロキサン誘発によるすい臓β-細胞に対するNMN:GX999及びMG:GX008Aの保護効果を評価すると、NMN:GX999及びMG:GX008Aの単用では、ある濃度範囲で傷害細胞の保護効果を発揮したが、異なる濃度のMG:GX008Aを1mM(ミリモル/モル濃度)のNMN:GX999に併用すると傷害細胞の保護効果が顕著に発揮され、併用による保護相乗効果が認められた。
【0032】
1. 実験目的
アロキサン誘発によるβ-細胞に対するMG:GX008AとNMN:GX999の保護効果を試験管内で実験して、組成物の併用効果を検討した。
【0033】
2. 材料と方法
【0034】
2.1 材料
2.1.1 試料
名称:モグロシドV、試料番号MG:GX008A/分子量:1287.44;ニコチンアミドモノヌクレオチド、試料番号NMN:GX999/分子量:334.22。
北京ホイ・バオ・元(ヘバビズ)バイオテクノロジィ社よりMG:GX008Aを入手し、ボンティック生物工学(深セン市)社よりNMN:GX999を入手した。
保存条件:乾燥状態で遮光し、4℃で保存した。
2.1.2 細胞取得
中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センターよりラットインシュリノーマ細胞(RINm5f)を入手した。
2.1.3 実験試薬
ウシ胎児血清(FBS)とRPMI1640基礎培地を米国グビコ(GBICO)社より入手し、メチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アロキサンを北京ソーラーバイオ科学技術社より入手した。
【0035】
2.2 試験方法
【0036】
2.2.1 細胞培養
ペニシリン、ストレプトマイシン、10%不活性化胎児ウシ血清を含むRPMI1640培養液に、RINm5f細胞を接種し、37℃、5%CO2、飽和湿度の条件下で培養し、倒立顕微鏡で細胞の増殖を観察した。瓶壁の80%~90%に細胞が成長した後、継代した。
【0037】
2.2.2 群分(グループ化)及び解析
対数増殖期までRINm5f細胞を培養した後、96個の凹部(ウェル)を有する培養板(プレート)に細胞密度5×104/mlで細胞を接種し、24時間培養した後、薬剤を投与した。陰性対照群、アロキサン損傷群(AXN群)、保護群に試料を分類して、AXN群と保護群には何れも最終濃度15mMのアロキサンを添加し、保護群には異なる濃度のNMN:GX999とMG:GX008Aを添加して1時間前処理して、実験を行った。4個の複製物凹部を作成し、実験を3回反復した。MG:GX008AとNMN:GX999を培地に溶解し、最終濃度200mMと500mMに調製して使用した。
【0038】
2.2.3 実験手順
【0039】
細胞生存率測定-MTT試験(MTTをホルマザン紫色素に還元する酵素活性を測定して、培養細胞の生存率や増殖率を試験する比色定量法):
RINm5f細胞を対数増殖期まで培養した後、96個の凹部を有する培養板(プレート)に5×104/mlの細胞密度で接種し、24時間培養した後、薬剤を投与した。陰性対照群、アロキサン損傷群(AXN群)、保護群に試料を分類して、AXN群、保護群ともに最終濃度15mMのアロキサンを添加し、保護群には異なる濃度のNMN:GX999とMG:GX008Aを添加し、1時間前処理した後、4個の複製物凹部を設定し、CO2培養器に入れて24時間の常温培養を行い、各凹部にMTT20μl(5mg/mL)を添加して培養を4時間続けて、実験を行った。その後、培地を捨て、各凹部にDMSO150μlを加えて10分間振盪し、光学濃度OD値490nmをマイクロプレートリーダで検出した。
【0040】
薬物併用指数評価指標値CI解析:
投薬効果解析用カルクシン(Calcusyn)ソフトウェアにより、異なる濃度の単独薬剤と併用薬剤による抑制(阻害)率に応じて,異なる濃度のNMN:GX999及びMG:GX008Aの単独薬剤抑制率と,対応する濃度の併用薬剤による抑制率等のデータを解析し,評価指標値CI(Combination Index)を求めた。併用指標の定義により、薬剤の相乗効果が判断され、相乗効果を1.0未満とし、アロキサン損傷に対向する敵対(拮抗)効果を1.0以上とした。
【0041】
2.2.4 統計的方法
少なくとも3回の個別実験から全実験データを得て、平均値±標準偏差値で表した。解析用SPSS16.0ソフトウェアを用いて、統計解析を行った。独立2試料のt検定法を採用して2群間のデータを比較し、一元配置分散分析を用いて、複数群間のデータを比較し、測定結果の信頼性評価に対する不確実性誤差P値のP<0.05が、統計学的に有意と認められた。
【0042】
3. 実験結果
【0043】
アロキサン細胞損傷試料の作成
陰性対照群を準備し、異なる濃度(4、7、10、15及び20mM)のアロキサン(テトラオキサピリミジン)を用いてアロキサン傷害群を作成し、24時間放置した後、培養板4個の凹部に各複製物を配置し、MTT試験により細胞生存率を検出した。図1は、不確実性誤差P値の△P<0.05、△△P<0.01を陰性対照群と比較するアロキサン細胞損傷型の確立結果を示す棒グラフである。検出結果を示す図1は、薬物濃度の増加に伴い、濃度依存的な細胞増殖の抑制を伴い、細胞生存率が低下して細胞損傷率が増加し、無薬物対照群と比較して、不確実性誤差P値は、何れも0.01未満であり、統計的に有意な差を示した。
【0044】
アロキサン損傷群のRINm5f細胞に対するNMN:GX999単用による保護作用
アロキサンで損傷したβ細胞群の細胞生存率に対するNMN:GX999の効果をMTT試験で測定した。図2は、不確実性誤差P値=△P<0.05、△△P<0.01を陰性対照群と比較し、*P<0.05、**P<0.01をアロキサン損傷群と比較して、アロキサン損傷膵島細胞生存率に対するNMN:GX999の効果を示す棒グラフである。アロキサン濃度を15mMとし、陰性対照群、アロキサン損傷群(AXN群)、NMN:GX999(0.5、1、5、10mM)の保護群に分けて得られた複数の試験結果を図2に示すと、陰性対照群と比較してアロキサン損傷群(AXN群)の細胞群生存率は、有意に低下し、その差は統計的に有意であった(P<0.01)。NMN:GX999処理を加えると、細胞生存率は、有意に向上し、保護群は、AXN群と比較して、NMN:GX999濃度が5mM(P<0.05)、10mM(P<0.01)のとき、濃度の増加に伴い細胞生存率が徐々に上昇し、その差は統計的に有意であった。
【0045】
アロキサン損傷群に対するNMN:GX999の効果解析
図3は、濃度1:0.5mM、濃度2:1mM、濃度3:5mM、濃度4:10mMのNMN:GX999と、アロキサンとを併用した評価指標値CIを示すグラフである。投薬効果解析用カルクシンソフトウェアを用いて、図3の結果を算出して、アロキサン損傷群に対するNMN:GX999の評価指標値CIは、全て1.0以上であり、NMN:GX999は、アロキサン損傷に対向する敵対作用、即ち細胞保護作用を示すことが判明した。
【0046】
アロキサン損傷群RINm5f細胞に対するMG:GX008Aの単用保護作用
図4は、不確実性誤差P値=△P<0.05、△△P<0.01を陰性対照群と比較し、不確実性誤差P値=*P<0.05、**P<0.01をアロキサン損傷群と比較するアロキサン損傷膵島細胞群生存率に対するMG:GX008Aの効果を示す棒グラフである。アロキサン損傷群のβ細胞生存率に対するMG:GX008Aの効果をMTT試験で測定した。陰性対照群、アロキサン損傷群(AXN群)とMG:GX008A(0.5、1、5、10mM)保護群に分けて行った試験の結果を図4に示すと、陰性対照群に比べ、アロキサン損傷群(AXN群)の細胞生存率は明らかに低下し、その差は統計的に有意であった(P<0.01)。MG:GX008Aを加えると、細胞の生存率を有意に向上でき、MG:GX008A濃度が5mM(P<0.05)、10mM(P<0.01)のとき、保護群は、AXN群と比較して、濃度の増加に伴い細胞生存率が徐々に上昇し、その差は統計的に有意であった。
【0047】
アロキサン損傷群に対するMG:GX008Aの効果解析
図5は、濃度1:0.5mM、濃度2:1mM、濃度3:5mM、濃度4:10mMのMG:GX008Aと、アロキサンとの併用評価指標値CIを示すグラフである。カルクシンソフトウェアを用いて、試験結果を算出すると、アロキサン損傷群に対するMG:GX008Aの評価指標値CIは、図5に示すように全て1.0以上であり、MG:GX008Aは、アロキサン損傷群に対して敵対作用、即ち細胞保護作用を生ずることが判明した。
【0048】
アロキサン損傷群RINm5f細胞に対するMG:GX008A+NMN:GX999の併用保護作用
図6は、不確実性誤差P値=△P<0.05、△△P<0.01を陰性対照群と比較し、不確実性誤差P値=*P<0.05、**P<0.01をアロキサン損傷群と比較して、アロキサン損傷膵島細胞群の生存率に対する1mMのNMN:GX999とMG:GX008Aとの併用効果を示す棒グラフである。アロキサン損傷群β細胞の生存率に対するMG:GX008A+NMN:GX999併用効果をMTT試験で測定した。陰性対照群、アロキサン損傷群(AXN群)及びNMN:GX999(1mM)とMG:GX008A(0.5mM、1mM、5mM、10mM)との併用保護群に分けて、試験を行った。図6に示す試験結果では、陰性対照群と比較して、アロキサン損傷群(AXN群)の細胞生存率は、明らかに低く、その差は、統計的に有意であった(P<0.01)。併用保護群は、細胞生存率を向上させて、併用薬剤濃度の増加に伴い、細胞生存率は徐々に上昇し、アロキサン損傷群(AXN群)と比較して、NMN:GX999(1mM)とMG:GX008A 1mM(P<0.05)、5mM及び10mM(P<0.01)の差は統計的に有意であった。
【0049】
MG:GX008A+NMN:GX999併用効果解析
図7は、濃度1:0.5mMのMG:GX008A+1mMのNMN:GX999、濃度2:1mMのMG:GX008A+1mMのNMN:GX999、濃度3:5mMのMG:GX008A+1mMのNMN:GX999、濃度4:10mMのMG:GX008A+ImMのNMN:GX999で調整したMG:GX008A+NMN:GX999対アロキサン併用評価指標値CIを示すグラフである。図7は、カルクシンソフトウェアを用いて算出した併用効率結果を示す。1mMのNMN:GX999と1mM及び5mMのMG:GX008Aでの薬剤併用評価指標値CIは、単剤による保護群と比較して、併用保護群ではCI<1.0であり,NMN:GX999とMG:GX008Aのアロキサン損傷群に対する相乗的な保護効果を示す。
【0050】
4. 実験結論
実験の結果、NMN:GX999とMG:GX008Aは、単独でも一定の濃度範囲で損傷した細胞に対して保護効果を発揮し、1mMのNMN:GX999と異なる濃度のMG:GX008Aとの併用は、損傷した細胞に対して有意な保護効果と相乗的保護効果を発揮することが判明した。
【0051】
実施例2.モグロシド(MG:GX008A)及びニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN:GX999)の3T3-L1前駆脂肪細胞の分化に及ぼす影響と両混合物の併用効果
本実施例の試験では、前駆脂肪細胞の増殖に対するNMN:GX999及びMG:GX008Aの効果を、NMN:GX999又はMG:GX008Aを単独で使用した場合と、NMN:GX999及びMG:GX008Aを併用した場合とで夫々評価し、実験の結果、NMN:GX999及びMG:GX008Aは、濃度に依存して3T3-L1脂肪細胞の増殖を抑制し、2薬剤の併用により細胞増殖を相乗的に抑制した。NMN:GX999とMG:GX008Aの併用により、脂肪細胞の脂肪生成を共に有意に抑制し、相乗的に脂肪生成をある程度抑制して、3T3-L1前脂肪細胞の分化を相乗的に抑制する効果があることが判明した。
【0052】
1. 実験目的
3T3-L1前駆脂肪細胞の増殖分化に対するMG:GX008AとNMN:GX999の影響を研究して、両者の併用効果を観察した。
【0053】
2. 材料と方法
【0054】
2.1 材料
【0055】
2.1.1 試料
実施例1と同様である。
【0056】
2.1.2 細胞取得
中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センターより3T3-L1細胞を入手した。
【0057】
2.1.3 実験試薬
子ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FBS)及びダルベッコ改変イーグル基礎培地(DMEM, Dulbecco's Modified Eagle's Medium)を米国グビコ(GBICO)社より入手し、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、デキサメタゾン及びインスリンを米国シグマ(SIGMA)社より入手し、オイルレッドOパウダー及びメチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)を北京太陽バイオ科学技術社より入手した。
【0058】
2.2 試験方法
【0059】
2.2.1 細胞培養
10%子牛血清を含む基礎培地(DMEM)の高糖度培地を用いて、37℃、5%CO2環境下で3T3-L1細胞を培養し、細胞融合率が90%に達した時点で、0.25%トリプシンで消化し、継代して96個の凹部を有する細胞培養板に接種した。
【0060】
2.2.2 群分及び解析
MG:GX008AとNMN:GX999を培地に溶解し、最終濃度200mMと500mMに調製して使用した。
【0061】
2.2.3 実験過程
【0062】
細胞生存率測定-MTT試験:
対数増殖期の細胞を採取し、96個の凹部を有する培養板に密度5×103細胞数/mLで接種し、1群につき4個の凹部に複製物を作成した。凹部の約40~50%に集密するまで細胞が成長した後、新鮮な薬剤含有培地を交換し、NMN:GX999単独群、MG:GX008A群、NMN:GX999+MG:GX008A併用群に分けた。48時間培養した後、各凹部にメチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)20μl(5mg/mL)を加え、更に4時間培養を続けた。その後、培地を捨て、各凹部に150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、10分間振盪した後、490nmの光学濃度OD(Optical Density)を酵素マーカーで検出し、算出式により細胞生存率を算出した。
【0063】
薬物相乗効果評価指標CI解析:
併用法:10mMのNMN:GX999とMG:GX008A(0、5、10、30、50mM)との併用群。異なる濃度の薬剤の単用(単独使用)と併用による抑制率に応じて,異なる濃度のNMN:GX999及びMG:GX008Aの単用による抑制率と,対応する濃度の併用による抑制率等のデータをカルクシンソフトウェアで解析し,評価指標CI値を求めた。併用指数の定義により、薬剤の相乗効果を判定し、1.0未満を相乗効果とし、1.0以上を敵対効果とした。
【0064】
脂肪細胞の分化誘導実験:
3T3-L1前駆脂肪細胞が成長して完全に集密化した2日後に、分化誘導を開始した。即ち、基礎培地(DMEM)の完全培地を廃棄した代わりに、インスリン5μg/ml、IBMX0.5mM及びデキサメタゾン1μMを含む基礎培地(DMEM)に交換し、2日後、インスリン5μg/mlを含む基礎培地(DMEM)に交換して、2日間培養した。その後、基礎培地を使用して、2日間培養を続けた。10mMのNMN:GX999又は10mMのMG:GX008Aを含む培養媒体を実験群に分化の初日から与えて、細胞の全分化過程で実験群に介入したが、対照群には従来の誘導剤を付与した。
【0065】
オイルレッドO染色:
8日間の分化誘導後、細胞を4%ポリオキシメチレンで30分間固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、オイルレッドO染色液を加えて60分間培養、保温及び育成した後、染色液を吸引して捨て、食塩水で3回洗浄し、脂質滴形成を倒立顕微鏡で観察し、ビデオ撮影を行った。イソプロパノール(1凹部当たり200μl)を加え、5分後に吸光度値A490nmを酵素マーカーで測定した。
【0066】
2.2.4 統計的方法
少なくとも3回の独立した実験から全実験データを得て、平均値±標準偏差値で表した。統計解析はSPSS16.0ソフトウェアを用いて行った。2群間のデータ比較には2つの独立試料のt検定を採用し、複数群間のデータ比較には一元配置分散分析を用い、P<0.05は統計学的に有意であると認められた。
【0067】
3. 実験結果
【0068】
3T3-L1前駆脂肪細胞の増殖に対するNMN:GX999の影響
MTT法を用いて細胞生存率を測定した。図8は、陰性対照群と比較する不確実性誤差P値のP<0.05、**P<0.01の3T3-L1細胞生存率に対するNMN:GX999の抑制効果(細胞生存率)を示す棒グラフである。図8に結果を示す通り、NMN:GX999(0、10、20、40、60mM)を単独で3T3-L1細胞に48時間作用すると、薬剤濃度の上昇に伴い、3T3-L1細胞の生存率が低下し、細胞増殖の濃度依存的抑制が認められ、無薬物対照群と比較して、何れのP値も0.01以下であり、その差は統計学的に有意であった。NMN:GX999のIC50は,抑制率から51.7±1.5mMであった。
【0069】
3T3-L1前駆脂肪細胞の増殖に対するMG:GX008Aの影響
図9は、陰性対照群と比較する不確実性誤差*P<0.05、**P<0.01の3T3-L1細胞生存率に対するMG:GX008Aの影響(細胞生存率)を示す棒グラフである。図9に結果を示す通り、MG:GX008A(0、5、10、30、50、100、200mM)を単独で3T3-L1細胞に48時間作用させると、薬剤濃度の上昇に伴い3T3-L1細胞の生存率が低下し、濃度依存的な細胞増殖抑制が認められ、無薬物対照群と比較してP値は何れも0.01以下であり、その差は統計学的に有意であった。
【0070】
3T3-L1前駆脂肪細胞の増殖に対するMG:GX008AとNMN:GX999の併用効果
MG:GX008A及びNMN:GX999を単独で作用させると,3T3-L1前駆脂肪細胞に対する増殖抑制効果は,投与濃度の増加に伴って徐々に増大し,有意な用量依存的効果関係を示した。図10は、不確実性誤差*P<0.05、**P<0.01を陰性対照群と比較し、#P<0.05、##P<0.01と10mM NMN:GX999とを群間比較し、△P<0.05とMG:GX008A単独群とを比較する、3T3-L1細胞生存率に対するMG:GX008A+NMN:GX999併用の影響(細胞生存率)を示す棒グラフである。10mMのNMN:GX999を異なる濃度のMG:GX008A(0、5、10、30、50mM)と併用した結果は、図10に示すとおり(図9に示すMG:GX008A単剤群のデータの一部を比較のため示す)、両者の併用抑制効果は、MG:GX008Aの濃度が増加する程増大する傾向を示し、単剤群と比較して、MG:GX008Aの濃度が増加する程、NMN:GX999の併用抑制効果は、減少した。MG:GX008A 10mM、30mM、50mMは、10mMのNMN:GX999群(P<0.01)、MG:GX008A単剤群(P<0.05)と比較して、有意に強い抑制効果を示した。
【0071】
10mMのNMN:GX999とMG:GX008Aの併用による相乗効果の解析:
図11は、1:5mMのMG:GX008A+10mMのNMN:GX999、2:10mMのMG:GX008A+10mMのNMN:GX999、3:30mMのMG:GX008A+10mMのNMN:GX999、4:50mMのMG:GX008A+10mMのNMN:GX999でMG:GX008A+NMN:GX999の併用評価指標値CIを示すグラフである。カルクシンソフトウェアを用いて、図11に示す結果を算出したとき、10mMのNMN:GX999とMG:GX008Aを併用した場合の評価指標値CIは、全て1.0以下となり、2剤併用の相乗効果が判明した。NMN:GX999との相乗効果により、MG:GX008Aは、3T3-L1前駆脂肪細胞の増殖をある程度抑制できた。
【0072】
脂肪細胞分化群に対するNMN:GX999群、MG:GX008A群及びNMN:GX999+MG:GX008A併用群の影響
併用実験の結果に基づき、薬物濃度と併用濃度を選定した。10mMのNMN:GX999、10mMのMG:GX008A、10mMのNMN:GX999+10mM、MG:GX008Aを分化誘導時に添加して8日間処理し、オイルレッドO染色を行い、顕微鏡で観察してビデオ撮影し、オイルレッドOをイソプロパノールで抽出して光学濃度(OD値)を読み取った。図12は、3T3-L1細胞の分化群に対するGX999群、GX008A群及びGX999+GX008A併用群の分化誘導例を示す写真である。図13は、不確実性誤差*P<0.05、**P<0.01をもって分化群と比較し;△P<0.05とNMN:GX999+MG:GX008A単独群の間で比較する3T3-L1細胞の分化群に対するGX999群、GX008A群及びGX999+GX008A併用群の定量的脂質滴下量を示す棒グラフである。図13では、NMN:GX999及びMG:GX008Aの単用又は併用により、分化群と比較して、細胞内脂質滴下量は、明らかに減少し、脂質生成の抑制が判明した(P<0.01)。MG:GX008A+NMN:GX999併用群は、単剤群と比較して脂質滴下量がより減少した(P<0.05)。
【0073】
4. 実験結論
実験の結果、NMN:GX999群とMG:GX008A群は、3T3-L1脂肪細胞の増殖を抑制でき、濃度依存的効果を有し、2薬剤の併用により細胞増殖の相乗的抑制効果があり、NMN:GX999群とMG:GX008A群は、共に脂肪細胞の脂肪生成を有意に抑制でき、併用により、ある程度の脂肪生成に対する相乗的抑制効果、即ち、3T3-L1前脂肪細胞分化の相乗的抑制効果の発生が判明した。
【0074】
実施例3:モグロシド(60% MGV)とニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN、NMN:GX999)の血糖降下作用
【0075】
1. 試料の準備
(1) NMNMG200の調製
10%グリセロールを含む水溶液100mlに、NMN(純度98%)20gと60%MGV(前の調製例で調製)0.5gを溶解して、NMNMG200を作成した。
(2) NMN200の調製
グリセロール10%を含む水溶液100mlに、NMN(純度98%)20gを溶解して、NMN200を作成した。
(3) MG5の調製
先の調製例で調製した60%MGVの055gを、10%グリセロールを含む水溶液100mlに溶解して、MG5を作成した。
【0076】
2. 昼食前の血糖値効果の測定
午前昼前の血糖値6.0以上の被験者を選び、空腹時血糖値(0m)を毎朝測定した後、実施例1で調製したNMNMG200、NMN200又はMG5の溶液1mlを配合した飲料水100mlを飲用(経口)投与により摂取させ、その後、30分、60分経過時の血糖値を測定した。その結果を表1に示す。
【0077】
表1: 異なる試料を服用した被験者の血糖値測定結果
【表1】
続いて、前記実験過程で説明した朝食前空腹時正常血糖値6.0以上の被験者を選び、毎晩就寝の約1時間前にNMNMG200を投与し、投与後の血糖値を測定した。結果を表2に示す:
【0078】
表2: NMNMG200服用前後の被験者の血糖値測定結果
【表2】
表2の結果から、モグロシドとニコチンアミドモノヌクレオチドとの併用により血糖降下作用が認められることが判明した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13