(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】燃料経済性、分散性及びデポジット性能を改善するためのポリアルキル(メタ)アクリレート
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20240830BHJP
C08F 8/14 20060101ALI20240830BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20240830BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20240830BHJP
C10M 149/16 20060101ALI20240830BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240830BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240830BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
C08F290/04
C08F8/14
C08F8/04
C10M145/14
C10M149/16
C10N30:02
C10N40:25
C10N30:04
(21)【出願番号】P 2021556674
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020057364
(87)【国際公開番号】W WO2020187954
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カトリン シェラー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ツィーグラー
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイゼンベアク
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー シャフヴォロストフ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シモセク
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174188(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/083027(WO,A1)
【文献】特許第6456468(JP,B1)
【文献】特表2019-535858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)
45質量%~
60質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~
15質量%の、スチレン;
(d)
15質量%~
30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)
3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、
質量平均分子量が200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項2】
以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)
30質量%~
45質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)
19質量%~
30質量%の、スチレン;
(d)
15質量%~
30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)
3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、
質量平均分子量が200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル(a)が、4000~6000g/molの数平均分子量Mnおよび少なくとも99%の水素化レベルを有する、請求項1又は2に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル(a)が、少なくとも99%の水素化レベルを有する、請求項1、2又は3に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項5】
成分(d)が、C
10~15アルキルメタクリレートから選択される、請求項1、2、3又は4に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項6】
成分(d)が、C
12~14アルキルメタクリレートから選択される、請求項1、2、3又は4に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項7】
成分(e)が、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)である、請求項1、2、3又は4に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項8】
数平均分子量が、20000~200000g/molの範囲内であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項9】
数平均分子量が、30000~170000g/molの範囲内であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項10】
潤滑油組成物の燃料経済性、分散性及びデポジット形成を改善するための、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用。
【請求項11】
以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)45質量%~60質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~15質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)
を含み、
質量平均分子量が、200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを添加することによって、潤滑油組成物のデポジット形成を改善する方法。
【請求項12】
以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)
を含み、
質量平均分子量が、200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを添加することによって、潤滑油組成物のデポジット形成を改善する方法。
【請求項13】
成分(d)が、C
10~15アルキルメタクリレートから選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
成分(d)が、C
12~14アルキルメタクリレートから選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
(A)60~80質量%の、基油、及び
(B)20~40質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)
45質量%~
60質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~
15質量%の、スチレン;
(d)
15質量%~
30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)
3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含み、
質量平均分子量が、
200000~
700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含む、添加剤組成物。
【請求項16】
(A)60~80質量%の、基油、及び
(B)20~40質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含み、
質量平均分子量が、200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含む、
添加剤組成物。
【請求項17】
ポリマー(B)の成分(d)が、C
10~15アルキルメタクリレートから選択される、請求項15
又は16に記載の添加剤組成物。
【請求項18】
ポリマー(B)の成分(d)が、C
12~14アルキルメタクリレートから選択される、請求項15
又は16に記載の添加剤組成物。
【請求項19】
ポリマー(B)の成分(e)が、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)である、請求項15、16、17
又は18に記載の添加剤組成物。
【請求項20】
(A)80~99.5質量%の、基油;
(B)0.5~5質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーであって、
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)
45質量%~
60質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~
15質量%の、スチレン;
(d)
15質量%~
30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)
3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含み、
質量平均分子量が、
200000~
700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマー;及び
(C)0~15質量%の、1種以上のさらなる添加剤
を含む、潤滑油組成物。
【請求項21】
(A)80~99.5質量%の、基油;
(B)0.5~5質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーであって、
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C
1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C
10~30アルキル(メタ)アクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー
を含み、
質量平均分子量が、200000~700000g/molの範囲内であることを特徴とする、ポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマー;及び
(C)0~15質量%の、1種以上のさらなる添加剤
を含む、潤滑油組成物。
【請求項22】
ポリマー(B)の成分(d)が、C
10~15アルキルメタクリレートから選択される、請求項
20又は21に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
ポリマー(B)の成分(d)が、C
12~14アルキルメタクリレートから選択される、請求項
20又は21に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
ポリマー(B)の成分(e)が、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)である、請求項20、21、22
又は23に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
前記潤滑油組成物は、エンジン油である、請求項20、21、22、23又は24に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明記された量の長鎖アルキル(メタ)アクリレート及び官能性モノマーを含む、新規なポリアルキル(メタ)アクリレート、それらの製造、そのようなポリアルキル(メタ)アクリレートを含む潤滑剤組成物及び潤滑剤組成物における、殊にエンジン油(EO)組成物における、良好な燃料経済性並びにスート分散剤機能及び等しいか又はそれどころか改善されたデポジットを有する粘度指数(VI)向上剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の対象は、殊にディーゼルエンジン油用の、良好な燃料経済性、改善されたスート分散性及びさらに良好なデポジットを有するVI向上剤を開発することであった。これに関連して、そのようなポリマーの溶解性は、最大の挑戦であるとみなされていた。
【0003】
一般に長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むポリアルキル(メタ)アクリレートの技術及び粘度指数向上剤としてのそれらの使用は、すでに公知である(米国特許出願公開第2008/0194443号明細書(US 2008/0194443)、米国特許出願公開第2010/0190671号明細書(US 2010/0190671)及び国際公開第2014/170169号(WO 2014/170169))けれども、潤滑配合物におけるスチレンコモノマーを含むポリマーの分散効果は、全く記載されていなかった。
【0004】
潤滑剤特性は、添加剤を潤滑油に添加することによって典型的に改善される。
【0005】
米国特許第5565130号及び同第5597871号明細書には、例えば、粘度指数向上剤としてポリブタジエンに由来するマクロモノマーを含むくし型ポリマーを使用することが開示されている。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0006】
国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)には、ポリオレフィン系マクロモノマー、殊にポリブタジエン系メタクリル酸エステル、及びC1~C10アルキルメタクリレートをベースとする油溶性くし型ポリマーが開示されている。該くし型ポリマーは、潤滑油用の添加剤として使用して、その粘度指数及びせん断安定性を改善することができる。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0007】
国際公開第2009/007147号(WO 2009/007147 A1)には、自動車の燃料消費量を改善するための、ポリオレフィン系マクロモノマー、殊にポリブタジエン系メタクリル酸エステル、及びC1~C10アルキルメタクリレートをベースとするくし型ポリマーの使用が開示されている。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0008】
国際公開第2010/102903号(WO 2010/102903 A1)には、トランスミッション油、モーター油及び作動油用の抗疲労添加剤としてのくし型ポリマーの使用が開示されている。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0009】
独国特許出願公開第102009001447号明細書(DE 10 2009 001 447 A1)には、高い粘度指数を有する作動油の耐荷重能を改善するためのくし型ポリマーの使用が記載されている。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0010】
国際公開第2012/025901号(WO 2012/025901 A1)(Total)には、特定の摩擦調整剤との組合せでの潤滑剤におけるくし型ポリマーの使用が開示されている。しかしながら、分散効果は、そこには開示されていない。
【0011】
従来技術に開示された潤滑剤の特性は、殊にディーゼルエンジンにおける、分散性及びデポジットの改善に関して依然として不満足であるので、本発明の目的は、燃料経済性に著しく寄与するだけでなく、潤滑組成物において使用される基油に添加される場合に分散性及びデポジット性能にも寄与する、単一成分を提供することである。
【0012】
明記された量の長鎖アルキル(メタ)アクリレート及び官能性モノマーを含むポリアルキル(メタ)アクリレートが、潤滑組成物の分散性特性に有利な影響を及ぼすことが驚くべきことに見出された。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の第1の対象は、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~65質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~30質量%の、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレート)からなる群から選択されるフェニル含有モノマー、好ましくはスチレン;
(d)10質量%~43質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)0質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに関する。
【0014】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0015】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの質量平均分子量は、好ましくは100000~1000000g/molの範囲内、より好ましくは200000~700000g/molの範囲内である。本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの数平均分子量は、好ましくは20000~200000g/molの範囲内、より好ましくは30000~170000g/molの範囲内である。
【0016】
好ましくは、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、2~10の範囲内、より好ましくは2~7の範囲内の多分散指数(PDI)Mw/Mnを有する。
Mw及びMnは、商業的に入手可能なポリメチルメタクリレート標準を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定される。該決定は、溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより行われる。
【0017】
さらなる第1の実施態様は、55~65質量%の、C1~4-アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びスチレンからなる群から選択されるモノマーを含む、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに関する。
【0018】
さらなる第1の実施態様は、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)45質量%~60質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~15質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15 アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに関する。
【0019】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0020】
さらなる第1の実施態様は、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに関する。
【0021】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0022】
本発明に関連して、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、骨格又は主鎖とも呼ばれる第1のポリマー、及び側鎖と呼ばれる多数のさらなるポリマーを含み、かつ該骨格に共有結合される。この場合に、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの骨格は、前記の(メタ)アクリレートの連結された不飽和基により形成される。該(メタ)アクリル酸エステルのエステル基、該スチレンモノマーのフェニル基及びさらなるフリーラジカル重合性コモノマーの置換基は、該くし型ポリマーの側鎖を形成する。
【0023】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸のエステル及びメタクリル酸のエステルの双方をいう。メタクリレートは、アクリレートよりも好ましい。
【0024】
本発明に従う使用のための前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、4000~6000g/mol、好ましくは4500~5000g/molの数平均モル質量Mnを有する。それらの高いモル質量のために、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、本発明に関連してマクロアルコールとも呼ばれ得る。
【0025】
該数平均モル質量Mnは、商業的に入手可能なポリブタジエン標準を用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される。該決定は、DIN 55672-1に従って溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより行われる。
【0026】
好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、少なくとも99%の水素化レベルを有する。本発明のコポリマーについて決定することができる水素化レベルの代替的な尺度は、ヨウ素価である。該ヨウ素価は、コポリマー100gへ付加することができるヨウ素のグラム数をいう。好ましくは、本発明のコポリマーは、コポリマー100gあたりヨウ素5g以下のヨウ素価を有する。該ヨウ素価は、DIN 53241-1:1995-05に従ってウイス法により決定される。
【0027】
好ましいヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、英国特許出願公開第2270317号明細書(GB 2270317)に従って得ることができる。
【0028】
一部のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、商業的に入手可能でもある。商業的にヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、例えば、Cray Valley(パリ)、Total(パリ)の子会社からの、Mn=4200g/molの、それぞれ1,2繰返し単位及び1,4繰返し単位を約50%有する、約98質量%の範囲までOH官能化された水素化ポリブタジエン(オレフィンコポリマーOCPとも呼ばれる)を含む 。
【0029】
好ましいのは、モノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンである。より好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルを末端基とする水素化ポリブタジエンである。特に好ましいのは、ヒドロキシプロピルを末端基とするポリブタジエンである。
【0030】
これらのモノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、最初にブタジエンモノマーをアニオン重合によりポリブタジエンに変換することにより、製造することができる。引き続き、該ポリブタジエンモノマーをエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させることにより、ヒドロキシ官能化されたポリブタジエンを製造することができる。このヒドロキシル化されたポリブタジエンは、適した遷移金属触媒の存在下で水素化することができる。
【0031】
前記の本発明に従う使用のための(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステルは、それらの高いモル質量のために本発明に関連してマクロモノマーとも呼ばれる。
【0032】
本発明に従う使用のためのマクロモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換により製造することができる。該アルキル(メタ)アクリレートと、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの反応は、本発明のエステルを形成する。好ましいのは、メチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートを出発物質として用いることである。
【0033】
このエステル交換は、広く公知である。例えば、このためには、不均一系触媒系、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)又はナトリウムメトキシド(NaOMe)又は均一系触媒系、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr)4)又はジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)2O)を使用することを可能にする。前記反応は平衡反応である。したがって、放出される低分子量アルコールは典型的に、例えば蒸留により、除去される。
【0034】
そのうえ、該マクロモノマーは、直接エステル化法により、例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物から、好ましくはp-トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸による酸性触媒作用下で、又は遊離メタクリル酸からDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により得ることができる。
【0035】
さらに、このヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、酸塩化物、例えば塩化(メタ)アクリロイルとの反応により、エステルに変換することができる。
【0036】
好ましくは、本発明のエステルの上記で詳述された製造において、重合防止剤、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルラジカル及び/又はヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0037】
本発明に従う使用のためのC1~4アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸及び炭素原子1~4個を有する直鎖又は分岐状のアルコールのエステルである。用語「C1~4アルキルメタクリレート」は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に異なる長さのアルコールを有する(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
適したC1~4アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート)、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及びtert-ブチル(メタ)アクリレートを含む。特に好ましいC1~4 アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートであり;メチルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートが殊に好ましい。
【0038】
本発明に従う使用のためのC10~30アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸及び炭素原子10~30個を有する直鎖又は分岐状のアルコールのエステルである。用語「C10~30アルキルメタクリレート」は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に異なる長さのアルコールを有する(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
適したC10~30アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、2-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-ブチルデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、2-デシル-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、1,2-オクチル-1-ドデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、1,2-テトラデシル-オクタデシル(メタ)アクリレート及び2-ヘキサデシル-エイコシル(メタ)アクリレートを含む。
【0039】
本発明に従う使用のためのC10~15アルキルメタクリレートは、メタクリル酸及び炭素原子10~15個を有するアルコールのエステルである。用語「C10~15 アルキルメタクリレート」は、特定の長さのアルコールを有する個々のメタクリル酸エステル、及び同様に異なる長さのアルコールを有するメタクリル酸エステルの混合物を含む。
【0040】
前記の適したC10~15アルキルメタクリレートは、例えば、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、5-メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、5-メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート及び/又はペンタデシルメタクリレートを含む。
【0041】
特に好ましいC10~15アルキルメタクリレートは、線状C12~14アルコール混合物のメタクリル酸エステル(C12~14アルキルメタクリレート)である。
【0042】
適したスチレンモノマーは、スチレン、アルキル置換基を側鎖中に有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレン及びα-エチルスチレン、アルキル置換基を環上に有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレンからなる群から選択され;その際に、スチレンが好ましい。
【0043】
本発明に従う使用のためのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、そのモル分岐レベル(「f-分岐」)に基づいて特性決定することができる。該モル分岐レベルは、該モノマー組成物中の前記の全てのモノマーの全モル量を基準として、使用されるマクロモノマー(成分(a))のmol%でのパーセンテージをいう。使用されるマクロモノマーのモル量は、該マクロモノマーの数平均モル質量Mnに基づいて計算される。該分岐レベルの計算は、国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)、殊に第13及び14頁に詳細に記載されており、本明細書で明示的に参照される。
【0044】
本発明に従うポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーは好ましくは、0.1~2mol%、より好ましくは0.3~1.5mol%及び最も好ましくは0.5~1.0mol%のモル分岐度f分岐を有する。
【0045】
該モル分岐度f分岐は、米国特許出願公開第2010/0190671号明細書(US 2010/0190671 A1)の段落[0060]~[0065]に記載されたように計算される。
【0046】
本発明によるポリマーは、それらを含む潤滑油組成物の低いKV40、HTHS80及びHTHS100値(例えば2.6mPasの所定のHTHS150での)へのそれらの寄与により特性決定される。
したがって、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、文献SAE J300に定義された粘度特性を有する全ての普通グレードのモーター油において使用することができる。本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、潤滑油組成物の分散性及びデポジット形成をさらに改善する。
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、エンジンにおける、好ましくはディーゼルエンジンにおける分散性及びデポジット形成をさらに改善する。
したがって、本発明のさらなる対象は、潤滑油組成物の動粘度及びHTHS性能を改善すると同時に、殊にエンジン油配合物の、分散性性能を改善し、かつデポジット形成を維持又は改善するための、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用に関する。
【0047】
本発明のさらなる対象は、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを添加することにより、潤滑油組成物、殊にエンジン油配合物の動粘度及びHTHS性能を改善すると同時に、分散性性能を改善し、かつデポジット形成を維持又は改善する方法に関する。
【0048】
本発明の第2の実施態様は、
(A)60質量%~80質量%の、基油、及び
(B)20質量%~40質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~65質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~30質量%の、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレート)からなる群から選択されるフェニル含有モノマー、好ましくはスチレン;
(d)10質量%~43質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)0質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含む、添加剤組成物に関する。
【0049】
各成分(A)及び(B)の含有率は、該添加剤組成物の全質量を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)及び(B)の割合は、合計100質量%になる。
【0050】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0051】
本発明のさらなる第2の実施態様は、
(A)60質量%~80質量%の、基油、及び
(B)20質量%~40質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)45質量%~60質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~15質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含む、添加剤組成物に関する。
【0052】
各成分(A)及び(B)の含有率は、該添加剤組成物の全質量を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)及び(B)の割合は、合計100質量%になる。
【0053】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0054】
本発明のさらなる第2の実施態様は、
(A)60質量%~80質量%の、基油、及び
(B)20質量%~40質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含む、添加剤組成物に関する。
【0055】
各成分(A)及び(B)の含有率は、該添加剤組成物の全質量を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)及び(B)の割合は、合計100質量%になる。
【0056】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0057】
該添加剤組成物において使用され得る基油は、潤滑粘度の油を含む。そのような油は、天然及び合成油、水素化分解、水素化、及び水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、再生油又はそれらの混合物を含む。
【0058】
該基油は、アメリカ石油協会(API)により指定されるように定義されることもできる(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、節1.3 副見出し1.3.“Base Stock Categories”参照)。
【0059】
APIは現在、潤滑剤ベースストックの5つのグループを定義する(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。グループI、II及びIIIは、それらが含有する飽和分及び硫黄の量と、それらの粘度指数とにより分類される鉱油であり;グループIVは、ポリアルファオレフィンであり;かつグループVは、例えばエステル油を含めた、その他全てである。以下の表は、これらのAPI分類を説明する。
【表1】
【0060】
本発明に従う添加剤組成物又は潤滑組成物を製造するのに使用される適切な無極性基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って、好ましくは3mm2/s~10mm2/sの範囲内、より好ましくは4mm2/s~8mm2/sの範囲内である。
【0061】
本発明に従って使用できるさらなる基油は、グループII~IIIフィッシャー-トロプシュ由来基油である。
フィッシャー-トロプシュ由来基油は、当該技術分野において公知である。用語「フィッシャー-トロプシュ由来」は、基油が、フィッシャー-トロプシュ法の合成生成物であるか、又は該合成生成物に由来することを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来基油は、GTL(ガス液化)基油とも呼ばれうる。本発明の潤滑組成物における基油として好都合に使用され得る、適したフィッシャー-トロプシュ由来基油は、例えば、欧州特許出願公開第0776959号明細書(EP 0 776 959)、欧州特許出願公開第0668342号明細書(EP 0 668 342)、国際公開第97/21788号(WO 97/21788)、国際公開第00/15736号(WO 00/15736)、国際公開第00/14188号(WO 00/14188)、国際公開第00/14187号(WO 00/14187)、国際公開第00/14183号(WO 00/14183)、国際公開第00/14179号(WO 00/14179)、国際公開第00/08115号(WO 00/08115)、国際公開第99/41332号(WO 99/41332)、欧州特許出願公開第1029029号明細書(EP 1 029 029)、国際公開第01/18156号(WO 01/18156)、国際公開第01/57166号(WO 01/57166)及び国際公開第2013/189951号(WO 2013/189951)に開示されたものである。
【0062】
殊にエンジン油配合物には、APIグループIIIの基油が使用される。
【0063】
本発明の添加剤組成物は、該添加剤組成物の全質量を基準として、好ましくは70質量%~75質量%の、基油(A)及び25質量%~30質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)を含む。
【0064】
本発明の第3の実施態様は、
(A)80~99.5質量%の、基油;
(B)0.5~5質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~65質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~30質量%の、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレート)からなる群から選択されるフェニル含有モノマー、好ましくはスチレン;
(d)10質量%~43質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)0質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー;及び
(C)0~15質量%の、1種以上のさらなる添加剤
を含む、潤滑油組成物に関する。
【0065】
各成分(A)、(B)及び(C)の含有率は、該潤滑油組成物の全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)、(B)及び(C)の割合は、合計100質量%になる。
【0066】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0067】
本発明のさらなる第3の実施態様は、
(A)80~99.5質量%の、基油;
(B)0.5~5質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)45質量%~60質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~15質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー;及び
(C)0~15質量%の、1種以上のさらなる添加剤
を含む、潤滑油組成物に関する。
【0068】
各成分(A)、(B)及び(C)の含有率は、該潤滑油組成物の全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)、(B)及び(C)の割合は、合計100質量%になる。
【0069】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0070】
本発明のさらなる第3の実施態様は、
(A)80~99.5質量%の、基油;
(B)0.5~5質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMAm)及びN-ビニルピロリジノン(NVP)からなる群から選択される窒素含有モノマー、好ましくはDMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
(C)0~15質量%の、1種以上のさらなる添加剤
を含む、潤滑油組成物に関する。
【0071】
各成分(A)、(B)及び(C)の含有率は、該潤滑油組成物の全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(A)、(B)及び(C)の割合は、合計100質量%になる。
【0072】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0073】
本発明による潤滑油組成物は、成分(C)として、従来のVI向上剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、耐食添加剤、染料及びそれらの混合物からなる群から選択されるさらなる添加剤を含有していてもよい。
【0074】
従来のVI向上剤は、水素化されたスチレン-ジエンコポリマー(HSD、米国特許第4116917号明細書(US4116 917)、米国特許第3772196号明細書(US3772196)及び米国特許第4788316号明細書(US4788316))、殊にブタジエン及びイソプレンをベースとするもの、並びにオレフィンコポリマー(OCP、K. Marsden: “Literature Review of OCP Viscosity Modifiers”, Lubrication Science 1 (1988), 265)、殊にポリ(エチレン-co-プロピレン)型のもの、これらはしばしば分散作用を有するN/O官能基型で存在していてもよく、又は分散剤として有利な添加剤特性(ブースター)を有するN官能基型で通常存在するPAMA、摩耗保護添加剤及び/又は摩擦調整剤(西独国特許出願公開第1520696号明細書(DE 1 520 696)、Roehm and Haas、国際公開第2006/007934号(WO 2006/007934)、RohMax Additives)を含む。
【0075】
潤滑油、殊にモーター油用のVI向上剤及び流動点向上剤の編集物は、例えば、T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001:R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”, Blackie Academic & Professional, London 1992;又はJ. Bartz: “Additive fuer Schmierstoffe”, Expert-Verlag, Renningen-Malmsheim 1994に詳述される。
【0076】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ酸化PIBSIを含めたポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI);及びN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0~5質量%の量で好ましくは使用される。
【0077】
適した消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル、等である。
該消泡剤は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0.005~0.1質量%の量で好ましくは使用される。
【0078】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネート及びホスホネート;スルホネート及びカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウム及びバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは中性又は過塩基性の形で使用されてよい。
【0079】
清浄剤は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0.2~1質量%の量で好ましくは使用される。
【0080】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む。
【0081】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);4,4′-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2′-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール;2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール;2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール;2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N′-ジメチルアミノメチルフェノール);4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2′-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;2,2′-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、等を含む。これらのうち、殊に好ましいのは、ビスフェノール系酸化防止剤及びエステル基含有フェノール系酸化防止剤である。
該アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、等;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4′-ジブチルジフェニルアミン、4,4′-ジペンチルジフェニルアミン、4,4′-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4′-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4′-ジオクチルジフェニルアミン、4,4′-ジノニルジフェニルアミン、等;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン、等;ナフチルアミン類、具体的にはα-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン及びさらにアルキル置換されたフェニル-α-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミン、等を含む。これらのうち、ジフェニルアミン類は、その抗酸化効果の見地から、ナフチルアミン類よりも好ましい。
適した酸化防止剤は、さらに、硫黄及びリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環状硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール類;亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)及びメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えばトリアリール及びトリアルキルホスフィット;有機銅化合物及び過塩基性カルシウム及びマグネシウムをベースとするフェノキシド及びサリチレートからなる群から選択されてよい。
酸化防止剤は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%の量で使用される。
【0082】
該流動点降下剤は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン、等を含む。好ましいのは、5000~50000g/molの質量平均分子量を有するポリメタクリレートである。
該流動点降下剤の量は、該潤滑油組成物の全量を基準として、好ましくは0.1~5質量%である。
【0083】
好ましい耐摩耗添加剤及び極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィド等;リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキル及びジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキル及びジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩又は金属塩、等;硫黄及びリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスフィット、チオホスフェート、チオホスホネート、それらの化合物のアミン塩又は金属塩、等を含む。
該耐摩耗剤は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.5~0.9質量%の量で存在していてよい。
使用される摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;摩擦化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸及びチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸;ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィン又は有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェート及びモリブデンジチオカルバメートMoDTC)及びそれらとZnDTPとの組合せ、銅含有有機化合物を含んでいてよい。
摩擦調整剤は、該潤滑油組成物の全量を基準として、0~6質量%、好ましくは0.05~4質量%、より好ましくは0.1~2質量%の量で、使用されてよい。
【0084】
上記に列挙した化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。ZnDTPは、例えば、主として耐摩耗添加剤及び極圧添加剤であるだけでなく、酸化防止剤及び腐食抑制剤の特性も有する(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)。
【0085】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001;R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0086】
好ましくは、前記の1種以上の添加剤(C)の全濃度は、該潤滑油組成物の全質量を基準として、0.05質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~10質量%である。
【0087】
本発明に従うポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーは、一般に、フリーラジカル重合により及び制御フリーラジカル重合、例えばATRP(=原子移動ラジカル重合)又はRAFT(=可逆付加-開裂連鎖移動)の関連した方法により、製造することができる。
【0088】
標準のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版に詳述されている。一般に、重合開始剤及び任意に連鎖移動剤は、このために使用される。
【0089】
該ATRP法は、それ自体として公知である。これが「リビング」フリーラジカル重合であることが推定されるが、しかしながら、前記機構の説明により限定することを意図するものではない。これらの方法において、遷移金属化合物は、移動可能な原子団を有する化合物と反応される。これは、移動可能な原子団の、該遷移金属化合物への移動を包含し、その結果として該金属は酸化される。この反応は、フリーラジカルを形成し、これがエチレン基上へ付加する。しかしながら、該原子団の、該遷移金属化合物への移動は可逆であり、こうして該原子団は、前記の成長するポリマー鎖に移動して戻り、その結果として制御重合系の形成となる。それに応じて、該ポリマーの形成、分子量及び分子量分布を制御することが可能である。
【0090】
この反応様式は、例えば、J.-S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614-5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901-7910 (1995)に記載されている。そのうえ、国際公開第96/30421号(WO 96/30421)、国際公開第97/47661号(WO 97/47661)、国際公開第97/18247号(WO 97/18247)、国際公開第98/40415号(WO 98/40415)及び国際公開第99/10387号(WO 99/10387)の特許出願明細書には、上記で説明されたATRPの変法が開示されている。そのうえ、本発明のポリマーは、例えば、RAFT法によって得ることもできる。この方法は、例えば、国際公開第98/01478号(WO 98/01478)及び国際公開第2004/083169号(WO 2004/083169)に詳細に記載されている。
【0091】
該重合は、標準圧力、減圧又は高めた圧力下で実施することができる。その重合温度も決定的ではない。しかしながら、一般に、-20~200℃、好ましくは50~150℃及びより好ましくは80~130℃の範囲内である。
【0092】
本発明のさらなる対象は、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)45質量%~60質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)10質量%~15質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14 アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、DMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを添加することによって、潤滑油組成物のデポジット形成を改善する方法に関する。
【0093】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0094】
本発明のさらなる対象は、以下のモノマー:
(a)10~25質量%の、(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル;
(b)30質量%~45質量%の、C1~4アルキル(メタ)アクリレート;
(c)19質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の、スチレン;
(d)15質量%~30質量%の、C10~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10~15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12~14アルキルメタクリレート;及び
(e)3質量%~7質量%の、DMAEMA
を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを添加することによって、潤滑油組成物のデポジット形成を改善する方法に関する。
【0095】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の含有率は、前記のポリアルキル(メタ)アクリレートをベースとするくし型ポリマーの全組成を基準としている。
特別な実施態様において、成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の割合は、合計100質量%になる。
【0096】
本発明は、以下の限定されない例によって説明されている。
【0097】
実験の部
省略形
AMA アルキルメタクリレート
BnMA ベンジルメタクリレート
C1AMA C1-アルキルメタクリレート=メチルメタクリレート(MMA)
C4AMA C4-アルキルメタクリレート=n-ブチルメタクリレート
C12~15AMA C12~15-アルキルメタクリレート
DDM ドデカンチオール
DMAEMA ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPMA N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド
グループIII油 4.9cStのKV100を有するグループIII基油混合物(NesteからのNB 3043及びNB 3080)
HTHS80 80℃での高温高せん断粘度、CEC L-036に従って測定
HTHS100 100℃での高温高せん断粘度、CEC L-036に従って測定
HTHS150 150℃での高温高せん断粘度、CEC L-036に従って測定
KV ASTM D445に従って測定される動粘度
KV40 40℃での動粘度、ISO 3104に従って測定
KV100 100℃での動粘度、ISO 3104に従って測定
Mn 数平均分子量
Mw 質量平均分子量
NB 3020 Nexbase(登録商標) 3020、2.2cStのKV100を有するNesteからのグループIII基油
NB 3043 Nexbase(登録商標) 3043、4.3cStのKV100を有するNesteからのグループIII基油
NVP N-ビニル-2-ピロリジノン
P6003 PCMO用DIパッケージ、ACEA C3、Infineumから商業的に入手可能
PCMO 乗用車モーター油
PDI 多分散指数
Sty スチレン
VI 粘度指数、ISO 2909に従って測定
Yubase 4+ 4.2cStのKV100を有するSK LubricantsからのグループIII基油。
【0098】
試験方法
本発明及び比較例によるポリアルキル(メタ)アクリレートを、それらの分子量及びPDIに関して特性決定した。
【0099】
分子量を、商業的に入手可能なポリメチルメタクリレート(PMMA)標準を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した。該決定は、溶離液としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(流量:1mL/min;注入体積:100μl)により行われる。
【0100】
本発明及び比較例によるポリアルキル(メタ)アクリレートを含む添加剤組成物を、ASTM D 2270によるそれらの粘度指数(VI)、ASTM D445による40℃(KV40)及び100℃(KV100)での動粘度に関して及びそれらのせん断安定性に関して特性決定した。
該添加剤組成物のせん断安定性を示すために、そのPSSI(Permanent Shear Stability Index)を、ASTM D 6022-01 (Standard Practice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に従って、ASTM D 2603-B(Standard Test Method for Sonic Shear Stability of Polymer-Containing Oils)に従って測定されたデータに基づいて計算した。
【0101】
本発明及び比較例によるポリアルキル(メタ)アクリレートを含む潤滑油組成物を、ASTM D445による40℃(KV40)及び100℃(KV100)での動粘度、ASTM D 2270による粘度指数(VI)及びCEC L-036による80℃、100℃及び150℃での高温高せん断粘度に関して特性決定した。
分散性試験を、VULCANO(処理前にオーブン中で130~160℃で乾燥させる)カーボンブラックを使用することにより実施した。5%を、完成した配合物に添加し、レオメータースキャンを、レオメーター C25 Bohlin ジオメトリーで100℃で0~920s-1のせん断速度にわたって測定した。
曲線下の面積を、その結果の定量化のために台形法によって計算した。
ピストン上の該潤滑油組成物のエンジンデポジット形成傾向を評価するために、マイクロコーカー試験GFC-LU-27-A-13を、スクリーナーとして使用した。
溶解度を、PAO4中の3.75%ポリマーの溶液中で試験した。該溶液を、少なくとも1日間室温に冷却した後に測光法により分析し、そのヘイズ値を、Hunter LAB XE デバイス及びソフトウェアを用いて得た。ヘイズを測定する際に、全透過光と比較した散漫散乱した光のパーセンテージが報告される。そのヘイズレベルが5未満である場合には、該試料は目で完全に澄明に見える。5~10のヘイズレベルで、該試料はごくわずかに曇って見え、かつ10を上回ると、該試料はわずかに曇って見える。
【0102】
ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンの合成
製造したマクロアルコールは、平均モル質量Mn=4750g/molを有するヒドロキシプロピルを末端基とする水素化ポリブタジエンであった。
【0103】
該マクロアルコールを、20~45℃でブチルリチウムを用いる1,3-ブタジエンのアニオン重合により合成した。所望の重合度に達した際に、この反応を、プロピレンオキシドを添加することにより停止させ、かつリチウムを、メタノールでの沈殿により除去した。引き続き、該ポリマーを、水素雰囲気下で貴金属触媒の存在下で140℃まで及び圧力200barで水素化した。該水素化が終了した後に、該貴金属触媒を除去し、かつ有機溶剤を減圧下で除去した。最後に、基油NB 3020を、70質量%のポリマー含有率への希釈のために使用した。
【0104】
該マクロアルコールのビニル含有率は61%であり、その水素化レベルは>99%であり、かつOH官能価は>98%であった。これらの値は、H-NMR(核共鳴分光法)により決定された。
【0105】
マクロモノマー(MM)の合成
サーベル撹拌機、空気導入管、制御器を備えた熱電対、加熱マントル、3mmワイヤスパイラルの不規則充填物を有するカラム、蒸気分配器、頂部温度計、還流冷却器及び冷却板を備えた2L撹拌装置中で、上記のマクロアルコール1000gを、メチルメタクリレート(MMA)450g中に、60℃で撹拌することにより溶解させる。該溶液に添加されるのは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル20ppm及びヒドロキノンモノメチルエーテル200ppmである。安定化のために空気を通しながらMMA還流(底部温度 約110℃)に加熱した後に、MMA約20gを、共沸乾燥のために留去する。95℃に冷却した後に、LiOCH3 0.30gを添加し、該混合物を還流まで加熱し直す。約1時間の反応時間後に、頂部温度は、メタノール形成のために約64℃に低下した。形成されたメタノール/MMA共沸混合物を、約100℃の一定の頂部温度が再び確立されるまで、絶えず留去する。この温度で、該混合物をさらに1時間反応させる。さらなる後処理のために、MMAの塊を減圧下で除去する。不溶性の触媒残留物を、圧力ろ過(Seitz T1000デプスフィルター)により除去する。さらに以下に記載されたコポリマー合成において「混入された」のNB 3020の含有率は、それに応じて考慮された。
【0106】
NVPを含有しないポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの合成
4つ口フラスコ及び精密ガラスサーベル撹拌機を有する装置に、組成が第1表に示されている低分子量モノマー及びマクロモノマーの混合物87.5g、及びHydroseal G232H/NB3020/NB3043 =65.56:15.36:19.09の油混合物58.3gを装入する。窒素下で95℃に加熱した後に、tert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート0.2gを添加し、その温度を維持した。さらに該モノマー87.5g、該油混合物58.3g及びtert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート0.2gを3時間以内に添加した。ついで、該反応を95℃でもう2h維持する。引き続き、該反応混合物をNB3043及び0.2%tert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエートで固形分40%に3時間以内に希釈する。ついで、該反応を95℃でもう2h維持し、この後にさらに0.2%tert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエートを添加し、かつ該混合物を、95℃で一晩撹拌する。翌日、該混合物を、NB3043で25%固形分に希釈する。鉱油中のくし型ポリマーの25%溶液700gが得られる。該モノマー成分は、合計100%になる。開始剤及び希釈油の量は、モノマーの全量に対して示される。
【0107】
NVPを含有するポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの合成
4つ口フラスコ及び精密ガラスサーベル撹拌機を有する装置に、組成が第1表に示されている低分子量モノマー及びマクロモノマーの混合物87.5g、及びHydroseal G232H/NB3020/NB3043=65.56:15.36:19.09の油混合物58.3gを装入する。窒素下で95℃に加熱しながら、tert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート0.2gを添加し、該温度を維持する。さらに該モノマー87.5g、該油混合物58.3g及びtert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート0.2gを3時間以内に添加する。ついで、該反応を95℃でもう2h維持する。引き続き、該反応混合物を、NB3043及び0.2%tert-ブチルペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエートで 固形分30%に3時間以内に希釈する。該反応混合物をついで130℃に加熱し、かつNVPを添加する(モノマーに対して1%)、引き続き0.5%tert-ブチル ペルオキシベンゾエートを添加し、該反応温度を少なくとも60分間保持する。第2工程において、NVPを添加し(モノマーに対して1%)、引き続き0.5%tert-ブチルペルオキシベンゾエートを添加し、かつ反応温度を少なくとも60分間保持する。第3工程において、NVPを添加し(モノマーに対して1%)、引き続き0.5%tert-ブチルペルオキシベンゾエートを添加し、かつ該反応温度を少なくとも60分間維持する。ついで、0.25%tert-ブチルペルオキシベンゾエートを添加し、かつ該反応温度を少なくとも60分間維持する。ついで、該温度を120℃に低下させ、かつ0.4% 2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン(ホワイト油中50%溶液)を添加し、かつ該反応温度を少なくとも60分間維持する。ついで再び0.8% 2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン(ホワイト油中の50%溶液)を添加し、かつ該反応を一晩120℃で撹拌する。翌日、該混合物を、NB3043で固形分25%に希釈する。開始剤及び希釈油の量は、モノマーの全量に対して示される。
【0108】
第1表は、実施例及び比較例を製造するのに使用される反応混合物を示す。
該モノマー成分は、合計100%になる。開始剤の量は、モノマーの全量に対して示される。残りの量(約75%)は、該ポリマーを製造するのに使用される一般的な手順において上記に記載されたような希釈油である。
【0109】
第1表:実施例及び比較例を製造するのに使用される反応混合物。
【表2】
【0110】
生じるくし型ポリマーの正味の組成並びにそれらの特有の数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw及びそれらの多分散指数(PDI)は、以下の第2表にまとめられている。
第2表はさらに、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーのマクロモノマー変換率MMconv.を示す。
【0111】
例1~25は、実施例であり、かつそれらの組成は、請求の範囲に記載の範囲内である。
例26は、比較例である、それというのも、そのスチレン含有率は、請求の範囲に記載の範囲よりもはるかに低いからである。
例27~32は、比較例である、それというのも、それらのマクロモノマー含有率は、請求の範囲に記載の範囲よりも高いからである。
例33は、比較例である、それというのも、そのスチレン含有率は、請求の範囲に記載の範囲よりも高いからである。
例34は、比較例である、それというのも、そのスチレン含有率は、請求の範囲に記載の範囲よりも低いからである。
【0112】
比較例27の組成は、米国特許出願公開第2010/0190671号明細書(US 2010/0190671)に開示された例6の組成に相当する。
比較例28の組成は、米国特許出願公開第2016/0097017号明細書(US 2016/0097017)に開示された例1の組成に相当する。
比較例29の組成は、米国特許出願公開第2016/0097017号明細書(US 2016/0097017)に開示された例3の組成に相当する。
【0113】
【0114】
第3表は、例及び比較例(基油中のポリマー3.75質量%)を含む添加剤組成物の特性をまとめる。基油として、4.9cStのKV100を有するグループIII油混合物を使用した。
【0115】
第3表:実施例及び比較例の典型的な特性。
【表4】
【0116】
第3表からは、約14質量%のマクロモノマー含有率及び約11質量%のスチレン含有率を有するポリアルキル(メタクリレート)ポリマーは、KV40が、BMA含有率が増加するにつれて減少していることが分かる(例1~10及び例11~17参照)。低いKV40は、良好な燃料経済性のための指標である(米国特許出願公開第2010/0190671号明細書(US 2010/0190671)参照)。
【0117】
さらに、該スチレン含有率を増加させ、かつ該BMA含有率を低下させると同時に、該マクロモノマー含有率を維持することは、KV40値を有意に変更しないことがわかる(例18~25参照)。
【0118】
「ヘイズ」は、該ポリアルキル(メタクリレート)ポリマーの油溶解度のための良好な 指標であると確認された。
【0119】
配合物中のVI向上剤の評価
潤滑油組成物のKV40及びHTHS100性能への本発明によるポリアルキル(メタクリレート)ポリマーの効果を実証するために、異なる配合物例を製造し、かつ対応する値を測定する。基油としてNexbase 3043を有する配合物を、SAE J300に従う配合物ターゲット0W20を用いることにより製造し;すなわち、上記の第3表に記載された添加剤を添加することにより2.6mPasのHTHS150ターゲットについて配合した。DIパッケージを使用しなかった。生じるポリマー含有率は、典型的に3~5質量%であった。特有のEO配合物特性(KV40、KV100、HTHS100、HTHS80)を測定し、第4表にまとめられている。
【0120】
第4表からは、約14質量%のマクロモノマー含有率及び約11質量%のスチレン含有率を有するポリアルキル(メタクリレート)ポリマーを用いることにより、該KV40、HTHS80及びHTHS100値は、BMA含有率が増加するにつれて低下していることがわかる(配合物例A-1~A-8及び配合物例A-9~A-12参照)。低いKV40は、良好な燃料経済性のための指標である。
該分散性試験の曲線下の面積の値は、それに応じて減少している。
【0121】
約10%のスチレン含有率は、良好な分散性性能を得るのに十分ではない。第4表からは、N-官能化モノマーの添加が、分散性試験における最良の結果もたらすことがわかる。
【0122】
さらに、該スチレン含有率を増加させ、かつ該BMA含有率を低下させると同時に、該マクロモノマー含有率を維持することは、KV40、HTHS80及びHTHS100値を有意に変更しないことがわかる(配合物例A-13~A-19参照)。
【0123】
基油としてYubase 4+を有するさらなる配合物を、SAE J300に従う配合物ターゲット0W20を使用することにより製造し;すなわち、上記の第3表に記載された添加剤を添加し、かつDIパッケージを用いることにより、2.6mPasのHTHS150ターゲットについて配合した。生じるポリマー含有率は、典型的に1~2質量%であった。特有のEO配合物特性(KV40、KV100、HTHS100、HTHS80)を測定し、かつ第5表にまとめられている。
【0124】
付加的に、該分散性の結果は、N-官能化モノマー、例えばNVP、DMAPMA及びDMAEMAの存在が、それらを有していないポリマーと比較してより良好な結果をもたらすことを示す。
最良の結果は、N-官能化モノマーとしてDMAEMAを用いることにより達成することができた。
【0125】
【0126】
【0127】
第5表は、DIパッケージを含有する配合物の粘度データが、全くパッケージを有していないもの(第4表参照)と相関することを示す。それは、全くパッケージを有していない配合物の粘度データが満足しており、かつ仕様の範囲内である場合に、DIパッケージを有する配合物の対応するデータが同様に満足しており、かつ仕様の範囲内であることがわかることを意味する。
【0128】
以下の第6表は、最も関連しているデータの概要を示す。マイクロコーキング試験(MCT)は、エンジン中、殊にディーゼルエンジン又はターボチャージャー付ガソリンエンジン中のピストンデポジットのためのスクリーナーとしてここでは使用される。得られたデータからは、N-分散剤モノマーを該ポリマーを導入することが、得られたMCTメリットへの不利な影響を及ぼさないことがわかる。対照的に、分散剤モノマーとしてDMAEMAを導入することが、該MCTメリットの有意な増加、ひいてはこのスクリーナーにおけるデポジット性能の改善をもたらすことが驚くべきことに見出された。
【0129】