(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】自動車用の電気駆動装置ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20240830BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240830BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 A
B60K1/02
(21)【出願番号】P 2021568160
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(86)【国際出願番号】 DE2020100375
(87)【国際公開番号】W WO2020228897
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】102019112739.4
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507349721
【氏名又は名称】ベーペーヴェー ベルギッシェ アクゼン カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BPW Bergische Achsen KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランシスカ マーグヤー
(72)【発明者】
【氏名】フランク レーエ
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037940(WO,A1)
【文献】特開平07-288950(JP,A)
【文献】特開2014-068515(JP,A)
【文献】特開平10-075546(JP,A)
【文献】特開昭52-118505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
H02K5/00-5/26
9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の電気駆動装置ユニットであって、2つの電気駆動装置(5A,5B)を備えており、これらの電気駆動装置(5A,5B)は、1つの共通の駆動装置ケーシング(3)のケーシングカバー(4)内に配置されていて、それぞれステータと、ロータ軸(8A,8B)とともに回転するロータ(8)とを有しており、前記ロータ軸(8A,8B)の互いに隣り合う軸端部(10A,10B)は両方とも、前記駆動装置ケーシング(3)内に不動に配置された軸受シールド(20)の中心領域である軸受ケーシング(25)内に回転支持されている、電気駆動装置ユニットにおいて、
前記軸受シールド(20)の構成部材は、
少なくとも3つの支柱(21,22,23)であり、該少なくとも3つの支柱(21,22,23)は、前記軸受ケーシング(25)から外側に向かって延びており
、該軸受ケーシング(25)を前記駆動装置ケーシング(3)の前記ケーシングカバー(4)に結合
し、かつ前記軸受シールド(20)において、前記軸受ケーシング(25)の周囲に配置された開口セグメントの形の同数の開口(31,32,33)を分け隔てており、
前記駆動装置ケーシング(3)内の下側に、前記開口のうちの第1の開口(31)が位置しており、該第1の開口(31)には、下側において前記駆動装置ケーシング(3)の前記ケーシングカバー(4)に形成された冷却媒体開口(70)が半径方向に開口しており、前記冷却媒体開口(70)は、前記第1の開口(31)を、前記ケーシングカバー(4)の外側に配置された冷却媒体槽(71)に接続していることを特徴とする、電気駆動装置ユニット。
【請求項2】
前記支柱(21,22,23)はもっぱら、それらの外側の端部でもって前記軸受シールド(20)の外周を形成しているとともに前記軸受シールド(20)を前記ケーシングカバー(4)に結合している、請求項1記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項3】
前記第1の開口(31)は、別のいずれの前記開口(32,33)よりも小さい、請求項
1記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項4】
前記別の開口(32,33)は、それぞれ同じ大きさである、請求項
3記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項5】
少なくとも1つの前記支柱(22,23)に冷却媒体通路(40)が通っており、該冷却媒体通路(40)は、前記支柱(22,23)の延長上の前記ケーシングカバー(4)に設けられた冷却媒体開口(41)から前記軸受ケーシング(25)内にまで通じている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項6】
前記冷却媒体開口(41)はねじ山付き孔であり、該ねじ山付き孔の横断面は、前記支柱(22,23)内に延びる前記冷却媒体通路(40)の横断面よりも大きくなっており、前記ねじ山付き孔には冷却媒体接続管片(42)が螺入されている、請求項
5記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項7】
前記支柱の幅は、前記軸受シールド(20)の周方向に見てそれぞれ異なっており、前記冷却媒体通路(40)が通っている前記支柱(22,23)の幅は、内部に前記冷却媒体通路が通っていない前記支柱(21)の幅よりも大きくなっている、請求項
5または
6記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項8】
前記軸受ケーシング(25)内に、2つの前記ロータ軸(8A,8B)の前記軸端部(10A,10B)用の別個の転がり軸受(45A,45B)が配置されており、各転がり軸受(45A,45B)は、その内輪でもって各前記軸端部(10A,10B)を包囲しており、その外輪でもって前記軸受ケーシング(25)内に支持されており、前記軸受ケーシング(25)は、その内部中心に配置された貫通開口(47)を備えており、該貫通開口(47)内には前記軸端部(10A,10B)が延びているとともに、前記冷却媒体通路(40)が開口している、請求項
5から
7までのいずれか1項記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項9】
自動車用の電気駆動装置ユニットであって、2つの電気駆動装置(5A,5B)を備えており、これらの電気駆動装置(5A,5B)は、1つの共通の駆動装置ケーシング(3)のケーシングカバー(4)内に配置されていて、それぞれステータと、ロータ軸(8A,8B)とともに回転するロータ(8)とを有しており、前記ロータ軸(8A,8B)の互いに隣り合う軸端部(10A,10B)は両方とも、前記駆動装置ケーシング(3)内に不動に配置された軸受シールド(20)の中心領域である軸受ケーシング(25)内に回転支持されている、電気駆動装置ユニットにおいて、
前記軸受シールド(20)の構成部材は、少なくとも3つの支柱(21,22,23)であり、該少なくとも3つの支柱(21,22,23)は、前記軸受ケーシング(25)から外側に向かって延びており、該軸受ケーシング(25)を前記駆動装置ケーシング(3)の前記ケーシングカバー(4)に結合し、かつ前記軸受シールド(20)において、前記軸受ケーシング(25)の周囲に配置された開口セグメントの形の同数の開口(31,32,33)を分け隔てており、
前記ケーシングカバー(4)内で2つの前記開口(32,33)の領域に各1つの窓(62,63)が形成されており、該窓(62,63)と各前記開口(32,33)とを通って電線が前記電気駆動装置(5A,5B)へ案内されている
ことを特徴とする、電気駆動装置ユニット。
【請求項10】
前記窓(62,63)は、前記ケーシングカバー(4)の互いに反対の側の周面部分に配置されており、前記窓(62,63)は、外側を保護ケース(64,65)によって覆われており、該保護ケース(64,65)内には電気接続端子(59)が位置しており、該電気接続端子(59)には前記電線が接続されている、請求項
9記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項11】
前記保護ケース(64,65)の主延在部は、前記駆動装置ケーシング(3)の長手方向に対して平行である、請求項
10記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項12】
第1の前記電線は、第1の前記電気駆動装置(5A)に取り付けられて一方の前記開口(32)内に延びる第1の接続条片(61A)に通じており、かつ第2の前記電線は、第2の前記電気駆動装置(5B)に取り付けられて他方の前記開口(33)内に延びる第2の接続条片(61B)に通じている、請求項
9から
11までのいずれか1項記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項13】
前記接続条片(61A,61B)は、これらの接続条片(61A,61B)が前記駆動装置ケーシング(3)の長手方向において部分的にオーバラップする程度に、各前記開口(32,33)内へ延びている、請求項
12記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項14】
各前記支柱(21,22,23)は、軸線方向において、前記ケーシングカバー(4)から内側に向かって突入するリブ(60)に支持されている、請求項1から
13までのいずれか1項記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項15】
前記リブ(60)は、前記ケーシングカバー(4)の一体的な構成部材である、請求項
14記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項16】
前記リブ(60)は、周方向において、個々の別個のリブセグメントから構成されており、これらのリブセグメントは、前記ケーシングカバー(4)の、前記支柱(21,22,23)が位置している周面部分にのみ配置されている、請求項
14または
15記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項17】
前記ケーシングカバー(4)は、前記リブセグメント無しの周面部分に、窓(62,63)、開口また
は切抜き部を備えている、請求項
16記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項18】
前記軸受シールド(20)は、該軸受シールド(20)が両前記電気駆動装置(5A,5B)のうちのそれぞれに対して同じ軸線方向距離を有しているように前記駆動装置ケーシング(3)内に配置されている、請求項1記載の電気駆動装置ユニット。
【請求項19】
2つの前記ロータ軸(8A,8B)は、互いに整合する回転軸線(A)を有している、請求項1記載の電気駆動装置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念に記載の電気駆動装置ユニットに関する。
【0002】
本発明はさらに、独立特許請求項24の上位概念に記載の電気駆動装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
国際公開第9840958号から、互いに整合する回転軸線上に配置された2つの電気駆動装置を備えた電気駆動装置ユニットが公知である。2つの電気駆動装置は、1つの共通の駆動装置ケーシングのケーシングカバー内に位置しているが、2つの電気駆動装置はその他の点では互いに独立しており、これに相応してそれぞれ固有のロータ軸を備えており、これらのロータ軸の軸端部は、駆動装置ケーシングから互いに反対の側に導出されている。ロータ軸の、互いに隣り合う他方の軸端部は両方とも、軸受ケーシング内に回転支持されている。軸受ケーシングは、円板として形成された軸受シールドの中心領域であり、軸受シールドが駆動装置ケーシングを、第1の電気駆動装置を備えた第1のケーシング部分と、第2の電気駆動装置を備えた第2のケーシング部分とに分けている。
【0004】
内部中心に軸受ケーシングが配置された軸受シールドに接して、ロータ軸の2つのピボット軸受のうちの1つが位置しているため、軸受シールドは相応して厚く寸法設定されているので、軸受シールドは軸の力を支持するだけでなく、駆動装置ケーシングの強度にも寄与する。したがって、駆動装置ケーシングの構成長さを決定するのは、電気駆動装置ユニット自体の寸法だけではなく、軸受シールドが要する追加的な構成空間でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底を成す課題は、長手方向においてコンパクトに構成されており、このことに駆動装置ケーシングの強度上の欠点が結び付かない、1つの共通の駆動装置ケーシング内に相前後して配置された2つの電気駆動装置を備えた電気駆動装置ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、特許請求項1記載の特徴を備えた電気駆動装置ユニットを提案する。この電気駆動装置ユニットでは、軸受シールドとして閉鎖板が用いられるのではなく、軸受シールドの構成部材は、軸受シールド内の中心に配置された軸受ケーシングから外側に向かって延びる複数の支柱である。これらの支柱はともに、中心に配置された軸受ケーシングを駆動装置ケーシングのケーシングカバーに結合する結合領域を形成している。この軸受シールドは全面的な構成部材ではないため、軸受シールドの結合領域は個々の支柱のみによって形成されることになり、支柱の間には開口ひいては中空室が残される。これらの開口は例えば、電気駆動装置の電気接続部用または冷却手段用のスペース、ひいては、さもなければ駆動装置ケーシング内に追加的な構成空間を要するであろう手段のためのスペースを提供する。軸受シールドならびに軸受ケーシングは、駆動装置ケーシング内に形状結合式かつ摩擦結合式に配置することができ、この場合、鋳造物による、駆動装置ケーシングと軸受シールドと軸受ケーシングとの一体的な実施形態も可能である。
【0007】
同時に、軸受シールドの十分な安定性ひいては目標とする駆動装置ケーシングの全体強度を得るために、軸受シールドが全面的な板として形成されていることは必要ないことが判った。軸受ケーシングから半径方向外側に向かって延び、これにより、包囲しているケーシングカバーとの単一の結合部を形成する複数の不連続の支柱から成る軸受シールドを用いても、十分な補強を達成することができ、ひいては駆動装置ケーシングの全体強度に寄与することができる。
【0008】
上記の課題を解決するために、さらに特許請求項24記載の特徴を備えた電気駆動装置ユニットを提案する。この駆動装置ユニットは、ケーシングカバー内の冷却媒体開口から結合領域を通り軸受ケーシング内にまで通じる、少なくとも1つの冷却媒体通路を特徴とする。
【0009】
この電気駆動装置ユニットの場合も、ロータ軸の互いに隣り合う軸端部は両方とも、軸受ケーシング内に回転支持されており、軸受ケーシングは、駆動装置ケーシング内に不動に配置された軸受シールドの中心領域である。軸受シールドの1つの部分領域を形成しているのは、軸受ケーシングから外側に向かって延びかつ軸受ケーシングをケーシングカバーに結合する結合領域である。結合領域は、その静的な強度決定機能の他に、結合領域に冷却媒体通路が通っている場合には追加的な機能を有しており、冷却媒体通路を介して、例えばモータコンポーネントまたは伝動装置コンポーネントに冷却液が供給される。
【0010】
このために、冷却媒体通路は、ケーシングカバーに設けられた冷却媒体開口から好適には半径方向において結合領域を通り、軸受ケーシング内まで通じている。これらの構造的なステップに基づき、駆動装置ユニット用に必要とされる冷却手段が軸受シールド内に敷設される。したがって、軸受シールド内に、さもなければ駆動装置ケーシング内に追加的な構成空間を必要とするであろう手段のためのスペースが提供される。
【0011】
さらに、提供スペースに合わせて、ケーシングカバーおよび/または冷却媒体槽の外面に冷却リブが形成されていてよく、これにより、内側から外側に向かう放熱の量が増大する。
【0012】
電気駆動装置ユニットの好適な構成は、各下位請求項に記載されている。
【0013】
軸受シールドの結合領域が複数の個別の支柱から成っている場合には、支柱がもっぱらそれらの外側の端部でもって軸受シールドの外周を形成しているとともに軸受シールドを駆動装置ケーシングのケーシングカバーに結合していると、支柱の間に最大限の開口を得るために有利である。要するに、支柱は互いにそれらの内側の端部においてのみ、つまり軸受ケーシングを介して結合されており、それらの外側の端部では結合されていない。支柱の外側の端部は、むしろ駆動装置ケーシングのケーシングカバーにのみ結合されている。
【0014】
好適には、軸受シールドの結合領域を形成するのは3つ以上の支柱であり、これらの支柱は軸受シールドにおいて、3つ以上の同数の開口を分け隔てる。開口は、好適には軸受ケーシングの周囲に配置された開口セグメントの形を有している。
【0015】
1つの構成では、第1の開口は、駆動装置ケーシング内で下側に位置している。この第1の開口には、下側において駆動装置ケーシングのケーシングカバーに形成された冷却媒体開口が半径方向に開口している。このようにして、冷却媒体開口は、第1の開口を、ケーシングカバーの外側に液体密に配置された冷却媒体槽に接続する。
【0016】
第1の開口は冷却媒体開口を開口させるためにだけ用いられるため、第1の開口は比較的小さく形成されていてよい。したがって、第1の開口は、別のいずれの開口よりも小さいことを提案する。好適には、別の開口はそれぞれ同じ大きさである。
【0017】
支柱のうちの少なくとも1つには冷却媒体通路が通っており、冷却媒体通路は、支柱の延長上のケーシングカバーに設けられた冷却媒体開口から軸受ケーシング内にまで通じている。これにより、冷却媒体を、支柱内に形成された冷却媒体通路を介して軸受シールドの中心に配置された軸受ケーシングの領域内へ案内することが可能であり、これにより、例えばそこに配置された、ロータ軸の軸端部用の転がり軸受に冷却媒体を供給することができる。
【0018】
好適には、冷却媒体開口はねじ山付き孔であり、ねじ山付き孔の横断面は、支柱内に延びる冷却媒体通路の横断面よりも大きくなっており、この場合、ねじ山付き孔には冷却媒体接続管片が螺入されている。
【0019】
1つの別の構成によって提案するのは、支柱の幅が、軸受シールドの周方向に見てそれぞれ異なっている点、および冷却媒体通路が通っている支柱の幅は、内部に冷却媒体通路が通っていない支柱の幅よりも大きくなっている点である。
【0020】
さらに提案するのは、軸受シールドの軸受ケーシング内に、2つのロータ軸の軸端部用の別個の転がり軸受が配置されているという点である。各転がり軸受は、その内輪でもって各軸端部を包囲しており、その外輪でもって軸受ケーシング内に支持されている。軸受ケーシングは、その内部中心に配置された貫通開口を備えており、貫通開口内には両側から各軸端部が延びているとともに、冷却媒体通路が開口している。
【0021】
1つの別の構成では、ケーシングカバー内で軸受シールドの2つの開口の領域に各1つの窓が形成されており、窓と各開口とを通って電線が省スペース式に電気駆動装置へ案内されている。
【0022】
窓は、好適にはケーシングカバーの互いに反対の側の周面部分に配置されている。窓は、外側を保護ケースによって覆われており、この場合、保護ケースはモジュール式に駆動装置ケーシングに固定可能であるか、または駆動装置ケーシングに一体的に鋳造されている。保護ケース内には電気接続端子が位置しており、電気接続端子には、電動モータに通じる電線が接続されている。電気駆動装置ユニットの外寸をコンパクトに保つために、保護ケースは、好適には駆動装置ケーシングの長手方向に対して平行な主延在部を有している。
【0023】
駆動装置ユニットのコンパクトな構成形式のためにさらに有利なのは、第1の電線が、第1の電気駆動装置に取り付けられて一方の開口内に延びる第1の接続条片に通じており、かつ第2の電線が、第2の電気駆動装置に取り付けられて他方の開口内に延びる第2の接続条片に通じている場合である。したがって、軸受シールド内の開口によって提供される中空室は、その内部に電気駆動装置の接続条片を省スペース式に収納するために利用される。
【0024】
この構成は、両方の接続条片がケーシングカバーにおいてそれぞれ異なる周面部分に配置されており、かつ接続条片同士が駆動装置ケーシングの長手方向において部分的にオーバラップする程度に接続条片が各開口内に延びていると、特に有利である。
【0025】
支柱と駆動装置ケーシングのケーシングカバーとの結合に関して、各支柱は軸線方向において、ケーシングカバーから内側に向かって突入するリブに支持されていることを提案する。この場合、リブはこの位置でケーシングカバーに溶接されている。リブは、好適にはケーシングカバーの一体的な構成部材である。1つの別の可能な構成では、ケーシングカバーと軸受シールドとは、例えば鋳造によって一体に製造されている。
【0026】
好適には、リブは周方向において、個々の別個のリブセグメントから構成されており、この場合、リブセグメントはケーシングカバーの、支柱が位置している周面部分にのみ配置されている。また、この構成は、各リブの間の開口セグメントが最大限になることにも寄与する。
【0027】
個々のリブセグメントへの限定はさらに、ケーシングカバーがリブセグメント無しの周面部分に、例えば窓、開口またはそのような切抜き部を備えていてよいという利点につながる。
【0028】
好適には、軸受シールドは、軸受シールドが両電気駆動装置のうちのそれぞれに対して同じ軸線方向距離を有しているように駆動装置ケーシング内に配置されている。
【0029】
別の利点および詳細は、以下の実施例の説明から明らかであり、図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】車軸に組み込まれた自動車用の電気駆動装置ユニットを示す全体斜視図である。
【
図2】駆動装置ユニットの長手方向図であって、中心領域は、
図1における鉛直方向断面内の長手方向断面として示されている。
【
図3】駆動装置ユニットの別の長手方向図であって、中心領域は、
図1における水平方向断面内の長手方向断面として示されている。
【
図4】
図2に比べて拡大した図において、電気駆動装置ユニットの中心領域を、そこに配置された軸受シールドも含めて示す図である。
【
図5】
図1に書き込んだ目視方向Vから見た電気駆動装置ユニットを示す図である。
【
図6】軸受シールドの領域における電気駆動装置ユニットの横断面図である。
【
図8】斜視図で示す、軸受シールドの別の個別図である。
【
図9】駆動装置ユニットの第2の実施形態の長手方向図であって、中心領域は、鉛直方向断面内の長手方向断面として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には外観図で、電気的に駆動される車軸の長手方向中心部分が示されている。車軸の両側に向かってさらに車両外側に配置された部分および個別部品は図示されていない。これらには例えば、車輪を備えたホイールハブを回転可能に支持する、車両外側に接続する車軸のステアリングナックルが含まれる。
図1に示す管部分2はそれぞれ、駆動トルクを各車輪にもたらす1つの駆動軸に属している。
【0032】
図1に示す電気的な軸の中心領域は、ケーシング状にとりわけ、2つの電気駆動装置を内蔵する駆動装置ケーシング3と、駆動装置ケーシング3の一方の端部に設けられた第1の伝動装置ケーシング3Aと、駆動装置ケーシング3の他方の端部に設けられた第2の伝動装置ケーシング3Bとから構成されている。伝動装置ケーシング3A,3B内には、伝動装置および好適には遊星歯車伝動装置が位置しており、遊星歯車伝動装置を介して、力が電気駆動装置5A,5Bから管部分2において認識可能な駆動軸に到達する。
【0033】
駆動装置ケーシング3は、主にケーシングカバー4から成っており、ケーシングカバー4は、実質的に円筒状に形成されている。両端面において駆動装置ケーシング3は、駆動装置ケーシング3にねじ締結されたフランジによって閉じられている。フランジは、ここに説明する実施例では各伝動装置ケーシング3A,3Bの構成部材である。
【0034】
図2では、駆動装置ケーシング3の内部は、駆動装置ケーシング3の一方の半部を使用する第1の電気駆動装置5Aと、駆動装置ケーシング3の他方の半部を使用する第2の電気駆動装置5Bとによって、実質的に二分割されている。2つの電気駆動装置5A,5Bの回転軸線Aは、互いに結合されること無しに整合している。したがって、2つの電気駆動装置5A,5Bは、ケーシングカバー4内ひいては共通の駆動装置ケーシング3内に位置してはいるが、その他の点では互いに独立しており、これに相応してそれぞれ固有のロータ軸8A,8Bを備えている。ロータ軸8A,8Bの第1の軸端部は、互いに反対の方向で各伝動装置に通じている。ロータ軸8A,8Bの2つの他方の、つまり互いに面したまたは互いに隣り合う軸端部10A,10Bは、機械的に結合されること無しに2つとも、1つの共通の軸受ケーシング25内に回転支持されている。
【0035】
図2にはさらに、電気駆動装置5A,5Bのステータとロータ8とがそれぞれ示されており、ロータ8とそれぞれのロータ軸8A,8Bとは相対回動不能である。両ロータ軸は、同じ回転軸線上で回転する、すなわち、ロータ軸の回転軸線Aは互いに整合しており、両方とも、駆動装置ケーシング3の長手方向に延びている。
【0036】
つまり、2つの電気駆動装置5A,5Bは互いに独立して作動し、このことは、電気駆動装置5A,5Bが例えば同時に作動可能であるということを排除しない。
【0037】
駆動装置ケーシング3内で2つの電気駆動装置5A,5Bの間のちょうど中心には、回転軸線Aに対して横方向に配置された軸受シールド20が位置している。軸受シールド20の構成部材は、軸端部10A,10Bを回転可能に支持する、既に述べた軸受ケーシング25と、複数の支柱21,22,23である。支柱21,22,23は、軸受ケーシング25から好適には半径方向外側に向かって延在している。支柱21,22,23はともに、中心に配置された軸受ケーシング25を駆動装置ケーシング3の実質的に円筒状のケーシングカバー4に固く結合する結合領域を形成している。
【0038】
軸受シールド20は複数の機能を有している。第1の機能は、軸受ケーシング25を駆動装置ケーシング3内で不動に位置決めするという点にあり、これにより、ロータ軸8A,8Bの互いに隣り合う軸端部10A,10Bは、規定通りに回転支持されている。軸受シールド20の別の機能は、駆動装置ケーシング3の強度および静力学に寄与するという点にある。これは特に、駆動装置ケーシング3が全体的に管状に形成されていて、伝動装置ケーシングのみによって被覆された、開いた端面を備えているためである。軸受シールド20のさらに別の機能は、冷却液を特に駆動装置コンポーネントにもたらすことができる冷却媒体通路を収容するという点にある。
【0039】
図6~
図8では、軸受シールド20は閉じられた板ではなく、軸受シールド20はとりわけ、軸受シールド20の中心に配置された軸受ケーシング25から好適には半径方向外側に向かって延びる、既に述べた支柱21,22,23から成っている。不連続の支柱21,22,23のみが、軸受ケーシング25をケーシングカバー4に結合する結合領域を形成している。
【0040】
軸受シールド20が全面的な構成部材ではないことにより、支柱の間には同数の開口31,32,33、つまり中空室が残される。開口31,32,33または中空室は、冷却手段用および電気的な接続条片の収納用のスペースを提供する。つまり、開口31,32,33または中空室は特に、さもなければ駆動装置ケーシング3内に追加的な構成空間を必要とするであろう手段のためにスペースを提供する。
【0041】
軸受シールド20の安定性ひいては目標とする駆動装置ケーシング3の強度を得るために、軸受シールド20が全面的な板である必要もない。不連続の支柱21,22,23から成る結合領域を備えた軸受シールド20も十分な補強を可能にし、ひいては駆動装置ケーシング3全体の強度に寄与する。
【0042】
図6~
図8では、軸受シールド20は、好適には合計3つの支柱21,22,23を有している。支柱21,22,23は、回転軸線Aに沿って見た場合にともに1つの逆さまの「Y」を示すように互いに配置されている。なぜなら、2つの支柱22,23の間の角距離は、支柱21に対するこれら2つの支柱22,23のそれぞれの角距離よりも小さいからである。以下、車両に組み込まれた駆動軸において上向きに延びる支柱21を第1の支柱と呼び、車両において斜め下向きの支柱22,23を第2の支柱または第3の支柱と呼ぶ。
【0043】
第2の支柱22と第3の支柱23との間には、第1の開口31が開口セグメントの形で位置している。第1の支柱21と第2の支柱22との間には、開口33がやはり開口セグメントの形で位置している。第1の支柱21と第3の支柱23との間には、開口32がやはり開口セグメントの形で位置している。
【0044】
本実施例では、開口または開口セグメント32,33は同じ大きさであるのに対し、組み込まれた車軸において下側に位置する開口31は、支柱22,23の間のより小さな角度に基づき、開口面がより小さくなっている。
【0045】
支柱21,22,23の幅は、軸受シールドの周方向においてそれぞれ異なっている。それぞれ1つの冷却媒体通路40が通っている2つの支柱22,23の幅は、冷却媒体通路が通っていない第1の支柱21の幅よりも大きくなっている。さらに、このような、冷却媒体通路40が通っていない支柱の横断面の厚さは、より小さくなっていてよい。例えば、支柱はこれらの冷却目的に利用されない横断面に、重量を削減する凹部を備えていてもよい。
【0046】
支柱22および/または支柱23内を通る冷却媒体通路40は、内部に冷却媒体通路40が開口している軸受ケーシング25から、支柱の延長上のケーシングカバー4に設けられた冷却媒体開口41にまで達している。冷却媒体開口41は、ケーシングカバー4内に半径方向に設けられたねじ山付き孔である。冷却媒体開口41の横断面は、支柱22,23内を通る冷却媒体通路40の横断面よりも大きいため、冷却媒体圧力損失無しで前記ねじ山付き孔には冷却媒体接続管片42が螺入されていてよい。冷却媒体接続管片42を介して冷却媒体が供給され、次いで冷却媒体は、冷却媒体通路40を介して軸受ケーシング25の中心に到達し、そこに配置されたロータ軸の転がり軸受45A,45Bを冷却する。
【0047】
軸受ケーシング25は、駆動装置ケーシング3の長手方向において、支柱21,22,23の幅または厚さよりも広幅である。軸受ケーシング25は、回転軸線A上に貫通開口47を備えており、貫通開口47は複数の長手方向部分から構成されている。貫通開口47の両方の外側の長手方向部分は軸受収容部であり、軸受収容部内には、ロータ軸8A,8Bを支持する転がり軸受45A,45Bの外輪が着座している。貫通開口47の中間の長手方向部分内には冷却媒体通路40が開口している。長手方向部分の間には各1つの別の、より短い長手方向部分が位置しており、より短い長手方向部分は、転がり軸受45A,45Bに対する冷却媒体供給部として働く。それぞれ転がり軸受45A,45Bの内輪と外輪との間に開口するこれらの冷却媒体供給部を介して、冷却媒体通路40を介して貫通開口47に流入する冷却媒体の一部が、転がり軸受45A,45Bの転動体の領域に到達する。
【0048】
図4では、両方のロータ軸8A,8Bは、その長さの少なくとも一部において中空軸であり、これらの中空軸は、互いに面した側において開いている。したがって、冷却媒体通路40を介して貫通開口47に流入する冷却媒体の別の部分がロータ軸8A,8B内に流入することができ、そこからロータ軸8A,8Bに形成された横方向孔51を介して、各電気駆動装置のロータ8内に到達することができる。
【0049】
駆動装置ケーシング3を補強するために、支柱21,22,23はその外側の端部でもって、半径方向においてケーシングカバー4に支持されている。追加的に、各支柱21,22,23は軸線方向において、ケーシングカバー4の内側に一体に形成されたリブ60に支持されている。軸線方向においてリブ60に支持されることにより、駆動装置ケーシング3内での軸受シールド20の長手方向位置が一義的に決められている。
【0050】
ただしこの場合、リブ60は、ケーシングカバー4の全周にわたり一貫して延びるリブではなく、リブ60は、周方向において複数の個別の別個のリブセグメントから構成されている。リブセグメントは、好適には支柱21,22,23の外側の端部も位置しているケーシングカバー4の周面部分にのみ位置している。
【0051】
リブ60は個々のリブセグメントから構成されているため、ケーシングカバー4はリブセグメント無しの周面部分に、例えば窓、開口またはそのような切抜き部を備えていてよい。本実施例においてこれは、ケーシングカバーにおいて第2の開口32の領域と第3の開口の領域とに各1つの窓62,63を形成するために利用される。
【0052】
窓62,63と、第2の開口32または第3の開口33とを通り、複数の電線が電気駆動装置5A,5Bの接続条片61A,61Bに通じている。両方の接続条片61A,61Bは、ケーシングカバー4内でそれぞれ異なる、つまり、互いに反対の側に位置する周面部分に配置されている。これに相応して2つの窓62,63も、ケーシングカバー4内で互いに反対の側に位置する周面部分に形成されている。
【0053】
窓62,63は、外側をそれぞれ保護ケース64,65によって覆われている。保護ケース65内には複数の電気接続端子59が位置しており、これらの電気接続端子59から電線が第1の電気駆動装置5Aの接続条片61Aに通じている。電線のアース導体は、軸受ケーシング25のねじ山付き孔69内で接触接続している。他方の保護ケース64内にも複数の電気接続端子59が位置しており、これらの電気接続端子59から電線が第2の電気駆動装置5Bの接続条片61Bに通じている。電線のアース導体はやはり、軸受ケーシング25のねじ山付き孔内で接触接続している。
【0054】
第1の電気駆動装置5Aの接続条片61Aは、開口32内にまで延びており、第2の電気駆動装置5Bの接続条片61Bは、開口33内にまで延びている。特にコンパクトな配置のために、両接続条片61A,61Bは、接続条片61A,61Bが駆動装置ケーシング3の長手方向において部分的にオーバラップする程度に、各開口32,33内へ延びている。
【0055】
保護ケース64,65は、包囲している車両の内部の電気駆動装置ユニットをコンパクトに保つために、保護ケース64,65の主延在部が回転軸線Aに対して平行であるように形成されている(
図1)。好適には、保護ケース64,65は一方向に延在しているため、電気接続ケーブルを、車両の単一の側に敷設することができる。
【0056】
駆動装置ケーシング3の、軸受シールド20が位置する長手方向部分において、ケーシングカバー4はその最深箇所に、1つまたは複数の冷却媒体開口70を備えている。冷却媒体開口70のこの位置に基づき、冷却媒体開口70は、支柱22,23の間に配置された第1の開口31を、外部でケーシングカバー4に配置された冷却媒体槽71に接続する。したがって、冷却媒体は冷却媒体開口70を介して、駆動装置ユニットの最深箇所に配置された冷却媒体槽71内へ流出し、そこに溜まる。
【0057】
冷却媒体は電動モータ部分をも通流するため、冷却媒体として適しているのは、とりわけ冷却オイルである。冷却オイルはさらに、駆動装置ユニットの転がり軸受45A,45Bおよび別の転がり軸受の潤滑において良好な潤滑特性を有するような規格のものであることが望ましい。
【0058】
図9には駆動装置ケーシング3の第2の実施形態が示されており、この図にロータ軸は示されていない。
図9では、軸受シールド20と軸受ケーシング25と駆動装置ケーシング3とは鋳造物から一体に製造されており、この場合、それらの構造的な構成は、
図2~
図6に示した複数部分から成るシステムの組立状態に等しい。
【0059】
さらに、駆動装置ケーシング3の外側の冷却媒体通路40の領域に分配器台72が形成されており、この場合、分配器台72も駆動装置ケーシング3と一体に形成されている。分配器台72は、冷却媒体通路40の他に、さらに3つの別の孔を有しており、この場合、第1の孔43は回転軸線Aに対して平行に分配器台72を通って延びている。第2および第3の孔44A,44Bは、冷却媒体通路40に対して左右平行に延びており、この場合、第2および第3の孔44A,44Bは、第1の孔43と交差しかつ駆動装置ケーシング3の外壁を貫通している。製造技術上の理由から、第1、第2および第3の孔43,44A,44Bは貫通孔として成されており、この場合、孔の、分配器台72の外面における開口は、後から栓73によって密閉される。
【0060】
第1、第2および第3の孔43,44A,44Bは、冷却媒体を冷却媒体通路40から導出するとともに、冷却媒体を、ステータの外側を包囲するリングギャップ74A,74B内へ迂回させるように構成されている。ステータを環状に包囲する複数の入口開口(図示せず)を介して、冷却媒体は電気駆動装置5A,5Bの内室に案内され、この場合、冷却媒体は冷却媒体開口(図示せず)を介して再び冷却媒体槽(同様に図示せず)に供給される。これにより、電気駆動装置ユニットの追加的な冷却が可能になる。
【符号の説明】
【0061】
2 管部分
3 駆動装置ケーシング
3A 伝動装置ケーシング
3B 伝動装置ケーシング
4 ケーシングカバー
5A 電気駆動装置
5B 電気駆動装置
8 ロータ
8A ロータ軸
8B ロータ軸
10A 軸端部
10B 軸端部
20 軸受シールド
21 支柱
22 支柱
23 支柱
25 軸受ケーシング
31 開口
32 開口
33 開口
40 冷却媒体通路
41 冷却媒体開口
42 冷却媒体接続管片
43 第1の孔
44A 第2の孔
44B 第3の孔
45A 転がり軸受
45B 転がり軸受
47 貫通開口
51 横方向孔
59 接続端子
60 リブ
61A 接続条片
61B 接続条片
62 窓
63 窓
64 保護ケース
65 保護ケース
68 電線
69 アース導体用のねじ山付き孔
70 冷却媒体開口
71 冷却媒体槽
72 分配器台
73 栓
74A リングギャップ
74B リングギャップ
A 回転軸線