(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】方法、装置、移動式トロリー及び引込み機
(51)【国際特許分類】
D03J 1/14 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
D03J1/14 Z
(21)【出願番号】P 2021571778
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2020065439
(87)【国際公開番号】W WO2020254117
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-02
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガース、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カイラー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】プフェファー、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】アッカー、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲージング、カール‐ハインツ
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第688493(DE,C1)
【文献】特開平05-059641(JP,A)
【文献】特開平05-270647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03J 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織付属品を自動搬送する方法であって、少なくとも1つのレール(3)と、少なくとも
2つのレールキャリア(2)とを含む装置(1)が設けられ、該装置の前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、前記少なくとも1つのレール(3)の重量を支持し、その上に織付属品をレール(3)の長手方向(4)に移動可能に配置し、
前記レール(3)に配置された織付属品を前記レール(3)に沿って長手方向(4)に移動させるために、前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つを少なくとも1つのレール(3)に対して長手方向(4)に相対的に移動させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つの間欠的な移動を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つを、その長手方向(4)に、前記少なくとも1つのレール(3)の一端から前記少なくとも1つのレール(3)の他端へと移動させることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
織付属品を自動搬送する装置(1)であって、
レール(3)の長手方向(4)に前記織付属品を移動可能に配置することができる少なくとも1つのレール(3)と、該少なくとも1つのレール(3)の重量を支持するように配置された少なくとも
2つのレールキャリア(2)と、を備え、
前記装置(1)の前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つが、前記少なくとも1つのレール(3)の長手方向(4)に、少なくとも1つのレール(3)に対して移動可能に配置されていることを特徴とする装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレール(3)は、長手方向(4)の移動に対して保護されていることを特徴とする請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、前記少なくとも1つのレール(3)を収容するための少なくとも1つの溝(5)を備えることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、前記少なくとも1つのレール(3)の長手方向(4)に対して直角に配置された接触面(11)を有し、レール(3)に配置された織付属品を前記少なくとも1つのレール(3)の長手方向(4)に移動させることができることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、異なる種類の織付属品を並行して自動搬送するための要素を取付けるための手段(6)を備えることを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、マルチパート構造であり、前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)の上部(7)は、取り外すことができることを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)は、下部(8)に、コンタクトレールを収容するための少なくとも1つの溝(9)を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つは、レール(3)の全長にわたって移動可能であることを特徴とする請求項4~
10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記少なくとも
2つのレールキャリア(2)
の少なくとも1つは、少なくとも1つの無端回転要素(10)に取り付けられていることを特徴とする請求項4~
11のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記無端回転要素(10)を駆動するための手段を備えていることを特徴とする請求
項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
請求項4~13のいずれか1項に記載の装置(1)を備えることを特徴とする移動式トロリー。
【請求項15】
請求項4~13のいずれか1項に記載の装置、及び/又は、請求項14に記載の移動式トロリーを備えていることを特徴とする引込み機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロップワイヤ、ヘルド等の織付属品を自動的に搬送するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この類の装置は、例えば、引込み機の移動式トロリーの構成要素として知られている。本発明は、縦糸停止装置のドロップワイヤの搬送に着目したものである。織付属品といえば、ドロップワイヤに注目されることが望ましいが、ヘルドが除外されない。引込み機は、織付属品に(縦)糸を引込むための機械である。それは、様々な機能ユニットに分解することができ、対応する装置及びその構成要素がある。例えば、これらには、糸を引くためのヘルドやドロップワイヤを供給するための装置が含まれる。これらの供給装置では、例えば、販売目的又は製織中に一般的に行われているように、レール状のガイドウェイに織付属品が連続して吊り下げられている。さらに、いわゆる「ローディングサイド」では、リードを待機状態で維持するための装置が必要である。引込み機の主要な装置は、一般的に、リード、ヘルド、ドロップワイヤ及びリースの構成要素を介して糸を案内する引込み装置である。「アンローディングサイド」では、後方の混雑を防ぐために、引込まれたドロップワイヤ及びヘルドを引込み装置の近傍から遠ざけて搬送する必要がある。引込み装置では、ヘルド及びドロップワイヤは、高い引込み繰返し率を実現するために、短い距離を高速で搬送される。引込み後、織付属品は、レール状の長いガイドウェイ上に押し込まれなければならない。織付属品は、比較的長い距離を移動しなければならないが、その移動はほとんどゆっくりと行われる。その距離は、通常2~3mでるあるが、時々6mに至るまでの距離が必要となる。「アンローディングサイド」では、ドロップワイヤ及びヘルドは、並んで配置された装置で、平行して搬送されることが多い。これらの搬送作業は、少なくともすべての種類の織付属品(ドロップワイヤ、ヘルドなど)について、十分に自動化されるわけではない。そのため、引込み機のオペレーターは、手動で織付属品をレール上に押し出さなければならない。
【0003】
独国特許発明第688493号明細書には、レール上に吊るされたドロップワイヤの上端に係合するキャリアロッドによって、単一化されたドロップワイヤを分離ユニットから引込みユニットに搬送し、その後、引込みユニットから少し離れた場所まで搬送する引込み機が開示されている。ドロップワイヤが吊るされるレール上の複雑な構造は、ドロップワイヤのキャリアレールに沿ってドロップワイヤをさらに搬送するのに適していないため、ドロップワイヤを時々手動でさらに押さなければならない。
【0004】
欧州特許出願公開第496232号明細書には、回転ネジ付きスピンドルによって、ドロップワイヤを搬送し、ドロップワイヤキャリアレールの全長にわたって、搬送及び分配することができる引込み機が開示されている。しかしながら、ネジ付きスピンドルの駆動手段は、多数の追加部品が必要であり、装置全体を高価にし、操作しにくくする。さらに、ネジ付きスピンドルによる搬送は、信頼性が低く、摩耗しやすいため、ドロップワイヤの品質が損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような先行技術から、本発明の目的は、長手方向に延びるレール上で織付属品を自動的にかつ品質を維持して搬送するための、信頼性が高くかつ安価な方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による方法は、織付属品の自動搬送のための少なくとも1つのレール及び少なくとも1つのレールキャリアを含む装置の提供を含む。少なくとも1つのレールキャリアは、少なくとも1つのレールの重量を支持し、その上に織付属品がレールの長手方向に移動可能に配置されている。本発明による方法は、レールに配置された織付属品をレールに沿ってその長手方向に移動させるために、少なくとも1つのレールに対して、少なくとも1つのレールキャリアをその長手方向に移動させることを特徴とする。レールに沿った織付属品の搬送は、レールを下方から支持すると同時に、ドロップワイヤの広面積の接触ポイントを有するレールキャリアによって行われる。レールキャリアが移動することで、レールに配置されたドロップワイヤも同時に移動し、搬送される。
【0007】
サポートと輸送との結合機能を実行するレールキャリアのおかげで、装置をより高価にする、問題が起こりやすい追加部品が不要となる。さらに、レールキャリアとの接触面積が広いため、ドロップワイヤをより優しく搬送することができ、品質の低下を防ぐことができる。
【0008】
レールキャリアは、新たな織付属品が、特に引込み装置により近いレール端に並んでいない時にのみ、間欠的に移動させることができる。これにより、レールキャリアと織付属品との衝突を防ぐことができる。このようにして、複数の織付属品をそれぞれの2つのレールキャリア間で搬送することができる。
【0009】
少なくとも1つのレールキャリアは、少なくとも1つのレールの一端から他端まで、その長手方向に移動させることができ、これにより、織付属品をレールの全長にわたって移動させ、必要に応じて等しく配給することができる。具体的には、最初のレールキャリアとして、引込み機により近いレール端で織付属品と接触するレールキャリアを、引込み機から遠いレール端に到達するまで断続的に移すことで、最初に引込まれた織付属品をレールの全長にわたって搬送することができる。
【0010】
本発明による織付属品の自動搬送用の装置は、織付属品をレールの長手方向に移動可能に載置させることができる少なくとも1つのレールを備える。さらに、この装置は、少なくとも1つのレールの重量を搬送することができるように配置された少なくとも1つのレールキャリアを備える。本発明による装置は、装置のレールキャリアが、少なくとも1つのレールに対してその長手方向に相対的に移動可能に配置されており、レールを下方から覆う及び支持すると同時に、レールに吊り下げられたドロップワイヤのための広い面積の接触ポイントを有することを特徴とする。
【0011】
2つの異なる機能を実行するレールキャリアのおかげで、装置をより高価にする問題が起こりやすい追加部品が不要となる。さらに、レールキャリアとの接触面積が大きいため、ドロップワイヤの搬送がより穏やかになり、品質の低下を防ぐことができる。
【0012】
少なくとも1つのレールは、長手方向の移動に対して保護されていてもよい。少なくとも1つのレールは、引込み機から離れた端部で、長手方向の移動に対して保護され、例えば、クランプされることが好ましい。この場合、レールは、可動式レールキャリア以外の手段、例えば、固定式レールキャリアによって支持されてもよい。レールを支持するレールキャリアがレールに対して相対的に移動することで、レールは、常にレールキャリアとともにレールを移動させようとする力が働くことになる。これらの力は、例えば、引込み装置から遠いレールの端部で、固定されたレールキャリアに伝達されることがある。
【0013】
少なくとも1つのレールキャリアは、少なくとも1つのレールを収容するための少なくとも1つの溝を含む。溝は、レールが横に傾くのを防ぐ。好ましくは、溝は、レール全体を覆い、これにより、レールキャリアと、レールから吊り下げられた織付属品との間にできるだけ大きい接触面を提供する。
【0014】
少なくとも1つのレールキャリアは、レールに配置された織付属品を少なくとも1つのレールの長手方向に移動させることができるように、少なくとも1つのレールの長手方向に対して直角に配置された接触面を含む。少なくともレールキャリアの接触面がプラスチックを含むか、又は、プラスチックからなると有利である。プラスチックは、摩擦を減らすことができる。
【0015】
少なくとも1つのレールキャリアは、異なる種類の織付属品を並行に自動搬送するための要素を取り付けるための手段を有する。例えば、レールキャリアは、その上端に、棒状の要素を挿入することができるレセプタクルを有する。このようにして挿入された棒は、他の種類の織付属品、例えばヘルドが吊り下げられている横方向に隣接する装置に係合することができる。これにより、例えば、ヘルドをドロップワイヤと並行に搬送することが可能となる。棒状要素及び棒を受ける手段は、例えば、棒を挟み込むことによって、又は、同様の解放可能な接続によって、それらが手動で結合されるように構成される。レールキャリアの手段は、プラスチックで作られると有利である。
【0016】
少なくとも1つのレールキャリアは、マルチパート構造であることが好ましく、少なくとも1つのレールキャリアの上部を取り外すことができる。例えば、上部パーツは、上方に取り外すことができる。例えば、上部パートは、磁気によってレールキャリアに固定され、工具を使用せずに手動で取り外すことができる。後述するように、この構成は、特に引き込み後のアンローディングに有利である。
【0017】
少なくとも1つのレールキャリアは、下部に、コンタクトレールを収容するための少なくとも1つの溝を有する。この構成は、以下のように有利にアンローディングを行うことができ、織機の付属品がすべて引き込まれ、レールを介して搬送されたとき、縦糸停止装置用の(歯付)コンタクトレールをレールキャリアの下部に挿入することができる。このとき、織付属品を吊り下げていたレールを引き出して、織付属品をコンタクトレールに吊り下げることができる。レールキャリアの上部が取り外された後、最終的に、織付属品が取り外され、縦糸停止装置に挿入される。
【0018】
少なくとも1つのレールキャリアは、レールの全長にわたって移動可能に配置される。特に、少なくとも1つのレールキャリアは、少なくとも1つの無端回転要素に取り付けられる。無端要素は、ベルト、チェーン、または同様のものである。回転要素は、その全長にわたってレールの下に延びる。さらに、無端要素を駆動するための手段を設けてもよく、例えば、電気モータなどである。
【0019】
さらに、本発明は、本発明による装置を有する移動式トロリーを含む。したがって、引込み機の作業エリアから引込み機の付属品を迅速に取り外し、適切に準備されたトロリーを引込み機に連結することで、引込み機のダウンタイムを短くすることができる。
【0020】
また、本発明は、本発明による装置を有する引込み機を含み、この引込み機は、移動式トロリーに搭載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明による装置の主要構成要素を示す象徴的な部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による装置1の主要な構成要素を体系的に部分斜視図で示したものである。明確にするために、装置1のうち、図示されていない引込装置に隣接する部分のみを示している。装置1は、ベルト状の2つの平行な無端要素10を含む。これらの各々は、図示されていない装置1の端部でつながっているため、2つの回転する無端ベルト10が存在する。2つのレールキャリア2が示されているが、そのうち右側のレールキャリア2は、図面のレール3にまだ係合されていない。この状態では、図示されていないドロップワイヤを、レール3の端部の傾斜12を介して、右側からレール3に積載することができる。所定数のドロップワイヤが積み込まれると、ベルト10に動力を与えて、レールキャリア2を長手方向4の左側に移動させることができる。右側に示すレールキャリア2は、レール3の下で旋回し、その上部7にある溝5の1つでレールを覆い、それによって、レール3から吊り下げられたドロップワイヤを長手方向4の左側に搬送することができる。レールキャリア2は、ドロップワイヤに比較的大きな接触面11を提供し、ドロップワイヤが確実に損傷なく搬送されるようにしている。レールキャリア2は、レール3の下方に縦糸停止装置用のコンタクトレールを挿入することができる溝9を備えた下部8を含む。
【符号の説明】
【0023】