IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-力率補償電源装置 図1
  • 特許-力率補償電源装置 図2
  • 特許-力率補償電源装置 図3
  • 特許-力率補償電源装置 図4
  • 特許-力率補償電源装置 図5
  • 特許-力率補償電源装置 図6
  • 特許-力率補償電源装置 図7
  • 特許-力率補償電源装置 図8
  • 特許-力率補償電源装置 図9
  • 特許-力率補償電源装置 図10
  • 特許-力率補償電源装置 図11
  • 特許-力率補償電源装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】力率補償電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240830BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
H02M7/12 Q
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022001398
(22)【出願日】2022-01-07
(65)【公開番号】P2023101067
(43)【公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 章太
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩行
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】大津 定治
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-131455(JP,A)
【文献】特開2016-081713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233760(US,A1)
【文献】特開2017-028792(JP,A)
【文献】特開2016-103866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子とインダクタを有し、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力するコンバータと、
前記スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記スイッチング素子のオンオフのタイミングを調整することにより、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を調整するタイミング調整部とを備え、
前記タイミング調整部は、変動する前記スイッチング周波数が予め定められた回避周波数帯に近づいたときに、前記スイッチング周波数の変動の大きさを増加させて、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも大きい周波数から前記回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも小さい周波数から前記回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させることを特徴とする力率補償電源装置。
【請求項2】
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が上昇しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記スイッチング素子のオフ時間を減少させて前記スイッチング周波数をさらに上昇させ、前記スイッチング周波数が低下しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記スイッチング素子のオフ時間を増加させて前記スイッチング周波数をさらに低下させる請求項1に記載の力率補償電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子がオフのときに、前記スイッチング素子の両端電圧が振動して極小となったこと、または、前記スイッチング素子がオフのときに、前記インダクタに流れる電流が負から正になることの検出をし、該検出があったときに極小値信号を前記スイッチング制御部に出力する極小値検出部をさらに備え、
前記スイッチング制御部は、前記タイミング調整部による前記スイッチング素子のオンオフのタイミングの調整に従いつつ、前記極小値信号が入力されたタイミングに基づいて、前記スイッチング素子をオンにする請求項1または2に記載の力率補償電源装置。
【請求項4】
前記スイッチング制御部は、前記極小値信号が入力された回数をカウントし、前記回数が前記タイミング調整部から入力される許可カウント数に達したタイミングに基づいて前記スイッチング素子をオンにし、
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が前記回避周波数帯に近づいたときに、前記許可カウント数を変更し、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも大きい周波数から前記回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも小さい周波数から前記回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させる請求項3に記載の力率補償電源装置。
【請求項5】
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が上昇しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記許可カウント数を減少させて前記スイッチング周波数をさらに上昇させ、前記スイッチング周波数が低下しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記許可カウント数を増加させて前記スイッチング周波数をさらに低下させる請求項4に記載の力率補償電源装置。
【請求項6】
前記コンバータに入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部をさらに備え、前記タイミング調整部は、前記入力電圧に基づいて前記許可カウント数を決定する請求項4または5に記載の力率補償電源装置。
【請求項7】
前記スイッチング制御部は、前記極小値信号が入力されてから、前記タイミング調整部から入力される遅延時間を経過したタイミングに基づいて前記スイッチング素子をオンにし、
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が前記回避周波数帯に近づいたときに、前記遅延時間を変更し、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも大きい周波数から前記回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも小さい周波数から前記回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させる請求項3に記載の力率補償電源装置。
【請求項8】
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が上昇しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記遅延時間を減少させて前記スイッチング周波数をさらに上昇させ、前記スイッチング周波数が低下しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記遅延時間を増加させて前記スイッチング周波数をさらに低下させる請求項7に記載の力率補償電源装置。
【請求項9】
前記コンバータに入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部をさらに備え、前記タイミング調整部は、前記入力電圧に基づいて前記遅延時間を決定する請求項7または8に記載の力率補償電源装置。
【請求項10】
前記コンバータは、昇圧チョッパまたは降圧チョッパを含んで構成される請求項1から9のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項11】
前記コンバータは、前記交流電圧を整流する整流回路を介して前記交流電源と接続されている請求項1から10のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項12】
前記コンバータは、前記コンバータから前記交流電源へノイズが伝導することを抑制するフィルタ部を介して前記交流電源と接続されている請求項1から11のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項13】
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が上昇しながら前記回避周波数帯に近づいたとき、前記回避周波数帯よりも大きく、かつ、前記フィルタ部のカットオフ周波数よりも大きい周波数に前記スイッチング周波数を上昇させる請求項12に記載の力率補償電源装置。
【請求項14】
前記負荷に出力される出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記スイッチング素子のオン時間を演算して前記スイッチング制御部に出力する出力電圧制御部とをさらに備え、前記出力電圧制御部は、前記出力電圧の電圧値を目標の電圧値とする前記オン時間を演算する請求項1から13のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項15】
前記回避周波数帯は、前記交流電源と前記負荷との間で前記力率補償電源装置と並列または直列に接続される電力変換器の動作周波数、もしくは、前記力率補償電源装置が準拠すべきノイズ規格に基づいて定められる請求項1から14のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項16】
前記負荷はLEDモジュールであり、
前記LEDモジュールに流れる出力電流を検出する出力電流検出部と、前記スイッチング素子のオン時間を演算して前記スイッチング制御部に出力する出力電流制御部と、出力電流制御部に調光信号を出力する調光器とをさらに備え、前記出力電流制御部は、前記出力電流の電流値を目標の電流値とする前記オン時間を演算し、前記目標の電流値は、前記調光信号に基づいて決定される請求項1から13のいずれか1項に記載の力率補償電源装置。
【請求項17】
前記スイッチング素子がオフのときに、前記スイッチング素子の両端電圧が振動して極小となったこと、または、前記スイッチング素子がオフのときに、前記インダクタに流れる電流が負から正になることの検出をし、該検出があったときに極小値信号を前記スイッチング制御部に出力する極小値検出部と、
前記コンバータに入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部とをさらに備え、
前記調光器は、前記調光信号を前記タイミング調整部に出力し、
前記スイッチング制御部は、前記極小値信号が入力される回数をカウントし、前記回数が前記タイミング調整部から入力される許可カウント数に達したタイミングに基づいて前記スイッチング素子をオンにし、
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が前記回避周波数帯に近づいたときに、前記許可カウント数を変更し、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも大きい周波数から前記回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも小さい周波数から前記回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させるとともに、前記入力電圧および前記調光信号に基づいて前記許可カウント数を決定する請求項16に記載の力率補償電源装置。
【請求項18】
前記スイッチング素子がオフのときに、前記スイッチング素子の両端電圧が振動して極小となったこと、または、前記スイッチング素子がオフのときに、前記インダクタに流れる電流が負から正になることの検出をし、該検出があったときに極小値信号を前記スイッチング制御部に出力する極小値検出部と、
前記コンバータに入力される入力電圧を検出する入力電圧検出部とをさらに備え、
前記調光器は、前記調光信号を前記タイミング調整部に出力し、
前記スイッチング制御部は、前記極小値信号が入力されてから、前記タイミング調整部から入力される遅延時間を経過したタイミングに基づいて前記スイッチング素子をオンにし、
前記タイミング調整部は、前記スイッチング周波数が前記回避周波数帯に近づいたときに、前記遅延時間を変更し、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも大きい周波数から前記回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、前記スイッチング周波数を前記回避周波数帯よりも小さい周波数から前記回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させるとともに、前記入力電圧および前記調光信号に基づいて前記遅延時間を決定する請求項16に記載の力率補償電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、力率補償電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の力率補償電源装置には、リアクトル(インダクタ)およびスイッチング素子を含むコンバータと全波整流回路とを有し、スイッチング素子のオン時間を入力交流電圧の1周期中に概ね一定とすることにより、交流電力を直流電力に変換する動作と力率改善(PFC:Power Factor Correction)動作とを同時に実現するものがある。このような力率補償電源装置において、リアクトル(インダクタ)とスイッチング素子との間で生じる共振を検出し、共振においてスイッチング素子の両端電圧がボトムとなるボトムタイミングでスイッチング素子をターンオンすることにより、スイッチング損失の低減を図るものがある。また、上記共振を検出する共振信号をマスクする固定周期パルスを設け、固定周期パルスがLになった後のボトムタイミングでスイッチング素子をターンオンさせることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6890080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、スイッチング素子をターンオンするタイミングは固定周期パルスがLになるタイミングよりも遅くなるように制限されているため、固定周期パルスにより決まる周波数よりもスイッチング周波数を低くすることができ、特定の周波数でスイッチング動作が行われることを防止できる。一方で、上記のように固定周期パルスによりスイッチング周波数を制限する場合、固定周期パルスにより決まる周波数よりも少し低い周波数帯にスイッチング周波数が集中し、スイッチング周波数が集中する周波数帯において大きなEMIノイズ(電磁妨害ノイズ:Electro-Magnetic Interference noise)が発生してしまう虞があるという問題点がある。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、特定の周波数帯にスイッチング周波数が集中することを防ぐことができる力率補償電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に開示される力率補償電源装置は、スイッチング素子とインダクタを有し、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力するコンバータと、スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、スイッチング素子のオンオフのタイミングを調整することにより、スイッチング素子のスイッチング周波数を調整するタイミング調整部とを備え、タイミング調整部は、変動するスイッチング周波数が予め定められた回避周波数帯に近づいたときに、スイッチング周波数の変動の大きさを増加させて、スイッチング周波数を回避周波数帯よりも大きい周波数から回避周波数帯よりも小さい周波数に低下させる、あるいは、スイッチング周波数を回避周波数帯よりも小さい周波数から回避周波数帯よりも大きい周波数に上昇させるものである。
【発明の効果】
【0006】
本願に開示される力率補償電源装置によれば、特定の周波数帯にスイッチング周波数が集中することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る電源主回路部の動作およびZCDカウント制御を説明する図である。
図3】実施の形態1における、電源電圧、スイッチング周波数、および許可カウント数の関係の一例を示す図である。
図4】実施の形態1における、電源電圧、スイッチング周波数、および許可カウント数の関係の他の例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る電源制御部の各機能部を実現するハードウェア構成の例を示す図である。
図6】実施の形態1の変形例における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態2における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態3に係る電源主回路部の動作を示す図である。
図9】実施の形態4における力率補償電源装置を示すブロック図である。
図10】実施の形態5における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態6における力率補償電源装置を示すブロック図である。
図12】実施の形態6の変形例における力率補償電源装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1を図1から図5に基づいて説明する。図1は、実施の形態1における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。力率補償電源装置100は、交流電源91から供給される交流電力を直流電力に変換して負荷92に供給するものであり、交流電源91と負荷92との間に接続され、内部にコンバータ140を有する電源主回路部110と、コンバータ140を制御する電源制御部120とを備える。交流電源91は、交流の電源電圧vac、すなわち交流電圧を電源主回路部110に供給する。交流電源91から電源主回路部110へは交流電流iacが流れる。
【0009】
電源主回路部110は、入力フィルタ111、すなわちフィルタ部と、全波整流回路112と、コンバータ140とを主体に構成されている。また電源主回路部110は、コンバータ140の出力電圧voを検出する出力電圧検出部113を備える。
【0010】
入力フィルタ111は、コンバータ140のスイッチング素子142がスイッチング動作することにより発生するEMIノイズが交流電源91に伝導することを抑制する。入力フィルタ111は、例えば、ハイブリッドチョークコイル、コモンモードチョークコイルまたはノーマルモードチョークコイルであるチョークコイル(図示省略)を有し、コンバータ140から流入する伝導EMIノイズの大きさを低減する。
【0011】
全波整流回路112は、交流電源91から供給される電源電圧vacを全波整流し、得られる全波整流電圧をコンバータ140に出力するものである。全波整流回路112は、ダイオードブリッジ(図示省略)で構成されている。なお、実施の形態1では整流回路として全波整流回路を用いるが、半波整流回路に置き換えてもよい。
【0012】
コンバータ140は、全波整流回路112から出力された全波整流電圧を直流化する。またコンバータ140は、その出力電圧voの大きさが予め定められた目標となるように調整し、調整された出力電圧voを負荷92に出力する。
【0013】
コンバータ140は、図1に示すように、例えば昇圧チョッパ回路により構成される。より具体的には、コンバータ140は、全波整流回路112の出力側において一端が高圧側の電路に接続され、他端が低圧側の電路に接続された入力コンデンサ144と、入力コンデンサ144の一端と高圧側の電路との接続点に一端が接続されたリアクトル141、すなわちインダクタと、リアクトル141の他端にアノードが接続されたダイオード143と、ダイオード143のカソードに一端が接続され、低圧側の電路に他端が接続された出力コンデンサ145と、リアクトル141の他端とダイオード143のアノードとの接続点に一端が接続され、他端が低圧側の電路に接続されたスイッチング素子142とを備える。入力コンデンサ144の他端、スイッチング素子142の他端、および出力コンデンサ145の他端は、低圧側の電路を介して負荷92の他端に接続されている。なお、リアクトル141に示した黒丸(●)は、極性を表している。
【0014】
スイッチング素子142は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により電源制御部120に生成されたゲート信号(以下、PWM信号Vg)により駆動されるFET(Field Effect Transistor)素子、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子などの半導体スイッチング素子が適用される。スイッチング素子142がFETである場合、上記したスイッチング素子142の一端および他端は、FET素子のドレイン端子およびソース端子となる。スイッチング素子142がIGBT素子である場合、上記したスイッチング素子142の一端および他端は、IGBT素子のコレクタ端子およびエミッタ端子となる。
【0015】
なお、実施の形態1におけるダイオード143をFET素子、IGBT素子などのスイッチング素子149(図示なし)に置き換え、スイッチング素子142、149のオンオフを逆論理で動作させる同期整流方式とすることもできる。
【0016】
電源主回路部110は、出力電圧検出部113と、零電流検出部114、すなわち極小値検出部とを備える。出力電圧検出部113は、直流化された出力電圧voの大きさを出力電圧検出値vosenとして検出するものであり、例えば直列に接続された2つ以上の分圧抵抗で構成される。零電流検出部114は、リアクトル141に流れる電流の零点を検出するためのものであり、例えば図1に示すように、リアクトル141に対して補助巻線を設けることで実現することができる。上記補助巻線の両端には、リアクトル141を流れるリアクトル電流iLに応じた電位差が発生し、この電位差は、零電流検出部114により検出される。零電流検出部114は、検出した電圧に応じてハイ(High、以下では「H」と記す)またはロー(Low、以下では「L」と記す)となる零電流信号ZCD、を出力する。零電流信号ZCDのL信号は、極小値信号に相当する。
【0017】
なお、零電流検出部114は、リアクトル電流iLの零点を検出できる構成であれば、補助巻線を用いる方法でなくてもよく、例えば、リアクトル141のローサイドに電流検出抵抗を設置し、電流検出抵抗の両端に発生する電圧からリアクトル141の電流の零点を検出する方法でもよいし、電流検出抵抗をリアクトルに直列に接続して高電位側から検出する方法を採用してもよい。
【0018】
次に、電源制御部120について説明する。電源制御部120は、スイッチング素子142のオンオフを制御するスイッチング制御部121と、出力電圧制御部122と、スイッチング素子142のスイッチング周波数fswを調整するタイミング調整部123とを備える。出力電圧制御部122は、出力電圧検出値vosenおよび目標電圧値vorefに基づいて、PWM信号VgをHに維持する時間、すなわちスイッチング素子142のオン時間tonを導出する。実施の形態1におけるタイミング調整部123は、スイッチング制御部121から入力されるPWM信号Vgに基づいて、許可カウント数Cnを決定する。「許可カウント数」は、スイッチング素子142をオフからオンに変化させるタイミングを決める値である。スイッチング制御部121は、出力電圧制御部122で導出したオン時間ton、タイミング調整部123で決定した許可カウント数Cn、および零電流検出部114から送られてくる零電流信号ZCD基づいて、後述する「ZCDカウント制御」を行い、PWM信号Vgを生成してスイッチング素子142を駆動する。また、実施の形態1では、スイッチング制御部121はPWM信号Vgをタイミング調整部123にも出力する。
【0019】
次に、力率補償電源装置100の主回路動作、すなわち、電源主回路部110の動作と、ZCDカウント制御について説明する。図2は、実施の形態1に係る電源主回路部の動作およびZCDカウント制御を説明する図であり、図中のそれぞれのグラフの横軸を時間として、スイッチング制御部121が出力するPWM信号Vg、リアクトル141に流れるリアクトル電流iL、スイッチング素子142の両端にかかる電圧Vds、および零電流検出部114が出力する零電流信号ZCDの関係を示している。
【0020】
PWM信号VgがHとなりスイッチング素子142がオンになると、図1に示した回路において、交流電源91、スイッチング素子142、リアクトル141、負荷92、交流電源91の順に電流が流れ、リアクトル電流iLは増加する。リアクトル電流iLが増加する期間は、零電流信号ZCDはLとなる。
【0021】
PWM信号VgがLとなりスイッチング素子142がオフになると、リアクトル141、負荷92、ダイオード143、リアクトル141の順に電流が流れ、リアクトル電流iLは零まで減少する。リアクトル電流iLが零まで減少する期間は零電流信号ZCDがHとなる。
【0022】
リアクトル電流iLが零まで減少すると、リアクトル141のインダクタンス成分とスイッチング素子142の寄生容量とによりLC共振が発生し、このLC共振による共振電流がリアクトル141に流れるとともに、両端電圧Vdsが振動する。この共振電流により、リアクトル141に共振電流が流れる期間において、リアクトル電流iLが零となりかつ上昇するタイミング(リアクトル電流iLが負から正に切り替わるタイミング)で、零電流信号ZCDはLとなる。図2から分かるように、リアクトル電流iLが負から正に切り替わるタイミングは、スイッチング素子の両端電圧Vdsが極小となるボトムタイミングでもあるので、零電流信号ZCDがHからLに切り替わるタイミングでPWM信号VgをHとすることで、スイッチング素子142のスイッチングで発生するスイッチング損失を低減することができる。
【0023】
実施の形態1のZCDカウント制御では、PWM信号VgがLとなった後、零電流信号ZCDがHからLに切り替わるタイミングに基づいてPWM信号VgをHに切り替えるが、その際、タイミング調整部123によるスイッチング素子142のオンオフのタイミングの調整に従う。すなわち、スイッチング制御部121は、PWM信号VgがLとなった後、リアクトル141に上記共振電流が流れている期間において、零電流信号ZCDがHからLに切り替わる回数のカウントを行い、上記カウントの回数がタイミング調整部123で決定される許可カウント数Cnに達したタイミングに基づいて、PWM信号VgをHとする。なお、上記カウントを行うカウント部をスイッチング制御部121とは別に設けてもよい。この場合、上記カウントの回数が許可カウント数Cnに達したとき、上記カウント部は許可カウント数到達信号をスイッチング制御部121に送信し、スイッチング制御部121は、許可カウント数到達信号の受信したタイミングに基づいてPWM信号VgをHとする。
【0024】
電源制御部120の詳細について説明する。電源制御部120は、IC(Interted Circuit)を用いない一般のデジタル制御回路(デジタル制御回路と同機能をもつソフトウェアによる回路も含まれる)で全て構成してもよく、一部のみデジタル制御回路で構成してもよい。また、デジタル制御回路を用いずに、アナログ制御回路で全て構成してもよい。実施の形態1では、例えばマイコンを用いるデジタル制御回路とした構成について説明する。
【0025】
出力電圧制御部122は、出力電圧検出値vosenと目標電圧値vorefの差分を演算し、その差分が零になるようにスイッチング素子142のオン時間tonを演算する。オン時間tonの演算は、PI制御(比例積分制御)、PID制御(比例微分積分制御)等の古典制御、あるいはH∞(H-infinity)制御等の現代制御など、出力電圧検出値vosenと目標電圧値vorefの差分を零とするように制御する方法であればどんな制御を用いてもよい。出力電圧制御部122によるオン時間tonの演算により、出力電圧voを任意の目標電圧値vorefに調整することができる。
【0026】
なお、PFC動作を実現するため、出力電圧制御部122により演算されるオン時間tonは、全波整流電圧の周期(電源電圧vacの半分の周期)の間において概ね一定となるように設定する。ただし、全波整流電圧の周期ごとに一度だけオン時間tonを更新するようにしてPFC動作を実現してもよいし、制御の応答性を小さく設定することでPFC動作を実現しても構わない。
【0027】
タイミング調整部123は、スイッチング制御部121から送られるPWM信号VgがLからHに切り替わるタイミングを検出し、切り替わりタイミングから次の切り替わりタイミングまでの時間を測定することでスイッチング素子142のスイッチング周波数fswを算出する。タイミング調整部123は、算出したスイッチング周波数fswを基に、スイッチング周波数fswが特定の周波数帯に入らないように、すなわち、スイッチング素子142が上記特定の周波数帯でスイッチング動作をしないように許可カウント数Cnを決定し、スイッチング制御部121に出力する。なお、以降では動作しないように設定する特定の周波数帯を「回避周波数帯」と記載する。
【0028】
なお、回避周波数帯は、一定の範囲を持つ周波数帯に限らず、特定の周波数のみを含むように設定してもよい。この場合、当該特定の周波数を「回避周波数」とし、以後の説明における「回避周波数帯」を「回避周波数」に読み替えればよい。また、「回避周波数」は概念的に「回避周波数帯」に含められる。
【0029】
スイッチング制御部121は、スイッチング素子142がオフとなった後、PWM信号VgがLとして維持される期間において、零電流検出部114が出力する零電流信号ZCDがHからLに切り替わる回数をカウントし、上記回数がタイミング調整部123で決定した許可カウント数Cnに達したタイミングに基づいて、PWM信号VgをLからHに変化させる。PWM信号VgをLからHに変化させるタイミングは、上記回数が許可カウント数Cnに達したタイミングと同じであってもよいし、予め定められた時間だけ遅らせてもよい。PWM信号VgをLからHに変化させた後、スイッチング制御部121は、出力電圧制御部122が導出したオン時間tonの経過後にPWM信号VgをHからLに切り替える。またスイッチング制御部121は、PWM信号Vgをスイッチング素子142とタイミング調整部123に送信する。スイッチング制御部121は、上記のようにZCDカウント制御を行いながら、スイッチング素子142を駆動する。
【0030】
図2より、PWM信号VgをLからHに変化させるタイミングは、許可カウント数Cnが大きいほど遅くなることが分かる。このことから、許可カウント数Cnが大きいほどスイッチング素子142のスイッチング周期は長くなり、スイッチング周波数fswは低下することが分かる。また、許可カウント数Cnが小さいほどスイッチング周波数fswが上昇することも分かる。
【0031】
次に、図3を用いて力率補償電源装置100の動作についてさらに説明する。図3は、実施の形態1における、電源電圧、スイッチング周波数、および許可カウント数の関係の一例を示す図である。図3中の各グラフの横軸は時間であり、縦軸は、図中上側のグラフから順に、電源電圧vac、スイッチング周波数fsw、許可カウント数Cnを表している。オン時間tonが全波整流電圧の周期(電源電圧vacの半分の周期)の間において概ね一定となるようにして制御を行う場合、電源電圧vacの大きさによりスイッチング周波数fswは変動する。すなわち、電源電圧vacの絶対値が減少するほどスイッチング周波数fswは上昇し、電源電圧vacの絶対値が増加するほどスイッチング周波数fswは低下する。なお、1周期中の電源電圧vacの大きさは電源電圧vacの位相により決まるので、スイッチング周波数fswは、電源電圧vacの位相により変動する。
【0032】
実施の形態1では、スイッチング周波数fswが低下しながら回避周波数帯に近づいてきたことをタイミング調整部123が検知すると、許可カウント数Cnを大きな値に変更する。図3に示す例では、許可カウント数Cnを2から3に変更している。許可カウント数Cnが大きくなると、電源電圧vacの増加によるスイッチング周波数fswの低下に許可カウント数Cnの増加によるスイッチング周波数fswの低下が加わることとなり、スイッチング周波数fswは急激に低下する。これにより、回避周波数帯を避けた動作が実現される。より具体的には、回避周波数帯よりも大きな周波数から回避周波数帯よりも小さな周波数に、スイッチング周波数fswが不連続に変化する。反対に、スイッチング周波数fswが上昇しながら回避周波数帯に近づいてきたことをタイミング調整部123が検知すると、許可カウント数を小さな値に変更する。図3に示す例では、許可カウント数Cnを3から2に変更している。許可カウント数Cnを小さくすることによりスイッチング周波数fswを急激に上昇させて、回避周波数帯を避けた動作が実現される。より具体的には、回避周波数帯よりも小さな周波数から回避周波数帯よりも大きな周波数に、スイッチング周波数fswが不連続に変化する。
【0033】
上記のようにスイッチング周波数fswを変動させることで、スイッチング周波数fswが回避周波数帯に入ることが防がれる。また、スイッチング素子142が、回避周波数帯内の周波数でスイッチング動作することが防がれる。なお、スイッチング周波数fswが回避周波数帯に近づくことの検知は、例えば上限値、下限値、中心値など、回避周波数帯内の任意の周波数と、現在のスイッチング周波数fswとの差に基づいて検知すればよい。この差の大きさが減少していき、予め定められた値よりも小さくなったことにより、回避周波数帯へのスイッチング周波数fswの接近を検知する。
【0034】
上記のように、実施の形態1ではスイッチング周波数fswが上昇している時にはスイッチング周波数fswをさらに上昇させ、スイッチング周波数fswが低下している時にはスイッチング周波数fswをさらに低下させるという動作を行う。このような動作を行うことで、回避周波数帯を避けた動作を実現することができる。さらに、上記の動作を行うことでスイッチング周波数fswが1つ周波数に集中することを防止することができる。このことは、図3において電源電圧vacの1/4周期でスイッチング周波数fswを分散できていることから確認できる。スイッチング周波数fswを分散させることにより、スイッチング動作により発生するEMIノイズの周波数を複数の周波数に分散させることができる。このようにEMIノイズの周波数を複数の周波数に分散させると、スペクトラム拡散の効果により、一つの周波数にEMIノイズが集中する場合と比べて、発生するEMIノイズの最大値を低減することができる。
【0035】
また、実施の形態1においてスイッチング周波数fswが上昇しているとき、回避周波数帯を回避するときには回避周波数帯よりも高周波にスイッチング周波数fswを上昇させる。入力フィルタ111のカットオフ周波数が回避周波数帯に含まれる場合、タイミング調整部123は、回避周波数帯よりも大きく、かつ、入力フィルタ111のカットオフ周波数よりも大きい周波数にスイッチング周波数fswを上昇させることになる。スイッチング周波数fswが高周波である(この場合、スイッチング動作により発生するEMIノイズの周波数も高周波である)ほど、入力フィルタ111によるEMIノイズの減衰効果が大きくなるので、スイッチング周波数fswを高周波化させることで入力フィルタ111の減衰効果を大きくし、交流電源91へのEMIノイズの伝導量をより効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、PWM信号VgがHへ切り替わるタイミングに基づいてスイッチング周波数fswを算出し許可カウント数Cnを決定する場合、許可カウント数Cnを変更してから実際にスイッチング周波数fswが変化するまでに遅延が発生するため、この遅延を考慮して許可カウント数Cnの変更のタイミングを決定することが望ましい。
【0037】
図3に示した例では、回避周波数帯は1つだけとしたが、回避周波数帯を複数設けてもよい。図4に示す例では、第1の回避周波数帯および第2の回避周波数帯の2つの回避周波数帯を設けている。第1の回避周波数帯は、第2の回避周波数帯よりも高い周波数帯である。このような2つの回避周波数帯を回避するため、第1の回避周波数帯を回避するためには、許可カウント数Cnを1から2(スイッチング周波数fswが低下している場合)あるいは2から1(スイッチング周波数fswが上昇している場合)に変更する。第2の回避周波数帯を回避するためには、許可カウント数Cnを2から3(スイッチング周波数fswが低下している場合)あるいは3から2(スイッチング周波数fswが上昇している場合)に変更する。なお、図3図4に示した例では許可カウント数Cnは1ずつ変化させているが、一度の変更で許可カウント数Cnを2以上変化させても構わない。
【0038】
次に、力率補償電源装置100、特に、電源制御部120の各機能部を実現するハードウェア構成について説明する。図5は、実施の形態1に係る電源制御部の各機能部を実現するハードウェア構成の例を示す図である。上述したように、電源制御部120はマイコンを用いるデジタル制御回路により構成するが、上記マイコンのより具体的なハードウェア構成の一例は図5に示すようになる。すなわち、電源制御部120は、主に、プロセッサ71と、主記憶装置としてのメモリ72および補助記憶装置73から構成される。プロセッサ71は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成される。
【0039】
メモリ72はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置で構成され、補助記憶装置73はフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置またはハードディスクなどで構成される。補助記憶装置73には、プロセッサ71により実行される所定のプログラムが記憶されており、プロセッサ71は、このプログラムを適宜読み出して実行し、各種演算処理を行う。この際、補助記憶装置73からメモリ72に上記所定のプログラムが一時的に保存され、プロセッサ71はメモリ72からプログラムを読み出す。実施の形態1に係る制御系の各種演算処理は、上記のようにプロセッサ71が所定のプログラムを実行することで実現される。プロセッサ71による演算処理の結果は、一旦メモリ72に記憶され、実行された演算処理の目的に応じて補助記憶装置73に記憶される。
【0040】
また、電源制御部120は、電源主回路部110などから信号またはデータを受信する受信器74と、電源主回路部110などに信号またはデータを送信する送信器75とを備えている。
【0041】
以上のように、PWM信号Vgからスイッチング周波数fswを算出し、スイッチング周波数fswが上昇しながら回避周波数帯に近づく場合は許可カウント数Cnを減少させてスイッチング周波数fswを不連続に上昇させる。スイッチング周波数fswが低下しながら回避周波数帯に近づく場合は許可カウント数Cnを増加させることでスイッチング周波数fswを不連続に低下させる。このような制御を行うことにより、回避周波数帯を避けたスイッチング動作を実現できる。また、スイッチング動作の周波数が特定の周波数に集中することも防止されるので、スイッチング周波数fswの分散を実現できる。
【0042】
また、実施の形態1では上記のZCDカウント制御により、リアクトル電流iLが零になるとともにスイッチング素子の両端電圧が極小値となるタイミングにスイッチング素子をターンオンするので、スイッチング損失を低減することができる。
【0043】
なお、何らかの要因によりスイッチング周波数fswの変化が不連続にならない場合もありうる。この場合、一時的にスイッチング周波数fswが回避周波数帯に入ることになるが、スイッチング周波数fswの変動を急激にして回避周波数帯を短時間で通過させることになるので、回避周波数帯にスイッチング周波数fswが集中することはない。
【0044】
実施の形態1によれば、特定の周波数帯にスイッチング周波数が集中することを防ぐことができる。より具体的には、コンバータのスイッチング素子の両端電圧が振動して極小となった回数をカウントし、この回数が許可カウント数に達したタイミングに基づいて、スイッチング素子をオンにするスイッチング制御部と、スイッチング周波数が回避周波数帯に近づいたときに、許可カウント数を変更させてスイッチング周波数が回避周波数帯に入ることを回避させるタイミング調整部とを備える。特定の周波数帯を含むように回避周波数帯を設定し、それに応じて許可カウント数を決定することが可能であるので、スイッチング周波数が周期的に変動する中で、スイッチング周波数が特定の周波数帯に集中することを防ぐことができる。
【0045】
また実施の形態1では回避周波数帯のスイッチング周波数でスイッチング動作が行われることを防ぐので、特定の周波数でスイッチング動作が行われることも防止できる。
【0046】
次に、実施の形態1の変形例について説明する。図6は、実施の形態1の変形例における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。図6において、実施の形態1と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。力率補償電源装置101は、電力変換器93を介して負荷92に接続されている点が力率補償電源装置100と異なる。力率補償電源装置101の動作は上述した力率補償電源装置100の動作と同様である。図6に示すようにコンバータ140と負荷92との間にコンバータ140とは別の電力変換器93が接続された場合は、電力変換器93の動作周波数を含むように回避周波数帯を設定してもよい。また、図示は省略するが、別の電力変換器93が力率補償電源装置100と並列に接続される場合も考えられる。このような場合でも、電力変換器93の動作周波数を回避周波数帯に設定してよい。このように回避周波数帯を設定することにより、2つ以上の電力変換器(コンバータ140も含む)から発生するEMIノイズの周波数が一つの周波数に集中することを防止することができる。これにより、入力フィルタ111に必要な容量を低減でき、入力フィルタ111の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0047】
なお、図示は省略するが、電力変換器93の動作周波数がタイミング調整部123に入力される構成とし、電力変換器93の動作周波数を含むようにタイミング調整部123が回避周波数帯を設定する構成としてもよい。
【0048】
また、例えば150kHzまたは526kHzといったように、準拠すべきノイズの規格値を基に回避周波数帯を定めてもよい。例えば、AM周波数帯の526kHz以上のノイズはAMラジオの雑音の原因となるためノイズ規格により厳しく制限されている。このように、ノイズ規格により厳しく制限されている周波数帯を回避周波数帯に定めることにより、ノイズ規格の準拠を容易にするとともに、入力フィルタ111の小型化および低コスト化を実現することができる。また、入力フィルタ111の小型化および低コスト化は、力率補償電源装置全体の小型化および低コスト化につながる。
【0049】
上記に限らず、回避周波数帯は設計者の意図に応じて任意に設定できるので、任意の固定値を回避周波数帯と定めてもよい。
【0050】
なお、リアクトル電流iLが零かつ上昇するタイミング、および、スイッチング素子142の両端電圧Vdsが極小値となるタイミングの少なくとも一方のタイミングでスイッチング動作をさせつつ、スイッチング周波数fswが上昇しながら回避周波数帯に近づく場合はスイッチング周波数fswをさらに上昇させ、スイッチング周波数fswが低下しながら回避周波数帯に近づく場合はスイッチング周波数fswをさらに低下させる動作が実現できれば、適宜構成を変更してもよい。
【0051】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を図7に基づいて説明する。図7は、実施の形態2における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。図7において、実施の形態1と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。力率補償電源装置102の電源主回路部1101は、全波整流電圧vin、すなわち入力電圧を検出し、全波整流電圧検出値vinsenとしてタイミング調整部1231に出力する全波整流電圧検出部115、すなわち入力電圧検出部と、負荷92を流れる出力電流ioを検出し、出力電流検出値iosenとしてタイミング調整部1231に出力する出力電流検出部116を備える。
【0052】
タイミング調整部1231は、予め定められた閾値thと全波整流電圧検出値vinsenとを比較し、許可カウント数Cnを決定する。予め定められた閾値thは、全波整流電圧vinが増加してスイッチング周波数fswが低下している時に用いるものと、全波整流電圧がvin減少してスイッチング周波数が上昇している時に用いるものとの2つを用意し、回避周波数帯を回避するタイミングで許可カウント数を変更できるように事前に値を設定しておく。
【0053】
図3に示したようにスイッチング周波数fswは電源電圧vacの絶対値、すなわち全波整流電圧vinの大きさに依存して決まるため、閾値thを回避周波数帯に対応する値とすれば、上記のように閾値thと全波整流電圧検出値vinsenとを比較することにより、現在のスイッチング周波数fswと回避周波数帯の関係を把握することができる。また、閾値thと全波整流電圧検出値vinsenとの比較結果の時間変化から、スイッチング周波数fswが回避周波数帯に近づいているか否かを把握することができる。また、全波整流電圧検出値vinsenの時間変化からスイッチング周波数fswが上昇しているか低下しているかも把握できるため、回避周波数帯を回避するための許可カウント数Cnを決定することができる。このように、実施の形態2によれば、実施の形態1およびその変形例のようにPWM信号Vgを用いることなく、許可カウント数Cnを決定することができる。このため、スイッチング制御部1211は、PWM信号Vgをタイミング調整部1231に出力しなくともよい。
【0054】
なお、負荷92の大きさが変動するシステムであれば、負荷92の大きさに応じて閾値thを補正する構成も考えられる。ここで、負荷92の大きさは、出力電圧検出値vosenと出力電流検出値iosenとで計算される。力率補償電源装置102においては、出力電流検出値iosenと出力電圧検出値vosenがタイミング調整部1231に入力され、タイミング調整部1231は、出力電圧検出値vosenと出力電流検出値iosenから負荷92の大きさを推定する。タイミング調整部1231は、推定した負荷92の大きさにより閾値thを補正する。例えば、負荷92が小さい場合はスイッチング周波数fswが上昇しやすくなるため、回避周波数帯が同じであっても閾値thを増加させる。
【0055】
実施の形態3.
次に、実施の形態3を図8に基づいて説明する。図8は、実施の形態3に係る電源主回路部の動作を示す図であり、図中のそれぞれのグラフの横軸を時間として、スイッチング制御部121が出力するPWM信号Vg、リアクトル141に流れるリアクトル電流iL、スイッチング素子142の両端にかかる両端電圧Vds、零電流検出部114が出力する零電流信号ZCD、および遅延時間信号Tdの関係を示している。
【0056】
実施の形態3においては、スイッチング素子142の両端電圧Vdsを検出する両端電圧検出部(図示せず)を設け、スイッチング素子142の両端電圧Vdsを検出することによりZCDカウント制御を実現する。上記両端電圧検出部は、極小値検出部に相当する。図2に示したとおり、零電流信号ZCDがLに立ち下がるタイミングとスイッチング素子142の両端電圧Vdsのボトムタイミングは一致しているため、零電流検出部114に代えてスイッチング素子142の両端電圧検出部を設ける構成においても、実施の形態1と同様にZCDカウント制御を実現することができる。すなわち、実施の形態3によれば、零電流検出部114を用いることなくZCDカウント制御を実現することができる。
【0057】
また、実施の形態3では、遅延時間信号Tdを用いてZCDカウント制御を行う。図8に示すように、PWM信号VgがHからLになり零電流信号ZCDがHからLになるまでは、実施の形態1(図2)と同様の動作をする。零電流信号ZCDがHからLに切り替わると、これに基づいて遅延時間信号TdがHとなり、遅延時間信号がLに切り替わったことに基づいて、PWM信号VgがHに切り替わる。遅延時間信号TdがHを維持する時間は、リアクトル141のインダクタンス成分とスイッチング素子142の寄生容量とによるLC共振の共振周期の整数倍に設定しておけばよい。遅延時間信号Tdが上記共振周期の整数倍の時間の間Hを維持することにより、実施の形態1のZCDカウント制御と同様の動作が実現される。例えば、図8は遅延時間を共振周期の1倍に設定した場合の例であり、実施の形態1のZCDカウント制御で許可カウント数Cnを2と設定した場合と同様の動作が実現されている。
【0058】
なお、上記のように遅延時間信号Tdを用いてZCDカウント制御を行う構成は、許可カウント数Cnを遅延時間に置き換えるものであるから、零電流検出部114を用いることを妨げない。遅延時間信号Tdを用いた制御を行う場合、タイミング調整部123は、許可カウント数Cnではなく遅延時間の長さ(遅延時間信号TdがHを維持する時間の長さ)を決定し、スイッチング制御部121に遅延時間信号Tdを出力する。これにより、スイッチング制御部121には、タイミング調整部123から遅延時間が入力されることになる。スイッチング制御部121では、出力電圧制御部122から送られてくるオン時間ton、零電流検出部114からの零電流信号ZCDまたはスイッチング素子142の両端電圧検出部からの信号(両端電圧Vdsのボトムタイミングを検出する極小値信号)、およびタイミング調整部123から送られてくる遅延時間信号Tdに基づいて、PWM信号Vgを生成し、スイッチング素子142を制御する。スイッチング制御部121は、遅延時間信号TdがHとなっている間はPWM信号VgをHにしない(Lに維持する)。上記のようにすることで、実施の形態1のZCDカウント制御と同様の動作を、遅延時間信号Tdにより実現できる。
【0059】
さらに、零電流検出部114およびスイッチング素子142の両端電圧の検出部の両方を省略しても、計算により実施の形態1の動作を実現する構成としてもよい。スイッチング素子142のオン時間tonは、上記したように出力電圧制御部122が演算する。スイッチング素子142のオフ時間は、上記オフ時間をリアクトル電流iLがゼロに達するまでの時間とLC共振が起こる時間とに分け、以下のようにして求められる。すなわち、リアクトル電流iLがゼロに達するまでの時間は、オン時間tonと、全波整流電圧検出値vinsenと、出力電圧検出値vosenと、リアクトル141のリアクタンス値から求めることができる。LC共振が起こる時間は、リアクトル141のリアクタンス値およびスイッチング素子142の寄生成分から算出される共振周期により算出することができる。以上より、1回のスイッチング周期の時間をすべて計算することができるので、計算した各種時間よりスイッチング周波数fswを算出することができる。このため、零電流検出部114およびスイッチング素子142の両端電圧の検出部の両方を省略しても、実施の形態1と同様の動作を実現することができる。
【0060】
実施の形態4.
次に、実施の形態4を図9に基づいて説明する。図9は、実施の形態4における力率補償電源装置を示すブロック図である。図9において、実施の形態1と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。力率補償電源装置103の電源主回路部1102は、降圧チョッパで構成されたコンバータ1401を備える。すなわち、コンバータ1401は、全波整流回路112の出力側において一端が高圧側の電路に接続され、他端が低圧側の電路に接続された入力コンデンサ144と、入力コンデンサ144の一端と高圧側の電路との接続点に一端が接続されたスイッチング素子1421と、スイッチング素子1421の他端に一端が接続されたリアクトル1411と、リアクトル1411の他端に一端が接続され、低圧側の電路に他端が接続された出力コンデンサ145と、スイッチング素子1421の他端とリアクトル1411の一端との接続点にカソードが接続され、アノードが低圧側の電路に接続されたダイオード1431とを備える。入力コンデンサ144の他端、ダイオード1431のアノード、および出力コンデンサ145の他端は、低圧側の電路を介して負荷92の他端に接続されている。力率補償電源装置103のその他の構成は、力率補償電源装置100と同様である。力率補償電源装置103においても、図2および図3で示した各種の信号の波形は同様の関係を持つので、上記した実施の形態1の制御(ZCD制御)を実現することができる。
【0061】
上記のように、コンバータ140の構成を昇圧チョッパから降圧チョッパに置き換えても、実施の形態1と同様の制御が実現される。コンバータ140の構成は、リアクトルとスイッチング素子を備えた回路トポロジーであればよく、上記した昇圧チョッパおよび降圧チョッパ以外の構成、例えば、フライバックコンバータ、フォワードコンバータなどであってもよい。
【0062】
実施の形態5.
次に、実施の形態5を図10に基づいて説明する。図10は、実施の形態5における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。図10において、実施の形態1と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。実施の形態2は、実施の形態1における負荷92をLED(Light Emitting Diode)モジュール921としたものである。LEDモジュール921には、例えばLEDチップを全て直列に接続した構成を採用してもよいし、直列接続した場合に限らず並列接続または直並列接続としてもよく、1個のLEDであっても良い。さらに、ここでは負荷としてLEDを接続しているが、LEDでなく、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、レーザーダイオード等に変更しても良い。
【0063】
LEDは特性上、電流制御を用いることが望ましいため、力率補償電源装置200は、LEDモジュール921を流れる出力電流ioを検出し、出力電流検出値iosenとして出力する出力電流検出部116を備えるとともに、電源制御部220の構成が実施の形態1と異なっている。電源制御部220においては、実施の形態1の出力電圧制御部122に代えて、出力電流制御部222が設けられる。出力電流制御部222には、出力電流検出部116によって検出される出力電流検出値iosenが入力される。また、力率補償電源装置200は、LEDに流す出力電流ioの指令信号である調光信号Sdを出力する調光器250が設けられる。調光器250が出力する調光信号Sdは、出力電流制御部222に入力され、出力電流制御部222は、調光信号Sdと出力電流検出値iosenからスイッチング素子142のオン時間tonを導出する。このように電源制御部220を構成にすることにより、実施の形態1と同様の制御を行い、LEDモジュール921に流れる電流の制御を行うことができる。
【0064】
このように、実施の形態5では、実施の形態2の負荷92としてLEDモジュール921を設けた場合、出力電流検出部116で検出された出力電流検出値iosenを出力電流制御部222にフィードバックし、出力電流ioが目標出力電流となるように、出力電流制御部222にて制御する。そして、実施の形態1と同様に、タイミング調整部123で許可カウント数Cnを決定し、スイッチング制御部121でスイッチング素子142の制御を行う。負荷92をLEDモジュール921とした場合においても、実施の形態1と同様に、リアクトル電流iLが零となりかつ上昇するタイミング(リアクトル電流iLが負から正に切り替わるタイミング)であり、スイッチング素子の両端電圧Vdsが極小となるボトムタイミングでスイッチング動作をすることにより、スイッチング損失の低減を図ることができる。また、許可カウント数Cnの変更により、スイッチング周波数fswが上昇するときはさらにスイッチング周波数fswを上昇させ、スイッチング周波数が低下するときはさらにスイッチング周波数を低下させることにより、回避周波数帯を避けたスイッチング動作およびスイッチング周波数fswの分散動作を実現することができる。
【0065】
なお、実施の形態5では、出力電流指令値に相当する調光信号Sdを調光器250から取得する構成としたが、例えば電源制御部220の内部に出力電流指令値を保持する記憶部を設ける構成にするなど、自由に変更を加えても構わない。
【0066】
実施の形態6.
次に、実施の形態6を図11に基づいて説明する。図11は、実施の形態6における力率補償電源装置を示すブロック図である。図11において、図10と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。力率補償電源装置201は、実施の形態2における負荷92をLEDモジュール921としたものである。このため、電源制御部の構成が実施の形態5と異なる。また、調光器2501は、電源制御部2201の出力電流制御部222およびタイミング調整部223に調光信号Sdを出力する。実施の形態2における力率補償電源装置102では、全波整流電圧検出値vinsen、出力電圧検出値vosen、および出力電流検出値iosenをタイミング調整部1231に入力して、全波整流電圧検出値vinsenと閾値thとの比較により許可カウント数Cnを決定した。また、出力電圧検出値vosenと出力電流検出値iosenとで計算される負荷92の大きさに応じて閾値thを補正するという方法を説明した。実施の形態6のように負荷92をLEDモジュール921とする場合においては、図11に示すように、全波整流電圧検出値vinsenと調光信号Sdをタイミング調整部223に入力して、調光信号Sdに応じて閾値thを補正すればよい。
【0067】
これは、LEDモジュール921を負荷とした場合、調光機能によりLEDモジュール921に流れる出力電流ioを変化させた場合でも出力電圧voは変化しないため、出力電流ioの情報を示す調光信号Sdの情報があればLEDモジュール921で消費する電力を推定できるためである。
【0068】
なお、タイミング調整部223は、PWM信号Vgを用いることなく許可カウント数Cnを決定できるので、スイッチング制御部1211は、PWM信号Vgをタイミング調整部223に出力しなくともよい。
【0069】
次に、実施の形態6の変形例について説明する。図12は、実施の形態6の変形例における力率補償電源装置の構成を示すブロック図である。図12において、実施の形態6と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付している。力率補償電源装置202は、電流調整回路931を介して負荷92に接続されている点が力率補償電源装置201と異なる。このような回路構成であっても、図2および図3で示した各種の信号の波形は同様の関係を持つので、実施の形態6で説明したものと同様の効果を実現することができる。
【0070】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0071】
100、101、102、103、200、201、202 力率補償電源装置、111 入力フィルタ、112 全波整流回路、113 出力電圧検出部、114 零電流検出部、115 全波整流電圧検出部、116 出力電流検出部、121、1211 スイッチング制御部、122 出力電圧制御部、123、1231、223 タイミング調整部、222 出力電流制御部、140、1401 コンバータ、141、1411 リアクトル、142、1421 スイッチング素子、250、2501 調光器、91 交流電源、92 負荷、93 電力変換器、931 電流調整回路、iL リアクトル電流、io 出力電流、Sd 調光信号、ton オン時間、vac 電源電圧、vin 全波整流電圧、vo 出力電圧、voref 目標電圧値、ZCD 零電流信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12