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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/516 20210101AFI20240830BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240830BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20240830BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20240830BHJP
   H01M 50/526 20210101ALI20240830BHJP
   H01M 50/512 20210101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/507
H01M50/522
H01M50/534
H01M50/526
H01M50/512
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022519037
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2021004195
(87)【国際公開番号】W WO2021210829
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044829
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チャンジェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ジ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】カンイル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェヒョン・ペ
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047050(WO,A1)
【文献】特開2016-100210(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0008135(KR,A)
【文献】特開2012-089254(JP,A)
【文献】特開2018-012125(JP,A)
【文献】特開2017-147209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが積層されている電池セル積層体、
前記電池セル積層体に連結されたバスバーフレーム、
前記電池セル積層体に連結され、アルミニウムを含む電極リード、および
前記電極リードと重畳し、銅を含むバスバーを含み、
前記電極リードと前記バスバーが溶接によって溶接部を形成し、
前記溶接部は、前記電極リードと前記バスバーの境界面を基準にして前記電極リード内に中心部が位置する第1領域および前記バスバー内に中心部が位置する第2領域からなり
アルミニウムと銅の析出物が、前記第1領域と前記第2領域の両方の全体にわたって分散し、アルミニウムと銅の共晶が、前記第1領域と前記第2領域の両方の全体にわたって分布している、電池モジュール。
【請求項2】
前記電池セル積層体に含まれている電池セルのうちの互いに隣接の電池セルからそれぞれ突出したセルテラスをさらに含み、
前記電極リードは前記セルテラスからそれぞれ突出し、同一な極性を有する複数の電極リードを含み、
前記電極リードは一つのバスバーと重畳している、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記電極リードと前記バスバーの間で、前記バスバー上に第3金属でメッキされているメッキ層をさらに含む、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記メッキ層はニッケルを含む、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
複数の電池セルを積層して電池セル積層体を形成する段階、
前記電池セルのうちの互いに隣接の電池セルからそれぞれ突出した電極リードのうちの少なくとも一つを同一なバスバーに重畳させる段階、および
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階を含み、
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階は、
第1エネルギーを有するレーザで前記電極リードのみを予熱する段階、および
第2エネルギーを有するレーザで前記予熱された電極リードと前記バスバーを溶接する段階を含み、
前記電極リードはアルミニウムを含み、前記バスバーは銅を含み、
前記第1エネルギーは前記第2エネルギーより低く、
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階は、前記電極リードに含まれるアルミニウムと前記バスバーに含まれる銅の共晶反応を誘導する段階を含む、電池モジュール製造方法。
【請求項6】
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階で、アルミニウムに混合される銅の合金濃度は22wt%~52wt%である、請求項5に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項7】
前記電極リードを予熱する段階の溶接速度は、予熱された前記電極リードと前記バスバーを溶接する速度より大きい、請求項5または6に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項8】
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階以前に、前記バスバー上に第3金属でメッキされているメッキ層を形成する段階をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項9】
前記レーザは、中心から外郭にレーザビームが照射されるパターンを有する、請求項5~8のいずれか一項に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項10】
前記レーザは、トルネード溶接ビームを有する、請求項9に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項11】
電極リードとバスバーを溶接する方法において、
第1エネルギーを有するレーザで前記電極リードのみを予熱する段階、および
第2エネルギーを有するレーザで前記予熱された電極リードと前記バスバーを溶接する段階を含み、
前記第1エネルギーは前記第2エネルギーより低く、前記電極リードに含まれるアルミニウムと前記バスバーに含まれる銅の共晶反応を誘導する段階を含む溶接方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項による電池モジュールを含む電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年4月13日付韓国特許出願第10-2020-0044829号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電池モジュールおよびその製造方法に関するものであって、より具体的には、向上した溶接部物性を有する電池モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
製品群による適用容易性が高く、高いエネルギー密度などの電気的特性を有する二次電池は、携帯用機器だけでなく、電気的駆動源によって駆動する電気自動車またはハイブリッド自動車、電力貯蔵装置などに普遍的に応用されている。このような二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減少させることができるという一次的な長所だけでなく、エネルギーの使用による副産物が全く発生しないという点から、環境に優しいおよびエネルギー効率性向上のための新たなエネルギー源として注目を浴びている。
【0004】
小型モバイル機器にはデバイス1台当り一つまたは二、三、四個の電池セルが使用されるのに反し、自動車などのように中大型デバイスには高出力大容量が必要である。したがって、多数の電池セルを電気的に連結した中大型電池モジュールが使用される。
【0005】
一方、近来エネルギー貯蔵源としての活用をはじめとして大容量構造に対する必要性が高まるにつれて多数の二次電池が直列および/または並列に連結された多数の電池モジュールを集合させたマルチモジュール構造の電池パックに対する需要が増加している。
【0006】
一方、複数の電池セルを直列/並列に連結して電池パックを構成する場合、少なくとも一つの電池セルからなる電池モジュールを先に構成し、このような少なくとも一つの電池モジュールを用いてその他の構成要素を追加して電池パックを構成する方法が一般的である。
【0007】
電池モジュール内部で電池セルが電気的に連結されるためには、電極リードが相互連結され、そのような連結状態を維持するために連結部分が溶接できる。さらに、電池モジュールは電池セル間の並列および/または直列の電気的連結を有することができ、このために電極リードの一端部は各電池セル間の電気的連結のためのバスバーに溶接などの方式で固定できる。
【0008】
そして、電池セルの間の電気的連結は、電極リードをバスバーに接合させる方式で構成される場合が多い。この時、電池セルを並列に電気的に連結させるためには同一極性の電極リードを互いに連結接合させ、直列に電気的に連結させるためには異なる極性の電極リードを互いに連結接合させる。
【0009】
このように、バスバーと電極リードを溶接する時、金属間化合物(intermetallic compound)析出によって溶接部の物性が悪化して引張強度、疲労寿命、電気伝導度が低下することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、向上した溶接部物性を有する電池モジュールおよびその製造方法を提供することである。
【0011】
しかし、本発明の実施形態が解決しようとする課題は上述の課題に限定されず、本発明に含まれている技術的思想の範囲で多様に拡張できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による電池モジュールは複数の電池セルが積層されている電池セル積層体、前記電池セル積層体に連結されたバスバーフレーム、前記電池セル積層体に連結され、第1金属を含む電極リード、および前記電極リードと重畳し、第2金属を含むバスバーを含み、前記電極リードと前記バスバーが溶接によって溶接部を形成し、前記溶接部は、前記電極リードと前記バスバーの境界面を基準にして前記電極リード内に中心部が位置する第1領域および前記バスバー内に中心部が位置する第2領域を含み、前記第1金属と前記第2金属の析出物(Precipitate)は前記第1領域と前記第2領域の両方ともに分布する。
【0013】
前記電池モジュールは前記電池セル積層体に含まれている電池セルのうちの互いに隣接の電池セルからそれぞれ突出したセルテラスをさらに含み、前記電極リードは前記セルテラスからそれぞれ突出し、同一な極性を有する複数の電極リードを含み、前記電極リードは一つのバスバーと重畳していてもよい。
【0014】
前記電池モジュールは、前記電極リードと前記バスバーの間で、前記バスバー上に第3金属でメッキ(plating)されているメッキ層をさらに含むことができる。
【0015】
前記第1金属はアルミニウムを含み、前記第2金属は銅を含むことができる。
【0016】
前記メッキ層は、ニッケルを含むことができる。
【0017】
前記析出物は、前記溶接部内で分散できる。
【0018】
本発明の他の一実施形態による電池パックは、前述の電池モジュールを含む。
【0019】
本発明のまた他の一実施形態による電池モジュール製造方法は複数の電池セルを積層して電池セル積層体を形成する段階、前記電池セルのうちの互いに隣接の電池セルからそれぞれ突出した電極リードのうちの少なくとも一つを同一なバスバーに重畳させる段階、および前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階を含み、前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階は、第1エネルギーを有するレーザで前記電極リードを予熱する段階、および第2エネルギーを有するレーザで前記予熱された電極リードと前記バスバーを溶接する段階を含み、前記第1エネルギーは前記第2エネルギーより低い。
【0020】
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階は、前記電極リードに含まれる第1金属と前記バスバーに含まれる第2金属の共晶反応(Eutectic Reaction)を誘導する段階を含むことができる。
【0021】
前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階で、前記第1金属に混合される前記第2金属の合金濃度は22wt%~52wt%であってもよい。
【0022】
前記電極リードを予熱する段階の溶接速度は、予熱された前記電極リードと前記バスバーを溶接する速度より大きくてもよい。
【0023】
前記電池モジュール製造方法は、前記電極リードと前記バスバーを溶接させる段階以前に、前記バスバー上に第3金属でメッキ(plating)されているメッキ層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0024】
前記レーザは、中心から外郭にレーザビームが照射されるパターンを有することができる。
【0025】
前記レーザは、トルネード溶接ビームを有することができる。
【0026】
本発明のまた他の一実施形態による溶接方法は電極リードとバスバーを溶接する方法において、第1エネルギーを有するレーザで前記電極リードを予熱する段階、および第2エネルギーを有するレーザで前記予熱された電極リードと前記バスバーを溶接する段階を含み、前記第1エネルギーは前記第2エネルギーより低く、前記電極リードに含まれる第1金属と前記バスバーに含まれる第2金属の共晶反応(Eutectic Reaction)を誘導する段階を含む。
【発明の効果】
【0027】
実施形態によれば、相対的に低いレーザエネルギー入力で電極リードを予熱する段階と、予熱された電極リードとバスバーを溶接する段階を行うことによって、バスバーと電極リード溶接時、異種金属間の合金濃度を制御して共晶反応(Eutectic Reaction)を誘導することができる。
【0028】
したがって、溶融点を低めることができ、金属間化合物析出が抑制される冷却時間が長くなって金属間化合物の析出制御が非常に有利になる。
【0029】
また、予熱工程によって溶接以後に徐冷過程を経ることにより十分な溶融流動性で析出物が溶接部内で分散されることによって引張強度が大きくなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による電池モジュール一部を示す斜視図である。
図2図1の切断線A-A’に沿って切断した断面図である。
図3】本発明の一実施形態による電極リードとバスバーの溶接構造を概略的に示す平面図である。
図4】比較例による電極リードとバスバーの溶接方法を概略的に示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態による溶接方法を概略的に示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態による溶接方法を概略的に示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態による溶接方法によって形成された溶接部を示す図である。
図8】アルミニウムと銅の2元系状態図を示すグラフである。
図9】比較例によるレーザ溶接ビームを示す図である。
図10】本実施形態によるレーザ溶接ビームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付けるようにする。
【0033】
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図示されたところに限定されるのではない。図面において様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして図面において、説明の便宜のために、一部層および領域の厚さを誇張されるように示した。
【0034】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あるという時、これは他の部分“の直上に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分“の直上に”あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。また、基準となる部分“の上に”または“上に”あるというのは基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力反対方向に向かって“の上に”または“上に”位置することを意味するのではない。
【0035】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を“含む”という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0036】
また、明細書全体で、“平面上”という時、これは対象部分を上から見た時を意味し、“断面上”という時、これは対象部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態による電池モジュール一部を示す斜視図である。図2図1の切断線A-A’に沿って切断した断面図である。
【0038】
図1および図2を参照すれば、本実施形態による電池モジュール100は、モジュールフレーム300、モジュールフレーム300内に挿入されている電池セル積層体120、およびモジュールフレーム300の開放された一側に位置し、電池セル積層体120と連結されるバスバーフレーム130を含む。電池セル積層体120は、複数の電池セル110が一方向に積層されて形成される。
【0039】
モジュールフレーム300は、電池セル積層体120の前面と後面を除いて4個の面を覆っているモノフレーム形態であり得る。モノフレーム内部に電池セル積層体120を挿入するために水平組み立てが必要な形態のフレームを意味する。但し、モジュールフレーム300はモノフレームに制限されず、上部面、前面および後面が開放されたU字型フレームと、電池セル積層体120の上部を覆う上部プレートを含む形態であってもよい。
【0040】
電池セル110を覆うパウチから延長されたセルテラス135が形成され、セルテラス135から突出する電極リード160が集まって一つのリードスロット(図示せず)を通過することができる。隣接のセルテラス135の間の間隔が電池セル110から遠くなるにつれて次第に狭くなり得る。この時、セルテラス135から突出する電極リード160は互いに同一な極性を有することができる。互いに隣接の2個の電極リード160が互いに異なる極性を有する場合には、前記2個の電極リード160がそれぞれ突出するセルテラス135の間の間隔はむしろ電池セル110から遠くなるにつれて次第に広くなり得る。
【0041】
本実施形態によれば、最外殻電池セル110とモジュールフレーム300の側面部の間に圧縮パッド200が形成されている。圧縮パッド200は、ポリウレタン系列の素材を使用して形成することができる。圧縮パッド200は、電池セル110のスウェリングによる厚さ変形および外部衝撃による電池セル110の変化を吸収することができる。圧縮パッド200は、最外殻電池セル110とモジュールフレーム300の側面部の間だけでなく隣接の電池セル110の間にも少なくとも一つ形成できる。
【0042】
バスバーフレーム130にはパスガイダー260が形成される。隣接する三個の電池セル110それぞれの電極リード160が延長されるようにするセルテラス135を形成する前に、電極リード160がリードスロットを通過するようにガイドするためのものであって、バスバーフレーム130の一側に形成できる。具体的には、バスバーフレーム130は、電池セル110から離隔して位置するバスバーフレーム130の後面内側にパスガイダー260を備えることができる。
【0043】
このようなパスガイダー260は、リードスロットを通過する前に三個の電極リード160およびセルテラス135が互いに近くなり得るようにバスバーフレーム130の後面で所定のガイド空間を形成することができる。パスガイダー260は複数個で備えることができる。ここで、複数のパスガイダー260は、複数のリードスロットの個数に対応するように備えることができる。これにより、複数の電池セル110のうちの隣接する電極リード160は、三個ずつ一組を成した後、それぞれのパスガイダー260を通じて電極リード160がリードスロットを通過して電極リード160群を形成することができる。
【0044】
電極リード160群を形成する電極リード160の個数は三個に限定されず、電池セル110の正極および負極の電極リードの配置によって変形できる。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態による電極リードとバスバーの溶接構造を概略的に示す平面図である。
【0046】
図3を参照すれば、電池セル110を覆うパウチから延長されたセルテラス135から複数の電極リード160が突出している。セルテラス135から突出した電極リード160はバスバー280が位置する方向にベンディングされてもよい。ベンディングされた電極リード160は同一なバスバー280に重畳し、複数の電極リード160とバスバー280が同時に溶接されて一つの溶接部WPを形成することができる。
【0047】
電極リード160とバスバー280を溶接する時、金属間化合物析出によって溶接部の物性が悪化して引張強度、疲労寿命、電気伝導度が低下することがある。特に、一例として示した図3のように、多数枚の電極リード160を同時に溶接するために次のような制約が発生する。第一に、電極リード160が重畳することによって厚くなった電極リード160を溶接するために溶接機の仕様が高まらなければならない。第二に、互いに重畳する電極リード160の個数が多くなるほど溶接機の仕様が高まらなければならない。第三に、互いに重畳する電極リード160の個数が多くなるほど各電極リード160層の溶接偏差が大きくなることによって溶接品質が低下することがある。即ち、溶接機に最も隣接した電極リード160層は過溶接され、溶接機から最も遠く離れて位置する電極リード160層は弱溶接されることがある。結局は、無メッキのバスバーの場合、溶接部の物性を確保することができなく、溶接部の溶融界面で金属間化合物が高濃度に析出されて溶接強度が非常に低下することがある。
【0048】
金属間化合物が高濃度に析出されて溶接強度が低下する問題については図4の比較例を参照して説明する。
【0049】
図4は、比較例による電極リードとバスバーの溶接方法を示す概略的に示す平面図である。
【0050】
図4を参照すれば、アルミニウムを含む電極リード16と銅を含むバスバー28をレーザ溶接する。レーザ溶接過程で流動方向(Flow direction)に沿って物質が移動していて溶接界面FIで金属間化合物としてCuAl析出物PMが高濃度に析出される。このような析出物PMは溶接強度を顕著に低下させ、小さな衝撃でも電極リード16とバスバー28が分離されることがある。
【0051】
図5および図6は、本発明の一実施形態による溶接方法を概略的に示す平面図である。
【0052】
図5を参照すれば、本実施形態によれば、電極リード160のうちの少なくとも一つを同一なバスバー280に重畳させることができる。その後、電極リード160とバスバー280を溶接させることができる。
【0053】
電極リード160とバスバー280を溶接させる段階は、第1エネルギーを有するレーザで電極リード160を予熱する段階を含む。第1エネルギーは、後述の溶接段階のエネルギーより相対的に低い大きさを有する。このような予熱工程を通じて後述の溶接段階で合金濃度を制御することによって、溶接される金属の溶融流動性を高めることができる。本段階で形成される予熱部(Preheating portion)は、電極リード160にのみ形成されるのが好ましい。なぜなら、バスバー280に予熱のためのレーザエネルギーが伝達されるようになれば、析出物が生成し始めるためである。
【0054】
レーザ溶接を行うと急速冷却によって析出物がよく生成されるが、本実施形態によれば、予熱工程によって冷却時間を遅延させて析出物の生成時間を最大に増やすことができる。また、電極リード160を予熱する段階を通じて表面のクリーニングおよびレーザビームの吸収率が高くなり得る。
【0055】
図6を参照すれば、第2エネルギーを有するレーザで予熱された電極リード160とバスバー280を溶接することができる。この時、第2エネルギーは、前記第1エネルギーより大きい。本段階で、電極リード160に含まれる第1金属と、バスバー280に含まれる第2金属の共晶反応(Eutectic Reaction)を誘導することができる。前記第1金属はアルミニウムを含み、前記第2金属は銅を含む。
【0056】
前記第1金属と前記第2金属の共晶反応が誘導されると、既存の溶接可能な温度よりさらに低い温度で溶接が可能になる。例えば、アルミニウム-銅の共晶反応が大略摂氏548度で起こり、共晶反応温度で溶接部WPの粘度が最も低くなり流動性が非常に高くなり得る。アルミニウム-銅共晶反応濃度では溶融金属の流動性が高まって溶接界面で金属間化合物が析出される分布を低めることができる。
【0057】
本実施形態によれば、電極リード160を予熱する段階の溶接速度は、予熱された電極リード160とバスバー280を溶接する速度より大きくてもよい。
【0058】
以下、図7を参照して、溶接部で起こる析出物の分散される過程を説明する。
【0059】
図7は、本発明の一実施形態による溶接方法によって形成された溶接部を示す図である。
【0060】
図7を参照すれば、電極リード160とバスバー280が重畳しており、電極リード160とバスバー280が溶接によって溶接部WPを形成する。溶接部WPは、電極リード160とバスバー280の境界面BSを基準にして電極リード160に中心部が位置する第1領域WP1、およびバスバー280内に中心部が位置する第2領域WP2を含む。溶接過程中に電極リード160を形成する第1金属と、バスバー280を形成する第2金属が反応して析出物PMを生成することがある。本実施形態による析出物PMは、第1領域WP1と第2領域WP2の両方ともに分布する。従来は溶接部WP内の物質流動性が低くて大部分の析出物が溶接界面FIに高濃度に形成されたが、本実施形態によれば、溶接部WP内で流動方向(Flow Direction)に沿って第1金属と第2金属の合金が大きく分散されて析出物PMが少量で形成されるかほとんど形成されないことになる。特に、溶接界面FIに形成された析出物PM濃度が非常に低く、析出物PMを最少化し、析出物PMが生成されても溶接部WP全体に分散させることによって溶接強度を向上させることができる。
【0061】
図8は、アルミニウムと銅の2元系状態図を示すグラフである。
【0062】
図8を参照すれば、本実施形態による溶接過程で、第1金属に混合される第2金属の合金濃度は大略22wt%~52wt%であり得る。好ましくは、30~40wt%であってもよく、さらに好ましくは32wt%~35wt%であり得る。前記範囲は共晶反応が起こる温度範囲であり、温度範囲を狭めていくほど共晶反応がさらに多く起こるようになって溶融金属の流動性が高まり溶接界面で金属間化合物が析出される分布を低めることができる。
【0063】
前記合金濃度が最小値22wt%未満である場合には溶接時に溶け込み自体が起こりにくく、最大値52wt%を超えれば、金属同士が合金とならなく、化合物として結合される。最大値52wt%を超える大略54wt%の場合、一般的な徐冷凝固過程と異なり、溶接は急冷過程であるので、凝固時にtheta相が形成される恐れがある。
【0064】
前述の実施形態で、電極リード160に含まれる第1金属と、バスバー280に含まれる第2金属は接触している。以上のように本実施形態によれば、電極リード160とバスバー280の間にニッケルのようなメッキ層を形成しなくても溶接強度を向上させることができる。
【0065】
変形実施形態として、電極リードとバスバーの間で、バスバー上にメッキ層として第3金属がメッキできる。第3金属はニッケルを含み、ニッケルはバスバーを形成する銅と全率固溶体(complete solid solution)を形成する。全率固溶体は液相と固相で他の相が現れず、全ての組成範囲で完全固溶されるので金属間化合物を生成しない。したがって、溶接部界面でニッケルが銅を全率固溶することによって、アルミニウム-銅による金属間化合物析出反応を抑制させることができる。ニッケルメッキ層が必ずしも必要なのではないが、前述の溶接方法と共にニッケルメッキ層が追加されればさらに優れた溶接強度を実現することができるという長所がある。
【0066】
図9は、比較例によるレーザ溶接ビームを示す図である。図10は、本実施形態によるレーザ溶接ビームを示す図である。
【0067】
図9を参照すれば、外郭から中央にレーザビームが集中されるパターンであり、この場合、中心部にエネルギーが集中されて中央が深くて幅が狭い溶け込みが形成されることになる。もしこのようなレーザ溶接ビームを本実施形態に適用すれば、バスバー中央に深くて幅の狭い溶溶部が形成されると、キーホールにレーザプラズマが放出されながら電極リードの第2金属との合金反応を妨害し、溶接部下端にバスバーの第1金属の濃度が高くなることがある。溶接部界面で第1金属の濃度が高まることによって第1金属と第2金属の金属間化合物が析出され溶接強度が急激に低下することがある。
【0068】
図10を参照すれば、本実施形態によるレーザ溶接ビームはトルネード中心部の半径を大きくして中心から外郭にレーザビームが照射され中心部のエネルギー密度を低めることができる。したがって、レーザ溶接部の溶け込み深さを平坦にする。溶接部に均等にエネルギーが伝達されながら第1金属と第2金属の共晶反応が誘導されやすくなる。予熱工程以後、前述の本実施形態によるレーザ溶接ビームを使用した溶接工程を行い、徐冷過程を経るにつれて十分な溶融流動性によって第1金属と第2金属がよく混合できる。
【0069】
一方、本発明の実施形態による電池モジュールは、一つまたはそれ以上がパックケース内にパッケージングされて電池パックを形成することができる。
【0070】
前述の電池モジュールおよびこれを含む電池パックは多様なデバイスに適用できる。このようなデバイスには、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド自動車などの運送手段に適用できるが、本発明はこれに限定されず、電池モジュールおよびこれを含む電池パックを使用することができる多様なデバイスに適用可能であり、これも本発明の権利範囲に属する。
【0071】
以上で本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0072】
160:電極リード
280:バスバー
FI:溶接界面
WP:溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10