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特許7546666超伝導デバイスのカプセル封止を強化するための接着層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】超伝導デバイスのカプセル封止を強化するための接着層
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/85 20230101AFI20240830BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H10N60/85 C
H10N60/85 B
H01L21/312 A
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022525139
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020081660
(87)【国際公開番号】W WO2021094320
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】16/681,295
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/681,331
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ヘイト、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】アフザリ、アルダカーニ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】アディガ、ヴィヴェカナンダ
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】パイク、ハンヘー
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/105716(WO,A1)
【文献】特表2016-509800(JP,A)
【文献】米国特許第09971970(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0042964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254434(US,A1)
【文献】国際公開第2020/099171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/85
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
量子プロセッサ内に含まれる超伝導共振器およびシリコン基板の上に接着層を堆積させることであって、前記超伝導共振器が前記シリコン基板の上に配置され、前記接着層がチオール官能基を有する化合物を含む、前記接着層を堆積させること
を含む方法。
【請求項2】
前記接着層が、4-メルカプト安息香酸、4-アミノチオフェノールおよびグリシドプロパンチオールからなるグループから選択される少なくとも1つの有機チオール化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着層が、有機チオール化合物の自己組織化単分子膜である、請求項1ないし2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記接着層を堆積させる前に、
エッチング・プロセスによって前記シリコン基板から第1の酸化物層を除去することと、
アニーリング・プロセスおよび前記エッチング・プロセスからなるグループから選択されるプロセスによって前記超伝導共振器から第2の酸化物層を除去することと
をさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
量子ビットが前記シリコン基板の上にさらに配置され、また、前記超伝導共振器に結合され、前記方法が、前記エッチング・プロセスによって前記量子ビットから第3の酸化物層を除去することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記超伝導共振器をカプセル封止するために前記接着層の上に金属フッ化物層を堆積させることであって、前記金属フッ化物層が、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含む、前記金属フッ化物層を堆積させること
をさらに含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記堆積させることが、熱蒸発によって前記接着層の上に前記金属フッ化物層を堆積させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
方法であって、
チオール官能基を有する化合物をシリコン基板の表面および超伝導共振器の表面に堆積させることであって、前記シリコン基板の前記表面および前記超伝導共振器の前記表面が、酸化物がない、前記堆積させること
を含む方法。
【請求項9】
前記化合物が、金属フッ化物コーティングと、前記シリコン基板の前記表面および前記超伝導共振器の前記表面からなるグループから選択される少なくとも1つの表面との間の接着を促進する接着層内に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物を堆積させる前に、
エッチング・プロセスによって前記シリコン基板の前記表面から第1の酸化物層を除去することと、
アニーリング・プロセスおよび前記エッチング・プロセスからなるグループから選択される少なくとも1つのプロセスによって前記超伝導共振器の前記表面から第2の酸化物層を除去することと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金属フッ化物コーティングで前記超伝導共振器をカプセル封止することであって、前記金属フッ化物コーティングが、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含む、前記超伝導共振器をカプセル封止すること
をさらに含む、請求項8ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
方法であって、
金属フッ化物コーティングと接着させるために、チオール官能基を有する化合物を量子プロセッサのシリコン基板および超伝導共振器の上に堆積させることによって前記量子プロセッサの表面を準備すること
を含む方法。
【請求項13】
前記化合物を堆積させる前に、
エッチング・プロセスによって前記シリコン基板から第1の酸化物層を除去することと、
アニーリング・プロセスおよび前記エッチング・プロセスからなるグループから選択されるプロセスによって前記超伝導共振器から第2の酸化物層を除去することと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、4-メルカプト安息香酸、4-アミノチオフェノールおよびグリシドプロパンチオールからなるグループから選択され、前記金属フッ化物コーティングが、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項12ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記準備することが、前記量子プロセッサの量子ビットの上に前記化合物を堆積させることをさらに含み、前記方法が、前記エッチング・プロセスによって前記量子ビットから第3の酸化物層を除去することをさらに含む、請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
装置であって、
シリコン基板の表面に配置される超伝導共振器の上に配置された接着層であって、前記超伝導共振器および前記シリコン基板が量子プロセッサ内に含まれ、前記接着層がチオール官能基を有する化合物を含む、前記接着層
を備える装置。
【請求項17】
前記超伝導共振器をカプセル封止する金属フッ化物層であって、前記接着層が前記金属フッ化物層と前記超伝導共振器の間に存在する、前記金属フッ化物層
をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記化合物が、4-メルカプト安息香酸、4-アミノチオフェノールおよびグリシドプロパンチオールからなるグループから選択され、前記金属フッ化物層が、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記接着層が、前記超伝導共振器の表面および前記シリコン基板の前記表面をコーティングし、前記シリコン基板の前記表面および前記超伝導共振器の前記表面が、酸化物がない、請求項16ないし18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
装置であって、
超伝導共振器と金属フッ化物層の間に配置された接着層であって、前記超伝導共振器が量子プロセッサ内のシリコン基板の上に配置される、前記接着層
を備える装置。
【請求項21】
前記接着層が、チオール官能基を有する化合物を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記化合物が、4-メルカプト安息香酸、4-アミノチオフェノールおよびグリシドプロパンチオールからなるグループから選択され、前記金属フッ化物層が、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記接着層が、前記金属フッ化物層と前記シリコン基板の間にさらに配置される、請求項20ないし22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記金属フッ化物層および前記接着層が、前記超伝導共振器を前記シリコン基板の上にカプセル封止する、請求項20ないし23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記接着層に隣接する前記超伝導共振器の表面が、酸化物がない、請求項20ないし24のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題開示は、1つまたは複数のチオール系化合物を含む接着層に関し、より詳細には、量子プロセッサの1つまたは複数の超伝導デバイスの金属フッ化物カプセル封止を強化することができる接着層に関する。
【背景技術】
【0002】
量子プロセッサは、高度に抵抗性の基板の上に堆積した1つまたは複数の超伝導共振器に接続された複数の超伝導量子ビットを備えることができる。適切なデバイス・アーキテクチャおよび設計により、量子ビット内の波動関数の寿命は、数百マイクロ秒まで改善されているが、波動関数のさらなる寿命の延長は実現されていない。波動関数自体は約5ギガヘルツ(「GHz」)の無線周波数(「RF」)で発振する。この周波数では、デバイス製造中および大気中に長く存在している間の両方で形成する酸化物内のRF光子の吸収は、量子ビットの寿命に重大な影響を及ぼし得る。例えば、基板の表面または超伝導共振器線路あるいはその両方の上に形成する酸化物層は、RFレジームにおいて強力に吸収する。
【0003】
酸化物はエッチング処理によって除去することができるが、周囲の大気中では、酸化物の再成長が急速に生じ得る。したがって、量子プロセッサの超伝導デバイスのさらなるカプセル封止を実現して、酸化物の展開を抑止し、また、RFの吸収を少なくすることができる。適切な条件の下では、酸化物層の損失正接よりも約1,000倍小さい損失正接を示す材料である金属フッ化物層の堆積は、超伝導デバイスの頑丈なカプセル封止を形成することができ、および/またはさらなる酸化を防止することができる。しかしながら、薄膜カバレッジ厚さの金属フッ化物層は、量子プロセッサの一部を露出した状態にする島を形成し得る。
【発明の概要】
【0004】
以下は、本発明の1つまたは複数の実施形態についての基本理解を提供するための概要を示したものである。この概要には、キーとなる要素または決定的な要素を識別すること、あるいは特定の実施形態の何らかの範囲または特許請求の範囲の何らかの範囲を詳細に記述することは意図されていない。この概要の唯一の目的は、後で示されるより詳細な説明の前置きとして、簡潔な形態で概念を示すことである。本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態では、量子プロセッサの1つまたは複数の超伝導デバイスの金属フッ化物カプセル封止の強化に関連し得る装置または方法あるいはその両方が説明される。
【0005】
一実施形態によれば、方法が提供される。方法は、量子プロセッサ内に含まれる超伝導共振器およびシリコン基板の上に接着層を堆積させることを含むことができる。超伝導共振器は、シリコン基板の上に配置することができる。また、接着層は、チオール官能基を有する化合物を含む。このような方法の利点は、金属フッ化物コーティングに関して、量子プロセッサ表面の接着特性を強化することであり得る。
【0006】
いくつかの例では、方法は、エッチング・プロセスによってシリコン基板から第1の酸化物層を除去することをさらに含むことができる。また、方法は、アニーリング・プロセスおよびエッチング・プロセスからなるグループから選択されるプロセスによって超伝導共振器から第2の酸化物層を除去することを含むことができる。このような方法の利点は、酸化物がない超伝導デバイス上の接着層の量子プロセッサ堆積物の表面の酸化物の再成長を抑止することであり得る。酸化物がない、とは、本明細書においては実質的に酸化物がないことを意味し得る。
【0007】
一実施形態によれば、別の方法が提供される。方法は、チオール官能基を有する化合物をシリコン基板の表面および超伝導共振器の表面に堆積させることを含むことができる。シリコン基板の表面および超伝導共振器の表面は酸化物がなくてもよい。このような方法の利点は、超伝導共振器をカプセル封止するための1つまたは複数の金属フッ化物層との接着を容易にするためのチオール官能基の利用であり得る。
【0008】
いくつかの例では、化合物は、金属フッ化物コーティングと、シリコン基板の表面および超伝導共振器の表面からなるグループから選択される少なくとも1つの表面との間の接着を促進する接着層内に含まれる。このような方法の利点は、シリコン基板上または超伝導共振器上あるいはその両方の金属フッ化物コーティングの一様な分布を可能にすることができることであり得る。
【0009】
一実施形態によれば、別の方法が提供される。方法は、金属フッ化物コーティングと接着させるために、チオール官能基を有する化合物を量子プロセッサのシリコン基板および超伝導共振器の上に堆積させることによって量子プロセッサの表面を準備することを含むことができる。このような方法の利点は、量子プロセッサ内の1つまたは複数の酸化物層の少なくとも抑止により、量子プロセッサによるRFの吸収を抑制することであり得る。
【0010】
いくつかの例では、表面の準備は、量子プロセッサの量子ビットの上に化合物を堆積させることを同じく含むことができる。また、方法は、エッチング・プロセスによって量子ビットから第3の酸化物層を除去することをさらに含むことができる。このような方法の利点は、超伝導共振器などの他の超伝導デバイスと組み合わせて、1つまたは複数の量子ビットをカプセル封止することによってRF吸収の抑制を容易にすることであり得る。
【0011】
一実施形態によれば、装置が提供される。装置は、シリコン基板の表面に配置することができる超伝導共振器の上に配置された接着層を備えることができる。超伝導共振器およびシリコン基板は、量子プロセッサ内に含めることができる。また、接着層は、チオール官能基を有する化合物を含むことができる。このような装置の利点は、量子プロセッサによるRF吸収を抑止することができる1つまたは複数の金属フッ化物との接着を強化することができることであり得る。
【0012】
いくつかの例では、装置は、超伝導共振器をカプセル封止する金属フッ化物層をさらに含むことができる。また、接着層は金属フッ化物層と超伝導共振器の間に存在する。このような装置の利点は、RF吸収が量子プロセッサ全体にわたって抑制されるよう、超伝導共振器の上への金属フッ化物層の一様なコーティングであり得る。
【0013】
一実施形態によれば、別の装置が提供される。装置は、超伝導共振器と金属フッ化物層の間に配置された接着層を備えることができる。超伝導共振器は、量子プロセッサ内のシリコン基板の上に配置することができる。このような装置の利点は、必要な金属フッ化物コーティングの厚さを増すことなく、金属フッ化物と量子プロセッサの表面の間の接着を強化することであり得る。
【0014】
いくつかの例では、化合物は、4-メルカプト安息香酸、4-アミノチオフェノールおよびグリシドプロパンチオールからなるグループから選択することができる。また、金属フッ化物層は、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。このような装置の利点は、接着層の1つまたは複数のチオール官能基を利用して金属フッ化物層と化学的に相互作用させ、それにより量子プロセッサとの接着を強化することであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、製造の第1のステージの間の、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図2】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、製造の第2のステージの間の、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図3】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、製造の第3のステージの間の、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図4】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、製造の第4のステージの間の、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図5】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物コーティングと量子プロセッサの表面の間の接着を強化することができる接着層を備える、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図6】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物コーティングと量子プロセッサの表面の間の接着を強化することができる接着層を備える、金属フッ化物でカプセル封止された非制限の例示的量子プロセッサの図である。
図7】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、1つまたは複数のチオール系接着層によって容易にすることができる、量子プロセッサの表面と金属フッ化物コーティングの間の強化された接着特性を示すことができる、非制限の例示的グラフの図である。
図8A】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、5つの異なるカプセル封止条件に対する処理の関数としてプロットされた超伝導共振器の統合ニオブ・コア・レベル強度を示すことができる、非制限の例示的グラフの図である。
図8B】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、自然酸化物状態または金属フッ化物カプセル封止あるいはその両方によって特徴付けられた超伝導共振器のニオブ・コア・レベルを示すことができる、非制限の例示的グラフの図である。
図9A】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、5つの異なるカプセル封止条件に対する処理の関数としてプロットされた基板の統合シリコン・コア・レベル強度を示すことができる、非制限の例示的グラフの図である。
図9B】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、自然酸化物状態または金属フッ化物カプセル封止あるいはその両方によって特徴付けられた基板のシリコン・コア・レベルを示すことができる、非制限の例示的グラフの図である。
図10】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物でカプセル封止された1つまたは複数の量子プロセッサの製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法の流れ図である。
図11】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物でカプセル封止された1つまたは複数の量子プロセッサの製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法の流れ図である。
図12】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物でカプセル封止された1つまたは複数の量子プロセッサの製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法の流れ図である。
図13】本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物でカプセル封止された1つまたは複数の量子プロセッサの製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明は単に例証的なものにすぎず、実施形態またはアプリケーションあるいはその両方を制限すること、あるいは実施形態の使用を制限することは意図されていない。さらに、上記背景技術または発明の概要の節で示された、表現され、または暗示された何らかの情報、あるいは発明を実施するための形態の節で示される、表現され、または暗示される何らかの情報によって拘束されることは意図されていない。
【0017】
以下、1つまたは複数の実施形態について、図面を参照して説明するが、同様の参照数表示は、すべての図面を通して同様の要素を表すべく使用されている。以下の説明では、1つまたは複数の実施形態についてのより完全な理解を提供するために、説明を目的として多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、様々な事例において、これらの特定の詳細がなくても1つまたは複数の実施形態を実践することができることは明らかである。
【0018】
超伝導デバイスの金属フッ化物カプセル封止の他の実施態様が抱えている問題に鑑みて、本開示を実現して、金属フッ化物コーティングと1つまたは複数の超伝導デバイスの間の接着を強化するための接着層を組み込むことにより、これらの問題のうちの1つまたは複数を解決することができる。有利には、本明細書において説明される1つまたは複数の実施形態は、量子プロセッサへの1つまたは複数の金属フッ化物層の接着を強化することができる。例えば、チオール系化合物を含んだ1つまたは複数の接着層を、基板、超伝導共振器または量子ビットあるいはその組合せの1つまたは複数の酸化物がない表面に堆積させることができ、それにより、基板、超伝導共振器または量子ビットあるいはその組合せをコーティングして量子プロセッサをカプセル封止することができる1つまたは複数の金属フッ化物層への後続する接着を容易にすることができる。
【0019】
本明細書において説明されているように、「堆積プロセス」という用語または「複数の堆積プロセス」という用語あるいはその両方は、1つまたは複数の第1の材料を1つまたは複数の第2の材料の上に成長させ、コーティングし、堆積させ、さもなければ移す任意のプロセスあるいはその組合せを意味することができる。堆積プロセスの例には、それらに限定されないが、物理蒸着法(「PVD」)、化学蒸着法(「CVD」)、電気化学堆積法(「ECD」)、原子層堆積法(「ALD」)、低圧化学蒸着法(「LPCVD」)、プラズマ増速化学蒸着法(「PECVD」)、高密度プラズマ化学蒸着法(「HDPCVD」)、準大気圧化学蒸着法(「SACVD」)、急速熱化学蒸着法(「RTCVD」)、イン-サイチュ・ラジカル支援堆積法、高温酸化物堆積法(「HTO」)、低温酸化物堆積法(「LTO」)、限定反応処理CVD法(「LRPCVD」)、超高真空化学蒸着法(「UHVCVD」)、有機金属化学蒸着法(「MOCVD」)、物理蒸着法(「PVD」)、化学酸化法、スパッタリング法、めっき法、蒸発法、スピン・オン・コーティング法、イオン・ビーム堆積法、電子ビーム堆積法、レーザ支援堆積法、化学溶液堆積法、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。
【0020】
本明細書において説明されているように、「エッチング・プロセス」、「複数のエッチング・プロセス」、「除去プロセス」または「複数の除去プロセス」という用語あるいはその組合せは、1つまたは複数の第1の材料を1つまたは複数の第2の材料から除去する任意のプロセスを意味することができる。エッチング・プロセスまたは除去プロセスあるいはその両方の例には、それらに限定されないが、ウェット・エッチング、ドライ・エッチング(例えば反応性イオン・エッチング(「RIE」))、化学-機械平坦化(「CMP」)、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。
【0021】
本明細書において説明されているように、「超伝導」という用語は、超伝導臨界温度で、またはそれ以下で超伝導特性を示す、アルミニウム(例えば超伝導臨界温度1.2ケルビン)またはニオブ(例えば超伝導臨界温度9.3ケルビン)などの材料を特性化することができる。さらに、当業者は、他の超伝導体材料を本明細書において説明されている様々な実施形態に使用することができることを認識するであろう。
【0022】
図1は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第1のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図1に示されているように、製造の第1のステージの間、1つまたは複数の堆積プロセスによって1つまたは複数の超伝導共振器102をシリコン基板104の上に堆積させることができる。さらに、様々な実施形態では、1つまたは複数の量子ビットをシリコン基板104の上に堆積させることができる。
【0023】
1つまたは複数の超伝導共振器102は、シリコン基板104を横切って展開し、1つまたは複数の量子ビットを接続することができる。例えば、1つまたは複数の超伝導共振器102は、量子プロセッサ100のための伝送線路として機能することができる。1つまたは複数の超伝導材料を含むことができる例示的材料には、それらに限定されないが、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、それらの合金、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。1つまたは複数の超伝導共振器102は、0.5ナノメートル(nm)以上で、かつ、1ミクロン以下である例示的厚さを有することができる(例えば、図1に示されている「Y」方向に沿って)。様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導共振器102、または、1つまたは複数の量子ビットあるいはその両方は、シリコン基板104の高度に抵抗性のシリコンの上に配置することができる。いくつかの実施形態では、シリコン基板104は、絶縁体上シリコン(「SOI」)ウェーハまたはサファイア上シリコン(「SOS」)ウェーハであってもよく、1つまたは複数の超伝導共振器102、または、1つまたは複数の量子ビットあるいはその両方を、SOIウェーハのシリコン層の上に配置することができる。
【0024】
図1に示されているように、1つまたは複数の自然酸化物層は、シリコン基板104の1つまたは複数の表面または超伝導共振器102の1つまたは複数の表面あるいはその両方に形成され得る。1つまたは複数の酸化物層は、量子プロセッサ100と周囲の環境との間の相互作用から形成し得る。例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、シリコン基板104のデバイス表面(例えば、1つまたは複数の超伝導共振器102または量子ビットあるいはその両方を配置することができる表面)に形成し得る。例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、シリコン基板104のケイ素と周囲の環境中の酸素との間の相互作用から形成された二酸化ケイ素を含むことができる。1つまたは複数の第1の酸化物層106は、0.5nm以上で、かつ、10nm以下である例示的厚さを有し得る(例えば図1に示されている「Y」方向に沿って)。さらに、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、1つまたは複数の超伝導共振器102の1つまたは複数の側面に形成し得る。例えば、1つまたは複数の超伝導共振器102はニオブを含み、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、一酸化ニオブ、二酸化ニオブ、五酸化ニオブ、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。1つまたは複数の第2の酸化物層108は、0.5nm以上で、かつ、10nm以下である例示的厚さ(例えば5nmの厚さ)を有することができる(例えば図1に示されている「Y」方向に沿って)。
【0025】
図2は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第2のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図2に示されているように、製造の第2のステージの間、1つまたは複数のエッチング・プロセスによって1つまたは複数の第1の酸化物層106をシリコン基板104から除去することができる。例えば、1つまたは複数の二酸化ケイ素層をシリコン基板104のデバイス表面から除去して、量子プロセッサ100の1つまたは複数の酸化物がない表面202を画定することができる。
【0026】
1つまたは複数の実施形態では、フッ化水素酸(「HF」)またはトリフルオロ酢酸(「TFA」)溶液を1つまたは複数のエッチング・プロセスに使用して、1つまたは複数の第1の酸化物層106をシリコン基板104から除去することができる。例えば、量子プロセッサ100は、例えば10秒以上で、かつ、1分以下の時間期間の間、10%HFを含むエッチング溶液に浸すことができる。1つまたは複数のエッチング・プロセス(例えば希薄HF溶液または希薄TFA溶液を利用する)は、1つまたは複数の第1の酸化物層106(例えば二酸化ケイ素層)を除去することができ、水素はシリコン基板104の表面でさらに終結して、一定の時間期間(例えば数分間)の間、1つまたは複数の第1の酸化物層106の再成長を抑止することができる。それにより1つまたは複数のエッチング・プロセスは、シリコン基板104の表面202を酸化物がない表面にすることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、1つまたは複数のアニーリング・プロセスによってシリコン基板104から除去することができる。例えば、シリコン基板104を含む量子プロセッサ100は、摂氏250度(℃)以上で、かつ、480℃以下の温度に加熱することができる。アニーリング・プロセスは、量子プロセッサ100の1つまたは複数の超伝導共振器102または量子ビットあるいはその両方を損傷することなく、1つまたは複数の第1の酸化物層106(例えばシリコン酸化物を含む)を除去することができる。さらに、アニーリング・プロセスは、周囲の環境から量子プロセッサ100の上に堆積した水を除去することができる。
【0028】
図3は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第3のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図3に示されているように、製造の第3のステージの間、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって1つまたは複数の第2の酸化物層108を1つまたは複数の超伝導共振器102から除去することができる。例えば、1つまたは複数のニオブ酸化物層を1つまたは複数の超伝導共振器102の1つまたは複数の表面から除去して、量子プロセッサ100の1つまたは複数の酸化物のない表面202をさらに画定することができる。
【0029】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去するエッチング・プロセスと同じエッチング・プロセスの間に除去することができる。例えば、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去することができる希薄HFエッチング溶液によってエッチングしている間に除去することができる。さらに、エッチング・プロセスは、1つまたは複数の超伝導共振器102上の1つまたは複数の第2の酸化物層108の再成長を抑止するために、酸素分圧が約1パート・パー・ミリオンの窒素グローブ・ボックス内で実施することができる。様々な実施形態では、エッチング・プロセスは、量子プロセッサ100の1つまたは複数の量子ビット(例えば、1つまたは複数の超伝導共振器102に結合することができ、またはシリコン基板104の上に配置することができる、あるいはその両方)から1つまたは複数の酸化物層(例えばニオブ酸化物)をさらに除去することができる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、アニーリング・プロセス(例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去することができるエッチング・プロセスの後に実施される)によって除去することができる。例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去するエッチング・プロセスに引き続いて、1つまたは複数の第1の酸化物層106の再成長を防止することができる真空システムに量子プロセッサ100を挿入することができる。さらに、一定の時間期間(例えば1分以下の時間期間)の間、真空システム内で量子プロセッサ100をアニールすることができる。例えば、1つまたは複数の超伝導共振器102を含む量子プロセッサ100は、摂氏250度(℃)以上で、かつ、480℃以下の温度に加熱することができる。アニーリング・プロセスは、量子プロセッサ100の1つまたは複数の超伝導共振器102または量子ビットあるいはその両方を損傷することなく、1つまたは複数の第2の酸化物層108(例えば、五酸化ニオブを含む)を除去することができる。さらに、アニーリング・プロセスは、周囲の環境から量子プロセッサ100の上に堆積した水を除去することができる。
【0031】
様々な実施形態では、本明細書において説明されている実施形態によれば、量子プロセッサ100に1つまたは複数のエッチング・プロセスおよびアニーリング・プロセスを施すことができる。例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって除去することができ、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方は、1つまたは複数の第2の酸化物層108を同じく除去することができる。別の例では、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって除去することができ、1つまたは複数の第2の酸化物層108は、1つまたは複数の他のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって除去することができる。1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方の結果として、量子プロセッサ100(例えば、シリコン基板104、1つまたは複数の超伝導共振器102または1つまたは複数の量子ビットあるいはその組合せを備える)のデバイス表面を酸化物がない表面202にすることができる(例えば図3に示されているように)。
【0032】
1つまたは複数の自然酸化物層(例えば、第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)は、量子プロセッサ100の共振周波数であり得る5GHzでRFエネルギーを強力に吸収することができる。酸化物層が除去されると、RFはもはや酸化物によって吸収されず、1つまたは複数の超伝導共振器102の品質係数(「Q」)を大きくすることができ、それによって量子プロセッサ100の量子ビット波動関数の緩和時間(「T1」または「T2」あるいはその両方)を長くすることができる。
【0033】
図4は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第4のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図4に示されているように、製造の第4のステージの間、1つまたは複数の接着層402を量子プロセッサ100の1つまたは複数の酸化物がない表面202に堆積させることができる。
【0034】
例えば、シリコン基板104、1つまたは複数の超伝導共振器102、または、1つまたは複数の量子ビットあるいはその組合せの上に1つまたは複数の接着層402を堆積させることができる。例えば、酸化物層(例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)が1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって除去された量子プロセッサ100の表面に1つまたは複数の接着層402を堆積させることができる。1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の接着層402は、1つまたは複数の超伝導共振器102または量子ビットあるいはその両方をシリコン基板104の上にカプセル封止することができる。
【0035】
様々な実施形態では、1つまたは複数の接着層402は、1つまたは複数のチオール官能基を有する1つまたは複数の有機化合物を含むことができる。1つまたは複数の接着層402内に含めることができる例示的チオール系化合物には、それらに限定されないが、4-メルカプト安息香酸(「MBA」)、4-アミノチオフェノール、グリシドプロパンチオール、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。1つまたは複数の接着層402の1つまたは複数のチオール系化合物は、量子プロセッサ100の酸化物がない表面202に付着し得るチオール末端基を含むことができる。さらに、1つまたは複数の実施形態では、製造の第4のステージにおける堆積は、有機チオール系化合物の単分子膜を堆積させることができる。1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100の構成要素(例えば、シリコン基板104、超伝導共振器102または量子ビットあるいはその組合せ)の再酸化を防止することができ、および/または量子プロセッサ100の上に堆積される1つまたは複数の後続する層の接着を強化することができる。
【0036】
図5は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第5のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図5に示されているように、製造の第5のステージの間、1つまたは複数の堆積プロセスによって1つまたは複数の金属フッ化物層502を、1つまたは複数の接着層402の上に堆積させることができる。
【0037】
例えば、熱蒸発によって1つまたは複数の金属フッ化物層502を1つまたは複数の接着層402の上に堆積させることができる。例えば、1つまたは複数の金属フッ化物層502は一致して蒸発することができる(例えば、分子として蒸発または昇華する)。様々な実施形態では、真空システム(例えば、真空システムは1つまたは複数の酸化物層の再成長を防止することができる)内で、1つまたは複数の堆積プロセス(例えば熱蒸発)によって1つまたは複数の金属フッ化物層502を、1つまたは複数の接着層402の上に堆積させることができる。1つまたは複数の金属フッ化物層502を含むことができる例示的材料には、それらに限定されないが、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケル、フッ化銅、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。さらに、1つまたは複数の金属フッ化物層502は、1ナノメートル(nm)以上で、かつ、30nm以下である例示的厚さを有することができる(例えば図5に示されている「Y」方向に沿って)。様々な実施形態では、1つまたは複数の金属フッ化物層502は、1つまたは複数の超伝導共振器102をカプセル封止することができ、量子プロセッサ100の1つまたは複数の量子ビットをカプセル封止することができ、シリコン基板104の酸化物がない表面202をコーティングすることができ、1つまたは複数の酸化物層(例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)の再成長を抑止することができ、量子プロセッサ100によるRFの吸収を抑制することができ(例えば、1つまたは複数のカプセル封止またはコーティングあるいはその両方によって)、および/またはそれらの組合せを実施することができる。
【0038】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の接着層402は、1つまたは複数の金属フッ化物層502の連続または準連続コーティングの達成を容易にすることができる。例えば、1つまたは複数の金属フッ化物層502がフッ化カルシウムを含む量子プロセッサ100のx線光電子分光学は、1つまたは複数の超伝導共振器102の実質的なカバレッジを示すことができるフッ化カルシウムの10nmに続いて、シリコン2pコア・レベルのほぼ完全な抑制を示すことができる。さらに、x線光電子分光学は、1つまたは複数の接着層(例えば「MBA」)を利用すると、ニオブ3dコア・レベルが劇的に低くなることを示すことができ、これは、金属フッ化物層502の実質的に改善された表面カバレッジを示すことができる(例えば、接着層402がない製造方法と比較して)。したがって、1つまたは複数の接着層402は、シリコン基板104の酸化物がない表面202、1つまたは複数の超伝導共振器102または量子ビットあるいはその組合せへの1つまたは複数の金属フッ化物層502の接着を強化することができる。また、1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100上の1つまたは複数の金属フッ化物層502の一様な、あるいは実質的に一様な成長を可能にすることができる。
【0039】
様々な実施形態では、1つまたは複数の金属フッ化物層502は、量子プロセッサ100に対して自然である(例えば、周囲の環境との相互作用によって形成される)1つまたは複数の酸化物層(例えば、第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)の吸収値よりも最大で約1,000倍弱い5GHz RFの吸収値によって特徴付けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の金属フッ化物層502(例えばフッ化カルシウムなど)は、水に対して不溶性であり、大気中のガスに対して不浸透性であり、または量子プロセッサ100を取り囲んでいる周囲の環境における酸化に対して抵抗力があり、あるいはその組合せであり得る。したがって、自然酸化物(例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)を除去し、また、1つまたは複数の超伝導共振器102をカプセル封止する(例えば、1つまたは複数の接着層402または金属フッ化物層502あるいはその両方で)ことにより、1つまたは複数の超伝導共振器102の品質係数を大きくすることができ、および/またはそれにより1つまたは複数の量子ビットの動作を改善することができる。
【0040】
図6は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、製造の第5のステージの間の、非制限の例示的量子プロセッサ100の図を示したものであり、1つまたは複数の超伝導量子ビット602を備えている。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図6に示されているように、量子プロセッサ100は、シリコン基板104の上に配置された、または1つまたは複数の超伝導共振器102に動作可能に結合された、あるいはその両方である1つまたは複数のジョセフソン接合を備えることができる、1つまたは複数の超伝導量子ビット602を備えることができる。
【0041】
様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導量子ビット602から1つまたは複数の酸化物を除去することができ(例えば、本明細書において説明されている製造の第2のステージまたは第3のステージあるいはその両方によって)、1つまたは複数の超伝導量子ビット602の上に1つまたは複数の接着層402をさらに堆積させることができ(例えば、本明細書において説明されている製造の第4のステージによって)、および/または1つまたは複数の超伝導量子ビット602の上に1つまたは複数の金属フッ化物層502をさらに堆積させることができる(例えば、図6に示されている、本明細書において説明されている製造の第5のステージによって)。それにより1つまたは複数の接着層402または金属フッ化物層502あるいはその両方は、1つまたは複数の超伝導量子ビット602をシリコン基板104の上にさらにカプセル封止することができる。
【0042】
図7は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、量子プロセッサ100の酸化物がない表面202への1つまたは複数の金属フッ化物層502の接着を強化するための、1つまたは複数の接着層402を実現することの有効性を示すことができる、非制限の例示的グラフ700の図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図7に示されているように、第1の線702は、厚さ5nmのフッ化カルシウムの層を備える、金属フッ化物でカプセル封止された量子プロセッサを特性化することができる。同じく図7に示されているように、第2の線704は、フッ化カルシウムおよびMBAを含む厚さ10nmのカプセル封止を有する量子プロセッサ100の実施形態を特性化することができる。
【0043】
グラフ700は、シリコン基板104の上に直接堆積したフッ化カルシウム(例えば厚さ5nm)と、MBAの単分子膜の上に堆積したフッ化カルシウム(例えば厚さ10nm)との比較を示すことができる。シリコン2pコア・レベルは、第1の線702の中にはっきりと見ることができ、それによってフッ化カルシウム・コーティングの不完全なカバレッジを示している。それとは対照的に、第2の線704は、MBA単分子膜を組み込むことにより、シリコン2pコア・レベルよりも150倍を超えて低くすることができることを立証している。Si 2pコア・レベルからの光電子の2nm平均自由経路が与えられると、微小残留ピークをフッ化カルシウムの一様な層に対して期待することができる。グラフ700に示されている実験的証拠は、MBA単分子膜は、フッ化カルシウムをシリコン基板104上で成長させることができる(例えば一様に)ことを示すことができる。
【0044】
図8Aまたは図8Bあるいはその両方は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、量子プロセッサ100の酸化物がない表面への1つまたは複数の金属フッ化物層502の接着を強化するための、1つまたは複数の接着層402を実現することの有効性をさらに示すことができる、非制限の例示的グラフ800またはグラフ802あるいはその両方を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図8Aは、酸化物を除去し、また、接着層402(例えばMBA)を堆積させた後の金属フッ化物(例えばフッ化カルシウム)カバレッジの不断の改善を示す、5つの異なる条件に対する処理の関数としてプロットされた、1つまたは複数の超伝導共振器102の統合ニオブ・コア・レベル強度を示したものである。図8Bは、1つまたは複数の超伝導共振器102のニオブからのニオブ3dコア・レベルを、その自然酸化物(例えば、第3の線804によって表されている)、および酸化物が熱によって除去され、また、超伝導共振器102が5nmのフッ化カルシウム(例えば、第4の線806によって表されている)、10nmのフッ化カルシウム(例えば、第5の線808によって表されている)、MBAを有する5nmのフッ化カルシウム(例えば、第6の線810によって表されている)またはMBAを有する10nmのフッ化カルシウム(例えば、第7の線812によって表されている)あるいはその組合せで覆われた後続する事例と共に示したものである。
【0045】
図9Aまたは図9Bあるいはその両方は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、量子プロセッサ100の酸化物がない表面への1つまたは複数の金属フッ化物層502の接着を強化するための、1つまたは複数の接着層402を実現することの有効性をさらに示すことができる、非制限の例示的グラフ900またはグラフ902あるいはその両方を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。図9Aは、酸化物を除去し、また、接着層402(例えばMBA)を堆積させた後の金属フッ化物(例えばフッ化カルシウム)カバレッジの不断の改善を示す、4つの異なる条件に対する処理の関数としてプロットされた、シリコン基板104の統合シリコン・コア・レベル強度を示したものである。図9Bは、シリコン基板104からのシリコン2pコア・レベルを、その自然酸化物(例えば、第8の線904によって表されている)、および酸化物が熱によって除去され、また、シリコン基板が5nmのフッ化カルシウム(例えば、第9の線906によって表されている)、MBAを有する5nmのフッ化カルシウム(例えば、第10の線908によって表されている)またはMBAを有する10nmのフッ化カルシウム(例えば、第11の線910によって表されている)あるいはその組合せで覆われた後続する事例と共に示したものである。
【0046】
図10は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物を使用した1つまたは複数の超伝導デバイスのカプセル封止を容易にすることができる、1つまたは複数の接着層402を備えることができる1つまたは複数の量子プロセッサ100の製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法1000の流れ図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。
【0047】
1002で、方法1000は、シリコン基板104の上に1つまたは複数の超伝導共振器102を堆積させることを含むことができる。本明細書において説明されているように、1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方は、量子プロセッサ100内に含めることができる。さらに、1つまたは複数の超伝導量子ビット602(例えば、1つまたは複数のジョセフソン接合を含む)をシリコン基板104の上に配置することができ、および/または1つまたは複数の超伝導共振器102に結合することができる。様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導共振器102は、シリコン基板104のデバイス表面を横切って、超伝導量子ビット602のうちの1つまたは複数を接続することができる。
【0048】
1004で、方法1000は、量子プロセッサ100内に含めることができる1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方の上に、1つまたは複数の接着層402を堆積させることを含むことができ、1つまたは複数の超伝導共振器102はシリコン基板104の上に配置することができ、また、1つまたは複数の接着層402は、チオール官能基を有する化合物を含むことができる。本明細書において説明されている様々な実施形態によれば、1つまたは複数の接着層402が堆積される量子プロセッサ100の表面は酸化物がなくてもよい(例えば酸化物がない表面202)。さらに、1つまたは複数の接着層402の1つまたは複数の化合物は、量子プロセッサ100の酸化物がない表面202に付着し得る1つまたは複数のチオール末端基を含むことができる。1つまたは複数の接着層402内に含めることができる例示的化合物には、それらに限定されないが、MBA、4-アミノチオフェノール、グリシドプロパンチオール、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。
【0049】
様々な実施形態では、1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100の1つまたは複数の構成要素(例えば、シリコン基板104、1つまたは複数の超伝導共振器102、または1つまたは複数の超伝導量子ビット602あるいはその組合せ)と金属フッ化物コーティングとの間の接着を強化することができる。例えば、本明細書において説明されているように、金属フッ化物コーティングは、量子プロセッサ100上の1つまたは複数の酸化物の再成長を防止することができ、および/または1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100にわたる金属フッ化物コーティングの一様な、あるいはほぼ一様な分布を可能にすることができる。
【0050】
図11は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物を使用した1つまたは複数の超伝導デバイスのカプセル封止を容易にすることができる、1つまたは複数の接着層402を備えることができる1つまたは複数の量子プロセッサ100の製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法1100の流れ図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。
【0051】
1102で、方法1100は、シリコン基板104の上に1つまたは複数の超伝導共振器102を堆積させることを含むことができる。本明細書において説明されているように、1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方は、量子プロセッサ100内に含めることができる。さらに、1つまたは複数の超伝導量子ビット602(例えば、1つまたは複数のジョセフソン接合を含む)をシリコン基板104の上に配置することができ、および/または1つまたは複数の超伝導共振器102に結合することができる。様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導共振器102は、シリコン基板104のデバイス表面を横切って、超伝導量子ビット602のうちの1つまたは複数を接続することができる。例えば、1102における堆積は、本明細書において説明されている製造の第1のステージに従って実施することができる。
【0052】
1104で、方法1100は、1つまたは複数のエッチング・プロセスによってシリコン基板104から1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去することを含むことができる。例えば、1104における1つまたは複数の第1の酸化物層106の除去は、本明細書において説明されている製造の第2のステージに従って実施することができる。例えば、1つまたは複数の第1の酸化物層106はシリコン酸化物を含むことができ、および/または希薄HFまたは希薄TFAあるいはその両方の溶液を使用して除去することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の第1の酸化物層106は、量子プロセッサ100を250℃以上で、かつ、480℃以下の温度に加熱するアニーリング・プロセスによって除去することができる。1つまたは複数の第1の酸化物層106を除去することにより、量子プロセッサ100の上に1つまたは複数の酸化物がない表面202を画定することができる。
【0053】
1106で、方法1100は、アニーリング・プロセスまたはエッチング・プロセスあるいはその両方からなるグループから選択されるプロセスによって1つまたは複数の超伝導共振器102から1つまたは複数の第2の酸化物層108を除去することを含むことができる。例えば、1106における1つまたは複数の第2の酸化物層108の除去は、本明細書において説明されている製造の第3のステージに従って実施することができる。例えば、1つまたは複数の第2の酸化物層108は1つまたは複数のニオブ酸化物を含むことができ、また、量子プロセッサ100を250℃以上で、かつ、480℃以下の温度に加熱することができるアニーリング・プロセスによって除去することができる。方法1100の1つまたは複数の実施形態では、1104および1106における酸化物層の除去は、いずれも単一のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって実施することができる。1つまたは複数の第2の酸化物層108を除去することにより、量子プロセッサ100の上に1つまたは複数の酸化物がない表面202をさらに画定することができる。さらに、様々な実施形態では、シリコン基板104の上に配置された1つまたは複数の超伝導量子ビット602から酸化物層を除去することができる(例えば、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって)。
【0054】
1108で、方法1100は、量子プロセッサ100内に含めることができる1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方の上に、1つまたは複数の接着層402を堆積させることを含むことができ、1つまたは複数の超伝導共振器102はシリコン基板104の上に配置することができ、また、1つまたは複数の接着層402は、チオール官能基を有する化合物を含むことができる。例えば、1108における堆積は、本明細書において説明されている製造の第4のステージに従って実施することができる。例えば、量子プロセッサ100の表面は酸化物がなくてもよい(例えば酸化物がない表面202)。さらに、1つまたは複数の接着層402の1つまたは複数の化合物は、量子プロセッサ100の酸化物がない表面202に付着し得る1つまたは複数のチオール末端基を含むことができる。1つまたは複数の接着層402内に含めることができる例示的化合物には、それらに限定されないが、MBA、4-アミノチオフェノール、グリシドプロパンチオール、それらの組合せおよび/または等々を含むことができる。
【0055】
1110で、方法1100は、1つまたは複数の超伝導共振器102をカプセル封止するために、1つまたは複数の接着層402の上に1つまたは複数の金属フッ化物層502を堆積させることを含むことができ、1つまたは複数の金属フッ化物層502は、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルまたはフッ化銅あるいはその組合せからなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。例えば、1110における堆積は、本明細書において説明されている製造の第5のステージに従って実施することができる。例えば、1つまたは複数の金属フッ化物層502は、量子プロセッサ100の1つまたは複数の酸化物がない表面202を覆うことができ、それにより1つまたは複数の酸化物層の再成長を抑止することができ、また、量子プロセッサ100によるRF吸収を抑制することができる。
【0056】
図12は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物を使用した1つまたは複数の超伝導デバイスのカプセル封止を容易にすることができる、1つまたは複数の接着層402を備えることができる1つまたは複数の量子プロセッサ100の製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法1200の流れ図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。
【0057】
1202で、方法1200は、シリコン基板104の上に1つまたは複数の超伝導共振器102を堆積させることを含むことができる。本明細書において説明されているように、1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方は、量子プロセッサ100内に含めることができる。さらに、1つまたは複数の超伝導量子ビット602(例えば、1つまたは複数のジョセフソン接合を含む)をシリコン基板104の上に配置することができ、および/または1つまたは複数の超伝導共振器102に結合することができる。様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導共振器102は、シリコン基板104のデバイス表面を横切って、超伝導量子ビット602のうちの1つまたは複数を接続することができる。例えば、1202における堆積は、本明細書において説明されている製造の第1のステージに従って実施することができる。
【0058】
1204で、方法1200は、チオール官能基を有する1つまたは複数の化合物をシリコン基板104の1つまたは複数の表面、および1つまたは複数の超伝導共振器102の1つまたは複数の表面に堆積させることを含むことができ、シリコン基板104の1つまたは複数の表面、または、1つまたは複数の超伝導共振器102の1つまたは複数の表面あるいはその両方は酸化物がなくてもよい。例えば、1204における堆積は、本明細書において説明されている製造の第2のステージ、第3のステージまたは第4のステージあるいはその組合せに従って実施することができる。例えば、1つまたは複数の酸化物層(例えば、第1の酸化物層106または第2の酸化物層108あるいはその両方)をシリコン基板104または1つまたは複数の超伝導共振器102あるいはその両方から除去して、1つまたは複数の酸化物がない表面202を画定することができる。様々な実施形態では、酸化物層の除去は、本明細書において説明されているように、1つまたは複数のエッチング・プロセスまたはアニーリング・プロセスあるいはその両方によって実施することができる。さらに、1つまたは複数の接着層402は、1つまたは複数の堆積プロセスによって1つまたは複数の酸化物がない表面202に堆積させることができ、1つまたは複数の化合物のチオール末端基は、1つまたは複数の酸化物がない表面202に付着することができ、および/または量子プロセッサ100の上に引き続いて堆積される1つまたは複数の金属フッ化物層とのさらなる接着を促進することができる。
【0059】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100の1つまたは複数の構成要素(例えば、シリコン基板104、1つまたは複数の超伝導共振器102、または1つまたは複数の超伝導量子ビット602あるいはその組合せ)と金属フッ化物コーティングとの間の接着を強化することができる。例えば、本明細書において説明されているように、金属フッ化物コーティングは、量子プロセッサ100上の1つまたは複数の酸化物の再成長を防止することができ、および/または1つまたは複数の接着層402は、量子プロセッサ100にわたる金属フッ化物コーティングの一様な、あるいはほぼ一様な分布を可能にすることができる。
【0060】
図13は、本明細書において説明されている1つまたは複数の実施形態による、金属フッ化物を使用した1つまたは複数の超伝導デバイスのカプセル封止を容易にすることができる、1つまたは複数の接着層402を備えることができる1つまたは複数の量子プロセッサ100の製造を容易にすることができる、非制限の例示的方法1300の流れ図を示したものである。本明細書において説明されている他の実施形態に使用される同様の要素の反復説明は、簡潔にするために省略される。
【0061】
1302で、方法1300は、シリコン基板104の上に1つまたは複数の超伝導共振器102を堆積させることを含むことができる。本明細書において説明されているように、1つまたは複数の超伝導共振器102またはシリコン基板104あるいはその両方は、量子プロセッサ100内に含めることができる。さらに、1つまたは複数の超伝導量子ビット602(例えば、1つまたは複数のジョセフソン接合を含む)をシリコン基板104の上に配置することができ、および/または1つまたは複数の超伝導共振器102に結合することができる。様々な実施形態では、1つまたは複数の超伝導共振器102は、シリコン基板104のデバイス表面を横切って、超伝導量子ビット602のうちの1つまたは複数を接続することができる。例えば、1302における堆積は、本明細書において説明されている製造の第1のステージに従って実施することができる。
【0062】
1304で、方法1300は、金属フッ化物コーティングと接着させるために、チオール官能基を有する化合物を量子プロセッサ100のシリコン基板104または超伝導共振器102あるいはその両方の上に堆積させることによって量子プロセッサの表面を準備することを含むことができる。例えば、1304における準備は、本明細書において説明されている製造の第2のステージ、第3のステージまたは第4のステージあるいはその組合せに従って実施することができる。例えば、様々な実施形態では、化合物は、量子プロセッサ100の酸化物がない表面202(例えば、量子プロセッサ100のシリコン基板104、超伝導共振器102または超伝導量子ビット602あるいはその組合せのうちの1つまたは複数の部分をコーティングしている)に堆積した1つまたは複数の接着層402内に含めることができる。さらに、金属フッ化物コーティングは、シリコン基板104上の1つまたは複数の超伝導共振器102または超伝導量子ビット602あるいはその両方を保護し、またはカプセル封止し、あるいはその両方のために1つまたは複数の接着層402の上に堆積させることができる。様々な実施形態では、1つまたは複数の接着層402の1つまたは複数の化合物は、量子プロセッサ100上の金属フッ化物コーティングの接着またはカバレッジあるいはその両方を強化することができる。
【0063】
別の実施形態では、方法が開示される。方法は、量子プロセッサ内に含まれる超伝導共振器およびシリコン基板の上に金属フッ化物層を堆積させることを含み、超伝導共振器はシリコン基板の上に配置され、また、金属フッ化物層は超伝導共振器をコーティングする。
【0064】
いくつかのこのような実施形態では、金属フッ化物層は、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。
【0065】
いくつかのこのような実施形態では、方法は、金属フッ化物層を堆積させる前に、シリコン基板および超伝導共振器から酸化物層を除去することをさらに含むことができる。いくつかのこのような実施形態では、量子プロセッサは、シリコン基板の上に配置され、また、超伝導共振器に結合された量子ビットをさらに備えることができる。この場合、酸化物層を除去することは、金属フッ化物層を堆積させる前に、量子ビットから酸化物層を除去することをさらに含むことができる。
【0066】
いくつかのこのような実施形態では、方法は、一定の時間期間の間、酸化物層の再成長をさらに抑止するエッチング・プロセスによって、シリコン基板から酸化物層を除去することをさらに含むことができる。エッチング・プロセスは、フッ化水素酸およびトリフルオロ酢酸からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むエッチング溶液に、量子プロセッサを浸すことを含むことができる。方法は、アニーリング・プロセスおよびエッチング・プロセスからなるグループから選択される少なくとも1つのプロセスによって、超伝導共振器から第2の酸化物層を除去することをさらに含むことができる。アニーリング・プロセスは、摂氏250度以上で、かつ、摂氏480度以下の温度で実施することができる。いくつかのこのような実施形態では、超伝導共振器はニオブを含むことができ、また、第2の酸化物層は、一酸化ニオブ、二酸化ニオブおよび五酸化ニオブからなるグループから選択される少なくとも1つの酸化物部材を含むことができる。いくつかのこのような実施形態では、金属フッ化物層は、酸化物層の無線周波数吸収値未満および第2の酸化物層の無線周波数吸収値未満である無線吸収値によって特徴付けることができる。
【0067】
別の実施形態では、方法が開示される。方法は、超伝導共振器の品質係数を改善するために、量子プロセッサの表面から酸化物層を除去すること、およびシリコン基板の上に配置された超伝導共振器を金属フッ化物層でコーティングすることを含み、超伝導共振器およびシリコン基板は量子プロセッサの表面を形成する。
【0068】
いくつかのこのような実施形態では、金属フッ化物層は、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。
【0069】
いくつかのこのような実施形態では、方法は、一定の時間期間の間、酸化物層の再成長をさらに抑止するエッチング・プロセスによってシリコン基板から酸化物層を除去することをさらに含むことができる。いくつかのこのような実施形態では、方法は、酸化物層の再成長を防止するために、量子プロセッサを一定の時間期間内で真空環境に挿入することをさらに含むことができる。いくつかのこのような実施形態では、方法は、アニーリング・プロセスおよびエッチング・プロセスからなるグループから選択される少なくとも1つのプロセスによって、超伝導共振器から第2の酸化物層を除去することをさらに含むことができる。
【0070】
別の実施形態では、量子プロセッサが開示される。量子プロセッサは、超伝導共振器とシリコン基板の表面とをコーティングする金属フッ化物層を備え、超伝導共振器はシリコン基板の表面に配置される。金属フッ化物層は、シリコン基板の表面に配置され、また、超伝導共振器に結合された量子ビットをさらにコーティングすることができる。金属フッ化物層は、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケルおよびフッ化銅からなるグループから選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、超伝導共振器、およびシリコン基板の表面は酸化物がなくてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、金属フッ化物層は、1ナノメートル以上で、かつ、30ナノメートル以下の厚さを有することができる。
【0073】
さらに、「または(あるいは)」という用語には、排他的な「または(あるいは)」ではなく、包含的な「または(あるいは)」を意味することが意図されている。すなわち、そうではないことが明記されていない限り、あるいは文脈から明らかではない限り、「XはAまたはBを使用する」には、何らかの自然包含順列を意味することが意図されている。すなわち、XがAを使用する場合、XがBを使用する場合、あるいはXがAおよびBの両方を使用する場合、「XはAまたはBを使用する」は、上記の実例のすべての下で満たされる。さらに、主題明細書および添付の図面の中で使用されている冠詞「a」および「an」は、一般に、そうではないことが明記されていない限り、あるいは単数形を指していることが文脈から明らかではない限り、「1つまたは複数」を意味するべく解釈されたい。本明細書において使用されているように、「例」という用語または「例示的」という用語あるいはその両方は、例、実例または例証として働くことを意味するべく利用されている。不審を回避するために、本明細書において開示されている主題はこのような例によって制限されない。さらに、「例」または「例示的」あるいはその両方として本明細書において説明されている任意の態様または設計は、他の態様または設計に優る好ましいもの、あるいは有利なものとして必ずしも解釈されるべきではなく、また、当業者に知られている等価例示構造および技術を予め排除することを意味しない。
【0074】
当然、本開示を説明する目的で、構成要素、製品または方法あるいはその組合せの想定可能なすべての組合せを説明することは不可能であるが、当業者は、本開示の多くの他の組合せおよび順列が可能であることを認識することができる。さらに、「備える」は、使用されている場合、特許請求の範囲ではつなぎ語として解釈されるため、「含む」、「有する」、「所有する」、等々という用語には、これらの用語が詳細な説明、特許請求の範囲、付録および図面の中で使用されている範囲まで、「備える」という用語と同様の仕方で包含的であることが意図されている。様々な実施形態についての説明は、例証の目的で示されたものであるが、網羅的であること、あるいは開示されている実施形態に限定されることは意図されていない。当業者には、説明されている実施形態の範囲および思想から逸脱することなく、多くの修正および変更が明らかであろう。本明細書において使用されている専門用語は、実施形態の原理、実際的なアプリケーション、または市場で見出される技術に優る技術的改善を最も良好に説明するべく選択されており、あるいは本明細書において開示されている実施形態についての他の当業者による理解を可能にするべく選択されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13