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特許7546667湾曲された基板薄板にホログラムを形成する方法、ホログラムを有する、得られる基板薄板及び当該基板薄板を含む薄板複合部材、特に車両用ウィンドウ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】湾曲された基板薄板にホログラムを形成する方法、ホログラムを有する、得られる基板薄板及び当該基板薄板を含む薄板複合部材、特に車両用ウィンドウ
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/20 20060101AFI20240830BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240830BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240830BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20240830BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240830BHJP
【FI】
G03H1/20
G02B5/32
B29C59/02 Z
B29C33/38
B32B7/023
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022526220
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020080107
(87)【国際公開番号】W WO2021089362
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】102019130021.5
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ゾルヒェンバッハ・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ピンスカー・マルティン
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-116561(JP,A)
【文献】特開平10-274747(JP,A)
【文献】特開2000-019936(JP,A)
【文献】特開平10-207329(JP,A)
【文献】特開平04-225384(JP,A)
【文献】特開2008-111969(JP,A)
【文献】特開2001-075288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/20
G02B 5/32
B29C 59/02
B29C 33/38
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲された基板薄板(1)にホログラムを形成するための方法であって、以下のステップ:
-実幾何形状が所定の目標幾何形状に対する公差偏差の影響を受ける基板表面(2)を有する湾曲された基板薄板(1)を提供するステップ(S1)と、
-所定の目標幾何形状へ変形されているか、又は該所定の目標幾何形状からの所定の偏差をもって予備成形されている、押圧作用によって変形可能なクッション表面(6)を有する膨張可能なクッション(5)を提供するステップ(S2)と、
-フレキシブルな薄層の形態でホログラフィーマスタ(4)を変形可能なクッション表面(6)へ設けるステップ(S3)と、
-ホログラム記録層(3)を基板表面(2)へ設けるステップ(S4)と、
-実幾何形状へ変形されたクッション表面(6)を用いて、ホログラフィーマスタ(4)をホログラム記録層(3)へ押圧又は接触させ、これにより、これらの間でホログラム記録層(3)の一定の所定の層厚をもって連続した面接触部を得るステップ(S5)と、
-ホログラフィーマスタ(4)によって規定されるホログラムをホログラム記録層(3)に形成するためにコヒーレント光で該ホログラム記録配置においてホログラム記録層(3)を露光させるステップ(S7)と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
-クッション(5)を、該クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)と共にホログラム記録層(3)へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させること(S6)は、予備成形されたクッション表面(6)が、変形可能なクッション表面(6)にわたって一定な押圧力によって、当該基板表面に設けられたホログラム記録層(3)を有するか、若しくは有さない基板表面(2)に対して押圧されることによってもたらされるか、又は補助されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-クッション(5)を、該クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)と共にホログラム記録層(3)へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させること(S6)は、クッション(5)が背側で、その背側(8)にわたって均等に分配された力で、基板表面に設けられたホログラム記録層(3)を有して、若しくは有さずに基板表面(2)へ押圧されることによってもたらされるか、又は補助されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
膨張可能なクッション(5)が、流体で満たされているとともに、クッション(5)内の流体圧力を調整するための少なくとも1つの圧力調整弁(7)を含み、変形可能なクッション表面(6)が目標幾何形状を有するか、又は該目標幾何形状からの所定の偏差を有する所定の第1の流体圧力(P1)で提供され、
-予備成形されたクッション表面(6)が、クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)とのクッション(5)の接触時、又は接触後に、所定の第2の流体圧力(P2)へのクッション(5)における流体圧力変化によって実幾何形状へもたらされる(S6)ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-所定の第1の流体圧力(P1)が、生じている周囲圧力(Pat)に対して負圧又は過圧であり、所定の第2の流体圧力(P2)が生じている周囲圧力(Pat)に相当することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
膨張可能なクッション(5)が、流体と、その中に含まれるか、又は分配された固体材料(10)とで満たされており、該固体材料が流体の存在時には任意に変形可能でありクッション(5)からの流体排出時には硬化してその際に受けた形状を維持し、-予備成形されたクッション表面(6)を有するクッション(5)が、クッション(5)における所定の流体圧力において提供され、
-クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)を有するか、若しくは有さないクッション(5)を、基板表面(2)に設けられたホログラム記録層(3)を有するか、若しくは有さない基板表面(2)へ押圧することで、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させ(S6)、
-予備成形可能なクッション表面(6)が、これにより受ける形状を、クッション(5)から流体を排出する(S6’)ことで保持し、上記その他の方法ステップ(S1~S5,S7)の実施時に維持される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
予備成形可能なクッション表面(6)の実幾何形状への変形のステップ(S6)、及びまたこれにつづくクッション(5)からの流体排出(S6’)において、
-基板表面(2)へのクッション(5)の押圧が、背側でクッション(5)へ力を加えることでもたらされるか、又は補助される
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ホログラムを形成する方法に関するものであり、このとき、特に、薄板(プレート、パネル)複合部材、例えば車両用ウィンドウにおける2つの湾曲された薄板間でホログラムを統合すること、及びこれを備える車両に向けられている。車両は、任意の陸上車両、航空機又は船舶、特に原動機付き車両であってよい。ホログラムは、特にホログラフィック式の光学的な要素であってよく、当該要素は、例えば、視野領域表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)の要素として、車両のフロントガラスに統合されるものとなっている。
【背景技術】
【0002】
車両における視野領域表示装置は、特にヘッドアップディスプレイ(HUD)という名称で知られている。これにより、表示ユニット、例えば速度制限又は他のナビゲーション操作指示及び車両操作指示についての表示が、仮想的な表示画像の形態で、運転者によって観察される車両前方の現実の周辺画像へ重ねられる。このために、通常、視野領域表示装置は、インストルメントパネルに組み込まれた投影ユニットを含んでおり、当該投影ユニットは、所望の表示内容を有する投影光ビーム束を生成し、当該投影光ビーム束を、車両のフロントガラスへ投影し、当該フロントガラスから運転者へ向けて反射する。
【0003】
前方に位置する道路と読み取るべき表示の間で視点を切り替える時の運転者の眼の適合を助けるために、このとき、仮想的な表示画像は、典型的には車両からある程度離して生成される。当該画像特性及び他の画像特性を得るために、自動車分野についてのヘッドアップディスプレイにおける投影ユニットは、古典的には、凹状のミラーを用いて構成されているが、当該ミラーの大きさは、仮想的な表示画像の画像及びこれにより覆われることが可能な視野(Field-of-View、FoVとも呼ばれる)の大きさに合わせて線形に拡大・縮小する。現実の周囲物体へ向けられたコンタクトアナログなAR表示(Augmented Reality)についての覆われることが可能なFoVを明確に拡張するために、古典的なHUD構造では、相応に大きな凹状ミラーをインストルメントパネルに統合する必要があり、これは、車両内室における使用可能な構造空間について、及び外観について問題となる。なぜなら、インストルメントパネルにおいて生じる投影光ビーム束のための相応に大きな開口部が必要となるためである。
【0004】
このような問題を克服するために、原動機付き車両における視野領域表示装置について、例えば古典的な投影ユニットについて通常の凹状ミラーの光学的な機能を担うホログラフィック式の光学的な要素(HOE)を車両のフロントガラスに統合するアプローチが知られている。これにより、凹状ミラーを有さないよりコンパクトなHUD構造が可能となり、当該HUD構造は、ホログラフィック式のヘッドアップディスプレイとして知られている。例えば特許文献1から知られるアプローチでは、ホログラムが、まずは、必要な光学的な特性を有する平坦なフィルムとして別々の基板へ形成され、そして、車両用ウィンドウについて典型的なVSG構造(複合安全ガラス)の2つのガラス薄板(ガラスウィンドウ)の間へ、これらを結合する溶融接着剤PVB(ポリビニルブチラール)を用いてラミネートされる。
【0005】
ただし、薄板複合部材におけるこのような完成したHOEフィルムのラミネート時には、当該HOEフィルムは高い圧力及び温度にさらされ、当該高い圧力及び温度は、材料特性及びホログラムの耐久性にネガティブに作用する。さらに、車両用ウィンドウの3D湾曲された幾何形状への平坦なフィルムとして形成されるホログラムのラミネートは、通常、HOEフィルムを縮らせたり、又はしわ寄せしたりすることなしには可能でない。しかし、このことは、通常はラミネートの前に、多くの場合にはロールツーロールプロセスにおいて生じるホログラムの光学的な機能を著しく損なわせてしまう。
【0006】
例えばホログラフィックフィルムの形態のホログラム記録性の材料を露光前に複合ガラスへラミネートし、その後初めてそこにホログラムあるいはHOEを露光させる全ての試みは、複合ガラス製造プロセスへの大規模な介入を必要とし、温度安定性、振動のなさ、暗い環境などのような露光プロセスの要件により、工業的にほぼ実現不可能である。
【0007】
他方、特に紙幣又は身分証明書には、いわゆる「密着印画」の作成によるホログラム形成方法が大量生産にとって特に有用であると知られている。ここで、フォトポリマから成るホログラム記録層は、例えばフィルム又は薄層である基板へ液体状に塗布され、マスタホログラム(ホログラフィーマスタとも呼ばれる)と直接的に接触して反射において露光され、これによりコピーされ、すなわち複製される。換言すれば、このとき、通常は表面ホログラムであるホログラフィーマスタは、ホログラムの繰り返しの形成(製造)に用いられ、当該ホログラムは、通常、体積型ホログラムとしてフォトポリマ層において形成される。露光時及びこれにつづくUV光による定着時に初めて、液体状のフォトポリマが硬化する。
【0008】
当該手法での液体状のフォトポリマの層厚は、10マイクロメートル未満の精度で設定され得る。これに関連して、基板とホログラフィーマスタの間の幾何公差は、大きな役割を果たす。なぜなら、一方では、マスタは、ホログラム記録の継続期間中全面でフォトポリマと接触している必要があり、他方では、マスタと基板の間の間隔によりフォトポリマ層の上記層厚が決定されるためである。平坦な幾何形状の場合には、ホログラム記録に必要な、平坦な基板と平坦なホログラフィーマスタとの間の一定の間隔は、例えばロールツーロールプロセスにおいて問題なく正確に調整されることが可能である。公知の方法では、通常、基板は、平坦なフィルム又は平坦な薄層として、すなわち湾曲されずに形成されている一方、ホログラフィーマスタは、通常、金属製の剛直な部材であり、当該部材は、フレキシブルではなく、したがって基板公差を補整することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4998784号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の問題を解決するために、三次元的に湾曲された薄板(プレート、パネル)を有する薄板(プレート、パネル)複合部材、特に車両用ウィンドウにおいて統合可能な、ホログラムを形成する代替的な、又は改善された方法を提供することにある。本発明の課題は、対応する薄板複合部材及びこれを備えた車両を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該課題は、請求項1による、湾曲された基板薄板においてホログラムを形成(製造)する方法と、同等の請求項による、当該方法により形成(製造)されるホログラムを有する、得られる基板薄板と、当該基板薄板を含む薄板複合部材、特に車両用ウィンドウと、これを備える車両とによって解決される。別の形態は、各従属請求項に記載されている。ホログラム形成方法(ホログラム製造方法)について各請求項及び明細書において挙げた全ての更なる特徴及び作用は、基板薄板、薄板複合部材及びこのように形成されたホログラムを有する車両にも当てはまり、また逆も当てはまる。
【0012】
このとき、個々の方法ステップを記述する順序は、特に言及しない限り、それぞれ拘束的なものとして理解すべきではない。むしろ、ここで説明される方法の個々のステップは、適切である限り、同一の上述の結果を得るために、それぞれ説明されるものとは異なる順序で実行されることが可能である。このとき、実行順序は、例えば方法の実施形態に応じて、及び/又は用途の特有の要件に応じて変更されることが可能である。これについてのいくつかの例は後述される。
【0013】
第1の態様によれば、湾曲された基板薄板においてホログラムを形成する方法が構成されている。ここで、湾曲された基板薄板は、特に、将来的な部材、例えば車両用ウィンドウの固定的な構成要素として用いられ、当該部材は、ホログラムを備えることとなり、したがって、平面的な、又は平坦な幾何形状とは異なる三次元的に湾曲された当該部材の幾何学的な形状を有している。湾曲された基板薄板は、基本的には、ホログラムの後続の露光に適した材料、例えばガラス又は合成樹脂で製造されることができる。したがって、当該基板薄板は、特に剛直に形成されることが可能である。
【0014】
ホログラムは、特にホログラフィック式の光学的な要素(HOE)であってよく、当該要素は、例えば凹状ミラーの機能を果たすために、例えば、冒頭で説明した種類の視野領域表示装置、特にヘッドアップディスプレイ(HUD)の要素として、車両のフロントガラスに統合されるものとなっている。これに代えて、本ホログラム形成方法によって、湾曲された基板薄板において生成されるHOEの他の光学的な機能、例えば得られる薄板(車両用ウィンドウ)での直接的な表示ユニットを示すための角度選択的な拡散ホログラムを実現可能であり、これにより、当該薄板は、一種のスクリーンとして用いられることができ、又は、コンテンツを表示するフロントガラスにおける平坦な導波管が形成された導波管HUDのためのデカップリングホログラムを実現可能である。ここで、車両は、任意の陸上車両、航空機又は船舶、特に原動機付き車両であってよい。
【0015】
ここで、方法は、以下のステップ:
-将来的な部材、特に車両用ウィンドウの一部として公差の影響を受けるとともに、ホログラム形成のために設けられた、実幾何形状が所定の目標幾何形状に対する公差偏差の影響を受ける基板表面を備える、上述の三次元的に湾曲された基板薄板を提供するステップと、
-所定の目標幾何形状へ変形されているか、又は該所定の目標幾何形状からの所定の偏差をもって予備成形されている、例えば上方若しくは下方へ反らされて予備成形された、押圧作用によって変形可能なクッション表面を有する膨張可能なクッションを提供するステップと、
-例えば記録されるべきホログラムの再利用可能なネガとして用いられるホログラフィーマスタを、フレキシブルな薄層の形態で、変形可能なクッション表面へ設けるステップと、
-特に液体状のフォトポリマ層であるホログラム記録層を基板表面へ設けるステップと、
-基板表面の実幾何形状へ変形された上記クッション表面を用いて、ホログラフィーマスタをホログラム記録層へ押圧又は接触させるステップであって、これにより、ホログラム記録層の本質的に一定の所定の層厚において、ホログラフィーマスタとホログラム記録層の間の連続的な面接触が得られ、
-ホログラムの記録に必要な所定の露光時間の間、当該ホログラム記録配置を固定/保持するステップと
を含んでいる。
【0016】
ホログラムは、例えば背側で基板薄板を通して適切なコヒーレント光によって、当該ホログラム記録配置におけるホログラム記録層を露光することで生成される。特に、ホログラフィーマスタは、表面ホログラムとして形成されることが可能である。ホログラムは、上述のように、ホログラフィーマスタとの直接的な接触において反射で露光され、これによりコピー、すなわち複製されることで、ホログラム記録層において体積型ホログラムとして形成されることが可能である。ホログラム記録層に対して得られるマスタは、ホログラムネガとしてのその機能のほかに、用途によっては数分となり得る露光の期間中に必要な振動のなさを保証することにも貢献することが可能である。つづいて、ホログラム記録層は、用いられるホログラム記録材料に応じて、例えば適切なインコヒーレント光、例えばUV光で定着されることが可能である。露光時及びこれにつづくUV光による定着時に初めて、例えば液体状のフォトポリマが硬化する。ホログラム記録層におけるホログラムの上述の完成後、マスタは、当該ホログラム記録層から取り除かれる。
【0017】
本方法の1つの着想は、ホログラフィーマスタを、膨張可能なクッションを介して、公差の影響を受ける基板薄板の実幾何形状へ、あるいはこれに薄く設けられたホログラム記録層へ押圧することにある。これにより、将来的な部材の一部を形成する三次元的に湾曲された基板薄板におけるホログラム形成が可能となり、その結果、ホログラムは、部材の最終的な幾何形状で同一に形成され、冒頭で述べた従来の方法のように後からこれにラミネートされ、及び変形される必要がない。加えて、本方法では、ホログラムは、後に取り除かれる必要がない最終的な基板に直接形成されるとともに、これにより、さらに、部材製造における後の作業において場合によってはあり得る損傷に対して保護されている。
【0018】
このとき、車両用ガラス、例えばフロントガラスのために規定されたガラスウィンドウを基板として用いたい場合には、通常、湾曲された剛直なガラスは、十分の数ミリメートルの幾何公差を受ける。しかし、本ホログラム記録手法では、ホログラム記録層、特に液体状のフォトポリマの層厚は、10マイクロメートル未満の精度をもって調整されることができ、すなわち、湾曲されたガラスウィンドウの典型的な幾何公差よりも10~100倍正確である。このことは、基板とホログラフィーマスタの間の幾何公差補整を重要なものとする。なぜなら、一方では、マスタは、ホログラム記録の継続期間中全面でホログラム記録層と接触している必要があり、他方では、マスタと基板薄板の間の間隔によりホログラム記録層の上記層厚が決定されるためである。
【0019】
それゆえ、本方法では、ホログラフィーマスタは、基板薄板の幾何公差が適合され得るように、フレキシブルに構成されるとともに、膨張可能なクッション、例えばポリマブラダ又はエラストマブラダの予備成形されたクッション表面へ薄く設けられる。予備成形されたクッション表面は、基板表面の既知の/所定の目標幾何形状か、又は当該目標幾何形状とは例えば下方へ反らして、又は上方へ反らして所定分だけ偏差した形状を有している。
【0020】
上述の精密なホログラム記録配置を保証するために、例えば、クッション表面を幾何学的に正確に基板表面の実幾何形状へ適合させることで、ホログラム記録層へのホログラフィーマスタの押圧前/接触前又は押圧時/接触時に、既知の目標幾何形状からそれぞれ個別の基板薄板の実際の実幾何形状への上記クッション表面の幾何補整される変形がもたらされる。このとき、膨張可能なクッションは、場合によっては抜気を容易にするために、シングルチャンバプロファイル又はマルチチャンバプロファイルとして構成されることが可能である。
【0021】
以下では、実幾何形状への予備成形可能なクッション表面の当該変形を生じさせることについていくつかの例を記載する。
【0022】
特に、クッションを、当該クッションに設けられたホログラフィーマスタと共にホログラム記録層へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面を実幾何形状へ変形させることは、予備成形されたクッション表面が、特に変形可能なクッション表面にわたって本質的に一定な押圧力によって、当該基板表面に設けられたホログラム記録層を有するか、若しくは有さない基板表面に対して押圧されることによってもたらされることができるか、又は補助されることができる。後者は、変形可能なクッション表面の均等な圧力負荷につながり、例えば、その一方、クッション表面は、基板表面における比較的薄いホログラム記録層との連続的な面接触を形成しつつ当該基板表面へ付着し、これにより、変形可能なクッション表面がその実際の幾何形状をとる。変形可能なクッション表面にわたる均等な圧力分配(圧力分布)においては、特に、毛細管効果も、液体状のフォトポリマ層の一貫して一定の層厚の調整に貢献し得る。
【0023】
これに代えて、又はこれに加えて、クッションを、当該クッションに設けられたホログラフィーマスタと共にホログラム記録層へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面を実幾何形状へ変形させることは、クッションが全体として背側で、適切な力で、当該基板表面に設けられたホログラム記録層を有して、若しくは有さずに基板表面へ押圧されることによってもたらされることができるか、又は補助されることができる。適切な押圧力は、特に任意の適切な機械的な装置、例えばバネ力アーム又は油圧式に作動するピストンによって、予備成形されたクッション表面とは反対のクッションの背側へ加えられることができる。このことも、変形可能なクッション表面の均等な圧力負荷をもたらすことができ、その一方、クッション表面は、基板表面における比較的薄いホログラム記録層との連続的な面接触を形成しつつ当該基板表面へ付着し、これにより、変形可能なクッション表面がその実際の幾何形状をとる。特に、このとき、上述の力は、例えば上述の力でクッションに対して押圧される適切な圧力プレートによって、クッションの背側を介して均等に分配されることが可能である。
【0024】
第1の実施形態によれば、膨張可能なクッションは、流体、特に空気で満たされているとともに、クッションにおける流体圧力を調整するための少なくとも1つの圧力調整弁を備えている。流体は、基本的には任意の気体であるが、これに代えて、液体であってもよい。クッションは、まず、所定の第1の流体圧力で提供され、当該第1の流体圧力では、変形可能なクッション表面は、上述の目標幾何形状又は当該目標幾何形状からの所定の、例えば下方へ反らされた、又は上方へ反らされた偏差を有している。基板表面の実幾何形状への、このように予備成形されたクッション表面の変形は、ここでは、第1の流体圧力とは異なる所定の第2の流体圧力へクッションにおける流体圧力変化によって生じ、一方、クッションは、これに設けられたホログラフィーマスタと共に当該基板表面に設けられたホログラム記録層を有する基板表面に接触するか、又はこれに対して背側で押圧される。例えば圧力調整弁の操作により行われるクッション内部における当該流体圧力変化は、変形可能なクッション表面の均等な圧力負荷を生じさせ、これにより、クッション表面は、基板表面における比較的薄いホログラム記録層に付着し、これによって、基板表面の実幾何形状をとる。
【0025】
特に、本実施形態では、所定の第1の流体圧力は、生じている周囲圧力、特に大気圧に関して負圧又は過圧であってよく、これにより、特に、変形可能なクッション表面の、目標幾何形状に対する下方への反りあるいは上方への反りを提供することが可能である。このように予備成形されたクッションが当該基板表面に設けられたホログラム記録層を有する基板表面に接触し、若しくは押圧される間、又は接触し、若しくは押圧された後、その中には、本形態では生じている周囲圧力と同一の所定の第2の流体圧力が設定される。例えば圧力調整弁を開放することによる当該圧力変化により、当該ホログラム記録層の下に位置する基板表面を有する薄いホログラム記録層をもった変形可能なクッション表面の連続した面接触を形成することが可能であるか、あるいは形成され、これにより、クッション表面は、その目標幾何形状をとる。
【0026】
上述の第1の実施形態では、クッションにおける流体圧力変化の他の態様も所望の幾何形状補整につながり得る。したがって、例えば所定の第1の流体圧力は、生じている周囲圧力、特に大気圧に相当することができ、所定の第2の流体圧力は、当該周囲圧力に関して負圧であってよく、一方、クッションは、全体として、ホログラム記録層に対して任意の力で背側で押圧される。
【0027】
第2の実施形態によれば、膨張可能なクッションは、流体、特に空気若しくは他のガス又は液体と、その中に含まれるか、若しくは分配された固体材料とで満たされており、固体材料は、クッションに流体が存在する場合にはソフトであって変形可能であり、クッションからの流体排出時には硬くなり、その際、当該クッションに受けた形状に維持される。例えば、このとき、クッションは、真空スプリント材料として知られる固定か技術に類似して、細かな粒状物質、特に適切な大きさの合成樹脂ビーズから成る緩い充填物を備えることができ、充填物は、クッション内に空気がある限りソフトで変形可能であり、クッションからの空気排出時には硬くなる。なぜなら、個々の粒状物質粒子が負圧により互いに圧縮されるためである。これに代えて、充填物は、例えば適切に変形可能な、排出時に硬化し、形状を維持する発泡状の材料であってもよい。当該材料は、クッションからの流体排出のために、例えば真空ポンプのための適切な接続部を備えることが可能である。
【0028】
本実施形態においても、まず、目標幾何形状へ、又は当該目標幾何形状から例えば下方へ反らして、又は上方へ反らして所定分だけの偏差へ予備成形されたクッション表面を有するクッションが提供される。このために、クッションには、特に所定の流体圧力、例えば生じている周囲圧力又は過圧若しくは負圧を設定することが可能である。
【0029】
第2の実施形態では、予備成形されたクッション表面の実幾何形状への変形は、当該基板表面に設けられたホログラム記録層を有するか、又は有さない基板表面への、当該クッションに設けられたホログラフィーマスタを有するか、又は有さないクッションの背側での押圧によって生じ、これにより変形可能なクッション表面に影響を残す形状、すなわち基板表面の実幾何形状が、クッションからの流体排出により、硬化された固定材料によって押さえつけられ、あるいは固められ、あるいは保存され、本ホログラム形成方法の残りのステップの実行時に維持される。
【0030】
特に、第2の実施形態による方法においても、予備成形可能なクッション表面の実幾何形状への変形のステップ及び/又はこれにつづくクッションからの流体排出において、基板表面へのクッションの押圧が、背側でクッションへ力を加えることでもたらされるか、又は補助されることができる。クッションの背側への当該押圧力は、ここでも例えば任意の適切な機械的な装置によって加えられることが可能である。
【0031】
本発明の別の一態様によれば、湾曲された基板薄板は、ここで説明される種類の方法により形成される、当該基板薄板におけるホログラムを備えている。ホログラムは、特にホログラフィック式の光学的な要素であり得る。ここで、ホログラムは、上記公差の影響を受ける湾曲された基板薄板の基板表面に設けられるホログラム記録層において特に体積型ホログラムとして記録され、ホログラムの記録は、少なくとも露光の継続期間の間存在する上述の種類のホログラム記録配置においてコヒーレント光でホログラム記録層を露光することで生じ、当該ホログラム記録配置では、フレキシブルな薄層の形態のホログラフィーマスタは、基板表面の実幾何形状に対応するクッション表面を有する膨張可能なクッションによって、これらの間での連続した面接触部と、ホログラム記録層の本質的に一定の所定の層厚とを有するホログラム記録層へ押圧されているか、あるいは押圧された。
【0032】
本発明の別の一態様によれば、薄板複合部材、特に車両用ウィンドウが設けられている。薄板複合部材は、一方では、当該基板薄板に形成される上述の種類のホログラムを有する湾曲された基板薄板を薄板複合部材の第1の薄板として含んでいる。また、薄板複合部材は、第1の薄板と第2の薄板の間に位置する特にPVB(ポリビニルブチラール)のような溶融接着剤から成る結合層によって第1の薄板に結合された第2の薄板を含んでおり、ホログラムは、第1の薄板における第2の薄板へ向いた表面に形成されている。したがって、上述の薄板複合部材は、特に複合安全ガラス(VSG)であり得る。複合部材の両薄板の上記結合は、特に、それ自体公知の種類の適切なラミネートプロセスによって行われることが可能である。
【0033】
本発明の別の一態様によれば、車両は、少なくとも部分的に上述の種類の薄板複合材料によって形成された車両用ウィンドウを備えている。車両は、任意の陸上車両、航空機又は船舶、特に原動機付き車両であってよい。ここで、ここで説明する種類の方法によりホログラムが生成される複合部材の上述の第1の薄板は、特に、車両内室近傍に、又は車両内室に直接位置する車両用ウィンドウの内側薄板であってよく、一方、第2の薄板は、車両の外部周囲近傍に、又は外部周囲に直接位置する車両用ウィンドウの外側薄板である。車両用ウィンドウは、上述の2つの薄板に加えて内部又は外部において薄板複合部材に位置する更なる層又は薄板を備えることができるが、必ずしも備える必要はない。
【0034】
ホログラムは、特にホログラフィック式の光学的な要素(HOE)であってよく、当該要素は、例えば凹状ミラーの機能を果たすために、例えば、冒頭で説明した種類の視野領域表示装置、特にヘッドアップディスプレイ(HUD)の要素として、車両のフロントガラスに統合されている。これに代えて、HOEは、例えばこれにより一種のスクリーンとして用いられることが可能な車両用ウィンドウに直接表示コンテンツを表示する角度選択的な拡散ホログラムとして、又は車両の乗員に対してコンテンツを表示する車両用ウィンドウにおいて平坦な導波管が形成された導波管HUDのためのデカップリングホログラムとして、他の光学的な機能を備えることが可能である。
【0035】
以下に、添付の図面に図示された例に基づき、本発明の上記態様及びその実施形態並びに特有の構成を詳細に説明する。各図は、単に概略的なものであり、特に正確な縮尺率として読み取られるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ここで説明する種類の、湾曲された基板薄板においてホログラムを形成する方法のフローチャートである。
図2a図1による方法の第1の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
図2b図1による方法の第1の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
図2c図1による方法の第1の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
図3a図1による方法の第2の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
図3b図1による方法の第2の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
図3c図1による方法の第2の実施形態による、基板薄板の実幾何形状へのクッションの変形を説明するための、当該基板薄板に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板と、ホログラフィーマスタを押圧するために当該ホログラフィーマスタにおいて用いられる膨張可能なクッションとの概略的な側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
湾曲された基板薄板(プレート、パネル)においてホログラムを形成する本発明の第1の態様による方法と、得られる基板薄板と、薄板複合部材と、本発明の別の態様による車両との本明細書における上述の、及び以下において請求項で述べる全ての異なる、実施形態、態様及び特有の構成特徴は、図1図3cに示された例において実行されることが可能である。したがって、以下では、全てを再度繰り返さない。同様のことは、相応して、既に上述した用語定義と、図1図3cにおいて示された個々の特徴に関する効果とに当てはまる。
【0038】
図1には、以下においてまずは図2a~図2cに図示される例に基づいて本方法の上述の第1の実施形態について説明される、湾曲された基板薄板においてホログラムを形成する本発明の上記第1の態様による方法のフローチャートが示されている。
【0039】
図2a~図2cには、それぞれ大きく簡略化された垂直方向の断面図、すなわち図1による方法の実行に際して、その基板表面2に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板1と、ホログラフィーマスタ4をホログラム記録層3へ押圧するために用いられる膨張可能なクッション5の相並んで位置する相互の3つの配置が、第1の実施形態により生じる、基板表面2の実幾何形状へのクッション表面6の変形を説明するために示されており、基板表面は、その既知の目標幾何形状からの公差偏差の影響を受けている。
【0040】
当該例では、図1による方法がステップS1によって開始され、当該ステップS1では、上述の三次元的に湾曲された基板薄板1が提供され、当該基板薄板は、将来的な部材、この場合には車両ウィンドウ(不図示)の一部として公差の対象となるとともに、ホログラム作成のために設けられた基板表面2を備えており、当該基板表面の実幾何形状は、あらかじめ規定された既知の、湾曲された目標幾何形状に対して許容偏差を受ける。基板表面2の湾曲された三次元的な目標幾何形状及び実幾何形状は、例えば図2aに示唆されているように、平坦な、又は平面的な表面形状とは明らかに異なっており、当該例では、将来的な車両ウィンドウの3D形状に対応している。湾曲された基板薄板1は、例えばガラス又は合成樹脂で製造されることができるとともに、特に剛直に形成されることが可能である。
【0041】
更なるステップS2では膨張可能なクッション5が提供され、適切な圧力作用により変形可能な当該クッションのクッション表面6があらかじめ所定の目標幾何形状へ、又は当該目標幾何形状との所定の偏差をもって、例えば、下方へ反らして、又は上方へ反らして予備変形されている。膨張可能なクッション5は、特にポリマブラダ又はエラストマブラダとして形成されることが可能である。
【0042】
図2a~図2cに図示された例では、膨張可能なクッション5は、流体、この例では空気で満たされているとともに、クッション5内の流体圧力を調整するための圧力調整弁7を備えている。図2aにおいて概略的に示唆されているように、クッション5は、ステップS2において、ここでは目下の周囲圧力(=大気圧)Patに比してやや過圧である所定の第1の流体圧力P1をもって提供され、変形可能なクッション表面6は、基板表面2の上述の既知の目標幾何形状に対して上方へ反らされている。
【0043】
更なるステップS3では、例えば、記録されるべきホログラムの再使用可能なネガとして用いられる表面ホログラムであるホログラフィーマスタ4が、フレキシブルな薄層の形態で変形可能なクッション表面6に設けられており、その結果、フレキシブルなホログラフィーマスタ4の表面幾何形状は、変形可能なクッション表面6の表面幾何形状と同一であるか、あるいは当該変形可能なクッション表面6の表面幾何形状によって規定されている。このために、マスタ4は、特に、例えば適切な接着剤又はこれに類するものを用いて、フレキシブルなクッション表面に固結されることも可能である。
【0044】
更なるステップS4では、この例では液体状のフォトポリマ層であるホログラム記録層3が、基板表面2に設けられる。
【0045】
ステップS1~S4は、図2a~図2cに示された例については、基本的には任意の順序で実行されることが可能である。
【0046】
図2a及び図2bに示されているように、更なるステップS5では、変形可能なクッション表面6に設けられたホログラフィーマスタ4は、ホログラフィーマスタ4をホログラム記録層3へ付着させるために、示唆された矢印方向において、基板表面2及びその上に設けられたホログラム記録層3へ向けて移動する。図2bに示唆されているように、まず、一方では、ホログラフィーマスタ4の表面幾何形状と、他方では、用いられる基板表面2の個別の実幾何形状に本質的に従う薄いホログラム記録層3の表面幾何形状とが明らかに区別されるため、図2bでは、ホログラフィーマスタ4は、まずは、ホログラム記録層3においてところどころのみ接触する。図2bに示されているように、このとき、基板表面2の例えば中央においてホログラフィーマスタ4のホログラム記録層3との最初の接触が生じることを保証するために、予備変形されるクッション表面6は、基板表面2よりも弱く湾曲されている。特に両接触面の間の継続的な面接触の形成時に空気が側方から外方へ漏れ得るように、本方法では、後者は、両接触面の間の後続の公差適合のための特に有利な初期前提条件となっている。
【0047】
したがって、ホログラム記録層3が本質的に一定の所定の層厚である場合にホログラフィーマスタ4とホログラム記録層3の間の連続した面接触を有する切迫した露光プロセスに必要なホログラム記録配置を保証するために、更なるステップS6では、当該基板表面2に設けられたホログラム記録層3を有する基板表面2の個別の実幾何形状に対する所定の目標幾何形状の、あるいは本例ではこれに関連してやや下方へ反らして予備成形された、当該クッション表面に設けられたホログラフィーマスタ4を有するクッション表面6の幾何公差補整がなされる。
【0048】
図2cに示されているように、本例における当該幾何公差補整は、クッション表面がホログラム記録層3に接触している間に、例えばバルブ7を開放することで、変形可能なクッション表面6を大気圧Patで負荷することでなされる。換言すれば、ホログラム記録層3へのホログラフィーマスタ4の接触後又は当該接触時に、クッション5における流体圧力が、本例では生じている周囲圧力Patと同一の所定の第2の流体圧力P2=Patへ変更される。クッション5における当該圧力変更により、予備成形可能なクッション表面6に設けられたホログラフィーマスタ4と薄いホログラム記録層3との間の連続的な面接触の形成がなされ、これにより、クッション表面6は、その下に位置する基板表面2の目標幾何形状をとる。
【0049】
上述の幾何公差補整は、特に、クッション5へ背側で力を加えることによる、基板表面2へのクッション5の若干の押圧によって補助されることが可能である。これに適したクッション5の背側8への押圧力は、例えばバネ作用又はこれに類するものを有する機械的な装置(不図示)によって加えられることが可能である。
【0050】
ステップS7では、適切なコヒーレント光で、例えば基板薄板1を通過して、このホログラム記録配置におけるホログラム記録層3の露光がつづき、これにより、ホログラム記録層3には所望のホログラムが生成される。つづいて、ホログラム記録3は、ステップS8において適切なUV光で固定される。露光時及びこれにつづくUV光による固定時には、流体状のフォトポリマが硬化し、これにより、ステップS9において、クッション5がホログラフィーマスタ4と共に、ホログラムを有する完成された基板薄板1から取り除かれる。
【0051】
図3a~図3cには、ここで上述した種類の方法の第2の実施形態についての一例が示されている。図2a~図2cと類似のように、図3a~図3cには、それぞれ大きく簡略化された垂直方向の断面図、すなわち図1による方法の実行に際して、その基板表面2に設けられたホログラム記録層を有する湾曲された基板薄板1と、ホログラフィーマスタ4をホログラム記録層3へ押圧するために用いられる膨張可能なクッション5の相並んで位置する相互の3つの配置が、第2の実施形態により生じる、基板表面2の実幾何形状へのクッション表面6の変形を説明するために示されており、基板表面は、その既知の目標幾何形状からの公差偏差の影響を受けている。
【0052】
図3a~図3cに示された例は、主に、クッション5の構成と、ここで説明される種類のホログラム記録配置に必要な、予備成形されたクッション表面6と基板表面2の個々の実幾何形状との間の幾何公差補整の実施の態様とによって、図2a~図2cの例とは異なっている。以下では、図1に描写された方法の、図2a~図2cによる例とは異なるステップのみを説明し、一方、その他の方法ステップは、同一であってよく、したがって繰り返して詳細には説明されない。
【0053】
図3aに示されるように、図1によるステップS2において提供される膨張可能なクッション5は、本方法の第2の実施形態によれば、流体、本例では空気、及びその中に分配された固体材料10、本例では、例えば合成樹脂から成る粗い粒状物質で満たされている。クッション5に空気が存在する場合には、固体材料10は、ソフトであり変形可能であるため、クッション表面6は、あらかじめ既知の予備成形された基板表面2の目標幾何形状に関して、例えばやや下方へ反らして予備成形されることができ、基板表面2へのクッション正面6の接触後又は当該接触時に、適切な力でクッション5を背側で押圧することで、ステップS6において、図3bに示されるようにその個別の実幾何形状をとることができる。
【0054】
図3cに示されるように、ステップS6(図3b)において得られる、本発明の第2の実施形態によるクッション表面6の幾何形状補整された形状は、これにつづくオプションのステップS6’において、クッション5からの流体排出によって、本例では真空ポンプ9による真空引きによって「凍結」されることができる。なぜなら、固体材料10は、負圧により圧縮され、このとき、クッション5が再び空気で満たされるまで、当該固体材料に影響を残すためである。特に、このために、真空引き中に、幾何公差補整のためにクッション5の背側8に加えられる上述の押圧力を保持することが可能である。
【0055】
したがって、真空引きされたクッション5は、そのクッション表面6の一度得られた実幾何形状を、適切な力及びこれに類するような背側での押圧のような更なる力作用なしに維持することができ、したがって、クッション5をこれに設けられたホログラフィーマスタ4と共にホログラム記録層3へ単に接触させることが、これらの間でホログラム記録層3の所定の層厚を維持しつつ連続した面接触部を形成するのに十分である。これにより、一方では、後続の露光ステップS7において必要なホログラム記録配置を正確に遵守することが容易となる。したがって、加えて、本実施形態では、幾何形状補整を、上述のステップS3及び/又はS4の前にも、すなわち、変形可能なクッション表面6へのホログラフィーマスタ4の取付前にも、及び/又は基板表面2へのホログラム記録層3の取付前にも行うことが可能である。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.湾曲された基板薄板(1)にホログラム、ホログラフィック式の光学的な要素を形成するための方法であって、以下のステップ:
-実幾何形状が所定の目標幾何形状に対する公差偏差の影響を受ける基板表面(2)を有する湾曲された基板薄板(1)を提供するステップ(S1)と、
-所定の目標幾何形状へ変形されているか、又は該所定の目標幾何形状からの所定の偏差をもって予備成形されている、押圧作用によって変形可能なクッション表面(6)を有する膨張可能なクッション(5)を提供するステップ(S2)と、
-フレキシブルな薄層の形態でホログラフィーマスタ(4)を変形可能なクッション表面(6)へ設けるステップ(S3)と、
-特に液体状のフォトポリマ層であるホログラム記録層(3)を基板表面(2)へ設けるステップ(S4)と、
-実幾何形状へ変形されたクッション表面(6)を用いて、ホログラフィーマスタ(4)をホログラム記録層(3)へ押圧又は接触させ、これにより、これらの間でホログラム記録層(3)の本質的に一定の所定の層厚をもって連続した面接触部を得るステップと、
-ホログラフィーマスタ(4)によって規定されるホログラムをホログラム記録層(3)に形成するためにコヒーレント光で該ホログラム記録配置においてホログラム記録層(3)を露光させるステップ(S7)と
を有することを特徴とする方法。
2.-クッション(5)を、該クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)と共にホログラム記録層(3)へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させること(S6)は、予備成形されたクッション表面(6)が、特に変形可能なクッション表面(6)にわたって本質的に一定な押圧力によって、当該基板表面に設けられたホログラム記録層(3)を有するか、若しくは有さない基板表面(2)に対して押圧されることによってもたらされるか、又は補助されることを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.-クッション(5)を、該クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)と共にホログラム記録層(3)へ接触又は押圧する前、押圧するとき、又は押圧した後に、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させること(S6)は、クッション(5)が背側で、特にその背側(8)にわたって均等に分配された力で、基板表面に設けられたホログラム記録層(3)を有して、若しくは有さずに基板表面(2)へ押圧されることによってもたらされるか、又は補助されることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
4.膨張可能なクッション(5)が、流体、特に空気に満たされているとともに、クッション(5)内の流体圧力を調整するための少なくとも1つの圧力調整弁(7)を含み、変形可能なクッション表面(6)が目標幾何形状を有するか、又は該目標幾何形状からの所定の偏差を有する所定の第1の流体圧力(P1)で提供され、
-予備成形されたクッション表面(6)が、クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)とのクッション(5)の接触時、又は接触後、好ましくは押圧時、又は押圧後に、所定の第2の流体圧力(P2)へのクッション(5)における流体圧力変化によって実幾何形状へもたらされる(S6)
ことを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法。
5.-所定の第1の流体圧力(P1)が、生じている周囲圧力(Pat)に対して負圧又は過圧であり、所定の第2の流体圧力(P2)が生じている周囲圧力(Pat)に相当することを特徴とする上記4.に記載の方法。
6.膨張可能なクッション(5)が、流体、特に空気と、その中に含まれるか、又は分配された固体材料(10)とで満たされており、該固体材料が流体の存在時には任意に変形可能でありクッション(5)からの流体排出時には硬化してその際に受けた形状を維持し、-予備成形されたクッション表面(6)を有するクッション(5)が、クッション(5)における所定の流体圧力において提供され、
-クッションに設けられたホログラフィーマスタ(4)を有するか、若しくは有さないクッション(5)を、基板表面(2)に設けられたホログラム記録層(3)を有するか、若しくは有さない基板表面(2)へ押圧することで、予備成形されたクッション表面(6)を実幾何形状へ変形させ(S6)、
-予備成形可能なクッション表面(6)が、これにより受ける形状を、クッション(5)から流体を排出する(S6’)ことで保持し、上記その他の方法ステップ(S1~S5,S7)の実施時に維持される
ことを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法。
7.予備成形可能なクッション表面(6)の実幾何形状への変形のステップ(S6)、及び好ましくはまたこれにつづくクッション(5)からの流体排出(S6’)において、
-基板表面(2)へのクッション(5)の押圧が、背側でクッション(5)へ力を加えることでもたらされるか、又は補助される
ことを特徴とする上記6.に記載の方法。
8.上記1.~7.のいずれか1つに記載の方法により形成されるホログラム、特にホログラフィック式の光学的な要素を有する湾曲された基板薄板であって、
-ホログラムが、特に体積型ホログラムとして、基板薄板(1)の、公差を受ける湾曲された基板表面(2)に設けられたホログラム記録層(3)に形成されており、
-コヒーレント光によるホログラム記録層(3)の露光によって、露光の継続中に生じるホログラム記録配置にホログラム記録がもたらされ、ホログラム記録配置では、フレキシブルな薄層の形態のホログラフィーマスタ(4)が、ホログラフィーマスタとホログラム記録層との間の連続的な面接触部とホログラム記録層(3)の本質的に一定の所定の層厚とをもって、基板表面(2)の実幾何形状に対応するクッション表面(6)を有する膨張可能なクッション(5)によってホログラム記録層(3)へ押圧されている
ことを特徴とする湾曲された基板薄板。
9.薄板複合部材、特に車両用ウィンドウであって、
-薄板複合部材の第1の薄板としての、湾曲された基板薄板に上記8.により形成されたホログラムを有する湾曲された基板薄板(1)と、
-第1の薄板と第2の薄板の間に位置する特にPVBから成る結合層によって第1の薄板と結合された第2の薄板と
を含み、第1の薄板の、第2の薄板へ向いた表面にホログラムが形成されていることを特徴とする薄板複合部材。
10.少なくとも部分的に上記9.による薄板複合部材によって形成されている車両用ウィンドウを有する車両であって、
-第1の薄板が、車両内部空間の近傍又は車両内部空間に直接位置する車両用ウィンドウの内側薄板であり、第2の薄板が、車両の外部周囲の近傍又は車両の外部周囲に直接位置する車両用ウィンドウの外側薄板であることを特徴とする車両。
【符号の説明】
【0056】
1 湾曲された基板薄板
2 基板表面
3 ホログラム記録層
4 ホログラフィーマスタ
5 膨張可能なクッション
6 変形可能なクッション表面
7 圧力調整弁
8 クッションの背側
9 真空ポンプ
10 固体材料
P1 所定の第1の流体圧力
P2 所定の第2の流体圧力
Pat 生じている周囲圧力
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c