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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240830BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/6569
H01M10/663
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022531735
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022077
(87)【国際公開番号】W WO2021256365
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020103727
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 和也
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-023703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107732356(CN,A)
【文献】特開2011-228301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260194(US,A1)
【文献】特開2014-095484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/181518(US,A1)
【文献】特開2017-105425(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3446909(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/60-10/667
H01M50/20-50/298
B60K11/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機(12)と、前記圧縮機(12)から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器(13)と、余剰冷媒を貯留可能な冷媒貯留器(15a)と、を有する冷凍サイクル(10)に接続され、
前記冷凍サイクル(10)から流出した冷媒を膨張する膨張装置(14)と、前記膨張装置(14)から流出した冷媒を一方側流路(11a)及び他方側流路(11b)に分配する冷媒分配装置(31)と、複数の熱交換部によって構成され前記一方側流路(11a)を流れる冷媒が通流する一方側熱交換器(40;40A)と、複数の熱交換部によって構成され前記他方側流路(11b)を流れる冷媒が通流する他方側熱交換器(50;50A)と、前記一方側熱交換器(40;40A)を流出した冷媒と前記他方側熱交換器(50;50A)を流出した冷媒が合流し前記冷凍サイクル(10)に流出する冷媒合流装置(34)と、を有し、
前記一方側熱交換器(40;40A)と前記他方側熱交換器(50;50A)とによってバッテリ(20)を冷却するバッテリ冷却装置において、
前記一方側熱交換器(40;40A)は、前記バッテリ(20)の任意の面である一方側面(20u;20r;20f)に設けられ、
前記他方側熱交換器(50;50A)は、前記一方側面(20u;20r;20f)に対向する面である他方側面(20d;20l;20b)に設けられ、
前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する前記熱交換部について、前記一方側流路(11a)を流れる冷媒が最初に通流する熱交換部を一方側第1熱交換部(41;41A)、この一方側第1熱交換部(41;41A)を流出した冷媒が次に通流する熱交換部を一方側第2熱交換部(42;42A)、とした場合に、前記一方側熱交換器(40;40A)は、前記冷媒の流れる順に前記一方側第1熱交換部(41;41A)から一方側第n熱交換部(44;44A)までの熱交換部によって構成され、
前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する前記熱交換部について、前記他方側流路(11b)を流れる冷媒が最初に通流する熱交換部を他方側第n熱交換部(54;54A)、この他方側第n熱交換部(54;54A)を流出した冷媒が次に通流する熱交換部を他方側第n-1熱交換部(53;53A)、とした場合に、前記他方側熱交換器(50;50A)は、前記冷媒の流れる順に前記他方側第n熱交換部(54;54A)から他方側第1熱交換部(51;51A)までの熱交換部によって構成され、
前記他方側第1熱交換部(51;51A)から前記他方側第n熱交換部(54;54A)はそれぞれ、前記一方側第1熱交換部(41;41A)から前記一方側第n熱交換部(44;44A)のそれぞれに対向する位置に設けられたことを特徴とするバッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)。
【請求項2】
前記一方側面(20u)とは、前記バッテリ(20)の上面(20u)であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置(30;30A)。
【請求項3】
前記バッテリは、車両に搭載して用いられ、
前記一方側面(20r)とは、前記車両の姿勢における前記バッテリ(20)の右側面(20r)であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置(30B)。
【請求項4】
前記バッテリは、車両に搭載して用いられ、
前記一方側面(20f)とは、前記車両の姿勢における前記バッテリ(20)の前方側面(20f)であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置(30C)。
【請求項5】
前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する各熱交換部(41~44;41A~44A)内を流れる冷媒は、前記バッテリ(20)を挟んで対向した位置に配置され前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する各熱交換部(51~54;51A~54A)内を流れる冷媒に対して、逆の方向に流れることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)。
【請求項6】
前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する各熱交換部(41~44;41A~44A)と、前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する各熱交換部(51~54;51A~54A)とは、共に水平方向に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)。
【請求項7】
前記冷凍サイクル(10)と前記バッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)とは、前記凝縮器(13)と前記膨張装置(14)との間の分岐点Dと、前記冷媒合流装置(34)と前記圧縮機(12)との間の合流点(J)とで接続され、
前記冷凍サイクル(10)は、前記分岐点(D)と前記合流点(J)との間に、空調用膨張装置(114)と空調用蒸発器(130)とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒との熱交換によってバッテリを冷却するバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とする車両が一般に知られている。このような車両には、モータを作動させるためのバッテリと、バッテリを冷却するためのバッテリ冷却装置が搭載されている。冷媒を用いてバッテリを冷却するバッテリ冷却装置として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されたバッテリ冷却装置は、冷媒が流れる流路を複数の流路に分配し、それぞれの流路を流れる冷媒がバッテリを冷却するよう、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-096416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流路内を流れる冷媒は、上流側においてバッテリをより冷却することができ、冷却するためのエネルギが低下する下流側において、冷却する性能が低下する。このため、バッテリの冷却面には、より冷却される部分と、そうでない部分とが混在することとなる。
【0006】
本発明は、バッテリの全体をより均一に冷却することのできるバッテリ冷却装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機(12)と、前記圧縮機(12)から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器(13)と、余剰冷媒を貯留可能な冷媒貯留器(15a)と、を有する冷凍サイクル(10)に接続され、
前記冷凍サイクル(10)から流出した冷媒を膨張する膨張装置(14)と、前記膨張装置(14)から流出した冷媒を一方側流路(11a)及び他方側流路(11b)に分配する冷媒分配装置(31)と、複数の熱交換部によって構成され前記一方側流路(11a)を流れる冷媒が通流する一方側熱交換器(40;40A)と、複数の熱交換部によって構成され前記他方側流路(11b)を流れる冷媒が通流する他方側熱交換器(50;50A)と、前記一方側熱交換器(40;40A)を流出した冷媒と前記他方側熱交換器(50;50A)を流出した冷媒が合流し前記冷凍サイクル(10)に流出する冷媒合流装置(34)と、を有し、
前記一方側熱交換器(40;40A)と前記他方側熱交換器(50;50A)とによってバッテリ(20)を冷却するバッテリ冷却装置において、
前記一方側熱交換器(40;40A)は、前記バッテリ(20)の任意の面である一方側面(20u;20r;20f)に設けられ、
前記他方側熱交換器(50;50A)は、前記一方側面(20u;20r;20f)に対向する面である他方側面(20d;20l;20b)に設けられ、
前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する前記熱交換部について、前記一方側流路(11a)を流れる冷媒が最初に通流する熱交換部を一方側第1熱交換部(41;41A)、この一方側第1熱交換部(41;41A)を流出した冷媒が次に通流する熱交換部を一方側第2熱交換部(42;42A)、とした場合に、前記一方側熱交換器(40;40A)は、前記冷媒の流れる順に前記一方側第1熱交換部(41;41A)から一方側第n熱交換部(44;44A)までの熱交換部によって構成され、
前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する前記熱交換部について、前記他方側流路(11b)を流れる冷媒が最初に通流する熱交換部を他方側第n熱交換部(54;54A)、この他方側第n熱交換部(54;54A)を流出した冷媒が次に通流する熱交換部を他方側第n-1熱交換部(53;53A)、とした場合に、前記他方側熱交換器(50;50A)は、前記冷媒の流れる順に前記他方側第n熱交換部(54;54A)から他方側第1熱交換部(51;51A)までの熱交換部によって構成され、
前記他方側第1熱交換部(51;51A)から前記他方側第n熱交換部(54;54A)はそれぞれ、前記一方側第1熱交換部(41;41A)から前記一方側第n熱交換部(44;44A)のそれぞれに対向する位置に設けられたことを特徴とするバッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)が提供される。
【0009】
好ましくは、前記一方側面(20u)とは、前記バッテリ(20)の上面(20u)である。
【0010】
好ましくは、前記バッテリ(20)は、車両に搭載して用いられ、
前記一方側面(20r)とは、前記車両の姿勢における前記バッテリ(20)の右側面(20r)である。
【0011】
好ましくは、前記バッテリ(20)は、車両に搭載して用いられ、
前記一方側面(20r)とは、前記車両の姿勢における前記バッテリ(20)の右側面(20r)である。
【0012】
好ましくは、前記バッテリ(20)は、車両に搭載して用いられ、
前記一方側面(20f)とは、前記車両の姿勢における前記バッテリ(20)の前方側面(20f)である。
【0013】
好ましくは、前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する各熱交換部(41~44;41A~44A)内を流れる冷媒は、前記バッテリ(20)を挟んで対向した位置に配置され前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する各熱交換部(51~54;51A~54A)内を流れる冷媒に対して、逆の方向に流れる。
【0014】
好ましくは、前記一方側熱交換器(40;40A)を構成する各熱交換部(41~44;41A~44A)と、前記他方側熱交換器(50;50A)を構成する各熱交換部(51~54;51A~54A)とは、共に水平方向に配置されている。
【0015】
好ましくは、前記冷凍サイクル(10)と前記バッテリ冷却装置(30;30A;30B;30C)とは、前記凝縮器(13)と前記膨張装置(14)との間の分岐点Dと、前記冷媒合流装置(34)と前記圧縮機(12)との間の合流点(J)とで接続され、
前記冷凍サイクル(10)は、前記分岐点(D)と前記合流点(J)との間に、空調用膨張装置(114)と空調用蒸発器(130)とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、バッテリの全体をより均一に冷却することのできるバッテリ冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1によるバッテリの冷却装置を模式的に示す図である。
図2図1に示した冷媒分配器、一方側流路、他方側流路、一方側熱交換器、冷媒合流装置について説明する図である。
図3】実施例2によるバッテリ冷却装置の構造を模式的に示す図である。
図4】実施例3によるバッテリ冷却装置の構造を模式的に示す図である。
図5】実施例4によるバッテリ冷却装置の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。説明中、右とは、バッテリ冷却装置の搭載される車両の進行方向を基準として右、左とは、同様に進行方向を基準として左、前とは、バッテリ冷却装置の搭載される車両の進行方向を基準として前、後とは、同様に進行方向を基準として後、をいう。図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0019】
<実施例1>
図1を参照する。バッテリ冷却装置30は、例えば、車両に搭載されたバッテリ20を冷却するために用いられる。バッテリ20は、車両の駆動源としてのモータに供給する電力を蓄積するために用いられるもので、充電が可能とされており、充電時に発熱する特性を有する。バッテリ20は、過度に発熱すると劣化する。また、バッテリ冷却装置30は、冷媒が循環される冷凍サイクル10に接続されて用いられる。冷凍サイクル10は、車両の空調装置に用いられるものの一部を共用することができる。冷凍サイクル10とバッテリ冷却装置30とは、分岐点Dと合流点Jとで接続されている。
【0020】
バッテリ冷却装置30が接続されている冷凍サイクル10は、内部に冷媒の流れる流路11上に、冷媒を圧縮する圧縮機12と、この圧縮機12を通過した高温高圧の冷媒を冷却する凝縮器13と、空調用膨張装置114と、空調用蒸発器130と、が配置されてなる。
【0021】
圧縮機12の上流には、余剰冷媒を貯留可能な冷媒貯留器としてのアキュムレータ15aが配置されている。なお、冷媒貯留器は、凝縮器13と分岐点Dとの間にリキッドタンク(図示せず)として配置されていてもよい。
【0022】
圧縮機12において高温高圧とされた冷媒は、高圧の状態のまま凝縮器13にて冷却される。凝縮器13を通過した冷媒は分岐点Dに到達し、空調用膨張装置114や空調用蒸発器130を経由してアキュムレータ15aに流れる冷凍サイクル10のみを循環する冷媒と、バッテリ冷却装置30に流れる冷媒とに分かれる。分岐点Dからバッテリ冷却装置30に流入した冷媒は、後述するようにバッテリ20を冷却したのちに合流点Jに到達し、空調用蒸発器130を経由した冷媒と合流したのちアキュムレータ15aに流入し、圧縮機12に戻る。
【0023】
分岐点Dから空調用膨張装置114に流入した高圧の冷媒は、膨張されて空調用凝縮器130に流入し、空調に用いられる送風空気を冷却して合流点Jに到達し、バッテリ冷却装置30を流れた冷媒と合流する。次いで、アキュムレータ15aに流入し、圧縮機12に戻る。
【0024】
冷媒貯留器15のうちアキュムレータ15aは、余剰冷媒を貯留するほか、液体冷媒と気体冷媒とを分離して気体冷媒のみを流出する機能を有する。リキッドタンクは、余剰冷媒を貯留するほか、液体冷媒と気体冷媒とを分離して液体冷媒のみを流出する機能を有する。
【0025】
図2を併せて参照する。バッテリ冷却装置30は、凝縮器13から流れてきた高圧の冷媒を膨張し低圧の冷媒とする膨張装置14と、膨張装置14から流出した低圧の冷媒を一方側流路11a及び他方側流路11bに分配する冷媒分配装置31と、複数の一方側熱交換部41~44によって構成され一方側流路11aを流れる冷媒が通流する一方側熱交換器40と、複数の他方側熱交換部51~54によって構成され他方側流路11bを流れる冷媒が通流する他方側熱交換器50と、一方側熱交換器40を流出した冷媒と他方側熱交換器50を流出した冷媒が合流し冷凍サイクル10に流出する冷媒合流装置34と、を有する。
【0026】
膨張装置14は、いずれも図示しないが、冷媒合流装置34を流出した冷媒が有するエネルギを検知する流出冷媒検知部と、流出冷媒検知部により検知された冷媒のエネルギに応じて凝縮器13を通過した冷媒(リキッドタンクを有する冷凍サイクル10に配置されたバッテリ冷却装置30の場合は、リキッドタンクを通過した冷媒)の膨張の程度を調整する調整部と、調整部の調整量に応じて凝縮器13を通過した冷媒を膨張する弁体部と、を有する。
【0027】
流出冷媒検知部は、冷媒合流装置34と合流点Jとの間に配置され、冷媒合流装置34を流出した冷媒の温度又は温度および圧力を検知する。調整部は、流出冷媒検知部で検知された冷媒のエネルギが相対的に高いときには弁体部の開弁量を相対的に広げて冷媒の通流量を増加し、流出冷媒検知部で検知された冷媒のエネルギが相対的に低いときには弁体部の開弁量を相対的に狭めて冷媒の通流量を減少する。
【0028】
ここで膨張装置14は、調整部を、外部信号によって弁体部の開弁の調整量を制御できる電子部品で製作することで、凝縮器13を通過した冷媒がバッテリ装置30を通流することを阻止可能とされることが好ましい。バッテリ冷却装置30が車両の空調装置の一部として設けられるときに、車両空調のみを稼働させてバッテリ冷却装置30を稼働させない運転モードが要請されることがあるところ、流出冷媒検知部により検知された冷媒のエネルギ状態に関わらず冷媒の通流を完全に遮断して、要請に応じることができる。このような膨張装置14は、閉塞機能を有する電子式膨張弁と呼ばれることがある。
【0029】
一方側熱交換器40は、バッテリ20の上面20u(一方側面20u)に配置されている。一方側熱交換器40は、例えば、4つの一方側熱交換部41~44によって構成される。これらの一方側熱交換部41~44を、冷媒の流れる順に、一方側第1熱交換部41、一方側第2熱交換部42、一方側第3熱交換部43、一方側第4熱交換部44、という。一方側熱交換部41~44は、それぞれ、偏平状の金属板の内部に、冷媒が通過可能な流路が形成されてなる。
【0030】
なお、一方側熱交換部41~44の数は、2個以上の複数個であればよい。一方側熱交換部がn個からなるとき、一方側熱交換器40は、冷媒の流れる順に一方側第1熱交換部41から一方側第n熱交換部(本実施例では、一方側第4熱交換部44)までの熱交換部によって構成されている、ということができる。
【0031】
一方側熱交換部41~44は、それぞれ同じ構成とすることもできるし、異なる構成とすることもできる。ただし、同じ構成とした場合には、準備する部品の種類を少なくすることができるため、バッテリ冷却装置30を安価にすることができる。
【0032】
ここで一方側熱交換部41~44は、図1において、前後方向に向けて(前後方向に沿って)配置されているが、配置方向はこれに限らない。例えば、図示しないが、他方側熱交換部51~54の配置方向と同じであれば、左右方向に向けて(左右方向に沿って)配置されていて良いし任意の方向に向けて配置されていても良い。
【0033】
他方側熱交換器50は、バッテリ20の下面20d(他方側面20d)に配置されている。他方側熱交換器50は、例えば、4つの他方側熱交換部51~54によって構成される。一方側第1熱交換部41に対向した位置に配置されている熱交換部を、他方側第1熱交換部51という。同様に、一方側第2熱交換部42に対向した位置に配置されている熱交換部を、他方側第2熱交換部52、一方側第3熱交換部43に対向した位置に配置されている熱交換部を、他方側第3熱交換部53、一方側第4熱交換部44に対向した位置に配置されている熱交換部を、他方側第4熱交換部54と、いう。他方側熱交換部41~44は、それぞれ、偏平状の金属板の内部に、冷媒が通過可能な流路が形成されてなる。
【0034】
他方側熱交換器50は、冷媒が他方側第4熱交換部54、他方側第3熱交換部53、他方側第2熱交換部52、他方側第1熱交換部51の順に流れる。
【0035】
なお、他方側熱交換部51~54の数は、2個以上の複数個であって一方側熱交換部41~44の数と同じであればよい。他方側熱交換部がn個からなるとき、冷媒は、他方側第n熱交換部(本実施例では、他方側第4熱交換部54)、他方側第n-1熱交換部(本実施例では、他方側第3熱交換部53)の順に流れ、最後に他方側第1熱交換部51に流れる、ということができる。
【0036】
また、他方側第1熱交換部51から他方側第n熱交換部(本実施例では、他方側第4熱交換部54)はそれぞれ、一方側第1熱交換部41から一方側第n熱交換部(本実施例では、一方側第4熱交換部44)のそれぞれに対向する位置に設けられている、ということができる。
【0037】
他方側熱交換部41~44は、それぞれ同じ構成とすることもできるし、異なる構成とすることもできる。ただし、同じ構成とした場合には、準備する部品の種類を少なくすることができるため、バッテリ冷却装置30を安価にすることができる。さらには、一方側熱交換部41~44と同じ構成にすることにより、さらに安価にすることができる。
【0038】
また、他方側熱交換部51~54は、一方側熱交換部41~44の配置される向きと同じであれば、左右方向に向けて配置されていても良く、任意の方向に向けて配置することができる。なお、一方側熱交換部41~44及び他方側熱交換部51~54は、共に水平方向に向けて配置されていることが好ましい。理由は後述する。
【0039】
バッテリ冷却装置30の作用について説明する。
【0040】
流路11を流れる冷媒は、膨張装置14において膨張されて気液混合状態の冷媒となり、冷媒分配装置31に流入する。
【0041】
冷媒分配装置31に流入した冷媒は、一方側流路11a及び他方側流路11bの2つの流路に分配される。一方側流路11aを流れる冷媒は、一方側熱交換器40に、他方側流路11bを流れる冷媒は、他方側熱交換器50に流れる。
【0042】
一方側熱交換器40に流入した冷媒は、一方側第1熱交換部41~一方側第4熱交換部44の順に流れる。一方側熱交換器40は、バッテリ20の上面20uに配置されている。このため、一方側熱交換部41~44の内部を流れる冷媒は、バッテリ20との熱交換によりバッテリ20の上面20uを冷却する。一方側熱交換器40に流入した気液混合状態の冷媒は、バッテリ20の上面20uと熱交換するにつれて液冷媒の割合が減少する。すなわち、一方側第1熱交換部41に流入した冷媒はバッテリ20の冷却能力が高く、バッテリ20の上面20uと熱交換するにつれて徐々に冷却能力が低下する。一方側第4熱交換部44まで流れた冷媒は、一方側熱交換器40から冷媒合流装置34に向かって流れる。
【0043】
他方側熱交換器50に流入した冷媒は、他方側第4熱交換部54~他方側第1熱交換部51の順に流れる。他方側熱交換器50は、バッテリ20の下面20dに配置されている。このため、他方側熱交換部51~54の内部を流れる冷媒は、バッテリ20との熱交換によりバッテリ20の下面20dを冷却する。他方側熱交換器50に流入した気液混合状態の冷媒は、バッテリ20の下面20dと熱交換するにつれて液冷媒の割合が減少する。すなわち、他方側第4熱交換部54に流入した冷媒はバッテリ20の冷却能力が高く、バッテリ20の下面20dと熱交換するにつれて徐々に冷却能力が低下する。他方側第1熱交換部51まで流れた冷媒は、他方側熱交換器50から冷媒合流装置34に向かって流れる。
【0044】
一方側流路11a又は他方側流路11bを流れた冷媒は、冷媒合流装置34において合流し、冷凍サイクルが有するアキュムレータ15aに向かって流れる。
【0045】
ここで、一方側第1熱交換部41に流れる冷媒は、前から後ろに向かって流れる。この方向を第1方向とした場合、対向する位置に配置されている他方側第1熱交換部51に流れる冷媒は、後ろから前に向かって流れる。この方向は、第1方向とは反対の第2方向である。一方側第2熱交換部42を流れる冷媒は、後ろから前に向かって流れる。この方向を第1方向とした場合、対向する位置に配置されている他方側第2熱交換部52を流れる冷媒は、反対方向である第2方向に流れる。
【0046】
つまり、一方側熱交換部41~44に流れる冷媒の方向を第1方向とした場合に、これらの一方側熱交換部41~44に対向する位置に配置されている他方側熱交換部51~54を流れる冷媒の方向は、第1方向とは逆の方向である第2方向である、ということができる。
【0047】
以上に説明したバッテリ冷却装置30は、以下の効果を奏する。
【0048】
図1及び図2を参照する。バッテリの上面20uに、一方側熱交換器40を構成する一方側第1熱交換部41から一方側第4熱交換部44(一方側第n熱交換部)を配置する。また、下面20dのそれぞれ対向する位置に、他方側熱交換器50を構成する他方側第1熱交換部51から他方側第4熱交換部54(他方側第n熱交換部)までを配置する。一方側熱交換器40には、一方側第1熱交換部41から一方側第4熱交換部44の順に冷媒を流し、他方側熱交換器50には、他方側第4熱交換部54から他方側第1熱交換部51の順に冷媒を流す。一方側流路11aを流れる冷媒は、一方側第1熱交換部41に流入する際に最もバッテリ20の冷却能力が高く、一方側第4熱交換部44を流出する際に最もバッテリ20の冷却能力が低い。一方、他方側流路11bを流れる冷媒は、他方側第4熱交換部54に流入する際に最もバッテリ20の冷却能力が高く、他方側第1熱交換部51を流出する際に最もバッテリ20の冷却能力が低い。
【0049】
このように、上面20uのみに着目すると、一方側第1熱交換部41から一方側第4熱交換部44までにおいて冷却能力にバラツキが発生し得る。同様に、下面20dのみに着目すると、他方側第4熱交換部54から他方側第1熱交換部51までにおいて冷却能力にバラツキが発生し得る。しかしながら、一方側第1熱交換部41から一方側第4熱交換部44と、他方側第4熱交換部54から他方側第1熱交換部51とをそれぞれ対向する位置に設けたので、他方側熱交換器50において最も冷却能力の低い他方側第1熱交換部51の冷却能力の不足を、一方側熱交換器40において最も冷却能力の高い一方側第1熱交換部41が補うことが可能となる。同様に、他方側熱交換器50において2番目に冷却能力の低い他方側第2熱交換部52の冷却能力の不足を、一方側熱交換器40において2番目に冷却能力の高い一方側第2熱交換部42が補うことが可能となる。他方側第3熱交換部53と一方側第3熱交換部43や、他方側第4熱交換部54と一方側第4熱交換部44における冷却能力の関係性も同様である。このように、上面20uと下面20dとで冷媒の流れる順を逆にすることで、一方側熱交換器40の冷却能力のバラツキと他方側熱交換器50の冷却能力のバラツキとを相互に補完することが可能となるので、バッテリ20の全体を温度バラツキなく冷却することができる。
【0050】
さらに、一方側熱交換部41~44と、他方側熱交換部51~54とで、冷媒は、逆の方向に流れる(所謂、対向流とする。)。これにより、バッテリ20の全体をより均一に冷却することができる。
【0051】
<実施例2>
次に、実施例2によるバッテリ冷却装置を図面に基づいて説明する。
【0052】
図3は実施例2のバッテリ冷却装置30Aを示し、上記図2に対応させて表している。基本的な構成については、実施例1によるバッテリ冷却装置30(図1参照)と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0053】
バッテリ冷却装置30Aは、2つのバッテリ20X、20Y(第1バッテリ20X、第2バッテリ20Y)を冷却する。なお、バッテリ冷却装置30Aは、3つ以上のバッテリ20を冷却するのにも用いることができる。
【0054】
一方側熱交換器40Aは、4組の一方側熱交換部41A~44Aにより構成されている。それぞれの一方側熱交換部41A~44Aの構成は、図1に示す一方側熱交換部41~44と同じである。一方側熱交換部41A~44Aは、それぞれ2つの熱交換部が並列に配置されてなる。一方側第1熱交換部41A、41A及び一方側第4熱交換部44A、44Aは、共に第1バッテリ20Xの上面20Xuに当接し、一方側第2熱交換部42A、42A及び一方側第3熱交換部43A、43Aは、共に第2バッテリ20Yの上面20Yuに当接している。
【0055】
並列に配置された一方側第1熱交換部41A、41Aは、一方側第1熱交換部41A、41Aの上流側で一方側流路11aが分岐していると共に、一方側第1熱交換部41A、41Aの下流側で一方側流路11aが合流している。その他の一方側熱交換部42A~44Aも同様である。
【0056】
他方側熱交換器50Aも同様である。つまり、他方側熱交換器50Aは、4組の他方側熱交換部51A~54Aにより構成されている。それぞれの他方側熱交換部51A~54Aの構成は、図1に示す他方側熱交換部51~54と同じである。それぞれの他方側熱交換部51A~54Aは、2つの熱交換部が並列に配置されてなる。他方側第1熱交換部51A、51A及び他方側第4熱交換部54A、54Aは、共に第1バッテリ20Xの下面20Xdに当接し、他方側第2熱交換部52A、52A及び他方側第3熱交換部53A、53Aは、共に第2バッテリ20Yの下面20Ydに当接している。
【0057】
並列に配置された他方側第1熱交換部51A、51Aは、他方側第1熱交換部51A、51Aの上流側で他方側流路11bが分岐していると共に、他方側第1熱交換部51A、51Aの下流側で他方側流路11bが合流している。その他の他方側熱交換部52A~54Aも同様である。
【0058】
なお、一方側熱交換部41A~44A及び他方側熱交換部51A~54Aは、それぞれ並列に配置された3つ以上の熱交換部によって構成されていても良い。
【0059】
以上に説明したバッテリ冷却装置30Aも本発明所定の効果を奏する。
【0060】
<実施例3>
次に、実施例3によるバッテリ冷却装置を図面に基づいて説明する。
【0061】
図4は実施例3のバッテリ冷却装置30Bを示し、上記図1に対応させて表している。基本的な構成については、実施例1によるバッテリ冷却装置30(図1参照)と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0062】
一方側熱交換器40は、バッテリ20の右側面20rに配置され、他方側熱交換器50は、バッテリ20の左側面20lに配置されてなる。つまり、一方側面は、右側面20rであり、他方側面は、左側面20lである。
【0063】
なお、一方側熱交換部41~44及び他方側熱交換部51~54は、バッテリ20の形状やその他の事情から、上下方向に向けて(上下方向に沿って)配置することでも良いし任意の方向に向けて配置することでも良い。しかしながら、一方側熱交換器40と他方側熱交換器50の内部を気液混合状態の冷媒が通流し、特に液状の冷媒が重力の影響を受けやすいため、図4に示されるように前後方向に向けて配置されること(水平方向に配置されることが)が好ましい。一方側熱交換部41~44及び他方側熱交換部51~54の各熱交換部の入口側又は出口側に液状の冷媒が重力によって集合する要因を排除して、バッテリ20の冷却時の温度分布を縮小できる。
【0064】
以上に説明したバッテリ冷却装置30Bも本発明所定の効果を奏する。
【0065】
<実施例4>
次に、実施例4によるバッテリ冷却装置を図面に基づいて説明する。
【0066】
図5は実施例4のバッテリ冷却装置30Cを示し、上記図1に対応させて表している。基本的な構成については、実施例1によるバッテリ冷却装置30(図1参照)と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0067】
一方側熱交換器40は、バッテリ20の前方側面20fに配置され、他方側熱交換器50は、バッテリ20の後方側面20bに配置されてなる。つまり、一方側面は、前方側面20fであり、他方側面は、後方側面20bである。
【0068】
なお、一方側熱交換部41~44及び他方側熱交換部51~54は、バッテリ20の形状やその他の事情から、上下方向に向けて(上下方向に沿って)配置することも可能である。しかしながら、一方側熱交換器40と他方側熱交換器50の内部を気液混合状態の冷媒が通流し、特に液状の冷媒が重力の影響を受けやすいため、図5に示されるように左右方向に向けて配置されることが(水平方向に配置されることが)好ましい。一方側熱交換部41~44及び他方側熱交換部51~54の各熱交換部の入口側又は出口側に液状の冷媒が重力によって集合する要因を排除して、バッテリ20の冷却時の温度分布を縮小できる。
【0069】
以上に説明したバッテリ冷却装置30Cも本発明所定の効果を奏する。
【0070】
尚、本発明によるバッテリ冷却装置は、ハイブリッド車両に搭載されるものに限られず、電気自動車やモータを用いる鞍乗り型車両、さらには車両以外の乗り物や建機等にも搭載することができる。
【0071】
また、冷凍サイクル10は、空調装置の一部を共用することなく、独立して設けることもできる。
【0072】
また、各実施例は、適宜組み合わせることができる。例えば、一方側面の熱交換部を図2に示したような単独の熱交換部によって構成すると共に、他方側面の熱交換部を図3に示したような並列に配置された1組の熱交換部によって構成することもできる。また、一方側面に単独の熱交換部と1組の熱交換部とを組み合わせて配置することもできる。さらに、並列に配置された1組の熱交換部をバッテリの左右の側面や前後の側面に配置することも可能である。
【0073】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のバッテリ冷却装置は、駆動源としてモータを用いる車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0075】
10…冷凍サイクル
11…流路、11a…一方側流路、11b…他方側流路
12…圧縮機
13…凝縮器
14…膨張装置
15a…アキュムレータ(冷媒貯留器)
20…バッテリ、20u…上面(一方側面)、20d…下面(他方側面)、20r…右側面(一方側面)、20l…左側面(他方側面)、20f…前方側面(一方側面)、20b…後方側面(他方側面)
30、30A、30B、30C…バッテリ冷却装置
31…冷媒分配装置
34…冷媒合流装置
40、40A…一方側熱交換器
41、41A…一方側第1熱交換部
44、44A…一方側第4熱交換部(一方側第n熱交換部)
50、50A…他方側熱交換器
51、51A…他方側第1熱交換部
53、53A…他方側第3熱交換部(他方側第n-1熱交換部)
54、54A…他方側第4熱交換部(他方側第n熱交換部)
図1
図2
図3
図4
図5